説明

岩石掘削機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はトンネル、坑道などの固く摩耗性の高い硬岩などを剥ぎ取るように掘削する岩石掘削機に係り、特に掘削ブームにより旋回、上下動可能な回転駆動デイスクカッタユニットに回転自由に取り付けられたデイスクカッタを有する複数の回転軸を装備した掘削機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、トンネル、坑道などの岩石掘削機として、例えばブーム付トンネル掘削機(ロッドヘッダ、ブームヘッダ)は、駆動モータからの駆動力を減速機を介してトランスミッションシャフトに伝達し、トランスミッションシャフトに取付けられた掘削ドラムを回転させてドラムに固定された掘削用のピックで岩石を掘削していた。
【0003】上記従来の岩石掘削機は、図5および図6に示すように、自走式クローラ1の上に基台2を設け、この基台2の中央部にコンベア3を枢着し、このコンベア3の前部には破砕岩石用掻き込み装置4が装備され、これには掻き込み爪5が回動可能に取り付けられている。そしてこの基台2の前部には掘削ブーム6の後部支持ブラケット7が水平方向に旋回可能に旋回軸受8によって取付けられており、この掘削ブーム6は基台2に対してブーム左右旋回シリンダ9によって左右方向に旋回可能であり、さらにこの掘削ブーム6は支持ブラケット7に対しブーム上下方向揺動シリンダ10によって上下方向に揺動可能である。そして掘削ブーム6の先端には周囲に多数のピックを植設された掘削ドラム11が着脱可能に装備されていて、この掘削ドラム11は押圧シリンダ12によって支持体13を介して岩石面に押圧される。また、前記基台2には運転台14、モータ駆動油圧ユニットなどが配置されている。符号15は岩石掘削機のアウトリガである。
【0004】また、特公昭59ー27836号公報によって開示されたトンネル堀削機械のように、上記ブームはスルーイングリングを介して本体に取付けられ、そしてこのブームは一方では上下動可能にトラニオンを介して前記スルーイングリングに取付けられ、スルーイングリングはジャッキにより旋回可能でブームもまたジャッキより上下動可能に構成されている。そして、このような構成のもとに高圧水を噴射させながらドラムを回転駆動させ、ドラムを岩石中に貫入し、スルーイングリングを旋回させてブームを左右、上下に移動させることにより岩石を左右上下に掘削ドラムによって掘削するものが知られている。
【0005】そのドラム前面のピックは、機体反力で岩石に押付けられ掘削中の側面ピックはブーム用の押付けジャッキで岩石に押付けられ、ピック先端に与えられる回転トルクによって岩石を掘削する。このトンネル堀削機はトランスミッションシャフトを支持するブームがスルーイングリングを介して堀削機本体に取りつけられ、そのブーム及びスルーイングリングはジャッキを介して堀削機本体に対して旋回、上下動可能に取りつけられている。
【0006】また、この種の掘削装置のカッタヘッドとしては特公昭56−51279号公報に記載されたものが公知であり、このカッターブーム1は掘削装置4のシヤーシに関する垂直軸2と水平軸3のまわりで枢軸運動を行なうよう配設されている。カッタービットを備えたソロバン玉状の一対のカッターヘッド6と7は、カッターブーム1の前端部5の両サイドで、軸8のまわりで回転可能に配設されている。カッチングヘッドの前進は、矢印9と10の方向に垂直軸2のまわりでカッターブームを交互に旋回させることによって行なわれる。カッチングヘッド7は、矢印9の方向に進むと掘削を行ない、一方、カッチングヘッド6は、矢印10の方向に進むと掘削を行なうものである。
【0007】また、従来のトンネル堀削機は実公平6−34467号公報に記載されたように、ブーム1中のドラム駆動回転軸2の先端部3に複数のピック4を植設した掘削ドラム5を取りつけている。その取付構造としては、掘削ドラム本体5の内部に円筒状ボス6基部に設けられたフランジ7の外周部を溶接などによって固定し、一体化したものを上記回転軸2の先端部3に穿設したスプライン溝8にボス6内面の突条を挿入、嵌合し、掘削ドラム本体5の表面からボス6を介してボルト9によって締着したものであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特公昭59ー27836号公報によって開示されたトンネル堀削機械は、高圧水を噴射させながらドラムを回転駆動させ、ドラムを岩石中に貫入し、スルーイングリングを旋回させてブームを左右、上下に移動させることにより岩石を左右上下に掘削ドラムによって掘削するものであり、また特公昭56−51279号公報に記載された切削装置による掘削は、カッタービットを備えたソロバン玉状の一対のカッターヘッド6と7を垂直軸2のまわりでカッターブームを交互に旋回させることによって行なわれるものであり、さらに実公平6−34467号公報に記載されたトンネル堀削機は全てブーム1中のドラム駆動回転軸2の先端部3に複数のピック4を植設した掘削ドラム5を取りつけ、この掘削ドラム5を回転駆動して掘削を行なうものである。
