説明

導光板ユニットの製造方法及びこの導光板ユニットを備える照明装置の製造方法

【課題】導光板ユニットから照射される光の強さを効率的に強くできるように導光板を重ねる枚数が設定された導光板ユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】導光板ユニットの製造方法は、検出ステップと、決定ステップと、を含む。前記検出ステップでは、重ねた導光板の厚みの合計が予め設定された設定厚みとなることを条件として、前記導光板の厚みと導光板を重ねる枚数を変える。これによって、前記導光板を重ねる枚数に応じて変化する導光板ユニット全体のドット総数と、当該導光板ユニットから出射される出射エネルギー総和と、の関係を調べる。そして、出射エネルギー総和がそれ以上強くならなくなるドット総数を飽和点として検出する。前記決定ステップでは、前記飽和点に基づいて、導光板の厚み及び導光板を重ねる枚数を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、反射部が複数配置された導光板を厚み方向に重ねて構成される導光板ユニットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、LEDを光源として用いる照明装置において、導光板を介して光源の光を目的の方向に照射する構成が知られている。照明装置に用いられる導光板には、微細な形状の複数の反射部を配置し、これらの反射部によって導光板に照射された光を目的の方向により多く反射するものがある。この種の導光板を備えた照明装置を開示するものとして、例えば特許文献1がある。特許文献1には、反射部が複数形成された導光板を用いた照明装置をバックライトとして採用した液晶表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−149640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導光板を備える照明装置の照射光の輝度を向上させる方法として、導光板に形成される反射部の数を増やすことが考えられる。しかし、特許文献1に示す構成では、配置できる反射部の数にも限界がある。そこで、複数の導光板を厚み方向に重ねて導光板ユニットを構成する方法が考えられる。導光板を重ねることで、反射部を配置する箇所を導光板ユニットの厚み方向に拡張することができる。
【0005】
本願発明者が実験を行ったところ、導光板を複数枚重ねた構成の導光板ユニットの方が、導光板1枚の構成よりも出射エネルギーが大きくなることがわかった。一方で、更に実験を進めた結果、導光板の厚みや反射部の数によっては、導光板を重ねる枚数を増やしても出射エネルギーが単純に増加しない場合があることが明らかになった。より具体的には、導光板ユニットの厚みを変えて出射エネルギーを調べたところ、導光板を3枚重ねた構成の方が、導光板を2枚重ねた構成よりも出射エネルギーが大きくなるケースと小さくなるケースとがあったのである。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、導光板ユニットから照射される光の強さを効率的に強くできるように導光板を重ねる枚数が設定された導光板ユニットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、反射部が複数配置された導光板を厚み方向に重ねて構成される導光板ユニットの製造方法において、以下のステップを含む製造方法が提供される。即ち、導光板ユニットの製造方法は、検出ステップと、決定ステップと、を含む。前記検出ステップでは、重ねた導光板の厚みの合計が予め設定された設定厚みとなることを条件として、前記導光板の厚みと前記導光板を重ねる枚数を変える。これによって、前記導光板を重ねる枚数に応じて変化する導光板ユニット全体の反射部総数と、当該導光板ユニットから出射される光の強さと、の関係を調べる。そして、光の強さがそれ以上強くならなくなる反射部総数を飽和点として検出する。前記決定ステップでは、前記飽和点に基づいて導光板の厚み及び前記導光板を重ねる枚数を決定する。
【0009】
これにより、厚みが予め決まっている導光板ユニットにおいて、光の強さを効率的に大きくできる導光板の厚み及び枚数で当該導光板ユニットを構成できる。従って、十分な光の強さを確保しつつ必要な導光板の枚数を低減し、導光板ユニットの低コスト化の実現に寄与できる。
【0010】
前記の導光板ユニットの製造方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、導光板ユニットの製造方法は、関数決定ステップを含む。前記関数決定ステップでは、導光板1枚あたりに形成される反射部の数を変えて飽和点を複数検出し、導光板1枚あたりに形成される反射部の数と飽和点との関係を示す関数を決定する。また、前記決定ステップでは、前記関数に基づいて算出した飽和点に基づいて前記導光板を重ねる枚数を決定する。
