説明

差動装置

【課題】ドライバが感じる違和感が少なく、かつ、良好なステアリング操作感を実現する差動装置を提供すること。
【解決手段】差動装置1は、副駆動輪50L、Rにそれぞれ独立して連結された2つの出力要素と、2つの出力要素間に差動を発生させる差動モータ40と、ステアリング舵角センサ62と、差動モータ40で発生させる差動トルクを配列したトルクマップを有すると共にトルクマップに基づいて差動モータ40を制御するモータ制御ユニット6とを有してなる。トルクマップとしては、操舵角及び車速に対して回転トルクを配列した第1のトルクマップと、操舵角速度に対して回転トルクを配列した第2のトルクマップとがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4輪自動車の前輪又は後輪の左右輪の間に配設する差動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、4輪自動車の前輪又は後輪の左右輪の間に配置する差動装置がある。そして、このような差動装置としては、4輪自動車の旋回走行の安定性を向上することを目的としたものがある。例えば、このような差動装置では、例えば、操舵角や車速に基づいて旋回半径を予測し、その旋回半径に対して適切な左右輪間の差動を与えることで走行安定性を高めている。このような差動装置では、例えば、差動モータ等が発生する回転トルクによって、左右輪間に適切な差動を与えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、上記従来の差動装置では、次のような問題がある。すなわち、上記の差動装置では、必ずしも、ドライバーの意図を反映した適切な制御が実現されるとは限らなかった。例えば、制御遅れや、反応遅れ等に起因して、ドライバがステアリング操作感に違和感を感じるおそれがあるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平9−79347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みてなされたものであり、制御遅れや反応遅れを抑制し、ドライバが感じる違和感が少なく、かつ、良好なステアリング操作感を実現する差動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、4輪自動車の前輪又は後輪の左右輪の間に配設された差動装置であって、
該差動装置は、上記左右輪にそれぞれ独立して連結された2つの出力要素と、該2つの出力要素間に差動を発生させる差動モータと、少なくともステアリング操作量である操舵角及び上記4輪自動車の車速を取り込むように構成した入力部を含むと共に上記差動モータを制御するモータ制御ユニットとを有してなり、
該モータ制御ユニットは、上記操舵角及び上記車速に対する上記差動モータの回転トルクを配列した第1のトルクマップと、操舵角速度に対する上記差動モータの回転トルクを配列した第2のトルクマップとを有し、かつ、
上記モータ制御ユニットは、上記操舵角及び上記車速に基づいて上記第1のトルクマップを参照して得た上記回転トルクである第1の目標トルク値と、上記操舵角速度に基づいて上記第2のトルクマップを参照して得た上記回転トルクである第2の目標トルク値とに基づいて制御目標トルク値を計算すると共に、該制御目標トルク値に従って上記差動モータを制御するように構成してあることを特徴とする差動装置にある(請求項1)。
【0007】
本発明の差動装置における上記モータ制御ユニットは、トルクマップとして上記第1のトルクマップと上記第2のトルクマップとを有している。そして、このモータ制御ユニットは、上記操舵角及び上記車速に基づいて上記第1のトルクマップを参照して得た第1の目標トルク値と、上記操舵角速度に基づいて上記第2のトルクマップを参照して得た第2の目標トルク値とに基づいて制御目標トルク値を計算し、かつ、該制御目標トルク値に従って差動モータを制御する。
【0008】
ここで、上記操舵角速度は、操舵角に対して立ち上がりが速いため、上記操舵角よりも素早く、ドライバによる操舵意図が迅速に反映される。この操舵角速度を利用して上記差動モータを制御すれば、上記差動装置の制御遅れを抑制して、ドライバの違和感を抑制することができる。一方、上記操舵角速度のみによる制御では、差動装置の制御が過敏となって、左右輪間の差動が急に立ち上がったり、急に遮断されたりするおそれがある。
【0009】
そこで、本発明による制御では、上記操舵角等に基づいて上記第1のトルクマップを参照して得た上記第1の目標トルク値と、上記操舵角速度に基づいて上記第2のトルクマップを参照して得た上記第2の目標トルク値とに基づいて得た上記制御目標トルク値を用いて上記差動モータを制御することで、反応速度と制御安定性とを高いレベルで両立しているのである。
【0010】
なお、上記操舵角速度の取得方法としては、操舵角速度を計測するセンサを用いて直接的に操舵角速度を得るほか、上記ステアリング舵角センサを用いて計測した操舵角を時間的に微分することにより間接的に操舵角速度を得ることもできる。
さらになお、上記第1の目標トルク値と上記第2の目標トルク値とから上記制御目標トルク値を計算する方法としては、例えば、上記の2つの目標トルク値のうちの大きい値の方を上記制御目標トルク値とする方法や、上記2つの目標トルク値の平均をとって上記制御目標トルク値にする方法や、上記2つの目標トルク値の和を上記制御目標トルク値に設定する方法等がある。
