説明

巻線部品

【課題】
平角線を用いた巻線部品では、絶縁被覆された導線が密着して巻線されるために導体間の距離が近いことと、隣接する巻線の対向面の面積が広いこと、とにより線間容量が大きく、巻線部品の高周波特性の劣化が大きい。
【解決手段】
断面四角状の導線の表面に絶縁被覆された導線をアルファ巻きまたはエッジワイズ巻きした巻線部品において、前記巻線部品の巻線が重なる方向の、少なくとも1表面に凸部を設ける。
【効果】
線間容量を低減することができ、高周波特性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平角線を用い、この平角線を巻線した巻線部品に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線と巻線の間の不要な隙間を少なくすることができ、巻線の断面に占める導体の割合(占積率)を大きくすることができることから、巻線部品の巻線に、断面が円形の丸線の代わりに、断面が四角形状の平角線を用いられている。
平角線は、断面が円形状の銅線からなる母線を伸線ダイスに通して、所定の断面積になるまで引き抜き加工し、圧延ローラにて断面が四角形状に圧延される。そして、焼鈍の後に、ポリウレタン等の絶縁被覆を塗布、乾燥し、最後に加温して絶縁被覆を焼付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−302237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4は、従来の巻線部品の実施例を示す図である。図4(a)は、巻線として、断面が四角形状の導線51を用い、この導線51の幅方向に巻いた、所謂エッジワイズ巻きした巻線部品50aを示し、図4(b)は図4(a)の断面図を示す。
図4(c)は巻線として、断面が四角形状の導線51を用い、この導線51の厚さ方向に巻いた、所謂アルファ巻きした巻線部品50bを示し、図4(d)は図4(c)の断面図を示す。
この導線51は、断面が略四角形状の導体52を厚さdの絶縁被覆53で被覆して導線としたものが用いられる。図4(b)と図4(d)に示すように、平角線を用いた導線51で巻線部品を作製した場合は、巻線の導体と導体との間の間隔は2dとなる。
【0005】
一般的に巻線部品において、巻線の導体と導体との間隔が近いと、隣接する巻線の間の線間容量が増加し、高周波特性が劣化する。特に平角線を用いた巻線部品では、導線が密着して巻かれるために導体間の距離が近いことと、隣接する巻線の対向面の面積が広いこと、とにより線間容量が大きくなる傾向にある。そのため、平角線を用いた巻線部品では高周波特性の劣化が大くなるという問題があった。
被覆の厚みを厚くすることで、巻線の導体と導体との間隔を広げることも可能だが、被覆の厚さの限界は30μm程度である。また、被覆の厚さは樹脂を複数回塗布することで厚くするので、コストが増加する。さらに、巻線部品の端末部は、他の部品と電気的に接続するために被覆を剥離する必要があるが、被覆が厚くなることで剥離が難しくなるという問題も生じる。
本発明の目的は、線間容量を低減して高周波特性の向上した巻線部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明の巻線部品は、
断面が四角形状の導体の表面に絶縁被覆された導線をアルファ巻きまたはエッジワイズ巻きした巻線部品において、
前記導体の巻線が重なる方向の、少なくとも1表面に凸部を設け、
前記導体との間に生じる線間容量を低減した
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の巻線部品によれば、
安価な構造で、絶縁被覆された導線の導体間の距離を部分的に離間させることができる。その結果、線間容量を低減することができ、高周波特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例を示す斜視図である。
【図2】平角導線の製造方法を説明する図である。
【図3】導体の別の例である。
【図4】従来の巻線部品を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0009】
以下図面を用いて本発明の一実施例の巻線部品を説明する。
図1(a)は本発明の一実施例を示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)の巻線部品に用いる導線を説明する図であり、図1(c)は図1(a)の巻線部品の断面図の一部を示す。
図1(a)に示すように、コイル部品10は、巻線として断面が略四角形状の導線12を絶縁被覆13で被覆した導線11を用い、この導線を厚さ方向に巻いた、所謂アルファ巻きしたものである。
図1(b)に示すように、導線11は、導体12の巻線の重なる方向の対向する表面に、複数の凸部14を有し、外周を絶縁被覆13で被覆されている。
図1(c)に示すように、導線11が巻線されると、導体12の巻線と巻線の間の間隔は、凸部14のある部分の間では2dであり、凸部14のない部分の間では2dである。
したがって、導体12の対向する距離の一部が離される。その結果、線間容量を低減できる。なお、凸部14の幅wを小さくすることにより、離される部分の面積を大きくでき、線間容量を小さくできる。
【0010】
図2は断面が略四角形状の平角導線を製造方法の一部を説明する図である。
断面が円形状の銅線からなる母線を四角形状の孔が設けられた伸線ダイスに複数回通して、断面形状を略四角形状にするととともに、徐々に断面積を小さくし、所定の断面積になるまで引き抜き加工して、断面が略四角形状の平角導線21を製造する。
そして、図2に示すように、平角導線21を外周表面に複数の凹部26を設けた圧延ローラ25で圧延する。これにより、平角導線の表面に複数の凸部14が形成された平角導線12が得られる。
その後、平角導線12にポリウレタン等の絶縁被覆を複数回塗布し所望の厚さの絶縁被膜を得る。上記した実施例ではアルファ巻のコイル部品であったが、言うまでもなくエッジワイズ巻きであってもよい。
【0011】
図3は、導体に別の凸部を設けた一実施例を示す斜視図である。
図3(a)は、島状の凸部14aを設けた導体12aを示し、図3(b)は導体の長さ方向とは斜めに凸部14bを設けた導体12bを示し、図3(c)は網状の凸部14cを設けた導体12cを示す。
このような凸部の形状は、圧延ローラの表面の凹凸の形状を変えるだけでよい。また、図3に示すように、凸部を設ける面は、平角線の一方の面だけでもよい。なお、凸部の上にさらに別の凸部を設けてもよい。
【0012】
以上述べたように、本発明の巻線部品によれば、簡易な方法で巻線部品の線間容量を、小さくすることができる。さらに、凸部により導体の表面積が増え、高周波における表皮効果の低減も期待できる。
【符号の説明】
【0013】
巻線部品 10、50a、50b
導線 11、51
導体 12、12a、12b、12c、52
絶縁被膜 13、53
凸部 14、14a、14b、14c
圧延ローラ 25
凹部 26

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が四角形状の導体の表面に絶縁被覆された導線をアルファ巻きまたはエッジワイズ巻きした巻線部品において、
前記導体の巻線が重なる方向の、少なくとも1表面に凸部を設け、
前記導体との間に生じる線間容量を低減した
ことを特徴とする巻線部品。
【請求項2】
前記複数の凸部は、前記1表面の裏面にも形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の巻線部品。
【請求項3】
前記複数の凸部は、網状に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至2記載の巻線部品。
【請求項4】
前記複数の凸部は、島状に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至2記載の巻線部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−234875(P2012−234875A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100610(P2011−100610)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】