【0011】
これにより、関数を予め決定しておくことで、導光板1枚あたりに配置される反射部の数が異なる場合でも、前記関数に基づいて飽和点を検出することができる。
【0012】
前記の導光板ユニットの製造方法においては、前記関数は、一次関数であることが好ましい。
【0013】
これにより、計算が容易な一次関数を用いて飽和点を算出することができる。また、大面積の導光板ユニットを設計する場合でも、飽和点を精度良く推測することができ、反射部総数を容易かつ正確に最適化できる。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、反射部が複数配置された導光板を厚み方向に重ねて構成される導光板ユニットを備える照明装置の製造方法において、以下のステップを含む製造方法が提供される。即ち、照明装置の製造方法は、検出ステップと、決定ステップと、を含む。前記検出ステップでは、重ねた導光板の厚みの合計が予め設定された設定厚みとなることを条件として、前記導光板の厚みと導光板を重ねる枚数を変える。これによって、前記導光板を重ねる枚数に応じて変化する導光板ユニット全体の反射部総数と、当該導光板ユニットから出射される光の強さと、の関係を調べる。そして、光の強さがそれ以上強くならなくなる反射部総数を飽和点として検出する。前記決定ステップでは、前記飽和点に基づいて導光板の厚み及び前記導光板を重ねる枚数を決定する。
【0015】
これにより、厚みが予め決まっている導光板ユニットにおいて、光の強さを効率的に大きくできる導光板の厚み及び枚数で当該導光板ユニットを構成できる。従って、十分な光の強さを確保しながら必要な導光板の枚数を低減し、照明装置の低コスト化の実現に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の製造方法を用いて製造された照明装置の構成を示した分解斜視図。
【図2】図2(a)は、導光板ユニットの内部の様子を模式的に示した側面図。図2(b)は、凹状反射部に光が衝突して反射する様子を示した模式図。
【図3】飽和点を検出するためのシミュレーション条件を説明するための説明図。
【図4】ドット総数と出射エネルギー総和の関係を示したグラフ。
【図5】ドット総数と出射エネルギー総和の関係を示したグラフ。
【図6】飽和点と配置エリア面積の関係を示したグラフ。
【図7】飽和点と配置エリア面積の関係を示したグラフ。
【図8】飽和点と配置エリア面積の関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の製造方法を用いて製造された照明装置10の構成を示す分解斜視図である。図2(a)は、照明装置10が備える導光板ユニット30の内部の様子を模式的に示した側面図である。図2(b)は、凹状反射部60に光が衝突して反射する様子を示した模式図である。
【0018】
まず、図1を参照して、本発明の製造方法を用いて製造された照明装置10について説明する。図1に示すように、照明装置10は、ケーシング21と、LED22と、導光板ユニット30と、反射板23と、を備える。
【0019】
ケーシング21は、照明装置10の各部を保持するためのものであり、このケーシング21によって、LED22と、導光板ユニット30と、反射板23と、が保持されている。
【0020】
LED22は、照明装置10の光源であり、導光板ユニット30に光を照射するためのものである。本実施形態の照明装置10は、導光板ユニット30を介してLED22の光を目的の方向に照射するように構成されている。図2(a)に示すように、LED22は、導光板ユニット30の側面に対面するように前記ケーシング21に固定されている。本実施形態においては、6個のLED22が、導光板ユニット30を構成する長方形状の導光板50の短手方向に並列配置されている。
【0021】
導光板ユニット30は、複数の導光板50を厚み方向に重ねて構成されており、LED22の光を目的の方向に照射するための導光部材である。図1に示すように、本実施形態の導光板ユニット30は、3枚の導光板50a,50b,50cによって構成されている。導光板50aは、厚み方向の一側の面が外側に露出しており、この導光板50aから照射される光が照明装置10の光になる。導光板50bは、導光板50aと導光板50cとの間に配置されている。導光板50cは、出射面62と反対側の面が反射板23と対面するようにケーシング21に取り付けられており、この導光板50cの上に、導光板50b及び導光板50aが配置されている。なお、本実施形態の導光板ユニット30は、隣接する導光板50の間に空気層が介在するように構成されている。
【0022】
導光板ユニット30を構成するそれぞれの導光板50は、LED22の光が透過可能な適宜の樹脂等によって平板状に構成されており、入射面61と、出射面62と、凹状反射部60と、を備えている。
【0023】
