説明

布粘着テープ及びその製造方法

【課題】揮発性物質の揮発によりホットメルト型粘着剤層中に均一に分散した多数の独立気泡が形成された発泡粘着剤層を有する布粘着テープとその製造方法を提供すること。
【解決手段】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープであって、裏打ち材の合成樹脂層または織布面上に設けた第二の合成樹脂層が、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された合成樹脂層であり、かつ、該ホットメルト型粘着剤層が、揮発性物質の揮発により形成された多数の独立気泡を含有する発泡粘着剤層である布粘着テープ、並びにその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布粘着テープとその製造方法に関し、さらに詳しくは、水などの揮発性物質の揮発によって生じた多数の独立気泡を含有する粘着剤層を有する布粘着テープとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布粘着テープは、織布からなる支持体上に粘着剤層を設けた基本的な層構成を有する粘着テープである。従来、様々な種類の布粘着テープが製造され市販されているが、その代表的なものは、織布からなる支持体の背面(粘着剤層とは反対側の面)に、裏打ち材としてポリエチレンなどの合成樹脂層を設けたものを基材とし、かつ、その織布面上にホットメルト型粘着剤層を塗工した層構成を有するものである。合成樹脂層の背面(織布とは反対側の面)には、一般に、剥離剤が塗布されており、この剥離剤層によって、ロール状に巻回した布粘着テープを巻き戻して使用する際に、粘着剤層が合成樹脂層の背面に強く粘着して巻き戻しが困難となるのを防いでいる。
【0003】
布粘着テープは、強度、耐熱性、常温での粘着性、その他の特性に優れているため、封緘用、包装用、保持用などの梱包用粘着テープとして汎用されている。この他、布粘着テープは、各種工業用粘着テープとして用いられている。
【0004】
布粘着テープ用粘着剤としては、一般に、ゴム系ホットメルト型粘着剤が用いられている。ゴム系ホットメルト型粘着剤は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)などの熱可塑性エラストマーやその他のゴムをゴム基剤として含有する粘着剤であるため、布粘着テープの粘着剤層が、低温条件下では硬くなり、初期粘着力が低くなることに加えて、段ボール紙などの粗面に対する粘着性が低下する。他方、常温またはそれ以上の高温条件下では、粘着剤層の被着体表面に対する粘着力が高くなる傾向にあり、貼り損じたときに引き剥がそうとすると、被着体表面を損傷したり、被着体を変形したりする。
【0005】
布用粘着テープは、粘着剤層が織布に浸み込むため、ホットメルト型粘着剤の使用量が多くなる。また、布粘着テープの粗面に対する粘着性を高めるために、その粘着剤層の厚みを大きくする必要がある。このため、ホットメルト型粘着剤のコストが嵩むことになる。
【0006】
布粘着テープの粘着剤層を発泡させて、粘着剤層中に多数の独立気泡を含有させることができれば、低温条件下で粘着力の低下を抑制し、被着体の粗面に対する粘着力を高め、かつ、常温での粘着力を調整できることが期待される。粘着剤層を発泡させれば、粘着剤層の厚みを大きくすることができるため、ホットメルト型粘着剤の使用量を低減することができる。
【0007】
一般に、粘着テープの技術分野において、粘着剤層中に多数の独立気泡を形成させる方法としては、加熱分解型発泡剤を用いて粘着剤層中に多数の微細な独立気泡を形成させる方法(以下、「化学発泡法」と略記する);並びに、基材に付与した水などの揮発性物質を加熱により揮発させ、粘着剤層中でガス化させて膨張させることにより、粘着剤層中に多数の独立気泡を形成させる方法(以下、「揮発発泡法」と略記する)とが代表的なものである。
【0008】
化学発泡法としては、例えば、特開平6−17015号公報(特許文献1)には、ホットメルト接着剤中に、ホットメルト接着剤の混合や塗布条件下では分解しない熱分解型発泡剤(例えば、アゾジカルボンアミド)を混入し、次いで、混合物を基材上にホットメルトコーティングした後、加熱により熱分解型発泡剤を分解させて発泡する感圧ホットメルト接着被覆テープが開示されている。
【0009】
このような化学発泡法を利用して、布粘着テープの粘着剤層を発泡させることができる。しかし、化学発泡法は、(1)ホットメルト型粘着剤と熱分解型発泡剤との均一な混合やホットメルト型粘着剤の塗工などにおける温度条件が制限されるなど、製造条件の制御が困難である、(2)熱分解型発泡剤が高価である、(3)熱分解型発泡剤がホットメルト型粘着剤層の表面にも多数存在するため、加熱発泡させると、粘着剤層の表面に気泡の破裂が観察されることが多く、それによって、布粘着テープの外観が損なわれるだけではなく、有効粘着面積が少なくなって、粘着力が低下しやすい、などの問題がある。
【0010】
揮発発泡法としては、例えば、特公平2−29705号公報(特許文献2)には、液体吸収性基材と熱可塑性合成ゴムを主成分とする感圧接着層とを備えた感圧接着テープを調製し、次いで、液体吸収性基材中に揮散性物質を供給し、しかる後、加熱によって該揮散性物質を接着剤層中に浸透させ、かつ、ガス化により膨張させて、無数の微小独立気泡を形成する感圧接着テープの製造方法が開示されている。特許文献2の実施例には、クラフト紙の表面に熱可塑性合成ゴムを基剤とする感圧接着剤を塗工して、クラフト接着テープを調製し、次いで、該テープを40℃及び相対湿度90%の雰囲気中に24時間保存して、クラフト紙に約8重量%の湿分を含有させ、しかる後、該クラフト接着テープを120℃で3分間加熱して、該接着層中に無数の独立気泡を形成させた実験例が示されている。
【0011】
特公平6−4827号公報(特許文献3)には、気化性物質を含む多孔性基材の片面に、該揮発性物質よりも5℃以上高い軟化点を有する皮膜層を設けると共に、他面に接着層を設け、次いで、加熱して、該接着層内に無数の独立気泡を形成させる接着テープの製造方法が開示されている。特許文献3には、多孔性基材として、紙、織布、不織布、フェルト、多孔性プラスチックフィルムなどが例示されているが、その実施例には、多孔性基材としてクラフト紙を用いた実験例が示されているだけである。
【0012】
特開平10−140107号公報(特許文献4)には、テープ基材の片面に揮散性物質を付与する工程;揮散性物質が付与された面に粘着剤を塗工する工程;及び揮散性物質をガス化することにより、粘着剤層中に無数の独立気泡を含有させる工程;を含む粘着テープの製造方法が開示されている。特許文献4には、テープ基材として、プラスチックフィルム、それぞれの背面を合成樹脂でマスクした不織布、紙、クラフト紙または織布が例示されている。特許文献4には、ポリエチレンを押出ラミネートした織布に水を塗布し、水塗布面にホットメルト粘着剤を塗布して粘着テープを調製し、次いで、該粘着テープを120℃で3分間加熱して、粘着剤層中に無数の独立気泡を含有する布粘着テープを製造した実施例が示されている。
【0013】
特開平11−61057号公報(特許文献5)には、水を含浸したクラフト基材に、ホットメルト型粘着剤を塗布し、加熱する間に、クラフト基材中に含浸させた水をホットメルト型粘着剤層に移行させ、該ホットメルト型粘着剤層に多数の微細な気泡を形成させる粘着テープの製造方法において、ロール面に噴霧した微細な水滴をクラフト基材に転写塗布することを特徴とする粘着テープの製造方法が開示されている。
【0014】
前述したとおり、各種特許文献には、水などの揮発性物質の揮発発泡法は、クラフト粘着テープや布粘着テープなどを含む広汎な種類の基材を有する各種粘着テープに適用できることが示されている。しかし、本発明者らの検討結果によれば、布粘着テープの支持体の織布がスフ糸などの吸水性のある糸を用いて作製されたものである場合には、水を付与しても、裏打ち材のポリエチレン層が水をはじくため、織布の糸の部分にしか水を吸着させることができない。織布の網目部分は、水を吸着することができない。このため、加熱により水を揮発させて、粘着剤層中でガス化させても、粘着剤層の発泡が不充分となる。しかも、基材面での水の分布が不均一であるため、粘着剤層の発泡が不均一となり、満足できる粘着特性を有する布粘着テープを得ることが極めて困難である。
【0015】
さらに、基材に水を付与した布粘着テープの粘着剤層を加熱により発泡させるには、特許文献4の実施例に開示されているように、布粘着テープを120℃で3分間という比較的長時間加熱することが必要となるため、裏打ち材のポリエチレン層が軟化して、ポリエチレン層が発泡したり、均一な厚みの製品を製造したりすることが困難である。前記温度での加熱時間を短くすると、粘着剤層が発泡し難い。加熱温度を上げて加熱時間を短縮すると、水の揮発による粘着剤層の発泡が極めて不充分となるか、まったく発泡しなくなる。基材への水の付与量を多くすると、織布に吸収される水分量が多くなりすぎて、織布とポリエチレン層との層間剥離や粘着剤層の基材からの剥離などの問題を生じる。
