説明

工事用扉

【課題】設置する床面が凸凹であったり、傾斜していたとしてもその床面の修正をすることなく工事用昇降機方向あるいは建物の外部へ通じる開口部方向への工事用扉の振れ防止を図り工事用昇降機と工事用昇降機扉が接触しないことおよび建物の開口部に隙間が生じないようにすることを目的とする。
【解決手段】
建物の各階に設置される転落防止用の工事用扉であって、当該工事用扉は上レール部から吊り下げられた走行棒を有し、該走行棒の下部においては揺動部材が、開閉方向と平行に揺動可能に取り付けられ、当該揺動部材は自重によって床面と接触し、かつ、当該扉が昇降機の方向あるいは建物の開口部に振れることを防止するために当該揺動部材と接することができる振れ止め部材を、当該工事用扉と工事用昇降機あるいは建物の開口部との間に少なくとも1つ配置することを特徴とする工事用扉である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の各階に設置される転落防止用の工事用扉であって、風が吹いたりあるいは作業者が接触することにより当該工事用扉が振れ、工事用昇降機が上下に移動する領域内に当該工事用扉が入り込むことにより工事用昇降機等と工事用昇降機扉等が接触することを防止するための工事用扉の振れ止めに関するもの、あるいは、建物に大型の機械あるいは家具等を搬入するために設けられた建物の各階における開口部に設置される工事用扉が、風が吹いたりあるいは作業者が接触することにより振れが生ずる場合における当該工事用扉の振れ止めに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高層建物の建築現場において、建設資材や作業者を各階に搬送するために工事用昇降機を使用する。この場合に、高層建物の各階に設置されている工事用昇降機の出入り口において、工事用扉を設置していた。また、建物に大型の機械や家具等を搬入するために設けられた開口部を開閉するために、建物側各階出入り口に工事用扉を設置していた。この従来の工事用扉は、ほぼ長方形状であって金属性の薄板状の複数のパネルから成り、その金属性パネルの長辺を接しその接した部分を折りたたむ構成とすることで開閉可能となるものであった。このような工事用扉を、工事中の建物の各階において、工事用昇降機あるいは、大型の機械等を搬入する建物側に設置される各階の出入り口に設置することにより、作業者あるいは建設資材等の転落や落下防止を図っていた。
【0003】
このような、ほぼ長方形状の複数の金属性パネルから成る工事用扉は、一定以上の防火性能を有し、また風が吹いたり作業者が寄り掛かったりしても、この工事用扉は一定以上の剛性を有するので、当該工事用扉を工事用昇降機扉に使用した場合に工事用昇降機方向に振れることがなく、工事用昇降機が上下に移動する領域内に当該工事用扉が入り込まないので、工事用昇降機の作動時にこの工事用扉と工事用が接触することはなかった。また、建物に大型の機械あるいは家具等を搬入するために設けられた開口部を開閉するため建物側各階出入り口に設置される工事用扉についても、開口部方向に振れることがないので、隙間が生じることなく、作業員や物が落下する危険性はなかった。しかしながら、この従来使用していた工事用扉は、ほぼ長方形状の金属性パネルを使用していたためコストが嵩み、近年の金属相場の高騰によりコストの低減が望まれていた。また、建物の各階において、工事用昇降機の出入り口あるいは、大型の機械や家具等を搬入するために建物側各階出入り口設けられた開口部に工事用昇降機の扉を設けなければならず、高層建物になるとそのコスト負担は大なるものであった。また金属性パネルを用いるため重量が嵩み、工事用昇降機の扉を各階に設置するコストも無視できないものとなっていた。
【0004】
そこで、上記金属性パネルの代わりに複数の支柱とリンク部材で構成された工事用扉を開発した。この工事用扉は大幅な材料コストの削減をすることができ、軽量で建物の各階に設置する場合にも設置コストの削減をも図ることができるものであった。また上記工事用扉に難燃性ネットを使用すれば防火性能をも満足させるものであった。しかしながら、風が吹いたり作業者が寄り掛かったりすると、複数の支柱とリンク部材で構成された工事用扉が昇降機の方向や建物の開口部方向に振れ、工事用昇降機が上下に移動する領域内に当該工事用扉が入り込んで、昇降機の作動時にこの工事用扉と工事用昇降機が接触するおそれが生じ、また大型の機械や家具を搬入する建物の開口部に設置する工事用扉の場合に、前記の要因により当該工事用扉が振れると、その隙間が生じ人や物が落下する恐れがあり安全上問題があった。これを解決するために走行棒下部へキャスターローラーを取り付け、扉の開閉方向に沿って移動するキャスターローラーを使用したが、設置床面の凸凹や傾斜などにキャスターローラーが追従できず当該工事用扉の振れを防止することができないのみならず、設置床面の凸凹や傾斜などにキャスターローラーが引っ掛かり扉の開閉もスムーズにできないという問題があった。
