説明

工作機械

【課題】搭載される電気的負荷の増加に対するコストの増加を抑制することができる工作機械を提供する。
【解決手段】マシニングセンタは、数時間に1回程度の頻度で間欠的に動作する給脂用ポンプ50を動作させる場合に、制御ボックス内を冷却するためのファン16の動作を停止する。即ち、マシニングセンタは、ファン16と給脂用ポンプ50とを排他的に動作させる。これによりヒューズ41を流れる最大電流量を低減することができ、ヒューズ41の大容量化を抑制してコストの増大を抑制できる。給脂用ポンプ50の動作時間は10秒程度の短期間であるため、この間にファン16の動作を停止させた場合であっても、制御ボックス内の冷却効果の低下は最低限にとどめることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工軸に装着された工具を回転駆動してワークに対する種々の加工を行う工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にマシニングセンタ(工作機械)は、フライス加工、中ぐり加工又はねじ立てなど種々の加工を行う。マシニングセンタは、複数種の工具を収容しておくための収容部と、加工軸に装着された工具を収容部に収容された工具に交換するための機構とを備えており、目的の加工に応じて工具を交換しながら、種々の加工を連続的に行っている。
【0003】
マシニングセンタは、加工軸の回転駆動、加工軸又はワークのX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向への移動、及び、加工軸に装着された工具の交換等の種々の動作を行っており、この動作を制御するための制御回路が搭載された回路基板などを備えている。このような回路基板などは、マシニングセンタの例えば背面側に設けられた筐体内に収容されており、回路の動作に伴う筐体内の温度上昇を抑制するために、マシニングセンタは冷却用のファンを備えている。
【0004】
例えば特許文献1においては、主軸の制御状態を監視して、制御盤内部の温度上昇を伴う第1の制御状態となった場合に冷却ファンの動作を開始し、制御盤内部の温度上昇を伴わない第2の制御状態となった場合に冷却ファンの動作を停止することにより、温度が上昇した場所にかかわらず制御盤の冷却を開始することができる制御盤冷却システムが提案されている。
【0005】
一方、マシニングセンタは、加工軸の回転駆動、加工軸又はワークの移動、及び、工具交換等を行うための種々の機械機構を備えている。これらの機械機構を円滑に動作させるためには、機械機構の例えばボールネジなどに対する定期的な給油又は給脂を行う必要がある。マシニングセンタには、機械機構に対する給油又は給脂を数時間に1回程度の頻度で自動的に行う機能を有するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−245842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
機械機構に対する給油又は給脂を自動的に行うためには、油又は脂を搬送するためのポンプを動作させる必要がある。マシニングセンタは、外部の商用交流電源などから電力が供給され、この電力によって内部のモータ及びファン等の多数の電気的負荷が動作している。上記のような給油又は給脂のためのポンプをマシニングセンタに搭載して動作させる場合、このポンプを動作させるための電力が必要となる。
【0008】
マシニングセンタには、過電流保護のために電力供給経路中にヒューズ又はブレーカ等が設けられている。給油又は給脂のためのポンプを搭載するマシニングセンタは、これを搭載しないものと比較して、ヒューズ又はブレーカ等の容量(遮断電流量)が大きくなければならない。またマシニングセンタには、搭載される電気的負荷の種類によっては、電力供給経路中にAC/DC変換器又は変圧器等が配される場合がある。マシニングセンタに給油又は給脂のためのポンプを搭載してAC/DC変換器又は変圧器等に接続する場合、これを搭載しないものと比較して、AC/DC変換器又は変圧器等の容量(出力電力量)が大きくなければならない。よって、自動的な機械機構への給油又は給脂の機能の搭載は、マシニングセンタの過度のコスト増加を招来するという問題がある。
【0009】