【0011】
また、上記各トルクマップとしては、上記操舵角或いは上記操舵角速度等に応じて回転トルクのデータを配列したデータマップのほか、上記操舵角等に基づいて上記回転トルクを計算する計算式や論理演算式等であっても良い。すなわち、上記トルクマップとは、上記操舵角等に基づいて回転トルクを決定し得るように構成されたすべてのものを意味している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の差動装置においては、上記入力部は、上記4輪自動車の主原動機の出力トルクに相関を有する計測値を取り込むように構成してあり、上記第1のトルクマップは、上記操舵角、上記車速及び上記出力トルクに対して上記回転トルクを配列したものであり、
上記モータ制御ユニットは、上記操舵角、上記車速及び上記計測値から推定した上記出力トルクに基づいて上記第1のトルクマップを参照して上記第1の目標トルク値を得るように構成してあることが好ましい(請求項2)。
【0013】
この場合には、上記主原動機の出力トルクを考慮した上記第1のトルクマップを用いて上記差動モータを制御することにより、4輪自動車の旋回走行中において上記左右輪間の差動をより適切に発生させることができる。そして、この場合には、ドライバが感じるステアリング操作感を一層、良好にすることができる。
なお、上記主原動機の出力トルクに相関を有する上記計測値としては、例えば、エンジンのスロットル開度や、変速機のシフトポジションを示す値や、エンジン回転数等がある。
【0014】
また、上記第2のトルクマップは、上記操舵角速度及び車速に対して上記回転トルクを配列したものであり、
上記モータ制御ユニットは、上記操舵角速度及び上記車速に基づいて上記第2のトルクマップを参照して上記第2の目標トルク値を得るように構成してあることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記操舵角速度のみならず、車速を考慮した上記第2のトルクマップを用いて上記差動モータを制御することで、旋回走行中におけるステアリング操作感をさらに良好なものとして、ドライバの感じる違和感をさらに抑制することができる。
【0015】
また、上記第2のトルクマップは、上記操舵角速度、上記車速及び上記操舵角に対して上記回転トルクを配列したものであり、
上記モータ制御ユニットは、上記操舵角速度、上記車速及び上記操舵角に基づいて上記第2のトルクマップを参照して上記第2の目標トルク値を得るように構成してあることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記操舵角速度のみならず、上記車速及び上記操舵角を考慮した上記第2のトルクマップを用いて上記差動モータを制御することで、上記差動装置による制御をよりきめ細かなものとすることができる。それ故、ステアリング操作感をさらに良好にして、走行安定性を一層向上させることができる。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
本例は、4輪自動車100の副駆動輪50L、R間に配設した差動装置1に関する例である。この内容について図1〜図16を用いて説明する。
本例の差動装置1は、図1に示すごとく、4輪自動車100の前輪又は後輪の左右輪(以下、副駆動輪50L、Rと記載する。)の間に配設されたものである。
この差動装置1は、図2に示すとごとく、副駆動輪50L、Rにそれぞれ独立して連結された2つの出力要素と、該2つの出力要素間に差動を発生させる差動モータ40と、少なくともステアリング操作量である操舵角及び4輪自動車100の車速を取り込むように構成した入力部(本例では、図7中のI/O回路部602。)を含むと共に差動モータ40を制御するモータ制御ユニット6とを有してなる。
このモータ制御ユニット6は、操舵角及び車速に対する差動モータ40の回転トルクを配列した第1のトルクマップと、操舵角速度に対する差動モータ40の回転トルクを配列した第2のトルクマップとを有している。モータ制御ユニット6は、計測した操舵角及び車速に基づいて第1のトルクマップを参照して得た上記回転トルクである第1の目標トルク値と、操舵角速度に基づいて第2のトルクマップを参照して得た上記回転トルクである第2の目標トルク値とに基づいて制御目標トルク値を計算すると共に、該制御目標トルク値に従って差動モータ40を制御するように構成してある。
以下に、この内容について詳しく説明する。
【0017】
上記差動装置1は、図1及び図2に示すごとく、2つの出力要素(本例では、等配分デファレンシャル30の出力軸32L、32R。)間の差動を制御するものである。
この差動装置1は、サンギア23、該サンギア23の外周側に同軸配置されたリングギア22及び、該リングギア22とサンギア23とにギア係合するプラネタリギア24を保持するキャリア21の3つの歯車要素である選択構成要素を含む遊星歯車機構20を2個(20aと20b)組み合わせた遊星歯車機構組2と、該遊星歯車機構組2を収容するハウジング25と、一方の遊星歯車機構20bにおけるリングギア22、サンギア23及びキャリア21の各構成要素のうちのいずれかを回転させる差動モータ40(本例では、副原動機を兼用している。以下、副原動機40と記載する。)と、他方の遊星歯車機構20aにおける上記各構成要素のうちのいずれかの回転を停止させるように構成したブレーキ機構251とを有してなる。なお、図2では、車両エンジン8及び主駆動輪80L、80R(図1)は、省略して示してある。
