説明

導光板及びこれを備える虚像表示装置

【課題】画像の解像度低下を抑制できる虚像表示装置用の導光板及びこれを組み込んだ虚像表示装置を提供すること。
【解決手段】各反射ユニット23cのサイズが、導光部での全反射角度の状態に関連するように画像取出部23内でZ方向に沿って変化している。これにより、全ての反射ユニット23cにおいて、入射する画像光の有効光束幅を十分に確保することが可能となる。従って、反射ユニット23cでの反射に起因する画像光の劣化を回避でき、結果として、射出される虚像光による画像の解像度低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等に用いられる導光板及びこれを組み込んだ虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの映像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されている。このような虚像表示装置用の導光板として、全反射を利用して映像光を導くとともに、導光板の主面に対して所定角度をなして互いに平行に配置される複数の部分反射面にて映像光を反射させ導光板から取り出すことによって、映像光を観察者の網膜に到達させるものが知られている(特許文献1,2参照)。導光板に設ける複数の部分反射面は、例えば断面鋸歯状の部分に反射層を形成したものとできる(特許文献2の図5等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−536102号公報
【特許文献2】特開2004−157520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように平行な複数の部分反射面を形成した導光板から光束を取り出す場合において、各光束について導光板内での全反射角度の違いから、導光板の導光方向に沿って配置される部分反射面ごとに取り出せる光束の幅に差が生じるので、画像の解像度が局所的に低下する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、解像度の局所的低下を抑制できる虚像表示装置用の導光板及びこれを組み込んだ虚像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る導光板は、(a)画像光を内部に取り込む光入射部と、(b)対向して延びる第1及び第2の全反射面を有し、光入射部から取り込まれた画像光を第1及び第2の全反射面での全反射により導く導光部と、(c)所定の配列方向に配列される複数の反射ユニットを有し導光部を経て入射する画像光を複数の反射ユニットでの光路の折り曲げによって外部へ取出し可能にする画像取出部と、(d)画像取出部を経た画像光を外部に射出する光射出部と、を備える導光板であって、(e)複数の反射ユニットの反射面形状が、当該複数の反射ユニットで折り曲げられる画像光の導光部における全反射角度の大きさに応じて、画像光の解像度低下を抑制するように画像取出部内で所定の配列方向に沿って変化している。ここで、全反射とは、全ての光が内面で反射されて伝達される場合のみでなく、全反射条件が満たされる面上にミラーコートや、半透過のアルミ膜によるハーフミラー膜等を施して反射する場合等も含まれるものとする。また、光射出部とは、画像取出部で光路を折り曲げられた画像光を導光板の外部に射出する光射出面又は当該光射出面を含む部分を言う。また、複数の反射ユニットの反射面形状の変化については、例えば複数の反射ユニット間でサイズが異なることが含まれる。
【0007】
上記導光板において、各反射ユニットの反射面形状が、導光部での全反射角度の状態に応じて画像取出部内で解像度低下を抑制するように変化しているので、各反射ユニットにおいて、サイズを変化させること等の反射面形状の調整によって解像度が過度に低下することを防止できる。特に反射ユニットのサイズを配列方向に沿って変化させる場合、入射する画像光のうち最終的に観察者に認識されうる有効な成分の光束幅である有効光束幅を反射面での拡散又は散乱を前提としつつ十分に広く保つことができる。従って、特定の反射ユニットでの反射に起因する画像光の劣化を回避でき、結果として、射出される虚像光による画像について局所的な解像度低下を確実に抑制できる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、画像取出部は、全反射角度が相対的に大きい画像光に対して光路の折り曲げを行う第1の反射ユニットと、全反射角度が相対的に小さい画像光に対して光路の折り曲げを行う第2の反射ユニットとを有し、第1の反射ユニットの反射面が、第2の反射ユニットの反射面よりも大きい。この場合、有効光束幅を確保しにくいといった全反射角度が相対的に大きい画像光について、これに対応する第1の反射ユニットの反射面を比較的大きくすることで、十分な有効光束幅を確保できる。
【0009】
本発明のさらに別の側面では、画像取出部にそれぞれ異なる角度で複数の反射ユニットのいずれかに入射する画像光の光束の入射角度をそれぞれα、αとし、当該画像光の光束の入射する反射ユニットのピッチをそれぞれd、dとすると、α<αである場合に、d≦dとなっている。この場合、反射ユニットがこれへの光束の入射角度の変化に対応したピッチを有することで、各画像光の有効光束幅を確保できる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、複数の反射ユニットを構成する各反射ユニットが、第1の反射面と第1の反射面に対して所定角度をなす第2の反射面とでそれぞれ構成され、導光部にて導かれた画像光を第1の反射面により反射するとともに第2の反射面により第1の反射面で反射された画像光をさらに反射して光路の折り曲げを行う。この場合、第1の反射面と第2の反射面との2段階の反射で画像光の取出しが可能となる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、複数の反射ユニットのうち光入射部から遠い反光入射部側に位置する反射ユニットのサイズが、光入射部側に位置する反射ユニットのサイズよりも大きい。この場合、反射ユニットのサイズの違いにより、反光入射部側に位置する反射ユニットから取り出される光束の有効光束幅を、光入射部側に位置する反射ユニットから取り出される光束の有効光束幅と同一又は近似したものにすることができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、複数の反射ユニットのうち光入射部から遠い反光入射部側に位置する反射ユニットのピッチが、光入射部側に位置する反射ユニットのピッチよりも大きい。この場合、反射ユニットのピッチを調整することで、反光入射部側に位置する反射ユニットから取り出される光束の有効光束幅を、光入射部側に位置する反射ユニットから取り出される光束の有効光束幅と同一又は近似したものにすることができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、光射出部の光射出面から画像取出部の各反射ユニットのうち折り曲げられた画像光の射出方向についての先端である射出側端までの距離が、一定である。