マシニングセンタを覆うカバーの扉を自動開閉する機能を搭載する場合、扉を開閉するためのモータなどに電力を供給して動作させる必要がある。また工具の折損検出を行う機能を搭載する場合、工具に対する接触/非接触を検知するための接触部材(タッチセンサ)を回転させるモータに電力を供給して動作させる必要がある。このように、マシニングセンタを高機能化するための種々の電気的負荷を搭載する場合にも、ヒューズ若しくはブレーカ等、又は、AC/DC変換器若しくは変圧器等の大容量化が必要であり、コスト増加を招来するという問題がある。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、搭載される電気的負荷の増加に対するコストの増加を抑制することができる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る工作機械は、装着された工具を駆動してワークの加工を行う工作機械において、内部を冷却するファンと、間欠的に動作する一又は複数の電気的負荷と、該電気的負荷を動作させる場合に、前記ファンの動作を停止する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る工作機械は、前記電気的負荷が、加工に係る機構への給油又は給脂を行うポンプであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る工作機械は、前記電気的負荷が、加工に係る機構を覆うカバーに設けられた扉を開閉するモータであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る工作機械は、前記電気的負荷が、その回転軸に交差して設けられた接触部材を工具へ向けて回転するモータであり、前記接触部材の前記工具に対する接触の有無に応じて、該工具の折損を検出するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る工作機械は、交流電力を直流電力に変換する単一の変換器を備え、前記ファン及び前記電気的負荷は、前記変換器が変換した直流電力により動作するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、間欠的に電気的負荷を動作させる場合には、工作機械の内部冷却用のファンを停止する(即ち、間欠的に動作する電気的負荷と冷却用のファンとを排他的に駆動する)。冷却用のファンは短時間であれば間欠的に停止させた場合であっても冷却効果の低下は僅かであるため、間欠的に電気的負荷を動作させる際にファンを停止する。電気的負荷とファンとが同時的に動作することがないため、工作機械としての消費電力量の増大は僅かである(電気的負荷の消費電力量がファンの消費電力量より少なければ、工作機械として消費電力量は増大しない)。よって、ヒューズ若しくはブレーカ等、又は、AC/DC変換器若しくは変圧器等の大容量化によるコストの増大を抑制することができる。
【0017】
特に、電気的負荷として加工のための機構への給油又は給脂を行うポンプを工作機械に搭載する場合、給油又は給脂は数時間に1回程度の頻度で行えばよく、ポンプの動作時間も数秒〜数十秒程度でよい。よって、ポンプの動作中に冷却用のファンを停止した場合であっても、ファンによる冷却効果の低下は最低限にとどまる。
【0018】
また工作機械には、作業者の安全確保のために、加工のための機構を覆うカバーが設けられる。このカバーには、ワークの交換又は工作機械のメンテナンス等を行うために扉が設けられるが、この扉をモータで駆動することにより自動扉とすることができる。この扉は、ワークに対する加工の開始前及び終了後等の限られたときに行われ、扉の開閉に伴うモータの動作時間も数秒〜数十秒程度でよい。よって、扉の開閉中に冷却用のファンを停止した場合であっても、ファンによる冷却効果の低下は最低限にとどまる。
【0019】
また工作機械には、工具交換の際に工具の折損検出を行う機能を有するものがある。工具の折損検出は、線状又は棒状の接触部材をモータの回転軸に交差して設け、この接触部材を工具へ向けて回転させた場合に、接触部材が工具に接触するか否かに応じて行うことができる。工具の折損検出は工具交換の際に行われるが、接触部材を回転させるモータの動作時間は数秒程度である。よって、このモータの動作中に冷却用のファンを停止した場合であっても、ファンによる冷却効果の低下は最低限にとどまる。
【0020】
また、工作機械が交流電源に接続されるものであり、且つ、ファン及び電気的負荷が直流電力により動作するものである場合、工作機械には交流電力を直流電力に変換する変換器(いわゆるAC/DC変換器)を搭載する必要がある。上述のようにファンと電気的負荷とを排他的に動作させることによって、変換器の容量(出力可能な電力量)を増大させることなく、ファン及び電気的負荷を共通の変換器に接続することが可能となる。よって、ファン及び電気的負荷を共通の変換器に接続することで、工作機械のコスト増大を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による場合は、間欠的に動作する電気的負荷と機内冷却用のファンとを排他的に駆動する構成とすることにより、工作機械としての消費電力量の増大を抑制でき、ヒューズ若しくはブレーカ等、又は、AC/DC変換器若しくは変圧器等の大容量化を抑制できるため、工作機械のコスト増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】マシニングセンタの外観を示す斜視図である。