【0016】
他方、吸水性のない糸やフィラメントを用いて作製した織布を支持体として用いると、裏打ち部材のポリエチレン層はもとより、織布の糸の部分でも水を吸着することができないため、粘着剤の発泡がさらに困難になる。
【0017】
これに対して、クラフト紙は、水などの揮発性物質を均一に吸着することができるため、クラフト紙を基材とする粘着テープに揮発発泡法を適用することは比較的容易である。このため、揮発発泡法を適用した粘着テープは、実際には、クラフト粘着テープに限定されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平6−17015号公報
【特許文献2】特公平2−29705号公報
【特許文献3】特公平6−4827号公報
【特許文献4】特開平10−140107号公報
【特許文献5】特開平11−61057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、揮発性物質の揮発によりホットメルト型粘着剤層中に均一に分散した多数の独立気泡が形成された発泡粘着剤層を有する布粘着テープとその製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明者らは、前記の如き従来技術の問題点を克服すべく鋭意研究を行った結果、布粘着テープの基材の裏打ち材として用いられているポリエチレン層などの合成樹脂層に、炭酸カルシウムなどの多孔質充填剤を特定の割合で含有させることにより、水などの揮発性物質を基材の織布面側に均一に付与することができることを見出した。該揮発性物質を付与した織布面側にホットメルト型粘着剤層を設けた粘着テープを作製し、次いで、該粘着テープを加熱することによって、該揮発性物質が揮発し、ホットメルト型粘着剤層中でガス化し膨張して、均一な多数の独立気泡を形成させることができる。
【0021】
本発明の他の態様として、織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、多孔質充填剤を特定割合で含有する第二の合成樹脂層を設けて、該第二の合成樹脂層の表面に水などの揮発性物質を均一に付与し、更にその上にホットメルト型粘着剤層を設けた布粘着テープを作製し、次いで、該粘着テープを加熱することによって、該揮発性物質が揮発し、ホットメルト型粘着剤層中でガス化し膨張して、均一な多数の独立気泡を形成させた布粘着テープとその製造方法がある。
【0022】
本発明のさらなる他の態様として、裏打ち材の合成樹脂層の織布面側の表面に親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した合成樹脂層を配置した基材、または該織布面側の上から親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した基材を用いた布粘着テープとその製造方法がある。
【0023】
揮発性物質として水を用いることが好ましく、この場合、該粘着テープを比較的高温で極めて短時間加熱することによって、該水が揮発し、ホットメルト型粘着剤層中でガス化し膨張して、均一な多数の独立気泡を形成することができる。このような加熱処理条件を採用することによって、裏打ち材のポリエチレン層などの合成樹脂層または第二の合成樹脂層の軟化や発泡を防ぐことができる。このため、合成樹脂層の形成に、揮発性物質の沸点より高い軟化温度を有する合成樹脂を使用することは必ずしも必要ではない。本発明の布粘着テープの発泡粘着剤層の表面は、気泡の破裂による破泡の発生が若干観測される程度である。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明によれば、以下の布粘着テープとそれらの製造方法が提供される。
【0025】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープであって、
該合成樹脂層が、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された合成樹脂層であり、かつ、
該ホットメルト型粘着剤層が、揮発性物質の揮発により形成された多数の独立気泡を含有する発泡粘着剤層である
ことを特徴とする布粘着テープ。
【0026】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープであって、
該織布の片面に第一の合成樹脂層が裏打ち材として配置されると共に、該織布の他面に接して第二の合成樹脂層が設けられており、
該第二の合成樹脂層は、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された合成樹脂層であり、
該ホットメルト型粘着剤層が、該第二の合成樹脂層に接して設けられており、かつ、
該ホットメルト型粘着剤層が、揮発性物質の揮発により形成された多数の独立気泡を含有する発泡粘着剤層である
ことを特徴とする布粘着テープ。
【0027】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープであって、
該合成樹脂層が、その織布面側の表面に親水性ポリマーを含有する塗工液の塗布層を形成したものであるか、または該基材が、その織布面側の上から親水性ポリマーを含有する塗工液の塗布層を形成したものであり、かつ、
該ホットメルト型粘着剤層が、揮発性物質の揮発により形成された多数の独立気泡を含有する発泡粘着剤層である
ことを特徴とする布粘着テープ。
【0028】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープの製造方法であって、
該織布の片面に、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材を準備する工程1;
該基材の織布面側に揮発性物質を付与する工程2;
該基材の揮発性物質を付与した織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤を塗工して、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープを形成する工程3;並びに、
該布粘着テープを加熱して、該揮発性物質を揮発させ、該ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を形成する工程4;
の各工程を含む布粘着テープの製造方法。
【0029】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープの製造方法であって、
該織布の片面に第一の合成樹脂層が裏打ち材として配置されると共に、該織布の他面に接して、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された第二の合成樹脂層が配置された層構成を有する基材を準備する工程I;
該基材の第二の合成樹脂層面の上に揮発性物質を付与する工程II;
該揮発性物質を付与した第二の合成樹脂層面の上に、ホットメルト型粘着剤を塗工して、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープを形成する工程III;並びに、
該布粘着テープを加熱して、該揮発性物質を揮発させ、該ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を形成する工程IV;
の各工程を含む布粘着テープの製造方法。
【0030】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープの製造方法であって、
該合成樹脂層の織布面側の表面に親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した合成樹脂層を用いた基材、または該織布面側の上から親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した基材を準備する工程i;
該基材の織布面側に揮発性物質を付与する工程ii;
該基材の揮発性物質を付与した織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤を塗工して、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープを形成する工程iii;並びに、
該布粘着テープを加熱して、該揮発性物質を揮発させ、該ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を形成する工程iv;
