説明

小型冷却装置

【目的】 本発明は可燃性のハイドロカーボン冷媒を使用した小型冷却装置に関してに関して、装置部品破損によってハイドロカーボン冷媒が漏れて引火した場合の被害を低減することを目的とする。
【構成】 本発明の直冷型冷凍装置は、圧縮機9と、拡散兼放熱用ダクト18と、ファン19と、拡散用ダクト21とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に可燃性の冷媒を使用した場合の小型冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、クロロフルオロカーボン(以下CFCと称する)の影響によるオゾン層破壊及び地球温暖化等の環境問題が注目されている。このような観点より、冷媒であるCFCの全廃が極めて重要なテーマとなっている。
【0003】現在CFCをハイドロクロロフルオロカーボン(以下HCFCと称する)やハイドロフルオロカーボン(以下HFCと称する)に転換していく一方で可燃性はあるが地球温暖化への影響が極めて少ないハイドロカーボン(以下HCと称する)冷媒への展開も図られている。
【0004】例えば1993年2月にベルギーで行われたIIR−IIFのコミッションB1/2の予稿集のP281〜P291には家庭用小型冷却装置にHC冷媒であるプロパン(R290)やイソブタン(R600a)が適用できることが示されている。
【0005】以下、図面を参照しながら上記従来のHC小型冷却装置について説明する。図9は、従来のHC小型冷却装置の断面図である。図9において1は小型冷却装置の本体、2は断熱箱体で、3は鋼板からなる外箱、4はABSやPSからなる内箱、5はウレタン等からなる断熱材とで構成されている。6はドアで断熱箱体2に設けられている。本体1の背面下部には機械室7が設置されている。
【0006】8は蒸発器で前記内箱4の背面側に設置される。また前記機械室7に圧縮機9が設置され、ディスチャージパイプ10、凝縮器11、キャピラリーチューブ12、前記蒸発器8、サクションパイプ13と順次環状に接続し、冷凍サイクルを構成する。
【0007】前記キャピラリーチューブ12とサクションパイプ13は、互いに熱交換的に、例えばハンダ付け等により密接して設置されている。そしてこの冷凍サイクルにはHC冷媒14が封入されている。
【0008】前記内箱4の内側には、内箱4の温度を圧縮機9の運転停止により制御する庫内温度調節手段15が設置される。16は庫内灯、17はドアスイッチで庫内灯16の点滅を行う。
【0009】以上のように構成された小型冷却装置について、以下その動作について説明する。
【0010】まず、圧縮機9を運転すると圧縮機9からディスチャージパイプ10を通じて吐出された高温高圧のHC冷媒14は、凝縮器11で、外気と熱交換して凝縮液化し、キャピラリーチューブ12に流入する。キャピラリーチューブ12でHC冷媒14は減圧され、蒸発器8で蒸発し、内箱4の内側の空気と熱交換を行う。ここで、蒸発気化したHC冷媒14は、そのまま、サクションパイプ13を通り、圧縮機9へと戻る。
【0011】このとき、サクションパイプ13内の気化した温度の低いHCガス冷媒14と、キャピラリーチューブ内の液化した温度の高いHC液冷媒14は、互いに熱交換を行い、HC液冷媒14は過冷却方向へ、HCガス冷媒14は加熱方向へとそれぞれエンタルピが減少、増加する。
【0012】これにより冷凍効果が大きくなり、冷凍能力は向上する。そして内箱4の背面側に設置した蒸発器が冷却されるので内箱4内も冷却され、その際内箱4内の水分が霜として内箱4の壁面に付着する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の構成は、冷媒として可燃性のHCガスを使用し、また圧縮器は断熱箱体背面下部の機械室に設置されている。よって圧縮機のディスチャーヂパイプおよびサクションパイプの溶接部分に、溶接不良、腐食が生じ、その部分からHC冷媒が漏れた場合、比重が空気より大きいHC冷媒は、拡散せずに、断熱箱体の下部に滞留する。そして断熱箱体の電気接点などから火花がでた場合、これが着火源となり、可燃性のHC冷媒が発火することが考えられる。
【0014】また、圧縮機や蒸発器、凝縮器などの内容積が大きい。よって内容積が大きい程、その容積に応じた量の可燃性のHC冷媒をシステム内に封入しなければならない。ゆえに、庫内、庫外にHC冷媒が漏れ、引火した場合にHC冷媒封入量の増加にともなって、影響も大きくなることが考えられる。
