説明

導電性ペースト

【課題】十分な導電性を有する導電性被膜を形成することができ、更に、基材への塗布後(描画後)に当該基材上を流れにくい耐レベリング性を有する導電性ペーストを提供する。
【解決手段】 金属コロイド液と、常温で固体であって300℃以下の沸点を有する有機化合物からなる流動抑制剤と、を含むこと、を特徴とする導電性ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い加熱温度で高い導電性を有する被膜が得られる導電性ペーストであって、更には、耐レベリング性に優れる導電性ペーストに関する。より詳しくは、本発明は、例えば、太陽電池パネルや各種回路基板の配線等として用いられる導電性被膜を形成するための導電性インクとしても用いることのできる導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導電性ペーストは、例えば、太陽電池パネル配線、フラットパネルディスプレイの電極、回路基板又はICカードの配線を構成する導電性被膜を形成するための導電性材料等として用いられている。このような導電性被膜を製造する従来の方法としては、例えば(1)金属の真空蒸着、化学蒸着又はイオンスパッタリング等の方法、(2)メッキ法、及び(3)フォトリソグラフィー法等が用いられている。
【0003】
上記(1)の方法は、真空系又は密閉系での作業を必要とするため、操作が煩雑であり、装置が大掛かりになることから広いスペースを必要とするとともにコスト高となり、量産性にも乏しい。また、上記(2)の方法は、多量の廃液を処理する必要があり、材料ロスが大きく余分なコストがかかり、環境に対する負荷も大きい。更に、上記(3)の方法は、基材上に形成された導電性被膜の必要部分をマスクする工程が余分に必要であり、用いられる感光性樹脂、除去された導電性被膜、及びそれらを溶解させて発生する廃液が多量に排出されるため、処理コストがかかり、環境に対する負荷も大きい。
【0004】
これらに対し、導電性被膜を形成する導電性ペーストをコーティング剤として用い、基材上に描画する方法が広く用いられるようになっている。この方法では、特別な装置を設ける必要がなく、簡単な設備での製造が可能であるため、広いスペースを必要とせず、コストも少なくて済む。また、この方法では、材料ロスや廃液の発生もほとんどないことから、コスト面でも有利であり、環境に対する付加も小さい。
【0005】
ここで、上記コーティング剤としては、従来から、例えば銀粒子等の金属粒子と、樹脂成分と、有機溶剤と、を混練して得られる導電性ペースト(又は導電性インク)が用いられ、例えばディスペンサーやスクリーン印刷を用いてこの導電性ペーストを基材に塗布して導電性被膜が形成されることが多い。また、最近では、粘度の低い金属コロイド液を導電性ペーストとして用い、インクジェット方式で描画し、配線パターンを形成する方法も試みられている。
【0006】
そして、上記導電性ペーストとしては、例えば特許文献1には、導電性金属ペーストをインクジェット印刷法を利用して基板上に噴射・塗布し、また焼成した際、密着力が良く、表面形状がなめらかで、低抵抗かつ超微細な回路パターンを形成できる、新規な回路パターンの形成方法の提供を意図して、インクジェット方式を利用して、導電性金属ペーストにより配線基板の回路パターンの描画形成を行う方法において、特定の導電性金属ペーストを用いることが提案されている。
【0007】
より具体的には、特許文献1においては、「有機溶剤を含む樹脂組成物中に、微細な平均粒子径の金属超微粒子を均一に分散してなる導電性金属ペーストであり、前記微細な平均粒子径の金属超微粒子は、その平均粒子径が1〜100nmの範囲に選択され、金属超微粒子表面は、かかる金属超微粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により被覆されている導電性金属ペースト」が提案されている。
【0008】
また、特許文献2においては、電子材料分野において、各種用途に利用される種々のメッキ膜と代替可能な、メッキ膜に匹敵する加工精度と信頼性を有する導電性金属皮膜を簡便に、高い再現性で形成する方法の提供を意図して、「平均粒子径100nm以下の金属超微粒子を、その表面に、金属元素と配位的な結合が可能なアミン化合物などの被覆層を設けて、有機溶媒中に分散させ、この被覆層のアミン化合物などと反応性を示す、有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸等を添加したペースト状の分散液」を利用することが提案されている。
【0009】
更に、特許文献3においては、熱硬化して得られる導電性銀ペースト硬化体の薄い膜層が、可撓性に優れ、また、反復した屈曲にも耐える柔軟性を示し、屈曲の反復によっても、導電性が僅かにしか低下しない導電性銀ペーストの提供を意図して、「銀粉末とエポキシ樹脂成分からなる導電性銀ペーストであって、エポキシ樹脂成分は、必須な主成分として、ダイマー酸のジグリシジルエステル、その硬化剤または硬化触媒を含み、必要に応じて、副次的な成分として、前記ダイマー酸のジグリシジルエステル以外の液状のエポキシ樹脂材料を含むこともあるフレキシブル基板回路形成用導電性銀ペースト」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−324966号公報
【特許文献2】特開2002−334618号公報
【特許文献3】特開2001−261778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3において提案されている技術によっては、確かに比較的低い加熱温度でも高い導電性を有する導電性被膜が得られるものの、導電性ペーストを塗布後の基材を斜めに配置した場合等に当該導電性ペーストが基材上において流れて(垂れて)しまい、いわゆる液だれが起こることがあり、耐レベリング性という観点から未だ改善の余地があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な導電性を有する導電性被膜を形成することができ、かつ基材への塗布後(描画後)に当該基材上を流れにくい、いわゆる耐レベリング性を有する導電性ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、十分な導電性を有する導電性被膜を形成することができ、かつ基材への塗布後(描画後)に当該基材上を流れにくい、いわゆる耐レベリング性を有する導電性ペーストを得るためには、導電性ペーストの粘度を調整しつつ、当該導電性ペーストの塗布及び加熱により導電性被膜を形成する際に除去することができる特定の化合物を添加することが、上記目的を達成する上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。また、上記導電性ペーストを用いれば、比較的低い温度(例えば300℃以下)での加熱によっても焼成可能で、導電性を有する導電性被膜が得られることを見出した。
【0014】
即ち、本発明は、
金属コロイド液と、
常温で固体であって300℃以下の沸点を有する有機化合物からなる流動抑制剤と、を含むこと、
を特徴とする導電性ペーストを提供する。
【0015】
