説明

屋根板取付金具

【課題】タイトフレームの剣先ボルトに固定される下葺折板上に取り付けられて上葺折板を支持する屋根板取付金具において、固定強度を確保して折板屋根の飛散等を防止できるようにする。
【解決手段】剣先ボルト15と締め付けナット16で固定される下葺折板12の頂部に載置される下金具31と、下金具31に結合されて上葺折板13を支持する上金具41を有する屋根板取付金具21であって、下金具31が、下葺折板12の頂部に面接触して締め付けナット16で固定される接地面部32と、接地面部32の左右両側から上方に立設する立設部33を有し、接地面部32の前後方向の両端には、下葺折板12の頂部に面接触する延設部35が形成される。上金具41は、立設部33と結合する結合脚部47を備える。これら立設部33と結合脚部47に、左右方向で噛み合って上下方向で抜け止めをする差込片36,50と差込孔37,49が形成された屋根板取付金具21。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、剣先ボルトで固定された下葺折板の上に上葺折板を葺成する二重折板屋根に関し、より詳しくは、折板の飛散を抑制できるような屋根板取付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
剣先ボルトを有するタイトフレーム上に固定された下葺折板の上に、空間を介して上葺折板が固定される二重折板屋根が知られている。この二重折板屋根において、上葺折板を固定するために用いられる屋根板取付金具としては、例えば下記特許文献1のような金具がある。
【0003】
この金具は、特許文献1の図1、図7(B)に示されているように、下部側支持部と、この下部側支持部の上に固定された上部側支持部で構成されている。前記下部側支持部は、タイトフレームの剣先ボルトに螺合する長ナットを備えており、前記剣先ボルトで下葺折板に孔をあけて下葺折板を配設したとき下葺折板の頂部から上に突出する前記剣先ボルトに対して、螺合により固定される。
【0004】
下部側支持部は長ナットの周囲に断熱のための合成樹脂を有するものの、全体としては略円柱状の形をなすものである。また、下部側支持部と上部側支持部は、剣先ボルトと同様に下から上に向けて延びるボルトで固定されている。
【0005】
ところで、金属板からなる折板屋根は、日差し等により生じる温度変動で折板の長さ方向(前後方向)に伸縮する。この伸縮に伴って音がなるので、特許文献1では、所定厚の非金属性軟質材を介在させて弾性等により振動を吸収させる構造を採用している。
【0006】
しかし、折板屋根の伸縮は休みなく起こる。特許文献1の構成では、上葺折板が伸縮すると、上葺折板の前後方向の動きが上部側支持部を介して下部側支持部に伝達され、上部側支持部、下部側支持部共に前後方向に傾く負荷を受ける。
【0007】
このとき、上部側支持部と下部側支持部の間の固定と、下部側支持部の固定は、下から上に延びるボルトで行われているので、これらのボルトには、前後方向に傾く力がかかる。しかも、下部側支持部を固定している剣先ボルトは、下部側支持部が略円柱状の形をなすので傾きやすい。その上、剣先ボルトの下端を支点と仮定すると、力点に相当する上葺折板の位置が遠いので、倍力機構のように小さな力でも大きな力が作用する。この力は剣先ボルトにとっては負荷である。このため、特に剣先ボルトには、上葺折板の伸縮によって絶え間ない負荷がかかることになり、剣先ボルトが次第に金属疲労を起こしてしまう。これは、固定強度の低下を意味する。
【0008】
以前から、台風の被害を受けたときに負圧によって折板屋根が捲れ上がったり飛散したりすることがあったが、これの原因には、前記の金属疲労に起因する剣先ボルトの破断がある。
【0009】
下記特許文献2には、主に老朽化した折板屋根の改修に用いられるものであるが、剣先ボルトを利用せずに固定される金具が開示されている。
【0010】
これは、上タイトフレームと補強部材とからなり、上タイトフレームの下端部には、上下葺折板の頂部の両側から下がる傾斜部に固定される取付座部が設けられ、この取付座部を、下葺折板を固定しているタイトフレームに対してセルフドリルビスで固定するというものである。
【0011】
上タイトフレームの内側には、略U字状をなす前記補強部材が固定され、補強部材の下端には、下葺折板の頂部に載る下板部が形成されている。この下板部は、剣先ボルトの挿入を許容する大きな穴である被挿入部を有し、剣先ボルトやこれに螺合するナットとは非接触である。
【0012】
しかし、この構成では、下葺折板に対する固定に複数本のセルフドリルビスを用いるので、作業が面倒であるとともに、下葺折板の上からでは視認できないタイトフレームに対して左右両側においてそれぞれ固定を行うので、左右均等に正しく固定されないおそれが高い。
【0013】
また、前記補強部材は下板部を有するものの、下板部は補強目的で剣先ボルトの極限られた周囲に置かれた状態にあるだけで、直接積極的に固定されてはいない。このため、金具下端の取付座部から遠い上葺折板位置から作用する力に対する抵抗力は弱く、あくまでもセルフドリルビスの固定力に頼るだけであり、固定強度は必ずしも高いとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−299199号公報