この場合、各反射ユニットのサイズ又はピッチの選択によって、当該各反射ユニットにおいて画像光を取り込む幅を定めることができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、複数の反射ユニットのうち、サイズの大きい反射ユニットほど、当該反射ユニットのうち折り曲げた画像光の射出方向についての先端である射出側端が、光射出部に近くなり、複数の反射ユニットが、所定の配列方向について各反射ユニットのサイズに応じて光射出部側にせり出している。この場合、サイズの大きい反射ユニットほど効率的に画像光を取り込むことができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、複数の反射ユニットのサイズは、各反射ユニットにそれぞれ入射する画像光の有効光束幅を所定値以上に保つように変化している。この場合、各反射ユニットにおいて画像光の有効光束幅を光束の乱れが重大とならない程度に大きくすることで、画像取出部に入射する全ての画像光の解像度を一定以上の水準に保って反射させることができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、複数の反射ユニットのピッチが、0.5mm〜1.3mmの間で変化する。この場合、0.5mm以上とすることで、散乱・回折等による光束の乱れを低減でき、1.3mm以下とすることで反射ユニットによる格子縞が観察者にとって目立つものとならないようにすることができる。
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係る虚像表示装置は、(a)上記いずれかに記載の導光板と、(b)導光板に導かれる画像光を形成する画像形成装置とを備える。この場合、上記いずれかに記載の導光板を用いることで、虚像表示装置は、解像度の高い虚像光を射出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は、第1実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、実施形態に係る導光板の正面図及び平面図である。
【図2】(A)は、導光板内の画像取出部の中央部分の構造を説明する断面図であり、(B)は、画像取出部の奥側の部分の構造を説明する断面図であり、(C)は、画像取出部の入口側の部分の構造を説明する断面図である。
【図3】画像取出部内での反射ユニットの変化の様子を示す図である。
【図4】(A)は、反射ユニットにおける有効光束幅について説明するための図であり、(B)は、比較例の図である。
【図5】(A)は、変形例の導光板内の画像取出部の中央部分の構造を説明する断面図であり、(B)は、画像取出部の奥側の部分の構造を説明する断面図であり、(C)は、画像取出部の入口側の部分の構造を説明する断面図である。
【図6】(A)は、第2実施形態に係る導光板内の画像取出部の画像取出部の奥側の部分の構造を説明するための図であり、(B)は、画像取出部の入口側の部分の構造を説明する断面図である。
【図7】第3実施形態に係る導光板内の画像取出部の画像取出部の奥側の部分の構造を説明するための図であり、(B)は、画像取出部の入口側の部分の構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置用の導光板及び導光板を組み込んだ虚像表示装置について説明する。
【0020】
〔A.導光板及び虚像表示装置の構造〕
図1(A)に示す本実施形態に係る虚像表示装置100は、ヘッドマウントディスプレイに適用されるものであり、画像形成装置10と、導光板20とを一組として備える。なお、図1(A)は、図1(B)に示す導光板20のA−A断面に対応する。
【0021】
虚像表示装置100は、観察者に虚像による画像光を認識させるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させるものである。画像形成装置10と導光板20とは、通常観察者の右眼および左眼に対応して一組ずつ設けられるが、右眼用と左眼用とでは左右対称であるので、ここでは左眼用のみを示し、左眼用については図示を省略している。なお、虚像表示装置100は、全体としては、例えば一般の眼鏡のような外観(不図示)を有するものとなっている。
【0022】
図1(A)に示すように、画像形成装置10は、液晶デバイス11と、投射光学系12とを有する。このうち、液晶デバイス11は、2次元的な照明光を射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、これらの間に配置される射出角調整部材33とを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光を空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。射出角調整部材33は、照明光の射出角度分布を画面内の位置に応じて変化させており、液晶表示デバイス32から射出される画像光が結果的に観察者の眼EYに入射するように調整している。
【0023】
図1(A)〜1(C)に示すように、導光板20は、導光板本体部20aと、入射光折曲部21と、角度変換部である画像取出部23とを備える。導光板20は、画像形成装置10で形成された画像光を虚像光として観察者の眼EYに向けて射出し、画像として認識させるものである。
【0024】
導光板20の全体的な外観は、図中YZ面に平行に延びる平板である導光板本体部20aによって形成されている。また、導光板20は、長手方向の一端において導光板本体部20aに埋め込まれた多数の微小ミラーによって構成される画像取出部23を有し、長手方向の他端において導光板本体部20aを拡張するように形成されたプリズム部PS及びこれに付随する入射光折曲部21を有する構造となっている。
【0025】
導光板本体部20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、YZ面に平行で画像形成装置10に対向する表側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射部である光入射面ISと、画像光を観察者の眼EYに向けて射出させる光射出部である光射出面OSとを有している。導光板本体部20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層21aが形成されている。ここで、ミラー層21aは、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜した状態で配置される入射光折曲部21として機能する。また、導光板本体部20aにおいて、光射出面OSの裏側の平面に沿って微細構造である画像取出部23が形成されている。
【0026】
導光板本体部20aの光入射面ISに対向し傾斜して配置されるミラー層21aとしての入射光折曲部21は、導光板本体部20aの上記斜面RS上にアルミ蒸着等の成膜を施すことにより形成され、入射光を反射し光路を略直交方向に近い所定方向に折り曲げるための反射面として機能する。つまり、入射光折曲部21は、光入射面ISから入射し全体として+X方向に向かう画像光を、全体として−X方向に偏った+Z方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を導光板本体部20a内に確実に結合させる。