の各工程を含む布粘着テープの製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、布粘着テープの支持体の織布がポリエステル糸などの吸水性のない糸を用いて作製されたものであっても、裏打ち材の合成樹脂層の表面に均一に水などの揮発性物質を付与することができるため、揮発性物質の偏在がなく、加熱発泡させると、均一に分散した多数の独立気泡を粘着剤層中に形成することができる。織布面側に第二の合成樹脂層を設けた場合も、該第二の合成樹脂層の表面に均一に水などの揮発性物質を付与することができるため、揮発性物質の偏在がなく、加熱発泡させると、均一に分散した多数の独立気泡を粘着剤層中に形成することができる。
【0032】
本発明の布粘着テープは、低温での粘着性や被着体の粗面に対する粘着性が良好であり、常温での粘着力が抑制されている。本発明の布粘着テープは、熱分解型発泡剤を使用することがなく、また、粘着剤の使用量を減らしても粘着剤層の厚みを大きくすることができるため、コストパフォーマンスに優れている。
【0033】
本発明の製造方法によれば、発泡粘着剤層の表面に気泡の破裂による破泡が若干観察される程度であり、比較的均一な厚みを有する発泡粘着剤層を形成することができる。本発明の製造方法において、揮発性物質として水を用いた場合には、比較的高温で極めて短時間加熱する発泡条件を採用することにより、水を揮発させ、粘着剤層中でガス化し膨張させて多数の独立気泡を形成させることができる。このため、裏打ち材の合成樹脂層や第二の合成樹脂層を軟化させたり、発泡させたりするのを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の布粘着テープの層構成の一例を示す断面略図である。
【図2】図2は、本発明の布粘着テープの他の層構成の一例を示す断面略図である。
【図3】図3は、本発明の布粘着テープの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の布粘着テープの第一の態様は、織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を持つ基材の織布面側の上に直接ホットメルト型粘着剤層が設けられた層構成を有し、該ホットメルト型粘着剤層が揮発性物質の揮発により生じた多数の独立気泡を含有するものである。裏打ち材の合成樹脂層は、多孔質充填剤を含有するものである。
【0036】
本発明の布粘着テープの第二の態様は、織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を持つ基材の織布面側の上に第二の合成樹脂層を介してホットメルト型粘着剤層が設けられた層構成を有し、該ホットメルト型粘着剤層が揮発性物質の揮発により生じた多数の独立気泡を含有するものである。第二の合成樹脂層は、多孔質充填剤を含有するものである。第二の態様では、裏打ち材の合成樹脂層は、多孔質充填剤を含有する必要はないが、所望により任意量の多孔質充填剤を含有するものであってもよい。
【0037】
本発明の布粘着テープの第三の態様は、裏打ち材の合成樹脂層の織布面側の表面に親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した合成樹脂層を配置した基材、または該織布面側の上から親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した基材を用いた布粘着テープである。基材の織布側の面上に設けたホットメルト型粘着剤層は、揮発性物質の揮発により生じた多数の独立気泡を含有するものである。第三の態様では、裏打ち材の合成樹脂層は、多孔質充填剤を含有する必要はないが、所望により任意量の多孔質充填剤を含有するものであってもよい。
【0038】
支持体の織布としては、布粘着テープの技術分野で用いられている各種織布を用いることができる。織布の具体例としては、例えば、スフ糸(レーヨンのステープル・ファイバー)の織布(例えば、細番手の平織り;「モスリン」ということがある)、強力人絹布、ナイロン布、ポリエステル布、ポリオレフィン布、アセテート布、ガラス布などが挙げられる。糸は、モノフィラメントやマルチフィラメントであってもよい。これらの中でも、吸水性または親水性を有する点で、スフ糸の織布が好ましいが、これに限定されない。
【0039】
裏打ち材の合成樹脂層を形成するのに用いる合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル;アクリル樹脂;などが挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、安価で、かつ、溶融押出により織布の片面にラミネートすることができるポリエチレンが好ましい。
【0040】
ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体、及びエチレンとα−オレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン)との共重合体が挙げられる。ポリエチレンには、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンなどがあるが、これらの中でも、高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンが好ましい。
【0041】
高密度ポリエチレンは、ASTM D792に従って測定した密度が0.942〜0.970g/cmで、ASTM D1236に従って190℃で測定したメルトフローレイト(MFR)が通常0.1〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分であり、示差走査熱量計により測定した融点が通常120〜140℃、好ましくは123〜135℃である。
【0042】
低密度ポリエチレンは、ASTM D792に従って測定した密度が0.915〜0.925g/cmで、ASTM D1236に従って190℃で測定したメルトフローレイト(MFR)が通常0.05〜50g/10分、好ましくは0.1〜30g/10分であり、示差走査熱量計により測定した融点が通常100〜115℃、好ましくは105〜110℃である。
【0043】
ポリエチレン層などの合成樹脂層は、溶融押出ラミネーション、ドライラミネーションなどにより、織布に積層されるが、これらの中でも、溶融押出ラミネーションが好ましい。本発明の第一及び第三の態様では、裏打ち材を形成するポリエチレン層などの合成樹脂層の厚みは、通常20〜100μm、好ましくは40〜80μmの範囲内である。本発明の第二の態様では、裏打ち材を形成するポリエチレンなどの合成樹脂層の厚みは、通常10〜50μm、好ましくは20〜40μの範囲内である。裏打ち材の合成樹脂層の厚みが薄すぎると、加熱発泡時に軟化や変形を生じたり、水などの揮発性物質が裏打ち材を通して揮散しやすくなったりする。裏打ち材の合成樹脂層の厚みが厚すぎると、布粘着テープの柔軟性、耐熱性、耐寒性などが低下傾向にある。
【0044】
本発明の第一の態様では、裏打ち材の合成樹脂層中に多孔質充填剤を含有させる。本発明の第二の態様では、第二の合成樹脂層の中に多孔質充填剤を含有させる。第二の合成樹脂層は、裏打ち材に使用するのと同種のポリエチレンなどの合成樹脂を用いて形成することができる。
【0045】
第二の合成樹脂層の厚みは、通常5〜60μm、好ましくは10〜50μm、より好ましくは20〜40μmの範囲内である。第二の合成樹脂層の厚みが薄すぎると、加熱発泡時に軟化や変形を生じたり、水などの揮発性物質が第二の合成樹脂層を通して基材側に揮散しやすくなったりする。第二の合成樹脂層は、溶融押出ラミネーション、ドライラミネーションなどにより織布面上に積層することができるが、これらの中でも、押出ラミネーションにより形成する方法が好ましい。
【0046】
多孔質充填剤とは、充填剤の真比重に比べて見掛け比重が小さく、その内部に多孔質構造を有する無機粒子を意味する。多孔質充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウムや軽・膠質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム;天然シリカや合成シリカなどのシリカ;カオリン、クレーなどのカオリナイトを主成分とする粘度鉱物;タルク;などが挙げられる。これらの多孔質充填剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの多孔質充填剤の中でも、炭酸カルシウムが好ましい。
【0047】
