説明

巻芯、ドラム、ローラ等の回転支持体の製造方法

【課題】表面が金属メッキされるものであって、そのメッキ処理を効率よく行うことができて、軽量で高強度を有し、かつ表面の平滑性が十分保たれた回転支持体の製造方法を提供すること。
【解決手段】熱硬化性樹脂を含浸させるかこれによってプリプレグ化したカーボン繊維を、離型される芯金20の表面に貼り付けまたは巻回して、前記熱硬化性樹脂を熱硬化させることによりカーボン繊維層11を形成し、このカーボン繊維層11の上に絶縁性を有するアンカー層15を形成し、このアンカー層15の表面に金属下地層13cを形成し、この金属下地層13cの表面側にハードクロムメッキ層13dを形成するようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻芯、ドラム、ローラ等の回転支持体の製造方法に関し、特に、強度と軽量性をカーボン繊維層によって確保するようにした回転支持体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転支持体の一種である巻芯は、紙原反や磁気テープ用原反等の非常に長尺な可撓性シートを巻回するものであって、その巻回は非常に高速でなされるものであり、巻回が完了した場合には非常に大きな重量を支えることになるものである。従って、この種の巻芯では、高速回転を無理なく行えるようにするために軽量なものでなければならず、重量物を支えるためには高い強度を必要とするものである。
【0003】
また、回転支持体の一種であるドラムは、たとえば印刷する輪転機の一部として採用されることもあるものであるが、このドラムは、前述の巻芯と同様に高速回転されるものであり、しかも鮮明な印刷を行うには、その高速回転中に変形してはならないものである。従って、この種のドラムも、高速回転を無理なく行えるようにするために軽量なものでなければならないし、高い強度のものである必要がある。
【0004】
さらに、回転支持体の一種であるローラは、たとえばベルトコンベアのベルトを支えるものとして使用されることがあるが、当然搬送物が重くかつ高速輸送する場合には、前述した巻芯やドラムと同様に、軽量なものである必要があり、かつ高い強度を有したものでなければならない。
【0005】
以上のような軽量でかつ高強度の回転支持体として、出願人は、特許第1644988号、特許第1690091号、あるいは特許第1704458号等において種々提案してきているのであるが、その基本的構成は、ガラス繊維やカーボン繊維、あるいは合成樹脂繊維から糸を形成し、これに樹脂を含浸させながら芯金に「フィラメントワインディング」し、樹脂を硬化させるか、ガラス繊維やカーボン繊維、あるいは合成樹脂繊維からクロスを形成し、これに樹脂を含浸させて「プリプレグ化」したシートを芯金に巻回し、樹脂を硬化させるというものである。
【0006】
また、ローラに限って言えば、例えば特許文献1において提案されており、この公報に記載されたローラは、従来のそれが、表面のカーボン繊維を固めている樹脂が摩耗し易いものであったり、十分な軽量化が図られていないことを改善するためになされたものであって、
「炭素繊維トウ強化複合材料からなる円筒状物の表面が、内装より溶射のための下地処理層、金属溶射処理層で構成されてなるローラー」
という構成を有したものである。
【0007】
そして、この特許文献1に示された「ローラー」は、「金属溶射処理層の外層が硬質金属メッキ層で被覆処理」されたものともなる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に示された「ローラー」にあっては、その基本的構成が、炭素繊維トウ強化複合材料からなる円筒状物表面に金属を溶射によって被覆するものであり、表面が十分な平滑性を有するものではない。
【0009】
仮りに、溶射金属の表面に硬質金属メッキ層を形成したとしても、下地が溶射によって形成されるものであるから、平滑性が十分になるとは考えにくい。それよりもむしろ、メッキによる表面処理を行うためには、当該物をメッキ液中に浸漬して両者間に通電しなければならないが、その際、導電材料である炭素繊維層があればこれから電気がメッキ液中に逃げてしまうため、被処理表面に電荷が集中しにくくなって効率のよいメッキ表面処理が行えなくなってしまうという問題がある。
【0010】
そこで、本発明者は、この種の回転支持体についてその内部に炭素繊維(カーボン繊維)を使用することは、全体の軽量化及び高強度を確保する上で必要であるが、この層の存在によってメッキ処理が十分行えないことを解消するにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【特許文献1】特開昭61−217566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような経緯に基づいてなされたもので、その解決しようとする課題は、通電によるメッキ処理が確実に行える構造とすることであり、これによって、軽量で高強度を有し、かつ表面の平滑性が十分保たれた回転支持体の製造方法を提供することにある。
