説明

導体線露出方法、集合導体の導体線露出構造及び被覆除去処理液

【課題】集合導体の導体線露出構造の製造において、複数本の電線の樹脂被覆端の位置を集合導体の長さ方向で揃え、また、被覆樹脂へ熱の影響を及ぼさず、さらに、集合導体の形態を崩さない。
【解決手段】電線11の樹脂被覆に対して貧溶媒である上層液21及び電線11の樹脂被覆に対して加水分解性を有する溶媒であってかつ、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以上である下層液22に層が分かれた被覆除去処理液20に、集合導体10を、解撚せずに、一定長さ部分10aのみが60℃以上の液温において下層液22に浸かるように浸漬し、その下層液22に浸けた集合導体10の一定長さ部分10aにおいて複数本の電線11の全てについて樹脂被覆を除去して導体線を露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導体線露出方法、集合導体の導体線露出構造及び被覆除去処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂被覆で導体線を被覆した電線では、その先端部分において接続のために樹脂被覆を除去して導体線を露出させる必要がある。
【0003】
特許文献1には、紫外線硬化型樹脂で形成された樹脂被覆で導体線を被覆した電線であって、樹脂被覆の剥離が容易に行えるように、導体線の表面に非接着性の物質を塗布したものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、電線の導体線を被覆する紫外線硬化型樹脂で形成された樹脂被覆を剥離する剥離剤として、50%以上が塩素系有機溶剤である有機溶剤を用いることが開示されている。
【0005】
また、表皮効果により効率的に電流を流すことを目的として用いられる集合導体は、樹脂被覆で導体線を被覆した電線を複数本集めて束ねたものであるが、その集合導体の場合も、その先端部分において各電線の樹脂被覆を除去して導体線を露出させる必要がある。
【0006】
特許文献3には、樹脂被覆を除去する被覆幅に対応する幅の第1及び第2電極間にリッツ線(集合導体)を挟み、それらの第1及び第2電極間への通電により発生するジュール熱によってリッツ線を構成する電線の樹脂被覆を除去することが開示されている。
【0007】
特許文献4には、樹脂被覆で導体線を被覆した電線を複数本集めて撚り合わせたフォーマ(集合導体)の外側に超電導層が配された超電導ケーブルにおいて、端部における電線の撚り合わせを解き、各電線の樹脂被覆を除去した後に撚りを元に戻し、そして、撚りが戻されたフォーマ端部の直線度を矯正することが開示されている。
【0008】
特許文献5には、樹脂被覆で導体線を被覆した電線を複数本集めて撚り合わせた集合導体の端部処理方法であって、集合導体の端部を高温の有機溶剤に浸すことが開示されている。
【0009】
特許文献6には、集合導体を構成する各電線における導体線を被覆する樹脂被覆としてポリビニルアルコール樹脂を用い、樹脂被覆を剥離する場合に、集合導体を温水に浸漬することが開示されている。
【0010】
特許文献7には、集合導体を構成する複数本の電線の内部空間から半径方向外方向に剥離液を噴出して樹脂被覆を溶解除去することが開示されている。
【0011】
特許文献8には、被膜除去室において一対の集合導体の端末を突き合わせるように保持すると共に、被膜除去室内に樹脂被覆を溶解するための薬液を貯留して密閉し、そして、集合導体を取り巻くように配置された薬液加熱手段によって薬剤を加熱することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平4−192213号公報
【特許文献2】特開平7−238273号公報
【特許文献3】特開平6−296314号公報
【特許文献4】特開2006−302674号公報
【特許文献5】特開平10−210621号公報
【特許文献6】特開2002−25821号公報
【特許文献7】特開平5−199631号公報
【特許文献8】第2571535号実用新案登録公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
例えば、集合導体の先端部分において電線の樹脂被覆を除去する方法として、集合導体の先端部分を有機溶剤等からなる被覆除去処理液に浸漬して各電線の樹脂被覆を除去する方法の場合、毛管現象により電線間の空間に被覆除去処理液が流入して液面が上昇し、そして、集合導体の内部に配置された電線では被覆除去処理液への浸漬長さよりも長く樹脂被覆が除去され、その結果、電線間で樹脂被覆の除去長さが不揃いとなり、集合導体としての電気的特性が損なわれてしまうという問題がある。
【0014】
また、集合導体の先端部分の樹脂被覆を熱分解して除去する方法の場合、樹脂被覆への熱の影響を避けることができないという問題がある。
【0015】
さらに、集合導体の先端部分を一旦解撚し、各電線毎に所定長の樹脂被覆を除去した後に再び撚り合わせる方法の場合、解撚した電線は塑性変形を伴うため、再び撚り合わせても元の形態が復元されないという問題がある。
【0016】