本発明の導電性ペーストにおける、「常温で固体であって300℃以下の沸点を有する有機化合物からなる流動抑制剤」は、常温で固体であることから、常温で調製される導電性ペースト中においてはその粘度を上昇させて流動を抑制する役割(即ち、耐レベリング性を付与する役割)を果たし、また、300℃以下の沸点を有する有機化合物からなることから、当該導電性ペーストを基材上に塗布して比較的低い加熱温度(当該沸点以上300℃以下が好ましい)により導電性被膜を形成する際には、蒸発や分解により除去されるため導電性被膜の導電性を損なわず、十分な導電性を有する導電性被膜を得ることができるものである。
【0016】
ここで、本発明における「常温」とは、例えば15〜30℃程度の温度のことをいい、「常温で固体」の上記流動抑制剤は、例えば15〜30℃以上の融点又は分解点を有し、当該融点又は分解点未満の室温雰囲気下で固体状(粉末状又はシャーベット状を含む。)であればよく、後述する水及び/又は水性有機分散媒等の水性分散媒、その他有機溶媒等に溶解してもよいものである。また、「300℃以下の沸点」を有する上記流動抑制剤は、原則として300℃以上で蒸発し得るものである(一部が蒸発せず残存することもある。)。
【0017】
本発明の導電性ペーストにおける上記流動抑制剤は、常温で固体であって300℃以下の沸点を有するものである。上記流動抑制剤が常温で固体でなければ、導電性ペーストの粘度を上昇させて耐レベリング性を付与することができず、上記流動抑制剤が300℃超の沸点を有すると、塗布後の導電性ペーストを300℃以下(例えば250℃以下)の比較的低い加熱温度で焼成した場合に、十分な導電性を有する導電性被膜が得られにくい。
【0018】
上記流動抑制剤の融点は、例えば、融点測定装置や示差走査熱量測定(DSC)などの方法により測定することができる。また、上記流動抑制剤の分解点は、例えば、熱重量測定装置(TGA)という方法により測定することができる。更に、上記流動抑制剤の沸点は、例えば、ベックマン沸点測定装置又はコットレルの分子量測定装置等により測定することができる。
【0019】
また、本発明の導電性ペーストは金属コロイド液を含む。金属コロイド液を用いて得られる被膜は良好な導電性を有することが知られている(例えば、特開2002−245854号公報参照)。したがって、本発明の導電性ペーストは、上記流動抑制剤に起因して耐レベリング性を有するとともに、高い導電性を備える導電性被膜をより確実に形成することが可能である。
【0020】
ここで、本発明の導電性ペーストにおける上記金属コロイド液は、例えば金属成分(金属粒子)と有機成分とからなる金属コロイド粒子を主成分とする固形分と、これら固形分を分散する分散媒とを含むものである。ただし、上記コロイド液において、「分散媒」は上記固形分の一部を溶解していても構わない。なお、主成分とは、構成成分のうちの最も含有量の多い成分のことをいう。
【0021】
このような金属コロイド液によれば、有機成分を含んでいるので、金属コロイド液中での金属コロイド粒子の分散性を向上させることができ、したがって、金属コロイド液中の金属成分の含有量を増やしても金属コロイド粒子が凝集しにくく、良好な分散安定性を保つことができる。なお、本発明における「分散性」とは、金属コロイド液を調製した直後において、当該金属コロイド液中での金属粒子の分散状態が優れているか否か(均一か否か)を示すものであり、「分散安定性」とは、金属コロイド液を調整して所定の時間を経過した後において、当該金属コロイド液中での金属粒子の分散状態が維持されているか否かを示すものであり、「低沈降凝集性」ともいえるものである。
【0022】
本発明の導電性ペーストにおいては、前記流動抑制剤が、トリメチロールプロパン、ε−カプロラクタム、炭酸エチレン又は尿素であること、が好ましい。これらの化合物を用いれば、耐レベリング性に優れた導電性ペーストがより確実に得られ、金属コロイド液中の金属粒子に起因する高い導電性を保持した導電性被膜がより確実に得られる。
【0023】
また、本発明の導電性ペーストは、前記流動抑制剤を、前記金属コロイド液の固形分に対して2〜50質量%の量で含むこと、が好ましい。2質量%以上であれば、基材上への塗布後に当該基材上を流れにくい、即ち耐レベリング性に優れるため好ましく、50質量%以下であれば、得られる導電性被膜に流動抑制剤が残存しにくいことからその体積抵抗値が上がり過ぎず十分な導電性が得られるため好ましい。より好ましくは3〜40質量%であり、特に好ましくは、5〜30質量%である。
【0024】
ここで、本発明における金属コロイド液の「固形分」とは、シリカゲル等を用いて金属コロイド液から分散媒を取り除いた後、例えば、30℃以下の常温(例えば25℃)で24時間乾燥させたときに残存する固形分のことをいい、通常は、金属粒子、残存有機成分及び残留還元剤等を含むものである。なお、シリカゲルを用いて金属コロイド液から分散媒を取り除く方法としては、種々の方法を採用することが可能であるが、例えばガラス基板上に金属コロイド液を塗布し、シリカゲルを入れた密閉容器に塗膜付ガラス基板を24時間以上放置することにより分散媒を取り除けばよい。
【0025】
本発明の導電性ペーストは、更に、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール又はグリセリンを含むこと、が好ましい。これらの化合物は、導電性ペーストに水性の金属コロイド液を用いた場合に、分散媒である水と相溶し、金属コロイド粒子の分散性を向上させるだけでなく、導電性ペーストの揮発を抑制するという効果をもつ。
【発明の効果】
【0026】
本発明の導電性ペーストによれば、従来の導電性ペーストに比べて低い温度で加熱して焼成しても十分な導電性を有する導電性被膜を形成することができ、かつ基材への塗布後(描画後)に当該基材上を流れにくい、いわゆる耐レベリング性を有する導電性ペーストを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、(1)本発明の導電性ペーストの好適な一実施形態、(2)本発明の導電性ペーストの製造方法の好適な一実施形態、(3)本発明の導電性ペーストを用いた導電性被膜及びその製造方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では重複する説明は省略することがある。
【0028】
(1)導電性ペースト
まず、本発明の導電性ペーストの好適な実施形態について説明する。本実施形態の導電性ペーストは、金属コロイド液と、常温で固体であって300℃以下の沸点を有する流動抑制剤と、を含む構成を有している。
【0029】
このような構成を有することにより、本実施形態の導電性ペーストは、従来の導電性ペーストに比べて低い温度で加熱して焼成しても十分な導電性を有する導電性被膜を形成することができ、かつ優れた耐レベリング性を有する。なお、後述するように、本実施形態の導電性ペーストの金属コロイド液を構成する分散媒としては、水や水溶性分散媒が挙げられる。
【0030】
ここで、従来の導電性ペースト(インク)では、上述のように、確かに比較的低い加熱温度でも高い導電性を有する導電性被膜が得られるものの、導電性インクを塗布後の基材を斜めに配置した場合等に当該導電性インクが基材上において流れて(垂れて)しまい、いわゆる液だれが起こることがあり、耐レベリング性という観点からも未だ改善の余地があった。
【0031】