入射面61は、LED22からの光が導光板50の内部に入射するときに通過する面である。本実施形態において、入射面61は、導光板50が有する端面のうち1つとされている。出射面62は、導光板50の内部に入射した光が外部に出射するときに通過する面であり、導光板50の厚み方向一側の平面部分に形成されている。本実施形態において、入射面61と出射面62は向きが直交するように配置されている。
【0024】
凹状反射部60は、導光板50の内部に入射した光を出射面62に向けて反射するためのものである。図2(a)に示すように、凹状反射部60は、導光板50において出射面62の反対側の面(底面)に複数形成されている。本実施形態の凹状反射部60は、その底面の直径が55μm、高さが30μm、頂角が70°の円錐台形状となるように形成されている。凹状反射部60はフォトリソグラフィ等を用いて形成されている。
【0025】
反射板23は、導光板50の外側に漏れ出ようとする光を導光板50の内側に戻すためのものである。図1に示すように、反射板23は、導光板ユニット30の底面と対面するようにケーシング21に取り付けられる。この反射板23は、アルミニウムを適宜の樹脂に蒸着させて構成されており、導光板ユニット30と対面する面が鏡面加工されている。なお、反射板23と同じ材料で構成されたものを入射面61以外の導光板ユニット30の端面に形成してもよい。
【0026】
この構成で、LED22が点灯すると、LED22からの光が導光板50の内部に入射面61を通過して進入する。内部に進入した光は、導光板50の内部で反射を繰り返す。図2(b)に示すように、導光板50の内部で反射を繰り返す過程で、凹状反射部60の傾斜面に衝突した光は、その傾斜によって出射面62側へ導かれる。この反射光は、反射によって進行方向が出射面62に直交する方向に近くなっており、導光板50の内部に留まることなく(出射面62で反射することなく)、当該導光板50の外部へ放射される。
【0027】
本実施形態の導光板ユニット30のように、複数の導光板50を重ねた構成では、それぞれの導光板50の内部で上述した現象が生じる。即ち、それぞれの導光板50に入射した光は、凹状反射部60によってそれぞれの出射面62から当該導光板50の外部に放出されるのである。
【0028】
例えば、導光板ユニット30の照射面と最も離れている導光板50c(図2(a)において最も下側の導光板50c)においてLED22から入射した光は、反射を繰り返した後に当該導光板50cの出射面62を通過して、更に導光板50b及び導光板50aを通過して放射される。また、導光板50bにおいてLED22から入射した光は、凹状反射部60に反射して出射面62を通過し、更に導光板50aを通過して放射される。導光板50aにおいてLED22から入射した光は、凹状反射部60に反射して出射面62を通過して放射される。このように、それぞれの導光板50a,50b,50cの光が導光板50aの出射面62から導光板ユニット30の外部へ放射され、この光が照明装置10の照射光となるのである。
【0029】
以上に説明したように、導光板ユニット30は、凹状反射部60が形成される面を階層状に備えていると表現することもできる(図2(a)を参照)。このように、導光板ユニット30の厚み方向のスペースを活用して凹状反射部60を配置することによって、導光板ユニット30の端面から内部へ照射される光を効率的に導光板50aの出射面62側に集めることができるようになっているのである。
【0030】
次に、図3から図8までを参照して、本実施形態の照明装置10に用いられる導光板ユニット30の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、導光板ユニット30全体が有する凹状反射部60の総数のことをドット総数と称することがある。このドット総数は、導光板ユニット30を構成する各導光板50に形成される凹状反射部60の数を合計したものである。また、導光板50を重ねる枚数のことを積層枚数と称することがある。
【0031】
本実施形態のように、複数の導光板50を重ねて導光板ユニット30を構成すると、凹状反射部60を配置できる延べ面積を増やすことができ、導光板ユニット30が有する凹状反射部60の総数を増加させることができる。しかし、導光板50の枚数の増大は、照明装置10の部品コストの増加に繋がる。また、本願発明者の実験によれば、重ねる導光板50の枚数を増やして前記ドット総数を増加させても、輝度がそれ以上向上しなくなる点(飽和点)が存在する。即ち、導光板ユニットのドット総数が飽和点を超えた場合、飽和点を超える前の導光板ユニットよりも輝度が低下してしまうのである。
【0032】
そこで、本実施形態の製造方法では、飽和点を算出するための飽和点算出関数を予め求め、この飽和点算出関数によって算出した飽和点に基づいて導光板ユニット30を設計する方法を採用している。
【0033】
