説明

少数主桁橋

【課題】主桁と横桁より成る四辺形の桁組によって支持したコンクリート床版のひび割れを防止する。
【解決手段】橋軸方向に配設した2又は3本の主桁11と、該主桁11間に架設した横桁12によって四辺形の桁組20を形成し、該桁組20によってコンクリート床版13を支持するようにした少数主桁橋である。前記桁組20の対角線に対してコンクリート床版用の鉄筋15a,15bを夫々略平行に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋軸方向に設けた2又は3本の主桁と、該主桁間に架設した横桁によって四辺形の桁組を形成し、該桁組によってコンクリート床版を支持するようにした少数主桁橋に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼橋の設計及び施工時における合理化、或いは省力化に伴い、支間が30m〜60m程度の中支間橋梁においては、従来の多主桁橋よりも経済性に優れた構造形式として、PC床版(プレストレストコンクリート床版)や合成床版を用いた2主桁橋が採用されるようになった(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
多主桁橋100は、主桁間隔を3m以下とし、例えば、図4に示すように、鋼製の主桁101が4本並行して設けられ、各主桁101の間は、所定間隔毎に対傾構102などで連結補強されており、上部には道路などのRC床版(コンクリート床版)103が構築されている。そして、コンクリート103上にアスファルト舗装104が施されている。
【0004】
この種のRC床版は、図5に示すように、鉄筋107を橋軸直角方向に配筋し、鉄筋105を橋軸方向に配筋している。特に、鉄筋105の継ぎ足し部106は、規定上、所定の長さLだけ重複させるので、継ぎ足し部106における鉄筋の使用量が増大すると云う問題がある。この継ぎ足し部106は、一断面に集中すると、鉄筋量が多く成り過ぎるために、その部分のコンクリートの行き渡りが悪くなり、強度が低下する可能性があるため、配筋作業やコンクリート打込み時の作業性を考慮して千鳥状に配置されている。
【0005】
また、PC床版2主桁橋200は、図6に示すように、鋼製の主桁201が2本並行して設けられ、各主桁201の間は所定間隔毎に平板状の横桁202などで連結補強されており、上部には道路などのPC床版203が構築されている。PC床版203は、シース204内に挿入したPC鋼材205を定着ナット206によって緊締するようになっている。そして、PC床版203上にアスファルト舗装207が施されている。
【0006】
また、合成床版2主桁橋300は、図7に示すように、二基の主桁301間にH断面またはI断面の横桁302が設けられており、その上部に合成床版303が構築されている。そして、合成床版303上にアスファルト舗装304が施されている。
【0007】
しかし、PC床版や合成床版は、以下のような問題も抱えている。
【0008】
すなわち、
(1) 2主桁橋の採用により上部工の全体工事費は、従来の多主桁橋に比べて安くなっているが、2主桁橋として採用するPC床版や合成床版自体は、従来採用されていたRC床版に比べて高価である。
(2) 床版の補修や取り替えが必要となった場合、PC床版や合成床版の場合は、2主桁の場合、全面的な交通止めが必要となる。その場合の社会的損失は、非常に大きいものとなる。また、3主桁以上の場合でも、PC床版は床版にプレストレスが導入されているため、幅員方向全幅による取替えが必要であり、全面交通止めとなる。更に、合成床版の場合は、増設縦桁などの大規模な構造補強が必要となる。
(3) PC床版を採用した場合は、現場施工管理に十分な管理が必要であり、RC床版の施工に比較して高度な施工技術を必要とする。
(4) 箱桁構造でPC床版を使用した場合は、プレストレスロスの問題が生じるため、プレストレスの導入に当たっては十分な検討を要する。
【0009】
そこで、床版支間を従来の桁間隔ではなく、図8に示すように、床版を支持する横桁401を従来よりも橋軸方向に密に配置して床版支間を橋軸方向とすることにより、広幅員の場合でも2本の主桁402でRC床版403を支持することが可能なRC床版2主桁橋400が考えられるようになった。
【0010】
しかし、横桁401によってRC床版403を支持する場合、図9(a)に示すように、自動車の通過によって横桁401の上フランジ404に矢印a及び矢印bのような首振り現象が発生するので、上フランジ404と垂直補助材405の溶接止端部406に疲労亀裂が発生する可能性がある。また、横桁401の上フランジ404は、横桁401とRC床版403からなる断面の中立軸付近にあるので、図9(b)に示すように、横桁401の上フランジ404は、小さな応力しか作用しないことが分かっている。
【0011】
また、図10に示すように、橋軸方向の二つの主桁501,501と、この二つの主桁501,501間に架設された二つの横桁502,502によって四辺形の桁組503を形成し、この桁組503によってコンクリート床版(図示せず)を支持するようにしたコンクリート床版2主桁橋500が提案されているが(例えば、特許文献2参照。)、このコンクリート床版2主桁橋500は、桁組503の対角線504上の応力Fが最も大きいために、桁組503の対角線504上にひび割れが起こり易いと云う問題があった。
【0012】
【非特許文献1】「新しい鋼橋の誕生 II 改訂版」,社団法人日本橋梁建設協会,野田清人(発行人),2004年12月,p.4
【特許文献2】特開2004−225290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、本発明の第1の目的は、主桁と横桁により形成された四辺形の桁組によって支持したコンクリート床版のひび割れを防止することにある。本発明の第2の目的は、横桁の上フランジと垂直補助材の溶接止端部に発生する疲労亀裂を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1係る発明は、橋軸方向に設けた2又は3本の主桁と、該主桁間に架設した横桁によって四辺形の桁組を形成し、該桁組によってコンクリート床版を支持するようにした少数主桁橋において、前記桁組の対角線に対してコンクリート床版用の鉄筋を夫々略平行に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