これに対し、本実施形態の導電性ペーストは、上記のような「常温で固体であって300℃以下の沸点を有する有機化合物からなる流動抑制剤」を含む。したがって、上述のように、本実施形態の導電性ペーストにおいては、上記流動抑制剤が、常温で固体であることから、常温で調製される導電性ペースト中においてはその粘度を上昇させて流動を抑制する役割(即ち、耐レベリング性を付与する役割)を果たし、また、300℃以下の沸点を有する有機化合物からなることから、当該導電性ペーストを基材上に塗布して比較的低い加熱温度(当該沸点以上300℃以下が好ましい)により導電性被膜を形成する際には、蒸発や分解により除去され、導電性被膜の導電性を損なわず十分な導電性を有する導電性被膜を得ることができるのである。
【0032】
例えば、本発明者は、直流精密測定器(横川メータ&インスツルメンツ(株)製のPORTABLE DOUBLE BRIDGE(携帯用ダブルブリッジ)2769)を用いた体積抵抗値の測定により、従来の導電性ペーストに比較して、本実施形態の導電性ペースト(具体的には、後述する実施例の導電性ペースト)を用いて形成した導電性被膜が導電性に優れることを確認している。また、本発明者は、ガラス基材への塗布、及び塗布面を傾斜させた乾燥試験により、本実施形態の導電性ペースト(具体的には、後述する実施例の導電性ペースト)が耐レベリング性に優れることを確認している。
【0033】
ここで、本発明における流動抑制剤に関する「常温」とは、例えば15〜30℃程度の温度のことをいい、「常温で固体」の上記流動抑制剤は、例えば15〜30℃以上の融点又は分解点を有し、当該融点又は分解点未満の室温雰囲気下で固体状(粉末状又はシャーベット状を含む。)であればよく、後述する水及び/又は水性有機分散媒等の水性分散媒、その他有機溶媒等に溶解してもよいものである。また、「300℃以下の沸点」を有する上記流動抑制剤は、原則として300℃以上で蒸発し得るものである(一部が蒸発せず残存することもある。)。
【0034】
より具体的には、本実施形態の導電性ペーストにおいては、前記流動抑制剤が、トリメチロールプロパン、ε−カプロラクタム、炭酸エチレン又は尿素である。これらの流動抑制剤の、融点、分解点、沸点は以下のとおりである。
融点(℃) 沸点(℃) 分解点(℃)
トリメチロールプロパン 58 292〜297 −
ε−カプロラクタム 69 267 −
炭酸エチレン 36 261 −
尿素 − − 132.7
【0035】
これらの流動抑制剤は、常温で固体であることから、常温で調製される導電性ペーストの粘度を上昇させて耐レベリング性を付与することができ、300℃以下の沸点を有することから、塗布後の導電性ペーストを例えば250℃の比較的低い加熱温度で焼成した場合でも、蒸発等により除去され、十分な導電性を有する導電性被膜が得られることから好ましい。
【0036】
上記の流動抑制剤のうちのトリメチロールプロパンとしては、例えば和光純薬工業(株)製の試薬特級を用いることができ、ε−カプロラクタムとしても、例えば和光純薬工業(株)製の試薬特級を用いることができる。また、炭酸エチレンとしても、例えば和光純薬工業(株)製の試薬特級を用いることができ、尿素としても、例えば和光純薬工業(株)製の試薬特級を用いることができる。
【0037】
本発明の効果をより確実に得る観点からは、本実施形態の導電性ペーストは、前記流動抑制剤を、前記金属コロイド液の固形分に対して2〜50質量%の量で含む。2質量%以上であれば、基材上への塗布後に当該基材上を流れにくい、即ち耐レベリング性に優れるため好ましく、50質量%以下であれば得られる導電性被膜の体積抵抗値が上がり過ぎず十分な導電性が得られるため好ましい。より好ましくは3〜40質量%であり、特に好ましくは、5〜30質量%である。
【0038】
ここで、本実施形態の金属コロイド液の「固形分」とは、ガラス基板上に金属コロイド液を塗布し、シリカゲルを入れた密閉容器に塗膜付ガラス基板を30℃以下の常温(例えば25℃)で24時間以上放置することにより分散媒を取り除いたときに残存する固形分のことをいう。
【0039】
本実施形態の金属コロイド液において、好ましい固形分の濃度は1〜70質量%である。固形分の濃度が1質量%以上であれば、導電性ペーストにおける金属の含有量を確保することができ、導電効率が低くならない。また、固形分の濃度が70質量%以下であれば、金属コロイド液の粘度が増加せず取り扱いが容易で、工業的に有利である。より好ましくは、固形分の濃度が10〜65質量%である。
【0040】
(1−1)金属コロイド液について
次に、本実施形態の導電性ペーストを構成する金属コロイド液について説明する。この金属コロイド液としては、例えば金属成分(金属粒子)と有機成分とからなる金属コロイド粒子を主成分とする固形分と、これら固形分を分散する分散媒と、を含む種々の金属コロイド液を用いることができる。
【0041】
本実施形態の金属コロイド液は、固形分に対して10℃/分の昇温速度で熱重量分析を行ったときの100〜500℃における重量損失が10質量%以下であることが好ましい。上記固形物を500℃まで加熱すると、有機物などが酸化分解され、大部分はガス化されて消失する。このため、500℃までの加熱による減量は、ほぼ固形分中の有機物の量に相当し得る。
【0042】
上記重量損失が多いほど金属コロイドの分散安定性は優れるが、多過ぎると有機物が不純物として導電性ペースト中に残留して、導電性被膜の導電性を低下させる。特に100℃程度の低温での加熱によって導電性の高い導電性被膜を得るためには、上記重量損失が10質量%以下であることが好ましい。一方、上記重量損失が少な過ぎるとコロイド状態での分散安定性が損なわれるため、0.01質量%以上であることが好ましい。より好ましい重量損失は0.05〜4.5質量%である。
【0043】
金属コロイド液の固形分に含まれるべき金属コロイド粒子の形態に関しては、例えば、金属成分からなる粒子の表面に有機成分が付着して構成されている金属コロイド粒子、上記金属成分からなる粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されて構成されている金属コロイド粒子、金属成分と有機成分とが均一に混合されて構成されている金属コロイド粒子等が挙げられるが、特に限定されない。金属成分からなる粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されて構成されている金属コロイド粒子、又は金属成分と有機成分とが均一に混合されて構成されている金属コロイド粒子が好ましい。なお、当業者は、上述した形態を有する金属コロイド粒子を、当該分野における周知技術を用いて適宜調製することができる。
【0044】
本実施形態の金属コロイド液における金属コロイド粒子(金属粒子を含む。)の平均粒径は1〜400nm以下であるのが好ましく、更には、70nm以下であるのがより好ましい。金属コロイド粒子の平均粒径が1nm以上であれば、良好な導電性被膜を形成可能な導電性ペーストが得られ、金属コロイド粒子製造がコスト高とならず実用的である。また、400nm以下であれば、金属コロイド粒子の分散安定性が経時的に変化しにくく、好ましい。なお、本実施形態の金属コロイド液を用いて得られる導電性ペーストにおいても、金属コロイド粒子(金属粒子を含む。)の平均粒径(メディアン径)はこの範囲と略同じである(近似できる)。
【0045】
なお、金属コロイド液における粒子の粒径は固形分濃度によって変動し、一定とは限らない。また、導電性ペーストが、任意成分として、後述する樹脂成分、有機溶剤、増粘剤又は表面張力調整剤等を含む場合、平均粒径が400nm超の粒子成分を含む場合があるが、沈降を生じて本発明の効果を著しく損なわない成分であれば400nm超の平均粒径を有する粒子成分を含んでもよい。