【0015】また、上記従来の構成は、冷媒として可燃性のHC冷媒を使用しているため、内箱表面に付着した霜をアイスピック等を使用して取り除く際、内箱をつき破り蒸発器を破損したときに可燃性のHC冷媒が小型冷却装置の内箱内に漏れる可能性がある。内箱には、庫内灯やドアスイッチなどの電気接点があり、内箱内にHC冷媒が充満した状態で、ドアを開くとこれらの電気接点が着火源となり可燃性のHCガスが発火することが考えられる。
【0016】本発明は従来の課題を解決するもので、HC冷媒への引火の危険性を低減できる小型冷却装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため本発明の小型冷却装置は、圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してハイドロカーボン冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体の外側の背面上部に機械室を備え、前記機械室に圧縮機と、拡散用ダクトと、機械室底部にファンとを備え、前記圧縮機の上部に拡散兼放熱用のダクトを備えた構成となっている。
【0018】また、別の小型冷却装置は、圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してハイドロカーボン冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体の外側の背面に、前記凝縮器として、出口に向かうにしたがって管の内径が細くなっている管内径異形式凝縮器を備えた構成となっている。
【0019】また、さらに別の小型冷却装置は、圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してハイドロカーボン冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体の外側の背面下部に機械室を備え、前記圧縮機として、内側にセラミックボールを充填した小内容積型圧縮機を前記機械室に備えた構成となっている。
【0020】また、さらに、別の小型冷却装置は、圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してハイドロカーボン冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体の内側の底面に、ハイドロカーボン冷媒を選択的に吸着させる吸着剤を備えた構成となっている。
【0021】
【作用】本発明の小型冷却装置は、圧縮機のディスチャーヂパイプおよびサクションパイプの溶接部分に、溶接不良、腐食が生じ、その部分からHC冷媒が漏れたとしても、圧縮機は、断熱箱体背面上部に設けられた機械室に設置されており、また、圧縮機上部には拡散兼放熱用ダクトと、機械室には拡散用ダクトと、機械室底部にはファンとが設置されているので、漏れたHC冷媒は、断熱箱体上部へ拡散される。
【0022】また、断熱箱体の外側の背面に、出口に向かうにしたがって管の内径が細くなっている管内径異形式凝縮器を設置しているので、通常の凝縮器より内容積を小さくすることができる。この管内径異形式凝縮器によって可燃性のHC冷媒の封入量が低減できる。
【0023】また、さらに、別の小型冷却装置は、断熱箱体背面下部の機械室に、内側にセラミックボールを充填した小内容積型圧縮機を前記機械室に設置している。よって通常の圧縮機より内容積を小さくすることができる。この小内容積型圧縮機によって可燃性のHC冷媒の封入量が低減できる。
【0024】また、内箱表面に付着した霜をアイスピック等を使用して取り除く際、内箱をつき破り蒸発器を破損して、可燃性のHC冷媒が断熱箱体の内箱内に漏れたとしても、内箱の底面に設置された、HC冷媒を選択的に吸着させる吸着剤が、HC冷媒を吸着するので、庫内灯やドアスイッチなどの電気接点による引火の可能性を低減することになる。
【0025】
【実施例】以下本発明による小型冷却装置の第1の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、従来と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0026】図1は、本発明の第1の実施例による小型冷却装置の断面図である。図2は、同実施例の断熱箱体上部に設置された機械室の要部平面図である。図3は、前記機械室の要部正面図である。