【特許文献2】実用新案登録第2524366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、この発明は、固定強度を確保して折板屋根の飛散等を防止できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのための手段は、剣先ボルトと締め付けナットで固定される下葺折板の頂部に載置される下金具と、該下金具に結合されて上葺折板を支持する上金具を有する屋根板取付金具であって、前記下金具が、前記下葺折板の頂部に面接触する接地面部と、該接地面部から上方に立設する立設部を有し、前記接地面部の中央部には、前記剣先ボルトを挿通する挿通孔と、前記締め付けナットで締め付けられる被締め付け部を有し、前記接地面部の前後方向の両端には、前記下葺折板の頂部に面接触する延設部が形成され、前記上金具が、前記立設部と結合する結合脚部と、前記上葺折板を係止すべく係止部材を固定する係止部材固定部を備え、前記立設部と結合脚部に、左右方向で噛み合って上下方向での抜け止めをする結合部が形成された屋根板取付金具である。
【0017】
課題を解決するための別の手段は、前記屋根板取付金具が用いられた折板屋根である。
【0018】
前記の構成では、下金具が剣先ボルトに螺合された締め付けナットで締め付けられて、その接地面部が下葺折板の頂部に圧接する。同時に、接地面部から延びる延設部も下葺折板の頂部に圧接する。
【0019】
このような下金具の立設部と結合する結合脚部を備えた上金具は、接合部により下金具との間で結合し、上下方向での一体性を保つ。この状態で、係止部材によって前記上葺折板を係止し、支持する。
【0020】
係止部材が上葺折板の伸縮により前後方向に移動する負荷を受けたときには、結合部を介して負荷が下金具に伝達され、下金具は下葺折板とこれを固定している剣先ボルト等に対して一体的となり、負荷を全体で受ける。
【0021】
なお、前記「結合」とは、合わさって一つになることの意味で、結合部において前後方向に相対移動することも含む意味である。
【0022】
また、前記「左右方向で噛み合って」とは、左右方向の凹凸によって嵌まり合う状態を意味する。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、下金具は下葺折板に対して接地面部と延設部で面接触して、剣先ボルトにかかる負荷を小さくするので、剣先ボルトの金属疲労により固定強度が低下することを抑制できる。このため、折板屋根の捲れ上がりや飛散の発生を抑えることができる。
【0024】
また、下金具の固定は、下葺折板を固定する剣先ボルトに対する締め付けナットの螺合で行えるので、作業は容易であり、確実でもある。しかも、締め付けナットによって締め付けられる被締め付け部は、下金具の中央部に形成されているので、前後左右において均等に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】折板屋根の断面図。
【図2】図1の折板屋根に用いる屋根板取付金具の斜視図。
【図3】屋根板取付金具の分解斜視図。
【図4】折板屋根の取付金具部分での断面図。
【図5】折板屋根の断面図。
【図6】屋根板取付金具の取り付け工程の一部を示す斜視図。
【図7】屋根板取付金具の取り付け工程の一部を示す斜視図。
【図8】屋根板取付金具の取り付け工程の一部を示す斜視図。
【図9】他の例に係る屋根板取り付け金具の斜視図。
【図10】図9の屋根板取付け金具を用いた折板屋根の断面図。
【図11】図9の屋根板取付金具の取り付け固定の一部を示す斜視図。
【図12】他の例に係る屋根板取り付け金具の斜視図。
【図13】図12の屋根板取付け金具を用いた折板屋根の断面図。
【図14】図12の屋根板取付金具の取り付け固定の一部を示す斜視図。
【図15】他の例に係る屋根板取り付け金具の斜視図。
【図16】図15の屋根板取付け金具を用いた折板屋根の断面図。
【図17】図15の屋根板取付金具の取り付け固定の一部を示す斜視図。
【図18】他の例に係る屋根板取り付け金具の斜視図。
【図19】図18の屋根板取付け金具を用いた折板屋根の断面図。
【図20】図18の屋根板取付金具の取り付け固定の一部を示す斜視図。
【図21】図18の屋根板取付金具における上金具の分解斜視図。
【図22】図18の屋根板取付金具における本体部材の一部破断斜視図。
【図23】図18の屋根板取付金具の取り付け固定の一部を示す側面図。
【図24】他の例に係る屋根板取り付け金具の斜視図。
【図25】図24の屋根板取付け金具を用いた折板屋根の断面図。
【図26】図24の屋根板取付金具の取り付け固定の一部を示す斜視図。
【図27】他の例に係る屋根板取り付け金具の斜視図。
【図28】図27の屋根板取付け金具を用いた折板屋根の断面図。
【図29】図27の屋根板取付金具の取り付け固定の一部を示す斜視図。
【図30】他の例に係る屋根板取り付け金具の斜視図。
【図31】図30の屋根板取付け金具を用いた折板屋根の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は折板屋根11の断面図、図2はその折板屋根11に用いる屋根板取付金具21(以下「取付金具」という。)の斜視図、図3はその取付金具21の分解斜視図、図4は折板屋根11の取付金具21部分での断面図である。
【0027】
これらの図に示すように、取付金具21は下葺折板12の上に固定されて上葺折板13を支持するものである。前記下葺折板12はタイトフレーム14に固定され、前記取付金具は、そのタイトフレーム14の頂部に立設された剣先ボルト15によって固定されている。
【0028】
この取付金具21は、下葺折板12の頂部に載置固定される下金具31と、この下金具31に結合されて上葺折板13を支持する上金具41を有する。
【0029】
下金具31は図3に示したように、金属板をプレス加工して得た1個の部材で構成されている。下金具31は、前記下葺折板12の平らな頂面12aに面接触する接地面部32と、この接地面部32の左右方向両側から上方に立設する立設部33を有する。