【0005】
特開2008−2068号公報(特許文献1)に記載された発明によれば、断面を略直角三角形状とした横長の柱状体とし、スライドゲートのゲートの下部に取り付けられた転動体が転動可能とした隙間をおいて、その垂直側面どうしを対向させたものとしており、前記スライドゲートが配設された地面に、横長方向に複数個連接させた状態で敷設したことを特徴とするスライドゲート用案内部材なる発明が記載されている。この発明は設置する地面が傾斜し、あるいは凸凹していた場合において、上記転動体と案内部材の高さを調節しなければ、スライドゲートの適切な振れ止めを図ることおよび扉の開閉をスムーズに行うことができない。しかし、上記発明はスライドゲート用案内部材に係るものであるので、このスライドゲートは建設現場の出入り口に設けられるものである。通常建設現場への出入り口は、1つの建設現場に1か所あるいは2か所設置される程度である。従って、設置する地面の凸凹を均し、また、傾斜をなくすこと、あるいは、スライドゲートにおける上記案内部材の高さと上記転動体の長さなどを調節して扉の開閉をスムーズにかつ、振れ止め(転動体)の高さの調整することは、スライドゲートが比較的少数であること及び設置する面が建物の床面ではなく地面であることからから容易である。しかしながら工事用扉は建設中の建物の各階における工事用昇降機の入り口、あるいは建物の開口部に設置されるものであるため、設置床面が凸凹あるいは傾斜が生じている場合はその床面を修正することあるいは床面を均すことは容易ではない。さらに建設中の各階の床面に工事用扉を設置する目的のみのために、均すのは現実的でない。しかも上記のとおり高層建築物であればその階数は多く、そのすべての工事用扉の振れの防止を図り、扉の開閉をスムーズにすることは設置コストの増大を招くことになる。また設置する工事用扉の数の多さから設置不良が生じる場合に工事用昇降機と工事用扉が接触する事態が生じれば重大な事故が起きかねず安全性にも問題がある。しかもそのために複雑な部品を使用すれば製造コストの増大を招く恐れもある。
【0006】
【特許文献1】特開2008−2068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、設置する床面が凸凹であったり、傾斜していたとしてもその床面を均すことなく工事用昇降機方向あるいは建物の外部へ通じる開口部方向への工事用扉の振れ防止を図り工事用昇降機と工事用昇降機扉が接触しないことおよび建物の外部へ通じる開口部において床面と当該扉との隙間が生じないようにすることである。さらに振れ止めを適切に行うために揺動部材(先行技術における転動体)の高さの調整を図ることを不要とすることである。また、他の課題は工事用扉の開閉をスムーズに行うことである。また他の課題は、設置コストの低減を図るとともに設置不良の防止を図ることである。また、他の課題は、振れ止め防止部材を可及的に簡単な構造とし製造コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、本発明は、建物の各階に設置される転落防止用の工事用扉であって、当該工事用扉は上レール部から吊り下げられた走行棒を有し、該走行棒の下部においては揺動部材が、開閉方向と平行に揺動可能に取り付けられ、当該揺動部材は自重によって床面と接触し、かつ、当該扉が昇降機の方向あるいは建物の開口部に振れることを防止するために当該揺動部材と接することができる振れ止め部材を、当該工事用扉と工事用昇降機あるいは建物の開口部との間に少なくとも1つ配置するという手段を講じたものである。このような手段を講じることで、作業者などが当該工事用扉に加える荷重に対して、当該工事用扉の上部及び下部でその荷重に対抗し支えることができる。
【0009】