本発明の課題は、集合導体の導体線露出方法において、複数本の電線の樹脂被覆端の位置を集合導体の長さ方向で揃え、また、樹脂被覆に影響を及ぼさず、さらに、集合導体の形態を崩さないことである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の導体線露出方法は、各々、導体線とそれを被覆する樹脂被覆とを有する複数本の電線が撚られた集合導体から、前記樹脂被覆の一部を除去して前記導体線の一部を露出させる導体線露出方法であって、前記樹脂被覆に対して貧溶媒である上層液と、上層液を溶解させず且つ該樹脂被覆を膨潤又は溶解させる溶媒である下層液に層が分かれた被覆除去処理液を用意するステップと、前記被覆除去処理液に、前記集合導体を、撚られた状態を保持して、一定長さ部分のみが下層液に浸かるように上層液を介して浸漬し、下層液に浸漬した集合導体の前記一定長さ部分において複数本の電線の全てについて樹脂被覆を除去して導体線を露出させるステップとを含み、前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の前記上層液の粘度は前記下層液の粘度の0.5倍以上7倍以下であり、前記下層液は、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以上である液であり、樹脂被覆を除去して導体線を露出させる前記ステップでは、前記被覆除去処理液を60℃以上にして樹脂被覆を除去する構成を備えている。ここで、「各々、導体線とそれを被覆する樹脂被覆とを有する複数本の電線が撚られた集合導体から、前記樹脂被覆の一部を除去して前記導体線の一部を露出させる」、の「各々」とは、複数本の電線の各々が導体線とそれを被覆する樹脂被覆とを有する、という意味である。
【0018】
本発明の被覆除去処理液は、各々、導体線とそれを被覆する樹脂被覆とを有する複数本の電線が撚られた集合導体から、前記樹脂被覆の一部を除去して前記導体線の一部を露出させる被覆除去処理液であって、前記樹脂被覆に対して貧溶媒である上層液と、該樹脂被覆に対して加水分解性を有する溶媒である下層液とを有していて、少なくとも2層に分かれており、前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の前記上層液の粘度は前記下層液の粘度の0.5倍以上7倍以下であり、前記下層液は100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以上である液であり、集合導体が、60℃以上の液温において一定長さ部分のみが下層液に浸かるように上層液を介して浸漬されて、下層液に浸漬された集合導体の前記一定長さ部分において複数本の電線の全てについて樹脂被覆が除去されて導体線が露出される構成を備えている。
【0019】
本発明の集合導体の導体線露出構造は、各々、導体線とそれを被覆する樹脂被覆とを有する複数本の電線が撚られた集合導体の導体線露出構造であって、前記樹脂被覆に対して貧溶媒である上層液及び該樹脂被覆に対して加水分解性を有する溶媒である下層液に層が分かれた被覆除去処理液に、集合導体が、撚られた状態を保持して、一定長さ部分のみが60℃以上の液温において下層液に浸かるように上層液を介して浸漬され、下層液に浸漬された集合導体の前記一定長さ部分において複数本の電線の全てについて樹脂被覆が除去されて導体線が露出し、前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の、前記上層液の粘度は前記下層液の粘度の0.5倍以上7倍以下であり、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以上である液である構成を備えている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、樹脂被覆に対して貧溶媒である上層液及び該樹脂被覆に対して良溶媒である下層液に層が分かれた被覆除去処理液であって、前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の上層液と下層液との粘度が特定範囲の比率である被覆除去処理液に、集合導体を、解撚せずに、一定長さ部分のみが下層液に浸かるように上層液を介して浸漬するので、樹脂被覆の除去に寄与する該電線の樹脂被覆に対して良溶媒である下層液の毛管現象による電線間の空間への流入が該電線の樹脂被覆に対して貧溶媒である上層液によって阻止される。従って、集合導体の導体線露出構造の製造において、複数本の電線の樹脂被覆端の位置を集合導体の長さ方向で揃えることができ、また、このとき前記集合導体の前記被覆除去部以外の樹脂被覆へ熱の影響が及ばず、さらに、集合導体の撚り形態が崩れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の集合導体の(a)横断面図及び(b)上面図である。
【図2】本実施形態の集合導体の端末処理方法を示す説明図である。
【図3】本実施形態の集合導体の先端部分の(a)端面図及び(b)上面図である。
【図4】変形例の実施形態の集合導体の横断面図である。
【図5】他の変形例の実施形態の集合導体の横断面図である。
【図6】別の他の変形例の実施形態の集合導体の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0023】
(集合導体)
図1(a)及び(b)は本実施形態の集合導体10を示す。
【0024】
本実施形態の集合導体10は、複数本の電線11が一方向に撚られた構成を有し、撚り加工と共に四方からの圧縮成形加工が施されて横断面が四角形に形成されている。ここで、本願における「四角形」には、4つの辺と4つの頂角とで構成されたものの他、頂角部分が丸みを帯びた形状に形成されたいわゆる略四辺形も含まれる(以下同様)。本実施形態の集合導体10は、例えば、横断面における縦及び横の寸法が1〜100mmである。電線11の本数は例えば10〜100本である。撚り数は例えば2〜20回/mである。撚りの方向はS撚りであってもよく、また、Z撚りであってもよい。なお、ここで、「撚り」とは複数本の電線11が長さ方向に沿って全体として捻られた状態をいう。