【0046】
ここで、金属コロイド液における粒子の平均粒径は、動的光散乱法(ドップラー散乱光解析)によるもので、例えば、(株)堀場製作所製動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550で測定した体積基準のメディアン径(D50)で表すことができる。具体的には、純水10mL中に金属コロイド液を数滴滴下し、手で振動し分散させて測定用試料を調製する。ついで、測定用試料3mLを、(株)堀場製作所製動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550、のセル内に投入し、下記の条件にて測定する。
【0047】
・測定条件
データ読み込み回数:100回
セルホルダー内温度:25℃
・表示条件
分布形態:標準
反復回数:50回
粒子径基準:体積基準
分散質の屈折率:0.200−3.900i(銀の場合)
分散媒の屈折率:1.33(水が主成分の場合)
・システム条件設定
強度基準:Dynamic
散乱強度レンジ上限:10000.00
散乱強度レンジ下限:1.00
【0048】
(1−2)金属成分について
本実施形態の金属コロイド液の金属成分としては、特に限定されるものではないが、本実施形態の導電性ペーストを用いて得られる被膜の導電性を良好にすることができるため、上記金属のイオン化列が水素より貴であることが好ましい。上記金属のイオン化列が水素より貴である金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム等を挙げることができる。なかでも、金、銀、銅、白金、パラジウムがより好ましい。これらの金属は単独で、用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。併用する方法としては、複数の金属を含む合金粒子を用いる場合や、コア−シェル構造や多層構造を有する金属粒子を用いる場合がある。
【0049】
例えば、上記金属コロイド液として銀コロイド液を用いる場合、本実施形態の導電性ペーストを用いて形成した被膜の導電率が良好となるが、マイグレーションの問題を考慮する必要がある。ここで、銀及びその他の金属からなる混合コロイド溶液を用いることによって、マイグレーションを起こりにくくすることができる。当該「その他の金属」としては、上述のイオン化列が水素より貴である金属、即ち金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム等が好ましく、金、銅、白金、パラジウムがより好ましい。
【0050】
(1−3)有機成分について
本実施形態の金属コロイド液において、金属コロイド粒子中の「有機成分」は、上記金属成分とともに実質的に金属コロイド粒子を構成する有機物のことである。当該有機成分には、金属中に最初から不純物として含まれる微量有機物、後述する製造過程で混入した微量の有機物が金属成分に付着した有機物、洗浄過程で除去しきれなかった残留還元剤、残留分散剤等のように、金属成分に微量付着した有機物等は含まれない。なお、上記「微量」とは、具体的には、金属コロイド粒子中1質量%未満が意図される。
【0051】
本実施形態における金属コロイド粒子は、有機成分を含んでいるため、金属コロイド液中での分散安定性が高い。そのため、金属コロイド液中の金属成分の含有量を増大させても金属コロイド粒子が凝集しにくく、その結果、良好な分散性が保たれる。
【0052】
金属コロイド粒子中の有機成分の含有量は、0.5〜30質量%であるのが好ましい。有機成分の含有量が0.5質量%以上であれば、得られる金属コロイド粒子の貯蔵安定性が良くなる傾向があり、30質量%以下であれば、得られる金属コロイド粒子を用いて製造される導電性ペーストの導電性が良い傾向がある。有機成分のより好ましい含有量は1〜20質量%であり、更に好ましい含有量は1〜10質量%である。
【0053】
上記有機成分としては、例えば、分散剤又は還元剤として用いられる有機物が挙げられる。分散剤としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸等の有機酸;例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸一カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、リンゴ酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウム、グリコール酸ナトリウム等のイオン性化合物;例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等の界面活性剤;例えば、ゼラチン、アラビアゴム、アルブミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルセルロース類、アルカンチオール類等の高分子物質等が挙げられるが、分散媒に溶解しかつ分散効果を示すものであれば特に限定されず、これらは単独で用いられでも2種類以上を併用してもよい。
【0054】
また、分散剤は、COOH基とOH基とを有し、かつ、(COOH基の数)≧(OH基の数)であるヒドロキシ酸又はその塩であることが好ましい。このような分散剤を使用すれば、100℃程度の低温で焼成しても高い導電性を示す導電性被膜を形成可能な導電性ペーストを得ることができる。特に、COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ(COOH基の数)が(OH基の数)以上であるヒドロキシ酸又はその塩を用いると、金属コロイド粒子の分散安定性が向上するため、導電性に優れた導電性被膜を得ることができる。
【0055】
このような分散剤としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸等の有機酸;例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸一カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、リンゴ酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウム、グリコール酸ナトリウム等のイオン性化合物が挙げられ、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、リンゴ酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム等が好ましい。
【0056】
また、還元剤としては、適当な溶媒に溶解して還元作用を示すものであれば特に限定されないが、タンニン酸又はヒドロキシ酸が好適に用いられる。タンニン酸又はヒドロキシ酸は、還元剤として機能すると同時に、分散剤としての効果を発揮する。これらの還元剤又は分散剤を、単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
【0057】
なお、タンニン酸としては、一般に「タンニン酸」に分類されるものであれば特に限定されず、ガロタンニン酸、五倍子タンニン等も含まれる。タンニン酸の含有量は、金属イオン1価/gに対して、0.01〜6gであることが好ましい。例えば1価の銀イオンの場合、銀イオン1g当たりのタンニン酸の含有量は0.01〜6gであり、3価の金イオンの場合は、金イオン1g当たりのタンニン酸の含有量は0.0 3〜18gである。タンニン酸の含有量が少な過ぎると還元反応が不十分であり、多過ぎると過剰に吸着して導電性ペースト中に残存することがある。タンニン酸のより好ましい含有量は、0.02〜1.5gである。