また、前記揺動部材は長孔を有し当該長孔で走行棒に対し上下方向に移動可能かつ開閉方向に摺動可能に取り付けるという手段を講じることができる。このようにすることによって、開閉方向に遥動するだけでなく上下方向にも移動できるので揺動部材の自由度が増すものである。
【0010】
また、前記揺動部材における床面と接する領域は円弧状形状を有するという手段を講じることができる。このようにすることによって、床面の凸凹や斜面に対して前記揺動部材が引っかかりにくくなる。
【0011】
また、前記揺動部材は、長孔を有する扇形状であって、走行棒の下部に取り付けられた取り付け部と、当該長孔において、上下動移動可能かつ揺動可能に取り付けられ、当該揺動部材の扇形状の円弧状部分が床面と接するという手段を講じることができる。当該揺動部材を扇形状とすることにより長孔の下部に当該揺動部材の重心が位置することができる。
【0012】
また、前記揺動部材を扇形状とした場合における床面と接する円弧状形状の曲率半径を、当該揺動部材が扇型とした場合の曲率半径よりも小とするという手段を講じることができる。当該構成によって、床面の凸凹を、遥動部材が揺動することによって、前記揺動部材を扇形状とした場合における当該円弧状形状における一部が床面と接することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記のような構成としたことにより、本発明における工事用扉は、揺動部材と振れ止部材により、当該工事用扉が工事用昇降機あるいは建物の開口部方向へ振れることを効果的に防止することができるので、工事用昇降機と工事用扉の接触、および、工事用扉の隙間が生じることを防止することができる。また床面の凸凹あるいは傾斜によって揺動部材に生じる扉の開閉方向への抵抗はほぼ当該揺動部材の自重だけであるので当該工事用扉の開閉動作をスムーズに行うことができる。さらに、揺動部材が走行棒と揺動可能に取り付けられるとともに揺動部材が長孔を有しているので、床面の傾斜や凸凹に対し、揺動部材が揺動することによって当該床面の凸凹や傾斜に追従することができる。また、重心が揺動部材の下部に位置しているので、遥動部材の円弧状部が床面と接する方向に付勢されており床面の凸凹に対して追従性が良好となる。また、各揺動部材の位置についての調整が不要となる。また、上記のとおり各揺動部材の個別の調整が不要となるので設置コストを低減することができる。また、あまり部品を増やすことなく工事用扉の振れ止めを図ることができるので製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の工事用扉の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、工事用扉の全体図。図2は、図1の拡大図。図3は、工事用昇降機扉の開閉動作を表した図。図4は、図3の拡大図。図5は、工事用扉の上レール部の拡大図。図6は、走行棒の下部における拡大図。Aは扇形状の揺動部材の正面図、Bは扇形状の揺動部材の側面図、Cは短冊状の揺動部材。図7は、工事用扉を開閉する際の揺動部材の動作を表した図。図8は、振れ止め部材の実施例。図9は、工事用扉を開閉する際の揺動部材の動作を表した図。Aは工事用扉を開く場合の直前の揺動部材の図である。Bは揺動部材が床面との抵抗により持ち上がるときの図である。Cは揺動部材が向きを変えた図である。
【0015】
工事用扉10は、支柱20、20と梁部21において、公知の固定手段により固定することができる。この工事用扉10は、当該支柱20、20との間に複数の走行棒50・・・・を有し、その各走行棒50・・・・に取り付けられている吊り下げ部51・・・・と、その吊り下げ部51・・・・が組み込まれる上レール部35と有している。ただし、吊り下げ部51と走行棒50を一体として上レール部から走行棒50を吊り下げる構成とすることもできる(図示せず)。また、走行棒50・・・・の下部においては揺動可能に取り付けられる揺動部材60・・・・を有し、その揺動部材60・・・・が接することができる振れ止め部材70が床面に配置されている。更に、前記各走行棒50に、折り畳み可能な幕部30を取り付けることもできる。また走行棒50が複数配置されている場合において、隣接する各走行棒50・・・・の間に、それぞれリンク部40・・・・を有する。各走行棒50・・・・の上部においては前記の通りそれぞれ吊り下げ部51・・・・が固定され、それぞれ各走行棒50・・・に取り付けた吊り下げ部51・・・・が配置されている上レール部35が、走行棒50・・・・の上方に配置されている。