【0018】
遊星歯車機構組2では、サンギア23の歯数とリングギア22の歯数との比であるギア比が一致している。
そして、上記各選択構成要素のうちの第1要素であるキャリア21は、各遊星歯車機構20a、20bのキャリア21a、21bが相互に連結されている。
また、各選択構成要素のうちの第2要素であるリングギア22は、一方の遊星歯車機構20aのリングギア22aがブレーキ機構251により回転を停止可能なように構成されていると共に他方の遊星歯車機構20bのリングギア22bが副原動機40のモータ軸に連結されている。
さらに、各選択構成要素のうちの第3要素であるサンギア23は、各遊星歯車機構20a、20bのサンギア23a、23bが、それぞれ、出力軸32L又は32Rと直接的又は間接的に連結されている。
【0019】
本例の差動装置1は、図1及び図2に示すごとく、1軸の入力軸31と、出力要素としての2軸の出力軸32L、32Rを含むベベルギア式の等配分デファレンシャル30を有してなる。そして、一方のサンギア23bが、等配分デファレンシャル30の入力軸31に連結され、他方のサンギア23aが、出力軸32Lに連結されている。前後輪駆動装置10では、等配分デファレンシャル30の各出力軸32L、32Rが、差動装置1の出力要素となっている。
【0020】
この差動装置1を利用した本例の前後輪駆動装置10は、図1及び図2に示すごとく、4輪自動車100の前輪或は後輪の主駆動輪80L、80Rを駆動する主原動機8(以下、適宜車両エンジン8と記載。)と、副駆動輪50L、50Rを駆動する副原動機40とを備えたものである。
副駆動輪50L、50Rの各ドライブシャフト51L、51Rは、差動装置1における等配分デファレンシャル30の各出力軸32L、32Rに、それぞれ連結してある。また、副原動機40のモータ軸は、クラッチ機構41を介して等配分デファレンシャル30の入力軸31と連結してある。また、主駆動輪80L、80Rは、動力伝達ユニット82を介して車両エンジン8と連結してある。
【0021】
本例の遊星歯車機構組2は、図1及び図2に示すごとく、同一仕様の遊星歯車機構20a、20b(以下、適宜a、bを省略して記載する。)を組み合わせて共通のハウジング25に一体的に収容したものである。そして、各遊星歯車機構20は、内周に配置されたサンギア23と、キャリア21に回転可能なように保持されていると共にサンギア23の周りを公転する複数のプラネタリギア24と、さらに、その外周側に配置されたリングギア22とによる係合構造を有するものである。
【0022】
本例の遊星歯車機構組2では、同図に示すごとく、キャリア21を上記第1要素として構成してある。すなわち、各遊星歯車機構20の各プラネタリギア24が、共通のキャリア21に保持される構造を有する。
また、本例では、リングギア22を上記第2要素として構成してある。すなわち、一方の遊星歯車機構20aのリングギア22aが、ブレーキ機構251によって停止可能なように構成されており、かつ、他方の遊星歯車機構20bのリングギア22bが、差動モータのモータ軸に連結されている。なお、本例では、差動モータと副原動機40とを共用してあるため、副原動機40のモータ軸をリングギア22bに連結してある。
【0023】
さらに、本例では、図1及び図2に示すごとく、サンギア23を上記第3要素として構成してある。そして、一方の遊星歯車機構20bのサンギア23bが、等配分デファレンシャル30の入力軸31に連結されており、他方の遊星歯車機構20aのサンギア23aが、等配分デファレンシャル30の一方の出力軸32L及び一方の駆動輪50Lのドライブシャフト51Lに連結されている。
【0024】
ここで、本例の遊星歯車機構組2の動作について、図1及び図2を用いて簡単に説明する。なお、各サンギア23の歯数を同数のZs、各リングギア22の歯数を同数のZrとする。ブレーキ機構251によって一方のリングギア22aを停止し、他方のリングギア22bに入力する回転数ωiをゼロに設定したとき、一方のサンギア23bを回転数ω1で回転させると、第1要素であるキャリア21の回転数がωc=Zs/(Zs+Zr)×ω1となる。このとき、他方のサンギア23aは、上記一方のサンギア23bと同じω1で回転する。
【0025】
また、ブレーキ機構251によって上記一方のリングギア22aを停止した状態で、回転数ω1のサンギア23aに対して、他方のサンギア23bをω2=ω1+Δωで回転させるためには、第1要素であるキャリア21をωc=Zs/(Zs+Zr)×ω1で回転させる必要がある。そして、このキャリア21の回転数を得るためには、他方のリングギア22bにωi=(−Zr)/Zs×Δωの回転を入力する必要がある。
【0026】
本例の等配分デファレンシャル30は、図1及び図2に示すごとく、ベベルギアを用いて構成されたものである。この等配分デファレンシャル30の入力軸31は、クラッチ機構33を介して、副原動機40のモータ軸に連結された減速機42に連結されている。すなわち、クラッチ機構33を断続することで、副原動機40から等配分デファレンシャル30への回転トルクの伝達を断続できるように構成してある。そして、等配分デファレンシャル30の右側の出力軸32Rは、右側の副駆動輪50Rに連結されたドライブシャフト51Rに連結されている。また、左側の出力軸32Lは、上記のごとく、一方の遊星歯車機構20aのサンギア23aと共に左側の副駆動輪50Lに連結されたドライブシャフト51Lに連結されている。