【0009】したがって、上記したように従来のトンネル、坑道などの岩石掘削機は全てピックまたはビットを植設した掘削ドラムによって岩石を掘削するものであるために掘削中常にピックまたはビットの摩耗が発生し、かつ岩石は細かく切削されて粉塵が発生し、そのために散水装置や集塵装置が必要である。また、これら従来の掘削ドラムによる岩石掘削においては多数のピックまたはビットにより岩石を必要以上に細かく切削するために掘削用の駆動動力が大きくなるという欠点があった。
【0010】さらに、トンネル、坑道などの固く摩耗性の高い硬岩を掘削する場合には、掘削用の駆動動力が一段と大きなものが必要となり、そして反対にこの掘削用駆動動力をあまり大きなものを使用すると掘削ドラムに装着したピックまたはビットが破壊されてしまう欠点があった。
【0011】本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、旋回、上下動可能な回転駆動デイスクカッタユニットに回転自由に取り付けられたデイスクカッタにより岩石の自由面に対し剥ぎ取るように掘削するため掘削動力が小さくてすみ、また簡単な構造で掘削効率が良く、しかもデイスクカッタの摩耗が少なく、粉塵の発生を極めて少なくできる岩石掘削機を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、デイスクカッタユニットを先端に回転可能に取りつけた掘削ブームを旋回、上下動可能に配設した岩石掘削機において、前記掘削ブームに配設した前記デイスクカッタユニットに回転駆動力を伝達させ、該回転するデイスクカッタユニットに装備された回転自由の複数の回転軸先端のデイスクカッタにより岩石を剥ぎ取るように掘削することを特徴とし、またデイスクカッタユニットを先端に回転可能に取りつけた掘削ブームを旋回、上下動可能に配設した岩石掘削機において、前記掘削ブームに装備した原動機の回転駆動力を減速機を介して前記デイスクカッタユニットに伝達させ、該デイスクカッタユニットにはデイスクカッタを備えた複数の回転軸を回転自由に取り付けたことを特徴とし、さらに円錐台状をしたデイスクカッタを先端に備えた2個以上の複数回転軸を軸受により回転自由にデイスクカッタユニットに取り付けたことを特徴としている。
【0013】
【作用】次に、本発明の作用について説明すると、切羽面を掘削する際には、掘削ブームを駆動してデイスクカッタユニットを旋回、上下動させながら掘削ブームに装備した原動機の回転駆動力を減速機により減速し、これをデイスクカッタユニットに伝達させてデイスクカッタユニットを回転駆動させ、その際回転するデイスクカッタユニットに装備されたデイスクカッタを備えた回転自由の複数の回転軸が各自自転しながら公転し、円錐台状をしたデイスクカッタにより岩石の自由面に対して円錐台状をしたデイスクカッタの周縁がくい込み剥ぎ取るように掘削する。そのため固く摩耗性の高い硬岩に対しても掘削効率が良く、デイスクカッタの摩耗が少なく、しかも掘削された岩石塊が大きくデイスクカッタの傾斜面により岩石を割っていくので粉塵の発生が少ない。
【0014】
【実施例】本発明に係る岩石掘削機の一実施例について図面を参照して説明する。図1は本実施例の正面図、図2R>2は本実施例の平面図であり、図において従来の岩石掘削機と同一もしくは同等な部分については同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0015】本実施例は図1ないし図4に示すように自走式クローラ1の上に基台2を設け、この基台2の中央部にコンベア3を枢着し、このコンベア3の前部には破砕岩石用掻き込み装置4が装備され、これには掻き込み爪5が回動可能に取り付けられている。そしてこの基台2の前部には掘削ブーム6の後部支持ブラケット7が水平方向に旋回可能に旋回軸受8によって取付けられており、この掘削ブーム6は基台2に対してブーム左右旋回シリンダ9によって左右方向に旋回可能であり、さらにこの掘削ブーム6は支持ブラケット7に対して水平ピン7Aによって取付けられており、掘削ブーム6はブーム上下方向揺動シリンダ10によって上下方向に揺動可能である。そして掘削ブーム6には原動機16と減速機17が装備され、その回転を伝達する駆動回転軸18の先端にはデイスクカッタユニット19が取り付けられている。このデイスクカッタユニット19には円錐台状をしたデイスクカッタ20を備えた2個以上の複数回転軸21が軸受22により回転自由に取り付けられており、押圧シリンダ12によってトンネルT内の切羽岩石Fの自由面に押圧される。