【0016】
支柱20、20と梁部21は工事用扉10の開口部11の上側における左右両端部において固定することもできる。この場合は、支柱20、20と梁部21で工事用扉10の開口部11が構成される。また、梁部21は、上レール部35と公知の固定手段を用いて固定することもできる。尚、支柱20、20と梁部21を用いずに建物の昇降機への出入り口あるいは、建物の開口部に直接工事用扉10を設置することもできる(図示せず)。
【0017】
複数配置されている走行棒50・・・・のうち左端に配置されている走行棒50は、左端に配置されている支柱20と公知の固定手段22、22を用いて固定されている。また複数配置されている走行棒50・・・のうち右端に配置されている走行棒50は、右端に配置されている支柱20とこの工事用扉10を閉じた場合において、公知の固定具23を用いてロックすることができる(図1参照)。
【0018】
上レール部35は断面がほぼ角型C字状を呈し、その角型C字状の開口部36が下方を向いている。上レール部35の空間部37に走行棒50、50・・・・の上部において取り付けられている吊り下げ部51のローラー部52、52が、この空間部37において回転軸53に回転可能に軸支されている。吊り下げ部51の軸部55は前記開口部36を通じて下方に吊り下げられ、走行棒50・・・・の上部において軸部55が取り付けられている。ローラー部52、52は回転可能な円盤形状であれば好ましいがボールベアリングを用いても好ましい。
【0019】
工事用扉10における走行棒50は複数配置されているが、その構成は同様であるのでそのうちの1つの説明をする。走行棒50の上部においては、上記のとおり吊り下げ部51に取り付けられ、その吊り下げ部51におけるローラー部52、52がレール部35の空間部37に収まる。従って、ローラー部52、52がレール部35の空間部37において回転することにより吊り下げ部51・・・が開閉方向(図1におけるA方向、または、B方向)に移動が可能となり、当該吊り下げ部51も走行棒50に取り付けられているので、当該走行棒50も前記開閉方向に移動可能となる。この場合前記開閉方向の移動を滑らかにするために、上記レール部35の空間部分内37とローラー部52、52の間には若干の隙間が生じている。しかし、工事用扉10における走行棒50の上部において工事用昇降機(図示せず。)が上下に移動する領域内等への方向(図1における図表面から裏面の方向)に工事用扉10が振れるほど、隙間があいているわけではない。
【0020】
上記のとおり走行棒50は複数配置され、リンク部40・・・・は隣り合うそれぞれの走行棒50・・・・同士と連結されている。この複数配置されているリンク部40・・・・の構成はほぼ同様であるのでそのうちの1つのリンク部40について説明すると、当該リンク部40は、上リンク左部41と上リンク右部42と縦リンク43と下リンク左部44と下リンク右部45で構成されている。上リンク左部41の一端は隣接する走行棒50におけるv1の位置に揺動可能に取り付けられている。また上リンク左部41の他端は、上リンク右部42の一端及び縦リンク43の上端と揺動可能に取り付けられている。上リンク右部42の他端は走行棒50におけるv′1の位置に揺動可能に取り付けられている。また、下リンク左部44の一端は隣接する走行棒50におけるv2の位置に揺動可能に取り付けられている。また下リンク左部44の他端は、下リンク右部45の一端及び縦リンク43の下端と揺動可能に取り付けられている。下リンク右部45の他端は走行棒50におけるv′2の位置に揺動可能に取り付けられている(図2参照)。ここで、隣接する走行棒50におけるv1とv2は、当該隣接する走行棒50におけるv1の下にv2が位置するというほどの意味であり走行棒50にリンク部材40を取り付ける位置を図1に示した通りに限定するというものではない。これは走行棒50におけるv′1とv′2についても同様である。また、取り付け方法はボルト及びナットによる取り付け方法あるいはリベット止めなどを用いられることが好ましい。
【0021】