【0027】
また、導光板本体部20aは、入口側の入射光折曲部21から奥側の画像取出部23にかけて、入射光折曲部21を介して内部に入射させた画像光を画像取出部23に導くための導光部22を有している。
【0028】
導光部22は、平板状の導光板本体部20aの主面であり互いに対向しYZ面に対して平行に延びる2平面として、入射光折曲部21で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1の全反射面22aと第2の全反射面22bとを有している。ここでは、第1の全反射面22aが画像形成装置10から遠い裏側にあるものとし、第2の全反射面22bが画像形成装置10に近い表側にあるものとする。この場合、第2の全反射面22bは、光入射面IS及び光射出面OSと共通の面部分となっている。入射光折曲部21で反射された画像光は、まず、第2の全反射面22bに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第1の全反射面22aに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光板20の奥側即ち画像取出部23を設けた+Z側に導かれる。ここで、導光板本体部20aに用いる透明樹脂材料の屈折率nは、例えば1.5以上の高屈折率材料であるものとする。導光板20に比較的屈折率の高い透明樹脂材料を用いることで、導光板20内部で画像光を導光させやすくなり、かつ、導光板20内部での画像光の画角を比較的小さくすることができる。
【0029】
導光板本体部20aの光射出面OSに対向して配置される画像取出部23は、導光部22の奥側(+Z側)において、第1の全反射面22aの延長平面に略沿ってこの延長平面に近接して形成されている。画像取出部23は、導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OS側へ折り曲げる。つまり、画像取出部23は、画像光の角度を変換する角度変換部として機能している。ここでは、画像取出部23に最初に入射する画像光が虚像光としての取出し対象であるものとする。画像取出部23の詳しい構造については、図2(A)等により後述する。
【0030】
〔B.画像光の光路〕
以下、画像光の光路について詳しく説明する。図1(A)に示すように、液晶デバイス11のうち液晶表示デバイス32の射出面32a上からそれぞれ射出される画像光のうち図中点線で示す射出面32aの中央部分から射出される成分を画像光GL1とし、図中一点鎖線で示す射出面32aの周辺のうち紙面左側(−Z側)から射出される成分を画像光GL2とし、図中二点鎖線で示す射出面32aの周辺のうち紙面右側(+Z側)から射出される成分を画像光GL3とする。
【0031】
投射光学系12を経た各画像光GL1,GL2,GL3の主要成分は、導光板20の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL1,GL2,GL3のうち、液晶デバイス11の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL1は、平行光束として入射光折曲部21で反射された後、標準反射角αで導光部22の第2の全反射面22bに入射し、全反射される。その後、画像光GL1は、標準反射角αを保った状態で、第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射を繰り返す。画像光GL1は、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、画像取出部23の中央部23kに入射する。つまり、標準反射角αが、画像光GL1の画像取出部23への入射角度を決定している。画像光GL1は、この中央部23kにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSを含むYZ面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。液晶デバイス11の射出面32aの一端側(−Z側)から射出された画像光GL2は、平行光束として入射光折曲部21で反射された後、最大反射角αで導光部22の第2の全反射面22bに入射し、全反射される。画像光GL2は、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、画像取出部23のうち反光入射面側(+Z側)の周辺部23mにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから所定の角度方向に向けて平行光束として射出される。この際の射出方向は、入射光折曲部21側に戻されるようなものになっており、+Z軸に対して鈍角となる。液晶デバイス11の射出面32aの他端側(+Z側)から射出された画像光GL3は、平行光束として入射光折曲部21で反射された後、最小反射角αで導光部22の第2の全反射面22bに入射し、全反射される。画像光GL3は、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて例えばN+M回全反射され、画像取出部23のうち最も光入射面側(−Z側)の周辺部23hにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから所定の角度方向に向けて平行光束として射出される。この際の射出方向は、入射光折曲部21側から離れるようなものになっており、+Z軸に対して鋭角となる。
【0032】
なお、第1及び第2の全反射面22a,22bでの全反射による光の反射効率は非常に高いものであるため、上記のように画像光GL1,GL2,GL3間で反射回数が異なっていても、このような反射回数の差によって輝度低下が生じることは殆どない。なお、図1(B)に示すように、縦方向即ちY方向について見た画像光である画像光GLyは、光束全体として収束するように導光板20内を通過する。
【0033】
〔C.画像取出部の構造及び画像取出部による光路の折曲げ〕
以下、図2(A)〜2(C)等を参照して、画像取出部23の構造及び画像取出部23による画像光の光路の折曲げについて詳細に説明する。なお、図2(A)〜2(C)は、図1(A)に示す画像取出部23の中央部23kと、周辺部23m,23hとをそれぞれ拡大した模式的な図である。
【0034】