【図2】マシニングセンタの加工に係る主要部分の構成を示す正面図である。
【図3】マシニングセンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】マシニングセンタによるファンの駆動及び機械機構への給脂に係る処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】変形例に係るマシニングセンタの電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、マシニングセンタ(工作機械)の外観を示す斜視図である。また図2は、マシニングセンタの加工に係る主要部分の構成を示す正面図である。本実施の形態に係るマシニングセンタは、加工対象であるワーク(図示は省略する)と工具とを相対移動させて、ワークに所望の機械加工(例えば、スライス削り、穴あけ又は切削等)を施すことができる工作機械である。マシニングセンタは金属製の基台1を備え、基台1の下部の四隅には脚部がそれぞれ設けられ、これら4つの脚部が床面などに設置されることにより、マシニングセンタが所定場所に設置される。基台1は、マシニングセンタの前後方向に長い直方体状の鋳造品である。
【0024】
マシニングセンタの基台1の後部上にはコラム座部3が設けられ、コラム座部3には鉛直上方へ延びる柱状のコラム4が立設されている。コラム4には、その前面に沿って上下移動可能に主軸ヘッド5が設けられている。主軸ヘッド5には、加工用の工具6が装着される主軸5Aと、主軸5Aに装着された工具6を他の工具6に交換するための工具交換機構7とが設けられている。また図1において、コラム4の上部にはZ軸モータ(図示は省略する)が設けてあり、Z軸モータの回転によって主軸ヘッド5を上下に移動させることができる。
【0025】
主軸ヘッド5には、加工軸に相当する主軸5Aが回転可能に装着され、主軸5Aを回転駆動するための主軸モータ(図示は省略する)が上部に備えられている。主軸5Aの下端には工具6が着脱可能に装着され、主軸5Aが主軸モータにより回転駆動されることによって工具6が回転し、テーブル8に固定したワークの加工が行われる。主軸5Aは、主軸ヘッド5の上下移動によって上方の交換位置と下方の加工位置との間を移動する。工具交換機構7は、工具6を支持する工具ホルダを複数格納する工具マガジン14と、主軸5Aに装着された工具ホルダと工具マガジン14に格納された他の工具ホルダとを把持して搬送し、工具交換を行う工具交換アーム15とを備えている。
【0026】
また基台1上には、主軸ヘッド5の下方に、ワークを着脱可能に固定することができるテーブル8が配置してある。テーブル8は、サーボモータであるX軸モータ及びY軸モータ(図示は省略する)により、X軸方向(左右方向)及びY軸方向(前後方向)へ移動制御される。詳しくは、テーブル8の下側には直方体状の支持台10が設けてあり、支持台10にはX軸方向に沿って延びる1対のX軸送りガイドを設け、1対のX軸送りガイド上にテーブル8を移動可能に支持している。また基台1の上部には、長手方向(Y軸方向)に沿って延びる1対のY軸送りガイドを設け、1対のY軸送りガイド上に支持台10を移動可能に支持している。基台1上に設けたY軸モータがY軸送りガイドに沿ってY軸方向に支持台10を移動駆動すると共に、支持台10上に設けたX軸モータがX軸送りガイドに沿ってX軸方向にテーブル8を移動駆動する。
【0027】
X軸送りガイドには、テレスコピック式に収縮するテレスコピックカバー11、12がテーブル8の左右両側に設けてある。Y軸送りガイドには、テレスコピックカバー13とY軸後カバーとが、支持台10の前後にそれぞれ設けてある。テーブル8及び支持台10がそれぞれいずれの方向に移動した場合であっても、X軸送りガイド及びY軸送りガイドは常にテレスコピックカバー11、12、13及びY軸後カバーによって覆われる。テレスコピックカバー11、12、13及びY軸後カバーは、ワークの加工領域から飛散する切粉などがX軸送りガイド及びY軸送りガイド等へ落下することを防止するためのものである。
【0028】
コラム4の背面側には、箱状の制御ボックス9が設けられており、制御ボックス9の内部にはマシニングセンタの動作を制御するための制御部20(図3参照)等が収容されている。また制御ボックス9の両側面及び背面には、制御ボックス9の内外の換気を行うことによって、制御ボックス9内に収容された種々の電気機器を冷却するファン16がそれぞれ設けられている(ただし図1においては、1つのファン16のみを図示してある)。