【0058】
(1−4)分散媒
本実施形態の金属コロイド液は、金属成分(金属粒子)と有機成分とからなる金属コロイド粒子を主成分とする固形分を分散する分散媒を含む。なお、当該分散媒は固形分の一部を溶解するものであってもよい。かかる分散媒としては、金属コロイド粒子を首尾よく分散し得る分散媒であれば特に限定されないが、水及び/又は水溶性有機分散媒等の水性分散媒が挙げられる。水性分散媒である水及び/又は水溶性有機分散媒を用いると、本実施形態の導電性ペーストを製造する際、環境に対する悪影響が少ないため好ましい。
【0059】
なお、水溶性有機分散媒としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はなく用いることができ、例えば、導電性ペーストの任意成分として後述する水溶性有機溶剤を用いることができるが、水と混合して用いる場合、得られる混合物が水性となるように、例えば、75体積%以下の有機分散媒を用いるのが好ましい。
【0060】
(1−5)金属コロイド液のその他の成分
本実施形態の金属コロイド液は、上記有機成分とは異なる界面活性剤を含有していてもよい。多成分溶媒系の導電性ペーストにおいては、乾燥時の揮発速度の違いによる被膜表面の荒れ及び固形分の偏りが生じ易い。本実施形態の金属コロイド液に界面活性剤を添加することによってこれらの不利益を抑制し、均一な導電性被膜を形成することができる導電性ペーストが得られる。
【0061】
本実施形態において用いることのできる界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の何れを用いることができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。少量の添加量で効果が得られるので、フッ素系界面活性剤が好ましい。
【0062】
界面活性剤の含有量は少な過ぎると効果が得られず、多過ぎると被膜中で残量不純物となるため、導電性が阻害されるおそれがある。好ましい界面活性剤の含有量は、金属コロイド液の分散媒100質量部に対して0.01〜5質量部である。
【0063】
本実施形態の導電性ペーストの粘度は、1〜1000cpsの粘度範囲であることが望ましく、5〜900cpsの粘度範囲がより好ましく、30〜800cpsの粘度範囲で、あることが特に好ましい。当該粘度範囲とすることにより、基材上に導電性ペーストを塗布する方法、又は、導電性ペーストを用いて基材上に描画する方法として幅広い方法を適用することができる。例えば、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー方式、バーコート法、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、刷毛による塗布方式、流延法、フレキソ法、グラビア法、又はシリンジ法等のなかから適宜選択して採用することができるようになる。なお、粘度の調整は、固形分濃度の調整、各成分の配合比の調整、増粘剤の添加等によって行うことができる。
【0064】
ここで、本実施形態の導電性ペーストの粘度は、振動式粘度計VM−100A−L(例えばCBC(株)製のVM−100A−L)により測定されるものである。測定は振動子に液を浸漬させて行い、測定温度は常温(20〜25℃)とすればよい。
【0065】
(2)導電性ペーストの製造方法
本実施形態の導電性ペーストを製造するためには、まず、金属コロイド液を調製する。ついで、この金属コロイド液と上記流動抑制剤とを混合することにより、本実施形態の導電性ペーストを得ることができる。
【0066】
(2−1)金属コロイド液の調製方法
本実施形態の金属コロイド液を調製する方法としては、特に限定されないが、例えば、金属コロイド粒子を含む分散液を調製し、次いで、その分散液の洗浄を行う方法等が挙げられる。金属コロイド粒子を含む溶液を調製する工程としては、例えば、下記のように、分散剤を用いて分散媒中に分散させた金属塩(又は金属イオン)を還元させればよく、還元手順としては、化学還元法に基づく手順が採用されていればよい。
【0067】
即ち、上記のような金属粒子及び有機成分を含む金属コロイド液は、金属粒子を構成する金属の金属塩と、有機成分と、分散媒と、を含む原料水溶液を還元することにより調製することができる。この還元によって、有機成分が金属粒子の表面の少なくとも一部に局在化し、所望する金属コロイド液が得られる。
【0068】
本実施形態の金属コロイド液を調製するための原料水溶液(成分の一部が溶解せず分散していてもよい。)に含まれる分散媒は、水性であり、例えば、水又は水と水溶性有機分散媒との混合物からなる水性分散媒を用いることができる。
【0069】
金属コロイド液に含有させるための金属成分を得るための出発材料としては、種々の公知の金属塩又はその水和物を用いることができ、例えば、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酸化銀、酢酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀等の銀塩;例えば、塩化金酸、塩化金カリウム、塩化金ナトリウム等の金塩;例えば、塩化白金酸、塩化白金、酸化白金、塩化白金酸カリウム等の白金塩;例えば、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム等のパラジウム塩等が挙げられるが、適当な分散媒中に溶解し得、かつ還元可能なものであれば特に限定されない。また、これらは単独で用いても複数併用してもよい。
【0070】
また、上記原料水溶液においてこれらの金属塩を還元する方法は特に限定されず、例えば、還元剤を用いる方法、紫外線等の光、電子線、超音波又は熱エネルギーを照射する方法等が挙げられる。なかでも、操作の容易の観点から、還元剤を用いる方法が好ましい。
【0071】
上記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フェニドン、ヒドラジン等のアミン化合物;例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ヨウ素化水素、水素ガス等の水素化合物;例えば、一酸化炭素、亜硫酸等の酸化物;例えば、硫酸第一鉄、酸化鉄、フマノレ酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、硫化鉄、酢酸スズ、塩化スズ、二リン酸スズ、シュウ酸スズ、酸化スズ、硫酸スズ等の低原子価金属塩;例えば、ホルムアルデヒド、ハイドロキノン、ピロガロール、タンニン、タンニン酸、サリチル酸、D−グルコース等の糖等の有機化合物等が挙げられるが、分散媒に溶解し上記金属塩を還元し得るものであれば特に限定されない。上記還元剤を使用する場合は、光及び/又は熱を加えて還元反応を促進させてもよい。
【0072】
上記金属塩、分散剤及び還元剤を用いて金属コロイド液を調製する具体的な方法としては、例えば、上記金属塩を純水等に溶かして金属塩溶液を調製し、その金属塩溶液を徐々に分散剤と還元剤とが溶解した水溶液中に滴下する方法等が挙げられる。
【0073】