まず、画像取出部23の構造について説明する。画像取出部23は、ストライプ状に配列された多数の線状の反射ユニット23cで構成される。つまり、画像取出部23は、Y方向に延びる細長い反射ユニット23cを導光部22の延びる第1方向即ちZ方向に多数配列させることで構成されている。各反射ユニット23cは、奥側即ち+Z側に配置される1つの反射面部分である第1の反射面23aと、入口側即ち−Z側に配置される他の1つの反射面部分である第2の反射面23bとを1組のものとして有する。これらのうち、少なくとも第2の反射面23bは、一部の光を透過可能な部分反射面であり、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。また、各反射ユニット23cは、隣接する第1及び第2の反射面23a,23bにより、XZ断面視においてV字又は楔状となっている。より具体的には、第1及び第2の反射面23a,23bは、図1(A)等に示す第1の全反射面22aに平行で反射ユニット23cの配列される配列方向であるZ方向に対して垂直に延びる方向即ちY方向を長手方向として、線状に延びている。さらに、第1及び第2の反射面23a,23bは、当該長手方向を軸として、第1の全反射面22aに対してそれぞれ異なる角度(即ちYZ面に対してそれぞれ異なる角度)で傾斜している。結果的に、第1の反射面23aは、周期的に繰り返して配列され互いに平行に延び、第2の反射面23bも、周期的に繰り返して配列され互いに平行に延びている。図2(A)等に示す具体例において、各第1の反射面23aは、第1の全反射面22aに対して略垂直な方向(X方向)に沿って延びているものとしている。また、各第2の反射面23bは、対応する第1の反射面23aに対して反時計方向に所定角度(相対角度)βをなす方向に延びている。ここで、相対角度βは、具体例において例えば54.7°となっているものとする。
【0035】
なお、各第1の反射面23aは、画像光の実際の入射面となっているが、本明細書では、全反射面22a,22bを経て各画像光の第1及び第2の反射面23a,23bに入射する画像光の全反射面22a,22bでの全反射角度を画像取出部23に対する入射角度即ち反射ユニット23cへの入射角度と呼ぶこととする。
【0036】
本実施形態の場合、図2(A)〜2(C)に示すように、互いに断面視相似な形状を有する各反射ユニット23cのサイズ、つまり、図中の破線で示す1つの反射ユニット23cの縦方向(X方向)についての長さである縦サイズHSや横方向(Z方向)についての横サイズWSが、各反射ユニット23cで折り曲げられる画像光の導光部22(図1(A)等参照)における全反射角度、即ち反射ユニット23c又は画像取出部23への入射角度に応じて、画像取出部23内で配列方向即ちZ方向に関して変化している。より具体的には、まず、図2(A)に示すように、画像取出部23を構成する多数の反射ユニット23cのうち中央側即ち中央部23k側に位置する反射ユニット23cの縦及び横サイズHS,WSは、平均的な大きさの入射角度αで入射する画像光GL1に対応して、中程度のものとなっている。これに対して、図2(B)に示すように、画像取出部23の奥側即ち周辺部23m側に位置する反射ユニット23cの縦及び横サイズHS,WSは、比較的大きな入射角度αで入射する画像光GL2に対応して、図2(A)に示す中央の反射ユニット23cの縦及び横サイズHS,WSと比較して大きなものとなっている。また、図2(C)に示すように、画像取出部23の入口側即ち周辺部23h側に位置する反射ユニット23cの縦及び横サイズHS,WSは、比較的小さな入射角度αで入射する画像光GL3に対応して、図2(A)に示す中央の反射ユニット23cの縦及び横サイズHS,WSと比較して小さなものとなっている。結果として、図2(C)の画像光GL3に対応する反射ユニット23cの縦及び横サイズHS,WSは、図2(B)の画像光GL2に対応する反射ユニット23cの縦及び横サイズHS,WSよりも小さくなっている。以上から、画像取出部23では、全反射角度が相対的に大きい画像光GL2に対して光路の折り曲げを行う反射ユニット23c(第1の反射ユニット)と、全反射角度が相対的に小さい画像光GL1,GL3に対して光路の折り曲げを行う反射ユニット23c(第2の反射ユニット)とを比較した場合、画像光GL2用の第1の反射ユニットの反射面が、画像光GL1(GL3)用の第2の反射ユニットの反射面よりも大きいものとなっていることになる。なお、上記では、各反射ユニット23cのサイズについては、縦サイズHS及び横サイズWSによって示しているが、各反射ユニット23cの断面形状は互いに相似であるから、このうちの横サイズWSに相当するZ方向についての幅である横幅d(図3参照)のみをもって各反射ユニット23cのサイズの基準とすることができる。
【0037】
また、画像取出部23全体では、図3に模式的に示すように、互いに相似な多数の反射ユニット23cは、画像取出部23の入口側即ち−Z側にあるものほど小さく、奥側即ち+Z側に行くに従って大きくなり、各反射ユニット23cの頂点Pを結んでできる曲線LL2は、+Z側に行くに従って深さ方向即ちX方向に徐々に増加するように傾斜している。
【0038】
ここで、反射ユニット23cのサイズを定める横幅dは、反射ユニット23cの配列方向即ちZ方向についての各反射ユニット23cのピッチと考えることができる。具体的には、図3において、反射ユニット23cのうちZ方向について中央に位置する1つの反射ユニット23cの横幅dを標準的なピッチdと定めると、この標準的なピッチdに対して、各反射ユニット23cの横幅d即ちピッチdは、+Z側に向かって徐々に増加し(d>d)、−Z側に向かって徐々に減少している(d<d)。また、言い換えると、複数の反射ユニット23cのサイズ又はピッチは、+Z側に向かって単調に増大するので、複数の反射ユニット23cのうち最も光入射面IS(図1(A)参照)から遠い反光入射面側即ち奥側に位置する反射ユニット23cのサイズ又はピッチは、最も光入射面側即ち入口側に位置する反射ユニット23cのサイズ又はピッチよりも大きいものとなっている。反射ユニット23cのサイズ又はピッチを調整することで、各反射ユニット23cに入射する各画像光の有効光束幅を同一又は近似したものにすることができる。
【0039】
図2(A)〜2(C)に戻って、画像取出部23は、深さ方向即ちX方向について、一定の厚さHを有している。つまり、画像取出部23を構成する各反射ユニット23cの境界部分であり画像取出部23の各反射ユニット23cの先端即ち画像取出部23で折り曲げられた画像光GL1等の射出方向についての射出側端である頂点Kを結んだ線LL1が、光射出面OSに対して平行となっている。従って、導光板20の厚さ方向(X方向)について光射出面OSから第2の反射面23bの頂点Kまでの距離HTが一定となり、各反射ユニット23cのサイズに応じて、各反射ユニット23cが画像光を取り込める幅を正確に規定することができる。
【0040】
以下、画像取出部23による画像光の光路の折曲げについて詳しく説明する。まず、図2(A)に示すように、画像光のうち基準となる中程度の入射角度αで導かれた画像光GL1は、画像取出部23のうち中央側の中央部23kに配置された1つの反射ユニット23cに入射し、最初に反光入射面側即ち+Z側の第1の反射面23aで反射され、次に、光入射面側即ち−Z側の第2の反射面23bで反射される。当該反射ユニット23cを経た画像光GL1は、他の反射ユニット23cを経ることなく光射出面OSから射出される。つまり、画像光GL1は、画像取出部23での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
【0041】
また、図2(B)に示すように、入射角度の最も大きい角度αで導かれた画像光GL2は、画像取出部23のうち最も光入射面IS(図1(A)参照)から遠い反光入射面側即ち+Z側の周辺部23mに配置された1つの反射ユニット23cに入射し、図2(A)の画像光GL1の場合と同様に、最初に反光入射面側即ち+Z側の第1の反射面23aで反射され、次に、光入射面側即ち−Z側の第2の反射面23bで反射される。当該反射ユニット23cを経た画像光GL2は、他の反射ユニット23cを経ることなく光射出面OSから射出される。つまり、画像光GL2は、画像取出部23での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