まず、図3を参照して、シミュレーションプログラムを用いた飽和点の検出について説明する。シミュレーションプログラムは、所定の条件が設定された導光板ユニットにLED22を照射したときの出射エネルギー総和をシミュレーション解析するプログラムである。このシミュレーションでは、導光板71の出射面の面積、導光板71の厚み、凹状反射部60の形状、凹状反射部60が配置される配置エリア72、導光板ユニットの設定厚み、導光板の積層枚数等がシミュレーション条件として設定される。
【0034】
上記の導光板ユニットの設定厚みは、導光板の厚みの合計であって、照明装置10のサイズ等を考慮して定められる。ここで、本シミュレーションにおいて、1つの導光板ユニットを構成する導光板71は、同一の構成のものを用いる。従って、それぞれの導光板71の厚みは、導光板71を重ねる枚数に反比例する。
【0035】
図3(a)には、設定厚みが2mmである導光板ユニットを導光板で構成する例が示されている。1枚の導光板で導光板ユニットを構成する場合は、その導光板の厚み(導光板に設定される厚み)は導光板ユニットの厚みと同様であり、2mmとなる。一方、複数の導光板を重ねて導光板ユニットを構成する場合は、導光板ユニットの設定厚みを導光板の枚数で割った値が、各導光板の厚みとして設定される。例えば、導光板ユニットを構成する導光板が2枚、4枚の場合は、導光板に設定される厚みはそれぞれ1mm、0.5mmとなる。このように、導光板71の厚みは、導光板ユニットに設定される設定厚み及び積層枚数に基づいて設定される。
【0036】
次に、シミュレーションで用いられる導光板71の条件について説明する。図3(b)に示すように、導光板71は、30mm×30mmの出射面を有する矩形状の板として設定されている。この導光板71の厚みは、前述したように、導光板ユニット30の設定厚み及び積層枚数に基づいて設定される。
【0037】
凹状反射部60の形状は、底面の直径が55μm、高さが30μm、頂角が70°の円錐台形状に設定されている。シミュレーション上の設定では、この凹状反射部60は、導光板71の中央部分に適宜設定された矩形状の配置エリア72にだけ形成される。即ち、このシミュレーションでは、配置エリア72にだけ凹状反射部60が形成されているものとし、その他の部分には凹状反射部60が形成されていないものとする。なお、このシミュレーションにおいて、配置エリア72の凹状反射部60の配置密度は一定である。従って、凹状反射部60の数は配置エリア72の大きさと比例しており、このシミュレーションにおいては、配置エリア72の大きさは、1枚の導光板71に形成される凹状反射部60の数を実質的に表しているということができる。
【0038】
このシミュレーションでは、配置エリア72の面積を、9×9mm2、12.7×12.7mm2、18×18mm2、22×22mm2の4パターンに設定し、それぞれの場合ごとに導光板71の積層枚数を2枚、4枚、6枚に変えて解析を行った。また、このシミュレーションでは、1つの導光板ユニットには同じ構成の導光板71を用いている。従って、導光板ユニットが有する凹状反射部60のドット総数は、配置エリア72の面積が同じ場合、積層枚数に比例することになる。なお、比較のため、設定厚みと同じ厚みの導光板(1枚の導光板のみ)についてもシミュレーションを行っている。
【0039】
以上のように条件を設定したシミュレーションの解析結果を示したものが図4及び図5に示すグラフである。図4及び図5のグラフは、ドット総数と出射エネルギー総和(W/m2)との関係を設定厚みごとに示したものである。図4(a)は、導光板ユニットの設定厚みを1mmに設定したときの解析結果である。また、以下同様に、図4(b)は設定厚みを2mmに、図4(c)は設定厚みを3mmに、図5(d)は設定厚みを5mmに、図5(e)は設定厚みを10mmにそれぞれ設定したときの解析結果である。
【0040】
図4及び図5の複数のグラフが示すように、複数の導光板で導光板ユニットを構成した方が、導光部材が1枚の導光板で構成されている場合に比べて出射エネルギー総和が大きくなっていることが判る。また、積層枚数を増やしていくと、積層枚数の増加に伴ってそれまで増加していた出射エネルギーが、あるドット総数を超えたところで徐々に低下する傾向を示しているものが多いことがわかる。図4(b)のグラフの配置エリア72の面積が18×18mm2に設定されている場合を例に挙げて説明する。この例では、積層枚数が2枚になったときは、導光板が1枚の構成に比べて出射エネルギー総和が増加しているものの、積層枚数が4枚、6枚と増えるにつれて、出射エネルギー総和が徐々に低下する傾向を示している。
【0041】