【0027】
例えば、上記のように構成された差動装置1では、クラッチ機構33を切断すると共にブレーキ機構251によりリングギア22aの回転を規制した状態で副原動機40を回転駆動すれば、図3(A)及び図4(B)に示すごとく、副駆動輪50L、Rに差動が生じる。ここで、図3(A)と図4(B)とでは、副原動機40の回転方向を反転させてある。
【0028】
なお、等配分デファレンシャル30としては、本例のベベルギアを用いて構成したものに代えて、図5及び図6に示すごとく、ダブルピニオンギアを用いて構成したものを適用することもできる。特に、ダブルピニオンを用いた等配分デファレンシャル30の場合には、2軸の出力軸32L、32Rに、各遊星歯車機構20a、20bの第3要素であるサンギア23a、23bをそれぞれ連結することもできる。
また、上記クラッチ機構33としては、多板式クラッチや、単板式クラッチや、油圧式クラッチや、電磁式クラッチ等、さまざまな構造のクラッチを適用することができる。
【0029】
本例の前後輪駆動装置10は、図2及び図7に示すごとく、モータ制御ユニット6により制御されるように構成してある。このモータ制御ユニット6は、接続された車速センサ61及びステアリング舵角センサ62の各センサ出力を取り込み、副原動機モータ40、クラッチ機構33及びブレーキ機構251に向けて制御信号を出力するように構成してある。なお、各センサの信号は、モータ制御ユニット6に直接的に入力しても良く、車両エンジン8(図1)を制御するためのエンジンECU等を介して間接的に入力することも良い。
【0030】
車速センサ61は、4輪自動車100の走行速度を検出し、走行速度に応じた出力信号を生成するように構成してある。ステアリング舵角センサ62は、運転者によるステアリング操作量である操舵角を検出し、この操舵角に応じた出力信号を生成するように構成してある。
【0031】
本例のモータ制御ユニット6は、図7に示すごとく、CPU601と、入出力インターフェースとしてのI/O回路部602と、記憶手段としてのRAM603及びROM604とを有する。このモータ制御ユニット6は、I/O回路部602を介して、車速センサ61で計測した車速、ステアリング舵角センサ62で計測した操舵角を取り込むように構成してある。また、モータ制御ユニット6は、I/O回路部602を介して、差動モータ40を制御するように構成してある。
【0032】
ここで、モータ制御ユニット6のROM604には、4輪自動車100の走行状態に応じて、副原動機40で発生させる回転トルクを配列したトルクマップを格納してある。このトルクマップとしては、図8及び図9に示すごとく、操舵角及び車速に対して回転トルクを配列した第1のトルクマップと、操舵角速度に対して回転トルクを配列した第2のトルクマップとを有する。
【0033】
第1のトルクマップは、車速及び操舵角に対して回転トルクを配列したものである。すなわち、第1のトルクマップは、車速、操舵角及び回転トルクの関係を表す3次元マップである。なお、図8には、ある車速における操舵角θ(横軸)と回転トルク(縦軸)との関係を示している。
第2のトルクマップは、操舵角速度dθに対して回転トルクを配列したものである。なお、同図では、横軸に操舵角速度dθを規定し、縦軸に回転トルクを規定してある。本例では、操舵角速度dθとしては、ステアリング舵角センサ62で計測した操舵角を時間微分したものを利用した。
【0034】
次に、本例の前後輪駆動装置10の制御方法について、図10に示すごとく、モータ制御ユニット6に適用する制御フローチャートを用いて説明する。
モータ制御ユニット6は、ステップS110に示すごとく、まず、車速Vと操舵角θとを取り込む。そして、ステップS120では、前回サンプリング時の操舵角の値θoと、今回サンプリングした操舵角θとの差分を計算し、この差分値を操舵角速度dθとして得る。
【0035】
ステップS130では、車速V及び操舵角θに基づいて上記第1のトルクマップ(図8)を参照し、第1の目標トルク値Tout1を得る。一方、ステップS140では、操舵角速度dθに基づいて上記第2のトルクマップ(図9)を参照し、第2の目標トルク値Tout2を得る。そして、ステップS150では、上記第1の目標トルク値Tout1及び上記第2の目標トルク値Tout2のうち大きい方を選択し、制御目標トルク値Toutとする。本例では、この制御目標トルク値Toutを実際の制御目標として副原動機40の制御を実施した。
【0036】
例えば、図11(A)に示すごとく、横軸に規定する時刻tにおいて、t1からt2にかけて操舵角θ(縦軸)が変化した場合について説明する。このとき、操舵角速度dθは、同図(B)に示すごとく変化する。すなわち、時刻t1から時刻t2までの範囲で、操舵角速度dθが正値をとる。一方、時刻t1まで、及び、時刻t2以降は、操舵角速度dθは、略ゼロ一定となっている。
【0037】
このとき、図12中、符号l2で示すごとく、第1のトルクマップを参照して得た第1の目標トルク値は、操舵角θ(図11(A)参照。)と略同傾向の時間的変化を呈する。また、図12中、符号l3で示すごとく、第2のトルクマップを参照して得た第2のトルク値は、操舵角速度dθ(図11(B)参照。)と略同傾向の時間的変化を呈する。
【0038】