【0042】
また、図2(C)に示すように、入射角度の最も小さい角度αで導かれた画像光GL3は、画像取出部23のうち最も近い光入射面側即ち−Z側の周辺部23hに配置された1つの反射ユニット23cに入射し、図2(A)の画像光GL1等の場合と同様に、最初に反光入射面側即ち+Z側の第1の反射面23aで反射され、次に、光入射面側即ち−Z側の第2の反射面23bで反射される。当該反射ユニット23cを経た画像光GL3は、他の反射ユニット23cを経ることなく、画像取出部23での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
【0043】
上記のような第1及び第2の反射面23a,23bでの2段階での反射の場合、図2(A)〜2(C)に示すように、各画像光の入射時の方向と射出時の方向とのなす角である折り曲げ角ψは、いずれもψ=2(R−β)(R:直角)となる。つまり、折り曲げ角ψは、画像取出部23に対する入射角度即ち各画像光の全反射角度である反射角度α,α,α等の値によらず一定である。これにより、上記のように、画像光のうち全反射角度の比較的大きい成分を画像取出部23のうち+Z側の周辺部23m側に入射させ、全反射角度の比較的小さい成分を画像取出部23のうち−Z側の周辺部23h側に入射させた場合にも、画像光を全体として観察者の眼EYに集めるような角度状態で効率的に取り出すことが可能となる。このような角度関係で画像光を取出す構成であるため、導光板20は、画像光を画像取出部23において複数回通過させず、1回だけ通過させることができ、画像光を少ない損失で虚像光として取り出すことを可能にする。
【0044】
なお、導光部22の形状や屈折率、画像取出部23を構成する反射ユニット23cの光学的な設計において、画像光GL2,GL3等が導かれる角度等を適宜調整することで、光射出面OSから射出される画像光を、基本の画像光GL1即ち光軸AXを中心として、全体として対称性が保たれた状態の虚像光として観察者の眼EYに入射させることができる。つまり、一端の画像光GL2のX方向又は光軸AXに対する角度θと、他端の画像光GL3のX方向又は光軸AXに対する角度θとは、大きさが略等しく逆向きとなっている。なお、画像光GL2,GL3の角度θ,θは、光射出面OS又は第2の全反射面22bに対して比較的垂直に近いものとなっており、光射出面OSを十分な透過率で通過する。また、角度θと角度θとは、厳密には光射出面OS又は第2の全反射面22bを通過する際の屈折を考慮する必要があるが、画像形成装置10から射出される画像光による虚像の画角に相当するものとなっている。
【0045】
〔D.画像光の有効光束幅〕
以下、図4(A)等により、画像取出部23即ち反射ユニット23cで取り出される画像光の有効光束幅を確保して画像光の解像度の局所的低下の抑制する原理について説明する。図4(A)は、比較的入射角度の大きな画像光GLを反射する反射ユニット23cを例示するものであり、画像取出部23の奥側即ち+Z側である周辺部23m側に位置するものの拡大図である。画像取出部23での画像光の取り出しにおける解像度の低下は、第1及び第2の反射面23a,23b上のキズ等による欠陥といった鏡面精度に起因する。このため、各反射ユニット23cで最終的に取り出される画像光の有効光束幅Wがある程度の大きさ以上に保たれていれば、解像度低下が抑制される。しかしながら、特に、図4(A)に示すような周辺部23m側にある反射ユニット23cでは、画像光GLを入射させる際の入射光束幅Xが制限されて小さくなりやすく、有効光束幅Wの値を確保することは、必ずしも容易でない。つまり、画像光GLの入射光束幅Xを確保することが解像度の局所的低下の抑制のために重要な問題となる。なお、図示のように、入射光束幅Xで反射ユニット23cに入射した画像光GLは、第1及び第2の反射面23a,23bでその幅を保って有効光束幅Wとして射出される。
【0046】
ここで、入射光束幅Xの値は、入射角度αと、反射ユニット23cの開口OPの大きさ即ち反射ユニット23cのサイズを示す横幅dとによって定まる。より具体的に説明すると、まず、開口OPの両端である頂点Kのうち奥側及び入口側のものをそれぞれ頂点K1,K2とすると、画像光GLは、頂点K1を通る成分から頂点K2を通る成分までの範囲で取り込まれることになる。つまり、頂点K1を通る成分を示す線PP1から頂点K2を通る成分を示す線PP2までの幅が、画像光GLの入射光束幅Xとなる。また、ここで、頂点K1から線PP2に下ろした足を交点Qとすると、頂点K1,K2及び交点Qによる直角三角形から、入射光束幅Xは、
X=d×sin(R−α)… (1)
となる。つまり、周辺部23m側の反射ユニット23cのように入射角度αが大きくなる場合、入射光束幅Xの値をある程度大きいものとして確保するには、上式(1)に応じて横幅dを大きくする必要がある。本実施形態では、図3等に示すように、入射する画像光の入射角度即ち全反射角度に応じて、各反射ユニット23cのサイズ又はピッチを変化させており、特に、画像光の入射角度が大きいものほどサイズ又はピッチを大きくすることで、いずれの反射ユニット23cに入射する画像光についても、その入射光束幅を十分大きなものとすることができる。
【0047】
例えば、比較例として図4(B)に示すように、周辺部23m側において比較的大きい入射角度αの画像光GLを入射させるにもかかわらず、周辺部23m側の反射ユニット23cが周辺部23h側の反射ユニット23c(図2(C)等参照)と同サイズの横幅である(即ち図4(B)の横幅d'が小さいままである)と、周辺部23m側の反射ユニット23cにおいて取り込むことのできる入射光束幅X'が小さくなり、結果として取り出される有効光束幅W'も小さくなり、第1及び第2の反射面23a,23bでの反射において、画像光GLの解像度が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態では、図4(A)等に示す周辺部23m側の反射ユニット23cに代表されるように画像光GLの有効光束幅Wを確保しにくい画像取出部23の奥側において、上式(1)を考慮して横幅dの値を適切に大きくすることで、画像取出部23のうち特に奥側の反射ユニット23cでの反射に際して生じやすい解像度の低下(局所的低下)を抑制できる。
【0048】
ここで、図2(B)に示す有効光束幅のうち最も確保し難い画像光GL2の有効光束幅W2について考察するために、まず、導光板20の屈折率をndとし、観察者に認識される画像の最大画角をωとする。この場合、図2(B)に示す角度の関係から、画像光GL2に対応する入射角度αと角度ψについて、
sin(α−ψ)×nd=sinω
と表される。つまり、入射角度αは、
α=ψ+sin−1(sinω/nd)
=2×(R−β)+sin−1(sinω/nd)… (2)