【0029】
図3は、マシニングセンタの電気的構成を示すブロック図である。なお図3においては、電力供給経路を太実線で示してある。マシニングセンタは、制御ボックス9に収容された制御部20に、複数のサーボアンプ30及び切替部43等が通信線などを介して接続されており、制御部20はサーボアンプ30及び切替部43等との間で種々の情報を入出力(送受信)しながら工作に係る制御処理を行っている。
【0030】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23及び入出力部24等を備えて構成されている。CPU21は、ROM22に予め記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、種々の演算処理を行う。CPU21は、サーボアンプ30及び切替部43等から入力された情報を基に演算処理を行い、演算結果をサーボアンプ30及び切替部43等へ出力することによって、マシニングセンタの各部の動作を制御し、ワークに対する加工などを行う。
【0031】
ROM22は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶素子で構成され、CPU21が実行する制御プログラム及び各種の処理に必要な情報等が予め記憶されている。RAM23は、SRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)等の記憶素子で構成され、CPU21の演算処理の過程で発生した情報、並びに、サーボアンプ30及び切替部43等との間で授受した情報等を一時的に記憶する。
【0032】
入出力部24は、通信線などを介してサーボアンプ30及び切替部43等と接続されており、これらとの間で情報の入出力を行う。入出力部24は、CPU21から与えられた情報を所定の出力先へ出力すると共に、サーボアンプ30又は切替部43等から入力された情報をCPU21へ与える。
【0033】
サーボアンプ30は、主軸5Aを回転させる主軸モータ、テーブル8をX軸方向及びY軸方向へ移動させるX軸モータ及びY軸モータ、並びに、主軸ヘッド5をZ軸方向へ移動させるZ軸モータ等の各種のモータをそれぞれ駆動するものである。サーボアンプ30は、制御部20から与えられた指示に応じてモータを駆動し、モータの回転量などの情報を検出して制御部20へ与える。
【0034】
マシニングセンタは、外部の交流電源100から供給される電力によって動作する。交流電源100は、例えば単相200Vの商用交流電源であり、マシニングセンタのプラグ及び電源ケーブル等が接続されることによって、交流電源100からマシニングセンタへの電力供給が行われる。マシニングセンタでは、交流電源100からの電力が、ヒューズ41、降圧トランス42及び切替部43を介してファン16へ供給されると共に、ヒューズ41及びリレー44を介して給脂用ポンプ50へ供給されている。
【0035】
ヒューズ41は、所定の電流(定格電流)が流れた場合に、電力供給経路を遮断することによって、異常時に加熱又は発火等の発生を防止するための回路素子である。降圧トランス42は、交流電力の電圧値を変換する回路素子であり、例えば200Vの交流電力を100Vの交流電力に変換して出力する。
【0036】
リレー44は、ヒューズ41から給脂用ポンプ50への電力供給経路の接続/遮断を行う回路素子である。リレー44は、電力供給経路中に配されるスイッチを備え、内部に備えたコイルに対する通電を制御することによってスイッチを開閉し、電力供給経路の接続/遮断が制御される。リレー44は、切替部43により接続/遮断の切り替えを制御されている。給脂用ポンプ50は、リレー44の接続により電力が供給された場合に動作し、リレー44の遮断により電力供給が停止された場合に動作を停止する。
【0037】
切替部43は、降圧トランス42が出力する交流電力のファン16への供給を制御するものであり、降圧トランス42から各ファン16への電力供給経路中に配されるスイッチを有し、このスイッチの開閉を個別に切り替えることによって、各ファン16への電力の供給/非供給を個別に切り替える。各ファン16は、切替部43から電力が供給されることによって動作し、電力の供給が停止された場合に動作を停止する。また切替部43は、リレー44の接続/遮断の切り替えを制御している。切替部43は、制御部20から与えられる指示に応じて、ファン16への電力供給の切り替え、及び、リレー44の切り替えを行い、これによりファン16及び給脂用ポンプ50の動作を制御している。
【0038】
