説明

工具ホルダ

【課題】 吸引装置を搭載していない切削装置においても、冷却効率を高めることのできる工具ホルダを提供する。
【解決手段】 工具ホルダは、外気が連通する連通孔を有する切削用刃部を先端部に有し、基端部が切削装置に固定されるホルダ本体を備えている。ホルダ本体には、外周面に形成された開口部と、当該開口部と切削用刃部の連通孔とを連通する連通路とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ホルダに係り、特に先端部及び外周面の少なくとも一方から基端部にかけて連通孔が形成された切削用刃部を有する工具ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金属等を切削する切削装置においては、先端部及び外周面の少なくとも一方から基端部にかけて形成された連通孔を有する切削工具(切削用刃部)が用いられたものが知られている。このような切削工具においては切削時に連通孔内に外気が進入するため、切削工具自体の冷却が図られている。さらに、近年においては、より冷却効率を高めるべく、切削工具の連通孔を介して外気を吸引する吸引装置が搭載された切削装置も開発されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−196018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸引装置が搭載されていない切削装置もまだまだ一般的に用いられているのが現状であり、このような吸引装置においても冷却効率を高めることが望まれている。
このため、本発明の課題は、吸引装置を搭載していない切削装置においても、冷却効率を高めることのできる工具ホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る工具ホルダは、
外気が連通する連通孔を有する切削用刃部を先端部に有し、基端部が切削装置に固定されるホルダ本体を備え、
前記ホルダ本体には、外周面に形成された開口部と、当該開口部と前記切削用刃部の前記連通孔とを連通する連通路とが設けられていることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の工具ホルダにおいて、
前記ホルダ本体には、
当該ホルダ本体の外径よりも大きな外形を有し、中心から外周に向けて複数のフィンが設けられたファン部が設けられていることを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の工具ホルダにおいて、
前記複数のフィンのうち、一対のフィンがなす空間と前記開口部とが連通していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ホルダ本体の外周面に開口部が形成されているので、切削時に例えば切削工具などの切削用刃部と工具ホルダとが回転すると、その遠心力によって開口部から空気が外側へと流出することになる。そして、ホルダ本体の開口部と切削用刃部の連通孔とが連通路によって連通しているので、切削用刃部の連通孔から流入した外気も連通路を介して開口部から流出する。これにより、切削時に切削用刃部の内部も連通孔によって外気に晒されるので切削工具が冷却される。このように、工具ホルダを装着するだけで切削用刃部を冷却することが可能となるので、吸引装置を搭載していない切削装置においても、冷却効率を高めることができる。
【0009】
また、ホルダ本体の外径よりも大きな外形を有し、中心から外周に向けて複数のフィンが設けられたファン部がホルダ本体に設けられているので、ホルダ本体を回転させるとファン部も同期して回転し、ファン部により大きな遠心力を作用させることができる。これにより、ホルダ本体を冷却することができ、当該ホルダ本体に備えられた切削用刃部も冷却することができる。
【0010】
また、複数のフィンのうち、一対のフィンがなす空間と開口部とが連通しているので、ファン部が回転することでファン部内に作用する遠心力が、開口部内の空気をより外側へと引き出すことになる。そして、切削用刃部の連通孔から流入した外気も連通路及び開口部を介して前記空間から流出するので、より効率的に切削工具を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る工具ホルダの概略構成を示す正面図である。
【図2】本実施形態のホルダ本体の概略構成を示す斜視図である。
【図3】本実施形態のファン部の概略構成を示す斜視図である。
【図4】図3のファン部の上面図である。
【図5】本実施形態に係る工具ホルダの変形例を示す正面図である。
【図6】図5の工具ホルダの概略構成を示す下面図である。
【図7】本実施形態に係る工具ホルダの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
図1は本実施形態に係る工具ホルダの概略構成を示す正面図である。図1に示すように、工具ホルダ1には、例えば穿孔加工用、トリミング加工用や、面切削用の切削工具10を先端部で保持するホルダ本体20と、ホルダ本体20に取り付けられたファン部30とが設けられている。ここで、ホルダ本体20の先端部に備えられた切削工具10が本発明に係る切削用刃部である。
切削工具10には、先端面から基端面にかけて貫通した貫通孔11が形成されている。また、切削工具10の外周面には貫通孔11に連通する複数の吸入孔12が形成されている。これら貫通孔11と吸入孔12とが本発明に係る連通孔であり、この連通孔によって切削工具10の内部を外気が連通するようになっている。
【0014】