このシミュレーションの解析結果に基づいて、出射エネルギー総和が最も高いときのドット総数を飽和点に設定する。図4(b)を参照しながら、配置エリア72の面積が22×22mm2の場合を例として飽和点の設定について説明する。まず、図4(b)に示すように、積層枚数ごとに解析された出射エネルギー総和の値を適宜の関数でフィッティングする。そして、この関数の最大値を求めるとともに、その最大値が得られるドット総数を飽和点として求める。この例では、ドット総数が200,000個のとき(このドット総数は、積層枚数が2枚と3枚の中間部分に相当する)に出射エネルギー総和が最大となっており、このドット総数が飽和点に設定されることになる。以下同様に、このシミュレーションの条件の範囲で出射エネルギー総和が最も高いときのドット総数を飽和点に設定する。飽和点は、図4及び図5の解析結果に基づいて、配置エリア72と、設定厚みごとに検出することができる。
【0042】
次に、このようにして得ることができた飽和点と配置エリア72の関係について調べる。図6、図7及び図8は、配置エリア72の面積と飽和点(飽和点のときのドット総数)の関係を設定厚みごとにプロットしたグラフである。図6(a)は設定厚みを1mmに設定したときのものであり、以下同様に、図6(b)は設定厚みを2mmに、図7(c)は設定厚みを3mmに、図7(d)は設定厚みを5mmに、図8(e)は設定厚みを10mmに設定したときのものである。
【0043】
図6から図8までのグラフに示されるように、飽和点は、配置エリア72の拡大とともに、殆ど同じ割合で大きくなっている。本発明では、この飽和点の傾向に基づいて飽和点算出関数を導く。具体的には、飽和点をyとし、配置エリアの面積をxとして、y=ax+bで表現される関数をデータにフィッティングさせることで、飽和点算出関数を導く。定数a及びbは、最小二乗法等を用いて計算することができる。また、飽和点算出関数は、図6から図8までに示されるデータに基づいて設定厚みごとに導き出すことができる。
【0044】
上述した照明装置10の導光板ユニット30を設計する場合は、導光板ユニット30に設定された厚みと同じ設定厚みの飽和点算出関数を用いて飽和点を算出する。例えば、照明装置10の構成が決まり、導光板ユニット30の厚み及び出射面62の面積等が定まった場合は、定まった厚みに応じて飽和点算出関数を選択する。例えば、照明装置10に用いられる導光板ユニット30の厚みが3mmに定まった場合は、設定厚みが3mmのときの解析結果に基づいて導かれた飽和点算出関数を用いる(図7(c)を参照)。
【0045】
飽和点算出関数が選択されると、この飽和点算出関数に、配置エリア72の面積として出射面62の面積を代入し、飽和点を求める。また、この作業と並行して、1枚の導光板50に形成される凹状反射部60の合計である反射部形成数を算出する。この反射部形成数は、出射面62の面積と、凹状反射部60の配置密度と、によって算出することができる。なお、この例では、凹状反射部60の配置密度と、前記シミュレーションで設定した配置エリア72の凹状反射部60の密度と、が同じであるとする。
【0046】
次に、積層枚数を決定するための参考値を算出する。この参考値は、飽和点(ドット総数)を前記反射部形成数(導光板1枚当たりに形成される反射部の合計数)で割ることで得られる値であり、設定した条件における積層枚数の最適値を示すものである。導光板の積層枚数は、この参考値に基づいて決定する。例えば、参考値が3.3のときは、積層枚数を3枚又は4枚に設定するといった具合である。
【0047】
このように、設計される導光板ユニット30のドット総数が飽和点に近づくように導光板ユニット30の積層枚数を決定することで、少ない積層枚数で、出射エネルギーを効果的に増大させることができる。なお、生産性の観点からは積層枚数が少なくなるように導光板ユニット30を設計することが好ましい。例えば、前記参考値の端数は切り捨てて積層枚数を決定したり、又は、少ない積層枚数で飽和点に近づくように各積層板の凹状反射部60の数を増やす等の調整を行って導光板ユニット30を設計することが考えられる。このようにして、積層枚数が3枚に設定されたものが、上記照明装置10に用いられる導光板ユニット30である。
【0048】
以上に示したように、本実施形態の照明装置10に用いられる導光板ユニット30の製造方法は、検出ステップと、決定ステップと、を含む。前記検出ステップでは、重ねた導光板の厚みの合計が予め設定された設定厚みとなることを条件として、前記導光板の厚みと積層枚数を変える。これによって、前記積層枚数に応じて変化する導光板ユニット全体のドット総数(反射部総数)と、当該導光板ユニットから出射される出射エネルギー総和(光の強さ)と、の関係を調べる。そして、出射エネルギー総和がそれ以上強くならなくなるドット総数を飽和点として検出する。前記決定ステップでは、前記飽和点に基づいて導光板の厚み及び積層枚数を決定する。
【0049】
これにより、厚みが予め決まっている導光板ユニット30において、光の強さを効率的に大きくできる導光板50の厚み及び枚数で当該導光板ユニット30を構成できる。従って、十分な光の強さを確保しつつ導光板50の枚数を低減し、導光板ユニット30の低コスト化の実現に寄与できる。
【0050】
