説明

屋外用電子機器筐体装置

【課題】扉に取り付けられたパッキンの劣化により水漏れがあった場合に被害が小さく、簡単な構造で製造コストを抑えた屋外用電子機器筐体装置を得る。
【解決手段】本体ケース1の開口部を開閉可能に閉じる扉2と、扉2の内側周縁部に取り付けられたパッキン3と、本体ケース1の底板部4に設けられた水抜き孔7を備えた筐体装置100において、パッキン3の劣化により本体ケース1内部に水が浸入した場合に、浸入した水がパッキン3を伝って底板部4に落下する位置を水滴落下部とし、この水滴落下部に、あるいは水滴落下部に可能な限り近接して水抜き孔7を設けた。これにより、パッキン3の劣化により水漏れがあった場合に、落下した水滴は即座に水抜き孔7から排出され、底板部4が長時間、広範囲に濡れることを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構造で低コストでありながらNEMA4(IP56相当)の保護等級を確保することが可能な屋外用電子機器筐体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外に設置され電子機器を収納する屋外用電子機器筐体装置は、本体ケースと、本体ケースの開口部を開閉可能に閉じる扉を備え、扉の内側周縁部には、防雨・防塵用のパッキンが取り付けられていた。このパッキンは、扉が閉じられた時に扉と本体ケースとの間に弾性圧縮された状態で介在し、扉と本体ケースの間を密に閉じる効果がある。
【0003】
しかし、パッキンの経年劣化によりその効果が薄れると、筐体装置の内部に雨水が浸入することがある。また、設置場所によっては筐体内部に結露が発生し、本体ケースの底板部に落下することもあり、これらは底板部の腐食、及び収納された電子機器の故障の原因となる。
【0004】
このため、先行技術には、本体ケースの底板部に水抜き孔を設け、漏水や結露により底板部に溜まった水を抜くようにしたものがある。例えば特許文献1には、外部扉と内部扉の二重構造を有し、それぞれの扉がパッキンを介して密に閉じられ、さらに外部扉と内部扉の間の床に水抜き孔が設けられた屋外操作盤が示されている。
【0005】
また、特許文献2には、扉の内側にゴムパッキンを有するとともに、底板に水抜き孔と、水の浮力を受けて水抜き孔を塞ぐフロート弁を備えた屋外設置用電子機器筐体装置が示されている。この例では、道路が冠水して外部から水が進入するような場合には、外部から水の浮力を受けてフロート弁が水抜き孔を塞ぎ、外部からの浮力を受けていない場合には水抜き孔が開放された状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−115707号公報
【特許文献2】特開2003−229680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような屋外用電子機器筐体装置においては、収納された電子機器の故障の原因となる水漏れは、本来、あってはならないものである。しかし、パッキンの経年劣化は、設置場所の環境(温度、湿度)により進行の度合いが大きく異なり、一律的、定期的な管理が難しい。このため、現実的には、パッキンの劣化により水漏れがあった場合に、その被害が最小限となるような筐体装置が望まれる。
【0008】
しかし、先行技術には、パッキンが劣化したことを想定し、被害が最小限となるような位置に水抜き孔を設けているものはなかった。さらに、上記特許文献1に提示されたものは、二重扉であるため構造が複雑でありコスト高となる上、内部扉の内部空間には水抜き孔が設けられていないため、結露が起こりやすい場所に設置された場合には底板部に水が溜まる可能性がある。
【0009】
また、上記特許文献2に提示されたものは、水の浮力を受けて水抜き孔を塞ぐフロート弁を備えており、道路が冠水した場合には効力を発揮するが、部品点数が多くコスト高となる。さらに、水抜き孔が扉から遠い底板部の奥の方に設けられているため、扉に取り付けられたゴムパッキンが劣化して水漏れがあった場合に、底板部に溜まった水を抜くのに時間を要する。その結果、本体ケースの底板部が長時間、広範囲に濡れることになり、腐食の原因となるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、扉に取り付けられたパッキンの劣化により水漏れがあった場合に被害が小さく、簡単な構造で製造コストを抑えた屋外用電子機器筐体装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る屋外用電子機器筐体装置は、開口部を有する本体ケースと、開口部を開閉可能に閉じる扉と、扉の内側周縁部に取り付けられ、扉を閉じた時に扉と本体ケースの間に弾性圧縮された状態で介在するパッキンと、本体ケースの底板部に設けられた水抜き孔を備え、扉を閉じた状態で、パッキンと本体ケースの隙間、及びパッキンと扉の隙間のいずれか一方または両方から本体ケース内部に水が浸入した場合に、浸入した水がパッキンを伝って底板部に落下する位置を水滴落下部とし、この水滴落下部に水抜き孔を設けたものである。
【0012】