【0030】
前記接地面部32は、下葺折板12の頂面12aの左右方向の幅と同等の幅を有し、前後方向の長さはそれよりも長い平面視長方形である。この接地面部32の中央部には、上方へ凸に膨出加工部34が形成され、その中央に、前記剣先ボルト15を挿通する挿通孔34aが形成されている。この挿通孔34aの周囲の上面は、剣先ボルト15に螺合する締め付けナット16で締め付けられる被締め付け部34bである。また、接地面部32の前後方向の両端には、下葺折板12の頂面12aに面接触する適宜大の延出部35が一体に設けられている。この延出部35の左右両側には、下葺折板12の頂部の左右両側の傾斜に沿って斜め下に延びる傾斜片35aが形成されている。傾斜片35aは、固定時の回り止めと、固定状態の安定化に資するものである。
【0031】
前記立設部33は、鉛直上向きに真っ直ぐに延び、その先端に左右方向外側に向けて曲がる、差込部としての差込片36を有する。差込片36は前後方向に延び、前後方向の長さは、立設部33の下部における前後方向の長さよりも短く設定されている。
【0032】
立設部33における前記差込片36よりも下方位置には、この差込片36と同様の差込片を差し込み可能な前後方向に延びる差込孔37が形成されている。これら差込片36と差込孔37は平行である。
【0033】
上金具41は図3に示したように、金属板をプレス加工して得た左右一対、2個の本体部材42と、これら本体部材42の上部に挟持して保持される合成樹脂製の断熱部材43を有する。
【0034】
本体部材42は、一対の本体部材42同士で互いに当接し合う当接部44を上下方向の中間に有する。当接部44は上下方向に真っ直ぐな板状で、中央部に角孔44aが形成されている。この角孔44aにはボルト45が挿通され、ボルト45に対するナット46の螺合で、前記当接部44同士が、互いに当接し合うように締め付けられる。当接部44より下の部分が、前記下金具31の立設部33と結合する結合脚部47で、当接部44より上の部分が、前記上葺折板13を係止すべく係止部材を固定する係止部材固定部48で、この部分に前記断熱部材43を介して係止部材としての吊子22が保持される。
【0035】
前記結合脚部47は、前記当接部44の下端から左右方向外方に向けて水平に延びたのち下に垂れる、断面略横L字状をなし、前記下金具31の差込片36を差し込む差込孔49と、下金具31の差込孔37に差し込まれる差込部としての差込片50が形成されている。
【0036】
差込片50は、結合脚部47の下端において左右方向内方に向けて折曲して形成される。差込片50は前後方向に延び、前後方向の長さは、結合脚部47の上部における前後方向の長さよりも短く設定されている。差込孔49も同様に、結合脚部47の上部における前後方向の長さよりも短く設定される。
【0037】
上金具41の結合脚部47の差込孔49および差込片50及と、下金具31の立設部33の差込片36および差込孔37は、この発明の結合部に相当し、当接部44同士が近接した時に図4に示したようにそれぞれ互いに係合し、全体として左右方向で噛み合う。これによって、下金具31と上金具41との間で上下方向での抜け止めがなされ、前後方向にも移動不可能な一体状態に結合されることになる。
【0038】
前記係止部材固定部48は、図3に示したように、前記当接部44の上端から左右方向外方に向けて水平に延びたのち上に立ち上がる、断面略横L字状をなす。係止部材固定部48の上端は、左右方向外方に向けて断熱部材43の上端部を受ける受け片51が折曲形成され、前記立ち上がる部分の前後方向両側部は、前記断熱部材43を移動不可能に保持するために係合する適宜形状の切欠係合部52を有する。また、立ち上がる部分の中央には、前記断熱部材43を移動不可能に保持するとともに熱伝導を遮断するための遊嵌孔53が形成されている。
【0039】
前記断熱部材43は、全体として略直方体状をなし、前記吊子22を差し込み可能にすべく、左右方向の中間位置に前後方向に貫通する吊子保持溝54を有する。上端部には、係止する上葺折板13を受ける受け面55が形成され、左右両側には、前記係止部材固定部48が嵌まる嵌合凹部56が形成され、この中央部分には、前記遊嵌孔53に嵌まる円筒状の円筒状突起57が形成されている。円筒状突起57の中心部分には、断熱部材43全体で左右方向に貫通するボルト挿入孔58が設けられ、前記吊子22を固定するためのボルト59が挿入される。このボルト59に螺合するナット60は、断熱部材43の上面から下に向けて形成されたナット収容ポケット61に保持される。
【0040】
前記吊子22は、上端に馳部23を有し、上下方向の中間部にボルト挿通孔24(図4参照)を有する板状である。この吊子22は、上端の馳形状が角に曲がる角馳形式のものでも、丸く湾曲する丸馳形式のもの(図2の仮想線参照)でも、その他のものでもいずれでもよい。前記吊子22には周知のものが使用され、丸馳形式の吊子22の場合には取付金具21に対して予め保持され、角馳形式の吊子22の場合には現場において取付金具21に対して保持される。図5に、丸馳形式の吊子22を用いた折板屋根11の断面図を示す。
【0041】
以上のような各部材で構成される取付金具21は、次のように使用されることによって前記折板屋根11を構成する。
【0042】
まず、図6に示したように、タイトフレーム14に下葺折板12をのせて剣先ボルト15が下葺折板12の頂面12aから上に飛び出した状態にする。このあと、下金具31を下葺折板12の上に被せ、接地面部32と延出部35を下葺折板12の頂面12aに面接触させる。このとき、接地面部32に膨出加工部34が形成されているので、接地面部32と延出部35は全体的に下葺折板12の頂面12aに面接触する。
