説明

廃棄物の処理方法

【課題】濾過砂等の粒状廃棄物の再生処理を周辺環境に悪影響を及ぼすことなく行える安全性の高い廃棄物の処理方法を提案する。
【解決手段】被処理材としての粒状廃棄物を加熱処理する加熱処理工程と、加熱処理された粒状廃棄物に対して再生処理を行う再生処理工程を備える。係る構成によれば、例え、粒状廃棄物が人体に悪影響を与えるおそれのある病原生物に汚染されていたとしても、該粒状廃棄物はこれが再生処理される前に加熱処理が施されることで、この病原生物が死滅し、この病原生物が再生処理段階で周辺環境へ飛散するというような事態の発生が未然に且つ確実に防止され、周辺環境へ悪影響を及ぼすことのない安全性及び信頼性の高い廃棄物の処理が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば使用済み濾過材等の廃棄物の再使用を可能にするための処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の処理方法としては、廃棄物の種類とか性状等に対応して、種々の処理方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に示されるものは、有害物を含有する廃棄物の処理方法に関するものであって、有害物を含有する廃棄物にセメント及び石灰を添加して混合し、これを水熱処理(湿熱処理)することで有害物質を固定化しその溶出を抑制するものである。
【0004】
特許文献2に示されるものは、建設汚泥を原料として再生砂を製造するための処理方法であって、建設汚泥の脱水ケーキとセメントを原料とし、これを加水混練して造粒し、この造粒物を養生して再生砂として回収するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2007−268513号公報
【特許文献2】 特開2004−67399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に示される廃棄物の処理方法は、有害物を含有する廃棄物を処理して有害物を固定化してその溶出を抑制するものの、その有害物を無害化するとか消滅させるものではなく、従って、この処理された廃棄物を再使用、特に廃棄以前の用途に再使用することはできず、廃棄物の再使用化には何ら寄与し得ない。
【0007】
また、有害物質の固定化のための廃棄物に水熱処理を行うようにしているが、この水熱処理は廃棄物にセメント及び石灰を添加して混合した後に実行されることから、例えば、この水熱処理に至るまでの処理、即ち、廃棄物にセメント及び石灰を添加して混合する処理の間に有害物質が周辺環境に飛散して環境汚染を招来することが懸念される。また、水熱処理は高温高圧の蒸気を用いて行うことから、例えば、廃棄物に細菌が付着している場合にはその殺菌作用が期待できることになるが、この場合も、水熱処理に至るまでの処理の間に細菌が周辺環境に飛散して環境汚染を招来することが懸念される。
【0008】
特許文献2に示されるものは、建設汚泥をこれと性状の異なる砂として再生させるもので、廃棄前の用途に再使用できるように再生させるものではない。従って、例えば、使用後に廃棄された濾過砂とか濾過砂利(以下、「濾過砂等」という)に再生処理を施して再度、濾過砂等として使用できるように再生する処理には適用することはできない。
【0009】
一方、水道水の水質保全は、主として、水に含まれる大腸菌とか黄色ブドウ球菌等の病原生物を不活性化する塩素殺菌法に依存しているのが現状である。しかし、近年、クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原生物による水質汚染事故に関して、厚生労働省から水道施設の技術的基準が示され、これを受けて、耐塩素性病原生物による水質汚染対策が急務となっているが、この技術的基準では耐塩素性病原生物による水質汚染対策の手法として、各種の濾過法とか、塩素、オゾン、紫外線による不活性化法の基準が示されているものの、これらについての具体的かつ有効な対策技術は示されていない。
【0010】
なお、特に濾過砂等を用いた濾過装置では、その運用として、一定期間濾過に使用され雑菌とか不純物が付着捕集された濾過砂等は、これを水洗洗浄して再使用するか、そのまま廃棄処分にするようにしている。しかし、クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原生物は、塩素殺菌によって不活性化されずに、濾過砂等の表面に付着した状態で、あるいは濾過砂等の内部細孔内に侵入した状態で存在しているため、濾過砂等を水洗洗浄すると濾過砂等の表面から洗い落とされた耐塩素性病原生物は洗浄水中に混入して排出され、二次的な水質汚染による周辺環境の悪化を招来すること懸念される。また、水洗洗浄では濾過砂等の細孔内に侵入した耐塩素性病原生物の除去は不可能であることから、水洗洗浄した濾過砂等をそのまま再使用すると、依然として耐塩素性病原生物による水質汚染という問題が生じることになる。