また、開口部を有する本体ケースと、開口部を開閉可能に閉じる扉と、扉の内側周縁部に取り付けられ、扉を閉じた時に扉と本体ケースの間に弾性圧縮された状態で介在するパッキンと、本体ケースの底板部に設けられた水抜き孔を備え、扉を閉じた状態で、パッキンと本体ケースの隙間、及びパッキンと扉の隙間のいずれか一方または両方から本体ケース内部に水が浸入した場合に、浸入した水がパッキンを伝って底板部に落下する位置を水滴落下部とし、この水滴落下部に可能な限り近接して水抜き孔を設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、底板部の水滴落下部に、あるいは水滴落下部に可能な限り近接して水抜き孔を設けることにより、パッキンの劣化により水漏れがあった場合にも、パッキンを伝って落下した水滴は即座に水抜き孔から排出され、底板部が長時間、広範囲に濡れることを防ぐことができる。従って、漏水の被害が小さく、且つ、簡単な構造で製造コストを抑えた屋外用電子機器筐体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る屋外用電子機器筐体装置を示す正面図及び側面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る屋外用電子機器筐体装置の内部を示す平面図及び部分拡大断面図である。
【図3】本発明の比較例に係る屋外用電子機器筐体装置の内部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下に、本発明の実施の形態1に係る屋外用電子機器筐体装置について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態1に係る屋外用電子機器筐体装置を示し、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。なお、図中、同一部分には同一符号を付している。本実施の形態1に係る屋外用電子機器筐体装置100(以下、筐体装置100と略す)は、屋外に設置され電子機器を収納するものである。
【0016】
図1に示すように、筐体装置100は、前面に開口部を有し、内部に電子機器9を収納する本体ケース1と、本体ケース1の開口部を開閉可能に閉じる扉2を備えている。通常は、本体ケース1の開口部は、扉2で閉じられている。
【0017】
扉2の内側周縁部には、扉2を閉じた時に扉2と本体ケース1の間に弾性圧縮された状態で介在する防雨・防塵用のパッキン3が取り付けられている。本実施の形態1に係る筐体装置100の扉2は観音開きであるため、2枚の扉が重なり合う扉合わせ面を有し、この扉合わせ面にもパッキン3が配設されている。パッキン3の材質としては、一般的に用いられるゴム、シリコンのように、弾性を有し耐性に優れたものが適している。
【0018】
本体ケース1下面側の底板部4には、水抜き孔7が設けられている。また、本体ケース1上面側の天板部5には庇が設けられている。本体ケース1は、ベース6により支持され、ベース6の周りには小動物等の侵入を防止するための網が設けられている。さらに、本体ケース1の背面側壁には、換気部8が設けられている。換気部8は、換気口全体を覆うフィルタや、換気口に組み込まれるルーバー手段等を備えたものであっても良い。
【0019】
次に、底板部4に設けられた水抜き孔7について詳細に説明する。水抜き孔7は、本体ケース1内部に侵入した水を排出する機能と、逆流防止機能を有し、外側からは容易に水が入らない構造である。このような構造例としては、迷路のように何回も折り曲げられた経路を有するものがある。また、本実施の形態1では、水抜き孔7の部品として、保護等級IP55以上のものを用いる(例えばリタール株式会社製、凝縮水排出器;品番2459.000、材質ポリアミド)。なお、保護等級の規格については後述する。
【0020】
本実施の形態1に係る筐体装置100は、扉2に設けられたパッキン3の劣化により水漏れがあった場合に、その被害が最小限となる位置に水抜き孔7が設けられている。パッキン3が劣化した場合には、扉2を閉じた状態で、パッキン3と本体ケース1の隙間、及びパッキン3と扉2の隙間のいずれか一方または両方から、水(主に雨水)が本体ケース1内部に漏れ出ることがある。このようにして浸入した水の大部分は、パッキン3を伝って底板部4に落下する。
【0021】
そこで、浸入した水がパッキン3を伝って底板部4に落下する位置を水滴落下部とし、この水滴落下部に水抜き孔7を設ける。すなわち、ほとんどの場合、水滴落下部は、扉2を閉じた状態で垂直方向に配置されたパッキン3の下部に近接している。なお、水滴落下部に水抜き孔7を設けることができない場合は、水滴落下部に可能な限り近接して水抜き孔7を設ける。これにより、扉2に取り付けられたパッキン3が劣化して漏水があった場合にも、落下した水滴は即座に水抜き孔7から排出され、底板部4が長時間、広範囲に濡れることを防止することができる。
【0022】
本実施の形態1に係る筐体装置100における水抜き孔7の配置例を図2に示す。図2(a)は、筐体装置の内部を示す平面図、図2(b)は、扉合わせ面付近の部分拡大断面図である。なお、図2(a)において、電子機器9は、底板部4上に直接設置されているものではない。また、パッキン3の図示は省略している。
【0023】
図2(a)に示すように、観音開きの扉2の場合、2枚の扉が重なり合う扉合わせ面2aを有し、水滴落下部は、扉2を閉じた状態で、扉合わせ面2aに垂直方向に配置されたパッキン3の下部に近接している。このため、図2(b)に示すように、扉合わせ面2aのパッキン3の下部に近接する底板部4に、水抜き孔7が設けられる。
