廃水の処理方法および装置
本発明は、銅を含む各種廃水から銅等の金属を除去・回収する方法および装置に関する。本発明の方法は、銅を含む廃水を電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるCu処理工程(10)により処理し、銅濃度が低められた処理水(107)を得るとともに、銅を回収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種廃水から銅等の金属を除去・回収する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき廃水、半導体装置製造工程廃水、プリント基板製造廃水、鉱山廃水などのような重金属を含む廃水の処理にあたっては、廃水中の重金属を除去し、必要に応じてこれを回収することが求められている。
【0003】
例えば、近年、半導体集積回路などの半導体装置の製造において、微細化への要求が一段と厳しくなるのに伴って、配線抵抗による信号遅延が問題になってくる。この問題を解決するために、アルミニウムやタングステンなどに代えて銅配線が用いられるようになってきた。
【0004】
即ち、中央処理装置(CPU)やダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)などの半導体チップの高集積化に伴い、チップ内の配線材料として、従来のアルミニウムから、より電気抵抗の低い銅が、特に配線の最小線幅が0.13μm以下のチップで採用されつつある。
【0005】
このような銅配線を用いる場合、銅はエッチングによるパターン形成が困難なため、通常、めっきによるダマシンプロセスで成膜し、成膜後に化学機械研磨(CMP)や電解研磨(ECP)などの方法によって膜の表面を研磨して配線を形成する。
【0006】
図25A乃至図25Eにその配線形成方法の一例を示す。まず、図25Aに示すように、半導体素子を形成した半導体基材201の上に導電層202を形成し、この上に更にSiO2からなる絶縁膜203を堆積する。そして、絶縁膜203の層の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、コンタクトホール204と配線用の溝205を形成する。次に、図25Bに示すようにバリア層206を形成する。バリア層としては、例えば、Ta、TaN、TiN、WN、SiTiN、CoWP、CoWB等の金属若しくは金属化合物材料が用いられる。次に、電解めっき法で銅層を形成する場合には、図25Cに示すように、バリア層206の上に電解めっきの給電層としての銅シード層207をスパッタリング法などにより形成する。また、銅層を無電解めっき法で形成する場合には、銅シード層に代えて、バリア層206の上に前処理を行って触媒層207を形成する。
【0007】
次に、図25Dに示すように、銅シード層若しくは触媒層207の表面に電解めっき法若しくは無電解めっき法で銅めっきを施すことにより、コンタクトホール204及び配線用溝205内に銅を充填させると共に、絶縁膜203の上に銅層208を堆積させる。その後、化学機械研磨(CMP)法や電解研磨(ECP)法などによって絶縁膜203上の銅層208を除去して、コンタクトホール204及び配線用溝205に充填した銅層208の表面と絶縁膜203の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図25Eに示すように、絶縁膜203の内部に銅シード層若しくは触媒層207、銅層208からなる配線を形成する。
【0008】
このような状況下で、半導体装置製造工程における電解若しくは無電解めっき法による銅めっき工程や、集積回路マイクロチップの化学機械研磨(CMP)若しくは電解研磨(ECP)工程においては、銅イオンを大量に含む廃水が生じる。廃水中の銅イオンに関しては、許容限度として、日本では最大濃度が3.0mg/L以下に規制されており、また米国においては、一例として最大濃度が2.7mg/L以下、一日あたりの平均濃度が1.0mg/L以下、1年あたりの平均濃度が0.4mg/L以下に、より厳しく規制されている。従って、廃水中の銅を効率よく除去する技術を提供することが強く求められている。
【0009】
現在の半導体装置製造工場においては、CMP装置1台あたり最大で0.5m3/h程度の廃水が生成し、廃水中の銅濃度は最大で100mg/L程度、同様に銅めっき装置1台あたり最大で0.2m3/h程度の廃水が生成し、廃水中の銅濃度は最大で100mg/L程度というのが大凡の現状である。銅配線を利用する半導体装置の平均的な半導体装置製造工場では、一つの工場あたり銅配線工程用のCMP装置が10台程度、銅めっき装置が10〜20台程度設置されている場合があり、これら装置から排出される銅含有廃水の総量は最大で220m3/日程度になり、廃水中に含まれる銅の総量は最大で約22kg−Cu/日にもなる。従って、この廃水から銅を効率よく回収して再利用することが、環境保護のみならず、省資源の観点からも、強く求められている。
【0010】
また、従来の半導体装置製造を含む設備産業では、工場内における各種工程からの廃水を集めて回収し、これを一括して処理するという総合廃水処理設備の考え方が主流であったが、製造プロセスの技術の進化が早い半導体装置製造においては、それぞれの工程での廃水をその場で処理するという方法、即ちユースポイントで廃水を処理する方法が求められている。これは、従来の少品種・大量生産型から多品種・少量生産型へと生産方式が変わってきているため、製造品種の変更頻度の増加に伴って廃水の性状変動が大きくなってきていることによる。
【0011】
CMPプロセス廃水や銅めっき廃水中の銅濃度は通常100mg/L以下であるので、これまでは、これらの廃水からの銅の回収処理には、運転電圧の上昇の問題から電解析出法は用いられていなかった。また、イオン交換樹脂法では銅は銅イオンとしてイオン交換樹脂に吸着されて回収され、また凝集沈殿法では銅は水酸化物又は酸化物の形態で沈殿・回収されるので、いずれも、回収された銅を再利用する際には、更なる処理が必要であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のような現状の下、被処理水の水質変動に対応可能で、高濃度の銅イオンを含む廃水から低濃度の銅イオンを含む廃水まで幅広く処理することが可能で、更に、被処理水量が多くても十分に対応することのできる、廃水から銅等の金属を除去・回収する方法および装置、特に半導体装置製造プロセス廃水から銅を除去・回収する方法および装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、銅を含有する半導体装置製造プロセスからの廃水を処理する方法として、電解析出操作と、電気透析操作とを組み合わせることにより、廃水中の銅を効果的に除去・回収することができることを見出した。即ち、本発明の一態様は、電解析出操作と電気透析操作とを組み合わせたことを特徴とする、銅を含む被処理水の処理方法に関する。
【0014】
本発明の第1の態様に係る廃水の処理方法は、銅を含む廃水を電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるCu処理工程により処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、銅を廃水から回収することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第2の態様に係る廃水の処理方法は、銅を含む廃水中の酸化剤を酸化剤分解工程にて分解し、前記酸化剤分解工程から排出された廃水をCu処理工程に供給し、前記Cu処理工程において電気透析操作と電解析出操作を組み合わせることにより廃水を処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、銅を廃水から回収することを特徴とするものである。
【0016】
上記のような被処理水中に含まれる過酸化水素などの酸化剤を除去する目的で用いることのできる処理工程としては、活性炭による触媒分解、貴金属触媒、例えばチタニア担持白金触媒、アルミナ担持白金触媒などによる触媒分解、二酸化マンガン触媒による触媒分解、電気分解、紫外線処理、オゾン添加、ヒドラジン、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤による分解処理、H2O2分解酵素(カタラーゼ)などによる酵素分解などの処理を挙げることができる。アルミナ担持白金触媒などの白金触媒を用いる場合には、ハニカム形状の触媒を用いると比表面積が大きくとれ、ガスの分離性もよく分解速度が増すのでより好ましい。
【0017】
また、ハニカム形状の触媒は流路方向に連続した開口部を得ることができるので、開口部面積より小さな粒子であれば触媒内に蓄積することなく触媒を通過することが可能である。このため、例えばハニカム形状の触媒は、CMP廃水などのスラリーを含有する廃水中に含まれる酸化剤の分解に好適に用いることができる。
【0018】