【0043】
この状態を固定するため、膨出加工部34の挿通孔34aから上に出る剣先ボルト15に締め付けナット16を螺合する。このとき、傾斜片35aが下金具31の共回りを防止するので、締め付け作業は容易である。締め付けナット16で締め付けを行うと、図7に示したように接地面部32と延出部35と傾斜片35aが、下葺折板12の頂部に一体性高く強固に固定された状態となる。
【0044】
次に、図8に示したように、下金具31に対して上金具41を固定する。固定は、上金具41の本体部材42の差込片50を下金具31の差込孔37に差込み、上金具41の本体部材42の差込孔49に下金具31の差込片36が差し込まれるように、左右方向に分離した状態の本体部材42同士を左右方向から相互に接近させて閉じる。このとき、本体部材42の係止部材固定部48には断熱部材43を挟み込む。
【0045】
2個の本体部材42で下金具31を挟むようにしてボルト45ナット46で固定をすれば、差込片36,50と差込孔37,49の差込み状態が保持され、上金具41は下金具31に対して一体となる。
【0046】
差込片36,50と差込孔37,49は、前後方向に長いので、上金具41に対して前後方向に傾く力が作用しても、上金具41と下金具31の間で相対変位が起こることもなく、強固な一体性を得られる。しかも、平行な2組の差込片36,50と差込孔37,49が噛み合うので、一体性はきわめて高い。
【0047】
最後に、下葺折板12の上に断熱材(図示せず)を敷設したのち、上金具41に保持した、又は予め保持された吊子22を利用して、上葺折板13を固定する。すると、図1、図4に示したような折板屋根11(断熱二重折板屋根)を形成できる。
【0048】
この折板屋根11では、下金具31が下葺折板12を固定している剣先ボルト15に対して、その根元に近い位置で固定されるとともに、下葺折板12の頂部に対して面接触している。しかも面接触する接地面部32と延出部35は締め付けナット16によって直接積極的に固定されている。また、締め付けナット16が締め付ける被締め付け部34bは、接地面部32の中央部に形成されているので、安定した均等な固定状態が容易に得られる。
【0049】
このため、剣先ボルト15に長ナットを螺合して固定する従来の固定構造に比して、下葺折板12に対する一体性が極めて高いので、上葺折板13の伸縮によって絶えず負荷がかかっても、剣先ボルト15のみに過負荷をかけずに前後方向に長い広い面積で全体的に荷重を支える。したがって固定強度が高く、この結果、剣先ボルト15に金属疲労が起こるのを抑制でき、台風等で大きな負圧がかかった場合でも、容易には捲れ上がったり飛散したりしない強固な折板屋根となる。
【0050】
そのうえ、下金具31の固定は締め付けナット16を締め付けるだけでよいので、極めて容易であり、複数本のセルフドリルビスで固定する従来の場合に比して、作業は簡易迅速に行える。
【0051】
また、下金具31と上金具41は別部材であるが、前記差込片36,50と差込孔37,49とからなる結合部によって、左右方向で噛み合って上下方向での抜け止めがなされるので、正圧にはもちろんのこと、負圧に対しても強い取付金具21となる。しかも、前記結合部は、左右方向に分離した状態の本体部材42を閉じると、上下方向は勿論のこと前後方向にも抜け止めできる構造であるので、結合作業は容易である。
【0052】
加えて、その結合部は差込片36,50と差込孔37,49で構成されているので、立設部33と結合脚部47の構造が簡素であって、製造も容易である。
【0053】
さらに、取付金具21の上金具41には断熱部材43が備えられ、この断熱部材43が上葺折板13から下葺折板12への熱伝導を遮断するので、温度変動による上葺折板13の伸縮と同様に下葺折板12が伸縮するのを抑制できる。この結果、下葺折板12を固定しているタイトフレーム14に金属疲労が生じたりすることを抑えられ、飛散などの起きないより堅固な折板屋根を得られる。
【0054】
以下、取付金具21のその他の例について順次説明する。この説明において、その説明より先に説明した構成と同一又は同等の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0055】
図9〜図11は、結合部を一組の差込部と差込孔で構成した取付金具21の例を示す。図9は取付金具21の斜視図、図10は折板屋根11の取付金具21部分での断面図、図11は下金具31に上金具41を取り付けるときの状態を示す分解斜視図である。
【0056】
この取付金具21は、図11に示したように、下金具31の立設部33と上金具41の本体部材42の結合脚部47は、基本的に前記例のそれらと同様の形態である(図3参照)。すなわち、立設部33の上端に差込部としての差込片36を有する。しかし差込孔は有しない。差込片36の前後方向両外方には、上金具41の本体部材42における結合脚部47の上部を受ける受け片33aが形成されている。受け片33aは、真っ直ぐ上に延びている。
【0057】
一方の結合脚部47は、下金具31の差込片36を差し込み可能な差込孔49が形成されており、差込片を有しない。
【0058】
このように構成された取付金具21では、下葺屋根12の頂部に対して固定した下金具31に対して、左右に分離した一対の本体部材42で挟み込むように合わせると、図9、図10に示したように、差込片36と差込孔49の嵌合によって下金具31と上金具41は一体に結合される。結合部が一組の差込片36と差込孔49で構成されているので、結合作業は、二組ある場合よりもより簡単である。
【0059】