そして、時刻t<t1の範囲では、(第1の目標トルク値(l2)>第2の目標トルク値(l3))である。また、この例では、t1≦t≦t3(t1<t3<t2)の範囲では、(第1の目標トルク値(l2)≦第2の目標トルク値(l3))となる。さらに、t>t3の範囲では、再び、(第1の目標トルク値(l2)>第2の目標トルク値(l3))となっている。それ故、第1の目標トルク値(l2)と第2の目標トルク値(l3)とに基づく本例の制御目標トルク値は、図12における符号l1で示すごとく設定される。
【0039】
なお、制御目標トルク値Toutを制御目標として副原動機40を制御するに当たっては、図13に示すごとく、クラッチ機構33を開放すると共に、ブレーキ機構251を係合させる。この状態で、制御目標トルク値Toutに基づいて副原動機40を制御する。具体的には、リングギア22aの回転を規制した状態で副原動機40の回転トルクをリングギア22bに伝達させる。これにより、第3要素であるサンギア23a、23b間に差動トルクを与え、副駆動輪50Lと副駆動輪50Rとの間に適切な差動を生じさせる。
【0040】
なお、上記前後輪駆動装置10は、4輪自動車100の発進時には、ブレーキ機構251を開放してリングギア22aの回転を自由にすると共に、クラッチ機構33を係合させて副原動機40から等配分デファレンシャル30に向けて駆動トルクを伝達させる。これにより、副原動機40の回転トルクが副駆動輪50L、50Rに伝達されて4輪駆動の走行状態を実現する。
【0041】
さらになお、車速が一定以上であって、かつ、操舵角がしきい値以内にあり、4輪自動車100が直進走行状態にあると推定する場合には、クラッチ機構33及びブレーキ機構251を図13に示す状態に設定すると共に、副原動機40を回生モードで運転させることも良い。この場合には、副原動機40の回転を制限するように作用するトルクにより、副駆動輪50L、50Rの差動を規制し、4輪自動車100の直進安定性を向上させることができる。
【0042】
以上のように、上記差動装置1のモータ制御ユニット6は、車速V及び操舵角θに基づいて第1のトルクマップを参照して第1の目標トルク値Tout1を得ると共に、操舵角の時間差分である操舵角速度dθに基づいて第2のトルクマップを参照して第2の目標トルク値Tout2を得る。そして、第1の目標トルク値Tout1及び第2の目標トルク値Tout2に基づいて制御目標トルク値Toutを決定し、副原動機40を制御する。具体的には、本例では、第1の目標トルク値Tout1、第2の目標トルク値Tout2のうちの大きい方を選択して、この値を上記制御目標トルク値Toutとしている。
【0043】
ここで、上記操舵角速度は、操舵角に対して位相が進んでいるため、上記操舵角よりも素早く、ドライバによる操舵意図が反映される。この操舵角速度を利用して副原動機40を制御すれば、差動装置1の制御遅れを抑制して、ドライバの違和感を抑制することができる。
すなわち、本例では、上記操舵角等に基づいて上記第1のトルクマップを参照して得た上記第1の目標トルク値と、上記操舵角速度に基づいて上記第2のトルクマップを参照して得た上記第2の目標トルク値とに基づいて得た上記制御目標トルク値を用いて副原動機40を制御することで、反応速度と制御安定性とを高いレベルで両立しているのである。
【0044】
操舵角等に基づく上記第1の目標トルク値と、操舵角速度に基づく上記第2の目標トルク値とを考慮すれば、例えば、操舵角のみにより制御する場合のように、差動装置1の制御遅れや、反応遅れ等が問題となるおそれが少ない。また、上記操舵角速度のみにより制御した場合のように、差動装置1の反応が過敏となって、副駆動輪50L、R間の差動が急に立ち上がったり、急に遮断されたりするおそれも少ない。
【0045】
なお、第1の目標トルク値Tout1及び第2の目標トルク値Tout2のうち大きい方を選択して制御目標トルク値Toutを決定する方法に代えて、Tout1、Tout2の和をToutとして設定する方法や、Tout1、Tout2の加算平均をToutとする方法など、さまざまな方法を選択することができる。
さらに、上記各トルクマップとしては、操舵角或いは操舵角速度等に応じて回転トルクのデータを配列したデータマップのほか、上記操舵角等に基づいて回転トルクを計算する計算式や論理式等であっても良い。すなわち、本発明におけるトルクマップとは、上記操舵角等に基づいて回転トルクを決定し得るように構成されたすべてのものを意味している。
【0046】
なお、図14に示すごとく、本例の前後輪駆動装置10(図1)から減速機42、クラッチ機構33及び副原動機40を省略する代わりに、差動モータ45を追加して差動装置1を構成することもできる。この差動装置1によれば、差動モータ45を用いて各出力軸32L、32R間の差動を抑制することができる。
さらに、図14に示す前後輪駆動装置10から等配分デファレンシャルを省略して、図15に示す差動装置1を構成することもできる。この差動装置1の出力要素は、従動輪57L、57Rに連結されたシャフト571L、571Rである。そして、このシャフト571L、571Rに対しては、第3要素であるサンギア23a、23bがそれぞれ直結されている。この差動装置1によれば、差動モータ45を用いて、従動輪57L、57R間の差動を制御することができる。
【0047】
またさらに、図16に示すごとく、本例の前後輪駆動装置10に対して、遊星歯車機構組2専用の差動モータ45を、副原動機40とは別に設けることもできる。この場合には、副原動機40によって各副駆動輪50L、50Rを同方向に回転駆動しながら、副駆動輪50L、50Rの間の回転差を、差動モータ45を用いて制御することができる。