【0012】
すなわち、本発明の目的とするところは、表面が金属メッキされるものであって、そのメッキ処理を効率よく行うことができて、軽量で高強度を有し、かつ表面の平滑性が十分保たれた回転支持体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する実施の形態の説明中において使用する符号を付して説明すると、図9にも示すように、
「熱硬化性樹脂を含浸させるかこれによってプリプレグ化したカーボン繊維を、離型される芯金20の表面に貼り付けまたは巻回して、前記熱硬化性樹脂を熱硬化させることによりカーボン繊維層11を形成し、このカーボン繊維層11の上に絶縁性を有するアンカー層15を形成し、このアンカー層15の表面に金属下地層13cを形成し、この金属下地層13cの表面側にハードクロムメッキ層13dを形成するようにしたことを特徴とする巻芯、ドラム、ローラ等の回転支持体10の製造方法」
である。
【0014】
すなわち、この請求項1に係る回転支持体10の製造方法は、まず、その内部の基体部分を、軽量でかつ高強度のカーボン繊維層11を主材として形成するものである。そして、このカーボン繊維層11の上に絶縁性を有するアンカー層15を形成し、このアンカー層15の表面に金属下地層13cを形成し、この金属下地層13cの表面側にハードクロムメッキ層13dを形成して金属層13とするものである。
【0015】
このような回転支持体10のカーボン繊維層11を形成するには、図6に示すようなフィラメントワインディング方法、図7及び図8に示すようなクロス貼り方法あるいはシート巻回方法が採用される。図6に示すフィラメントワインディング方法では、カーボン繊維糸を樹脂槽中に引き込むことにより、カーボン繊維糸に樹脂(熱硬化性のものがよい)を含浸させ、これを芯金20上に巻回していくものである。この場合、カーボン繊維層11の強度を高めるために、図6に示すように、各巻回は交差状態でするのがよい。
【0016】
図7及び図8に示すクロス貼り方法では、カーボン繊維糸によって形成したカーボン繊維クロス(カーボン繊維をクロス状に織り込んだシート)を、これに熱硬化性樹脂を含浸させながら芯金20に所定枚数貼り付けまたは巻回し、これに含浸させた熱硬化性樹脂を加熱することにより、カーボン繊維クロスと熱硬化性樹脂からなる円筒状のカーボン繊維層11が完成される。また、図7及び図8に示すシート巻回方法では、カーボン繊維糸によって形成したカーボン繊維シートに熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレグ化してシートを形成しておき、このシートを芯金20に所定枚数貼り付けまたは巻回するのである。そして、シート中の熱硬化性樹脂を加熱することにより、カーボン繊維シートと熱硬化性樹脂からなる円筒状のカーボン繊維層11が完成される。
【0017】
つまり、カーボン繊維クロスは、芯金20上に対して貼り付けることを基本とするものであるが、芯金20上に対して巻回していってもよいものである。同様に、カーボン繊維シートは、芯金20上に対して巻回することを基本とするものであるが、芯金20上に対して貼り付けていってもよいものである。なお、この段階で筒状のカーボン繊維層11が後の加工工程での力に耐え得るものであれば、芯金20を引き抜けばよい。
【0018】
なお、カーボン繊維クロスまたはカーボン繊維シートを形成するにあたっては、図8にも示すように、二枚のカーボン繊維クロスまたはカーボン繊維シートを、これを構成している各カーボン繊維糸が所定角度(例えば45°)で交差するようにして重ねてバイアス方向に切断し、これを芯金20に貼り付けまたは巻回するようにしてもよい。勿論、これらのカーボン繊維クロスまたはカーボン繊維シートに、上記カーボン繊維糸をさらに追加することもできるものである。
【0019】
いずれにしても、熱硬化性樹脂によって固めたものであるカーボン繊維層11は、その中のカーボン繊維糸、カーボン繊維クロスまたはカーボン繊維シート、あるいはこれらの存在によって、軽量でしかも高い高度を有するものとなっているのである。
【0020】
このカーボン繊維層11が完成すれば、この上に金属下地層13cのためのアンカー層15を形成する。このアンカー層15としては、後に溶射、蒸着あるいはメッキ等による金属下地層13cの形成が行い易くなれば何であってもよいが、最終的に表面にハードクロムメッキ層13dや金属下地層13cを形成すること、及びメッキ処理時における十分な電荷の付与を考えると、後述する請求項3または4に係る回転支持体10の製造方法のように、ガラス繊維やセラミックスとするのが好適である。
【0021】
何故なら、この請求項1の回転支持体10の製造方法は、メッキ処理によって最終的な表面を金属層13とするものであるが、そのメッキ処理を行うには、金属下地層13cの表面に電荷を付与するようにしなければならない。ところが、上述したカーボン繊維糸やカーボン繊維クロスまたはカーボン繊維シートは、導電性のある物質であり、これ等を主材料とするカーボン繊維層11は、これらのカーボン繊維糸やカーボン繊維クロスまたはカーボン繊維シートによる導電性を無くさなければならない。何故なら、カーボン繊維層11が導電性のものであると、メッキ処理の際、金属下地層13c表面に十分な電荷が貯まらないからである。