本発明の一態様によれば、前記酸化剤分解工程は、白金を担持させた触媒を用いることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記酸化剤分解工程は、過酸化水素分解工程であることを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様によれば、廃水から回収される銅は銅金属であることを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様によれば、前記酸化剤分解工程と前記Cu処理工程との間に、廃水からスラリーを分離するスラリー分離工程を設けたことを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様によれば、前記スラリー分離工程は、凝集分離処理または濾過処理を設けることを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記Cu処理工程は、電気透析操作により廃水中のCuをCuSO4濃縮水として分離濃縮する分離工程と、前記CuSO4濃縮水を電解析出操作により電解析出装置の陰極上にCuを析出する回収工程と、前記回収工程の処理水から硫酸の回収を行う酸回収工程とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様によれば、前記Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設け、固体の微粒子を含む前記廃水を前記ζ電位転化工程により処理することを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様によれば、前記廃水は固体の微粒子を含み、前記微粒子のζ電位がマイナスの値を有する場合には廃水を直接に前記Cu処理工程に導入することを特徴とする。
【0026】
本発明の一態様によれば、前記ζ電位転化工程は、スルホン酸基を有する有機化合物を廃水に添加することを特徴とする。
【0027】
本発明の一態様によれば、前記固体の微粒子はCMP工程で用いられる砥粒であることを特徴とする。
【0028】
本発明の一態様によれば、前記砥粒はSiO2、Al2O3、CeO2の少なくとも1種類を含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の一態様によれば、前記ζ電位転化工程は、界面活性剤又はpH調整剤を廃水に添加することを特徴とする。
【0030】
本発明の第3の態様に係る廃水の処理方法は、上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水を電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるCu処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得るとともに、銅を廃水から回収することを特徴とするものである。
【0031】
本発明の一態様によれば、前記Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設けることを特徴とする。
【0032】
本発明の一態様によれば、前記界面活性剤は、陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤であることを特徴とする。
【0033】
本発明の一態様によれば、前記陰イオン界面活性剤は金属カチオンを含まないことを特徴とする。
【0034】
本発明の一態様によれば、前記固体の微粒子は砥粒であり、該砥粒はSiO2、Al2O3、CeO2の少なくとも1種類を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の一態様によれば、前記洗浄工程における洗浄液は、界面活性剤を含んでいることを特徴とする。
【0036】
本発明の第4の態様に係る廃水の処理方法は、上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水をζ電位転化工程に導入して廃水中の固体の微粒子のζ電位をマイナスにし、前記微粒子を含む廃水をイオン交換処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とするものである。
【0037】
本発明の一態様によれば、前記イオン交換処理工程の前段に酸化剤分解工程を設けることを特徴とする。
【0038】
本発明の第5の態様に係る廃水の処理方法は、上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水をζ電位転化工程に導入して廃水中の固体の微粒子のζ電位をマイナスにし、前記微粒子を含む廃水を凝集沈殿処理工程又は凝集分離処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とするものである。
【0039】
本発明の一態様によれば、前記凝集沈殿処理工程又は前記凝集分離処理工程の前段に酸化剤分解工程を設けることを特徴とする。
【0040】
本発明の第6の態様に係る廃水の処理方法は、CMP工程のうちCu研磨工程から排出された廃水のみを処理して、銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とする。
【0041】
本発明の一態様によれば、前記廃水の処理は、電気透析処理、電解析出処理、イオン交換処理、凝集沈殿処理のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0042】
本発明の第7の態様に係る廃水の処理装置は、電気透析装置と、電解析出装置とを備え、前記電気透析装置と前記電解析出装置とを組み合わせることにより銅を含む廃水を処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、銅を回収することを特徴とするものである。
【0043】
本発明の一態様によれば、廃水から回収される銅は銅金属であることを特徴とする。
【0044】
本発明の一態様によれば、前記電気透析装置において電気透析操作により廃水中の銅をCuSO4濃縮水として分離濃縮し、前記電解析出装置において前記CuSO4濃縮水を電解析出操作により前記電解析出装置の陰極上に銅を析出し、前記電解析出装置から排出された処理水から硫酸の回収を行う酸回収装置を設けることを特徴とする。
【0045】
本発明の一態様によれば、前記電気透析装置の脱塩室内にイオン交換体を充填することを特徴とする。
【0046】
本発明の一態様によれば、前記電気透析装置の前段にζ電位転化装置を設けることを特徴とする。
【0047】
本発明の一態様によれば、前記ζ電位転化装置は、界面活性剤又はpH調整剤を貯留する薬液貯槽と、該薬液貯槽に貯留された界面活性剤又はpH調整剤を廃水に添加する添加手段とを備えることを特徴とする。
【0048】
本発明の一態様によれば、前記界面活性剤は、陰イオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤であることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面を参照しながら本発明の各種態様を説明する。以下の図面において、同じ参照番号は同じ構成要素を意味し、その重複する説明を省略する。
【0050】
図1は、本発明に係る電解析出操作と電気透析操作とを組み合わせた被処理水の処理方法を示す処理フローの概略図である。
【0051】
半導体装置製造プロセスにおけるCu−CMP工程、またはCuめっき工程1からのCuを含有した廃水は、過酸化水素分解工程2に供給される。過酸化水素分解工程2では、廃水に含まれている過酸化水素を白金担持触媒で分解する。過酸化水素分解工程2から排出された廃水は、スラリー分離工程3に供給される。Cu−CMP工程では、シリカやアルミナからなる砥粒が含まれているスラリーが用いられるため、このスラリーをスラリー分離工程3で凝集分離する。次いで、スラリー分離工程3の上澄み水を銅処理工程(Cu処理工程)10に供給してCu(銅)を銅金属の形で回収する。
【0052】
銅処理工程10は、分離工程11と、回収工程12と、酸回収工程13の3つの工程からなる。分離工程11に設けられた電気透析装置により、電気透析操作を行い、スラリー分離工程3から排出された廃水中のCuをCuSO4濃縮水として分離濃縮する。CuSO4濃縮水は、回収工程12に供給され、回収工程12に設けられた電解析出装置により、電解析出操作を行い、陰極上にCuが析出される。回収工程12の処理水は、酸回収工程13に供給され、酸回収工程13に設けられた酸回収装置により硫酸の回収を行う。ここで硫酸(H2SO4)の回収とは、分離工程11において、H2SO4循環ラインからCuSO4循環ラインに、移動したSO42−をH2SO4循環ラインに電気透析により戻すことをいう。これにより、H2SO4循環ライン中の硫酸濃度を維持することができる。
【0053】
分離工程と酸回収工程とを隣接または一体化して設けても良い。この場合は、図26に示すように一組の陽極と陰極の間に両方の工程を受け持つ電気透析装置とすることができる。
【0054】
図1に示すように、回収工程12は、電解析出装置が2系列並列に設けてある。電解析出装置の一方を20A、他方を20Bで表すと、電解析出装置20AにCuSO4濃縮水が循環されている場合は、電解析出装置20Bは循環系統から切り離されている。電解析出装置20AがCuSO4循環水中のCuを電解析出操作している間、電解析出装置20Bは槽内の残存CuSO4濃縮水中のCu濃度を下げる役割を果たす。槽内のCu濃度が十分に低減された後に槽内の水を排出する。また、排出後は新たに純水と硫酸を用いて酸性の溶液で槽内を満たす。その後、CuSO4濃縮水循環ラインを電解析出装置20Aから電解析出装置20Bに切り替え、電解析出装置20B側で循環させる。このとき電解析出装置20Aは循環系統から切り離され、電解析出装置20Bは槽内の残存液に対するCuの析出を行う。このような交互運転を繰り返し行うことにより、廃水中に銅イオン以外のカチオン類が存在する場合でも、Cuと共に濃縮されるカチオン類を定期的に系外へ排出することができる。また、定常的な運転が可能となる。電解析出槽内の液を系外へ排出する場合の排出先は、処理水の排出先と同じでもよく、異なっていてもよい。装置の設置スペースに制約がある場合または銅以外のカチオン類の濃度が極めて薄い場合は、電解析出装置は2系列並列に設けずに、1系列のみとしてもよい。