【0011】
そこで本願発明は、濾過砂等の粒状廃棄物の再生処理を周辺環境に悪影響を及ぼすことなく行える安全性の高い廃棄物の処理方法を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0013】
本願の第1の発明では、被処理材としての粒状廃棄物を加熱処理する加熱処理工程と、加熱処理された粒状廃棄物に対して再生処理を行う再生処理工程を備えたことを特徴としている。
【0014】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る廃棄物の処理方法において、上記加熱処理を湿熱処理又は乾熱処理としたことを特徴としている。
【0015】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る廃棄物の処理方法において、上記再生処理工程として、上記粒状廃棄物の表面を研磨する研磨処理工程と、粒状廃棄物を粒径毎に分級する分級処理工程と、上記粒状廃棄物を洗浄する洗浄処理工程の少なくとも何れか一の処理工程を備えたことを特徴としている。
【0016】
本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明に係る廃棄物の処理方法において、上記粒状廃棄物が濾過砂又は/及び濾過砂利であって、該濾過砂又は/及び濾過砂利を廃棄後洗浄することなく加熱処理することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0018】
(a)本願の第1の発明に係る廃棄物の処理方法によれば、被処理材としての粒状廃棄物を加熱処理する加熱処理工程と、加熱処理された粒状廃棄物に対して再生処理を行う再生処理工程を備えているので、例えば、上記粒状廃棄物が人体に悪影響を与えるおそれのある病原生物に汚染されていたとしても、該粒状廃棄物はこれが再生処理される前に加熱処理が施され病原生物が死滅されるので、この病原生物が再生処理段階で周辺環境へ排出あるいは飛散するというような事態の発生が未然に且つ確実に防止され、その結果、安全性及び信頼性の高い廃棄物の処理が実現される。
【0019】
(b)本願の第2の発明に係る廃棄物の処理方法によれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、粒状廃棄物に対する加熱処理を湿熱処理又は乾熱処理で行うようにしているので、粒状廃棄物の性状とか病原生物による汚染状況等の条件に照らして湿熱処理と乾熱処理の何れかを選択すればよく、廃棄物処理の効率化と処理方法の多様化が図れる。
【0020】
(c)本願の第3の発明に係る廃棄物の処理方法によれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記再生処理工程として、上記粒状廃棄物の表面を研磨する研磨処理工程と、粒状廃棄物を粒径毎に分級する分級処理工程と、上記粒状廃棄物を洗浄する洗浄処理工程の少なくとも何れか一の処理工程を備えているので、再生処理後の粒状廃棄物を、廃棄以前の粒状体としての用途に再使用することができ、資源の有効利用が促進される。
【00121】
(d)本願の第4の発明に係る廃棄物の処理方法によれば、上記(a)、(b)又は(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記粒状廃棄物が濾過砂又は/及び濾過砂利であって、該濾過砂又は/及び濾過砂利を廃棄後洗浄することなく加熱処理するようにしているので、
(イ)濾過砂又は/及び濾過砂利の洗浄に使用された洗浄水による二次的な水質汚染が確実に防止され、
(ロ)加熱処理によって濾過砂又は/及び濾過砂利の表面に付着している耐塩素性病原生物が死滅される一方、濾過砂又は/及び濾過砂利の細孔内に侵入している耐塩素性病原生物は、加熱処理が湿熱処理である場合には伝熱による加熱作用と細孔への蒸気の侵入による加熱作用によって、また加熱処理が乾熱処理である場合には伝熱による加熱作用によって、確実に死滅されることで、濾過砂又は/及び濾過砂利の無菌化が達成され、
これらの相乗効果として、濾過砂又は/及び濾過砂利を高い安全性の下で再使用することができ、延いては、水質維持によって国民の健康増進に寄与し得るとともに、資源の有効利用という点においも極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】 本願発明の廃棄物の処理方法の実施に供され廃棄物処理プラントのシステム図である。