【0016】したがって、本実施例の動作は掘削ブーム6をブーム左右旋回シリンダ9,ブーム上下方向揺動シリンダ10,押圧シリンダ12によってデイスクカッタユニット19を切羽面に押圧し旋回、上下動させながら掘削ブーム6に装備した原動機16の回転駆動力を減速機17により減速し、駆動回転軸18を介してデイスクカッタユニット19に伝達させてデイスクカッタユニット19を回転駆動すると、その回転するデイスクカッタユニット19に装備されたデイスクカッタ20を備えた回転自由の複数の回転軸21が各自自転しながら公転し、前面が平らで円錐台状をしたデイスクカッタ20によりトンネルT内の切羽岩石Fを自由面に対してその周縁がくい込み剥ぎ取るように掘削する。
【0017】本実施例によれば、回転するデイスクカッタユニット19に装備されたデイスクカッタ20の回転軸21が自転しながら公転するから、円錐台状をしたデイスクカッタ20によって岩石Fにその周縁がくい込み剥ぎ取るように掘削することができる。そのため、固く摩耗性の高い硬岩に対しても岩石を引張り力により破砕するので掘削効率が良く、また各回転軸の掘削部は回転自由であるから掘削の際にデイスクカッタ20の摩耗が少なく、しかも掘削された岩石塊が大きくデイスクカッタ20の傾斜面により岩石を割っていくので粉塵の発生が少ないという効果がある。
【0018】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、デイスクカッタユニットを先端に回転可能に取りつけた掘削ブームを旋回、上下動可能に配設し、掘削ブームに装備した原動機の回転駆動力を減速機を介してデイスクカッタユニットに伝達させてデイスクカッタユニットを回転駆動するから、その回転するデイスクカッタユニットに装備されたデイスクカッタを備えた回転自由の複数の回転軸が各自自転しながら公転して、円錐台状をしたデイスクカッタが各自自転、公転しながら切羽岩石の自由面に対してその周縁がくい込み剥ぎ取るように掘削することができる。
【0019】そのため、固く摩耗性の高い硬岩に対しても岩石を引張り力により破砕するので掘削効率が良く、また各デイスクカッタは回転自由であるから掘削の際の摩耗が少なく、しかも掘削された岩石塊が大きくデイスクカッタの傾斜面により岩石を割っていくので粉塵の発生が少ない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の平面図である。
【図2】本実施例の要部拡大一部断面図である。
【図3】本実施例の要部拡大前面図である。
【図4】本実施例の側面図である。
【図5】従来例の側面図である。
【図6】従来例の平面図である。
【符号の説明】
1 自走式クローラ
2 基台
3 コンベア
4 掻き込み装置
5 掻き込み爪
6 掘削ブーム
7 後部支持ブラケット
8 旋回軸受
9 ブーム左右旋回シリンダ
10 ブーム上下方向揺動シリンダ
12 押圧シリンダ
13 支持体
14 運転台
15 アウトリガ
16 原動機
17 減速機
18 駆動回転軸
19 デイスクカッタユニット
20 デイスクカッタ
21 回転軸
22 軸受
F 切羽岩石
T トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 デイスクカッタユニットを先端に回転可能に取りつけた掘削ブームを旋回、上下動可能に配設した岩石掘削機において、前記掘削ブームに配設した前記デイスクカッタユニットに回転駆動力を伝達させ、該回転するデイスクカッタユニットに装備された回転自由の複数の回転軸先端のデイスクカッタにより岩石を剥ぎ取るように掘削することを特徴とした岩石掘削機。
【請求項2】 デイスクカッタユニットを先端に回転可能に取りつけた掘削ブームを旋回、上下動可能に配設した岩石掘削機において、前記掘削ブームに装備した原動機の回転駆動力を減速機を介して前記デイスクカッタユニットに伝達させ、該デイスクカッタユニットにはデイスクカッタを備えた複数の回転軸を回転自由に取り付けたことを特徴とする岩石掘削機。
【請求項3】 円錐台状をしたデイスクカッタを先端に備えた2個以上の複数回転軸を軸受により回転自由にデイスクカッタユニットに取り付けたことを特徴とする請求項1または2記載の岩石掘削機。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3456679号(P3456679)
【登録日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【発行日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−109019
【出願日】平成7年4月10日(1995.4.10)
【公開番号】特開平8−284592
【公開日】平成8年10月29日(1996.10.29)
【審査請求日】平成13年4月4日(2001.4.4)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【参考文献】
【文献】特開 平5−295986(JP,A)
【文献】特開 昭48−60002(JP,A)
【文献】特公 平6−56077(JP,B2)
【文献】実公 平1−37039(JP,Y2)