説明

屋根上取り付け金具

【課題】折板屋根の馳部に取り付けて屋根上構造物の固定などに使用する屋根上取り付け金具において、折板屋根に対する取り付け作業が簡易迅速に行えるようにするとともに、低コスト、高機能化を図ることができるようにする。
【解決手段】折板屋根21の馳部22に対して該馳部22を締め付けるようにして取り付けるべく、左右一対の挟持部42,42と、これら挟持部42,42の上端部を一体に連結する頂面部43と、挟持部を互いに近接する方向に締め付けるボルト51ナット52とを有した屋根上取り付け金具11であって、上記の挟持部42,42と頂面部43との間に、締め付け時の変形を行いやすくするための折り返し部48,48が、上にむけて突出する断面逆U字状に設けられた屋根上取り付け金具11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、折板屋根の馳部に取り付けて使用する屋根上取り付け金具に関し、より詳しくは、取り付け作業が簡易迅速に行えるような屋根板取り付け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根上取り付け金具は、折板屋根の上に雪止め用のアングル材や太陽熱温水器、緑化装置などのような屋根上構造物を取り付けるため、また折板屋根の馳部の係合を補強して折板が外れるのを防止するためなどに用いられる。
【0003】
このような屋根板取り付け金具としては、たとえば下記特許文献1に開示されているように、一枚の金属板で正面視略門型に形成されたものが知られている。すなわち、門型を形作る上面部分と、これの左右両側から連設されている側面部分とを有し、側面部にはボルトナットが保持され、このボルトナットの締め付けで、側面部分の下端部が馳部に圧接させられ固定が行われる。また、上面部分には、屋根上構造物を取り付けるための取り付けボルトが立設されている。
【0004】
しかし、この金具は、図6(c)に示したように門型を形作る上面部分101と、これの左右両側から連設されている側面部分102,102との間の角部分103が、比較的大きな円弧状に形成されている。
【0005】
このため、なかなか変形しにくく、取り付けに大きな力が必要で、迅速な取りつけ作業が困難であるばかりか、ナットが損傷したりボルトナットのねじが破損したりすることもあった。また、上面部分には上に向けて湾曲するような力がかかり、締め具合によって上面部の高さが変化するなど、屋根上構造物の取り付け状態の安定性を得られないおそれがあった。
【0006】
このような難点を解消すべく、下記特許文献2、3、4のような金具が案出された。
【0007】
下記特許文献2の金具は、締め付け作業が迅速に行えるように、相互に組み合わせられる左右2個の部材で構成したものである。しかし、2個の部材で構成すると部品点数が多くなり、組み付け作業も必要となって、コスト高や部品管理の煩雑さを招くことになる。
【0008】
下記特許文献3、4の金具は、締め付けたときに曲がって欲しい角部分に角部分の長さ方向に沿って長い切れ目を入れて、曲がりやすくしたものである。しかし、このように切れ目を入れた場合には、曲がる部分が長さ方向で寸断されることになる。このため、門型を形作る上面部分と側面部分との一体性が弱まり、ボルトを保持する上面部分の強度が低下するおそれがあった。
【0009】
なお、門型の金具ではないが、折り曲げをしやすくしたものとして下記特許文献5の金具を案出した。この金具は、左右一対の挟持部を、鋭角をなして連続する折曲部を介して一体化したものである。折り曲げがサッと行えて大変よいが、簡単かつ低コストでボルトを立設する上面部分がない。
【0010】
【特許文献1】実公平7−38536号公報
【特許文献2】実公平6−1964号公報
【特許文献3】特開2003−247310号公報
【特許文献4】意匠登録第1097797号公報
【特許文献5】特開2006−188877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、従来の金具では、締めやすさという施工性をみたせば経済面や機能面で支障がでるおそれがあるというものであった。