上リンク左部41と上リンク右部42と下リンク左部44と下リンク右部45はほぼ同じ長さであり、工事用扉10を全開した場合における隣接する走行棒50、50同士の間隔の半分よりも長いことが好ましい。上リンク左部41と上リンク右部42と下リンク左部44と下リンク右部45は、上記のような長さとし、すでに述べたような構成で連結すると、隣り合う走行棒50、50同士の間隔の半分地点において、上リンク左部41と上リンク右部42および下リンク左部44と下リンク右部45とでそれぞれ山形形状の頂点t1、t2が構成される。さらに上記記載のとおり、上リンク左部41と上リンク右部42において構成されるこの山形形状の頂点t1と、下リンク左部44と下リンク右部45において構成されるこの山形形状の頂点t2に、それぞれ縦リンク43の上端及び縦リンク43の下端が連結されている。従って、この縦リンク43の自重によってリンク部40が広がる様に、すなわち山形形状がより低い山形形状になるように付勢されている。しかしながら扉の開口部11の幅は一定の大きさに制限されておりその開口部11の大きさに合わせて幕部30の大きさが決められているので、各連結棒50、50・・・同士の間隔は一定の幅(幕部30が広がった場合における各走行棒の間隔)に規制されておりこれ以上広がることはない。すなわち上記各リンク部40・・・・の山形形状がこれ以上低くなることはない(扉の全閉状態である図1参照)。このことは、リンク40の下部についても同様である。このような構成を採ることで工事用扉10は縦リンク43の自重が常に下方に生じているので常に扉が閉じる方向に付勢されている。従って常に工事用扉10は閉じられる方向に荷重が働いているのでので、仮に作業者が工事用扉10を開け放していたとしても自動的に閉じられることができる。
【0022】
また、このリンク部40の動作は他の各リンク部40(a)の動作とは独立しているので、ある1の走行棒50nとその1の走行棒50nに隣接している走行棒50(n−1)との間隔を狭めても、当該走行棒50nとそれに隣接する他の走行棒50(n+1)との間隔にまで影響を及ぼすことはないので、当該工事用扉10の一部のみの開閉も可能である(図3および図4参照)。すなわち、ある1の走行棒50nとそれに隣接する他の走行棒50(n−1)の間隔のみを狭めることができる。従って、特に工事用昇降機内の物を取り出す場合に工事用扉10の一部のみを開閉することができるので、当該工事用扉10全体を開け閉めする必要がなく、必要最小限に扉の開け閉めが可能である。更に云えば、ある1つの走行棒50nと隣接する走行棒50(n−1)のみが独立して接近させることができ、他の走行棒同士50(n+1)、50(n+2)の間隔については接近することなく、ある1つの走行棒50nとそれに隣接する走行棒50(n−1)のみの接近が、更に当該走行棒50nとそれに隣接する他の走行棒50(n+1)との間隔にまで影響を与えることもない。従って、扉の一部のみを開閉することができ、工事用昇降機内の物を容易に取り出すことができる。
【0023】
幕部30は一般的な柔軟性を有する物を用いることができる。また、前記柔軟性を有する物は、テント地や難燃性の防炎ネットあるいは、難燃シートを使用することができる。このような難燃シートを使用することにより金属パネルに比し軽量化を図り、かつ、コスト削減を図りつつ、防火性能を満足することができる。この幕部30の大きさは工事用昇降機扉10の開口部11の大きさとほぼ同様の大きさであり、幕部30の大きさは開口部31の大きさにより決定される。従って、幕部30の大きさにより走行棒50の数および走行棒50同士の間隔が決定される。また、幕部30は、各走行棒50の上下においてボルトなどで固定される(図示せず)。尚、幕部を当該工事用扉10に取り付けない場合であっても、振れ止めの効果を達成することができることは云うまでもない。
【0024】
各走行棒50・・・・の下部においては揺動部材60・・・・が、走行棒50の下部に取り付けられている取り付け部材52と、工事用扉10における開閉方向と平行に揺動できるように取り付けられている。ここで当該揺動部材60においても、各走行棒50・・・・の下部に配置することができるので、その内のひとつについて詳細に説明をする。揺動部材60は、走行棒50の下部に配置されている取り付け部材52と、当該揺動部材60における孔61とを、軸57によって揺動可能に取り付けられている。当該孔61は円形の孔であれば、走行棒50の開閉方向(図1におけるAあるいはB方向)と同方向に揺動できるように取り付けることができるが(図示せず)、この孔61は長孔であっても好ましい。この場合に、揺動部材60が取り付け部材52に対して揺動可能かつ上下方向に移動可能であるので、揺動部材60の動きに対する自由度が増し、床面99の凸凹99aに対して当該揺動部材が容易に追従することができ、後の述べるように、扉の開閉動作に応じて揺動部材60が傾く向きを変えることができるので、工事用昇降機扉10の開閉動作をスムーズに行うことができるからである。