図2は、ホルダ本体20の概略構成を示す斜視図である。図2に示すように、ホルダ本体20の先端部には、切削工具10を保持するための例えばコレットチャックなどの保持部21が設けられている。保持部21は、ホルダ本体20から着脱自在であり、保持部21の中央に切削工具10を挿通して、当該保持部21をホルダ本体20に取り付けると、ホルダ本体20に切削工具10が一体化される。そして、保持部21をホルダ本体20に締め付けると、保持部21が切削工具10の外周面に密着して両者間の密閉性が維持されるようになっている。なお、保持部21と切削工具10とが密閉状態であっても、貫通孔11は外気と連通可能な状態となっている。また、ホルダ本体20の基端部は、図示しない切削装置の主軸に固定されるようになっている。
ホルダ本体20の内部には、切削工具10の貫通孔11に連通する連通路22が形成されている。また、ホルダ本体20の外周面には、連通路22を外部に露出する開口部23と、ファン部30を位置合わせするための溝部24とが形成されている。溝部24は、保持部21がホルダ本体20から取り外されると、その下端部が露出し、ファン部30と係合可能な状態となる。
【0015】
図3はファン部の概略構成を示す斜視図であり、図4はファン部の上面図である。図3及び図4に示すように、ファン部30には、ホルダ本体20に係合する円筒状の係合部31と、係合部31に一体的に形成され、当該係合部31よりも外形の大きい円盤部32とが設けられている。
【0016】
係合部31には、ホルダ本体20が挿通する挿通孔311が上下方向に沿って形成されていて、この挿通孔311の内部に溝部24に係合する突起312が形成されている。また、挿通孔311の内周面には、ホルダ本体20との密閉性を維持するための一対のオーリング313が挿通孔311の上端部及び下端部に配置されている。
【0017】
円盤部32には、天板321と底板322とが所定の間隔を空けて係合部31から外側に向けて延出するように設けられている。天板321と底板322との間には、複数のフィン323が中心から外周に向けて延在するように設けられている。各フィン323は、その中央部が回転方向に向けて凸となるように湾曲した形状となっている。隣接するフィン323同士がなす空間Hの係合部31側の端部は開口h1となっており、ファン部30がホルダ本体20に取り付けられると、複数の開口h1のなかにはホルダ本体20の開口部23に対向するものが存在する。この開口部23に対向した開口h1によって、開口部23と、複数のフィン323のうち、一対のフィン323がなす空間Hとが連通することになる。他に、フィン部30と、ホルダ本体20との間に間隙部を設けて、円周内全ての開口h1と開口部23とを連通させてもよい。
【0018】
次に、本実施形態の作用について説明する。
工具ホルダ1の組み立て時においては、まず、保持部21をホルダ本体20から取り外してから、ホルダ本体20をファン部30の挿通孔311内に取り付ける。このとき、ホルダ本体20の溝部24をファン部30の突起312に係合して、ファン部30をホルダ本体20に装着することでファン部30が位置合わせされる。これにより、複数のフィン323のうち、一対のフィン323がなす空間Hと開口部23とが連通する。
一方、保持部21の中央に切削工具10を挿入してから、保持部21をホルダ本体20に取り付ける。保持部21をホルダ本体20に締め付けると、保持部21が切削工具10の外周面に密着して両者間の密閉性が維持される。これにより、貫通孔11と吸入孔12とが、ホルダ本体20の連通路22に連通するため、当該連通路22及び開口部23を介して、貫通孔11と吸入孔12とが一対のフィン323がなす空間Hに連通することになる。
工具ホルダ1が組み立てられると、ホルダ本体20の基端部を切削装置の主軸に固定する。
【0019】
切削時においては、工具ホルダ1が切削工具10とともに高速で回転する。このとき、ファン部30も高速で回転しているために、各フィン323がなす空間H内では遠心力が作用し、当該空間H内から外に向けて気流が発生する(図1中、矢印Y1参照)。この気流は、開口部23にも作用するため、貫通孔11及び吸入孔12から連通路22を介して開口部23に至る気流が発生する(図1中、矢印Y2参照)。すなわち、貫通孔11及び吸入孔12からは外気が取り込まれ(図1中、矢印Y3参照)、当該外気は連通路22及び開口部23を介して、前記空間Hから流出されることとなる。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、ホルダ本体20の外周面に開口部23が形成されているので、切削時に切削工具10とともに工具ホルダ1が回転すると、その遠心力によって開口部23から空気が外側へと流出することになる。そして、ホルダ本体20の開口部23と切削工具10の連通孔(貫通孔11及び吸入孔12)とが連通路22によって連通しているので、切削工具10の連通孔から流入した外気も連通路22を介して開口部23から流出する。これにより、切削時に切削工具10の内部も連通孔によって外気に晒されるので切削工具10が冷却される。このように、工具ホルダ1を装着するだけで切削工具10を冷却することが可能となるので、吸引装置を搭載していない切削装置においても、冷却効率を高めることができる。
【0021】
また、ホルダ本体20の外径よりも大きな外形を有し、中心から外周に向けて複数のフィン323が設けられたファン部30がホルダ本体20に設けられているので、ホルダ本体20を回転させるとファン部30も同期して回転し、ファン部30により大きな遠心力を作用させることができる。これにより、ホルダ本体20を冷却することができ、当該ホルダ本体20に保持された切削工具10も冷却することができる。
そして、複数のフィン323のうち、一対のフィン323がなす空間Hと開口部23とが連通しているので、ファン部30が回転することでファン部30内に作用する遠心力が、開口部23内の空気をより外側へと引き出すことになる。そして、切削工具10の連通孔から流入した外気も連通路22及び開口部23を介して前記空間Hから流出するので、より効率的に切削工具10を冷却することができる。
