説明

床暖房パネル

【課題】コネクタ側面とコネクタ収容凹部の側壁との間での不規則な接触による床鳴り音が発生するのを回避することのできる床暖房パネルを開示する。
【解決手段】床暖房パネル10Xにおいて、可動側コネクタ収容凹部24を固定側コネクタ収容凹部22よりも横幅が広くするとともに、固定側コネクタ収容凹部22を可動側コネクタ収容凹部24の一方の側縁25側に偏位した位置に形成する。それにより、床暖房パネル10X同士を接続したときに、電源線40の引き出し代41の内部応力が解放した位置での可動側コネクタ32の中心線L1と、固定側コネクタ31の中心線L2とを、予め一致させることが可能となり、施工後に固定側コネクタ31が側方に移動して固定側コネクタ収容凹部22の側壁に接触するのを回避できる。それにより、接触による床鳴り音が発生するのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発熱体として電気ヒータを使用した電気式の床暖房パネル、特に、コンクリートスラブ等の上に直接敷設する直貼りタイプの床暖房パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
上記した形態の床暖房パネルは、特許文献1あるいは2等に示されるように、よく知られている。具体的には、図3(a)に示すように、次のような構成を備える。すなわち、床暖房パネル10は、木質材によって形成されたパネル基材20と、前記パネル基材20の裏面側に配設される電気ヒータ30と、前記電気ヒータ30に結線された状態で前記パネル基材20を横断する電源線40とを備える。前記電源線40の一端側には固定側コネクタ(メスコネクタ)31が接続され、他端側には可動側コネクタ(オスコネクタ)32が接続される。また、前記パネル基材20の一方の側縁21側は前記固定側コネクタ31を収容保持する固定側コネクタ収容凹部22が形成され、パネル基材20の他方の側縁23側は前記可動側コネクタ32を収容保持する可動側コネクタ収容凹部24が形成される。そして、電気ヒータ30および電源線40をパネル基材20との間に挟み込むように、パネル基材20の裏面には、図示しない緩衝材が貼着される。
【0003】
従来の床暖房パネル10では、図示のように、固定側コネクタ収容凹部22と可動側コネクタ収容凹部24とは、双方の幅方向の中心線が一致する状態でパネル基材20の両側縁に対向して形成される。そして、固定側コネクタ収容凹部22の大きさは、固定側コネクタ31よりもわずかに大きな大きさ(施工時に必要な最低限の余裕をもった大きさ)とされ、固定側コネクタ31は引き出し不能な状態で固定側コネクタ収容凹部22内に収納されている。
【0004】
一方、可動側コネクタ32は、床暖房施工時での床暖房パネル10同士の電気的接続を容易にするために、電源線40に引き出し代41を設け、その先端に接続されている。施工時には、可動側コネクタ32を、前記引き出し代41を利用して、前記可動側コネクタ収容凹部24から引き出し、引き出した状態で隣接する床暖房パネル10の固定側コネクタ31に接続する。接続後、図3(b)に示すように、可動側コネクタ32は、前記引き出し代41とともに、可動側コネクタ収容凹部24内に収納される。引き出し代41と可動側コネクタ32の双方を確実に収容できるように、可動側コネクタ収容凹部24の大きさは、横幅と奥行きの双方において、固定側コネクタ収容凹部22よりも大きくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−315502号公報
【特許文献2】特開2008−83138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記した形態の床暖房パネル10を用いて、床暖房施工を行ってきているが、施工の具合によっては、歩行による上からの荷重がかかったときに、固定側コネクタ31と可動側コネクタ32との接合部において、異音(床鳴り音)が発生する場所と発生しない場所があることを経験した。そして、床鳴りは、図4(a)に示すように、接合したコネクタにおける固定側コネクタ31が固定側コネクタ収容凹部22の側壁に当接することにより発生していた。一方、床鳴りが起こらない場所を見てみると、図4(b)に示すように、隣接する床暖房パネル10A,10Bとの間に、わずかな貼りずれ、すなわち、床暖房パネル10Aのコネクタ収容凹部の中心線a1と床暖房パネル10Bのコネクタ収容凹部の中心線b1との間に距離cの位置ずれが、施工時に生じており、そのために、固定側コネクタ31が固定側コネクタ収容凹部22の側壁に当接していなかった。