【0025】
揺動部材60は床面99と接する部分が円弧状であることが好ましい。床面99に凸凹99aがあった場合に上記揺動部材60の円弧状部63が、その床面99の凸凹99aを乗り越えることが容易となるので、工事用扉10の開閉がスムーズに行えるからである(図7参照)。ここで、揺動部材60をほぼ扇形状とすることも好ましい。ここで扇形状とは平行でない2本の同じ長さの線分で交差する点を一端とした場合にその他端を任意の曲率半径の円弧状の曲線で結びその2本の線分と当該円弧状曲線で囲まれたものであり、後に述べる扇型とは異なり、この扇形状の曲率半径が、扇型における円の半径と一致する場合のみならず相違する場合も含むものである。また、いわゆる扇の要に相当する部分付近に孔61を配置した場合において、走行棒50の下部に配置されている取り付け部材52と軸57によって、当該揺動部材60が揺動可能に取り付けられるので、揺動部材60の重心の位置が孔61の位置より下方に位置し、床面99と揺動部材60が接することができる。なお、扇型とは円の2本の半径とその間にある円弧によって囲まれた形状であり、この場合、扇型の円弧の部分の曲率半径は当該円の半径によって決められるが、本実施例の場合、この円弧状部63の曲率半径を、当該揺動部材を仮に扇型とした場合の曲率半径よりも小とすることができる。この曲率半径は床面99の凸凹99aあるいは傾斜によって適宜定められる。
【0026】
すなわち、当該揺動部材60の円弧状部63の曲率半径は、孔61が長孔である場合において当該長孔の上端部分64から円弧状部63までの寸法を当該曲率半径とすることもできるが、孔61が長孔である場合の当該長孔の下端部分65から円弧状部63までの寸法を当該曲率半径とするほうがより好ましく、本実施例の場合、扇型の曲率半径と比してほぼ半分またはそれ以下の曲率半径とすることもできる。このように遥動部材構成60の円弧状部分63を構成することで、床面99の凸凹99aを乗り越えやすくすることができ、工事用扉10の開閉をスムーズに行うことができる。尚、当該揺動部材60を扇形状とした場合といっても、揺動部材60の強度に応じて、適当な厚さを有することは云うまでもない(図6B参照)。また、扇形状における、平行でない2本の同じ長さの線分が交差する点である一端部の曲率半径は、前記他端を結ぶ円弧状よりも小さな円弧状部67を有することも好ましい。
【0027】
走行棒50の下部に取り付けられた取り付け部52と揺動部材60が軸57によって工事用扉10の開閉方向と平行に揺動可能に取り付けられた状態において、孔61が長孔である場合であって、円弧状部63の曲率半径が、本来の扇型の半径よりも小である場合には、当該長孔の上端部64から揺動部材60の先端であって当該円弧状部分の中心部66までの長さd1は、当該長孔の上端部64から床面99までの距離d2よりも長くする構成を採ることができるので、このような構成を採ることにより、走行棒50の下部において、取り付け部材52と軸57によって取り付けた揺動部材60の円弧状部63が、床面99が傾斜あるいは凸凹していたとしても、当該揺動部材60の自重により常に床面99と接することになる。すなわち、当該長孔の上端部64から床面99までの距離が比較的短い場合は当該揺動部材60が傾き、前記距離が比較的遠い場合は当該揺動部材60ほぼ直立するようになる。従って、揺動部材60と床面99との位置を1つ1つ調整することなく、揺動部材60と床面99とが常に接することができる(図7参照)。言い換えれば、前記d1とd2の差によって床面の凸凹を吸収できるものである。また、この揺動部材の形状は、長孔61と円弧状部63′を有するほぼ短冊状の揺動部材60′(図6C参照)とすることもできる。
【0028】
尚、各揺動部材60は走行棒60の下部に配置されるが、すべての走行棒50の下部に配置されることは必要ではなく、走行棒50の数より少ない数の揺動部材60を配置することで振れを防止することができる。このことは短冊状の遥動部材60′であっても同様である。
【0029】