裏打ち材の合成樹脂層または第二の合成樹脂層中に含まれる多孔質充填剤の量比は、合成樹脂100重量部に対して、30〜300重量部、好ましくは40〜250重量部、より好ましくは50〜200重量部、特に好ましくは60〜150重量部の範囲内である。多孔質充填剤の含有割合が小さすぎると、合成樹脂層の表面に水などの揮発性物質を均一に付与することができなくなり、均一な発泡が困難または不可能となる。多孔質充填剤の含有割合が大きすぎると、織布に対する密着性が低下したり、水などの揮発性物質の加熱発泡時に、揮発性物質が合成樹脂層を通して揮散しやすくなり、所望の厚みを有する発泡粘着剤層を形成することが困難になったりする。
【0048】
裏打ち材として使用する合成樹脂層及び/または第二の合成樹脂層には、ホットメルト型粘着剤層との密着性(投錨性)を高めるために、スチレン系エラストマーを含有させることができる。本発明の第一の態様の布粘着テープでは、裏打ち材の合成樹脂層とホットメルト型粘着剤層との間に存在する織布に該粘着剤層が浸み込むため、該粘着剤層の投錨性は良好であるが、スチレン系エラストマーを含有させることにより、投錨性をさらに向上させることができる。本発明の第二の態様の布粘着テープでは、第二の合成樹脂層にスチレン系エラストマーを含有させることが、ホットメルト型粘着剤層の投錨性を高める上で好ましい。
【0049】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、水添スチレンブタジエン共重合体(HSBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられるが、これらの中でも、HSBRが好ましい。
【0050】
合成樹脂層にスチレン系エラストマーを含有させる場合には、スチレン系エラストマーを、合成樹脂100重量部に対して、通常1〜40重量部、好ましくは3〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部の割合で使用する。スチレン系エラストマーの含有割合が小さすぎると、投錨性の向上効果が小さくなり、大きすぎると、投錨性の向上効果が飽和する上、経済的ではない。
【0051】
裏打ち材として使用する合成樹脂層及び/または第二の合成樹脂層は、水などの揮発性物質との親和性を高めるために、コロナ処理やプラズマ処理を行うことができる。合成樹脂層中に含まれる炭酸カルシウムなどの多孔質充填剤の配合割合が50重量部未満、さらには40重量部未満と比較的小さい場合には、その表面の親水性が不充分となることがある。このため、揮発性物質として水を用いる場合には、合成樹脂層の表面に均一に塗布されない虞がある。コロナ処理やプラズマ処理を行うことにより、合成樹脂層の表面張力を少なくとも35または40dyn/cm以上、好ましくは35〜50dyn/cmの範囲内に調整することが好ましい。
【0052】
裏打ち材として使用する合成樹脂層及び/または第二の合成樹脂層は、多孔質充填剤を含有させることに加えて、その表面に親水性ポリマー(吸水性ポリマーを含む)を含有する塗工液の塗布層を設けて、揮発性物質として使用する水との親和性を高めることができる。親水性ポリマーの種類と塗布量については、後記のように、本発明の布粘着テープの第三の態様に関連して説明する。
【0053】
裏打ち材の合成樹脂層の背面(織布とは反対側の面)には、剥離剤層を設けることが好ましい。剥離剤層を設けることにより、ロール状に巻回した布粘着テープを巻き戻して使用する際に、粘着剤層が裏打ち材の合成樹脂層の背面に強く粘着して巻き戻しが困難となるのを防ぐことができる。
【0054】
剥離剤としては、例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素含有ポリマー系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤などが挙げられる。これらの中でも、長鎖アルキル系剥離剤が好ましい。剥離剤は、裏打ち材の合成樹脂層の背面に塗工するが、その塗布量は、通常0.1〜3.0g/m、好ましくは0.5〜1.5g/mの範囲内である。
【0055】
本発明の布粘着テープの第三の態様では、裏打ち材の合成樹脂層の織布面側の表面に親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した合成樹脂層を配置した基材、または該織布面側の上から親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した基材を使用する。この第三の態様では、裏打ち材の合成樹脂層中に多孔質充填剤を含有させる必要はないが、所望により含有させてもよい。
【0056】
親水性ポリマー(吸水性ポリマーを含む)としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリアルキレンオキサイドなどが挙げられる。親水性ポリマーは、例えば、その水溶液を塗工液として使用し、裏打ち材の合成樹脂層の織布面側の表面または織布面側の上から塗布する。その塗布量は、通常5〜100g/m、好ましくは10〜50g/mの範囲内である。前記の多孔質充填剤を含有する合成樹脂層(裏打ち材の合成樹脂層または第二の合成樹脂層)の表面に親水性ポリマーの塗工液を塗布する場合も、その塗布量を前記と同じ範囲内に調整することが望ましい。
【0057】
揮発性物質としては、水、水溶液(例えば、界面活性剤を含有する水溶液)、水分散液などの水系揮発性物質;アルコール、メチルエチルケトン、トルエンなどの揮発性溶剤;などを挙げることができる。これらの中でも、水は、粘着剤層中に微細な多数の独立気泡を形成しやすいこと、揮散による環境汚染の問題がないことから、特に好ましい。
【0058】
揮発性物質を付与する方法としては、例えば、噴霧、散布、塗布(ロールやブレード、刷毛などを用いた塗布)、浸漬、高湿環境下での吸湿、転写(例えば、水を噴霧したロール表面との接触による水の転写)などが挙げられる。これらの中でも、噴霧や塗布による方法が簡便かつ投与量(塗布量)を精密に調整できるため好ましい。
【0059】
揮発性物質の付与量(塗布量)は、通常1〜20ml/m、好ましくは2〜15ml/m、より好ましくは3〜10ml/mの範囲内である。揮発性物質の付与量は、所望の発泡の度合い、粘着剤層の厚み、所望の粘着特性などによって変動させることができる。揮発性物質の付与量が少なすぎると、十分な発泡が生じ難く、多すぎると、織布の糸に過剰に浸み込んで、裏打ち材の合成樹脂層との層間剥離などの問題を生じやすい。
【0060】
ホットメルト型粘着剤としては、ゴム系ホットメルト型粘着剤が好ましい。ゴム系ホットメルト型粘着剤は、エラストマー基剤と粘着付与剤とを含有し、必要に応じて、充填剤、軟化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、老化防止剤などの各種添加剤を配合したものである。
【0061】
エラストマーとしては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)などのスチレン系熱可塑性エラストマー;天然ゴム;ブチルゴム、イソブチレンゴム、イソプレンゴムなどの合成ゴム;これらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの中でも、スチレン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーと他のゴムとのブレンドゴムが好ましく、SISがより好ましい。
【0062】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、日本ゼオン社製クインタック(登録商標)、シェルケミカル社製クレイトン(登録商標)、カリフレックス TR(登録商標)、JSR社製JSR SIS(登録商標)、JSR TR(登録商標)、旭化成工業社製タフプレン(登録商標)、日本エラストマー社製ソルプレン−T(登録商標)、電気化学工業社製デンカSTR(登録商標)などが市販されている。
【0063】
粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などの天然物及びその誘導体、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂などの合成樹脂を挙げることができる。石油樹脂は、合成石油樹脂(C)系と合成石油樹脂(C)系に分類することもできる。
【0064】
ロジン系樹脂としては、例えば、ポリペールレジン、ステベライトレジン、フォーラルAX、ペンタリンA、ペンタリンH(以上、理化ハーキュレス社製、登録商標)、エステルガムA、エステルガムH(以上、荒川化学社製)、ハリエスターT(播磨化成社製、登録商標)などが挙げられる。ロジンフェノール樹脂としては、例えば、スミライトレジンPR12603(住友デュレズ社製、登録商標)、タマノル803(荒川化学社製、登録商標)などが挙げられる。
【0065】
テルペン系樹脂としては、例えば、YSレジンPx、YSレジンTO、YSポリスターT〔以上、ヤスハラケミカル(株)製、登録商標〕、ピコライト A(Hercules社製、登録商標)、Schenectady SP566(Schenectady社製、登録商標)などが挙げられる。