と表される。従って、一例として、nd=1.5、ω=15°とし、β=54.7°とすると、反射角度は、α≒80°となる。この値に応じて、(1)式から画像光GL2の入射光束幅X即ち有効光束幅Wを一定値以上に確保するような横幅dの値を算出することができる。つまり、以上の関係に基づいて横幅dを適宜設定することで、画像光GL2について十分な光束幅を得ることができる。例えば図2(B)及び2(C)に示すように、各反射ユニット23cのサイズの単調増加を基調としつつ、周辺光である画像光GL2の有効光束幅W2と画像光GL3の有効光束幅W3とが略同じ程度となるように対応する各反射ユニット23cのサイズを調整することで、全ての画像光の有効光束幅を一定の値以上にすることが考えられる。また、この際、例えば、反射ユニット23cの横幅dの具体的な数値範囲を、0.2mm以上、より好ましい一例としては、0.5mm〜1.3mmの範囲で変化させる。この範囲にあることにより、取り出されるべき画像光の有効光束幅を確保できるとともに、画像取出部23において回折による影響を受けることなく、かつ、反射ユニット23cによる格子縞が観察者にとって目立つものとならないようにすることができる。
【0049】
以上で説明した本実施形態の導光板20によれば、多数の反射ユニット23cの反射面形状の変化の一例として、各反射ユニット23cのサイズが、導光部22での全反射角度の状態に応じて画像取出部23内でZ方向に沿って変化している。これにより、全ての反射ユニット23cにおいて、入射する画像光の有効光束幅を十分に確保することが可能となる。従って、反射ユニット23cでの反射に起因する画像光の劣化を回避でき、結果として、射出される虚像光による画像の解像度低下を抑制できる。
【0050】
また、図3において各反射ユニット23cの頂点Pを結んでできる曲線LL2つまり各反射ユニット23cのサイズは、+Z側に向かって単調に増大するように変化するものとしているが、画像光の有効光束幅を一定の値以上に確保できれば、曲線LL2がこれ以外の形状の曲線や直線等となってもよい。つまり、各反射ユニット23cのサイズの変化の度合いは、虚像表示装置100の光学的な仕様に応じて適宜調整することができる。
【0051】
上記について、例えば一変形例として図5(A)〜5(C)に示すように、画像取出部23の複数の反射ユニット23cを変化させてもよい。具体的には、図5(A)及び図5(C)に示すような入口側の周辺部23hから中心側の中央部23kにかけての各反射ユニット23cについては、奥側に向けてサイズを多少増減させつつ略一定のサイズとし、図5(A)及び図5(B)に示すような中心側の中央部23kから奥側の周辺部23mにかけての各反射ユニット23cについては、奥側に向けてサイズを徐々に大きくする、という態様も可能である。この場合、図示のように、中央部23kで反射される画像光GL1の有効光束幅W1を、他の有効光束幅W2,W3と略同じになるように調整できる。また、例えば、画像取出部23の入口側に入射する画像光の成分が、反射面23a,23bの深い側即ち+X側に入り込んで反射ユニット23cで反射して取り出されるまでの間に一部カットされる可能性があるような態様では、入口側の反射ユニット23cのサイズを大きくすることで、有効光束幅を確保してもよい。この場合、例えば、中央部23k付近の反射ユニット23cのサイズを最も小さくし、周辺部23mと周辺部23hに向かって徐々に反射ユニット23cのサイズをそれぞれ大きくしていくものとすればよい。
【0052】
また、同一サイズの反射ユニット23cを複数個配列したものを1ブロックとし、当該ブロックを多数配列される反射ユニット23c中に少なくとも1つ以上含まれるようにすることで、反射ユニット23cサイズ又はピッチが段階的に変化する画像取出部23を構成してもよい。この場合、画像光の光束の入射角度をそれぞれ角度α、αとし、当該画像光の光束の入射する反射ユニット23cのピッチをそれぞれピッチd、dとすると、同一のブロック内においては、α<αであっても、d=dとなり、画像取出部23全体では、任意のα<αについて、d≦dとすることができる。なお、図3の場合、任意のα<αについて、d<dとなっている。
【0053】
以上のように、反射ユニット23cのサイズの変化の度合いについては、種々の態様が可能であり、例えば、各反射ユニット23cのサイズを1つずつ調整して、各反射ユニット23cから射出される画像光の有効光束幅が全て一致するようにしてもよい。
【0054】
なお、図2(A)等に示す例において、第1の反射面23aは、第1の全反射面22aに対して略垂直であるものとしているが、有効光束幅Wが確保できれば、第1の反射面23aの方向は、導光板20の仕様に応じて適宜調整可能である。例えば、第1の全反射面22aに対して−Z方向を基準として反時計回りに例えば80°から100°までの範囲内でいずれかの傾斜角度をなすものとできる。また、第2の反射面23bの方向は、第1の全反射面22aに対して−Z方向を基準として反時計回りに例えば30°から40°までの範囲内でいずれかの傾斜角度をなすものとできる。結果的に、第2の反射面23bは、第1の反射面23aに対して40°から70°までの範囲内でいずれかの相対角度を有するものとなる。
【0055】
〔第2実施形態〕
以下、図6(A)等により、第1実施形態を変形した第2実施形態について説明する。本実施形態に係る導光板120は、画像取出部の構造を除いて図1(A)等に示す導光板20と同様の構造を有するため、図6(A)及び6(B)においては、図2(B)及び2(C)に示す画像取出部23に対応する画像取出部123の一部及びその周辺について拡大した模式的な図のみを示し、導光板及び虚像表示装置全体の構造については図示及び説明を省略する。
【0056】
導光板120において、画像取出部123は、ストライプ状に配列された多数の線状の反射ユニット123cで構成され、各反射ユニット123cは、図2(A)等の各反射ユニット23cと同様に、XZ断面視においてV字又は楔状を形成する第1の反射面123aと第2の反射面123bとを1組のものとして、Z方向に配列されている。
【0057】
ここで、図6(A)及び6(B)に示すように、各反射ユニット123cのサイズ又はピッチは、奥側即ち+Z側のものほど大きなものとなっている。この場合、画像取出部123の奥側即ち周辺部123m側に位置して画像光GL2に対応する反射ユニット123cのサイズが最も大きく、画像取出部123の入口側即ち周辺部123h側に位置して画像光GL3に対応する反射ユニット123cのサイズが最も小さいものとなる。特に、ここでは、画像取出部123の厚さが、深さ方向即ちX方向について一定ではなく、反射ユニット123cのサイズに従って変化している。具体的には、サイズの大きな反射ユニット123cほどその射出側端である頂点Kが光射出面OS側即ち−X側にせり出して頂点Kが光射出面OSに近づいており、図6(A)に示す奥側即ち+Z側における画像取出部123のX方向についての厚さH2は、図6(B)に示す入口側における画像取出部123の厚さH3よりも大きくなっている。言い換えると、図6(A)に示す画像光GL2に対応する反射ユニット123cの射出側端である頂点KK2から光射出面OSまでの距離HT2は、図6(B)に示す画像光GL3に対応する反射ユニット123cの射出側端である頂点KK3から光射出面OSまでの距離HT3よりも短くなっている。これにより、画像光の入射角度が大きく、これに応じてサイズを大きくしている反射ユニット123cほど効率的に画像光を取り込むようにしている。なお、画像取出部123のせり出しの度合いは、光学的な仕様に応じて種々調整できる。
