説明

平版印刷版用アルミニウム合金板およびその製造方法

【目的】一層優れた感光膜との密着性、保水性を得ることを可能とする平版印刷版用アルミニウム合金板を提供する。
【構成】Mg:0.1〜1.5%、Zn:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Fe:0.1〜1.0%、Si:0.03〜1.0%、Cu:0.0001〜0.1%、Ti:0.0001〜0.1%を含有し、残部アルミニウムおよび不純物からなる組成を有するアルミニウム合金板で、板表面において直径(円相当直径)が30μm以上のオイルピットの数が50個/mm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版用アルミニウム合金板、とくに電気化学的エッチング処理により表面を均一に粗面化することができるとともに、優れた強度と耐熱軟化性をそなえた平版印刷版用アルミニウム合金板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版(オフセット印刷版を含む)の支持体としては、一般にアルミニウム合金板が使用されており、支持体については、感光膜の密着性向上と非画像部の保水性向上の観点から粗面化処理が行われる。粗面化処理法としては、従来、ボールグレイニング、ブラシグレイニング、ワイヤーグレイニングなどの機械的粗面化法が行われていたが、近年、製版適性や印刷性能が優れていること、コイル材での連続処理が可能なことなどから、支持体用アルミニウム合金板の表面を電気化学的エッチング処理により粗面化する手法が急速に発展している。
【0003】
電気化学的エッチング処理は、電解液として、塩酸または塩酸を主体とする電解液(以下、塩酸系電解液)や硝酸または硝酸を主体とする電解液(以下、硝酸系電解液)を用いるもので、比較的均一な電解粗面化が得られるA1050(アルミニウム純度99.5%)相当材が支持体として適用されており、支持体の上に塗布される感光層を適切に選択することによって10万枚にも及ぶ鮮明な印刷物を得ることが可能となる。
【0004】
また、印刷版の耐刷性の向上のために、アルミニウム合金板を支持体とする印刷版を通常の方法で露光、現像処理した後、高温で加熱処理(バーニング処理)することにより画像部を強化することが行われている。バーニング処理は、通常、加熱温度200〜290℃、加熱時間3〜9分の条件で行われているから、バーニング処理時に支持体の強度が低下することのない耐熱性(耐バーニング性)が求められている。
【0005】
さらに、最近では、印刷技術の進歩に伴って印刷速度が速くなり、印刷機の版胴の両側に機械的に固定される印刷版に加わる応力が増大したことに対応して、支持体に対する強度要求が大きくなっており、支持体強度が不足すると、その固定部分が変形または破損して印刷ずれなどの支障が生じるため、前記の耐バーニング性とともに、支持体強度の向上が不可欠となっている。
【0006】
このような要求を満たすために、A1050相当材をベースとして添加成分を調整したアルミニウム合金支持体が種々提案されており(例えば、特許文献1参照)、また、添加成分とともに板表面のオイルピットの深さを調整することにより目的を達成しようとする試みも行われている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−15912号公報
【特許文献2】特開2004−35936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、A1050相当材をベースとし、最終的に冷間圧延された板表面の性状と電解粗面化処理により得られるエッチングピットとの関係についての検討過程において、板表面のオイルピットの大きさと数がエッチングピットの形成に影響し、これらを特定することにより、均一なピットパターンを得ることができることを見出した。
【0008】
本発明は、上記の知見に基いてさらに試験、検討を加えた結果としてなされたものであり、その目的は、電気化学的粗面化処理によって従来のA1050相当材よりさらに均一なピットが形成され、一層優れた感光膜との密着性および保水性を得ることを可能とする平版印刷版用アルミニウム合金板およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