【0025】
集合導体10を構成している電線11は、横断面が四角形に形成されているが、その圧縮成形前の横断面形状は円形である。電線11は、導体線11aの表面が樹脂被覆11bで被覆された構成を有する。圧縮加工前の電線11の外径は例えば0.1〜5.0mmである。複数本の電線11は、外径が同じものだけで構成されていてもよく、また、外径の異なるものが混在して構成されていてもよい。
【0026】
導体線11aも、横断面が四角形に形成されているが、その圧縮成形前の横断面形状は円形である。圧縮加工前の導体線11aの外径は例えば0.1〜5.0mmである。導体線11aを形成する金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、鉄、白金、銀等が挙げられる。導体線11aは、単一種の金属で形成されていてもよく、また、ジュラルミン等の合金で形成されていてもよい。導体線11aは、これらのうち導電性の観点からは銅で形成されていることが好ましく、また、軽量化の観点からはアルミニウム或いはアルミニウム合金のジュラルミンで形成されていることが好ましい。複数本の電線11は、導体線11aの材質が同じものだけで構成されていてもよく、また、導体線11aの材質の異なるものが混在して構成されていてもよい。
【0027】
樹脂被覆11bの厚さは例えば0.005〜0.1mmである。樹脂被覆11bのSP値は8以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。ここで、SP値は、(SP値)=CEO=ΔE/V=(ΔH−RT)/V=d(CE)/M(ΔE:蒸発エネルギー(kcal/mol)、V:モル体積(cm/mol)、ΔH(kcal/mol)、R:ガス定数、M:グラム分子量(g/mol)、T:絶対温度(K)、d:密度(g/cm)、CE:凝集エネルギー(kcal/mol))で定義される(「プラスチック加工技術ハンドブック」、1995年6月12日、高分子学会編、日刊工業新聞社発行、1474頁参考)。
【0028】
樹脂被覆11bを形成する樹脂材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を含む非架橋樹脂;熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂などの光硬化型樹脂を含む架橋樹脂が挙げられる。具体的には、樹脂被覆11bを形成する樹脂材料として、例えば、ポリウレタンアクリレート樹脂(SP値10.2〜11.2)、ポリウレタンメタクリレート樹脂(SP値10.0〜11.0)、ポリエポキシアクリレート樹脂(SP値11.5〜12.5)、ポリブタジエンアクリレート樹脂(SP値8.5〜9.5)、エポキシ樹脂(SP値10.9)、フェノール樹脂(SP値11.3)、ポリ酢酸ビニル樹脂(SP値9.4〜9.6)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(SP値10.7)、ポリビニルアルコール樹脂(SP値12.6)、ポリアミド樹脂(SP値13.6)が挙げられる。
【0029】
樹脂被覆11bは、導体線11aの被覆除去が容易である紫外線硬化型樹脂だけではなく、有機溶剤によっては完全に被覆除去ができないエナメル被覆樹脂からなっていてもよい。エナメル被覆としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルホルマール樹脂などからなる被覆を挙げることができる。樹脂被覆11bは、単一層で構成されていてもよく、また、複数層が積層されて構成されていてもよい。
【0030】
(集合導体の端末処理方法)
本実施形態の被覆除去処理液20を用いた集合導体10の端末処理方法(集合導体の導体線露出方法)では、図2に示すように、被覆除去処理液20に集合導体10を解撚せずに、即ち撚られた状態を保持したままで浸漬する。ここで、被覆除去処理液20は、電線11の樹脂被覆11bに対して貧溶媒である上層液21及び電線11の樹脂被覆11bに対して加水分解性を有する溶媒である下層液22に層が分かれており、このとき、被覆除去処理液20には、集合導体10を、樹脂被覆11bを除去する先端部分10a(一定長さ部分)のみが下層液22に浸かり、先端部分10aから本体側に延びる部分が上層液21に浸かるように浸漬する。そして被覆除去処理液20の温度は60℃以上にされている。温度の上限は被覆除去処理液20に含まれる液体の種類によって異なり、各液体の沸点のうち最も低い沸点が被覆除去処理液20の温度の上限の目安となる。なお、被覆除去処理液20への集合導体10の浸漬は、被覆除去処理液20の液面に対し、集合導体10の長さ方向が垂直となるように行うことが好ましい。
【0031】
被覆除去処理液20は、上層液21が電線11の樹脂被覆11bに対して貧溶媒であり、そして、下層液22が、上層液21よりも密度が大きく、電線11の樹脂被覆11bに対して加水分解性を有する溶媒である。ここでいう密度は、JIS K 0061の液体の密度測定法に準拠して、前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の温度で測定された値をいう。
【0032】
上層液21は、電線11の樹脂被覆11bとの親和性が低く、従って、電線11の樹脂被覆11bとのSP値差が相対的に大きく、電線11が浸けられても樹脂被覆11bに影響を及ぼさないものであることが好ましい。下層液22は、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以上である液であって、電線11の樹脂被覆11bに対して加水分解性を有し、電線11が浸けられると、樹脂被覆11bの一部あるいは全部を膨潤させる、或いは、溶解させるものであることが好ましい。pHは次のように測定する。まず下層液22を100g採取し、そこに1Lの水を加えて攪拌し、下層液22を水に溶解させる。それからメトラー・トレド社製のpHメータ(型番MA235)を用いて、JIS Z 8802に準拠してガラス電極法によって水に溶解した下層液22のpHの測定を行う