給脂用ポンプ50は、マシニングセンタの機械機構に対する給脂を行うためのポンプである。例えばマシニングセンタは主軸ヘッド5をZ軸方向へ移動させる機械機構を備えている。マシニングセンタのコラム4には鉛直方向にガイドレールが固定され、主軸ヘッド5はこれに設けた複数の摺動コマを介してガイドレールに沿ってZ軸方向へ移動可能に取り付けられている。またガイドレールと平行に配設されたボールネジに、主軸ヘッド5に設けたナット部材が螺合挿通されている。マシニングセンタはZ軸モータによってボールネジを正逆方向へ回転駆動し、ボールネジ及びナット部材によって主軸ヘッド5はガイドレールに沿ってZ軸方向へ移動する。マシニングセンタは、給脂用ポンプ50を動作させることによって、ボールネジなどへの給脂を行う。なお、給脂用ポンプ50が給脂を行う機械機構は、主軸ヘッド5のZ軸方向への移動を行う機械機構に限らない。
【0039】
マシニングセンタの制御部20は、図示しない電源スイッチなどの操作によって電源が投入されて動作を開始した場合、切替部43へ指示を与えることによってファン16の動作を開始する。これにより制御ボックス9内の温度上昇が抑制される。なお、このとき制御部20は、給脂用ポンプ50は動作させない(即ち、リレー44を遮断状態とする)。その後、制御部20は、図示しない操作パネルなどの操作に応じて、サーボアンプ30などへの動作指示を与えることにより、ワークに対する加工を開始する。
【0040】
制御部20は、ワークの加工を行った時間を計時するタイマを備えており、このタイマが計時した時間の情報は不揮発性の記憶領域(例えばROM22)に記憶される。タイマの計時が所定時間(例えば5時間)に達した場合、制御部20は、サーボアンプ30などへ指示を与えることによって加工を一時的に停止し、機械機構に対する給脂を行う。このときに制御部20は、切替部43へ指示を与えることにより、ファン16の動作を停止し(ファン16への電力供給を遮断し)、リレー44を接続することによって給脂用ポンプ50を動作させる。
【0041】
制御部20は、給脂用ポンプ50を所定時間(例えば10秒)動作させた後、切替部43へ指示を与えることにより、リレー44を遮断して給脂用ポンプ50の動作を停止し、ファン16の動作を開始する。その後、制御部20は、サーボアンプ30などへ指示を与えることによって加工を再開する。
【0042】
図4は、マシニングセンタによるファン16の駆動及び機械機構への給脂に係る処理の手順を示すフローチャートである。マシニングセンタの電源投入により、まず制御部20は、切替部43へ指示を与えることによって、ファン16の動作を開始する(ステップS1)。次いで制御部20は、自らが備えるタイマが計時する時間を調べることにより、機械機構への給脂を行うタイミングであるか否かを判定する(ステップS2)。
【0043】
給脂を行うタイミングであると判定した場合(S2:YES)、制御部20は、切替部43へ指示を与えることによって、ファン16への電力供給を停止し、ファン16の動作を停止する(ステップS3)。次いで制御部20は、切替部43へ指示を与えることによってリレー44を接続し、給脂用ポンプ50の動作を開始する(ステップS4)。
【0044】
その後、制御部20は、給脂を行う所定時間が経過したか否かに応じて、給脂を終了するか否かを判定し(ステップS5)、給脂を終了しないと判定した場合には(S5:NO)、給脂の所定時間が経過するまで待機する。所定時間が経過して給脂を終了すると判定した場合(S5:YES)、制御部20は、切替部43へ指示を与えることによってリレー44を遮断し、給脂用ポンプ50の動作を停止する(ステップS6)。次いで制御部20は、切替部43へ指示を与えることによって、ファン16への電力供給を開始し、ファン16の動作を開始して(ステップS7)、ステップS2へ処理を戻す。
【0045】
また制御部20は、ステップS2において、給脂を行うタイミングでないと判定した場合(S2:NO)、電源スイッチに対する操作の有無などに基づいて、処理を終了するか否かを判定する(ステップS8)。処理を終了しないと判定した場合(S8:NO)、制御部20は、ステップS2へ処理を戻し、給脂を行うタイミング又は処理を終了するタイミングに至るまで待機する。処理を終了すると判定した場合(S8:YES)、制御部20は、切替部43へ指示を与えることによってファン16の動作を停止し(ステップS9)、処理を終了する。
【0046】