【0048】
さらには、図17に示すごとく、クラッチ機構及び副原動機を省略し、車両エンジン8により駆動されるプロペラシャフト310と等配分デファレンシャル30の入力軸31とをハイポイドギア等を介して連結した前後輪駆動装置10を構成することもできる。この前後輪駆動装置10によれば、差動モータ45の回転を用いて各副駆動輪50L、50Rの回転差を制御しながら、車両エンジン8の駆動トルクを各副駆動輪50L、50Rに伝達することができる。
【0049】
(実施例2)
本例は、実施例1の差動装置を基にして、主原動機8(図1参照。)が発生する出力トルクを考慮した制御を実施した例である。この内容について、図18を用いて説明する。
本例のモータ制御ユニット6は、自動変速機を制御するトルコンECU402(図20参照。)及び、主原動機8を制御するエンジンECU401(図20参照。)と電気的に接続してある。そして、モータ制御ユニット6は、自動変速機で選択されているギアポジション(シフトポジション)をトルコンECU402から取り込むと共に、スロットル開度及びエンジン回転数をエンジンECU401から取り込む。そして、本例のモータ制御ユニット6は、取り込んだシフトポジション、スロットル開度及びエンジン回転数に基づいて主原動機8が発生する出力トルクを推定するように構成してある。
【0050】
本例の第1のトルクマップは、車速、操舵角及び上記出力トルクに対して副原動機40の回転トルクを配列したものである。そして、本例では、上記第1の目標トルク値を得るに当たっては、車速、操舵角及び出力トルクに基づいて第1のトルクマップを参照した。
さらに、本例の第2のトルクマップは、車速及び操舵角速度に対して副原動機40の回転トルク値を配列したものである。そして、本例では、上記第2の目標トルク値を得るに当たっては、車速及び操舵角速度に基づいて第2のトルクマップを参照した。
【0051】
以上のように、本例の第1のトルクマップは、車速及び操舵角のほかに主原動機8の出力トルクを考慮したものである。そのため、例えば、すばやい旋回ができる運動性能向上や、旋回加速時のアンダーステアあるいはオーバーステアを抑制して安全性を向上し得るという作用効果を得ることができる。また、本例の第2のトルクマップは、操舵角速度のほかに車速を考慮したものである。そのため、例えば、障害物回避など旋回応答遅れが問題となるような場合において、応答遅れを抑制してさらに素早い旋回が可能となるという作用効果を得ることができる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0052】
(実施例3)
本例は、実施例2を基にして、自転角速度(ヨーレート)による補正を加えた例である。この内容について、図19及び図20を用いて説明する。
本例のモータ制御ユニット6は、ヨーレートセンサ403を電気的に接続してあり、このヨーレートセンサ403から4輪自動車のヨーレート(自転角速度)を取り込むように構成してある。
【0053】
一方、モータ制御ユニット6は、取り込んだ車速及び操舵角に基づいて4輪自動車100の目標ヨーレートを演算するように構成してある。そして、この目標ヨーレートと実測したヨーレートとを比較してその差分に基づいて、制御目標トルク値に対して補正するべき補正量を演算するように構成してある。そして、本例のモータ制御ユニット6は、第1のトルクマップを参照して得た第1の目標トルク値Tout1、第2のトルクマップを参照して得た第2の目標トルク値Tout2及び、上記の補正量から制御目標トルク値を演算する。具体的には、本例では、まず、上記第1の目標トルク値Tout1と上記第2の目標トルク値Tout2とから暫定の制御目標トルク値を決定する。そして、この暫定の制御目標トルク値に上記補正量を加算することで、副原動機40に適用する制御目標トルク値を最終決定する。
【0054】
以上のように、本例のモータ制御ユニット6は、4輪自動車のヨーレートを利用して制御目標トルク値を補正するように構成してある。そのため、本例によれば、モータ制御ユニット6を用いてより精度の高い制御を実現できる。それ故、4輪自動車の走行状態(旋回半径)に応じて、さらに適切に副駆動輪50L、R間に差動を与え、その走行安定性を一層高めることができる。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例2と同様である。
【0055】
(実施例4)
本例は、実施例1の前後輪駆動装置に基づいて、遊星歯車機構組2の構成を変更した例である。この内容について、図21〜図25を用いて説明する。
実施例1の遊星歯車機構組2(図1参照。)では、キャリア21を第1要素とし、リングギア22を第2要素とし、さらに、サンギア23を第3要素としている(図21に示す構成。)。この構成は、構造が比較的、単純であり、低コスト、コンパクトに実現できるという特徴がある。特に、この構成では、入力に対して出力が増速されるため、タイヤ径が小さい車両など、左右輪の回転数差が大きい場合に特に有効となる。
【0056】
実施例1の構成に代えて、図22には、リングギア22を第1要素とし、キャリア21を第2要素とし、サンギア23を第3要素とした構成を示している。この構成は、構造が単純であり、低コスト、コンパクトに実現し得る点で有利である。特に、この構成では、入力に対する出力の回転比である増速比を最も大きく確保することができる。