【0066】
脂肪族系石油樹脂としては、例えば、Piccopale(Hercules社製、登録商標)、エスコレッツ(エッソ化学社製、登録商標)、Wing Tack(Goodyear社製、登録商標)、ハイレッツ(三井石油化学社製、登録商標)、クイントン(日本ゼオン社製、登録商標)、マルカレッツ(丸善石油化学社製、登録商標)、コーポレックス(東邦石油樹脂社製、登録商標)などが挙げられる。
【0067】
脂環族系石油樹脂としては、例えば、アルコンP、アルコンM(以上、荒川化学社製、登録商標)等が挙げられる。芳香族系石油樹脂としては、例えば、ペトロジン(三井石油化学社製)、ハイレジン(東邦石油樹脂社製)などが挙げられる。クマロンインデン樹脂としては、例えば、クマロンNG〔新日鉄化学(株)製〕などが挙げられる。
【0068】
スチレン系樹脂としては、例えば、Piccolastic A(Hercules社製)などが挙げられる。フェノール樹脂としては、例えば、ヒタノール(日立化成社製)、タッキロール(住友化学社製)、レジトップ(群栄化学工業社製)等が挙げられる。キシレン樹脂としては、例えば、ニカノール(三菱瓦斯化学社製)などが挙げられる。
【0069】
これらの粘着付与剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。粘着付与剤の配合割合は、エラストマー100重量部に対して、通常、10〜150重量部、好ましくは30〜140重量部、より好ましくは50〜130重量部である。粘着付与剤を配合することにより、粘着剤成分に常温での自着力と粘着力を付与することができる。
【0070】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、亜鉛華(酸化亜鉛)、シリカ、けい酸アルミニウム、タルク、けい藻土、けい砂、軽石粉、スレート粉、雲母粉、アスベスト、アルミニウムゾル、アルミナホワイト、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、リトポン、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、単結晶チタン酸カリ、カーボン繊維、活性亜鉛華、炭酸亜鉛、酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、リサージ、鉛丹、鉛白、水酸化カルシウム、活性化水酸化カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0071】
これらの充填剤の中でも、炭酸カルシウム、亜鉛華、シリカ、酸化チタンなどが好ましい。これらの充填剤を配合すると、粘着剤に適度の凝集性を付与することができる。充填剤の平均粒子径は、5μm以下であることが好ましい。平均粒子径が5μm以下の微粒子(B)は、大粒子径の微粒子(A)と併用すると、凝集力と粘着力を適度の範囲内に調整することが容易となる。
【0072】
充填剤を使用する場合、その配合割合は、エラストマー成分100重量部に対して、通常、0.1〜150重量部、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは3〜60重量部である。充填剤の配合割合が小さすぎると、その添加効果が不充分となり、大きすぎると、添加が困難になったり、物性が低下したりする。
【0073】
軟化剤としては、石油系軟化剤、植物油系軟化剤、液状ゴム、液状粘着付与樹脂、合成可塑剤などが挙げられる。軟化剤を配合することにより、凝集性などの特性を制御することができる。
【0074】
石油系軟化剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、エキステンダーオイルなどが挙げられる。植物油系軟化剤としては、例えば、ひまし油、綿実油、あまに油、菜種油、大豆油、パーム油、椰子油、落花生油、トール油などが挙げられる。
【0075】
合成可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレート、ジイソオクチルフタレート等のイソフタル酸誘導体、ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート等のテトラヒドロフタル酸誘導体;ジ−n−ブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート等のアジピン酸誘導体;ジイソオクチルアゼレート等のアゼライン誘導体;ジ−n−ブチルセバケート等のセバシン酸誘導体;ジメチルマレート等のマレイン酸誘導体;ジ−n−ブチルフマレート等のフマル酸誘導体;トリイソオクチル・トリメリテート等のトリメリット酸誘導体;トリエチル・シトレート等のクエン酸誘導体;ジエチル・イタコネート等のイタコン酸誘導体;グリセリル・モノオレート等のオレイン酸誘導体;ブチル・アセチル・リシノレート等のリシノール誘導体;n−ブチル・ステアレート等のステアリン酸誘導体;ジエチレングリコール・モノウラレート等の脂肪酸誘導体;ベンゼンスルホン・ブチルアミド等のスルホン酸誘導体;トリメチル・ホスフェート等のリン酸誘導体;テトラ−2−エチルヘキシル・ピロメリテ−ト等のモノエステル系可塑剤、ジエチレングリコール・ジベンゾエート等のグリコール誘導体;グリセロール・モノアセテート等のグリセリン誘導体;塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体;エポキシ誘導体、ポリエステル系可塑剤、ポリエーテル系可塑剤などを挙げることができる。
【0076】
これらの軟化剤は、エラストマーなどとの相溶性等を考慮した上で選択使用される。軟化剤を用いる場合には、エラストマー100重量部に対して、通常0.1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは3〜80重量部の割合で使用される。軟化剤の配合割合が小さすぎると、その添加による効果が不充分となり、大きすぎると、ホットメルト型粘着剤としての諸特性が低下しやすくなる。
【0077】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物等がある。紫外線吸収剤を使用する場合には、エラストマー100重量部に対して、通常0.1〜5重量部の割合で添加される。
【0078】
老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、その他のアミン系化合物、アミン化合物混合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物等が挙げられる。老化防止剤の配合割合は、特に限定されないが、エラストマー100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。
【0079】
図1は、本発明の布粘着テープの第一の態様の層構成の一例を示す断面略図である。支持体の織布3の背面(粘着剤層とは反対側の面)には、裏打ち材として多孔質充填剤を含有する合成樹脂層2が配置されており、該合成樹脂層2の背面には、剥離剤層1が設けられている。布粘着テープの形態によっては、剥離剤層1を省略することができるが、布粘着テープをロール状に巻回して用いる場合には、剥離剤層1を設けることが好ましい。織布3の表面には、揮発性物質の揮発により形成された多数の独立気泡を含有するホットメルト型粘着剤層(発泡粘着剤層)4が形成されている。
【0080】
図2は、本発明の布粘着テープの第二の態様の層構成の一例を示す断面略図である。支持体の織布23の背面(粘着剤層とは反対側の面)には、裏打ち材として合成樹脂層(第一の合成樹脂層)22が配置されている。この第一の合成樹脂層22には、多孔質充填剤を含有させる必要はないが、所望により適量(合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤300重量部以下)の多孔質充填剤を含有させてもよい。裏打ち材の合成樹脂層22の背面には、剥離剤層21を設けることが好ましい。織布23の表面上には、多孔質充填剤を含有する第二の合成樹脂層24が形成されており、その表面上には、揮発性物質の揮発により形成された多数の独立気泡を含有するホットメルト型粘着剤層25が形成されている。
【0081】
本発明の布粘着テープの第三の態様については図示していないが、例えば、「剥離剤層/裏打ち材の合成樹脂層/親水性ポリマーの塗布層/織布/発泡粘着剤層」、または「剥離剤層/裏打ち材の合成樹脂層/織布/親水性ポリマーの塗布層/発泡粘着剤層」の層構成を有するものである。裏打ち材の合成樹脂層には、多孔質充填剤を含有させる必要はないが、所望により適量(合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤300重量部以下)の多孔質充填剤を含有させることができる。