【0022】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。
例えば上記実施形態では、工具ホルダ1がファン部30を備えた構成を例示して説明したが、ファン部30を省略した工具ホルダであってもよい。この場合においても、ホルダ本体20の外周面に開口部23が形成されているので、切削時に切削工具10とともに工具ホルダ1が回転すると、その遠心力により切削工具10の連通孔から外気を流入させ、なおかつ当該外気を連通路22を介して開口部23から流出させることができる。これにより、切削時に切削工具10の内部も連通孔によって外気に晒されるので切削工具10を冷却することができる。
また、上記実施形態では、ホルダ本体20に切削工具10が直接取り付けられた場合を例示したが、工具ホルダ1とは別のホルダを介して切削工具10がホルダ本体20に取り付けられてもよい。この場合、別のホルダには、切削工具10の連通孔とホルダ本体20の連通路22とを連通する流路を形成しておく必要がある。
また、上記実施形態では、連通孔が貫通孔11と吸入孔12とを備えている場合を例示したが、吸入孔12を省略し貫通孔11のみからなる連通孔であってもよいし、貫通孔11の先端部を封止して、吸入孔12から貫通孔11の基端部までが連通した連通孔であってもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、ソリッドタイプの工具ホルダ1を例示して説明したが、本発明の構成は刃先交換タイプの工具ホルダに対しても適用可能である。ソリッドタイプの場合では、本発明に係る切削用刃部は切削工具10であったが、刃先交換タイプの場合には、工具ホルダの先端部、つまりインサートが取り付けられる端部が切削用刃部となる。
【0024】
以下、刃先交換タイプの工具ホルダについて説明する。なお、以下の説明において上記実施形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。図5は、刃先交換タイプの工具ホルダを模式的に示す正面図であり、図6は、図5の工具ホルダの概略構成を示す下面図である。なお、図6では、開口部23に連通した空間Hを形成する一対のフィン323のみを一点鎖線で示している。図5及び図6に示すように工具ホルダ1Aにおけるホルダ本体20aの先端部(切削用刃部)25aは下方に向けて円柱状に突出している。先端部25aの内部には、連通路22aが軸方向に沿って形成されている。連通路22aの先端部は、止め栓26aによって密閉されている。
ホルダ本体20aにおける先端部25aの先端面には面切削用のインサート27aが複数交換自在に取り付けられている。複数のインサート27aは周方向に沿って等間隔に配置されている。この複数のインサート27aそれぞれの近傍には、先端部25aの先端から連通路22aまで連通する貫通孔11aが形成されている。この連通路22aの一部と貫通孔11aとが本発明に係る連通孔であり、この連通孔によってホルダ本体20aの先端部25a内部を外気が連通するようになっている。貫通孔11aの外気吸入口111aに接する位置、あるいは当該外気吸入口111aの近傍にはインサート27aが装着されており、これにより貫通孔11aの外気吸入口111aに吸い込まれる気流にインサート27aを直接晒して効率的に冷却できるようになっている。
【0025】
また、図7では、刃先交換タイプの工具ホルダの変形例を示している。図5及び図6に示した工具ホルダ1Aでは連通路22aが止め栓26aによって封止されていたが、図7では、先端部25bの先端面まで連通路22bが貫通している工具ホルダ1Bを示す。この場合、貫通孔11aが省略され、連通路22bが本発明に係る連通孔を兼ねることになる。連通孔22bの外気吸入口222bに接する位置、あるいは当該外気吸入口222bの近傍にはインサート27aが装着されており、これにより連通路22bの外気吸入口222bに吸い込まれる気流にインサート27aを直接晒して効率的に冷却できるようになっている。
【符号の説明】
【0026】
1 工具ホルダ
10 切削工具(切削用刃部)
11 貫通孔(連通孔)
12 吸入孔(連通孔)
20 ホルダ本体
21 保持部
22 連通路
23 開口部
24 溝部
30 ファン部
31 係合部
32 円盤部
311 挿通孔
312 突起
313 オーリング
321 天板
322 底板
323 フィン
H 空間
h1 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気が連通する連通孔を有する切削用刃部を先端部に有し、基端部が切削装置に固定されるホルダ本体を備え、
前記ホルダ本体には、外周面に形成された開口部と、当該開口部と前記切削用刃部の前記連通孔とを連通する連通路とが設けられていることを特徴とする工具ホルダ。
【請求項2】
請求項1記載の工具ホルダにおいて、
前記ホルダ本体には、
当該ホルダ本体の外径よりも大きな外形を有し、中心から外周に向けて複数のフィンが設けられたファン部が設けられていることを特徴とする工具ホルダ。
【請求項3】
請求項2記載の工具ホルダにおいて、
前記複数のフィンのうち、一対のフィンがなす空間と前記開口部とが連通していることを特徴とする工具ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91134(P2013−91134A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235021(P2011−235021)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【出願人】(000233066)日立ツール株式会社 (299)
【Fターム(参考)】