【0058】
以上説明した第2実施形態の導光板120によれば、各反射ユニット123cのサイズが、全反射角度即ち入射角度の状態に関連するように画像取出部123内でZ方向に沿って変化しており、また、サイズの大きな反射ユニット123cほど光射出面OS側にせり出している。これにより、画像光の有効光束幅を十分に確保して、反射ユニット23cでの反射に起因する画像光の劣化を回避でき、結果として、射出される虚像光による画像の解像度低下を抑制できる。また、画像取出部123において、効率的に画像光を取り込むことができる。
【0059】
〔第3実施形態〕
以下、図7(A)等により、第1実施形態等を変形した第3実施形態について説明する。本実施形態に係る導光板220は、画像取出部の構造を除いて図1(A)等に示す導光板20と同様の構造を有するため、図7(A)及び7(B)においては、図2(B)及び2(C)に示す画像取出部23に対応する画像取出部223の一部及びその周辺について拡大した模式的な図のみを示し、導光板及び虚像表示装置全体の構造については図示及び説明を省略する。
【0060】
以下、本実施形態に係る導光板220の画像取出部223の詳しい構造について説明する。図7(A)及び7(B)に示すように、画像取出部223は、多数の画像光反射面223aで構成され、各画像光反射面223aは、画像光反射面223aの配列されるZ方向に対して垂直に延びる方向即ちY方向に延びている。多数の画像光反射面223aは、互いに平行であり、第1の全反射面22aに対して同一の角度をそれぞれなし画像光の光成分の一部を透過させ、残りを反射させる部分反射面となっている。なお、各画像光反射面223a間は、画像光を取り出すための反射面等としての機能を有しない境界部223bによって繋がれている。結果的に、画像光反射面223aは、Z方向に沿って周期的に繰り返して配列され互いに平行に延びている。ここでは、1つの画像光反射面223aとこれに隣接する1つの境界部223bとを1組として反射ユニット223cと呼ぶこととする。
【0061】
以下、画像光の各成分のうち、画像取出部223の両端側に入射する画像光GLa及び画像光GLbについて説明する。前提として、画像光GLa,GLbを含む画像光は、図1(A)、1(B)等に示す導光板20に光入射面ISから入射し、入射光折曲部21で反射され、全体として、導光部22において−X方向に偏った+Z方向に進み、図7(A)等に示すように導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射を繰り返して導光されて、画像取出部223に到る。まず、図7(A)に示すように、最小反射角αで導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される画像光GLaは、画像取出部223をN回(Nは1より大きい自然数)通過した後、画像取出部223のうち周辺部223mの最も奥側(+Z側)に位置する画像光反射面223aに達し、画像光反射面223aでの反射により、眼EYの中心軸である光軸AXに対して角度θで光射出面OSから眼EYに向けて平行光束として射出される。この際の射出角は、+Z軸に対して鈍角となる。なお、ここでは、画像光GLaの反射角αを画像光反射面223aに対する入射角度とする。
【0062】
一方、図7(B)に示すように、最大反射角αで導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される画像光GLbは、画像取出部223のうち周辺部223hの最も入口側(−Z側)に位置する画像光反射面223aに達し、画像光反射面223aでの反射により、光軸AXに対して角度θで光射出面OSから眼EYに向けて平行光束として射出される。この際の射出角は、+Z軸に対して鋭角となる。なお、ここでは、画像光GLbの反射角αを画像光反射面223aに対する入射角度とする。
【0063】
なお、画像光GLaの角度θと画像光GLbの角度θとは、大きさが略等しく逆向きとなっており、画像光による虚像の画角に相当するものとなっている。
【0064】
ここで、各反射ユニット223c即ち画像光反射面223aのサイズ又はピッチは、入口側即ち−Z側のものほど大きなものとなっている。具体的には、画像取出部223の入口側即ち周辺部223h側に位置して画像光GLbに対応する画像光反射面223aのサイズが最も大きく、画像取出部223の奥側即ち周辺部223m側に位置して画像光GLaに対応する画像光反射面223aのサイズが最も小さいものとなっている。つまり、全反射面22a,22bでの反射角即ち画像取出部223への入射角度について大きな角度の画像光に対応する画像光反射面223aほど大きなサイズとなっている。これにより、全ての画像光の有効光束幅を一定値以上となるようにすることができる。
【0065】
以上のように、第3実施形態においても、各反射ユニット223cのサイズ又はピッチが、全反射角度即ち入射角度の状態に関連するように画像取出部223内でZ方向に沿って変化している。これにより、画像光の有効光束幅を十分に確保して、反射ユニット223cでの反射に起因する画像光の劣化を回避でき、結果として、射出される虚像光による画像の解像度低下を抑制できる。なお、上記において、画像取出部223の深さ方向即ちX方向について厚さは一定となっているが、当該厚さを反射ユニット223cのサイズに応じて変化させてもよい。
【0066】
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0067】
上記の説明では、多数の反射ユニット23cの反射面形状の変化の一例として、各反射ユニット23cのサイズを変化させるものとしているが、反射面形状の変化としては、上記のほか、又は上記に加えて、例えば画像取出部23を構成する反射ユニット23cの向きを変化させてもよい。つまり、反射ユニット23cの向きをY軸のまわりに微小回転させて方向の調整を行うこともできる。この際、すべての反射ユニット23cにおける相対角度βを一致させる限りすべての反射ユニット23cの向きを正確に一致させる必要はない。
【0068】
上記の説明では、画像表示素子として、透過型の液晶デバイス11を用いているが、画像表示素子としては、透過型の液晶デバイスに限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶パネルを用いた構成も可能であり、液晶デバイス11に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子用いた構成も可能である。さらに、レーザー光源とポリゴンミラーその他のスキャナーとを組みあわせたレーザースキャナーを用いた構成も可能である。なお、液晶デバイス11やその光源において、画像取出部23の光取出特性を考慮して輝度パターンの調整を行うこともできる。
【0069】
上記の説明では、虚像表示装置100は、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光板20を備えるとしているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光板20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0070】