【0057】
また、図23には、サンギア23を第1要素とし、リングギア22を第2要素とし、キャリア21を第3要素とした構成を示している。この構成は、構造を単純にでき、低コストに実現し得る。そして、この構成は、入力に対して出力が減速されるため出力トルクを大きくでき、歯車の負荷を少なくできるので遊星歯車機構を小型化できるという大トルクタイプのバランス型という特徴を有している。
【0058】
また、図24には、リングギア22を第1要素とし、サンギア23を第2要素とし、キャリア21を第3要素とした構成を示している。この構成では、入力に対する出力の回転比である減速比を大きくできるため、出力に大トルクが要求される場合に有効である。
【0059】
図25は、サンギア23を第1要素とし、キャリア21を第2要素とし、リングギア22を第3要素とした構成を示している。この構成は、構造が若干複雑となるもののサンギア23を第3要素とする他の組み合わせよりも歯車の負荷を少なくでき、小型化できるという有利な点を有する。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。さらになお、上記のほかには、構造が複雑になるが、キャリアを第1要素として、サンギアを第2要素として、リングギアを第3要素とすることもできる。
【0060】
(実施例5)
本例は、実施例1における図17に示した差動装置の他の適用例である。この内容について図26を用いて説明する。
本例の差動装置1は、2輪駆動の4輪自動車の主駆動輪60L、60Rに回転差を付与するためのものである。この差動装置1では、車両エンジン8により駆動されるプロペラシャフト310と等配分デファレンシャル30の入力軸31とがハイポイドギア等を介して連結されている。この差動装置1によれば、差動モータ45を用いて、主駆動輪60L、60R間の回転差を制御することができる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1の図17に示す差動装置と同様である。
なおまた、本例の差動装置1は、上記のほか、4輪駆動の4輪自動車の主駆動輪或いは、副駆動輪の差動装置として利用できる。さらに、4輪駆動の4輪自動車の前後輪間に回転差を付与する差動装置として利用することもできる。
【0061】
(実施例6)
本例は、実施例1の前後輪駆動装置を基にして、差動装置1の構成を変更した例である。この内容について、図27を用いて説明する。
本例の差動装置1では、同図に示すごとく、一方の遊星歯車機構20aのリングギア22aの回転を規制してある。そして、他方の遊星歯車機構20bのリングギア22bと、副原動機40の回転を減速する減速機42との間に、トルク伝達を断続するための差動クラッチ機構252を配設してある。なお、本例の差動装置1では、ハウジング25とリングギア22aとを間接的に係合させることで、リングギア22aの回転を規制してある。
【0062】
次に、本例の前後輪駆動装置10の制御方法について説明する。
実施例1の前後輪駆動装置との相違点は、副駆動輪50L、R間の回転差を制御する際に、クラッチ機構33を開放すると共に、差動クラッチ機構252を係合させる点である。この状態で、副原動機40によりリングギア22bの回転を制御すれば、第3要素であるサンギア23a、23b間の差動を制御することができる。本例では、一方のサンギア23aには、上記のごとく、左副駆動輪50Lのドライブシャフト51Lが直接的に連結されている。そして、他方のサンギア23bは、等配分デファレンシャル30の入力軸31と直接的に連結され、等配分デファレンシャル30を介在して右副駆動輪50Rのドライブシャフト51Rに連結されている。それ故、上記のごとく前後輪駆動装置1を制御すれば、副駆動輪50L、50Rの回転差を制御できる。
【0063】
なお、4輪自動車100の発進時には、差動クラッチ機構252を開放すると共に、クラッチ機構33を係合させて副原動機40から等配分デファレンシャル30に向けて駆動トルクを伝達させる。これにより、4輪自動車100の4輪駆動状態を実現する。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0064】
(実施例7)
本例は、実施例1のその他の前後輪駆動装置(図17参照。)を基にして、差動装置の構成を変更した例である。この内容について、図28を用いて説明する。
本例の差動装置1では、同図に示すごとく、一方の遊星歯車機構20aのリングギア22aの回転を規制してある。そして、他方の遊星歯車機構20bのリングギア22bと、差動モータ45の回転を減速する減速機42との間に、差動クラッチ機構252を配設してある。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1における、前後輪駆動装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施例1における、前後輪駆動装置の制御系統を示すシステム図。
【図3】実施例1における、旋回走行時における前後輪駆動装置での伝達トルクのフローを説明する説明図(A)。
【図4】実施例1における、旋回走行時における前後輪駆動装置での伝達トルクのフローを説明する説明図(B)。
【図5】実施例1における、その他の前後輪駆動装置の構成を示すブロック図。
【図6】実施例1における、その他の前後輪駆動装置の構成を示すブロック図。