上記の目的を達成するための請求項1による平版印刷版用アルミニウム合金板は、Mg:0.1〜1.5%)、Zn:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Fe:0.1〜1.0%、Si:0.03〜1.0%、Cu:0.0001〜0.1%、Ti:0.0001〜0.1%を含有し、残部アルミニウムおよび不純物からなる組成を有するアルミニウム合金板で、板表面において直径(円相当直径)が30μm以上のオイルピットの数が50個/mm以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項2による平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法は、請求項1記載のアルミニウム合金板を製造する方法であって、最終冷間圧延においてロール面粗度が算術平均粗さRa:0.2〜0.5μmの圧延ロールを用い、粘度1〜6cStの圧延油を使用して冷間圧延を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項3による平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法は、請求項2において、Mg含有量(Mg%)と圧延油の粘度ρとの関係が、ρ≦2×Mg%+4を満足する圧延油を最終冷間圧延において使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電気化学的粗面化処理によりさらに均一なピットが形成され一層優れた感光膜との密着性、保水性を得ることができ、さらに改善された画像鮮明性および耐刷性を達成することを可能とする強度および耐熱軟化性にも優れた平版印刷版用アルミニウム合金板およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の平版印刷版用アルミニウム合金板における含有成分の意義および限定理由について説明すると、Mgは、大部分がアルミニウムに固溶して、強度および耐熱軟化性を向上させるよう機能する。強度とは、印刷版用支持体としての常温における引張り強さのことであり、160MPa以上が実用上好ましい範囲である。耐熱軟化性は、耐バーニング性ともいわれ、280℃程度の温度で加熱された後の0.2%耐力のことであり、90MPa以上が実用上望ましい範囲である。Mgの好ましい含有量は0.1〜1.5%の範囲であり、0.1%未満ではその効果が十分でなく、1.5%を越えると、粗面化処理におけるピットの均一性が低下し非画像部の汚れが生じ易くなる。
【0014】
Znは、Mgと同様、大部分がアルミニウムに固溶するが、Mgのように強度および耐熱軟化性の向上に寄与することはなく、アルミニウム表面に形成される酸化皮膜に影響を与える。アルミニウム表面に形成される酸化皮膜には、室温に放置された場合に形成される酸化皮膜(自然酸化皮膜)と製造過程での熱処理時に形成される酸化皮膜があるが、Znはその両方に影響を与える。
【0015】
すなわち、Mgを含有するアルミニウム合金においては、とくに均質化処理、熱間圧延時の加熱、中間焼鈍などの熱処理によりMg酸化物(MgO系酸化物)を主体とする酸化皮膜が形成され易く、この酸化皮膜は活性且つポーラスであるため、電解粗面化処理において処理液との濡れ性が良くなり粗面化が促進される反面、ピットが不均一になり易い。Znの含有は、この粗面化構造の不均一性を改善するものであり、Mg酸化物による活性化を抑制するよう機能する。Znの好ましい含有量は0.5%以下の範囲であり、0.5%を越えて含有すると、Mg酸化物による活性化抑制効果が大きくなって粗面化が不均一となり、また、粗大な金属間化合物が生成し易くなって電解処理時に粗大なピットが形成され、粗面化の均一性がさらに阻害される。Znのより好ましい含有範囲は0.05%を越え0.5%以下、さらに好ましい含有範囲は0.06〜0.5%である。
【0016】
Feは、Al−Fe系金属間化合物を生成し、またSiと共存してAl−Fe−Si系金属間化合物を生成し、これらの化合物の分散により、再結晶組織が微細化され、これらの化合物がピット発生の起点となって電解処理時にピットの形成を均一にし且つピットを微細に分布させる。Feの好ましい含有量は0.1〜1.0%の範囲であり、0.1%未満では化合物の分布が不均一となって、電解処理時のピットの形成を不均一にする。1.0%を越えると、粗大な化合物が生成し、粗面化構造の均一性が低下する。Feのさらに好ましい含有範囲は0.1〜0.6%である。