上記の如く、請求項1に係る発明は、橋軸方向に設けた2又は3本の主桁と、該主桁間に架設した横桁によって四辺形の桁組を形成し、該桁組によってコンクリート床版を支持するようにした少数主桁橋において、前記桁組の対角線に対してコンクリート床版用の鉄筋を夫々略平行に設けたので、コンクリート床版のひび割れ、特に、桁組の対角線上のひび割れを抑制することが可能になった。
【0016】
このため、桁組の対角線上のひび割れに起因するコンクリートブロックの落下などを回避することが可能になった。更に、定尺の鉄筋を使用したとしても継ぎ足し部がないので、配筋作業が容易になると共に、鉄筋の使用量を抑制することが可能になった。
【0017】
床版の取り替えが生じた場合、本発明の構造では従来と異なり、床版の主鉄筋方向が橋軸方向と45°方向のため、走行レーン毎に取り替えが出来、全面通行止めの必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る少数主桁橋の一部断面を含む斜視図であり、この少数主桁橋10は、橋軸方向に配置した二基の主桁11,11の間に橋軸方向に所定の間隔で設けて複数の横桁12を架設している。そして、二基の主桁11,11と二つの横桁12,12によって形成された四辺形の桁組20によってコンクリート床版13を支持するようになっている。このコンクリート床版13には、アスファルト舗装14が施されている。
【0020】
上記横桁12は、図2(a)及び図3に示すように、下フランジ21と、この下フランジ21上に立設したウェブ22と、このウェブ22の上方に延長し、かつ、コンクリート床版13内に埋設する接合部23と、接合部23の上辺に沿って設けた多数の孔24により形成されている。
【0021】
これらの孔24は、図3に示すように、接合部23の上辺に沿って横一列に設けられているが、所望により千鳥状に設けることもできる。また、上記ウェブ22と接合部23は、溶接などにより結合するのではなく、一枚の鋼板から切り出して作成することが好ましい。また、孔24の直径は、30mm〜80mm、より好ましくは50mm〜70mmの範囲が好ましく、この範囲から外れると、接合部23とコンクリート床版13の接合力が低下する。
【0022】
図2(a)及び図3に示すように、接合部23は、コンクリート床版13内に埋設され、コンクリート床版13と機械的に接合している。また、接合部23に設けた孔24には、コンクリート床版用の第1の鉄筋15a,15bが挿入されている。つまり、一方の第1の鉄筋15aは、桁組20の一方の対角線(図示せず)と平行に配筋され、他方の第1の鉄筋15bは、桁組20の他方の対角線(図示せず)と平行に配筋されている。
【0023】
更に、接合部23の上方には、コンクリート床版用の第2の鉄筋16a,16bが配筋されている。一方の第2の鉄筋16aは、橋軸方向に配筋され、他方の第2の鉄筋16bは、橋軸直角方向に配筋されている。第2の鉄筋の配筋は、上記に限らず、例えば、第2の鉄筋16aを橋軸に対して+45°に設け、第2の鉄筋16bを橋軸に対して−45°に設けてもよい。
【0024】
また、第1の鉄筋15a、15bは、コンクリート床版13のひび割れを抑制可能であれば、対角線に対して必ずしも平行でなくてもよい。尚、図1では、図面が煩雑になるので、第2の鉄筋16a,16bを省略している。
【0025】
この発明によれば、図2(b)に示すように、コンクリート床版13の下面、即ち、従来の横桁の上フランジが存在した個所は、応力σが小さいから横桁の上フランジを除去しても強度的に支障がない。
【0026】
上記のように、この発明は、コンクリート床版用の第1の鉄筋15a,15bを桁組20の対角線に対して夫々ほぼ平行に設けたため、コンクリート床版13のひび割れ、特に、桁組20の対角線上のひび割れを抑制することが可能である。このため、桁組20の対角線上のひび割れに起因するコンクリートブロックの落下などを回避することが可能である。更に、定尺の鉄筋を使用したとしても継ぎ足し部がないので、配筋作業が容易になると共に、鉄筋の使用量を抑制することが可能である。
【0027】
更に、この発明は、横桁12を、下フランジ21と、この下フランジ21上に立設したウェブ22と、このウェブ22の上方に延長し、かつ、コンクリート床版13内に埋設する接合部23と、接合部23の上辺に沿って設けた多数の孔24により形成したため、従来、問題視されていた横桁12の上フランジと垂直補助材の溶接止端部における疲労亀裂の発生を回避することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る少数主桁橋の一部縦断を含む斜視図である。
【図2】(a)横桁を含むコンクリート床版の要部拡大断面図、(b)同所の応力線図である。
【図3】図2(a)のX−X断面図である。
【図4】多主桁橋の断面図である。
【図5】コンクリート床版の配筋状態を示す平面図である。
【図6】PC床版2主桁橋の断面図である。
【図7】合成床版2主桁橋の断面図である。
【図8】RC床版2主桁橋の一部断面を含む斜視図である。
【図9】(a)横桁を含むコンクリート床版の要部拡大断面図、(b)同所の応力線図である。
【図10】コンクリート床版を四辺形の桁組で支持した場合の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
10 少数主桁橋
11 主桁
12 横桁
13 コンクリート床版
15a,15b 鉄筋
20 桁組

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向に設けた2又は3本の主桁と、該主桁間に架設した横桁によって四辺形の桁組を形成し、該桁組によってコンクリート床版を支持するようにした少数主桁橋において、前記桁組の対角線に対してコンクリート床版用の鉄筋を夫々略平行に設けたことを特徴とする少数主桁橋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−190256(P2008−190256A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27250(P2007−27250)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】