【0007】
図4(a)に示す、固定側コネクタ31と固定側コネクタ収容凹部22の側壁との当接は、次のようにして起こると考えられる。すなわち、隣接する床暖房パネル10A,10B同士を接続するときに、作業者は、図4(a)に示すように、可動側コネクタ32は可動側コネクタ収容凹部24の幅方向のほぼ中央に位置し、また、固定側コネクタ31も固定側コネクタ収容凹部22の幅方向のほぼ中央に位置するように接続しようとする。また、床暖房パネルの表面に形成される疑似溝による繰り返し模様が隣接する床暖房パネル間でパターンずれが生じないように、床暖房パネル10Aのコネクタ収容凹部の中心線a1と床暖房パネル10Bのコネクタ収容凹部の中心線b1とを一致させて敷設しようとする。そのときに、電源線40の引き出し代41部分は、屈曲した姿勢で可動側コネクタ収容凹部24内に収容される。
【0008】
引き出し代41部分が単純に折り曲げられた姿勢で可動側コネクタ収容凹部24内に収容される場合には、屈曲した引き出し代41部分は内部応力を持たない。しかし、図4(a)に示すように、可動側コネクタ32を可動側コネクタ収容凹部24の幅方向のほぼ中央に位置させようとすると、引き出し代41部分は多くの屈曲部を持った姿勢で、かつ屈曲した引き出し代41の一部が可動側コネクタ収容凹部24の側壁にぶつかった姿勢で、可動側コネクタ収容凹部24内に収容されることとなり、引き出し代41内の電線は弾性を持つことから、屈曲を開放する方向の内部応力を持つようになる。
【0009】
その内部応力によって、可動側コネクタ32は、図4(a)で右方向への付勢を受け、可動側コネクタ32に接続している固定側コネクタ31も右方向への付勢を受ける。それにより、固定側コネクタ31は図で右方向に移動し、結果、固定側コネクタ31は固定側コネクタ収容凹部22の側壁に当接してしまう。床暖房パネル10が不織布層と発泡樹脂層との2層構成とされる緩衝材層を裏面に有する場合には、固定側コネクタ31が発泡樹脂層と接触することでも、異音が発生する。
【0010】
一方、可動側コネクタ32は、引き出し代41内の内部応力が解放される状態まで移動しても、可動側コネクタ収容凹部24は横幅が広く作られており、可動側コネクタ32が可動側コネクタ収容凹部24の側壁に当接することはない。
【0011】
しかし、固定側コネクタ31が可動側コネクタ32と共に移動すると、固定側コネクタ収容凹部22の大きさは、固定側コネクタ31よりもわずかに大きな大きさとされているために、前記したように、固定側コネクタ31が固定側コネクタ収容凹部22の側壁に当接する状態になる。一方、図4(b)に示すように、前記距離cの貼りずれが予め生じていると、固定側コネクタ31が図で右方向に移動するような付勢力を受けても、固定側コネクタ収容凹部22それ自体が右方向に移動していることから、その距離の大きさによっては、固定側コネクタ31が固定側コネクタ収容凹部22の側壁に当接するのを回避することができ、床鳴り発生を回避することができる。しかし、そのような貼りずれでもって床鳴りを解消しようとすると、床暖房パネルの表面に形成される疑似溝による繰り返し模様が隣接する床暖房パネル間でパターンずれが生じて表面模様の繰り返しに齟齬が生じ、床面の意匠性が低下する。
【0012】
本発明は、上記のように事情を背景になされたものであり、固定側コネクタ31と固定側コネクタ収容凹部22の側壁との当接による床鳴りを、床面の意匠性を低下させることなく、確実に阻止することのできる床暖房パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による床暖房パネルは、木質材によって形成されたパネル基材と、前記パネル基材の裏面側に配設される電気ヒータと、前記電気ヒータに結線された状態で前記パネル基材を横断する電源線と、前記パネル基材の一方の側縁に形成された固定側コネクタ収容凹部と、前記電源線の一端側に接続され前記固定側コネクタ収容凹部に収容保持される固定側コネクタと、前記パネル基材の他方の側縁において前記固定側コネクタ収容凹部と対向する位置に形成された可動側コネクタ収容凹部と、前記電源線の他端側に接続され前記可動側コネクタ収容凹部に引き出し可能に収容される可動側コネクタと、前記電気ヒータ及び前記電源線を前記パネル基材との間に挟み込むように、前記パネル基材の裏面に貼着される緩衝材と、を備えた床暖房パネルにおいて、前記可動側コネクタ収容凹部は前記固定側コネクタ収容凹部よりも横幅が広く、かつ前記固定側コネクタ収容凹部は、前記他方側の側縁に形成された可動側コネクタ収容凹部の一方の側縁側に所定距離だけ偏位した位置において、前記一方側の側縁に形成されていることを特徴とする。