振れ止部材70は一定の厚さを有する板材を使用することができる。板材は扉の開口部の幅とほぼ同様の長さを有し、その高さは、揺動部材60と接し、作業者がよりかかった場合等に工事用扉10の振れ止めができる高さであれば特に限定をされない。また、この振れ止め部材70は工事用扉10と工事用昇降機などとの間に少なくとも1本の振れ止部材70を設置することができるが、振れ止部材70を2本使用し、この2本の振れ止部材70、70を工事用扉10の開閉方向とほぼ平行に設置することも好ましい。その2本の振れ止部材70、70の間においてその振れ止部材70、70の垂直部71と床面99とで構成される溝部73に、上記走行棒50・・・・の下部に配置された揺動部材60を床面99に接するように配置することで工事用扉10の振れ幅を制限することができる。
【0030】
また、工事用扉10の開口部11の下部には、振れ止部材70としてさんぎと呼ばれる板を設置することができる。このさんぎと呼ばれるものは、工事用昇降機内あるいは建物の開口部に物が転がり落ちないように配置されているものであるが、本発明にかかる振れ止部材70は、このさんぎを使用することもできる。また、このさんぎを2本使用することもできる。尚、このさんぎは、くぎ類で固定することができる。
【0031】
振れ止部材70の他の実施例として、断面がほぼ直角三角形状を有する振れ止め部材80を使用することもできる。この振れ止部材80について詳述すれば第1振れ止部81aにおける平たん部82と斜面部83と垂直部84と底部85で構成される。また第2振れ止め部81bにおいてもほぼ同様に、底部86、垂直部87、斜面部88、平たん部89で構成されるここで、第1振れ止め部81aの底部85と第2振れ止め部81bの底部86を重ね合わせることにより溝部90を構成する。この溝部90に揺動部材60を底部86に接するように配置する。尚、振れ止部材80の固定方法はくぎ、ボルト類あるいは接着剤などで固定することができる。
【0032】
振れ止め部材80は上記のとおり第1振れ止部81aにおける平たん部82と斜面部83及び第2振れ止め部81bにおける斜面部88と平たん部89平たん部それぞれがなだらかに接合されているので、建設資材を積載した台車(図示せず)が、スムーズに振れ止め部材80を乗り越えることができる。
【0033】
工事用扉10を閉じたときの状態については以下のとおりである。ここで複数配置されている走行棒50・・・・の構成はほぼ同様であるため、そのうちの一つについて説明する。走行棒50の下部に揺動部材60が配置されている場合において、当該走行棒50の下部において、孔61が長孔である場合に、取り付け部52と上下方向に移動可能かつ開閉方向に揺動可能に軸57で取り付けられているので、当該揺動部材60は開方向(B方向)に向く(図1及び図9a参照)。従って、仮に床面99に傾斜あるいは凸凹99aがあっても当該揺動部材60は当該揺動部材60の自重に反して揺動するので工事用扉10の開閉に際しての抵抗は、ほぼ当該揺動部材60が床面99の凸凹99aを乗り越える際の揺動部材60の自重だけである。従って、工事用扉10の開閉において、当該揺動部材60が床面99の凸凹99aあるいは傾斜に接しても当該揺動部材60が上方に揺動するだけで床面99の凸凹99a等を乗り越えることができるのでスムーズに当該扉10の開閉動作を行うことができる(図7参照)。
【0034】
工事用扉10を開く場合は、B方向を向いていた(図9A参照)走行棒50の下部に配置される揺動部材60が、当該揺動部材60と床面99との接触による抵抗により、軸57を介して走行棒50の下部における取りつけ部52に対して、上方に当該揺動部材60が摺動し、走行棒50の下部における取り付け部52に対して揺動部材60が持ち上がり(図9B参照)、さらに揺動部材60の向きが当該揺動部材60と床面99の接触抵抗によりB方向に向きを変える(図9C参照)。従って、工事用扉10の開閉動作においても常に当該揺動部材60は床面99に接した状態にあることになる。尚、工事用扉10を閉じる方向における床面99に凸凹99aあるいは傾斜があっても、工事用扉10の閉じる際における揺動部材60と床面99の凸凹99a等による抵抗は、ほぼ揺動部材60の自重による抵抗であるので、揺動部材60がスムーズに床面99の凸凹99aや斜面を通過し扉を閉じることができる。
【0035】