電線11の樹脂被覆11bが下層液22に溶解すると、被覆除去処理液20の被覆除去性能が低下する恐れがあることから、下層液22は、電線11の樹脂被覆11bを膨潤させるものであることがより好ましい。被覆樹脂11bを架橋樹脂とした電線11を、下層液22に浸けることにより、好適に電線11の被覆樹脂11bを膨潤させることができる。また、上層液21及び下層液22は、前者が非極性溶媒であることが望ましく、また、後者が極性溶媒であることが好ましい。さらに、上層液21及び下層液22は、それらのSP値差が2.0以上であることが好ましい。
【0033】
上層液21の密度は例えば0.60〜1.0g/cmであるがこの密度に限定はされない。上層液21のSP値は例えば6.0〜9.0である。上層液21は、樹脂被覆11bの材質に対応して選択されるが、具体的には、例えば、n−ヘキサン(密度0.66g/cm、SP値7.3)、n−オクタン(密度0.70g/cm、SP値7.6)、シクロヘキサン(密度0.78g/cm、SP値8.2)、n−デカン(密度0.73g/cm、SP値7.7)、n−ドデカン(密度0.75g/cm、SP値7.9)、鉱物油(密度0.80〜1.0g/cm、SP値6〜8)、植物油(密度0.80〜1.0g/cm、SP値6〜8)等が挙げられる。上層液21は、単一種の溶媒で構成されていてもよく、また、複数種の混合溶媒で構成されていてもよい。
【0034】
下層液22の密度は上層液21の密度よりも大きく、例えば0.70〜1.2であるがこの密度に限定はされない。下層液22のSP値は例えば11〜13である。下層液22も、樹脂被覆11bの材質に対応して選択されるが、具体的には、例えば、アセトニトリル(密度0.78g/cm、SP値11.9)、ジメチルホルムアミド(密度0.94g/cm、SP値11.9)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(密度1.03g/cm、SP値10.1)、モノエタノールアミン(密度1.02g/cm、SP値16.3)、ジエタノールアミン(密度1.09g/cm、SP値15.4)、35%水酸化カリウム水溶液(密度1.34g/cm、SP値23.4(水のSP値))、クレゾール(密度1.03g/cm、SP値12.9)等が挙げられる。下層液22は、単一種の溶媒で構成されていてもよく、また、複数種の混合溶媒で構成されていてもよい。
【0035】
その他に上層液21或いは下層液22として使用可能な溶媒としては、例えば、n−ペンタン(密度0.63g/cm、SP値7)、ジエチルエーテル(密度0.71g/cm、SP値7.4)、酢酸イソブチル(密度0.87g/cm、SP値8.3)、酢酸イソプロピル(密度0.88g/cm、SP値8.4)、メチルイソプロピルケトン(密度0.80g/cm、SP値8.5)、酢酸ブチル(密度0.88g/cm、SP値8.5)、四塩化炭素(密度1.60g/cm、SP値8.6)、メチルプロピルケトン(密度0.81g/cm、SP値8.7)、エチルベンゼン(密度0.90g/cm、SP値8.8)、キシレン(密度0.86g/cm、SP値8.8)、トルエン(密度0.87g/cm、SP値8.9)、酢酸エチル(密度0.90g/cm、SP値9.1)、テトラヒドロフラン(密度0.89g/cm、SP値9.1)、ベンゼン(密度0.88g/cm、SP値9.2)、トリクロロエチル(密度1.4g/cm、SP値9.2)、メチルエチルケトン(密度0.81g/cm、SP値9.3)、クロロホルム(密度1.5g/cm、SP値9.3)、塩化メチレン(密度1.3g/cm、SP値9.7)、アセトン(密度0.79g/cm、SP値9.9)、二硫化炭素(密度1.3g/cm、SP値10)、酢酸(密度1.0g/cm、SP値10.1)、ピリジン(密度0.98g/cm、SP値10.7)、n−ヘキサノール(密度0.82g/cm、SP値10.7)、シクロヘキサノール(密度0.95g/cm、SP値11.4)、n−ブタノール(密度0.81g/cm、SP値11.4)、イソプロピルアルコール(密度0.79g/cm、SP値11.5)、ニトロメタン(密度1.1g/cm、SP値12.7)、エタノール(密度0.79g/cm、SP値12.7)、メタノール(密度0.79g/cm、SP値14.5)、エチレングリコール(密度1.1g/cm、SP値14.6)、グリセロール(密度1.3g/cm、SP値16.5)、ホルムアミド(密度1.1g/cm、SP値19.2)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(密度1.03g/cm、SP値10.1)、水(密度1.0g/cm、SP値23.4)等が挙げられる。
【0036】
ここで、前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の温度における、上層液21の粘度をXa、下層液22の粘度をXbとすると、0.5≦Xa/Xb≦7である。上層液21の粘度が下層液22の粘度に比べて大き過ぎる、即ちXa/Xbが7を越えると、集合導体10を被覆除去処理液20に浸漬させていく際に、集合導体10の先端の端面に上層液21が付着して上層液21を巻き込んで下層液22の中に先端部分10aが入っていくおそれがある。このようになると、先端部分10aの樹脂被覆11bの一部が上層液21に覆われて下層液22が十分に接触できない現象が生じて、その部分は樹脂被覆11bが十分に膨潤せず、結果として先端部分10aにおいて一部の樹脂被覆11bが除去できなくて残存してしまうことになる。