また、本実施形態の導光板ユニット30の製造方法は、関数決定ステップを含む。前記関数決定ステップでは、凹状反射部60が形成される配置エリア72の面積(1枚の導光板50に形成される凹状反射部60の数)を変えて飽和点を複数検出し、配置エリア72と飽和点との関係を示す飽和点算出関数を決定する。また、前記決定ステップでは、前記飽和点算出関数に基づいて算出した飽和点に基づいて前記積層枚数を決定する。
【0051】
これにより、飽和点算出関数を予め決定しておくことで、導光板50の凹状反射部60が形成される面積(1枚の導光板50に形成される凹状反射部60の数)が異なる場合でも、飽和点算出関数に基づいて飽和点を検出することができる。
【0052】
また、本実施形態の導光板ユニットの製造方法においては、前記飽和点算出関数は一次関数である。
【0053】
これにより、計算が容易な一次関数を用いて飽和点を算出することができる。また、大面積の導光板ユニットを設計する場合でも、飽和点を精度良く推測することができ、ドット総数(反射部総数)を容易かつ正確に最適化できる。
【0054】
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0055】
上記実施形態の照明装置10では、凹状反射部60が出射面62と反対側の面に形成される構成であるが、出射面62側に凹状反射部60を形成する構成としてもよい。また、出射面62と、出射面62の反対側の面と、の両方に凹状反射部60を形成することもできる。何れの場合も、シミュレーションは、そのような反射部の配置に対応させた条件を設定して行うことが好ましい。
【0056】
また、上記実施形態では、凹状反射部60は、円錐台形状になるように構成されているが、凹状反射部60を円錐形状や円柱形状とすることもできる。この場合においても、シミュレーションは、そのような凹状反射部の形状を設定した上で行うことが好ましい。
【0057】
また、上記実施形態では、シミュレーションによって飽和点を求めているが、実際に計測を行い、実測値に基づいて飽和点を求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 照明装置
22 LED(光源)
30 導光板ユニット
50 導光板
60 凹状反射部(反射部)
71 導光板
72 配置エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射部が複数配置された導光板を厚み方向に重ねて構成される導光板ユニットの製造方法において、
重ねた導光板の厚みの合計が予め設定された設定厚みとなることを条件として、前記導光板の厚みと前記導光板を重ねる枚数を変えることで、
前記導光板を重ねる枚数に応じて変化する導光板ユニット全体の反射部総数と、
当該導光板ユニットから出射される光の強さと、
の関係を調べ、
光の強さがそれ以上強くならなくなる反射部総数を飽和点として検出する検出ステップと、
前記飽和点に基づいて導光板の厚み及び導光板を重ねる枚数を決定する決定ステップと、
を含むことを特徴とする導光板ユニットの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の導光板ユニットの製造方法であって、
導光板1枚あたりに形成される反射部の数を変えて飽和点を複数検出し、導光板1枚あたりに形成される反射部の数と飽和点との関係を示す関数を決定する関数決定ステップを含み、
前記決定ステップでは、前記関数に基づいて算出した飽和点に基づいて前記導光板を重ねる枚数を決定することを特徴とする導光板ユニットの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の導光板ユニットの製造方法であって、
前記関数は、一次関数であることを特徴とする導光板ユニットの製造方法。
【請求項4】
反射部が複数配置された導光板を厚み方向に重ねて構成される導光板ユニットを備える照明装置の製造方法において、
重ねた導光板の厚みの合計が予め設定された設定厚みとなることを条件として、前記導光板の厚みと導光板を重ねる枚数を変えることで、
前記導光板を重ねる枚数に応じて変化する導光板ユニット全体の反射部総数と、
当該導光板ユニットから出射される光の強さと、
の関係を調べ、
光の強さがそれ以上強くならなくなる反射部総数を飽和点として検出する検出ステップと、
前記飽和点に基づいて導光板の厚み及び導光板を重ねる枚数を決定する決定ステップと、
を含むことを特徴とする照明装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−159536(P2011−159536A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21199(P2010−21199)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(505442819)株式会社ナノクリエート (11)
【Fターム(参考)】