【0014】
図2(a)に示すように、本発明による床暖房パネル10Xでは、可動側コネクタ収容凹部24の中心線と固定側コネクタ収容凹部22の中心線は、距離dだけずれている。この偏位距離dは、前記電源線40の引き出し代41が可動側コネクタ収容凹部24内に内部応力を有しない状態で収容されたときに可動側コネクタ32が位置するときの前記可動側コネクタ32の中心線と、可動側コネクタ収容凹部24の中心線との距離であることが最も好ましいが、厳密にその距離でなくてもよく、前記したように、固定側コネクタ収容凹部が、他方側の側縁に形成された可動側コネクタ収容凹部の一方の側縁側にある程度偏位した位置において、一方側の側縁に形成されていれば、所期の目的は達成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による床暖房パネルでは、施工後において、各床暖房パネルでの固定側コネクタ31と可動側コネクタ32とがそれぞれの収容凹部22、24に納まった状態で、換言すれば、可動側コネクタ32が、引き出し代41が可動側コネクタ収容凹部24内に内部応力を有しない状態で可動側コネクタ収容凹部24内に収まったときに、図2(b)に示すように、各床暖房パネルでの固定側コネクタ31と可動側コネクタ32との中心線L1,L2は直線状に揃うようになる(なお、図2(b)では、床暖房パネル10Bについてのみ、その状態を図示している)。そのために、引き出し代41の内部応力によって可動側コネクタ32が横方向に移動することはなく、結果として、固定側コネクタ31が側方に移動することもない。それにより、図4(b)に示したような貼りずれを設けなくても、固定側コネクタ31が収容凹部22に側壁に接触して床鳴りが発生するのを確実に回避することができる。また、貼りずれを設ける必要がないので、床暖房パネルの表面に形成される疑似溝による繰り返し模様にパターンずれのない意匠性の高い床面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は本発明による床暖房パネルの一例を示す裏面図、図1(b)はその断面図、図1(c)は床暖房パネルの施工後での状態を示す図。なお、図1(a)(c)では、裏面に貼り付ける緩衝材は省略している。
【図2】本発明による床暖房パネルにおいて床鳴りが解消される理由を説明するための模式的図。
【図3】図3(a)は従来の床暖房パネルの一例を示す裏面図、図3(b)はその床暖房パネルの施工後での状態を示す図。いずれにおいても、裏面に貼り付ける緩衝材は省略している。
【図4】従来の床暖房パネルで床鳴りが発生する原因を説明するための模式的図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明による床暖房パネルの一形態を説明する。
図1(a)に示す本発明による床暖房パネル10Xは、図3に基づき説明した床暖房パネル10と同様に、木質材によって形成されたパネル基材20と、パネル基材20の裏面側に形成した配線溝内に配設される電気ヒータ30と、電気ヒータ30に結線された状態でパネル基材20を横断する電源線40とを備える。電源線40の一端側には固定側コネクタ31が接続され、他端側には可動側コネクタ32が接続される。また、パネル基材20の一方の側縁21側には固定側コネクタ31を収容保持する固定側コネクタ収容凹部22が形成され、他方の側縁23側には可動側コネクタ32を収容保持する可動側コネクタ収容凹部24が形成される。
【0018】
パネル基材20の裏面には、図1(b)に示すように、パネル基材20の短手方向に走る多数本の遮音溝36が形成され、また、直貼り床材として用いることができるように、緩衝材層37が貼り付けられている。この例において、緩衝材層37は、不織布層38と発泡樹脂層39との2層構成とされている。
【0019】