【図2】 廃棄物の処理方法における作業フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【00023】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0024】
図1及び図2には、本願発明の廃棄物の処理方法のシステム構成を示し、また図2はその作業工程を示している。
【0024】
この実施形態に示される廃棄物の処理方法は、水道水の濾過装置に使用される濾過砂等の再生処理作業に適用されるものであって、使用済みの濾過砂等を無害・無菌化して再度濾過砂等として使用することを目的としている。そして、この場合、無害・無菌化の対象を、大腸菌、黄色ブドウ球菌等の塩素殺菌法によって不活性化が可能な病原生物は勿論のこと、塩素殺菌法では処理できないクリプトスポリジウムとかジアルジア等の耐塩素性病原生物も対象としている。
【0025】
ここで、濾過砂等について説明すると、急速及び緩速濾過装置においては、「けい砂」等が濾過砂等として使用され、その粒径は急速濾過用濾過砂等で「0.45〜0.70mm」、緩速濾過用濾過砂等で「0.35〜0.45mm」と規定されている。この濾過砂等は、その長期の使用によってその表面に、大腸菌、黄色ブドウ球菌等の病原生物のほか、クリプトスポリジウムとかジアルジア等の耐塩素性病原生物が付着捕集される。さらに、この濾過砂等には多数の細孔が存在し、その口径は「100μm程度」とされるのに対して、例えば大腸菌の大きさは「0.5〜2μm」、クリプトスポリジウムはオーシストの大きさが「4.5〜5.4×4.2〜5.0μm」であるため、これらの病原生物は濾過砂等の細孔内に侵入しここに生残し得る。
【0026】
この場合、大腸菌、黄色ブドウ球菌等の病原生物は塩素殺菌によってほとんど不活性化されるのでさほど問題とはならないが、クリプトスポリジウムとかジアルジア等の耐塩素性病原生物は塩素殺菌によっても不活性化されずに生残するため問題である。なお、クリプトスポリジウムとかジアルジア等の耐塩素性病原生物は加熱に弱く、60℃以上でそのほとんどが死滅することが知られている。
【0027】
以上の諸点を勘案すれば、濾過砂等の再生処理においては、
(a)クリプトスポリジウムとかジアルジア等の耐塩素性病原生物を、濾過砂等の表面に付着捕集されたものは無論のこと、濾過砂等の細孔内に侵入して生残するものも完全に死滅除去すること、
(b)使用済みの濾過砂等の処理過程において、濾過砂等の表面あるいは細孔内に生残する耐塩素性病原生物による周囲環境の汚染を防止すること、
等を十分に考慮することが必要であり、この実施形態の処理方法はこれらの点を考慮した構成となっている。以下、これを具体的に説明する。
【0028】
この実施形態の処理装置は、図1に示すように、搬送装置2とオートクレーブ3と研磨装置5及び分級・水洗装置6を備えて構成される。なお、この実施形態では、加熱処理として湿熱処理を採用した場合を例にとって説明し、乾熱処理を行うものについてはその説明を省略する。
【0029】
被処理材としての使用済みの濾過砂等は、ホッパー1に送給され、且つ該ホッパー1から次述の搬送装置2側へ排出される(図2のステップS1の「被処理材搬入工程」参照)。
【0030】
上記搬送装置2は、複数の処理容器2aを備えて構成され、該各処理容器2a内には上記ホッパー1から濾過砂等が投入される。そして、この搬送装置2は、上記各処理容器2a内に投入される濾過砂等を該各処理容器2aと共に上記オートクレーブ3内に搬入する(図2のステップS2の「搬送工程」参照)。
【0031】
上記オートクレーブ3は、上記搬送装置2によって搬入された濾過砂等に対して加熱処理として「湿熱処理」を施す(図2のステップS3の「加熱処理工程」参照)。この実施形態では、湿熱処理を、圧力6〜10kg/cm、温度160〜180℃の飽和蒸気雰囲気で3〜4時間保持して行うようにしている。
【0032】
なお、他の実施形態では、加熱処理として湿熱処理を採用するのに代えて「乾熱処理」を採用することもできる。この乾熱処理は、例えば、ヒータとか過熱蒸気を熱源として、120℃〜180℃の処理温度で4〜6時間保持することで行われ、処理時間は高圧下での処理ではないため湿熱処理の場合よりも長くなる。このように、乾熱処理の処理時間を湿熱処理の場合よりも長く設定することで、湿熱処理の場合と同様の処理効果を得ることができる。
【0033】
上記研磨装置5は、ホッパー4から送給される湿熱処理後の濾過砂等を受けて、これに研磨処理を施してその表面の汚れとか着色を研除する(図2のステップS4の「研磨工程」参照)。