そこで、この発明は、施工性のほか、経済面や機能面でも満足を得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、折板屋根の馳部に対して該馳部を締め付けるようにして取り付けるべく、左右一対の挟持部と、これら挟持部の上端部を一体に連結する頂面部と、挟持部を互いに近接する方向に締め付ける締め付け手段とを有した屋根上取り付け金具であって、上記挟持部と頂面部との間に、折り返し部が設けられた屋根上取り付け金具である。上記折り返し部は、断面形状における中間位置を挟む両側部分が略同一方向、あるいは鋭角をなす方向に向く形状であり、たとえば略U字状、V字状、円弧状、凹字状等に形成される。また折り返し部の向きは、上、下、横、斜めいずれでもよい。
【0013】
締め付け手段で挟持部を締め付けたときには、そのときに掛かる力は頂面部と挟持部との間の折り返し部に集中し、挟持部相互の速やかな接近を可能にする。また、挟持部を締め付けたときに折り返し部間の頂面部にかかろうとする力の伝達を遮断する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明によれば、折り返し部の存在により、締め付け時に作用する力を一部に集中させ、曲がりやすくすることができる。このため、簡易迅速な固定作業が可能である。
【0015】
また、折り返し部に従来のような切れ目を入れる必要はないので、門型を形作る全体の一体性が高く、強度低下などの不都合を回避することもできる。
【0016】
さらに、上記のような折り返し部の存在により、締め付け時にかかる力によって頂面部が変形するようなことを防止できるので、屋根上構造物を取り付けるときでも形態的に安定性が高く、屋根上取り付け金具自体はもちろんのこと、屋根上構造物も良好に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は屋根上取り付け金具11(以下、「金具」という。)の斜視図であり、この金具11は、図2、図3に示したように折板屋根21の馳部22に固定され、雪止め用のアングル材や太陽熱温水器、緑化装置などのような所望の屋根上構造物31(図3参照)を取り付けるものである。
【0018】
金具11は、図4にも示したように、1枚の金属板からなる本体部材41と、この本体部材41を折板屋根21の馳部22に固定するための締め付け手段としてのボルト51ナット52と、屋根上構造物を取り付けるための取り付けボルト61とを有する。
【0019】
本体部材は左右対称の正面視略門型に形成されている。すなわち、左右一対の挟持部42,42と、これらの上端部を一体に連結する頂面部43とを有する。挟持部42,42は下側ほど外側に開くように傾斜しており、下端部には、内側にくびれて折板屋根21の馳部22の下側部分を締め付ける締め付け部44と、この締め付け部44の下端から外側に伸びて折板屋根21の水平部23に接地する接地部45とを有する。各挟持部42,42の締め付け部44間の隙間は、折板屋根21の馳部22に対して上からかぶせた時に馳部22の侵入を許容する大きさである。これら締め付け部44,44は、上記のボルト51ナット52の締め付けにより、図4に仮想線で示したように相互に接近させられて、馳部22を締め付ける(図3参照)。
【0020】
また、各挟持部42,42の上下方向の中間位置には角孔46が形成されており、上記のボルト51を挿通保持する。なお、各挟持部42,42の上端位置から締め付け部44にかけての外側への膨らみは補強のためのリブ47である。
【0021】
頂面部43は平坦に形成され、各挟持部42,42の上端に、断面略U字状をなす折り返し部48を介して一体に形成されている。この例の折り返し部48は、頂面部43よりも上へ突出するように断面逆U字状をなす。この結果、頂面部43は本体部材41の上端(折り返し部48の頂点部分)よりも下がった位置に形成されることになる。
【0022】
また、頂面部43の中央には、貫通孔43aが設けられ、この貫通孔43aに上向きの取り付けボルト61が保持される。取り付けボルト61は頂面部43の下からスプリングワッシャ62を介して挿入され、上から螺合するナット63で固定される。
【0023】
このため、上記頂面部43の高さ、すなわち頂面部43から折り返し部48の上端位置までの高さH1は、図4に示したように上記のナット63を収容する高さに設定される。より好ましくは、ナット63の上面位置と、折り返し部48の上端位置とが面一になるようにする。屋根上構造物31(図3参照)を支持する接点を増やして取り付け状態の安定化に資することができる。また、取り付けボルト61を保持する際の便宜上、ナット63を回り止め可能に保持すべく、図5に示したように頂面部43の幅W1は、ナット63の幅W2と嵌合対応する程度の幅に設定するのが好ましい。
【0024】
上記のような各部材からなる金具11は、次のようにして組み立てられる。