【0082】
図3は、本発明の第一の態様の布粘着テープの製造工程の一例を示す略図(断面図)である。本発明の第一の態様の布粘着テープは、織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープの製造方法において、
(1)該織布の片面に、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材を準備する工程1;
(2)該基材の織布面側に揮発性物質を付与する工程2;
(3)該基材の揮発性物質を付与した織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤を塗工して、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープを形成する工程3;並びに、
(4)該布粘着テープを加熱して、該揮発性物質を揮発させ、該ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を形成する工程4;
の各工程を含む布粘着テープの製造方法により製造することができる。
【0083】
図3に示すように、「剥離剤層31/裏打ち材の合成樹脂層32/織布33」の層構成を有する布粘着テープ基材(図3a)の織布面側に、水を塗布して均一な水の塗布層34を形成する(図3b)。水の塗布は、噴霧により行うことが好ましい。図3bには、層構成を分かりやすくするために、水の塗布層34が織布33の上に示されているが、実際には、水は裏打ち材の合成樹脂層32の表面に付着すると共に、織布33の表面及び/または織布33の内部に浸透して存在している。
【0084】
水の塗布層34の上からホットメルト型粘着剤を塗工して、ホットメルト型粘着剤層35を形成する(図3c)。次いで、図3cの布粘着テープを加熱して、水を揮発させ、ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を含有する発泡粘着剤層36を形成する。
【0085】
図3には、揮発性物質として水を用いた例が示されているが、水以外の揮発性溶剤を用いることもできる。揮発性溶剤を用いる場合には、該揮発性溶剤の沸点以上ホットメルト型粘着剤の溶融温度未満の温度に加熱して、該揮発性溶剤を揮発させ、ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を含有する発泡粘着剤層を形成する。揮発性物質の付与量(塗布量)は、ホットメルト型粘着剤層の厚みや所望の発泡の度合いを考慮して定める。
【0086】
揮発性物質として水を用いる場合は、水の付与量(塗布量)を通常1〜20ml/m、好ましくは2〜15ml/m、より好ましくは3〜10ml/mの範囲内に調整する。加熱工程4では、布粘着テープを90〜180℃、好ましくは100〜170℃、より好ましくは110〜165℃、特に好ましくは125〜160℃の範囲内の温度で、通常0.5〜10秒間、好ましくは1〜8秒間、より好ましくは2〜7秒間加熱することが望ましい。
【0087】
このように、比較的高温で極めて短時間加熱する加熱条件を採用することにより、水を揮発させ、粘着剤層中でガス化し膨張させて多数の独立気泡を形成させることができる。このため、裏打ち材の合成樹脂層を軟化させたり、発泡させたりするのを効果的に抑制することができる。加熱発泡後には、多数の独立気泡を含有する粘着剤層が形成されるが、該粘着剤層を直ちに冷却することにより、独立気泡を粘着剤層中に固定することができる。発泡のための加熱条件が極めて短時間であるため、空冷や冷却気体との接触により、粘着剤層を容易に冷却することができる。
【0088】
本発明の第二の態様の布粘着テープは、織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープの製造方法において、
(I)該織布の片面に第一の合成樹脂層が裏打ち材として配置されると共に、該織布の他面に接して、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された第二の合成樹脂層が配置された層構成を有する基材を準備する工程I;
(II)該基材の第二の合成樹脂層面の上に揮発性物質を付与する工程II;
(III)該揮発性物質を付与した第二の合成樹脂層面の上に、ホットメルト型粘着剤を塗工して、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープを形成する工程III;並びに、
(IV)該布粘着テープを加熱して、該揮発性物質を揮発させ、該ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を形成する工程IV;
の各工程を含む布粘着テープの製造方法により製造することができる。
【0089】
第二の態様の布粘着テープの製造方法において、水などの揮発性物質の付与方法、付与量、加熱発泡条件などは、第一の態様の布粘着テープの製造方法と同じである。
【0090】
本発明の第三の態様の布粘着テープは、織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープの製造方法において、
(i)該合成樹脂層の織布面側の表面に親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した合成樹脂層を用いた基材、または該織布面側の上から親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した基材を準備する工程i;
(ii)該基材の織布面側に揮発性物質を付与する工程ii;
(iii)該基材の揮発性物質を付与した織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤を塗工して、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープを形成する工程iii;並びに、
(iv)該布粘着テープを加熱して、該揮発性物質を揮発させ、該ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を形成する工程iv;
の各工程を含む布粘着テープの製造方法により製造することができる。
【0091】
第三の態様の布粘着テープの製造方法において、水などの揮発性物質の付与方法、付与量、加熱発泡条件などは、第一の態様の布粘着テープの製造方法と同じである。
【0092】
本発明の布粘着テープは、裏打ち材の合成樹脂層と織布との合計厚みを、通常100〜300μm、好ましくは150〜280μm、より好ましくは190〜250μmの範囲内とすることが望ましい。発泡前の粘着剤層の塗布量は、通常50〜150g/m、好ましくは60〜140g/m、より好ましくは65〜135g/mの範囲内である。粘着剤層の発泡後の本発明の布粘着テープの総厚は、通常200〜400μm、好ましくは250〜350より好ましくは280〜330μmの範囲内である。支持体が織布であるため、裏打ち材の合成樹脂層の溶融押出ラミネーションを行うと、織布が合成樹脂層に浸み込んで、合計厚みを薄くする。同様に、織布の面上にホットメルト型粘着剤を塗工すると、該粘着剤が織布に浸み込むため、合計厚みが薄くなる。
【0093】
本発明の発泡したホットメルト型粘着剤層の表面は、気泡の破裂による破泡痕が若干観察される程度である。発泡したホットメルト型粘着剤層に含有される独立気泡は、粘着剤層の厚みや所望の粘着特性にもよるが、その気泡径が10〜300μmの範囲内にあり、気泡数が100〜10000(個/cm)の範囲内にあることが望ましい。本発明の布粘着テープは、粘着剤層中に含まれる気泡の直径が、熱分解型発泡剤を用いて得られた化学発泡品に比べて大きいため、クッション性に優れている。このため、ホットメルト型粘着剤の使用量を低減することも容易である。
【0094】
本発明の布粘着テープは、ホットメルト型粘着剤層が非発泡の従来品と同程度の厚みを有することが望ましい。発泡した粘着剤層が従来品と同程度の厚みを有することにより、原材料として使用するホットメルト型粘着剤の使用量を低減することができる。本発明の布粘着テープの粘着力などの粘着特性は、ホットメルト型粘着剤層が非発泡の従来品と同等であることが望ましい。ただし、本発明の布粘着テープは、粘着剤層が発泡しているため、被着体の粗面に対する粘着性、低温での粘着力、段ボールなどの被着体への再剥離性などに優れるという特徴を有しているため、これらに関連する粘着特性は、必ずしも従来品と同等でなくてもよい。
【0095】
本発明の布粘着テープは、粘着力が6〜20(N/25mm)、ボールタック(No.)が25以上、段ボール保持力が400(分/25×25mm・1kg)以上、好ましくは500(分/25×25mm・1kg)以上、より好ましくは1000(分/25×25mm・1kg)以上である。これらの粘着特性の測定法は、実施例に記載されたとおりである。