また、結合時において、前記受け片33aは結合脚部47を支持し、立設部33と結合脚部47は重合状態であるので、結合部が一組の差込片36と差込孔49とからなるものであっても結合強度は高く、前記と同様の効果を得られる。
【0060】
なお、上金具41の本体部材42における結合脚部47の下端には、下葺折板12の頂部の傾斜面に接地する脚部(図示せず)が形成されていてもよい。また、下金具31に差込孔を形成し、上金具41の本体部材に差込部(差込片36)を形成したものであってもよい。
【0061】
図12〜図14は、結合部の結合がより簡単に行えるように構成した取付金具21の例を示す。図12は取付金具21の斜視図、図13は折板屋根11の取付金具21部分での断面図、図14は下金具31に上金具41を取り付けるときの状態を示す分解斜視図である。
【0062】
この取付金具21の下金具31は、接地面部32と延出35を有し、接地面部32の両側から立設部33が形成されている。この立設部33の上端には、左右方向内方に曲がる受け片33bが形成されている。この受け片33bは、上金具41を結合した時に本体部材42の結合脚部47の上部を受ける部分である。受け片33bにおける膨出加工部34の上方位置には、締め付けナット16を螺合する作業領域を確保するために切欠部33cが形成されている。
【0063】
そして、立設部33の上下方向の中間位置には、前後方向に延びる差込孔37が形成されている。この差込孔37は、前記例の差込孔37とは異なり、1枚の金属板からなる差込片の差込みに必要な高さよりも大きく形成されている。
【0064】
上金具41の結合脚部47における前記差込孔37に対応する部分には、断面略横レ字状に折曲形成された差込部71が設けられている。具体的には、この差込部71は図13に示したように、上部が左右方向内方に向けて水平に延び(水平部71a)、その先端から外方斜め下に向けて延びる(傾斜部71b)形状で、これら水平部71aと傾斜部71bが前記差込孔37に差し込まれることになる。傾斜部71bの下端からは、下金具31の差込孔37より下の外側面に重なる重合部47aが延設されている。
【0065】
このように構成された取付金具21では、下葺屋根12の頂部に対して固定した下金具31に対して、左右に離反した状態の一対の本体部材42で挟み込むときには、本体部材42を大きく広げて完全に分離せずとも、一対の本体部材42をボルト45で一体にした状態のまま適宜広げて上から下金具31に被せるようにして、ボルト45ナット46を締めれば、結合できる。すなわち、本体部材42の傾斜片71bが下金具31の立設部33の上端部を滑るので、断熱部材43やボルト45を分離せずとも、差込部71を差込孔37に対して差し込むことが容易にできる。
【0066】
また、結合時において、前記受け片33bは結合脚部47を支持し、立設部33と結合脚部47は重合状態であるので、結合部が一組の差込部71と差込孔37とからなるものであっても結合強度は高く、前記と同様の効果を得られる。
【0067】
なお、下金具31に差込部を形成し、上金具41の本体部材42に差込孔を形成したものであってもよい。
【0068】
図15〜図17も、結合部の結合がより簡単に行えるように構成した取付金具21の例を示す。図15は取付金具21の斜視図、図16は折板屋根11の取付金具21部分での断面図、図17は下金具31に上金具41を取り付けるときの状態を示す分解斜視図である。
【0069】
この取付金具21の下金具31は、窓状に切り抜いた構造ではない差込孔37を有する。すなわち、差込孔37は、立設部33の前後方向の両側部分の2箇所に、上下方向に延びるスリット38を形成し、これらスリット38間の部分を左右方向内方に向けて、断面略つ字状に打ち出して形成されている。打ち出される部分の内側が前記差込孔37であり、本体部材42を構成する金属板1枚が入る高さを有する。つまり、差込孔37は、左右方向内方に奥行きをもった構造である。
【0070】
なお、前記のように内方に張り出す形状の差込孔37を有する構造であるので、締め付けボルト16の螺合作業のための領域を確保すべく、接地面部32の幅は図16に示した如く、下葺折板12の頂面12aの幅よりも若干幅広に形成される。
【0071】
上金具41の結合脚部47における前記差込孔37に対応する下端部分には、左右方向内方に向けて断面略レ字状に折曲形成された差込部としての差込片50が設けられている。つまり差込片50の下端は、内方ほど上がり外方ほど下がるように傾斜している。
【0072】
このように構成された取付金具21では、図12〜図14に示した取付金具21の場合と同様、下葺屋根12の頂部に対して固定した下金具31に対して、左右に離反した状態の一対の本体部材42で挟み込むときには、本体部材42を大きく広げて完全に分離せずとも、一対の本体部材42をボルト45で一体にした状態のまま適宜広げて上から下金具31に被せるようにして、ボルト45ナット46を締めれば、結合できる。すなわち、本体部材42の差込片50の下面が下金具31の立設部33の上端部を滑るので、断熱部材43やボルト45を分離せずとも、差込片50を差込孔37に対して差し込むことが容易にできる。
【0073】
また、結合時において、前記受け片33bは結合脚部47を支持し、立設部33と結合脚部47は重合状態であるので、結合部が一組の差込片50と差込孔37とからなるものであっても結合強度は高く、前記と同様の効果を得られる。
【0074】
なお、下金具31に差込部を形成し、上金具41の本体部材42に差込孔を形成したものであってもよい。
【0075】
図18〜図23は、下金具に対して上金具を前後方向から差し込んだ時に結合部が結合する構造の取付金具21の例を示す。図18は取付金具21の斜視図、図19は折板屋根11の取付金具21部分での断面図、図20は下金具31に上金具41を取り付けるときの状態を示す分解斜視図、図21は上金具の分解斜視図、図22は本体部材の斜視図、図23は上金具を下金具に対して差し込むときの作用状態を示す側面図である。