【0055】
図1において、処理水槽14は、分離工程11でCuが除去された処理水を溜める槽である。なお、処理水の排出先の事情に応じて、pH調整が可能なことは言うまでもない。図1において、スラリー分離工程3は、括弧を用いて示してあるが、スラリー分離工程3を省いて、過酸化水素分解工程2から流出した水を直接、Cu処理工程10に供給するフローも可能である。
【0056】
スラリー分離工程を設ける場合、スラリー分離に伴って発生する汚泥と共に汚泥に付着している母液として廃水中のCuの一部が排出され、Cu処理工程での処理対象とならない問題がある。
【0057】
スラリーを含んだ水をそのままCu処理工程10に供給する場合では、廃水中に含まれる全てのCuをCu処理工程に供給することができる。これにより、Cuの実質的な回収率を高めることができる。
【0058】
図2は、図1の処理フローの構成を更に詳細に図示した処理フローの全体を示す概略図である。図2では、電解析出装置は一系列としてある。過酸化水素分解工程2においては、Cu−CMP工程またはCuめっき工程1からの廃水は調整槽21に供給され、調整槽21内の攪拌機21aにより攪拌される。過酸化水素分解は、過酸化水素分解塔22で、メタルハニカム基材表面に白金を担持させた白金担持触媒を用いて行われる。過酸化水素分解塔22には、白金担持触媒を充填した3つのカラム22a,22b,22cが設けられており、この中に廃水を直列に通水させることにより、過酸化水素を酸素ガスと水に分離する。
【0059】
スラリー分離工程3は、混合槽31、凝集槽32、固液分離槽33、循環槽34、遠心分離機35、セラミック膜36から構成されている。混合槽31では、無機凝集剤として塩化第二鉄およびアルカリとして水酸化カリウムが添加され、凝集フロックが形成される。無機凝集剤およびアルカリは他の公知のものを用いても良い。凝集槽32では、高分子凝集剤が添加される。高分子凝集剤はアニオン系のものが好ましい。また、高分子凝集剤の添加率は1〜5mg/L、好ましくは3mg/Lである。無機凝集剤として塩化第二鉄を用いる場合、添加率は5〜200mg/L、好ましくは50mg/Lである。水酸化カリウムは、pHが5になるように、アルカリ剤として、添加される。高分子凝集剤が添加されることにより、凝集フロックが粗大化し、沈降速度を高めることができる。得られる沈降速度は、高分子凝集剤の添加率によって異なるが、スラリーの性状により概ね100mm/minである。
【0060】
固液分離槽33では固形分(凝集フロックの濃縮物)と液体との分離が行われる。固液分離槽33で沈降分離された汚泥は遠心分離機35に供給され、含水率が約85%の脱水汚泥が得られる。遠心分離機35で回収されたCuを含む母液は、混合槽31に循環返送される。固液分離槽33で得られた上澄み水はセラミック膜36で濾過され、これにより、凝集フロックまたは微粒子をほぼ完全に除去した膜透過水を得ることができる。セラミック膜36の孔径は、0.1〜1.0μmの範囲であるが、好ましくは0.1μmである。得られるフラックスは、概ね0.5〜2m3/(m2日)である。運転圧力は5〜20m−H2Oの範囲である。膜透過水は、透過水槽37に貯留される。透過水槽37から出た水は、銅処理工程10に供給される。なお、銅処理工程内のCu回収工程12は電解析出装置1台で構成されているが、共存カチオン濃度が低い、または共存カチオンがCuSO4循環ライン中に濃縮され続けても良い場合は1台でも良い。電解析出装置を2台以上並列接続して交互運転を行っても良いことは言うまでもない。
【0061】
図3は、過酸化水素分解工程の詳細を示す概略図である。図3に示すように、過酸化水素分解工程2は、調整槽21および過酸化水素分解塔22の2つから構成されている。調整槽21は、Cu−CMP工程またはCuめっき工程1の廃水を一時的に貯留する槽であり、水質変動を抑制し、均一な組成の廃水を後段に供給する役割を担う。調整槽21には、酸又はアルカリをpH調整剤として投入することも可能である。pH調整は、Cu−CMP工程またはCuめっき工程1から排出された廃水そのもののpHが高い場合に銅が水酸化銅つまり固形物の状態で存在することを考慮して、廃水に酸を添加して少なくともpH6以下、好ましくはpH5以下に調整することにより、水酸化銅の状態で存在する銅もCu2+イオンの状態にする操作を指す。Cu2+イオンの状態にすることにより、後段のCu処理工程10の性能を好適に保つことができる。
【0062】
過酸化水素分解工程2における過酸化水素分解塔22は、白金を担持したメタルハニカム触媒が充填された3つのカラム22a,22b,22cにより構成されている。メタルハニカム触媒の白金担持量は、1〜10g/Lの範囲、好ましくは2〜5g/Lの範囲である。セル密度(ハニカム細孔の密度)は、100〜1000セル/square inch、好ましくは200〜600セル/square inchである。メタルハニカム触媒は耐酸性コーティングを施した基材を用いることが好ましい。メタルハニカム触媒を充填したカラム22a,22b,22cに通水するときの通水条件は、LV(線速度)で10〜100m/hr、好ましくは、30〜60m/hrであり、接触時間としては、1〜10min、好ましくは、3〜5minである。過酸化水素が酸素と水に分解した結果生じる酸素ガスは、気液分離装置23を介して、過酸化水素分解塔22から排出される。過酸化水素分解を終えた処理水は、後段のスラリー分離工程3、またはスラリー分離工程3を介しない場合は、Cu処理工程10に直接供給される。なお、過酸化水素分解塔22における塔数は、分解すべき過酸化水素の量が少ない場合は、3塔よりも少なくても良い。分解すべき過酸化水素の量が多い場合は、過酸化水素の分解により発生する酸素ガスの発生量も増加し、実質的な水滞留時間が短くなってしまうことが懸念されるため、酸素ガスを被処理水から分離することを目的として3塔よりも多くしても良い。
【0063】
図4はスラリー分離工程の構成を更に詳細に示す概略図である。図4に示すように、スラリー分離工程は、混合槽41、凝集槽42、固液分離槽43、循環槽44、透過水槽37およびセラミック膜45から構成される。
【0064】
過酸化水素分解工程を経た処理水は混合槽41に供給される。混合槽41では、無機凝集剤としてFeCl3が供給される。この時混合槽41中のpHが約2.7程度になるが、アルカリを供給することによりpHが約5となるように処理水を調整する。このようにすることにより、水酸化鉄の微細なフロックが生成する。混合槽41の流出水は凝集槽42に供給される。
【0065】
凝集槽42では、高分子凝集剤(原液として0.1%溶液のものを挙げることができる)を供給する。この操作により、無機凝集フロックを粗大化し、沈降分離性のよいフロックを得ることができる。
【0066】
次に、凝集槽42で生成した凝集フロックを固液分離槽43により、濃縮スラッジと上澄み液に分離する。固液分離槽43は水のアップフローを汚泥の沈降速度以下となるような構成とする。
【0067】
上澄液はセラミック膜45に供給され、膜透過水は透過水槽37に貯留される。セラミック膜の運転は水を循環させつつ、一部の水を膜透過水として得るものであり、通常得ようとする膜透過水の10倍の流量を循環させる。なお、膜の材質はセラミック以外、例えば有機高分子であっても良い。
【0068】
本工程で使用される遠心分離機35はデカンタ型であり、固液分離槽43で得られた濃縮スラッジをさらに濃縮し、脱水を行う。遠心分離機は、概ね3000〜5000Gのものを用いることができる。この結果、脱水汚泥として含水率85%程度の脱水汚泥を得ることができる。分離された汚泥中の母液つまり分離水は、Cuを含んでいるため、混合槽41に返送される構成としている。
【0069】
図5及び図6は、銅処理工程の詳細の例を示す概略図である。
図5に示す銅処理工程10の1例は、Cu分離工程51、Cu回収工程52、酸回収工程53の3つから構成される。
【0070】
Cu分離工程51は、電気透析により原水中のCuをCuSO4濃縮水として分離回収する役目を担い、Cu分離工程を行なう電気透析装置は、第1の脱塩室54、第2の脱塩室55、濃縮室56、陰極室57、陽極室58の5つの部屋を有している。
【0071】
原水は、まず、第1の脱塩室54に供給される。第1の脱塩室54はグラフト重合法で作製したカチオン交換不織布が充填されている。また、隣接した部屋とはカチオン交換膜で仕切られている。第1の脱塩室54中に原水が供給されることにより、原水中のCuがカチオン交換不織布に捕捉され、捕捉されたCuは+極と−極の間に架けられた電位勾配により濃縮室56に移動する。なお、原水中に含まれるCu以外のカチオンもCuとほぼ同様の挙動を示す。第1の脱塩室54を流出した水は中間タンク59に一時的に貯留され、中間タンク59から出た水は第2の脱塩室55に供給される。なお、中間タンクは、必ずしも設ける必要はない。この場合は、第1の脱塩室54の流出水は直接第2の脱塩室55に供給される。
【0072】
第2の脱塩室55は第1の脱塩室54と同様にカチオン交換グラフト重合法で作製したカチオン交換不織布が充填されている。このような構成にすることにより、第1の脱塩室(中間脱塩室)54から漏れ出たCuをも第2の脱塩室55で捕捉除去し、電位勾配により第1の脱塩室54を介して最終的に濃縮室56へ移動させることができる。第2の脱塩室55においても、隣接する部屋とはカチオン交換膜で仕切られている。第2の脱塩室55で流出する水が最終的な処理水となる。ここで、第1または第2の脱塩室54,55の流入水に空気などの気体を加えることができる。気体を加えることにより発生する強い流動は、カチオン交換不織布の表面にスラリーが捕捉された場合に、このスラリーをカチオン交換不織布から剥離させる効果をもたらす。このような気体の注入操作を定期的に行うことにより、脱塩室の詰まりおよびカチオン交換不織布表面のスラリーによる被覆を抑制でき、定常的に原水中のCuを処理することが可能となる。