【0034】
上記分級・水洗装置6は、上記研磨装置5において研磨された濾過砂等を受け、これを粒径に応じて分級するとともに、水洗洗浄する(図2のステップS5の「分級工程」及びステップS6の「水洗工程」参照)。
【0035】
上記分級・水洗装置6において分級及び水洗された濾過砂等は、その粒径毎に再生材7として取出され、濾過砂等として再使用される(図2のステップS7の「再生材取出工程」参照)。なお、この再生材7の用途は、濾過砂等としての再使用に限らず、一般的な砂材(例えば、ゴルフ場の「目土」とか、コンクリート骨材)としても使用されることは勿論である。
【0036】
なお、研磨装置5における研磨工程と、分級・水洗装置6における分級工程及び水洗工程は、必ずしもこれら全てを備えて実行することが要求されるものではなく、濾過砂等の汚れの程度とか、粒径の分布状態等の状況に応じて適宜選択して実行できるものである。
【0037】
以上の処理工程を備えた廃棄物の処理方法によれば以下のような特有の作用効果が得られる。
【0038】
(A) 被処理材としての濾過砂等を加熱処理する加熱処理工程と、水加熱処理された濾過砂等に対して再生処理を行う再生処理工程を備えており、しかも、この加熱処理が、圧力6〜10kg/cm、温度160〜180℃で3〜4時間保持する湿熱処理で、又は120℃〜180℃の処理温度で4〜6時間保持する乾熱処理で行われることで、例え、クリプトスポリジウムとかジアルジア等の耐塩素性病原生物が上記濾過砂等の表面に付着捕集状態で、あるいは濾過砂等の細孔内への侵入状態で生残していても、この耐塩素性病原生物は60℃以上で死滅するなど熱に弱いことから、上記加熱処理によって濾過砂等はその表面及び細孔内のいずれにもリプトスポリジウムとかジアルジア等の耐塩素性病原生物が生残しない清浄な濾過砂等として再生され、再度、濾過砂等として濾過装置において使用することができ、延いては、水質維持によって国民の健康増進に寄与し得るとともに、資源の有効利用にも寄与し得るものである。
【0039】
(B) 上記濾過砂等に対する加熱処理が、再生処理工程の実施前に行われることで、例え濾過砂等がリプトスポリジウムとかジアルジア等の耐塩素性病原生物に汚染されていたとしても、この耐塩素性病原生物は再生処理工程の実施前に死滅する。従って、この濾過砂等の洗浄時に耐塩素性病原生物が洗浄水に混入して周辺環境に排出されて二次的な水質汚染を発生するとか、濾過砂等の研磨工程において研磨粉と共に耐塩素性病原生物が周辺に飛散して周辺環境に悪影響を及ぼす等の事態の発生が未然に且つ確実に防止される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本願発明は、例えば、濾過砂等の粒状廃棄物を再使用するための廃棄物処理産業において利用されるものである。
【符号の説明】
【0041】
2 ・・搬送装置
3 ・・オートクレーブ
5 ・・研磨装置
6 ・・分級・水洗装置
7 ・・再生材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理材としての粒状廃棄物を加熱処理する加熱処理工程と、加熱処理された粒状廃棄物に対して再生処理を行う再生処理工程を備えたことを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】
請求項1において
上記加熱処理が湿熱処理又は乾熱処理であることを特徴とする廃棄物の再処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記再生処理工程が、上記粒状廃棄物の表面を研磨する研磨処理工程と、粒状廃棄物を粒径毎に分級する分級処理工程と、上記粒状廃棄物を洗浄する洗浄処理工程の少なくとも何れか一の処理工程を備えることを特徴とする廃棄物の再処理方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3において、
上記粒状廃棄物が濾過砂又は/及び濾過砂利であって、該濾過砂又は/及び濾過砂利は廃棄後洗浄されることなく加熱処理が施されることを特徴とする廃棄物の再処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−86092(P2013−86092A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240653(P2011−240653)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(507217453)多和砕石工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】