【実施例】
【0096】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。諸特性の測定方法は、次の通りである。
【0097】
(1)厚み:
各層の厚みや合計厚みは、1/100mm精度のダイヤルゲージを用いて測定した。各試料の測定点を10点とし、その平均値を求めた。
【0098】
(2)気泡径及び気泡数:
発泡した粘着剤層を長手方向(MD)にスライスし、その断面のマイクロスコープ写真(100倍)を撮影した。粘着剤層中の気泡径及び気泡数は、マイクロスコープ写真に基づいて算出した。気泡径(μm)は、最小値と最大値の幅で示した。気泡数については、1cm当たりの個数を算出した。
【0099】
(3)粘着力:
温度23℃の雰囲気下、平滑で清浄なステンレス板表面に、25mm幅に裁断した布粘着テープ試料を粘着剤層面で貼付し、次いで、2kgの荷重ローラを300mm/分の速度で、布粘着テープの背面上を1往復させることにより、布粘着テープをステンレス板に圧着させた。この状態で20分間放置後、引張試験機(インストロン型引張試験機)にて、300mm/分の剥離速度、180度の剥離角度で試料をステンレス板から剥離した。単位をN/25mmとした。
【0100】
(4)ボールタック:
布粘着テープを、30度の角度、助走路10cm、底部10cmの傾斜台に粘着面を上にして置く。助走路10cmから直径1/32から1インチまでの32種類のベアリング玉を転がし、粘着面で止まったボールの最大No.をもってタック値とした。
【0101】
(5)段ボール保持力:
1.使用機器及び用材
1.1 自動保持力試験機
試験板(段ボール)保持部、荷重部、及びリミットスイッチ部からなり、分銅を鉛直に装着できる構造を有する自動保持力試験機を用いた。
【0102】
1.2 時間計
分銅の落下時間を分単位で表示できる時間計を用いた。
【0103】
1.3 試験板
JIS P 3902(段ボールライナー)に規定されているクラフトライナー両面段ボール(厚み約5mm、A級ライナー品)を、幅50mm、長さ50mmに裁断したものを試験板として用いた。
【0104】
1.4 圧着ローラ
表面がJIS K 6301(加硫ゴム物理試験方法)に規定されているスプリング硬さ80±5Hs、厚み約6mmのゴム層で被覆された幅約45mm、直径及び質量が各製品検査規格に規定された圧着ローラを用いた。
【0105】
1.5 分銅
1kg荷重の分銅を用いた。
【0106】
2.試験片
布粘着テープを幅25mmに裁断して、布粘着テープ試験片を作製した。
【0107】
3.操作
試験板の表面をよく乾いた清浄なガーゼで拭いた後、布粘着テープ試験片の端部を試験板の一端に、その中心部の段方向に沿って気泡が入らないように貼付した。次に、試験片の上から圧着ローラを用いて、圧着速度約300mm/分で一往復圧着した後、段方向に25mmの位置で試験片を裁断して、それぞれの検査規格に定められた時間放置した。その後、自動保持力試験機の試験板保持部に試験板を挿入し、試験片の遊び部分に規定されたた分銅を取り付けて、分銅が揺れないように静かに吊り下げた。直ちに、時間計のスイッチをONにして、カウントを開始し、分銅が落下するまでの時間を読み取った。規定時間を経過しても分銅が落下しない場合は、その時点で測定を中止してもよい。
【0108】
4.記録のまとめ方
4.1 分銅が落下した場合
測定値は、保持時間を分単位で表示した。検査規格により採取された全試験片の測定値の平均値を段ボール保持力とした。JIS Z 8401(数値の丸め方)に従って、平均値を丸め、10分単位まで表示した。
【0109】
4.2 分銅が落下しない場合
測定値は、規定時間以上を記録した。
【0110】
(6)投錨性:
強粘着ゴム系両面テープ(セパレータ付き)を試験片の幅よりやや広めに裁断し、一端を掴み部とするために20mm程度折り返す。その後、試験片を、強粘着ゴム系両面テープの中央部分に粘着面どうしを貼り合せる。この時、試験片が伸びたり、気泡が入らないように注意する。次に、試験片を上側にして圧着装置で毎分300mmに速度で一往復し、20〜40分間放置する。
【0111】
強粘着ゴム系両面テープの掴み部を引張試験機(インストロン型引張試験機)の下部チャックに固定し、試験片のあそびの折り返し部分を上部チャック部に固定する。次に、引張試験機の駆動スイッチをONにし、毎分300mmの速度で試験片が90度となるように引き剥がし、その時の値を記録する。測定の際は、試験片が投錨破壊していることを確認し、それ以外の凝集破壊等の場合は、その旨記載する。すなわち、投錨破壊の場合を投錨性に優れる(評価A)とし、凝集破壊等の場合を投錨性が十分ではない(評価B)とした。
【0112】
圧着装置は、ローラと電動機をもって駆動されるベークライト板からなり、試験片を圧着する際にローラの重量のみが試験片にかかる構造としたものである。ローラは、その表面がJIS K6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法)に規定するスプリング硬さ80±5Hs、厚み約6mmのゴム層で被覆された幅約45mm、直径約83mm(総外径約95mm)、質量2000±50gのものとする。
【0113】
[実施例1]
(1)基材の作製:
ポリエチレン(低密度ポリエチレン)100重量部に対して、炭酸カルシウム(日東粉化工業社製 NS#100)80重量部を溶融混練してポリエチレン組成物を調製した。30番手のスフ糸を縦40本/25mm、横30本/25mmに打ち込んだ織布の片面に、該ポリエチレン組成物を溶融押出コーティングして、布粘着テープの基材を作製した。ポリエチレン層の厚みは、60μmであった。ポリエチレン層の背面に、剥離剤(長鎖アルキル系剥離剤;ニチバン株式会社製)を、乾燥後に約0.5g/mとなるように塗布し、乾燥した。基材の厚みは、230μmであった。
【0114】
(2)ゴム系ホットメルト型粘着剤の調製:
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS:シェルケミカル社製 カリフレックスTR1107)100重量部に対して、粘着付与剤(石油樹脂)100重量部、オイル30重量部、充填剤10重量部、及び老化防止剤1重量部を溶融混練して、ゴム系ホットメルト型粘着剤を調製した。
【0115】
(3)粘着テープの作製:
前記基材の織布側の面上に、水を5ml/mの塗布量となるように均一に噴霧した。水を塗布した面上に、前記ゴム系ホットメルト型粘着剤層を、塗布量が100g/mとなるように溶融塗工して、布粘着テープを作製した。布粘着テープの総厚は、250μmであった。織布のポリエチレン層と粘着剤層への浸み込みにより、総厚は、各層の合計厚みよりも小さな値を示す。
【0116】
(4)発泡:
前記布粘着テープを150℃で5秒間加熱して、水を蒸発させ、粘着剤層中でガス化により膨張させることにより、該粘着剤層を発泡させた。結果を表1に示す。
【0117】
[実施例2]
ゴム系ホットメルト型粘着剤の塗布量を100g/mから125g/mに、発泡前の布粘着テープの総厚を250μmから270μmに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0118】
[比較例1]
ゴム系ホットメルト型粘着剤100重量部に対して、熱分解型発泡剤(アゾジカルボンアミド)0.5重量部を溶融混練した。基材の織布側の面上に水を噴霧することなく、熱分解型発泡剤を含有するゴム系ホットメルト型粘着剤を溶融塗工した。粘着剤の塗布量や粘着特性などを表1に示す。
【0119】
[比較例2]
炭酸カルシウムを配合していないポリエチレンを用いて裏打ち層を形成し、織布側の面上に水を噴霧せず、かつ、粘着剤塗布量と発泡前の総厚を表1に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様に操作した。粘着剤層は、発泡しなかった。結果を表1に示す
【0120】
【表1】

【0121】
[実施例3]
(1)基材の作製:
炭酸カルシウムを配合していないポリエチレンを用いて裏打ち材を形成したこと以外は、実施例1と同様にして基材を作製した。
【0122】
(2)第二の合成樹脂層:
ポリエチレン100重量部に対して、炭酸カルシウム80重量部を配合したポリエチレン組成物(実施例1と同じ物)を、前記基材の織布側の面上に溶融塗工して、厚み30μmの第二の合成樹脂層(ポリエチレン組成物層)を形成した。
【0123】
(3)布粘着テープの作製:
前記基材の第二の合成樹脂層の面上に、水を5ml/mの塗布量となるように均一に噴霧した。水を塗布した面上に、実施例1で用いたのと同じゴム系ホットメルト型粘着剤を、第二の合成樹脂層の面上に、塗布量が70g/mとなるように溶融塗工して、布粘着テープを作製した。