【0027】図1、図2、図3において、18は拡散兼放熱用ダクト、19はファン、20は圧縮機固定金具、21は拡散用ダクトである。機械室7は断熱箱体2背面上部に設置されている。機械室7上部は開放されており、断熱箱体2天面の一部を、機械室7の分だけ切り取った状態になっている。拡散用ダクト21は、機械室7に左右対称に設置されている。
【0028】圧縮機9は、拡散用ダクト21に圧縮機固定金具20を介して設置されている。拡散兼放熱用ダクト18は圧縮機9の上部に設置されておりまた放熱作用を高めるためスリットが開けられている。ファン19は常時回転しており、機械室7の底部に設置し圧縮機9の下に位置する。
【0029】なお、このファンが防爆仕様となっていることは言うまでもない。また、ディスチャージパイプ10とサクションパイプ13は拡散用ダクト21を貫通する形でそれぞれ凝縮器11、蒸発器8に接続されており、貫通部分は気密処理されている。
【0030】以上のように構成された小型冷却装置の動作について図1、図2、図3を参考に説明する。
【0031】機械室7に設置された圧縮機9を運転すると圧縮機9からディスチャージパイプ10を通じて吐出された高温高圧のHC冷媒14は、凝縮器11で、外気と熱交換して凝縮液化し、キャピラリーチューブ12に流入する。
【0032】キャピラリーチューブ12でHC冷媒14は減圧され、蒸発器8で蒸発し、内箱4の内側の空気と熱交換を行う。
【0033】ここで、蒸発気化したHC冷媒14は、そのまま、サクションパイプ13を通り、圧縮機9へと戻る。
【0034】このとき、サクションパイプ13内の気化した温度の低いHCガス冷媒14と、キャピラリーチューブ12内の液化した温度の高いHC液冷媒14は、互いに熱交換を行い、HC液冷媒14は過冷却方向へ、HCガス冷媒14は加熱方向へとそれぞれエンタルピが減少、増加する。これにより冷凍効果が大きくなり、冷凍能力は向上する。
【0035】そして内箱4の背面側に設置した蒸発器8が冷却されるので内箱4内も冷却される。
【0036】また、断熱箱体2背面上部に設置された機械室7内の空気は、ファン19の風力と拡散兼放熱用ダクト18、拡散用ダクト21によって強制的に機械室7上部より常時排気されている。
【0037】ここで、圧縮機とディスチャージパイプ10、サクションパイプ13の溶接部分において、溶接不良や腐食により、溶接部に穴が開き、その部分から可燃性のHC冷媒14が機械室7内に漏れた場合でも、HC冷媒14はファン19、拡散兼放熱用ダクト18、拡散用ダクト21によって、機械室7内の空気と共に強制的に排気拡散される。
【0038】よって、断熱箱体2下部にHC冷媒14が滞留することはなく、HC冷媒14は大気中に拡散するので、電気接点による引火の可能性を少なくすことができる。
【0039】また、圧縮機9は、ファン19によって常時冷却されており、さらに圧縮機9上部に設置された拡散兼放熱用ダクト18により放熱効率も上昇するので、結果的に圧縮機の能力や効率を向上することができる。
【0040】また、ファン19により上方へ排気することにで、機械室7内の漏れたHC冷媒14を含む空気を、水平、垂直両方向に対して均一かつ広範囲に拡散できる。
【0041】そのため、漏れたHC冷媒14の濃度を爆発限界以下へ容易に下げることができる。また、上方排気は、左右に排気するのに比べ、漏れたHC冷媒14を滞留しにくくできる。
【0042】次に、本発明による小型冷却装置の第2の実施例について、図4、図5を参照しながら説明する。なお、従来と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】図4は、本発明の第2の実施例による小型冷却装置の断面図である。図5は、本実施例における簡単な冷凍サイクル図である。
【0044】図4、図5において、22は出口に向かうにつれて管の内径を細くした管内径異形式凝縮器である。23は放熱フィンであり、凝縮時の熱伝達率を上げるものである。
【0045】以上のように構成された小型冷却装置において、以下その動作を図4、図5を参考に説明する。
【0046】機械室7に設置された圧縮機9を運転すると圧縮機9からディスチャージパイプ10を通じて吐出された高温高圧のHC冷媒14は、管内径異形式凝縮器22で、外気と熱交換して凝縮液化し、キャピラリーチューブ12に流入する。キャピラリーチューブ12でHC冷媒14は減圧され、蒸発器8で蒸発し、内箱4の内側の空気と熱交換を行う。