【0022】
この絶縁性を有するアンカー層15が完成すれば、この上に溶射、蒸着あるいはメッキの手段によって金属下地層13cを形成するのである。そして、この金属下地層13cの表面にハードクロムメッキ層13dを形成して当該回転支持体10は完成するのである。
【0023】
従って、この請求項1に係る回転支持体10の製造方法は、その基体部分を、軽量で高い強度を有したカーボン繊維層11によって形成できて、高速回転や重量物を支えるものとして十分な回転支持体10を製造することができることは勿論のこと、カーボン繊維層11と金属層13との間に絶縁性を有するアンカー層15が存在していることにより、金属層13をメッキによって形成するにあたって金属下地層13cへの電荷の付与を確実に行うことができて、高速回転や重量物を支えるものとして十分な剛性を有する回転支持体10を製造することができる。勿論、当該製造方法によって製造した回転支持体10は軽量であることから、これを回転させるためのモータへの負荷を軽減することができて、電力節減やブレーキ機構の耐久性を高めることもできるのである。
【0024】
そして、この製法によって製造した回転支持体10の最外表面はハードクロムメッキ層13dであるから、例えば印刷用ドラムとした場合には、その耐久性が非常に高くなっているのである。
【0025】
また、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1の回転支持体10の製造方法について、
「金属下地層13cを構成する金属は、鉄、亜鉛、ニッケルのいずれかであること」
である。
【0026】
すなわち、この請求項2に係る回転支持体10の製造方法は、アンカー層15上に金属下地層13cを形成する材料として、鉄、亜鉛、ニッケルのいずれかを採用したものであり、これにより、全体を安価なものにしてかつハードクロムメッキ層13dを形成し易くしているものである。
【0027】
以上の金属によって金属下地層13cを形成するにあたっては、メッキや蒸着が考えられるが、これらを溶射するのが最も効果的であり、短時間内での形成が可能となる。勿論、絶縁性を有するアンカー層15があるから、これを利用して金属下地層13cをメッキ形成することも十分あり得る。
【0028】
従って、この請求項2の回転支持体10の製造方法は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、全体を安価に形成することができ、かつハードクロムメッキ層13dの形成を簡単かつ十分に行うことができる。
【0029】
さらに、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載の回転支持体10の製造方法について、
「アンカー層15は、熱硬化性樹脂を含浸させるかこれによってプリプレグ化したガラス繊維をカーボン繊維層11の表面に貼り付けまたは巻回して、熱硬化性樹脂を熱硬化させることにより形成したこと」
である。
【0030】
すなわち、この請求項3に係る回転支持体10の製造方法は、上記請求項1または請求項2の回転支持体10の製造方法におけるアンカー層15を、絶縁性を有するガラス繊維を熱硬化性樹脂によってカーボン繊維層11上に硬化させて形成したガラス繊維としたものであるが、このガラス繊維の形成は、例えば前記請求項1に係る回転支持体10の製造方法の場合と同様にして行うことができるものである。
【0031】
このように、アンカー層15をガラス繊維によって形成しておけば、このガラス繊維がその上に金属下地層13cを形成するための、文字通りアンカーとなるだけでなく、ハードクロムメッキ層13dのメッキ工程における絶縁性を有するものとしての役目も果たすことになる。つまり、このガラス繊維が、導電性を有するカーボン繊維層11と金属下地層13cとの間を絶縁することになるのであり、ハードクロムメッキ層13dのメッキ処理を効果的に行えるようにするのである。
【0032】
従って、この請求項3の回転支持体10の製造方法は、上記請求項1または2の回転支持体10の製造方法と同様な機能を発揮する他、ハードクロムメッキ層13dの形成を非常に効果的に行えて、表面の硬度を十分なものとするのである。
【0033】
そして、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載の回転支持体10の製造方法について、
「アンカー層15は、カーボン繊維層11の表面にセラミックス層として形成したこと」
である。
【0034】
すなわち、この請求項4に係る回転支持体10の製造方法は、上記請求項1または2の回転支持体10の製造方法におけるアンカー層15をセラミックスによって形成したものである。このセラミックスは、カーボン繊維層11上に対する溶射によって形成されるものである。
【0035】