【0073】
濃縮室56では、第1の脱塩室54および第2の脱塩室55から供給されたCuイオンと陰極室57に満たされた硫酸から供給されるSO42−とが混合され、CuSO4濃縮水となってCu回収工程52に供給される。Cu分離工程51において、通電条件は、定電流運転であり、電流密度は1〜4A(アンペア)/dm2、好ましくは約3アンペア/dm2である。この場合の電圧は10〜40Vの範囲である。脱塩室および濃縮室の厚みは3〜10mm、好ましくは3〜5mmとする。
【0074】
また、CuSO4濃縮水はpHが2以下、好ましくは1.5以下になるように硫酸を添加する。CuSO4濃縮水中のCu濃度は500〜3000ppm、好ましくは約1000ppmである。500ppm以下ではCu回収工程でのCu析出速度が遅くなり、析出される電極面積が大きくなり、装置が大型化する。3000ppm以上ではCu分離工程で濃縮室と第1脱塩室とのCu濃度差が大きくなりすぎ、逆拡散が生じて効率を低下させてしまう。Cu回収工程のCuの析出能力がCu分離工程によるCu濃縮能力を上回る場合は原水のCu濃度を下回ってもよい。H2SO4循環ライン中のpHは2.0以下、好ましくは1.5以下とする。
【0075】
CuSO4濃縮水またはH2SO4循環ライン水のpH調整は、酸回収工程を担う電気透析装置にかける電流値の調整または硫酸の添加により行う。
【0076】
Cu回収工程52は、電解析出操作を行うことにより陰極表面上にCuをCuメタルとして回収する。図1に示したように、Cu回収工程52は電解析出装置を2系列以上並列に設けて交互運転する。または図2に示すように1系列で運転する。酸回収工程53は電気透析操作によりCuSO4循環ライン中に濃縮されたSO42−イオンをH2SO4循環ラインに戻す役目を担っている。CuSO4濃縮水が供給される部屋と硫酸水溶液が供給される部屋はアニオン交換膜により仕切られており、+極と−極の間に電位をかけることにより、CuSO4濃縮水から硫酸水溶液にSO42−が移動する。このようにして、SO42−を回収することにより、CuSO4循環ラインおよびH2SO4循環ライン中のSO42−濃度を定常的な濃度とすることができる。極室を除く各部屋の厚みは3〜10mm、好ましくは3〜5mmとする。
【0077】
酸回収工程53に設けられた酸回収装置における電流密度は2〜3アンペア/dm2である。酸回収装置は図5においては、1台であるが、酸回収工程53の能力により複数台必要な場合もある。この場合は、同様の構成の装置を複数台ならべてもよい。また、設置スペースを小さくする場合は、複極式として、1台あたりの処理能力を高めてもよい。
【0078】
図6に示す銅処理工程の別の1例は、Cu分離工程51におけるセルの構成が濃縮室56と陰極室57の間に硫酸水溶液が循環される部屋が設けられており、陰極室57には純水が充填されている点で図5と異なる。このような構成にすることにより、陰極室57で発生したOH−が直接的に濃縮室56に流入し、Cu(OH)2が濃縮室56内に析出する現象を抑制することができる。また、液の循環経路に圧力がかかる、またはイオン交換体およびイオン交換膜がCu(OH)2で被覆されイオン交換機能が損なわれるというデメリットを抑制することができる。なお、図5及び図6においては、極室に純水を連続的に供給または循環させる構成としても良い。また、Cu析出工程で発生するCu金属微粉を除去する目的で、Cu回収工程流出水を対象としたフィルターによる濾過設備を設けても良い。
【0079】
Cu分離工程51の設置スペースを小さくする場合は、酸回収工程53と同様に複極式としてもよい。
【0080】
図7及び図8A,8Bは、電解析出装置の詳細を示す概略図であり、図7は第1の形態の電解析出装置を、図8A及び図8Bは第2の形態の電解析出装置を示す。
【0081】
図7を参照して、第1の形態の電解析出装置60によるCu析出工程(Cu回収工程)における電流の流し方について説明する。図7において、符号61はカロメル電極などの参照電極であり、符号62は電解析出槽であり、符号63はスターラであり、符号64は電源装置である。
【0082】
Cu析出工程における電流の流し方は、大きく分けて定電流運転、定電圧運転、定電位運転の3種類の方法があるが、いずれも採用することができる。図7では定電位運転の場合の構成について説明する。
【0083】
定電位運転では、参照電極により陰極電位を測定し、陰極電位が所定値で一定となるように電流値が調整される。この場合には、水の電気分解に伴うOH−の生成および電流効率の低下が抑制されるという効果が得られる。運転条件としては、陰極の電位が−0.3〜0.2、好ましくは−0.1〜0.1(V)となるように陰極の電位を設定するのがよい。
【0084】
電解析出槽62内はポンプまたは攪拌機により撹拌することが好ましい。また、陰極又は陽極が回転運動などにより動くことによる攪拌でも良い。
【0085】
図8A及び図8Bは、第2の形態の電解析出装置70A,70Bを示す概略図である。
半導体工場では、Cuの濃度のみならず異物の濃度をできる限り低くすること、すなわち、雰囲気のクリーン度が高いことが要求される。Cuメタルが露出した状態で陰極が交換される場合は、Cu汚染を引き起こすことが懸念される。
【0086】
図8A及び図8Bに示す電解析出装置70A,70Bは、ともにカートリッジ式であり、上下のバルブ71を閉めてカートリッジごと交換するように構成することにより、Cuメタルの露出を伴うことなく、Cuが充分に析出した陰極を交換することが可能となる。このような構成により、作業性がよくなるという利点も得られる。
【0087】
電解析出装置70Aは陰極72が1つだけの構成である。また、電解析出装置70Bはカートリッジの寿命を長くすることを目的とし、陰極72を複数設ける構成である。陽極73と陰極72はともに、通水性及び通ガス性を備えていることが望ましい。陰極72としては、発泡金属又は網状の電極、ラス板状の電極などを用いることができる。また、陽極73についても同様の構造の材料を用いることができる。なお、カートリッジは1系列あたり複数設けても良いし、直列、並列に配置しても良い。
【0088】
ここで、電解析出装置70A,70Bとして、カートリッジ式のものを図示しているが、電解析出装置としてはこのような構成のもののほかに、従来技術で示されているものももちろん使用することができる。
【0089】
電解析出装置は、陰極表面に析出した銅をスクレイパーで掻き取り、バグフィルター内に回収する方法などでも良い。電解析出装置の型式が、図27に示すように、陰極175が設置されている水槽171と陽極176が設置されている水槽172とがイオン交換膜173で隔離されている隔膜併用型の電解析出装置である場合は、CuSO4濃縮水は、陰極175が設置されている水槽171にのみ供給する。
【0090】
電気透析操作で用いるイオン交換繊維材料としては、高分子繊維基材にイオン交換基をグラフト重合法によって導入したものが好ましく用いられる。高分子繊維よりなるグラフト化基材は、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの一種の単繊維であってもよく、また、軸芯と鞘部とが異なる高分子によって構成される複合繊維であってもよい。
【0091】
用いることのできる複合繊維の例としては、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンを鞘成分とし、鞘成分として用いたもの以外の高分子、例えばポリプロピレンを芯成分とした芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。かかる複合繊維材料に、イオン交換基を、放射線グラフト重合法を利用して導入したものが、イオン交換能力に優れ、厚みが均一に製造できるので、上記の目的で用いられるイオン交換繊維材料として好ましい。イオン交換繊維材料の形態としては、織布、不織布などを挙げることができる。
【0092】
また、斜交網等のスペーサー部材の形態のイオン交換体としては、ポリオレフィン系高分子製樹脂、例えば、電気透析槽において広く使用されているポリエチレン製の斜交網(ネット)を基材として、これに、放射線グラフト重合法を用いてイオン交換機能を付与したものが、イオン交換能力に優れ、被処理水の分散性に優れているので、好ましい。
【0093】
なお、放射線グラフト重合法とは、高分子基材に放射線を照射してラジカルを形成させ、これにモノマーを反応させることによってモノマーを基材中に導入するという技法である。
【0094】
放射線グラフト重合法に用いることができる放射線としては、α線、β線、ガンマ線、電子線、紫外線等を挙げることができるが、本発明においてはガンマ線や電子線を好ましく用いる。放射線グラフト重合法には、グラフト基材に予め放射線を照射した後、グラフトモノマーと接触させて反応させる前照射グラフト重合法と、基材とモノマーの共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあるが、本発明においては、いずれの方法も用いることができる。
【0095】
また、モノマーと基材との接触方法により、モノマー溶液に基材を浸漬させたまま重合を行う液相グラフト重合法、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後モノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸気相グラフト重合法などを挙げることができるが、いずれの方法も本発明において用いることができる。
【0096】