【図7】実施例1における、モータ制御ユニットの構成を示すブロック図。
【図8】実施例1における、ある車速下での操舵角θと回転トルクとの関係を表すトルクマップ。
【図9】実施例1における、操舵角速度と回転トルクとの関係を表すトルクマップ。
【図10】実施例1における、モータ制御ユニットによる制御を説明するフロー図。
【図11】実施例1における、操舵角θの時間的変化(A)及び操舵角速度dθの時間的変化(B)の一例を示すグラフ。
【図12】実施例1における、第1の目標トルク値、第2の目標トルク値及び制御目標トルク値の時間的変化を示すグラフ。
【図13】実施例1における、走行安定制御における前後輪駆動装置の動作を説明する説明図。
【図14】実施例1における、その他の差動装置の構成を示すブロック図。
【図15】実施例1における、その他の差動装置の構成を示すブロック図。
【図16】実施例1における、その他の前後輪駆動装置の構成を示すブロック図。
【図17】実施例1における、その他の前後輪駆動装置の構成を示すブロック図。
【図18】実施例2における、差動装置の制御システムを示すブロック図。
【図19】実施例3における、差動装置の制御システムを示すブロック図。
【図20】実施例3における、モータ制御ユニットの構成を示すブロック図。
【図21】実施例1における、遊星歯車機構組の構成を示す構成図。
【図22】実施例4における、遊星歯車機構組の第1の構成を示す構成図。
【図23】実施例4における、遊星歯車機構組の第2の構成を示す構成図。
【図24】実施例4における、遊星歯車機構組の第3の構成を示す構成図。
【図25】実施例4における、遊星歯車機構組の第4の構成を示す構成図。
【図26】実施例5における、差動装置の構成を示すブロック図。
【図27】実施例6における、前後輪駆動装置の構成を示すブロック図。
【図28】実施例7における、前後輪駆動装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0066】
1 差動装置
10 前後輪駆動装置
2 遊星歯車機構組
20a、20b 遊星歯車機構
21 キャリア
22 リングギア
23 サンギア
24 プラネタリギア
25 ハウジング
251 ブレーキ機構
30 等配分デファレンシャル
31 入力軸
32L、32R 出力軸
33 クラッチ機構
40 副原動機
42 減速機
45 差動モータ
50L、50R 副駆動輪
51L、51R ドライブシャフト
6 モータ制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4輪自動車の前輪又は後輪の左右輪の間に配設された差動装置であって、
該差動装置は、上記左右輪にそれぞれ独立して連結された2つの出力要素と、該2つの出力要素間に差動を発生させる差動モータと、少なくともステアリング操作量である操舵角及び上記4輪自動車の車速を取り込むように構成した入力部を含むと共に上記差動モータを制御するモータ制御ユニットとを有してなり、
該モータ制御ユニットは、上記操舵角及び上記車速に対する上記差動モータの回転トルクを配列した第1のトルクマップと、操舵角速度に対する上記差動モータの回転トルクを配列した第2のトルクマップとを有し、かつ、
上記モータ制御ユニットは、上記操舵角及び上記車速に基づいて上記第1のトルクマップを参照して得た上記回転トルクである第1の目標トルク値と、上記操舵角速度に基づいて上記第2のトルクマップを参照して得た上記回転トルクである第2の目標トルク値とに基づいて制御目標トルク値を計算すると共に、該制御目標トルク値に従って上記差動モータを制御するように構成してあることを特徴とする差動装置。
【請求項2】
請求項1において、上記入力部は、上記4輪自動車の主原動機の出力トルクに相関を有する計測値を取り込むように構成してあり、上記第1のトルクマップは、上記操舵角、上記車速及び上記出力トルクに対して上記回転トルクを配列したものであり、
上記モータ制御ユニットは、上記操舵角、上記車速及び上記計測値から推定した上記出力トルクに基づいて上記第1のトルクマップを参照して上記第1の目標トルク値を得るように構成してあることを特徴とする差動装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記第2のトルクマップは、上記操舵角速度及び車速に対して上記回転トルクを配列したものであり、
上記モータ制御ユニットは、上記操舵角速度及び上記車速に基づいて上記第2のトルクマップを参照して上記第2の目標トルク値を得るように構成してあることを特徴とする差動装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、上記第2のトルクマップは、上記操舵角速度、上記車速及び上記操舵角に対して上記回転トルクを配列したものであり、
上記モータ制御ユニットは、上記操舵角速度、上記車速及び上記操舵角に基づいて上記第2のトルクマップを参照して上記第2の目標トルク値を得るように構成してあることを特徴とする差動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2006−57745(P2006−57745A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240679(P2004−240679)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】