【0037】
一方、上層液21の粘度が下層液22の粘度に比べて小さ過ぎる、即ちXa/Xbが0.5未満であると、集合導体10を被覆除去処理液20に浸漬させていく際に、上層液21が下層液22に対する蓋の役割を果たすことができずに、浸漬された集合導体10において上層液21と下層液22との界面より上方へ下層液22が上っていくおそれがある。このような状況になると、除去された樹脂被覆11b端の位置が集合導体10の長さ方向でばらついてしまう。ここで粘度は、JIS Z 8803の毛細管粘度計による粘度測定法に準拠して、前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の温度で測定された値をいう。
【0038】
また、前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の温度における、上層液21の表面張力をYa、下層液22の表面張力をYbとすると、0.51<Ya/Ybであることが好ましい。上層液21と下層液22との表面張力の関係が上記の式を満たしていると除去された樹脂被覆11b端の位置が集合導体10の長さ方向で同じ位置に確実に揃うからである。上層液21の表面張力が下層液22の表面張力に比べて小さ過ぎる、即ちYa/Ybが0.51以下であると、集合導体10を被覆除去処理液20に浸漬させていく際に、上層液21の表面張力と質量とに打ち勝って下層液22が毛管現象によって樹脂被覆11b表面の毛管部分(隣り合う電線11間の隙間)に上がっていき、浸漬された集合導体10において上層液21と下層液22との界面より上方へ下層液22が上っていく現象が生じるおそれがある。ここで表面張力は、JIS K 2241の表面張力試験方法に準拠して、前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の温度で測定された値をいう。
【0039】
被覆除去処理液20に集合導体10を浸漬して所定時間経過した後、被覆除去処理液20から集合導体10を引き上げる。被覆除去処理液20への集合導体10の浸漬時間は、例えば10秒〜5分である。このとき、下層液22によって架橋樹脂で形成された樹脂被覆11bが膨潤する場合には、被覆除去処理液20から引き上げられた集合導体10は、下層液22に浸かった先端部分10aの樹脂被覆11bが下層液22で膨潤して導体線11aから剥離することとなるので、しかる後、剥離した樹脂被覆11bを除去して導体線11aのみを露出させる。このとき、樹脂被覆11bが集合導体10の内部に残留することがないように高圧の圧縮空気や高圧水を吹き付けてもよい。また、下層液22によって非架橋樹脂で形成された樹脂被覆11bが溶解される場合には、被覆除去処理液20から引き上げた集合導体10は、下層液22に浸かった先端部分10aの樹脂被覆11bが溶解されて導体線11aのみが露出することとなる。
【0040】
その後、集合導体10の被覆除去処理液20に浸漬した部分をエタノール等の洗浄剤に浸漬して洗浄することにより残留する被覆除去処理液20を除去してもよい。作業環境性の観点からは、被覆除去処理液20のうち少なくとも上層液21は不揮発性溶媒乃至低揮発性溶媒で構成されていることが好ましい。
【0041】
(上層液と下層液との組合せの検討)
上層液と下層液との組合せの検討を行った。上層液として、鉱物油(株式会社MORESCO製、ネオバックMR−200)、n−デカン、n−ドデカン、及びこれらの混合液を検討した。下層液としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、37質量%水酸化カリウム水溶液、クレゾール、及びこれらの混合液を検討した。混合液1〜9を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
集合導体は、図1に示す形状を有していて、樹脂被覆としてポリウレタン樹脂からなるエナメル被覆、ポリエステル樹脂からなるエナメル被覆、ポリビニルホルマール樹脂からなるエナメル被覆、エポキシアクリル樹脂からなる被覆を用いたものとした。具体的には、ポリウレタン樹脂からなるエナメル被覆は、ポリウレタン樹脂として、TPU−F1(東特塗料株式会社製)を用い、この塗料を含浸したフェルトに集合導体を接触させるディッピング塗装により形成した。塗布の後、100℃3分の条件で乾燥を行い、それから150℃10分の焼き付けを行った。この塗装を20回繰り返した。各回の塗膜厚みは1〜2μmであった。
【0044】
ポリエステル樹脂の場合は、塗料としてポリエステル樹脂LITON3300(東特塗料株式会社製)を用いて、ポリウレタン樹脂と同様の方法で塗布を行った。
【0045】
ポリビニルホルマール樹脂の場合は、塗料としてポリビニルホルマール樹脂TVE5225A(京セラケミカル株式会社製)を用いて、ポリウレタン樹脂と同様の方法で塗布を行った。
【0046】
エポキシアクリル樹脂の場合は、アクリロニトリル5モル、アクリル酸1モル、グリシジルメタアクリレート0.3モル、イオン交換水760g、ラウリル硫酸エステルソーダ7.5g、過硫酸ソーダ0.13gからなる混合物を反応させてなるアクリル系塗料用い、電着により塗装した。電着塗装は、銅円筒の陰極管(直径:6cm、長さ:100cm)を用い、極間距離3cm、線速1m/minで、浴液中に(浸漬(連続処理))しながら温度20℃で50Vの直流電圧をかけるという条件下で行った。また乾燥・焼付けは180℃の温度で全長5mの炉に通すことにより行った。
【0047】