まず、所定形状に形成された本体部材41の頂面部43に取り付けボルト61を保持する。取り付けボルト61の保持に際しては、金具11の上面の凹み、つまり頂面部43の上面にナット63を嵌めるように押し当てて、頂面部43の下から取り付けボルト61を螺合する。ボルトの螺合に先立ってスプリングワッシャ62が介装される。ナット63が回り止めされるので、螺合はきわめて容易に行える。
【0025】
つぎに本体部材41における一方の挟持部42の角孔46にボルト51を挿通し、ボルト51における他方の挟持部42から突出する部分にナット52を螺合して保持する。
【0026】
このような金具11は、折板屋根21の馳部22に対して上からかぶせるように嵌めてから(図2参照)、図4に示したようにナット52を螺合し、ボルト51ナット52の緊締力で一対の挟持部42,42を互いに接近させて、これら挟持部42,42の締め付け部44で折板屋根21の馳部22を締め付ける。
【0027】
ボルト51ナット52による締め付けを行うと、図6(a)に示したように、折り返し部48,48に締め付け力が集中的に作用して、折り返し部48,48を中心に各挟持部42,42が回動する。この回動は、下端側を閉じるように比較的軽い力で速やかにサッと行われ、各挟持部42,42の締め付け部44が、図3に示したように馳部22の下側を挟み込むとともに、接地部45が折板屋根21の水平部23に接地する。
【0028】
また、締め付けに際して折り返し部48,48が、折り返し部48,48間の頂面部43にかかろうとする力の伝達を遮断する。このため、頂面部43に変形の力はかからず、変形も起らない。これに対して、たとえば図6(b)に示したように、従来の形状(図6(c))の場合よりも角部分103,103の湾曲を小さくして略直角にした場合でも、締め付け時に作用する締め付け力によって挟持部102,102が変形し、この変形にともなって、これらの間の部分(上面部分101)に変形の力が作用する。しかし、上記のように折り返し部48,48を有する場合には、変形の力が完全に遮断され、頂面部43の変形は起らない。このため、金具11自体はもちろんのこと、屋根上構造物31(図3参照)も良好に取り付けることができる。
【0029】
しかも、折り返し部48,48の存在により締め付けが簡易迅速に行えるので、折り返し部には、従来のように切り目を入れる必要はない。このため、本体部材41の全体的な一体性が高く、強度低下のおそれもなく、屋根上構造物31の良好な取り付け状態を長期間にわたって良好に維持できる。
【0030】
このように締め付け部44による締め付けと接地部45の接地とによって、金具11は上への引き抜き耐力と圧縮耐力を有した状態で強固に固定される。
【0031】
以下、その他の例を説明する。この説明において、上記の構成と同一または同等の部位については、同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0032】
図7(a)に示した金具11は、取り付けボルト61をかしめによって固定したものである。取り付けボルト61が図7(b)に示しようにかしめで固定されるので、組み立て工数を低減でき、輸送中の不測のゆるみなどの発生を完全に防止できる。
【0033】
図8に示した金具11は、取り付けボルトを省略したものである。この金具11は、屋根上構造物の荷重を受けるだけに使用したり、折板屋根21の固定状態を強固にするために馳部22に固定したりするのに使用される。
【0034】
図9に示した金具11は、本体部材41における挟持部42の下端部に、上記の接地部45に代えて、折板屋根21の上面における水平部23と、この水平部23の外側に位置する傾斜部24とに接触する袴状接地部49を備えた例である。このように水平部接地部49aと傾斜部接地部49bとを有する袴状接地部49は、図10に示したように、折板屋根21に対する固定時に、角度に異なる面に同時に接触して固定状態を安定させる。このため、より強固な安定した固定を実現できる。
【0035】
図11は、折り返し部48の他の例を示す正面図である。これらに示すように、折り返し部48の形態や配置は適宜設定され得る。