【0047】ここで、蒸発気化したHC冷媒14は、そのまま、サクションパイプ13を通り、圧縮機9へと戻る。このとき、サクションパイプ13内の気化した温度の低いHCガス冷媒14と、キャピラリーチューブ12内の液化した温度の高いHC液冷媒14は、互いに熱交換を行い、HC液冷媒14は過冷却方向へ、HCガス冷媒14は加熱方向へとそれぞれエンタルピが減少、増加する。
【0048】これにより冷凍効果が大きくなり、冷凍能力は向上する。そして内箱4の背面側に設置した蒸発器8が冷却されるので内箱4内も冷却される。
【0049】ここで、管内径異形式凝縮器22は、通常の凝縮器に比較して、内容積を小さくできかつ同等の能力を得ることができる。
【0050】結果として可燃性のHC冷媒14の封入量を削減でき、万が一庫内、庫外にHC冷媒14が漏れた場合の引火時の被害を最小限にすることができる。
【0051】また、単に内径を均一に細くする場合には、HC冷媒14の気相部分での圧損が多くなり、性能と効率の低下を招きやすい。しかし、本発明は、出口に向かうにつれて管径が細くなるので、気相部分での圧損はなく、また、HC冷媒14は循環量自体が少ないので、液相部分での圧損も問題にならないくらい小さい。
【0052】なお、本実施例における凝縮器の管内径を変えて、内容積を小さくする方法は、蒸発器の場合でも適用してもよい。この場合は出口に向かって管内径が太くなるようにする。
【0053】また、次に、本発明による小型冷却装置の第3の実施例について図6、図7を参照しながら説明する。なお、従来と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0054】図6は、本発明の第3の実施例による小型冷却装置の断面図である。図7は、本発明の第3の実施例による小容積型圧縮機24の断面図である。
【0055】図6、図7において、32は小容積型圧縮機24内に充填するセラミックボールである。25はステータである。26はロータである。27はクランクシャフトである。28はコンロッドである。29はピストンである。30は給油管である。これらは一体となって小容積型圧縮機24を形成している。31は潤滑油である。32は中空のセラミックボールである。
【0056】33はネットでありセラミックボール32を固定している。小容積型圧縮機24は、基本構造は通常のレシプロ式圧縮機と同じであり、ステータ25とロータ26による誘導モータの作動によってクランクシャフト27が回転し、それに連動してコンロッド28を介してピストン29が往復運動し、HC冷媒14を吸入圧縮する。
【0057】また、同時に潤滑油31が給油管30を通じて吸い上げられ、各摺動部に供給される。
【0058】以上のように構成された小型冷却装置において、以下その動作を図6、図7を参考に説明する。
【0059】機械室7に設置された小容積型圧縮機24を運転すると、小容積型圧縮機24からディスチャージパイプ10を通じて吐出された高温高圧のHC冷媒14は、凝縮器11で、外気と熱交換して凝縮液化し、キャピラリーチューブ12に流入する。
【0060】キャピラリーチューブ12でHC冷媒14は減圧され、蒸発器8で蒸発し、内箱4の内側の空気と熱交換を行う。ここで、蒸発気化したHC冷媒14は、そのまま、サクションパイプ13を通り、圧縮機9へと戻る。
【0061】このとき、サクションパイプ13内の気化した温度の低いHCガス冷媒14と、キャピラリーチューブ12内の液化した温度の高いHC液冷媒14は、互いに熱交換を行い、HC液冷媒14は過冷却方向へ、HCガス冷媒は加熱方向へとそれぞれエンタルピが減少、増加する。
【0062】これにより冷凍効果が大きくなり、冷凍能力は向上する。そして内箱4の背面側に設置した蒸発器8が冷却されるので内箱4内も冷却される。
【0063】ここで、小容積型圧縮機24の内部において、圧縮機の動作を妨げない空間にはセラミックボール32が充填されており、ネット33で固定されている。また、潤滑油31の部分にもセラミックボール32が浮かべてあり、ロータ26の回転を妨げないように、ロータ26部をネットでカバーしている。
【0064】以上のように本実施例の小型冷却装置は、内部にセラミックボール32を充填し、ネット33で固定またはカバーして、内部容積を減少させた小容積型圧縮機24使用しているので、可燃性のHC冷媒14の封入量を削減でき、万が一庫内、庫外にHC冷媒が漏れた場合の引火時の被害を最小限にすることができる。
【0065】また、シェル形状は変えて内容積を減少させる場合に比べると、この小内容積型圧縮機24は、従来の圧縮機に充填物を入れる方法なので、新たに設計し直したり、新たな生産ラインを作る必要もなく、現在使用している圧縮機のシェルをそのまま使うことができ、汎用性のある技術である。