不織布などの繊維基材やスペーサー基材に導入するイオン交換基としては、特に限定されることなく種々のカチオン交換基又はアニオン交換基等を用いることができる。例えば、カチオン交換基としては、スルホン基などの強酸性カチオン交換基、リン酸基などの中酸性カチオン交換基、カルボキシル基などの弱酸性カチオン交換基、アニオン交換基としては、第1級〜第3級アミノ基などの弱塩基性アニオン交換基、第4級アンモニウム基などの強塩基性アニオン交換基を用いることができ、或いは、上記カチオン交換基及びアニオン交換基の両方を併有するイオン交換体を用いることもできる。
【0097】
また、官能基として、イミノジ酢酸及びそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリン及びプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有するイオン交換体を用いてもよい。
【0098】
この目的で用いることのできるイオン交換基を有するモノマーとしては、アクリル酸(AAc)、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0099】
例えば、スチレンスルホン酸ナトリウムをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強酸性カチオン交換基であるスルホン基を導入することができ、また、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を導入することができる。
【0100】
また、イオン交換基に転換可能な基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)などが挙げられる。例えば、メタクリル酸グリシジルを放射線グラフト重合によって基材に導入し、次に亜硫酸ナトリウムなどのスルホン化剤を反応させることによって強酸性カチオン交換基であるスルホン基を基材に導入したり、又はクロロメチルスチレンをグラフト重合した後に、基材をトリメチルアミン水溶液に浸漬して4級アンモニウム化を行うことによって、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を基材に導入することができる。
【0101】
また、基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、スルフィドを反応させてスルホニウム塩とした後、イミノジ酢酸ナトリウムを反応させることによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。或いは、まず基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、クロロ基をヨウ素で置換し、次にイミノジ酢酸ジエチルエステルを反応させてヨウ素をイミノジ酢酸ジエチルエステル基で置換し、次に水酸化ナトリウムを反応させてエステル基をナトリウム塩に変換することによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。
【0102】
上述の各種の形態のイオン交換体の中では、不織布又は織布などの形態のイオン交換繊維材料が特に好ましい。織布、不織布などの繊維材料は、樹脂ビーズや斜交網などの形態の材料と比較して表面積が極めて大きいのでイオン交換基の導入量が大きく、また、樹脂ビーズのようにビーズ内部のミクロポア又はマクロポア内にイオン交換基が存在するということはなく、全てのイオン交換基が繊維の表面上に配置されるので、処理水中の金属イオンが容易にイオン交換基の近傍に拡散され、イオン交換によって吸着される。従って、イオン交換繊維材料を用いると、金属イオンの除去・回収効率をより向上させることができる。
【0103】
発生した水素ガスの処理方法としては、図9乃至図11に示す方法を採用することができる。すなわち、水素ガスとモル当量以上の酸素を含有するガスとを混合させ、水素ガスと酸素ガスを再結合させて水とする能力を有する触媒充填層101を通過させて触媒反応させ、残存する水素ガス濃度を爆発限界濃度である4容積%未満にする方法(図9参照)、水素ガスに大量の空気またはN2などの不活性ガス等を混合して爆発限界濃度未満となるように水素濃度をさげる方法(図10参照)、水素ガスを燃料電池102に供給する方法(図11参照)などを採用することができる。燃料電池102を用いる場合は得られた電気エネルギー(電力)を廃水処理施設103または他施設の運用に用いることができる。
【0104】
次に、上記のような本発明に係る廃水処理装置によって得られた処理水の水質や水量をモニターして異常検知を行う方法について図12A及び図12Bを参照して説明する。図12A及び図12Bにおいて、105は上記に説明した本発明の各種態様に係る廃水処理装置、104は被処理水、107は処理水である。
【0105】
まず第一の方法として、図12Aに示すように、本発明に係る廃水処理装置105から得られた処理水107の銅イオン濃度を、銅イオン濃度測定装置106によって測定し、処理水の銅イオン濃度が設定値よりも高くなった場合に警報を出すようにすることができる。この場合、電解析出装置または電気透析装置での電流不足、原水の銅イオン濃度の増大、電気透析処理でのイオン交換体の劣化などが考えられるが、電解析出装置または電気透析装置での運転電流の上昇や、イオン交換体の交換などの作業によって対処することができる。
【0106】
このような目的で使用することのできる液中の銅イオン測定装置としては、例えば、イオン電極法、電極ポーラロ法、HPLC電気泳動法、蛍光光度法などに基づく測定装置を挙げることができる。なお、銅イオン濃度測定装置106は処理水ラインを分岐した位置に設けられているが、処理水ラインに直接設けても良い。
【0107】
また、図12Bに示すように、本発明に係る廃水処理装置105から得られた処理水107の流量を流量計(FI)で測定して、処理水量が設定値を下回った場合に警報を出すようにすることができる。この場合、イオン交換体の目詰まり、処理水入口の導入圧力の不足などが考えられるが、それぞれ、イオン交換体の交換、処理水入口圧力の上昇などによって対処をすることができる。なお、このような対処は、測定装置による測定値に連動した自動的制御によって行うこともできる。
【0108】
CMPで使用される砥液には、過酸化水素、硝酸鉄、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの酸化剤が加えられることもある。また銅めっき工程ではウエハ表面に銅膜を形成した後、ウエハの周辺部(エッジ部分)に付着した銅膜或いはウエハ裏面に付着した銅膜が剥離して、クリーンルームを汚染するおそれがあるので、所謂ベベルエッチングによってウエハ周辺或いはウエハ裏面に付着した銅膜を過酸化水素などの酸化剤で酸化させながらクエン酸、シュウ酸、塩酸又は硫酸等の酸で溶かして除去を行う。
【0109】
このように、半導体の銅配線形成に使われるCMPやECP或いは銅めっき装置の廃液には、大量の銅イオンに加えて過酸化水素などの酸化剤が含まれていることが多い。このような酸化剤、特に過酸化水素は電気分解によって容易に分解されるが、過酸化水素の電気分解は銅などの重金属の電解析出よりも優先して進行するので、廃水中に過酸化水素が多く含まれていると、電解析出に大きな電流が必要になる。
【0110】
また、被処理水中に過酸化水素などの酸化剤が含まれていると、イオン交換体の機能を低下させるという問題もある。また、析出した金属、水酸化物、酸化物が再溶解する懸念もある。従って、この過酸化水素を除去または低減する設備を含めた廃水処理システムとすることが好ましい。
【0111】
このような点を考慮した半導体装置製造工程からの廃水の処理システムの構成例を図13に示す。図13に示すシステムでは、CMP工程、ECP工程や銅めっき工程などの各種工程108からの廃水を、酸化剤除去工程109でまず処理して、次に本発明に係る電解析出操作と電気透析操作とを組み合わせた廃水処理装置110で処理する。符号111は処理水を示す。
【0112】
図14は、CMP装置と本発明に係る廃水処理システムとの関係を示す図である。CMP装置112は研磨ユニット(研磨工程)112aと洗浄ユニット(洗浄工程)112bを有しており、研磨工程112aではウエハの研磨が行われる。
【0113】
研磨工程112aで、スラリー、分散剤、酸、アルカリ、キレート剤など(1つまたは複数)を含む薬液および純水などの液体が使用される。これらの廃液体を廃水処理システム(廃水処理装置110)に導入する。
【0114】
洗浄工程112bでは、ウエハ上に残留するスラリー、研磨粉、薬液を純水などにより洗浄する。これらの洗浄廃水も廃水処理システムに導入する。なお、研磨ユニット112aは電解研磨法によるものでもよい。いずれかの廃水に特有の物質が含まれており、廃水処理を阻害する場合は、薬品処理112c、固液分離処理112dなどにより、予め阻害要因を取り除くこともできる(例えば、エッジ欠けにより発生したSSの分離、金属メタル粉の溶解または分離)。なお、研磨工程と洗浄工程は多段で行われる場合もある。
【0115】
研磨工程がCu研磨工程とバリア研磨工程などCu研磨工程以外の工程から成り、排出されるCuのうち大部分がCu研磨工程に由来する場合は、Cu研磨工程由来の排水のみを、本発明に関わる廃水処理装置の処理対象とするのが望ましい。図28A,図28BにおけるCu−CMP装置のうち、図28AではCu研磨ユニットのみの排水を対象とすることができる。図28Bでは研磨ユニットの排水ラインを研磨工程の種類により自動的に切換える制御を行うことでCu研磨ユニットのみの排水を対象とすることができる。
【0116】