上記のようにして得られた金属コロイド液には、金属コロイド粒子の他に、還元剤の残留物や分散剤が存在しており、液全体の電解質濃度が高い傾向にある。このような状態の液は、電導度が高いので、金属コロイド粒子の凝析が起こり、沈殿し易い。そこで、上記金属コロイド粒子を含む溶液を洗浄して余分な電解質を取り除くことにより、電導度が10mS/cm以下の金属コロイド液を得ることができる。
【0074】
上記洗浄方法としては、例えば、得られた金属コロイド液を一定時間静置し、生じた上澄み液を取り除いた上で、純水を加えて再度撹枠し、更に一定期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度か繰り返す方法、上記の静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過装置やイオン交換装置等により脱塩する方法等が挙げられる。なかでも、脱塩する方法が好ましい。また、脱塩等した液は、適宜濃縮してもよい。
【0075】
(2−2)導電性ペーストの製造方法
本実施形態の導電性ペーストは、上記金属コロイド液と上記流動抑制剤を混合することによって製造することができる。金属コロイド液と流動抑制剤との混合方法は特に限定されるものではなく、攪拌機やスターラー等を用いて従来公知の方法によって行うことができる。
【0076】
複数の金属を含む導電性ペーストを得る場合、その製造方法としては特に限定されず、例えば、銀とその他の金属とからなる導電性ペーストを製造する場合には、上述した金属コロイド液の製造において、銀コロイド液とその他の金属のコロイド液とを別々に製造し、その後混合してもよく、銀イオン溶液とその他の金属イオン溶液とを混合し、その後に還元してもよい。
【0077】
また、本実施形態の導電性ペーストは、上記金属コロイド液を含むので、電導度を10mS/cm以下とすることができる。従来の導電性ペーストは、存在する電解質成分の濃度に敏感に反応して凝集沈降するので、分散安定性(貯蔵性)が損なわれることがあった。しかし、10mS/cm以下の電導度を有していることによって、本実施形態の導電性ペーストは、十分な分散安定性を有し、ガラス容器中での保管によるアルカリ分の流出、空気中の炭酸ガスの溶解による経時的な電解質濃度の上昇による貯蔵安定性の悪化等を防止することができる。
【0078】
さらに、10mS/cm以下の電導度を有している導電性ペーストは分散安定性が高いため、固形分濃度が高い導電性ペーストの製造が容易となり、容積を減ずることができ、流通時および運搬時の取り扱いを容易にすることができる。高濃度の導電性ペーストは、後で適当な分散媒を用いて、使用に最適な濃度に調整してもよい。
【0079】
なお、本実施形態の導電性ペーストには、上記金属コロイド液及び上記流動抑制剤に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、導電性ペーストに密着性、乾燥性又は印刷性等の機能を付与するために、例えばバインダーとしての役割を果たす樹脂成分、有機溶剤、増粘剤又は表面張力調整剤等の任意成分を添加してもよい。かかる任意成分としては、特に限定されず、例えば、水と任意に相溶する多価アルコール、消泡剤、レベリング剤、増粘剤等を挙げることができる。
【0080】
樹脂成分としては,例えば、ポリエステル系樹脂、ブロックドイソシアネート等のポリウレタン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂又はメラミン系樹脂等を挙げることができ、なかでも水性樹脂が好ましい。また、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
有機溶剤としては、水溶性溶剤が好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、重量平均分子量が200以上1,000以下の範囲内であるポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、重量平均分子量が300以上1,000以下の範囲内であるポリプロピレングリコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、グリセリン又はアセトン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、水と任意に相溶する多価アルコール(例えば、1,3−プロパンジオール、グリセリン、エチレングリコール等)を用いるのが、分散性を良好に保ちつつ導電性ペーストの乾燥の速さ(乾燥性)を適度に調整することができるという観点から、好ましい。水と任意に相溶する多価アルコールの添加量としては、導電性ペースト全体に対して20質量%以下であるのが好ましく、2〜15質量%であるのがより好ましい。
【0082】
増粘剤としては、例えば、クレイ、ベントナイト又はヘクトライト等の粘土鉱物、例えば、ポリエステル系エマルジョン樹脂、アクリル系エマルジョン樹脂、ポリウレタン系エマルジョン樹脂又はブロックドイソシアネート等のエマルジョン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、キサンタンガム又はグアーガム等の多糖類等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、セルロース誘導体のうちのヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0083】
また、増粘剤の添加量としては、導電性ペースト全体に対して0.1〜5質量%の範囲であることが望ましい。0.1質量%以上であれば、増粘の効果がより確実に得られ、5質量%以下であれば、絶縁体である上記増粘剤が金属粒子の焼成・接触を阻害しにくく、得られる導電性被膜の導電性を確保することができる。
【0084】
(3)導電性被膜(導電性被膜付基材)及びその製造方法
本実施形態の導電性ペーストを用いれば、上記導電性ペーストを基材に塗布する導電性ペースト塗布工程と、前記基材に塗布した前記導電性ペーストを300℃以下の温度(より好ましくは、更に、実際に用いた流動抑制剤の沸点以上)で焼成して導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程と、により、基材と、前記基材の表面の少なくとも一部に形成される導電性被膜と、を含む導電性被膜付基板を製造することができる。
【0085】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、前記導電性ペースト塗布工程での導電性ペーストとして、上述した本実施形態の導電性ペーストを用いれば、導電性被膜形成工程において、前記基材に塗布した前記導電性ペーストを300℃以下の温度で焼成しても、優れた導電性を有する導電性被膜がより確実に得られることを見出した。
【0086】
ここで、本実施形態の「導電性ペーストを基材に塗布する導電性ペースト塗布工程」における「基材に塗布」とは、導電性ペーストを面状に塗布する場合も線状に塗布(描画)する場合も含む概念である。塗布されて、加熱により焼成される前の状態の導電性ペーストからなる塗膜の形状は、所望する形状にすることが可能である。したがって、加熱による焼成後の本実施形態の導電性被膜は、面状の導電性被膜及び線状の導電性被膜のいずれも含む概念であり、これら面状の導電性被膜及び線状の導電性被膜は、連続していても不連続であってもよく、連続する部分と不連続の部分とを含んでいてもよい。