【0066】また、次に、本発明による小型冷却装置の第4の実施例について図8を参照しながら説明する。なお、従来と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。図8は、本発明の第4の実施例による小型冷却装置の断面図である。
【0067】図8において、34は吸着剤である。吸着剤34は、HC冷媒14を選択的に吸着するものであり、使用する吸着剤34としては合成ゼオライト(例えばユニオン昭和製モレキュラーシーブス13EX)が適している。
【0068】また、空気より比重の重いHC冷媒14を吸着するために、吸着剤34は断熱箱体2の内箱4の底部に設置されている。以上のように構成された小型冷却装置について、以下その動作を説明する。 まず、圧縮機9を運転すると圧縮機9からディスチャージパイプ10を通じて吐出された高温高圧のHC冷媒14は、凝縮器11で、外気と熱交換して凝縮液化し、キャピラリーチューブ12に流入する。
【0069】キャピラリーチューブ12でHC冷媒14は減圧され、蒸発器8で蒸発し、内箱4の内側の空気と熱交換を行う。
【0070】ここで、蒸発気化したHC冷媒14は、そのまま、サクションパイプ13を通り、圧縮機9へと戻る。このとき、サクションパイプ13内の気化した温度の低いHCガス冷媒14と、キャピラリーチューブ内の液化した温度の高いHC液冷媒14は、互いに熱交換を行い、HC液冷媒14は過冷却方向へ、HCガス冷媒は加熱方向へとそれぞれエンタルピが減少、増加する。
【0071】これにより冷凍効果が大きくなり、冷凍能力は向上する。そして内箱4の背面側に設置した蒸発器が冷却されるので内箱4内も冷却され、その際内箱4内の水分が霜として内箱4の壁面に付着する。
【0072】ここで、内箱4表面に付着した霜をアイスピックなどを使用して取り除く際、過って内箱4をつき破り蒸発器8を破損した場合、可燃性のHC冷媒14が内箱4内に漏れると、空気より比重の重いHC冷媒14は、内箱4の底部に滞留する。
【0073】しかし、本発明においては、内箱4の底部に設置されている吸着剤34が、HC冷媒14を吸着する。前記の合成ゼオライトというのは、その内部に形成された孔径に基づいて、低分子物質を吸着する。
【0074】また、同じような大きさの分子では、沸点の高いものを吸着する傾向がある。ゆえに、空気中におかれたこの合成ゼオライトにおいては、空気中に含まれる水素、酸素、窒素をまず吸着する。
【0075】さらに時間が経つと、一酸化炭素、二酸化炭素を吸着した状態で平衡になる。よって、もし、微量のHC冷媒14が内箱4内に漏れた場合には、そのHC冷媒14を吸着することになる。
【0076】なお、沸点の高い水分は、本発明の小型冷却装置の庫内では、低湿度のためほとんど吸着されていない。以上のような作用によって、たとえ、微量のHC冷媒14が漏れて、ドア6を開かれた場合でも、庫内灯16やドアスイッチ17などの接点機器によるHC冷媒14への引火を低減することができる。
【0077】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してHC冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体の外側の背面上部に機械室有し、前記機械室に圧縮機と、拡散用ダクトと、機械室底部にファンとを有し、前記圧縮機の上部に拡散兼放熱用のダクトとから小型冷却装置を構成するので、機械室内の空気は常時排気されており、圧縮機のディスチャーヂパイプおよびサクションパイプの溶接部分に、溶接不良、腐食が生じ、その部分からHC冷媒が漏れたとしても、機械室内の空気とともに断熱箱体上部へ拡散される。よって漏れたHC冷媒が断熱箱体の下部に滞留するのを防ぐことができ、接点機器による引火の可能性を少なくすことができる。
【0078】また、圧縮機は、ファンによって常時冷却されており、さらに圧縮機上部に設置された拡散兼放熱用ダクトにより放熱効率も上昇するので、結果的に圧縮機の能力や効率も向上することができる。また、本発明は、圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してHC冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体と、断熱箱体の外側の背面に、前記凝縮器として、出口に向かうにしたがって管の内径が細くなっていて、通常の凝縮器より内容積が小さい管内径異形式凝縮器とから小型冷却装置を構成するので、可燃性のHC冷媒の封入量を削減でき、万が一庫内、庫外にHC冷媒が漏れた場合の引火時の被害を少なくすることができる。