【0076】
この取付金具21における下金具31の立設部33と上金具41の結合脚部47は、図20、図23に示したように、前後方向全体にわたって同一の断面形状を有する。
【0077】
下金具31の立設部33は、上端に左右方向内方へ曲がる受け片33bを有し、上下方向中間位置に、左右方向内方に突出する凹溝としてのレール溝部72を有する。レール溝部72は断面つ字状をなし、本体部材42を構成する金属板1枚が入る隙間をもつ。
【0078】
上金具41の結合脚部47は、その下端部分に、左右方向内方に向けて断面略レ字状に折曲形成された凸部としての差込片50が設けられている。
【0079】
このようなレール溝72と差込片50を有するので、結合脚部47と立設部33は、前後方向からの差込みにより互いに嵌まり合う。つまり、左右方向に噛み合って上下方向での抜け止めがなされる。しかし、前後方向には抜けるため、上金具41には、噛み合った状態を保持するためのロック部材73を備える。
【0080】
ロック部材73は、1枚の金属板をプレス加工して構成され、本体部材42同士を結合するボルト45によって、本体部材42に対して予め一体に保持される。図21に示したように、ロック部材73は前後方向に延びる細長い板状をなし、本体部材42の結合脚部47の上面に接地する下端の接地縁73aは水平に形成される一方で、上端は、中間部ほど高くなり端部側ほど低くなるように傾斜している。そして、高さの最も高い中間部には、縦に長い長孔73bが形成されている。また両端には、前記接地縁73aよりも下に下がって、左右方向の一方に曲がったストッパ部73cが形成されている。ストッパ部73cの下面は、前後方向外方ほど高くなるように傾斜している。
【0081】
このロック部材73を保持する前記ボルト45は、図20に示したように二段の段差を有したボルトで、大径部分45aと小径部分45bとに雄ねじが形成されている。すなわち、大径部45aに螺合するナット46は、本体部材42同士の結合状態を保持する。ロック部材73は、大径部45aにおけるナット46よりも端部側に、その長孔73bが挿嵌され、小径部45bに螺合するナット74で抜け止めされる。前記長孔73bは小径部45bよりも大きく、遊びを持たせて形成されている。このため、ロック部材73は、前記ナット74を締め付けても上下動可能で、前後方向への傾動も適宜可能な状態となる。
【0082】
なお、図22に示したように、上金具41を構成する本体部材42の当接部44には、互いに係合し合う係合凸部44bと係合凹部44cを有する。これら係合凸部44bと係合凹部44cは、角孔44aを挟んで前後方向両側に設けられる。これらを設けることによって、本体部材42同士の位置ずれを防止でき、下金具31のレール溝部72に対する差込みを確保できる。
【0083】
このように構成された取付金具21では、上金具41を構成する各部材はあらかじめ一体に組みつけておく。そして、下葺屋根12の頂部に対して下金具31を固定した後、図20、図23に示したように、上金具41の結合脚部47を下金具31の立設部33に対して前方または後方から差し込む。このとき、図23に仮想線で示したように、上金具41のロック部材73は、上動し、また前後方向に傾くので、前記ストッパ部73cの下面が傾斜していることと相俟って、前記差込みは許容される。
【0084】
立設部33と結合脚部47の全体が前後方向で重なり合うと、下金具31に対する上金具41の差込みが完了し、ロック部材73がストッパ部73cの重みもあって降下する。ロック部材73が下がると、ストッパ部73cが下金具31の立設部33の端部に当接して、前後方向での抜け止めがなされる。
【0085】
このように、下金具31に対する上金具41の結合に際して、現場においてはナットを締める必要はなく、また高所作業でもナットを落としたりすることもないので、結合作業はいたって簡単である。
【0086】
また、レール溝部72と差込片50が前後方向全体にわたって噛み合っているので、ロック部材73は左右方向の一方にあれば十分に抜け止め作用が得られる。また、結合状態も強固であって、前記と同様の効果を得られる。
【0087】
なお、上金具41は、前記ボルト45に代えてリベットで組み立てられたものであってもよい。
【0088】
また、下金具31に対する上金具41の差込みが容易になるように、立設部33または結合脚部47における前後方向の一方の端部をその他の部分よりも大きく又は小さく形成してもよい。
【0089】
図24〜図26も、下金具に対して上金具を前後方向から差し込んだ時に結合部が結合する構造の取付金具21の例を示す。図24は取付金具21の斜視図、図25は折板屋根11の取付金具21部分での断面図、図26は下金具31に上金具41を取り付けるときの状態を示す分解斜視図である。
【0090】
この取付金具21における下金具31の立設部33の上端には、図24、図25に示したように受け片33bを有し、この受け片33bの左右方向外方の端には、左右方向外方斜め下に向けて延びる凸部としての差込片36が形成されている。立設部33は1枚の金属板で構成されるので、立設部33の上端部で金属板が二重になるように折り返して前記差込片36を形成し、その先に前記受け片33bが形成される。
【0091】
この受け片33bの前後方向の中間部には切欠部33cが形成されている。また左右一対の受け片33bにおける対角線上の2箇所に、上下方向に貫通する貫通孔33dが形成されている。
【0092】