上記の説明では、シースルー型の虚像表示装置について説明しているが、外界像を観察させる必要がない場合、第1及び第2の反射面23a,23b双方の光反射率を略100%にすることが可能である。
【0071】
上記の説明では、光入射面ISと光射出面OSとを同一の平面上に配置しているが、これに限らず、例えば、光入射面ISを第1の全反射面22aと同一の平面上に配置し、光射出面OSを第2の全反射面22bと同一の平面上に配置することもできる。
【0072】
上記の説明では、入射光折曲部21を構成するミラー層21aや斜面RSの角度について特に触れていないが、本発明は、ミラー層21a等の光軸OAに対する角度を用途や仕様に応じて様々な値とすることができる。
【0073】
上記の説明では、反射ユニット23cによるV字状の溝は、先端を尖った状態で図示しているが、V字状の溝の形状については、これに限らず、先端を平らにカットしているものや先端にRを付けているものであってもよい。
【0074】
上記の説明では、実施形態の虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、実施形態の虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0075】
上記の説明では、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2の全反射面22a,22b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、全反射面22a,22bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって全反射面22a,22bの全体又は一部がコートされていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10…画像形成装置、 11…液晶デバイス、 12…投射光学系、 20…導光板、 20a…導光板本体部、 21…入射光折曲部、 22…導光部、 22a…第1の全反射面、 22b…第2の全反射面、 23,123,223…画像取出部、 23a…第1の反射面、 23b…第2の反射面、 23c…反射ユニット、 100…虚像表示装置、 AX…光軸、 EY…眼、 GL1,GL2,GL3,GLa,GLb…画像光、 IS…光入射面(光入射部)、 OA…光軸、 OS…光射出面(光射出部)、 PS…プリズム部、 d…横幅(ピッチ)、 α…入射角度(全反射角度)、 K,KK2,KK3…頂点(射出側端)、 HS…縦サイズ(反射ユニットのサイズ)、 WS…横サイズ(反射ユニットのサイズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を内部に取り込む光入射部と、
対向して延びる第1及び第2の全反射面を有し、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を前記第1及び第2の全反射面での全反射により導く導光部と、
所定の配列方向に配列される複数の反射ユニットを有し前記導光部を経て入射する前記画像光を前記複数の反射ユニットでの光路の折り曲げによって外部へ取出し可能にする画像取出部と、
前記画像取出部を経た前記画像光を外部に射出する光射出部と、
を備える導光板であって、
前記複数の反射ユニットの反射面形状が、当該複数の反射ユニットで折り曲げられる前記画像光の前記導光部における全反射角度の大きさに応じて、前記画像光の解像度低下を抑制するように前記画像取出部内で前記所定の配列方向に沿って変化している、導光板。
【請求項2】
前記画像取出部は、全反射角度が相対的に大きい前記画像光に対して光路の折り曲げを行う第1の反射ユニットと、全反射角度が相対的に小さい前記画像光に対して光路の折り曲げを行う第2の反射ユニットとを有し、前記第1の反射ユニットの反射面は、前記第2の反射ユニットの反射面よりも大きい、請求項1に記載の導光板。
【請求項3】
前記画像取出部にそれぞれ異なる角度で前記複数の反射ユニットのいずれかに入射する前記画像光の光束の入射角度をそれぞれα、αとし、当該画像光の光束の入射する反射ユニットのピッチをそれぞれd、dとすると、α<αである場合に、d≦dとなっている、請求項2に記載の導光板。
【請求項4】
前記複数の反射ユニットを構成する各反射ユニットは、第1の反射面と前記第1の反射面に対して所定角度をなす第2の反射面とでそれぞれ構成され、前記導光部にて導かれた前記画像光を前記第1の反射面により反射するとともに前記第2の反射面により前記第1の反射面で反射された前記画像光をさらに反射して光路の折り曲げを行う、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の導光板。
【請求項5】
前記複数の反射ユニットのうち前記光入射部から遠い反光入射部側に位置する反射ユニットのサイズは、前記光入射部側に位置する反射ユニットのサイズよりも大きい、請求項4に記載の導光板。
【請求項6】
前記複数の反射ユニットのうち前記光入射部から遠い反光入射部側に位置する反射ユニットのピッチは、前記光入射部側に位置する反射ユニットのピッチよりも大きい、請求項4及び請求項5のいずれか一項に記載の導光板。
【請求項7】
前記光射出部の光射出面から前記画像取出部の各反射ユニットのうち折り曲げられた前記画像光の射出方向についての先端である射出側端までの距離は、一定である、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の導光板。
【請求項8】
前記複数の反射ユニットのうち、サイズの大きい反射ユニットほど、当該反射ユニットのうち折り曲げられた前記画像光の射出方向についての先端である射出側端が、前記光射出部に近くなり、前記複数の反射ユニットは、前記所定の配列方向について各反射ユニットのサイズに応じて前記光射出部側にせり出している、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の導光板。
【請求項9】
前記複数の反射ユニットのサイズは、各反射ユニットにそれぞれ入射する前記画像光の有効光束幅を所定値以上に保つように変化している、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の導光板。
【請求項10】
前記複数の反射ユニットのピッチは、0.5mm〜1.3mmの間で変化する、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の導光板。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の導光板と、
前記導光板に導かれる前記画像光を形成する画像形成装置と、
を備える虚像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−88588(P2012−88588A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236195(P2010−236195)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】