図15は、本発明に係る廃水処理システムを同一チャンバ内でエッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を行なう装置に導入した場合の構成例を示す図である。図15に示す装置113は、エッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を同一チャンバ113a内で行なうものである。
【0117】
エッチング方法としては、電解研磨などの電気化学的な方法を用いることができる。ケミカル・メカニカルポリッシング(CMP)を用いてもよい。各工程の廃水を全て廃水処理システム(廃水処理装置110)に導入してもよいし、また、一部の工程の廃水のみを廃水処理装置110に導入してもよい。
【0118】
図16は、同じ工程を担う複数の装置から排出される廃水をまとめて処理する場合を示す図である。例えば、CMP装置112などの研磨装置から排出される廃水のうち、ある同じ工程(例えばA工程)を担うものからの廃水はまとめて本発明に係る廃水処理システム(廃水処理装置110a)に導入する。またCMP装置112から排出される廃水のうち、別の同じ工程(例えばB工程またはC工程)を担うものからの廃水は別にまとめて廃水処理装置110bまたは110cにおいて処理を行う。
【0119】
図17は、本発明に係る廃水処理ユニット(廃水処理システム)を筐体に収容した場合の例を示す斜視図である。図17に示すように、廃水処理ユニット113は、pH調整手段(pH調整ユニット)113b、内部負圧形成手段、廃水受容タンク、移動用キャスター等を1つ以上備えた筺体114の内部に備えられる。内部負圧形成手段は、圧力計信号により制御されるものであってもよい。筺体114は分割できる構成であってもよい。上記のような構成であれば、クリーンルームあるいはクリーンルーム階下のようなある一定以上のクリーン度を要するスペースにも設置可能となる。
【0120】
図18A及び図18Bは、本発明に係る廃水処理システムをめっき処理装置またはCMP装置、ECP装置に導入した場合の両者の好適な位置関係を示す図である。図18A及び図18Bにおいて、符号115はクリーンルームを示している。図18Aは、廃水処理装置110を、クリーンルーム115内の半導体製造装置116(めっき処理装置118またはCMP装置112)の直下にグレーチング117を介して設置する例である。図18Bは、廃水処理装置110を、半導体製造装置116に隣接して設置する例である。
【0121】
これらのように、廃水処理装置を半導体製造装置116の直近に設置することにより、設備コスト(配管など)を低減するとともに、工場全体の体積(大きさ)をコンパクトにすることができる。工場全体の建設コストを低減することができる。
【0122】
図19A乃至図19Cは、異なる工程を担う装置から排出される廃水をまとめて処理する場合を示す図である。例えば、図19Aに示すように、装置119では、電解研磨工程(ECP工程)119aから排出される廃水とめっき工程119bから排出される廃水を混合して廃水処理システム(廃水処理装置110)で処理することができる。
【0123】
また、図19Bに示すように、同一動作ではあるが異なる工程(例えば、CMP工程120a、120b)を担う装置120においても、CMP工程120aから排出される廃水と、CMP工程120bから排出される廃水を混合して廃水処理装置110で処理することができる。
【0124】
また、図19Cに示す装置121のように、CMP工程121aからの廃水と、めっき工程またはECP工程121bからの異なる性状の廃水それぞれを、廃水処理システム(廃水処理装置110)の異なる処理工程(例えば、工程122と工程123)に導入しても良い。また、処理水を廃水処理装置110から排出する際は、工程122と工程123からそれぞれ別に処理水を取出しても良い。
【0125】
なお、図13に示すようなシステムにおいては、廃水の処理装置を2系列にして、イオン交換体、電解析出装置の陰極などの交換部品の交換の際に経路を切替えることにより、連続的な処理を確保することができる。
【0126】
例えば、図20のシステムでは、各種半導体装置製造プロセス108からの廃水は、まず廃水タンク124に受容され、次に、酸化剤除去工程109にかけられ、次に、2系統にされた本発明に係る電解析出操作と電気透析操作とを組み合わせた廃水処理装置110の一方に供給され、銅イオンが除去されて処理水111が得られる。電解析出装置の陰極や電気透析装置のイオン交換体などの交換部品の交換時期になったら、経路を切替えてもう一方の廃水処理装置110に被処理水を通水し、通水が停止された側の廃水処理装置110の交換部品の交換を行う。これにより、廃水の連続処理が確保される。
【0127】
本発明に係る廃液の処理システムを実際の半導体装置製造工場において使用する場合の設置方法の例を図21A及び図21Bに示す。図21A及び図21Bにおいて、130は半導体装置製造工場、131は銅めっき装置、132はCMP、ECPなどのポリッシング装置、133は上記に説明した本発明の各種態様に係る廃液の処理装置又は廃液処理システムを意味する。
【0128】
例えば、図21Aに示すように、半導体装置製造工場130内の銅めっき装置131や、CMP、ECPなどのポリッシング装置132などからの廃液を集めて、これを本発明の各種態様に係る廃液の処理装置又は廃液処理システム133で処理して、銅などの銅イオンが除去された処理水111を得ることができる。
【0129】
また、図21Bに示すように、銅めっき装置131からの廃水や、CMP、ECPなどのポリッシング装置132などの廃水をそれぞれ別々に集めて、これを別々に本発明の各種態様に係る廃液の処理装置又は廃液処理システム133で処理して、銅などの重金属イオンが除去された処理水111を得ることができる。従って、各工場での廃液を発生する装置の実状に合わせてユースポイントに本発明の廃液処理装置を配置することにより廃液処理をすることができる。
【0130】
なお、CMPとECPとが共存する場合には、これらの廃液を別々に処理しても、混合して処理してもよい。本発明による処理水111を下水道放流または別途設置した総合廃水処理施設に供する場合、pHなどの水質項目が適さない場合においてはこれらの調整を行ってから供することは勿論である。
【0131】
銅含有廃水に含まれる砥粒などの固体微粒子の表面(電気二重層表面)におけるζ電位(ゼータ電位)には−の場合と+の場合がある。固体微粒子表面のζ電位が−の場合では、電気透析操作において固体微粒子が銅イオン(Cu2+)と異なる挙動を示すこと、及びイオン交換操作においてイオン交換体(カチオン交換不織布、カチオン交換樹脂ビーズ、カチオン交換膜)への吸着が生じないことより、Cu処理工程に悪影響を与えない。これに対して、固体微粒子表面のζ電位が+の場合では、電気透析操作において固体微粒子がCu2+と類似した挙動を示し、カチオン交換膜表面に堆積する、または、イオン交換操作において、カチオン交換樹脂またはカチオン交換不織布などのカチオン交換体にCu2+と共に吸着され、吸着サイトを被覆するという問題がある。また、凝集沈殿操作においては、一般的に用いられる無機凝集剤である塩化第二鉄、PACなどとの反応性が悪く、凝集フロックが形成されないまたはスラリーの凝集が生じないなどの問題がある。
【0132】
これより、ζ電位が+の値を示す場合は、ζ電位を−にするような処理を予め行ってからCu処理工程に供給することが望ましい。
【0133】
ζ電位を転化する手段としては、陰イオン系界面活性剤などの界面活性剤またはpH調整剤(酸またはアルカリ)を廃水に添加する方法を挙げることができる。
【0134】
なお、銅含有廃水中に、ζ電位がプラスの固体微粒子とζ電位がマイナスの固体微粒子が共に存在している場合、銅含有廃水中の固体微粒子全体としてのζ電位の値はそれぞれの固体微粒子のζ電位の強弱および固体微粒子の存在割合に影響され、プラスを指す場合とマイナスを指す場合の2つのケースがある。このような場合は、銅含有廃水中の固体微粒子全体としてのζ電位の値がマイナスであっても、ζ電位がプラスである固体微粒子の悪影響を排除する目的で、ζ電位を転化する手段により、ζ電位がプラスの固体微粒子のζ電位をマイナスに転化させて、銅含有廃水中の固体微粒子全体としてのζ電位をより低くすることが望ましい。
【0135】
界面活性剤の種類としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン界面活性剤を挙げることができ、ζ電位を+から−に転換させる場合に界面活性剤を適用する場合は疎水基の部分が陰イオンとなる陰イオン界面活性剤を用いることが好ましい。陰イオン界面活性剤の種類としては、カルボン酸塩型、例えば脂肪酸塩、エーテルカルボン酸塩、アルケニルコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩、ロジン酸塩(樹脂酸塩)、ナフテン酸塩、また、硫酸エステル塩型、例えば第一級アルキル硫酸エステル塩、第二級アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、モノアシルグリセリン硫酸エステル塩、硫酸化油/硫酸化脂肪酸アルキルエステル、また、スルホン酸塩型、例えばα−オレフィンスルホン酸塩、第二級アルキルスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アシルイセチオン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、また、リン酸エステル塩型、例えばアルキルリン酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩などを挙げることができる。
【0136】
これらの界面活性剤の例としては、ライオン製リポランPB−800、ライオン製ポリティN−100K、ライオン製ポリティPS−1900、ライオン製ポリティA−550、花王製エマルゲン1118S−70、花王製ネオペレックスなどを挙げることができる。