【0024】
比較例として、従来の屋外用電子機器筐体装置の内部を図3に示す。この例では、水抜き孔7aが扉2から遠い底板部4の奥の方に設けられている。このため、扉2に取り付けられたパッキンが劣化し、扉合わせ面2aから漏水10があった場合、底板部4に溜まった水が抜けるのに時間を要し、図3に示すような状態となる。その結果、本体ケース1の底板部4は、長時間、広範囲に濡れることになり、腐食の原因となる。
【0025】
本実施の形態1に係る筐体装置100に対し、保護等級の散水試験(3m〜3.5m離れた位置から水をかける)を行った結果、本体ケース1内部への水の浸入は確認されず、筐体装置100はNEMA4(IP56相当)の保護等級を確保していた。なお、NEMA規格(National Electrical Manufacturers Association規格の略)及びIP規格(International Protection)の保護等級は、電気機器容器の防塵・防水性能を表示するのに用いられる。
【0026】
NEMA4の保護内容は、吹き付けられる粉塵からの保護、飛沫からの保護、噴流からの保護、雨、みぞれ、雪からの保護、及び外部氷結後の機能の維持を含んでいる。また、IP56の保護内容は、防塵形、暴噴流であり、いかなる方向からの水の強い直接噴流によっても影響を受けないものである。
【0027】
以上のように、本実施の形態1では、本体ケース1の開口部を開閉可能に閉じる扉2と、扉2の内側周縁部に取り付けられたパッキン3と、本体ケース1の底板部4に設けられた水抜き孔7を備えた筐体装置100において、パッキン3の劣化により本体ケース1内部に水が浸入した場合に、浸入した水がパッキン3を伝って底板部4に落下する位置を水滴落下部とし、この水滴落下部に、あるいは水滴落下部に可能な限り近接して水抜き孔7を設けたものである。
【0028】
これにより、本実施の形態1によれば、パッキン3の劣化により水漏れがあった場合にも、落下した水滴は即座に水抜き孔7から排出され、底板部4が長時間、広範囲に濡れることを防ぐことができる。従って、漏水の被害が小さく、且つ、簡単な構造で製造コストを抑えた屋外用電子機器筐体装置100が得られる。なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、屋外に設置され電子機器を収納する筐体装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 本体ケース、2 扉、2a、扉合わせ面、3 パッキン、4 底板部、
5 天板部、6 ベース、7、7a 水抜き孔、8 換気部、9 電子機器、
10 漏水、100 屋外用電子機器筐体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する本体ケースと、前記開口部を開閉可能に閉じる扉と、前記扉の内側周縁部に取り付けられ、前記扉を閉じた時に前記扉と前記本体ケースの間に弾性圧縮された状態で介在するパッキンと、前記本体ケースの底板部に設けられた水抜き孔を備え、
前記扉を閉じた状態で、前記パッキンと前記本体ケースの隙間、及び前記パッキンと前記扉の隙間のいずれか一方または両方から前記本体ケース内部に水が浸入した場合に、浸入した水が前記パッキンを伝って前記底板部に落下する位置を水滴落下部とし、この水滴落下部に前記水抜き孔を設けたことを特徴とする屋外用電子機器筐体装置。
【請求項2】
開口部を有する本体ケースと、前記開口部を開閉可能に閉じる扉と、前記扉の内側周縁部に取り付けられ、前記扉を閉じた時に前記扉と前記本体ケースの間に弾性圧縮された状態で介在するパッキンと、前記本体ケースの底板部に設けられた水抜き孔を備え、
前記扉を閉じた状態で、前記パッキンと前記本体ケースの隙間、及び前記パッキンと前記扉の隙間のいずれか一方または両方から前記本体ケース内部に水が浸入した場合に、浸入した水が前記パッキンを伝って前記底板部に落下する位置を水滴落下部とし、この水滴落下部に可能な限り近接して前記水抜き孔を設けたことを特徴とする屋外用電子機器筐体装置。
【請求項3】
前記扉を複数枚有し、前記扉を閉じた時に前記扉と他の前記扉の間に弾性圧縮された状態で介在するパッキンを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の屋外用電子機器筐体装置。
【請求項4】
前記水滴落下部は、前記扉を閉じた状態で、垂直方向に配置された前記パッキンの下部に近接していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の屋外用電子機器筐体装置。
【請求項5】
前記水抜き孔は、前記本体ケース内部から外部へ水を排出する機能と、逆流防止機能を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の屋外用電子機器筐体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−110178(P2013−110178A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252219(P2011−252219)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】