従って、この請求項4の回転支持体10の製造方法は、カーボン繊維層11と金属下地層13cとの間にセラミックスからなるアンカー層15を介在させるようにしたものであるから、アンカー層15を絶縁性を有するものとすることができる。このため、絶縁性を有するアンカー層15の存在によって、金属下地層13c及びハードクロムメッキ層13dのメッキによる形成を効果的に行えるのであり、結果として、上記請求項1または2に係る回転支持体10の製造方法と同様な機能を有している他、ハードクロムメッキ層13d及び金属下地層13cを強固に形成することができて、表面の硬度を非常に高いものとするのである。
【発明の効果】
【0036】
以上詳述した通り、請求項1〜4に係る発明においては、
「熱硬化性樹脂を含浸させるかこれによってプリプレグ化したカーボン繊維を、離型される芯金20の表面に貼り付けまたは巻回して、前記熱硬化性樹脂を熱硬化させることによりカーボン繊維層11を形成し、このカーボン繊維層11の上に絶縁性を有するアンカー層15を形成し、このアンカー層15の表面に金属下地層13cを形成し、この金属下地層13cの表面側にハードクロムメッキ層13dを形成するようにしたことを特徴とする巻芯、ドラム、ローラ等の回転支持体10の製造方法」
にその主たる特徴があり、これにより、表面が金属メッキされるものであって、軽量で高強度を有し、かつ表面の平滑性が十分保たれた回転支持体の製造方法を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、以上のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した回転支持体10を製造する場合について説明するが、この回転支持体10は、具体的には、印刷原版を支持するためのドラムである。つまり、この回転支持体10は、その最外表面を金属層13とするものである。
【0038】
この回転支持体10は、図1〜図3に示したように、基本的には筒状のものであって、両端開口部は蓋体30によって覆うようにしてある。この蓋体30には、当該回転支持体10が「巻芯」であれば巻取り、巻戻し駆動源(軸)に連結するための切込等が形成されるものであり、「ローラ」として使用されるものであれば、その軸受部分が形成されることになるものである。この回転支持体10は、印刷用のドラムであるから、各蓋体30には内部を減圧するための配管が接続され、この内部の減圧によって当該回転支持体10表面の印刷原版を、回転支持体10に形成した図示しない吸引口からの吸引によって保持するようにするものである。
【0039】
つまり、印刷原版を保持して回転させる回転支持体10は、図1及び図2に示したように、その表面の半径方向には複数の周溝16aが、また軸芯方向にも複数の軸溝16bが形成してあるものであり、これらの周溝16a及び軸溝16bによって印刷原版の表面への吸着が行えるようにしてある。
【0040】
さて、この回転支持体10の拡大断面を見てみると、図5に示すようになっていて、一番内側にカーボン繊維層11、その上にガラス繊維またはセラミックスからなる、つまり絶縁性を有するアンカー層15、そしてこのアンカー層15の上に、金属下地層13c及びハードクロムメッキ層13dとからなる金属層13を形成したものとなっている。
【0041】
カーボン繊維層11を形成するには、図6に示したようなフィラメントワインディング方法、図7及び図8に示したようなクロス貼り方法あるいはシート巻回方法が採用される。図6に示すフィラメントワインディング方法では、カーボン繊維糸を樹脂槽中に引き込むことにより、カーボン繊維糸に樹脂(熱硬化性のものがよい)を含浸させ、これを芯金20上に貼り付けまたは巻回していくものである。この場合、カーボン繊維層11の強度を高めるために、図6に示すように、各貼り付けまたは巻回は交差状態でするのがよい。
【0042】
図7及び図8に示すクロス貼り方法では、カーボン繊維糸によって形成したカーボン繊維クロス(カーボン繊維をクロス状に織り込んだシート)を、これに熱硬化性樹脂を含浸させながら芯金20に所定枚数貼り付けまたは巻回し、これに含浸させた熱硬化性樹脂を加熱することにより、カーボン繊維クロスと熱硬化性樹脂からなる円筒状のカーボン繊維層11が完成される。また、図7及び図8に示すシート巻回方法では、カーボン繊維糸によって形成したカーボン繊維シートに熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレグ化してシートを形成しておき、このシートを芯金20に所定枚数貼り付けまたは巻回するのである。そして、シート中の熱硬化性樹脂を加熱することにより、カーボン繊維シートと熱硬化性樹脂からなる円筒状のカーボン繊維層11が完成される。なお、この段階で、芯金20は引き抜かれる。
【0043】
絶縁性を有するアンカー層15は、カーボン繊維層11上への金属下地層13cを形成するにあたって、この金属下地層13cを構成している金属がカーボン繊維層11上に十分乗るようにするものである。勿論、このアンカー層15として、前述したガラス繊維またはセラミックスがそのまま利用される。
【0044】