この集合導体を上記の端末処理方法に従って、上記の混合液1〜9からなる被覆除去処理液に浸漬して被覆の除去を行った。検討結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
No.10は、上層液の粘度が下層液の粘度よりも大きすぎて下層液が上層液の方へ上がっていく毛管現象が生じ、除去された樹脂被覆端の位置が集合導体の長さ方向でばらついてしまい、NGである。一方毛管現象が生じなくて除去された樹脂被覆端の位置のばらつきが無い組合せの中で、粘度比Xa/Xbが最も大きいのはNo.16の7.0である。
【0050】
No.11は、液温が20℃と低いため、樹脂被覆が剥離されないで残っており、NGである。その他は液温が60〜90℃であり、下層液に浸漬された樹脂被覆は完全に剥離されている。
【0051】
No.14は、下層液のpHが8であって本願で下層液として定義するところの、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以である液ではないため、樹脂被覆が剥離されないで残っており、NGである。その他は下層液のpHが9〜14であって本願で下層液として定義するところの、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以である液であるため、下層液に浸漬された樹脂被覆は完全に剥離されている。
【0052】
また、表面張力比Ya/Ybは0.51よりも大きいことが好ましい。
【0053】
(集合導体の先端部分)
図3(a)及び(b)は本実施形態の集合導体10の先端部分10aを示す。
【0054】
本実施形態の集合導体10の先端部分10aは、複数本の電線11の全てについて樹脂被覆11bが除去されており、そして、複数本の電線11の樹脂被覆11b端の位置が集合導体10の長さ方向で揃っている。
【0055】
集合導体の先端部分を有機溶剤等からなる単層の被覆除去処理液に浸漬して各電線の樹脂被覆を除去する場合、毛管現象により電線間の空間に被覆除去処理液が流入して液面が上昇し、そして、集合導体の内部に配置された電線では被覆除去処理液への浸漬長さよりも長く樹脂被覆が除去され、その結果、電線間で樹脂被覆の除去長さが不揃いとなり、集合導体としての電気的特性が損なわれてしまうこととなる。しかしながら、上記本実施形態の集合導体10の端末処理方法では、樹脂被覆11bの除去は被覆除去処理液20の下層液22に浸かった集合導線の先端部分10aのみでなされ、樹脂被覆11bの除去に寄与する加水分解性を有する溶媒の下層液22の毛管現象による電線11間の空間への流入が貧溶媒の上層液21によって阻止される。そのため、本実施形態の集合導体10の先端部分10aは、複数本の電線11の全てについて樹脂被覆11bが除去され、しかも、複数本の電線11の樹脂被覆11b端の位置が上層液21と下層液22との界面に対応するために集合導体10の長さ方向で揃うこととなる。
【0056】
本実施形態の集合導体10の導体線11aが露出されなかった部分の樹脂被覆11bは樹脂被覆11bの軟化や硬化が生じるほどの高い熱影響は受けておらず、下層液による化学変化もおこなわれていない。
【0057】
集合導体の先端部分の樹脂被覆を熱分解して除去する場合、熱伝導によって除去すべき部位近傍の樹脂被覆11bにも熱による化学変化が発生する。しかしながら、本実施形態の集合導体10の端末処理方法では、下層液22に接触しない部分の樹脂被覆11bへは、下層液22から熱分解するほどの熱は加わらない。そのため、本実施形態の集合導体10の先端部分10aは、下層液22と直接接触しない樹脂被覆11bに、熱による軟化や硬化による割れなどを生じないため、導体線11aは絶縁不良を起こさない。
【0058】
本実施形態の集合導体10の先端部分10aは解撚履歴を有さない。
【0059】
集合導体の先端部分を一旦解撚し、各電線毎に所定長の樹脂被覆を除去した後に再び撚り合わせる場合、解撚した電線は塑性変形を伴うため、再び撚り合わせても元の形態が復元されることはなく、解撚履歴が残ってしまう。特に、本実施形態の集合導体10のように横断面形状が頂角或いは丸みを帯びた頂角部分をもつ四角形等に形成されたものでは顕著である。そのため、一旦解撚した場合、集合導体の先端部分を接続に適した形態に構成するには、何等かの集束手段が必要となる。しかしながら、本実施形態の集合導体10の端末処理方法では、被覆除去処理液20に集合導体10を解撚せずに浸漬し、その状態で樹脂被覆11bを除去するので、解撚及び撚り合わせの作業が不要であり、当然ながら解撚履歴は形成されない。そのため、本実施形態の集合導体10の先端部分10aは、樹脂被覆11bの除去前の撚り形態を保持した状態で複数本の電線11の樹脂被覆11bのみが除去されたものとなり、集束手段を必要としない。
【0060】
以上の通り、本実施形態の集合導体10の端末処理方法によれば、電線11の樹脂被覆11bに対して貧溶媒である上層液21及び電線11の樹脂被覆11bを加水分解することにより樹脂被覆11bを膨潤又は溶解させる溶媒である下層液22に層が分かれた被覆除去処理液20に、集合導体10を、解撚せずに、先端部分10aのみが下層液22に浸かるように浸漬するので、樹脂被覆11bの除去に寄与する下層液22の毛管現象による電線11間の空間への流入が上層液21によって阻止される。従って、集合導体10の端末処理方法において、複数本の電線11の樹脂被覆11b端の位置を集合導体10の長さ方向で揃えることができ、また、このとき導体線11aに影響が及ばず、さらに、集合導体10の撚り形態が崩れるのを防止することができる。