【0087】
本実施形態において用いることのできる基材としては、導電性ペーストを塗布して加熱により焼成して導電性被膜を搭載することのできる、少なくとも1つの主面を有するものであれば、特に制限はないが、耐熱性に優れた基材であるのが好ましい。また、先に述べたように、本実施形態の導電性ペーストは、従来の導電性ペーストに比較して低い温度で加熱して焼成しても十分な導電性を有する導電性被膜を得ることができるため、この低い焼成温度よりも高い温度範囲で、従来よりも耐熱温度の低い基材を用いることが可能である。
【0088】
このような基材を構成する材料としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ビニル樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、セラミックス、ガラス又は金属等を挙げることができる。また、基材は、例えば板状又はストリップ状等の種々の形状であってよく、リジッドでもフレキシブルでもよい。基材の厚さも適宜選択することができる。接着性若しくは密着性の向上又はその他の目的ために、表面層が形成された基材や親水化処理等の表面処理を施した基材を用いてもよい。
【0089】
導電性ペーストを基材に塗布する工程では、種々の方法を用いることが可能であるが、上述のように、例えば、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー方式、バーコート法、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、刷毛による塗布方式、流延法、フレキソ法、グラビア法、又はシリンジ法等のなかから適宜選択して用いることができる。
【0090】
また、塗布されて、加熱により焼成される前の状態の導電性ペーストからなる塗膜の形状は、所望する形状にすることが可能であり、したがって、本実施形態における「塗布」とは、導電性ペーストを面状に塗布する場合も線状に塗布(描画)する場合も含む概念であり、本実施形態の塗膜及び導電性被膜は、面状及び線状の塗膜及び導電性被膜のいずれも含む概念である。また、これら面状及び線状の塗膜及び導電性被膜は、連続していても不連続であってもよく、連続する部分と不連続の部分とを含んでいてもよい。
【0091】
上記のように塗布した後の塗膜を、300℃以下の温度に加熱することにより焼成し、本実施形態の導電性被膜(導電性被膜付基材)を得る。本実施形態においては、先に述べたように、本実施形態の導電性ペーストを用いるため、300℃以下の温度で焼成しても、優れた導電性及び耐レベリング性を有する導電性被膜がより確実に得られる。この焼成により、金属粒子同士の結合を高めて焼結することができる。
【0092】
本実施形態においては、導電性ペーストがバインダー成分を含む場合は、導電性被膜の強度向上及び基材との接着力向上等の観点から、バインダー成分も焼結することになるが、場合によっては、各種印刷法へ適用するために導電性ペーストの粘度を調整することをバインダー成分の主目的として、焼成条件を制御してバインダー成分を全て除去してもよい。
【0093】
上記焼成を行う方法は特に限定されるものではなく、例えば従来公知のギアオーブン等を用いて、基材上に塗布または描画した上記導電性ペーストの温度が300℃以下となるように焼成することによって導電性被膜を形成することができる。上記焼成の温度の下限は必ずしも限定されず、基材上に導電性被膜を形成できる温度であって、かつ、本発明の効果を損なわない範囲で上記流動抑制剤を蒸発又は分解により除去できる温度であることが好ましい(本発明の効果を損なわない範囲で一部が残存していてもよいが、望ましくは全て除去されるのが好ましい。)。
【0094】
本実施形態の導電性ペーストによれば、100℃程度の低温加熱処理でも高い導電性を発現する導電性被膜を形成することができるため、比較的熱に弱い基材上にも導電性被膜を形成することができる。また、焼成時間は特に限定されるものではなく、焼成温度に応じて、基材上に導電性被膜を形成でき、流動抑制剤を蒸発又は分解できる焼成時間であればよい。
【0095】
なお、作製した導電性被膜中における流動抑制剤の残存量は、以下の手法によって算出することができる。まず、ブランクとして流動抑制剤を含まない導電性ペーストを調製する。当該導電性ペーストを基材に塗布後、または、当該導電性ペーストを用いて基材に描画後、焼成し、基材上に形成された導電性被膜を金属へラ等を用いてかき取り、熱重量分析(TG)測定(昇温速度10℃/分、窒素雰囲気)に供する。熱重量分析前後の上記被膜の重量から、重量減少率を求める。次に、流動抑制剤を含む本実施形態の導電性ペーストを調製し、ブランクと同様の条件で処理した被膜を、ブランクと同様の条件で熱重量分析を行い、下記式に従って重量減少率の差分を求め、当該差分を、導電性被膜中における流動抑制剤の残存量とする。
式:流動抑制剤の残存量(質量%)=(本実施形態の導電性被膜の重量減少率(%)−(ブランクの導電性被膜の重量減少率(%))
【0096】
本実施形態においては、上記基材と導電性被膜との密着性を更に高めるため、上記基材の表面処理を行ってもよい。上記表面処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、電子線処理等のドライ処理を行う方法、基材上にあらかじめプライマー層や導電性ペースト受容層を設ける方法等が挙げられる。
【0097】
このようにして本実施形態の導電性被膜(導電性被膜付基材)を得ることができる。このようにして得られる本実施形態の導電性被膜は、例えば、0.1〜5μm程度、より好ましくは0.1〜1μmである。本実施形態の導電性ペーストを用いれば、厚さが0.1〜5μm程度であっても、十分な導電性を有する導電性被膜が得られる。なお、本実施形態の導電性被膜の体積抵抗値は、15μΩ・cm以下である。
【0098】
なお、本実施形態の導電性被膜の厚みtは、例えば、下記式を用いて求めることはできる(導電性被膜の厚さtは、レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス製レーザー顕微鏡VK−9510)で測定することも可能である。)。
式:t=m/(d×M×w)
m:導電性被膜重量(スライドガラス上に形成した導電性被膜の重さを電子天秤で測定)
d:導電性被膜密度(g/cm3)(銀の場合は10.5g/cm3
M:導電性被膜長(cm)(スライドガラス上に形成した導電性被膜の長さをJIS1級相当のスケールで測定)
w:導電性被膜幅(cm)(スライドガラス上に形成した導電性被膜の幅をJIS1級相当のスケールで測定)
【実施例】
【0099】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の導電性ペースト及び本発明の導電性被膜(導電性被膜付基材)の製造方法について更に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
≪調製例1≫
クエン酸3ナトリウム二水和物(和光純薬工業(株)製の試薬特級)34.1gと、硫酸第一鉄七水和物(和光純薬工業(株)製の試薬特級)32.3gと、を溶解させた水溶液約200mLを室温下で攪拌しながら溶解させ、ここに0.66g/mLの硝酸銀(和光純薬工業(株)製の試薬特級)水溶液15mLを滴下し、滴下後2時間攪拌を行い、銀コロイド液を調製した。得られた銀コロイド液に対し、導電率が30μS/cm以下になるまで透析することで脱塩を行った。透析後、さらに濃縮し、2100rpm(920G)、10分間の条件で遠心分離を行うことで、粗大金属コロイド粒子を除去した。粗大金属コロイド粒子除去後の銀コロイド液を銀コロイド液Aとした。