本発明による床暖房パネル10Xにおいて、側縁23側に形成した可動側コネクタ収容凹部24は、前記した引き出し代41を内部応力を有しない状態で収容できるように、側縁21側に形成した固定側コネクタ収容凹部22よりも、横幅が広くされている。そして、固定側コネクタ収容凹部22は、側縁23側に形成した可動側コネクタ収容凹部24の一方の側縁25側に所定距離dだけ偏位した位置において、側縁21側に形成されている。
【0020】
好ましくは、前記偏位距離dは、先に、図2(a)に示しかつ説明したように、施工後に、電源線40の引き出し代41が可動側コネクタ収容凹部24内に内部応力を有しない状態で収容されたときに可動側コネクタ32が位置するときの可動側コネクタ32の中心線と、可動側コネクタ収容凹部24の中心線との距離とされる。なお、前記偏位距離dは、床暖房パネルにおける前記引き出し代41の長さに依存する値であり、それぞれの床暖房パネルにおいて、適値が決定される。
【0021】
本発明による床暖房パネル10Xでは、先に、図2(b)に示しかつ説明したように、施工後において、互いに接続する床暖房パネル10A,10Bの各固定側コネクタ31と可動側コネクタ32は、それぞれの収容凹部22、24に納まった状態で、図1(c)に示すように、その中心線L1,L2が直線状に揃うようになる。また、可動側コネクタ32には側方への力は作用していない。そのために、固定側コネクタ31が収容凹部22内で側方に移動することはなく、施工後に、固定側コネクタ31が側壁に接触して床鳴りが発生するのを回避することができる。また、床暖房パネルの表面に形成される繰り返し模様にパターンずれのない意匠性の高い床面が得られる。
【0022】
なお、本発明による床暖房パネル10Xにおいて、電気ヒータは従来の床暖房パネルで用いられている任意の電気ヒータを用いることができる。中でも、特開2009−030898号公報に記載される、通電により発熱する第1と第2の2本のヒータ線と検知線とからなり、第1のヒータ線と検知線は第1の被覆樹脂で被覆され、第2のヒータ線は第1の被覆樹脂よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている形態の3線式ヒータを用いることは好ましい。
【符号の説明】
【0023】
10X…床暖房パネル、
20…パネル基材、
22…固定側コネクタ収容凹部、
24…可動側コネクタ収容凹部、
25…可動側コネクタ収容凹部の一方の側縁、
30…電気ヒータ、
31…固定側コネクタ、
32…可動側コネクタ、
36…遮音溝、
37…緩衝材層、
38…不織布層、
39…発泡樹脂層、
40…電源線、
L1…固定側コネクタの中心線、
L2…可動側コネクタの中心線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材によって形成されたパネル基材と、前記パネル基材の裏面側に配設される電気ヒータと、前記電気ヒータに結線された状態で前記パネル基材を横断する電源線と、前記パネル基材の一方の側縁に形成された固定側コネクタ収容凹部と、前記電源線の一端側に接続され前記固定側コネクタ収容凹部に収容保持される固定側コネクタと、前記パネル基材の他方の側縁において前記固定側コネクタ収容凹部と対向する位置に形成された可動側コネクタ収容凹部と、前記電源線の他端側に接続され前記可動側コネクタ収容凹部に引き出し可能に収容される可動側コネクタと、前記電気ヒータ及び前記電源線を前記パネル基材との間に挟み込むように、前記パネル基材の裏面に貼着される緩衝材と、を備えた床暖房パネルにおいて、
前記可動側コネクタ収容凹部は前記固定側コネクタ収容凹部よりも横幅が広く、かつ前記固定側コネクタ収容凹部は、前記他方側の側縁に形成された可動側コネクタ収容凹部の一方の側縁側に所定距離だけ偏位した位置において、前記一方側の側縁に形成されていることを特徴とする床暖房パネル。
【請求項2】
前記偏位距離が、前記電源線の引き出し代が可動側コネクタ収容凹部内に内部応力を有しない状態で収容されたときに可動側コネクタが位置するときの前記可動側コネクタの中心線と、可動側コネクタ収容凹部の中心線との距離であることを特徴とする請求項1に記載の床暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−230296(P2010−230296A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81298(P2009−81298)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】