【0017】
Siは、Feと共存してAl−Fe−Si系金属間化合物を生成し、該化合物の分散により、再結晶組織が微細化され、これらの化合物がピット発生の起点となって電解処理時のピットの形成を均一にし且つピットを微細に分布させる。Siの好ましい含有量は0.03〜1.0%の範囲であり、0.03%未満では化合物の分布が不均一となって、電解処理時のピットの形成を不均一にする。1.0%を越えると、粗大化合物が生成し、また単体のSiの析出が生じ易くなって粗面化構造の均一性が低下する。Siのさらに好ましい含有範囲は0.03〜0.15%である。
【0018】
Cuは、アルミニウムに固溶し易く、0.0001〜0.1%の含有範囲でピットを微細化する効果を有する。0.1%を越えて含有すると、電解処理時のピットを粗大且つ不均一にし易くなる。Cuのさらに好ましい含有範囲は0.0001〜0.10%である。なお、本発明において、前記のFeおよびSiの含有量を得るために採用される地金から混入されるCu量は5〜100ppm(0.0005〜0.01%)程度である。
【0019】
Tiは、鋳塊組織を微細にし、また結晶粒を微細化し、その結果、電解処理時のピット形成を均一にして、印刷版としての処理を行ったときのストリークの発生を防止する。Tiの好ましい含有量は0.0001〜0.1%の範囲であり、0.0001%未満ではその効果が小さく、0.1%を越えて含有すると、Al−Ti系の粗大な化合物が生成して粗面化構造が不均一となり易い。Tiのさらに好ましい含有範囲は0.0001〜0.05%である。なお、鋳塊組織の微細化のために、TiとともにBを添加する場合には、Tiを0.01%以下の範囲で含有させるのが好ましい。
【0020】
Mnは、強度および耐熱軟化性を向上させるよう機能する。Mnの好ましい含有量は0.5%以下の範囲であり、0.5%を越えると、粗大なAl−Fe−Mn系あるいはAl−Fe−Mn−Si系の金属間化合物が生成し易く、電解処理時の粗面化が不均一となる。Mnのより好ましい含有範囲は0.05%を越え0.3%、さらに好ましい含有範囲は0.06〜0.3%である。
【0021】
本発明による平版印刷版用アルミニウム合金板には、Pb、In、SnおよびGaのうちの1種以上を、総量で0.005〜0.05%添加することにより、電解グレーニング性をさらに改善することができ、少ない電気量で所望のピットパターンを得ることができる。Pb、In、Sn及びGaからなる群から選択された1種以上の元素の総量が0.005%より少ない場合はその効果が十分でなく、0.05%を越えるとピットの形状が崩れ易くなる。
【0022】
本発明による平版印刷版用アルミニウム合金板の製造は、前記アルミニウム合金の鋳塊を連続鋳造などにより造塊し、得られた鋳塊を均質化処理後、熱間圧延、冷間圧延することにより行われる。
【0023】
本発明においては、最終冷間圧延後の板表面において直径(円相当直径)が30μm以上のオイルピットの数を50個/mm以下に調整することが重要である。オイルピットは、板表面に巻き込まれた圧延油の部分が凹状のピットとなるものであり、直径(円相当直径)30μm以上のオイルピットの数を50個/mm以下に調整することにより、電解粗面化処理において形成されるエッチングピットをより均一にすることができる。本発明のアルミニウム合金とは異なりMgを含有しないアルミニウム合金、例えば特許文献2に記載のアルミニウム合金の場合には、直径30μm以上の大きなオイルピットが存在しても電解粗面化処理で形成されるエッチングピットを不均一にするようなことはないが、Mgを含有する本発明のアルミニウム合金の場合には、直径30μm以上の大きなオイルピットは、電解グレーニング後も粗大なピットとして残留し易く好ましくない。このような粗大なピットの数が50個/mmを越えると電解粗面化処理で形成されるエッチングピットが不均一となり易い。
【0024】
直径(円相当直径)30μm以上のオイルピットの数を50個/mm以下に調整するためには、最終冷間圧延加工度、圧延ロール面の形態、圧延油の性状、圧延油の供給量の調整により行われる。Mgを含有し、変形抵抗が比較的大きな本発明のアルミニウム合金の場合には、とくに、最終冷間圧延においてロール面粗度が算術平均粗さRa:0.2〜0.5μmの圧延ロールを用い、粘度1〜6cStの圧延油を使用して冷間圧延を行うことが望ましい。