図11(a)の金具11は、挟持部42と頂面部43との間の2本の折り返し部48,48を、内側斜め下向きに突設したものである。図11(b)の金具11は、2本の折り返し部48,48を内側水平に向けて突設したものである。図11(c)の金具11は、折り返し部48,48を下に向けて突設したもの、すなわちU字状に形成した例である。このように折り返し部48,48を下に向けて形成すると、それらの上側にも折り返し部48a,48aが形成されることになる。つまり4本の折り返し部48,48,48a,48aが上下に2段階に分けて設けられることになる。図11(d)の金具11は、2本の折り返し部48,48を外側斜め上向きに突設したものである。図11(e)の金具11は、図11(c)に示した金具11のように2本の折り返し部48,48を下に向けて突設したもので、上下に分かれた合計4本の折り返し部48,48,48a,48aを備える。そして、頂面部43の高さは、図11(c)に示した金具11の頂面部43の高さよりも低く設定したものである。頂面部43の下側の幅は、取り付けボルト61の六角の頭部を回り止めにする大きさで、頂面部43の上側には、取り付けボルト61を固定するナット63を収容する深さの空間が設けられている。
【0036】
これらのような構造の金具11はいずれも上述のような作用効果を達成する。特に、図11(c),(d)に示したような金具11では、折り返し部48,48,48a,48aが上下2段に分けて設けられているので、それぞれの折り返し部48,48,48a,48aが締め付け力による変形の力を受けることになり、さらに締めやすいものとなる。
【0037】
この発明構成と上記の一形態の構成との対応において、
この発明の締め付け手段は、上記のボルト51ナット52対応し、
ボルトは、取り付けボルト61に対応するも、
この発明は、上記の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
たとえば、本体部材の形態は左右対称の形状でなくともよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】屋根上取り付け金具の斜視図。
【図2】屋根上取り付け金具の固定状態の斜視図。
【図3】屋根上取り付け金具の固定状態の正面図。
【図4】屋根上取り付け金具の断面図。
【図5】屋根上取り付け金具の平面図。
【図6】屋根上取り付け金具と従来の金具との作用状態を示す説明図。
【図7】他の例に係る屋根上取り付け金具の斜視図と断面図。
【図8】他の例に係る屋根上取り付け金具の斜視図。
【図9】他の例に係る屋根上取り付け金具の斜視図。
【図10】図9の屋根上取り付け金具の固定状態の正面図。
【図11】他の例に係る屋根上取り付け金具の説明図。
【符号の説明】
【0039】
11…屋根上取り付け金具
21…折板屋根
22…馳部
23…水平部
24…傾斜部
42…挟持部
43…頂面部
48,48a…折り返し部
49…袴状接地部
51…ボルト
52…ナット
61…取り付けボルト
63…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根の馳部に対して該馳部を締め付けるようにして取り付けるべく、左右一対の挟持部と、これら挟持部の上端部を一体に連結する頂面部と、挟持部を互いに近接する方向に締め付ける締め付け手段とを有した屋根上取り付け金具であって、
上記挟持部と頂面部との間に、折り返し部が設けられた
屋根上取り付け金具。
【請求項2】
前記折り返し部が、頂面部より上に突出するように形成された
請求項1に記載の屋根上取り付け金具。
【請求項3】
前記頂面部に、上向きのボルトが保持された
請求項1または請求項2に記載の屋根上取り付け金具。
【請求項4】
前記頂面部から折り返し部の上端までの高さが、前記のボルトを保持するためのナットを収容する高さである
請求項2または請求項3に記載の屋根上取り付け金具。
【請求項5】
前記折り返し部に挟まれた頂面部の幅が、前記のボルトを保持するためのナットを回り止めする幅に設定された
請求項2または請求項3に記載の屋根上取り付け金具。
【請求項6】
前記挟持部の下端部に、折板屋根の上面における水平部から傾斜部にいたるまでの部分に接触する袴状接地部が形成された
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の屋根上取り付け金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−84982(P2009−84982A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259882(P2007−259882)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(390035301)株式会社マルイチ (16)