上金具41の本体部材42における結合脚部47は、当接部44の下端から左右方向外方に向けて水平に延びたのち、その先を外方斜め下に延設し、先端縁を断面つ字状に折曲した形状である。この先端縁の内側が凹溝としてのレール溝部75であって、下金具31の前記差込み片36と嵌合する。
【0093】
また、結合脚部47の上部であって前記下金具31の貫通孔33dに対応する位置には、貫通孔47bが形成されている。この貫通孔47bは下金具31貫通孔33dよりも若干大きめに形成される。これら貫通孔47b,33dは、下金具31に対する上金具41の差込み状態保持のために、上下方向に長い形状で、下端が細く上端がL字状に折曲された別部材のロックピン76を、上金具41側から差し込むための部分である。上に位置する結合脚部47の貫通孔47bの方が大きいので、ロックピン76の差込み作業は容易である。
【0094】
このように構成された取付金具21では、上金具41を構成する各部材はあらかじめ一体に組みつけておく。そして、下葺屋根12の頂部に対して下金具31を固定した後、図26に示したように、上金具41の結合脚部47を下金具31の立設部33に対して前方または後方から差し込む。そして、立設部33と結合脚部47の全体が前後方向で重なり合ったところで、上金具41の貫通孔47bからロックピン76を下に向けて差し込む。ロックピン76の差込みは、2個の貫通孔47bのうちのいずれか一方でよい。すると、ロックピン76が下金具31の貫通孔33dにも差し込まれ、下金具31に対する上金具41の前後方向での抜け止めがなされる。
【0095】
このように、下金具31に対する上金具41の結合に際して、現場においてナットを締める必要はなく、単にロックピン76を差し込むだけで良いので、結合作業は簡単である。
【0096】
また、レール溝部75と差込片36が前後方向全体にわたって噛み合っているので結合状態も強固であって、前記と同様の効果を得られる。
【0097】
なお、下金具31に対して上金具41を差し込んだときに、立設部33と結合脚部47の全体が前後方向で重なり合った時点で位置決めできるようにするため、図24に仮想線で示したごとく、下金具31の受け片33bの端部に、上方へ折曲形成されるストッパ33eを備えてもよい。
【0098】
図27〜図29も、下金具に対して上金具を前後方向から差し込んだ時に結合部が結合する構造の取付金具21の例を示す。図27は取付金具21の斜視図、図28は折板屋根11の取付金具21部分での断面図、図29は下金具31に上金具41を取り付けるときの状態を示す分解斜視図である。
【0099】
この取付金具21における下金具31の立設部33は、上端に、左右方向外方に向けて水平に延びる受け片33bを有し、この先端側に左右方向外方ななめ下に延びてその先を左右方向内方に向けて水平に曲げる凸部としての差込片36を有した形状である。この差込片36の斜め下に傾斜する部分の前後方向の一端側には、図29に示したように、係止用切欠部36aが啓背されている。係止用切欠部36aは、上部側において前後方向に延びる導入部36bと、この導入部36bの先端から下方に延びる留置部36cを有する正面視略横L字状である。
【0100】
上金具41における本体部材42の結合脚部47は、下金具31の立設部33における受け片33bと差込片36を包み込む形状に形成され、内側部分が凹溝としてのレール溝部75である。そしてこの結合脚部47の斜め下に延びる部分であって下金具31の係止用切欠部36aの留置部36cに対応する位置には、上下方向に長い長孔47cが形成されている。
【0101】
この長孔47cには、ロックピン76が上下動可能に保持されている。図28中、76aはロックピン76の軸部分よりも大径の頭部、76bはEリング等で構成される抜け止め部材である。
【0102】
このように構成された取付金具21では、上金具41を構成する各部材はあらかじめ一体に組みつけておく。そして、下葺屋根12の頂部に対して下金具31を固定した後、図29に示したように、上金具41の結合脚部47を下金具31の立設部33に対して前後方向の一方から差し込む。このとき、ロックピン76は長孔47c内を上に上げておく。上金具41の差込みによって、立設部33と結合脚部47の全体が前後方向で重なり合ったところで、ロックピン76は係止用切欠部36aの導入部36bの端部に位置して、それ以上の差込みが不可能となるので、ロックピン76を下に下げれば、ロックピン76は係止用切欠部36aの留置部36cに収まり、ロックピン76が安定する。すると、下金具31に対する上金具41の前後方向での抜け止めがなされる。
【0103】
このように、下金具31に対する上金具41の結合に際して、現場においてナットを締める必要はなく、一体に備えられているロックピン76を操作するだけでよいので、高所作業でも部材の紛失などを防止でき、結合作業はいたって簡単である。
【0104】
また、レール溝部75と差込片36が前後方向全体にわたって噛み合っているので結合状態も強固であって、前記と同様の効果を得られる。
【0105】
図30、図31は、吊子が前後方向に移動できるようにした構造の取付金具21の例を示す。図30は取付金具21の斜視図、図31は折板屋根11の取付金具21部分での断面図である。
【0106】
この取付金具21は、上金具41に保持される吊子22のみが断熱部材42内で前後方向に移動可能である。吊子22はボルト59を挿通するボルト挿通孔24が、図30に破線で示したように前後方向に長い長孔で構成されている。また、このボルト挿通孔24の他に吊子22の上方への抜け止め機能を果たす2枚の抜け止め片25,26が、上部と下部に、左右に分けて形成されている。
【0107】