【0025】
Mgを含有し、変形抵抗が比較的大きな本発明のアルミニウム合金の場合、ロール面粗度が算術平均粗さRaが0.2μm未満では、圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が少なくなって潤滑不良が生じやすく、0.5μmを超えると、圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が過剰となり大きなオイルピットの数が増加する。圧延油の粘度が1cSt未満では、圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が少なくなって潤滑不良が生じ、粘度が6cStを越えると、圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が過剰となり、大きなオイルピットの数が増加する。
【0026】
また、最終冷間圧延における圧延油として、アルミニウム合金板中のMg含有量(Mg%)と最終冷間圧延において使用する圧延油の粘度ρとの関係が、ρ≦2×Mg%+4を満足する圧延油を使用するのが好ましい。(2×Mg%+4)<ρでは、変形抵抗が小さく、また圧延ロールと圧延材との間に導入される圧延油量が多くなるため、粗大なピットが過剰に形成され易くなる。
【0027】
なお、熱間圧延後に行われる冷間圧延は、当該アルミニウム合金板を平版印刷用支持体として適用した場合に、支持体を版胴に巻き付けるときのくわえ切れを防止する強度を与えるとともに、熱間圧延中もしくは熱間圧延直後に生成された結晶粒の圧延方向に平行な方向の長さを調整するために行われる。好ましい圧延加工度は50〜98%の範囲であり、これを最終冷間圧延とする。圧延加工度が50%未満では、版胴に巻き付ける時のくわえ切れを防止するのに十分な強度を与えることが難しく、98%を越えると、熱間圧延後に生成された結晶粒が圧延方向に平行な方向に長く伸び過ぎて、ストリークスが発生し易くなる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、本発明の効果を実証する。これらの実施例は、本発明の好ましい一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
実施例1、比較例1
表1に示す組成を有するアルミニウム合金(A〜M)を溶解、鋳造し、得られた鋳塊の圧延面を6mm/片面づつ面削して厚さ500mmとし、鋳塊を35℃/hrの昇温速度で545℃の温度に加熱し、この温度に5hr保持することにより均質化処理を行った。
【0030】
ついで、熱間圧延開始温度の471℃まで35℃/hrの速度で降温し、板厚3mmまで熱間圧延し、346℃の温度で熱間圧延を終了した。熱間圧延後、中間焼鈍を施すことなしに冷間圧延を行って板厚を0.3mmとした。なお、最終冷間圧延において使用した圧延ロールの面粗度は算術平均粗さRa:0.3μmで、圧延油の粘度は3cStである。
【0031】
得られたアルミニウム合金板(試験材)について、以下の方法により、冷間圧延後の板表面の直径が30μm以上のオイルピット数を測定した。結果を表1に示す。
【0032】
オイルピット数の測定:アルミニウム合金板の表面を脱脂洗浄後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、500倍の倍率で表面を観察し、切断法によりオイルピットのサイズ及び分布量を測定した。
【0033】
また、得られたアルミニウム合金板を、脱脂(溶液:5%水酸化ナトリウム、温度:60℃、時間:10秒)−中和処理(溶液:10%硝酸、温度:20℃、時間:30秒)−交流電解粗面化処理(溶液:2.0%塩酸、温度:25℃、周波数:50Hz、電流密度:60A/dm、時間:20秒)―デスマット処理(溶液:5%水酸化ナトリウム、温度:60℃、時間:5秒)−陽極酸化処理(溶液:30%硫酸―温度:20℃、時間:60秒)し、水洗、乾燥して、一定の大きさに切り取り試験材とした。
【0034】
各試験材について、ムラ模様、ストリークスの有無を観察した。また、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、500倍の倍率で表面を観察し、視野の面積が0.04mmとなるよう写真を撮影し、得られた写真からつぎの評価を行った。結果を表2に示す。