【0079】また、本発明は、圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してHC冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体と、前記圧縮機として、内側にセラミックボールを充填した、通常の圧縮機より内容積が小さい小内容積型圧縮機とから小型冷却装置を構成するので、可燃性のHC冷媒の封入量を削減でき、万が一庫内、庫外にHC冷媒が漏れた場合の引火時の被害を最小限にすることができる。
【0080】また、本発明は、圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してHC冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体と、断熱箱体の内箱の底面に、ハイドロカーボン冷媒を選択的に吸着させる吸着剤とから小型冷却装置を構成するので、内箱表面に付着した霜をアイスピックなどを使用して取り除く際、過って内箱をつき破り蒸発器を破損して、可燃性のHC冷媒が内箱内に漏れた場合でも、内箱の底部に設置されている吸着剤が、HC冷媒を吸着することにより、たとえドアを開いた場合でも、庫内灯やドアスイッチなどの接点機器によるHC冷媒への引火を低減することができる。
【0081】また、さらに、上記4つの発明を組み合わせることにより、HC冷媒を使用した小型冷却装置において、より効果的に安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の小型冷却装置の断面図
【図2】同実施例の小型冷却装置の機械室の平面図
【図3】同実施例の小型冷却装置の機械室の正面図
【図4】本発明の第2の実施例の小型冷却装置の断面図
【図5】本発明の第2の実施例の簡単な冷凍サイクル図
【図6】本発明の第3の実施例の小型冷却装置の断面図
【図7】本発明の第3の実施例の小容積型圧縮機の断面図
【図8】本発明の第4の実施例の小型冷却装置の断面図
【図9】従来の小型冷却装置の断面図
【符号の説明】
2 断熱箱体
4 内箱
7 機械室
8 蒸発器
9 圧縮機
11 凝縮器
12 キャピラリーチューブ
18 拡散兼放熱用ダクト
19 ファン
21 拡散用ダクト
22 管内径異形式凝縮器
24 小容積型コンプレッサ
32 セラミックボール
34 吸着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してハイドロカーボン冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体の外側の背面上部に機械室有し、前記機械室に圧縮機と、拡散用ダクトと、機械室底部にファンとを有し、前記圧縮機の上部に拡散兼放熱用のダクトを有することを特徴とした小型冷却装置。
【請求項2】 圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してハイドロカーボン冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体の外側の背面に、前記凝縮器として、出口に向かうにしたがって管の内径が細くなっている管内径異形式凝縮器を有することを特徴とした小型冷却装置。
【請求項3】 圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してハイドロカーボン冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体の外側の背面下部に機械室を有し、前記圧縮機として、内側にセラミックボールを充填した小内容積型圧縮機を前記機械室に有することを特徴とした小型冷却装置。
【請求項4】 圧縮機と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器とを順次環状に接続してハイドロカーボン冷媒を封入した冷凍サイクルを有する断熱箱体の内側の底面に、ハイドロカーボン冷媒を選択的に吸着させる吸着剤を有することを特徴とした小型冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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