【0137】
上記に挙げたもののような塩型の陰イオン界面活性剤を利用する際は、界面活性剤を廃水に添加した際にナトリウムイオン又はアンモニウムイオンなどのカチオンも加わり、電気透析処理におけるカチオン負荷が増加する。このため、電気透析処理におけるCuの分離性能が悪化するという問題が発生する場合がある。このような場合では、マイナスの電荷をもつ親水基が水素イオンとイオン結合している、H型の界面活性剤を用いる。このような界面活性剤の例としては、界面活性剤の製造工程において、アルカリ加水分解工程を行う前の段階の未中和品である、花王製ネオペレックスGSを挙げることができる。
【0138】
界面活性剤の添加率は、固体微粒子の濃度およびζ電位などの性状により異なるが、固体微粒子濃度が500〜5000mg/L、銅含有廃水中の固体微粒子全体としてのζ電位の値が−50mV〜+50mVの範囲の場合においては、通常10〜1000mg/L、好ましくは10〜500mg/Lの範囲とするのがよい。界面活性剤添加後のζ電位は、通常−20mV以下、好ましくは−30mV以下とするのが良い。但し、非イオン系界面活性剤を用いる場合の界面活性剤添加後のζ電位はこの限りではない。
【0139】
ここで用いる界面活性剤の分子量は、200〜100000の範囲である。廃水に添加した後の起泡性が高すぎる場合は、分子量が10000以上の比較的高分子の界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0140】
本発明で定義する界面活性剤は、スラリー分散効果または、ζ電位を低下させる効果があれば特に呼称による制限は受けない。界面活性剤は分散剤と呼ばれるものは含む。スルホン基を官能基として有する有機物は含む。
【0141】
pH調整剤を用いる場合は、一般的にアルカリを添加し、pHを上げることでζ電位を下げることが可能である。
利用するアルカリとしては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア及びTMAH、コリンなどのアミン系アルカリ剤などを挙げることができる。
【0142】
上述したように、銅を含む廃水が砥粒などの固体微粒子を含む場合において、微粒子のζ電位が+の値を有する場合には、Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設ける。一方、銅を含む廃水が固体の微粒子を含む場合において、微粒子のζ電位が−の値を有する場合には、廃水を直接にCu処理工程に導入する。ζ電位転化工程を設ける位置は、Cu処理工程の前段であればいずれの位置でもよく、酸化剤分解工程の前段であっても後段であってもよい。界面活性剤の添加はCMP処理装置内であってもよい。なお、ζ電位転化工程を設ける場合におけるCu処理工程としては、電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるものでもよく、またはイオン交換処理、凝集沈殿処理などのいずれの方法であってもよい。
【0143】
次に、Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設ける場合の実施形態について、図23A及び図23Bを参照して説明する。
【0144】
図23Aに示される実施形態においては、半導体装置製造プロセスにおけるCMP工程及び/又はCMP工程後の洗浄工程から排出されたCuを含有した廃水は、過酸化水素分解工程等の酸化剤分解工程2Aに供給される。酸化剤分解工程2Aでは、廃水に含まれている過酸化水素、または過硫酸アンモニウム等の酸化剤を、例えば、白金担持触媒で分解する。酸化剤分解工程2Aから排出された廃水は、ζ電位転化工程5に供給される。このζ電位転化工程5において、上述したように陰イオン界面活性剤等の界面活性剤、またはpH調整剤を廃水に添加する。このζ電位転化工程5により、廃水中に含まれる微粒子のζ電位が−の値を有するように転化され、この転化工程後の廃水はCu処理工程10に導入され、Cu処理工程10により処理され、銅濃度が低められた処理水を得ると共に、銅を銅金属として回収する。
【0145】
過酸化水素分解工程等の酸化剤分解工程2AおよびCu処理工程10は、図1乃至図8の実施形態において説明した工程と同様である。
【0146】
図23Bに示される実施形態においては、半導体装置製造プロセスにおけるCMP工程及び/又はCMP工程後の洗浄工程から排出されたCuを含有した廃水は、ζ電位転化工程5に供給される。このζ電位転化工程5において、上述したように陰イオン界面活性剤等の界面活性剤、またはpH調整剤を廃水に添加する。このζ電位転化工程5により、廃水中に含まれる微粒子のζ電位が−の値を有するように転化され、この転化工程後の廃水は、過酸化水素分解工程等の酸化剤分解工程2Aに供給される。酸化剤分解工程2Aでは、廃水に含まれている過酸化水素等の酸化剤を、例えば、白金担持触媒で分解する。酸化剤分解工程2Aから排出された廃水は、Cu処理工程10に導入され、Cu処理工程10により処理され、銅濃度が低められた処理水を得ると共に、銅を銅金属として回収する。
【0147】
過酸化水素分解工程等の酸化剤分解工程2AおよびCu処理工程10は、図1乃至図8の実施形態において説明した工程と同様である。
【0148】
図24A及び図24Bは、上述したζ電位転化工程を実施するζ電位転化装置の構成を示す概略図である。図24Aに示すように、ζ電位転化装置は、撹拌槽150と、界面活性剤等の薬液を貯留する薬液貯槽151と、薬液貯槽151に貯留された薬液を撹拌槽150に供給するためのポンプ152とから構成されている。撹拌槽150には、CMP工程及び/又は洗浄工程から排出された銅を含む廃水が供給されるとともに、薬液貯槽151から薬液が供給され、これら廃水と薬液は攪拌機150aにより撹拌された後にCu処理工程10に送られる。図24Bに示すように、ζ電位転化装置は、薬液を薬液貯槽151からポンプ152を介して廃液ライン153に直接供給し、ライン153に設けられたラインミキサ155においてCMP工程及び/又は洗浄工程から排出された銅を含む廃水と薬液とを混合する構成としてもよい。
【0149】
図23A及び図23BにおけるCu処理工程は、以下に説明するイオン交換処理又は凝集沈殿処理で行ってもよい。
【0150】
次に、イオン交換処理の詳細について説明する。図23A及び図23Bにおいて、ζ電位転化工程又は酸化剤分解工程を経た廃水は、イオン交換体を用いたイオン交換処理がなされる。イオン交換処理にかける操作は、例えばビーズ形状のイオン交換樹脂を充填したカラムや、織布・不織布などの繊維材料や多孔膜或いは斜交網等のスペーサー部材などの形態のイオン交換体によって形成された通水性シートを備えた液体フィルター装置などに、金属イオンを含む廃水(被処理水)を通液することによって、被処理水中に残留している金属イオンM+をイオン交換によってイオン交換体に吸着させることによって、被処理水中から残留する金属イオンをより高度に除去・回収するというものである。イオン交換処理における被処理水の通水方法としては、イオン交換体の層に被処理水を通液する方法と、イオン交換体の層の表面に沿って被処理水を流す方法とがあるが、何れの方法を採用してもよい。
【0151】
この目的で用いることのできるイオン交換体樹脂ビーズとしては、当該技術において公知のものを用いることができる。例えば、ポリスチレンをジビニルベンゼンで架橋したビーズなどを基材樹脂として用い、これを硫酸やクロロスルホン酸のようなスルホン化剤で処理してスルホン化を行なって基材にスルホン基を導入することにより、本発明で使用することのできる強酸性カチオン交換樹脂ビーズを得ることができる。このような製造方法は当該技術において周知であり、またこのような手法によって製造されたカチオン交換樹脂ビーズとしては、種々の商品名で市販されているものを挙げることができる。また、官能基としてイミノジ酢酸及びそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリン及びプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有する樹脂ビーズを用いてもよい。
【0152】
また、同様の目的で用いることのできるイオン交換繊維材料としては、高分子繊維基材にイオン交換基をグラフト重合法によって導入したものが好ましく用いられる。高分子繊維よりなるグラフト化基材は、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの一種の単繊維であってもよく、また、軸芯と鞘部とが異なる高分子によって構成される複合繊維であってもよい。用いることのできる複合繊維の例としては、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンを鞘成分とし、鞘成分として用いたもの以外の高分子、例えばポリプロピレンを芯成分とした芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。かかる複合繊維材料に、イオン交換基を、放射線グラフト重合法を利用して導入したものが、イオン交換能力に優れ、厚みが均一に製造できるので、上記の目的で用いられるイオン交換繊維材料として好ましい。イオン交換繊維材料の形態としては、織布、不織布などを挙げることができる。
【0153】
また、斜交網等のスペーサー部材の形態のイオン交換体としては、ポリオレフィン系高分子製樹脂、例えば、電気透析槽において広く使用されているポリエチレン製の斜交網(ネット)を基材として、これに、放射線グラフト重合法を用いてイオン交換機能を付与したものが、イオン交換能力に優れ、被処理水の分散性に優れているので、好ましい。
【0154】