以上の構成のマシニングセンタは、数時間に1回程度の頻度で間欠的に動作する給脂用ポンプ50を動作させる場合に、制御ボックス9内を冷却するためのファン16の動作を停止する。このようにファン16と給脂用ポンプ50とを排他的に動作させることによって、ヒューズ41を流れる最大の電流量は、ファン16の動作電流量と給脂用ポンプ50の動作電流量の合計量ではなく、3つのファン16の動作電流量又は給脂用ポンプ50の動作電流量のいずれか多い方とすることができるため、ヒューズ41の大容量化を抑制することができ、高コスト化を抑制することができる。給脂用ポンプ50の動作時間は10秒程度の短期間であるため、この間にファン16の動作を停止させた場合であっても、制御ボックス9内の冷却効果の低下は最低限にとどめることができる。
【0047】
なお、本実施の形態においては、間欠的に動作する電気的負荷として給脂用ポンプ50を例に説明を行ったが、電気的負荷はこれ以外のものであってよい。またマシニングセンタが3つのファンを備える構成としたが、これに限るものではなく、ファンの数は2つ以下又は4つ以上であってよい。また、給脂用ポンプ50を動作させる際に、3つのファン16の全てを停止するのではなく、1つ又は2つのファン16を停止する構成としてもよく、いくつのファン16を停止するかは、間欠的に動作する電気的負荷による消費電力量又は動作電流量等に基づいて設計者などが予め判断すればよい。
【0048】
(変形例)
図5は、変形例に係るマシニングセンタの電気的構成を示すブロック図である。上述の実施の形態において、図3に示したファン16及び給脂用ポンプ50は交流の電力の供給により動作するものである。これに対して、図5に示すファン116及び給脂用ポンプ150は、直流の電力の供給により動作するものである。このため、変形例に係るマシニングセンタは、ヒューズ41から切替部143までの電力供給経路中にAC/DC変換器145が配されている。AC/DC変換器145は、交流電源100から供給される交流電力(例えば単相200V)を直流電力(例えば24V)に変換して切替部143へ出力する。
【0049】
切替部143は、3つのファン116、給脂用ポンプ150、扉開閉モータ151及び折損検出用モータ152等の電気的負荷が接続されており、これらに対する直流電力の供給/非供給を個別に切り替える制御を行っている。切替部143は、AC/DC変換器145から各電気的負荷への電力供給経路中にそれぞれ配されるスイッチを有し、これらスイッチの開閉を個別に切り替えることによって、各電気的負荷への電力の供給/非供給を個別に切り替える。各電気的負荷は、切替部143から直流の電力が供給されることによって動作する。
【0050】
マシニングセンタは、基台1の上部(即ち、工具によってワークに対する加工が行われる空間)を覆う箱状のスプラッシュカバー(図示は省略する)を備えている。スプラッシュカバーの正面には、スライド式の扉が設けられており、変形例に係るマシニングセンタは、扉開閉スイッチなどに対する操作に応じて扉開閉モータ151を回転駆動し、扉を自動的に開閉することができる。1回の扉の開又は閉に伴う扉開閉モータ151の動作時間は数秒程度である。扉開閉モータ151は、切替部143からの直流電力の供給により動作する。
【0051】
またマシニングセンタは、工具マガジン14に多数の工具が収容されており、一の工具によるワークの加工が終了した場合、工具交換機構7によって主軸5Aに装着された一の工具と工具マガジン14に収容された他の工具とを交換し、交換した工具によるワークの加工を行う。工具交換の際に、マシニングセンタは使用済みの工具の折損検出を行う。折損検出用モータ152の回転軸には、回転軸の軸方向に略直交する方向に細い棒状の接触部材が設けられており、マシニングセンタは、使用済みの工具の近傍にて折損検出用モータ152を1回転して接触部材を工具へ向けて旋回させる。このときに、接触部材が工具に接触すれば工具の折損は生じておらず、接触部材が工具に接触しなければ工具の折損が生じていると判断することができ、マシニングセンタはこれにより工具の折損検出を行っている。工具の折損検出を行う際の折損検出用モータ152の動作時間は数秒程度である。
【0052】
マシニングセンタの制御部20は、電源スイッチなどの操作によって電源が投入されて動作を開始した場合、切替部143へ指示を与えることによってファン116の動作を開始する。これにより制御ボックス9内の温度上昇が抑制される。なお、このとき制御部20は、給脂用ポンプ150、扉開閉モータ151及び折損検出用モータ152は動作させない。
【0053】
その後、制御部20は、図示しない扉開閉スイッチなどの操作がなされた場合に、切替部143へ指示を与えることにより、ファン116の動作を停止し、扉開閉モータ151を駆動して扉の開閉動作を行う。扉の開動作又は閉動作の完了後、制御部20は、切替部143へ指示を与えることにより、扉開閉モータ151の動作を停止し、ファン116の動作を再開する。
【0054】