ムラ模様の有無の観察:試験材表面に強いムラ模様が目視で観察されるものを不良(×)、弱いムラ模様しか観察されないものを良好(○)、ムラ模様が観察されないものを優良(◎)として評価した。
ストリークスの有無の観察:試験材表面にストリークが目視で観察されるものを不良(×)、ストリークが観察されないものを良好(○)として評価した。
未エッチング部の発生についての評価:未エッチング部が20%を越えるものは不良(×)、15〜20%のものは良好(○)、15%未満のものは優良(◎)とした。
エッチピットの均一性の評価:円相当直径が10μmを越える大きなピットが全ピットに対して面積率で10%を越えるものは不良(×)、5〜10%のものは良好(○)、5%未満のものは優良(◎)20%未満のものは良好(○)とした。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表2にみられるように、本発明に従う試験材1〜3はいずれも、ムラ模様、ストリークスを生じることがなく、電解処理後のエッチング性に優れ、全面に均一なエッチングピットが形成されている。
【0038】
実施例2、比較例2
表1に示す組成のアルミニウム合金(A〜C)を溶解、鋳造し、得られた鋳塊の圧延面の面削、均質化処理、熱間圧延を表3に示す条件で行い、熱間圧延後、中間焼鈍を施すことなしに表3に示す板厚まで冷間圧延を行った。最終冷間圧延において使用した圧延ロールの面粗度および圧延油の粘度を表3に示す。Mg含有量と粘度(ρ)の関係を満足するものには○、満足しないものには×を付した。なお、均質化処理温度までの鋳塊の昇温速度は35℃/hr、均質化処理温度から熱間圧延開始温度までの降温速度は35℃/hrとした。
【0039】
得られたアルミニウム合金板(試験材)について、実施例1と同じ方法により、冷間圧延後の板表面の直径が30μm以上のオイルピット数を測定した。結果を表3に示す。また、ムラ模様、ストリークスの有無を観察した。結果を表4に示す。
【0040】
また、得られたアルミニウム合金板を、実施例1と同様に電解粗面化処理し、水洗、乾燥して、一定の大きさに切り取って試験材とし、実施例1と同じ方法で未エッチング部の発生についての評価、エッチピットの均一性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
表4にみられるように、本発明に従う試験材14〜16はいずれも、ムラ模様、ストリークスを生じることがなく、電解処理後のエッチング性に優れ、全面に均一なエッチングピットが形成されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mg:0.1〜1.5%(質量%、以下同じ)、Zn:0.5%以下(0%を含まず、以下同じ)、Mn:0.5%以下、Fe:0.1〜1.0%、Si:0.03〜1.0%、Cu:0.0001〜0.1%、Ti:0.0001〜0.1%を含有し、残部アルミニウムおよび不純物からなる組成を有するアルミニウム合金板で、板表面において直径(円相当直径)が30μm以上のオイルピットの数が50個/mm以下であることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム合金板。
【請求項2】
請求項1記載のアルミニウム合金板を製造する方法であって、最終冷間圧延においてロール面粗度が算術平均粗さRa:0.2〜0.5μmの圧延ロールを用い、粘度1〜6cStの圧延油を使用して冷間圧延を行うことを特徴とする平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
【請求項3】
Mg含有量(Mg%)と圧延油の粘度ρとの関係が、ρ≦2×Mg%+4を満足する圧延油を最終冷間圧延において使用することを特徴とする請求項2記載の平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。

【公開番号】特開2007−70674(P2007−70674A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257840(P2005−257840)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】