【0061】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、被覆除去処理液20を上層液21と下層液22との2層構造の液としたが3層以上の構造の液としてもよい。上層液21の上に上層液21の揮発を抑える蓋としての液を載せてもよいし、上層液21と下層液22との間に中間層の液を入れてもよい。
【0062】
上記実施形態では、複数本の電線11が一方向に撚られた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、集合導体10の内層を構成する電線11の撚り方向と外層を構成する電線11の撚り方向とが逆方向である構成であってもよい。つまり、一つの集合導体10を構成する電線11の撚りの方向にS撚り及びZ撚りの両方が含まれていてもよい。例えば、図1に示す4×4の16本の電線11で構成された集合導体10について、集合導体10の横断面において中心にある2×2の4本の電線11を先に撚り合わせて内層とし、その内層を撚りの中心として、内層の外周を囲むようにして12本の電線11を撚り合わせて外層とする場合において、上記実施形態のように内層を構成する電線11の撚り方向と外層を構成する電線11の撚り方向を同一としてもよく、また、内層を構成する電線11の撚り方向と外層を構成する電線11の撚り方向を異ならせてもよい。
【0063】
上記実施形態では、圧縮成形加工が施されて横断面が四角形に形成された集合導体10としたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、圧縮成形加工が施され且つ横断面が円形に形成された集合導体10であってもよく、また、その他の多角形形状(3つ以上の辺と同数の頂角とで構成されたものの他、頂角部分が丸みを帯びた形状に形成されたいわゆる略多辺形も含む)や楕円等の偏平形状であってもよい。横断面が多角形形状や偏平形状に形成された集合導体の場合、一旦解撚した場合、再集束する際に、解撚履歴が形成されやすいため、かかる形状に形成された横断面を有する集合導体の場合には、上記実施形態の端末処理方法を用いることにより、撚り形態が崩れるのを防止する効果を特に顕著に得ることができる。
【0064】
上記実施形態では、圧縮成形加工が施された集合導体10としたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、圧縮成形加工が施されていない集合導体10であってもよい。
【0065】
上記実施形態では、図1(a)において、4×4に配置された16本の電線11がそれぞれ圧縮成形により横断面が四角形に形成された形態を示したが、特にこれに限定されるものではなく、複数本の電線11の配置によっては、図6に示すように、圧縮成形により電線11が五角形状や六角形状の横断面を有していてもよい。また、横断面形状の異なる電線11が混在していてもよい。
【0066】
上記実施形態では、集合導体10の先端部分10aの樹脂被覆11bの除去した導体線露出構造としたが、特にこれに限定されるものではなく、両側部分が上層液21に浸かり且つそれらの間の中間部分が下層液22に浸かるように集合導体10を被覆除去処理液20に浸漬することにより、集合導体10の中間部分の樹脂被覆11bの除去した導体線露出構造であってもよい。
【0067】
上記実施形態では、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以上の有機溶剤として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンとNMPの混合溶剤を用いているが、特にこれらに限定されるものではなく、トリエタノールアミンやトリイソプロパノールアミン等とNMP等の混合溶剤であってもよい。
【0068】
上記実施形態では、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以上の水溶液として水酸化カリウム水溶液を用いているが、特にこれに限定されるものではなく、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化バリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液などを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は被覆線材の集合体(例えば集合導体)の線材露出方法、線材露出構造及び被覆除去処理液について有用である。
【符号の説明】
【0070】
10 集合導体
10a 先端部分(一定長さ部分)
11 電線
11a 導体線
11b 樹脂被覆
20 被覆除去処理液
21 上層液
22 下層液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、導体線とそれを被覆する樹脂被覆とを有する複数本の電線が撚られた集合導体から、前記樹脂被覆の一部を除去して前記導体線の一部を露出させる導体線露出方法であって、
前記樹脂被覆に対して貧溶媒である上層液及び該樹脂被覆を膨潤又は溶解させる溶媒である下層液に層が分かれた被覆除去処理液を用意するステップと、
前記被覆除去処理液に、前記集合導体を、撚られた状態を保持して、一定長さ部分のみが下層液に浸かるように上層液を介して浸漬し、下層液に浸漬した集合導体の前記一定長さ部分において複数本の電線の全てについて樹脂被覆を除去して導体線を露出させるステップと
を含み、
前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の前記上層液の粘度は前記下層液の粘度の0.5倍以上7倍以下であり、
前記下層液は、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以上の液であり、