【0101】
この銀コロイド液中の固形分を、乾燥重量法によって求めた。ここで得られた固形分をについて、セイコー電子工業(株)社製TG/DTA300を用いて昇温速度10℃/分で室温から500℃までの大気中における熱重量変化を求め、100℃から500℃までの重量減少を計算した。銀コロイド液中の固形分は55質量%であり、熱重量分析による500℃昇温時の重量減少は2.0質量%であった。
【0102】
≪調製例2≫
クエン酸3ナトリウム二水和物の代わりにリンゴ酸二ナトリウム(和光純薬工業(株)製の試薬特級)を用いたこと以外は、上記調製例1と同様の方法を実施し、銀コロイド液Bを得た。得られた銀コロイド液の固形分は55質量%であり、熱重量分析による500℃昇温時の重量減少は4.9質量%であった。
【0103】
≪調製例3≫
グリシン(和光純薬工業(株)製の試薬特級)0.44gと、硫酸第一鉄七水和物(和光純薬工業(株)製の試薬特級)3.2gと、を90mLのイオン交換水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製の試薬特級をイオン交換水で適当な濃度に調整したもの)でpH7に調整した後、イオン交換水を添加して全量を128mLにした。次に、室温下にマグネティックスターラーで攪拌しながら、1gの硝酸銀(和光純薬工業(株)製の試薬特級)を含む水溶液2mLを滴下させて銀コロイド液を調製した。
【0104】
得られた銀コロイド液からは、分画分子量5万の限外濾過膜(アドバンテック東洋(株)製)を用いて濾過し、不純物イオンを除去した。不純物イオン除去後の銀コロイド液を銀コロイド液Cとした。なお、濾過は、100mLイオン交換水を20回、計2000ccイオン交換水を通して行った。得られた銀コロイド液の固形分は55質量%であり、熱重量分析による500℃昇温時の重量減少は9.7質量%であった。
【0105】
≪実施例1〜8及び比較例1〜4≫
表1に示すように、上記のようにして得られた銀コロイド液A〜Cのうちのいずれかと、表1に示す化合物と、を混合し、得られた混合物にイオン交換水及びその他の添加物を添加して、最終固形分が40質量%になるように調整し、導電性ペースト1〜8及び比較導電性ペースト1〜4を得た。
【0106】
[評価試験]
(1)導電性被膜の導電性評価
導電性ペースト1〜8又は比較導電性ペースト1〜4を用い、スライドガラスにディスペンサー(武蔵エンジニアリング(株)製のSHOTMASTER300、ニードル:SNA−30G(内径0.14mm))により線幅300μm及び長さ10cmのラインを引き、塗膜を得た。得られた塗膜を自然乾燥後、ギアオーブンにて250℃×1時間の条件で加熱を行った。その後、横川メータ&インスツルメンツ(株)製の携帯用ダブルブリッジ2769を用いてダブルブリッジ法により体積抵抗率を求めた。具体的には、以下の式に基づき、測定端子間距離と導電性被膜の厚みから体積抵抗値を換算した。体積抵抗値が15μΩ・cm以下の場合を「○」、15μΩ・cm超の場合を「×」と評価した。結果を表2に示した。
式:(体積抵抗率ρv)=
(抵抗値R)×(被膜幅w)×(被膜厚さt)/(端子間距離L)
【0107】
(2)耐レベリング性評価(液だれ評価)
ガラス基板(商品名:AN100、旭硝子(株)製)上に、直径約3mmの円状になるように、導電性ペースト1〜8又は比較導電性ペースト1〜4を1μL滴下し、ガラス基板を45度傾斜させて、60℃のギヤオーブン中で2時間乾燥させた。乾燥後、インクの液だれの有無を目視評価した。液が垂れていなかった場合を「○」、垂れていた場合を「×」と評価した。結果を表2に示した。
【0108】
(3)粘度
導電性ペースト1〜8又は比較導電性ペースト1〜4の粘度を、振動式粘度計VM−100A−L(CBC(株)製)により測定した。測定は振動子に液を浸漬させて行い、測定温度は常温(20〜25℃)とした。
【0109】
【表1】

【0110】
*1)和光純薬工業(株)製試薬特級、mp:58℃、bp:292〜297℃
*2)和光純薬工業(株)製試薬特級、mp:69℃、bp:267℃
*3)和光純薬工業(株)製試薬特級、mp:36℃、bp:261℃
*4)和光純薬工業(株)製試薬特級、分解点:132.7℃
*5)和光純薬工業(株)製試薬特級、mp:−12.9℃、bp:197.3℃
*6)和光純薬工業(株)製、固体、分子量:180、mp:146℃、bp:>300℃
【0111】
【表2】

【0112】
表2に示した結果から明らかなように、本発明の導電性ペーストを用いれば、特定の流動抑制剤を含むことにより、比較的低い加熱温度による焼成によっても十分な導電性を有する導電性被膜を形成することができ、更に、基材への塗布後(描画後)に当該基材上を流れにくい耐レベリング性を有する導電性ペーストが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明により得られる導電性ペーストは、特定の流動抑制剤を含むことにより、比較的低い加熱温度による焼成によっても十分な導電性を有する導電性被膜を形成することができ、更に、基材への塗布後(描画後)に当該基材上を流れにくい耐レベリング性を有する。これにより、本発明の導電性ペーストを塗布する基材としては、ガラスの他、PET又はポリイミド等、耐熱性の低い樹脂製基材への塗布及び焼成が可能である。
【0114】
本発明の導電性ペーストは、例えば、太陽電池パネル配線、フラットパネルディスプレイの電極、回路基板又はICカードの配線を形成するための導電性材料、スルーホール又は回路自体、ブラウン管やプラズマディスプレイの電磁波遮蔽用コーティング剤、建材又は自動車の赤外線遮蔽用コーティング剤、電子機器や携帯電話の静電気帯電防止剤、曇ガラスの熱線用コーティング剤、又は樹脂材料に導電性を付与するためのコーティング材等として好適に利用することができる。また、本発明の導電性ペーストにより、高い導電性を発現する被膜を形成することができるため、基材の種類に制約を受けることなく導電性に優れた導電パターンを形成することができることに加えて、耐レベリング性に優れ、様々な粘度範囲に調整できるため、幅広い描画装置や印刷機械等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コロイド液と、
常温で固体であって300℃以下の沸点を有する有機化合物からなる流動抑制剤と、を含むこと、
を特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記流動抑制剤が、トリメチロールプロパン、ε−カプロラクタム、炭酸エチレン又は尿素であること、
を特徴とする請求項1記載の導電ペースト。
【請求項3】
前記流動抑制剤を、前記金属コロイド液の固形分に対して2〜50質量%の量で含むこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
更に、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール又はグリセリンを含むこと、
を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の導電性ペースト。