また、制御部20は、図示しない操作パネルなどの操作に応じて、サーボアンプ30などへの動作指示を与えることにより、ワークに対する加工を開始する。制御部20は、タイマにより加工時間の計時を行い、加工時間が所定時間に達した場合、機械機構に対する給脂を行う。このときに制御部20は、切替部143へ指示を与えることにより、ファン116の動作を停止し、給脂用ポンプ150を動作させる。給脂用ポンプ150を所定時間動作させた後、制御部20は、切替部143へ指示を与えることにより、給脂用ポンプ150の動作を停止し、ファン116の動作を開始する。
【0055】
また、制御部20は、主軸5Aに装着された工具の交換を行う際に、切替部143へ指示を与えることにより、ファン116の動作を停止し、折損検出用モータ152を回転駆動して折損検出を行い、その後に折損検出用モータ152の回転を停止し、ファン116の動作を再開する。
【0056】
即ち制御部20は、通常はファン116を動作させて制御ボックス9内の冷却を行っており、所定の条件が満たされることによって給脂用ポンプ150、扉開閉モータ151又は折損検出用モータ152を動作させる必要が生じた場合、ファン116の動作を停止した後でこれらを動作させる。その後、制御部20は、給脂用ポンプ150、扉開閉モータ151又は折損検出用モータ152の動作を停止し、ファン116の動作を再開する。即ち制御部20は、ファン116と、給脂用ポンプ150と、扉開閉モータ151と、折損検出用モータ152とを排他的に動作させる(ただし3つのファン115は同時的に動作させる)。
【0057】
以上の構成の変形例に係るマシニングセンタは、給脂用ポンプ150、扉開閉モータ151又は折損検出用モータ152を動作させる場合にはファン116の動作を停止する。このためAC/DC変換器145に要求される最大の出力電力量は、3つのファン116の消費電力量、給脂用ポンプ150の消費電力量、扉開閉モータ151の消費電力量及び折損検出用モータ152の消費電力量の合計量ではなく、これらのうちの最大のものとすることができ、AC/DC変換器145の大容量化を抑制することができ、高コスト化を抑制することができる。扉開閉モータ151及び折損検出用モータ152の動作時間は数秒程度の短期間であるため、この間にファン116の動作を停止させた場合であっても、制御ボックス9内の冷却効果の低下は最低限にとどめることができる。
【符号の説明】
【0058】
5 主軸ヘッド
5A 主軸
7 工具交換機構
8 テーブル
9 制御ボックス
15 工具交換アーム
16 ファン
20 制御部(制御手段)
21 CPU
24 入出力部
30 サーボアンプ
41 ヒューズ
42 降圧トランス
43 切替部
44 リレー
50 給脂用ポンプ(電気的負荷、ポンプ)
100 交流電源
116 ファン
143 切替部
145 AC/DC変換器(変換器)
150 給脂用ポンプ(電気的負荷、ポンプ)
151 扉開閉モータ(電気的負荷、モータ)
152 折損検出用モータ(電気的負荷、モータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着された工具を駆動してワークの加工を行う工作機械において、
内部を冷却するファンと、
間欠的に動作する一又は複数の電気的負荷と、
該電気的負荷を動作させる場合に、前記ファンの動作を停止する制御手段と
を備えること
を特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記電気的負荷は、加工に係る機構への給油又は給脂を行うポンプであること
を特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記電気的負荷は、加工に係る機構を覆うカバーに設けられた扉を開閉するモータであること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記電気的負荷は、その回転軸に交差して設けられた接触部材を工具へ向けて回転するモータであり、
前記接触部材の前記工具に対する接触の有無に応じて、該工具の折損を検出するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の工作機械。
【請求項5】
交流電力を直流電力に変換する単一の変換器を備え、
前記ファン及び前記電気的負荷は、前記変換器が変換した直流電力により動作するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−245594(P2012−245594A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120676(P2011−120676)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】