断熱部材43の吊子保持溝54は、前記のような形状の吊子22を保持可能なように、吊子保持溝54の上部と下部に、前記抜け止め片25,26と係合する抜け止め片係合溝54a,54bを有する。また、断熱部材43の下端には、前後方向の全体にわたって被挟持片77が垂設されている。この被挟持片77は本体部材42間に挟まれる部分で、ボルト65を挿通する挿通孔77aを有する。
【0108】
このほかの構造は、前記図1〜図4に示した取付金具21と同じである。
【0109】
この取付金具21では、日差しによる温度変動で上葺折板13が伸縮しても、吊子22がそれに追従して歪みを吸収する。このため、上葺折板13の伸縮が下葺折板12に影響を与えることを抑えることができる。この結果、剣先ボルト15に負荷がかかるのを抑制でき、この点からも剣先ボルト15に金属疲労が発生するのを防止して、不測の飛散などが起きない堅固な折板屋根11を得られる。
【0110】
このように上葺折板13の伸縮を吸収する構成は、吊子22と断熱部材43等の形状を変更することで、前記例のいずれの構造の取付金具21にでも適用できる。
【0111】
なお、下金具31に対して上金具41を差し込んで結合させる構造の取付金具21では、これら下金具31と上金具41の間で摺動するようにしても、上葺折板13の伸縮のよる歪みを吸収できるようにすることが可能である。
【0112】
この発明の構成と、前記一形態の構成との対応において、
この発明の係止部材は、吊子22に対応し、
以下同様に、
差込み部は、前記差込片36、差込部71に対応し、
凹溝は、レール溝部72,75に対応し、
凸部は、差込片36,50に対応するも、
この発明は前記の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【0113】
例えば、吊子以外の係止部材を用いてもよい。
【0114】
また、断熱部材を省略してもよく、断熱部材は上金具と下金具の間に介装した構造を採用してもよい。
【0115】
さらに、係止部材の前後方向の移動は、上金具と下金具との間で行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
11…折板屋根
12…下葺折板
13…上葺折板
15…剣先ボルト
16…締め付けナット
21…屋根板取付金具
22…吊子
31…下金具
32…接地面部
33…立設部
34a…挿通孔
34b…被締め付け部
35…延出部
36…差込片
37…差込孔
41…上金具
43…断熱部材
47…結合脚部
48…係止部材固定部
49…差込孔
50…差込片
71…差込部
72,75…レール溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剣先ボルトと締め付けナットで固定される下葺折板の頂部に載置される下金具と、該下金具に結合されて上葺折板を支持する上金具を有する屋根板取付金具であって、
前記下金具が、前記下葺折板の頂部に面接触する接地面部と、該接地面部から上方に立設する立設部を有し、
前記接地面部の中央部には、前記剣先ボルトを挿通する挿通孔と、前記締め付けナットで締め付けられる被締め付け部を有し、
前記接地面部の前後方向の両端には、前記下葺折板の頂部に面接触する延設部が形成され、
前記上金具が、前記立設部と結合する結合脚部と、前記上葺折板を係止すべく係止部材を固定する係止部材固定部を備え、
前記立設部と結合脚部に、左右方向で噛み合って上下方向での抜け止めをする結合部が形成された
屋根板取付金具。
【請求項2】
前記結合部が、左右方向に分離した状態の前記上金具を閉じた時に結合する構造である
請求項1に記載の屋根板取付金具。
【請求項3】
前記結合部が、前後方向に延びる差込孔と、該差込孔に差し込まれる差込部で構成された
請求項1または請求項2に記載の屋根板取付金具。
【請求項4】
前記結合部が、前記下金具に対して前記上金具を前後方向から差し込んだ時に結合する構造である
請求項1に記載の屋根板取付金具。
【請求項5】
前記結合部が、前後方向に延びる凹溝と、該凹溝に嵌まる凸部で構成された
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の屋根板取付金具。
【請求項6】
前記係止部材が、馳締め式の前記上葺折板を係止する吊子である
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の屋根板取付金具。
【請求項7】
前記上葺折板から前記下金具への熱伝導を遮断する断熱部材が備えられた
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の屋根板取付金具。
【請求項8】
前記係止部材が、前後方向に移動可能である
請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の屋根板取付金具。
【請求項9】
請求項1から請求項8のうちのいずれか一項に記載の屋根板取付金具が用いられた
折板屋根。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−107486(P2012−107486A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47443(P2011−47443)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【分割の表示】特願2010−257673(P2010−257673)の分割
【原出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(390035301)株式会社マルイチ (16)
【Fターム(参考)】