このアンカー層15の上には、溶射によってまず金属下地層13cが形成されるが、この金属下地層13cの形成は他の手段によってもよいものである。本実施形態の回転支持体10では、この金属下地層13cを形成した段階で、図1〜図4に示したような周溝16a及び軸溝16bが研削等の手段により形成されるものであり、これらの周溝16a及び軸溝16bはアンカー層15を突き抜けないように、つまりアンカー層15を全周に残留する状態で形成される。また、各軸溝16b及びアンカー層15の所定位置に空気吸引のための小孔が穿孔される。
【0045】
以上の周溝16a及び軸溝16bが完成すれば、金属下地層13cの表面処理を行うのであるが、この表面処理は、導電性を有するカーボン繊維層11と、金属下地層13cとの間が、ガラス繊維またはセラミックスからなるアンカー層15により絶縁されているため、確実かつ十分になされることになる。
【0046】
なお、この回転支持体10のように、周溝16a及び軸溝16bを形成した場合には、これらによって囲まれた金属下地層13cは、電気的に独立したものとなるから、1つの電源接点では全体のメッキ処理等の表面処理が行えなくなる。そこで、各周溝16a及び軸溝16b間に導電材料を嵌め込むことにより、金属下地層13cの全表面に導通が取れるようにしておき、1つの電源接点によるメッキ処理等の表面処理を行うとよい。
【0047】
金属下地層13cを構成する金属材料として、鉄、亜鉛、あるいはニッケルを使用することがあるが、これらは前述したアンカー層15に対して溶射される。そして、この鉄、亜鉛あるいはニッケルからなる金属下地層13c上に対してはハードクロムメッキ層13dが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る回転支持体の一例であるドラムの正面図である。
【図2】同回転支持体の縦断面図である。
【図3】同回転支持体の側面図である。
【図4】図1中の1−1線に沿ってみた回転支持体の断面図である。
【図5】本発明に係る製造方法によって製造した回転支持体の部分拡大断面図である。
【図6】カーボン繊維糸を使用してカーボン繊維層を形成する状態を示す模式図である。
【図7】カーボン繊維クロスまたはカーボン繊維シートを使用してカーボン繊維層を形成する状態を示す模式図である。
【図8】カーボン繊維クロスまたはカーボン繊維シートの組み合わせ方の他の例を示す模式図である。
【図9】芯金上にカーボン繊維層を形成してから最外表面にメッキ処理層またはメッキ層を形成する各段階を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
10 回転支持体
11 カーボン繊維層
13 金属層
13c 金属下地層
13d ハードクロムメッキ層
15 アンカー層
16a 周溝
16b 軸溝
20 芯金
30 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を含浸させるかこれによってプリプレグ化したカーボン繊維を、離型される芯金の表面に貼り付けまたは巻回して、前記熱硬化性樹脂を熱硬化させることによりカーボン繊維層を形成し、このカーボン繊維層の上に絶縁性を有するアンカー層を形成し、このアンカー層の表面に金属下地層を形成し、この金属下地層の表面側にハードクロムメッキ層を形成するようにしたことを特徴とする巻芯、ドラム、ローラ等の回転支持体の製造方法。
【請求項2】
前記金属下地層を構成する金属は、鉄、亜鉛、ニッケルのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の巻芯、ドラム、ローラ等の回転支持体の製造方法。
【請求項3】
前記アンカー層は、熱硬化性樹脂を含浸させるかこれによってプリプレグ化したガラス繊維を前記カーボン繊維層の表面に貼り付けまたは巻回して、前記熱硬化性樹脂を熱硬化させることにより形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻芯、ドラム、ローラ等の回転支持体の製造方法。
【請求項4】
前記アンカー層は、前記カーボン繊維層の表面にセラミックス層として形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻芯、ドラム、ローラ等の回転支持体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−37658(P2008−37658A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253701(P2007−253701)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【分割の表示】特願2002−128769(P2002−128769)の分割
【原出願日】平成14年4月30日(2002.4.30)
【出願人】(000003517)天龍工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】