樹脂被覆を除去して導体線を露出させる前記ステップでは、前記被覆除去処理液を60℃以上にして樹脂被覆を除去する、導体線露出方法。
【請求項2】
請求項1に記載された導体線露出方法において、
前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の前記上層液の表面張力は前記下層液の表面張力の0.51倍よりも大きい、導体線露出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された導体線露出方法において、
前記集合導体は、横断面が四角形に形成されている、導体線露出方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載された導体線露出方法において、
前記集合導体における下層液に浸漬する一定長さ部分が先端部分である、導体線露出方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載された導体線露出方法において、
下層液に浸漬した集合導体の前記一定長さ部分において樹脂被覆を膨潤させ、その膨潤した樹脂被覆を電線から除去する、導体線露出方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載された導体線露出方法において、
前記電線は、前記樹脂被覆がポリウレタン樹脂により形成されているエナメル線である、導体線露出方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載された導体線露出方法において、
前記上層液及び前記下層液のSP値差が2.0以上である、導体線露出方法。
【請求項8】
各々、導体線とそれを被覆する樹脂被覆とを有する複数本の電線が撚られた集合導体から、前記樹脂被覆の一部を除去して前記導体線の一部を露出させる被覆除去処理液であって、
前記樹脂被覆に対して貧溶媒である上層液と、該樹脂被覆を膨潤又は溶解させる溶媒である下層液とを有していて、少なくとも2層に分かれており、
前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の前記上層液の粘度は前記下層液の粘度の0.5倍以上7倍以下であり、
前記下層液は、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以上の液であり、
集合導体が、60℃以上の液温において一定長さ部分のみが下層液に浸かるように上層液を介して浸漬されて、下層液に浸漬された集合導体の前記一定長さ部分において複数本の電線の全てについて樹脂被覆が除去されて導体線が露出される、被覆除去処理液。
【請求項9】
請求項8に記載された被覆除去処理液において、
前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の前記上層液の表面張力は前記下層液の表面張力の0.51倍よりも大きい、被覆除去処理液。
【請求項10】
請求項8又は9に記載された被覆除去処理液において、
前記電線は、前記樹脂被覆がポリウレタン樹脂により形成されているエナメル線である、被覆除去処理液。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一項に記載された導体線露出方法において、
前記上層液及び前記下層液のSP値差が2.0以上である、被覆除去処理液。
【請求項12】
各々、導体線とそれを被覆する樹脂被覆とを有する複数本の電線が撚られた集合導体の導体線露出構造であって、
前記樹脂被覆に対して貧溶媒である上層液及び該樹脂被覆を膨潤又は溶解させる溶媒である下層液に層が分かれた被覆除去処理液に、集合導体が、撚られた状態を保持して、一定長さ部分のみが60℃以上の液温において下層液に浸かるように上層液を介して浸漬され、下層液に浸漬された集合導体の前記一定長さ部分において複数本の電線の全てについて樹脂被覆が除去されて導体線が露出し、
前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の、前記上層液の粘度は前記下層液の粘度の0.5倍以上7倍以下であり、前記下層液は、100gを1Lの水に溶解させたときのpHが9以上の液である、集合導体の導体線露出構造。
【請求項13】
請求項12に記載された集合導体の導体線露出構造であって、
前記被覆除去処理液に前記集合導体を浸漬させる際の、前記上層液の表面張力は前記下層液の表面張力の0.51倍よりも大きい、集合導体の導体線露出構造。
【請求項14】
請求項12又は13に記載された集合導体の導体線露出構造であって、
集合導体の前記一定長さ部分は、前記複数本の電線の全てについて樹脂被覆が除去されていると共に、該複数本の電線の樹脂被覆端の位置が集合導体の長さ方向で揃っており、且つ前記樹脂被覆への熱影響が無く、解撚履歴を有さない、集合導体の導体線露出構造。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項に記載された集合導体の導体線露出構造であって、
前記電線は、前記樹脂被覆がポリウレタン樹脂により形成されているエナメル線である、集合導体の導体線露出構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27071(P2013−27071A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156617(P2011−156617)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】