また、工事用扉10が閉じている場合において、作業者が図1における図面表面から裏面方向に向かって工事用扉10に衝突した場合に当該工事用扉10が昇降機方向あるいは建物の開口部方向に振れることがないので、工事用昇降機が上下に移動する領域内に当該工事用扉10が入り込むことがなくまた、工事用扉10と床面との隙間が生じることもない。すなわち走行棒50の上部において吊り下げ部51と固定され、さらにその吊り下げ部51は上レール部内35に開閉方向に移動可能に嵌合され、走行棒50の下部においては、取り付け部52に軸57において取り付けられた揺動部材60が上記の通り常に床面99と接し、作業者が工事用扉10に接触した荷重によって当該揺動部材60が振れ止め部材70の垂直面71に接触することになるので、床面99の凸凹99a等にかかわらず揺動部材60におけるほぼ一定の面積が振れ止め部材70の垂直面71に接することになり、工事用扉10が昇降機方向あるいは建物の開口部方向(図1における図面表面から裏面の方向)に振れることはなく工事用昇降機の上下動する領域内に入りこむことや床面との隙間が生じることはない。従って、工事用扉10が工事用昇降機と接触することはなく、安全性に寄与することができる。また上記のような効果を揺動部材60と振れ止部材70などきわめて安価な部品で達成することができるのでコストの削減にも寄与することができる。更に、当該工事用扉10を設置した場合において、すでに述べたように、揺動部材60が常に床面99に接触するように構成されているので、当該揺動部材60と床面99との間の調整が不要となり設置コストが大幅に削減されることになる。なお、工事用昇降機とはいわゆる工事用エレベーターあるいは工事用リフト類が含まれるものであることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】工事用扉の全体図。
【図2】図1の拡大図。
【図3】工事用昇降機扉の開閉動作を表した図。
【図4】図3の拡大図。
【図5】工事用扉の上レール部の拡大図。
【図6】走行棒の下部における拡大図。Aは扇形状の揺動部材の正面図、Bは扇形状の揺動部材の側面図、Cは短冊状の揺動部材。
【図7】工事用扉を開閉する際の揺動部材の動作を表した図。
【図8】振れ止め部材の実施例。
【図9】工事用扉を開閉する際の揺動部材の動作を表した図。Aは工事用扉を開く場合の直前の揺動部材の図である。Bは揺動部材が床面との抵抗により持ち上がるときの図である。Cは揺動部材が向きを変えた図である。
【符号の説明】
【0037】
10 工事用扉
20 支柱
21 梁部
30 幕部
40 リンク部
50 走行棒
60 揺動部材
70 振れ止部材
99 床部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の各階に設置される転落防止用の工事用扉であって、当該工事用扉は上レール部から吊り下げられた走行棒を有し、該走行棒の下部においては揺動部材が、開閉方向と平行に揺動可能に取り付けられ、当該揺動部材は自重によって床面と接触し、かつ、当該扉が昇降機の方向あるいは建物の開口部に振れることを防止するために当該揺動部材と接することができる振れ止め部材を、当該工事用扉と工事用昇降機あるいは建物の開口部との間に少なくとも1つ配置することを特徴とする工事用扉。
【請求項2】
前記揺動部材は長孔を有し当該長孔で走行棒に対し上下方向に移動可能かつ開閉方向に揺動可能に取り付けられていることを特徴とした請求項1記載の工事用扉。
【請求項3】
前記揺動部材における床面と接する領域は円弧状形状を有することを特徴とする請求項1または2記載の工事用扉。
【請求項4】
前記揺動部材は、長孔を有する扇型形状であって、走行棒の下部に取り付けられた取り付け部と、当該長孔において、上下動移動可能かつ揺動可能に取り付けられ、当該揺動部材の扇形状の円弧状部分が床面と接することを特徴とする請求項1記載の工事用扉。
【請求項5】
前記揺動部材を扇形状とした場合における床面と接する円弧状形状の曲率半径を、当該揺動部材が扇型とした場合の曲率半径よりも小とすることを特徴とする請求項4記載の工事用扉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−126919(P2010−126919A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300195(P2008−300195)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(391028889)三成研機株式会社 (17)
【Fターム(参考)】