【0124】
(4)発泡:
前記布粘着テープを150℃で5秒間加熱して、水を蒸発させ、粘着剤層中でガス化により膨張させることにより、該粘着剤層を発泡させた。結果を表2に示す。
【0125】
[実施例4]
ポリエチレン100重量部に対して、炭酸カルシウム80重量部と水添SBR(HSBR)を配合したポリエチレン組成物を用いて第二の合成樹脂層を形成したこと以外は、実施例3と同様に操作した。HSBRの配合により、粘着剤層の投錨性が向上した。結果を表2に示す。
【0126】
[比較例3]
ポリエチレン100重量部に対する炭酸カルシウムの配合割合を80重量部から20重量部に変更したこと以外は、実施例3と同様に操作した。噴霧した水が織布の糸に浸み込んで均一に塗布することができなかったためと推定されるが、150℃で5秒間の加熱条件で、粘着剤層の発泡は観察されなかった。結果を表2に示す。
【0127】
[比較例4]
炭酸カルシウムを配合しなかったポリエチレンを用いたこと以外は、実施例3と同様に操作した。150℃で5秒間の加熱条件で、粘着剤層の発泡は観察されなかった。結果を表2に示す。
【0128】
[比較例5]
ポリエチレン100重量部に対して、HSBR10重量部を配合し、炭酸カルシウムを配合しなかったポリエチレンを用いたこと以外は、実施例3と同様に操作した。150℃で5秒間の加熱条件で、粘着剤層の発泡は観察されなかった。結果を表2に示す。
【0129】
[比較例6]
ポリエチレン100重量部に対して、HSBR10重量部を配合し、炭酸カルシウムを配合しなかったポリエチレンを用い、かつ、熱分解型発泡剤(アゾジカルボンアミド)を配合したゴム系ホットメルト型粘着剤を用いて、化学発泡させたこと以外は、実施例3と同様に操作した。結果を表2に示す。
【0130】
[比較例7]
HSBRを含有しないポリエチレンを用いたこと以外は、比較例6と同様に操作した。結果を表2に示す。
【0131】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の布粘着テープは、封緘用、包装用、保持用などの梱包用粘着テープとして利用することができる。また、本発明の布粘着テープは、各種工業用粘着テープとしても利用することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 剥離剤層
2 合成樹脂層からなる裏打ち材
3 織布
4 発泡ホットメルト型粘着剤層
21 剥離剤層
22 第一の合成樹脂層からなる裏打ち材
23 織布
24 第二の合成樹脂層
25 発泡ホットメルト型粘着剤層
31 剥離剤層
32 合成樹脂からなる裏打ち材
33 織布
34 水の付与層
35 ホットメルト型粘着剤層
36 発泡ホットメルト型粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープであって、
該合成樹脂層が、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された合成樹脂層であり、かつ、
該ホットメルト型粘着剤層が、揮発性物質の揮発により形成された多数の独立気泡を含有する発泡粘着剤層である
ことを特徴とする布粘着テープ。
【請求項2】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープであって、
該織布の片面に第一の合成樹脂層が裏打ち材として配置されると共に、該織布の他面に接して第二の合成樹脂層が設けられており、
該第二の合成樹脂層は、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された合成樹脂層であり、
該ホットメルト型粘着剤層が、該第二の合成樹脂層に接して設けられており、かつ、
該ホットメルト型粘着剤層が、揮発性物質の揮発により形成された多数の独立気泡を含有する発泡粘着剤層である
ことを特徴とする布粘着テープ。
【請求項3】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープであって、
該合成樹脂層が、その織布面側の表面に親水性ポリマーを含有する塗工液の塗布層を形成したものであるか、または該基材が、その織布面側の上から親水性ポリマーを含有する塗工液の塗布層を形成したものであり、かつ、
該ホットメルト型粘着剤層が、揮発性物質の揮発により形成された多数の独立気泡を含有する発泡粘着剤層である
ことを特徴とする布粘着テープ。
【請求項4】
該揮発性物質が、水である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の布粘着テープ。
【請求項5】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープの製造方法であって、
該織布の片面に、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材を準備する工程1;
該基材の織布面側に揮発性物質を付与する工程2;
該基材の揮発性物質を付与した織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤を塗工して、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープを形成する工程3;並びに、
該布粘着テープを加熱して、該揮発性物質を揮発させ、該ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を形成する工程4;
の各工程を含む布粘着テープの製造方法。
【請求項6】
該工程2において、該基材の織布面側に、揮発性物質として水を1〜20ml/mの付与量で塗布し、かつ、該工程4において、90〜180℃の温度で0.5〜10秒間加熱する条件で、該布粘着テープを加熱する請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープの製造方法であって、
該織布の片面に第一の合成樹脂層が裏打ち材として配置されると共に、該織布の他面に接して、合成樹脂100重量部に対して多孔質充填剤30〜300重量部を含有する合成樹脂組成物から形成された第二の合成樹脂層が配置された層構成を有する基材を準備する工程I;
該基材の第二の合成樹脂層面の上に揮発性物質を付与する工程II;
該揮発性物質を付与した第二の合成樹脂層面の上に、ホットメルト型粘着剤を塗工して、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープを形成する工程III;並びに、
該布粘着テープを加熱して、該揮発性物質を揮発させ、該ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を形成する工程IV;
の各工程を含む布粘着テープの製造方法。
【請求項8】
該工程IIにおいて、該基材の第二の合成樹脂層面の上に、揮発性物質として水を1〜20ml/mの付与量で塗布し、かつ、該工程IVにおいて、90〜180℃の温度で0.5〜10秒間加熱する条件で、該布粘着テープを加熱する請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
織布の片面に合成樹脂層が裏打ち材として配置された層構成を有する基材の織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープの製造方法であって、
該合成樹脂層の織布面側の表面に親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した合成樹脂層を用いた基材、または該織布面側の上から親水性ポリマーを含有する塗工液を塗布して塗布層を形成した基材を準備する工程i;
該基材の織布面側に揮発性物質を付与する工程ii;
該基材の揮発性物質を付与した織布面側の上に、ホットメルト型粘着剤を塗工して、ホットメルト型粘着剤層が設けられた布粘着テープを形成する工程iii;並びに、
該布粘着テープを加熱して、該揮発性物質を揮発させ、該ホットメルト型粘着剤層中でガス化により膨張させて、多数の独立気泡を形成する工程iv;
の各工程を含む布粘着テープの製造方法。
【請求項10】
該工程iiにおいて、該基材の織布面側に、揮発性物質として水を1〜20ml/mの付与量で塗布し、かつ、該工程ivにおいて、90〜180℃の温度で0.5〜10秒間加熱する条件で、該布粘着テープを加熱する請求項9記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−157455(P2011−157455A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19394(P2010−19394)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】