なお、放射線グラフト重合法とは、高分子基材に放射線を照射してラジカルを形成させ、これにモノマーを反応させることによってモノマーを基材中に導入するという技法である。
【0155】
放射線グラフト重合法に用いることができる放射線としては、α線、β線、ガンマ線、電子線、紫外線等を挙げることができるが、本発明においてはガンマ線や電子線を好ましく用いる。放射線グラフト重合法には、グラフト基材に予め放射線を照射した後、グラフトモノマーと接触させて反応させる前照射グラフト重合法と、基材とモノマーの共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあるが、本発明においては、いずれの方法も用いることができる。また、モノマーと基材との接触方法により、モノマー溶液に基材を浸漬させたまま重合を行う液相グラフト重合法、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後モノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸気相グラフト重合法などを挙げることができるが、いずれの方法も本発明において用いることができる。
【0156】
不織布などの繊維基材やスペーサー基材に導入するイオン交換基としては、特に限定されることなく種々のカチオン交換基又はアニオン交換基等を用いることができる。例えば、カチオン交換基としては、スルホン基などの強酸性カチオン交換基、リン酸基などの中酸性カチオン交換基、カルボキシル基などの弱酸性カチオン交換基、アニオン交換基としては、第1級〜第3級アミノ基などの弱塩基性アニオン交換基、第4級アンモニウム基などの強塩基性アニオン交換基を用いることができ、或いは、上記カチオン交換基及びアニオン交換基の両方を併有するイオン交換体を用いることもできる。また、官能基としてイミノジ酢酸及びそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリン及びプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有するイオン交換体を用いてもよい。
【0157】
これらの各種イオン交換基は、これらのイオン交換基を有するモノマーを用いてグラフト重合、好ましくは放射線グラフト重合を行うか、又はこれらのイオン交換基に転換可能な基を有する重合性モノマーを用いてグラフト重合を行った後に当該基をイオン交換基に転換することによって、繊維基材又はスペーサー基材に導入することができる。この目的で用いることのできるイオン交換基を有するモノマーとしては、アクリル酸(AAc)、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。例えば、スチレンスルホン酸ナトリウムをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強酸性カチオン交換基であるスルホン基を導入することができ、また、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を導入することができる。
【0158】
また、イオン交換基に転換可能な基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)などが挙げられる。例えば、メタクリル酸グリシジルを放射線グラフト重合によって基材に導入し、次に亜硫酸ナトリウムなどのスルホン化剤を反応させることによって強酸性カチオン交換基であるスルホン基を基材に導入したり、又はクロロメチルスチレンをグラフト重合した後に、基材をトリメチルアミン水溶液に浸漬して4級アンモニウム化を行うことによって、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を基材に導入することができる。また、基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、スルフィドを反応させてスルホニウム塩とした後、イミノジ酢酸ナトリウムを反応させることによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。或いは、まず基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、クロロ基をヨウ素で置換し、次にイミノジ酢酸ジエチルエステルを反応させてヨウ素をイミノジ酢酸ジエチルエステル基で置換し、次に水酸化ナトリウムを反応させてエステル基をナトリウム塩に変換することによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。
【0159】
上述の各種の形態のイオン交換体の中では、不織布又は織布などの形態のイオン交換繊維材料が特に好ましい。織布、不織布などの繊維材料は、樹脂ビーズや斜交網などの形態の材料と比較して表面積が極めて大きいのでイオン交換基の導入量が大きく、また、樹脂ビーズのようにビーズ内部のミクロポア又はマクロポア内にイオン交換基が存在するということはなく、全てのイオン交換基が繊維の表面上に配置されるので、処理水中の金属イオンが容易にイオン交換基の近傍に拡散され、イオン交換によって吸着される。従って、イオン交換繊維材料を用いると、金属イオンの除去・回収効率をより向上させることができる。
【0160】
次に、凝集沈殿処理の詳細について説明する。
図23A及び図23Bにおいて、ζ電位転化工程5又は酸化剤分解工程2Aを経た被処理水は凝集沈殿槽に受容される。凝集沈殿槽では、凝集剤が被処理水に添加されて、被処理水中の金属イオンが凝集沈殿することで被処理水中から除去され、上澄み液が処理水として回収される。凝集沈殿槽内で沈殿した金属は、沈殿物として回収され、必要に応じてその後の処理にかけられる。このようなシステムにおいて、被処理水中の金属イオンを凝集沈殿させるために使用される凝集剤としては、当該技術において、水系媒体から金属イオンを凝集沈殿させることができる公知の各種の薬剤を用いることができる。
【0161】
具体的な例としては、例えば、NaOH、Ca(OH)2、KOHなどのアルカリや、高分子凝集剤、無機凝集剤、例えばFeSO4、FeCl3等を挙げることができる。FeSO4などのFe2+を含む無機凝集剤を使う時には、フェントン反応が起きるので、過酸化水素とキレート剤が分解され、より好ましい。なお、凝集処理によって生成したスラッジをMF膜などの排水処理に一般的に用いられている膜によって濾過してもよい。
【0162】
実施例
以下の実施例により、本発明をより具体的に説明する。以下の実施例の記載は、本発明の一具体例を説明するもので、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0163】
<カチオン交換不織布の製造>
表1に、本実施例において使用したカチオン交換不織布の製造に使用した基材不織布の仕様を示す。この不織布は、芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンから構成される複合繊維を、熱融着によって不織布としたものである。
【表1】
【0164】
上記不織布に、ガンマ線を窒素雰囲気下で照射した後、メタクリル酸グルシジル(GMA)溶液に浸漬して反応させ、グラフト率175%を得た。次に、このグラフト不織布を、亜硫酸ナトリウム/イソプロピルアルコール/水の混合液中に浸漬して反応させることによって、スルホン化を行った。得られたカチオン交換不織布のイオン交換容量を測定したところ、中性塩分解容量が2.82meq/gの強酸性カチオン交換不織布が得られたことが分かった。
【実施例2】
【0165】
図22に示す構成の実験装置を用いて実験を行った。図22において、符号134はカチオン交換膜を示し、符号136は処理水を示し、符号138は濃縮水を示し、符号141は電解析出装置を示し、符号142は被処理水を示す。分離処理においては、脱塩室135の内部にはイオン交換体としてスルホン基を有するカチオン交換不織布を充填した。濃縮室137の内部にはイオン交換体としてスルホン基を有するカチオン交換不織布を充填した。電極材は、陰極140がエキスパンドメタル(材質:SUS)、陽極139がエキスパンドメタル(材質:チタンに白金コーティング)とした。陰極室には硫酸をpH1.5以下となるように供給した。
【0166】
銅の回収においては、板状の電極を用いた。陽極の材質はチタン/白金コーティング、陰極は銅とした。槽内は攪拌機により300rpmで撹拌した。
【0167】
実験1は、原水として銅めっきリンス廃水を用いて行った。実験2は原水として銅を研磨するCMP廃水を用いて行った。CMP廃水はPtを担持したメタルハニカム触媒により予め残存するH2O2を1mg/L以下に除去した。CMP廃水のスラリー濃度はTS(Total Solid:「Residue, Total」 EPA Method 160.3)として2000ppmであった。
【0168】
電流密度は分離処理および回収処理ともに3A(アンペア)/dm2とした。
この結果、実験1では、原水のCu濃度が120ppmであるのに対して処理水Cu濃度は<0.1ppmであり、本実施例の構成においても効果は変わりがないことを確認した。濃縮室中に濃縮された銅イオン濃度は1000ppm以上となった。濃縮水中の銅イオンは回収処理工程の陰極において銅金属として回収された。
【0169】
実験2においても、原水のCu濃度が110ppmに対して処理水Cu濃度は<0.1ppmであり、濃縮水中の銅イオンは回収処理工程の陰極において銅金属として回収された。CMP廃水を対象とした場合においても長時間運転においてもスラリーの影響は認められず、効果が得られることを確認した。
【実施例3】
【0170】
<過酸化水素分解処理>
スラリーが懸濁した状態のCu-CMP廃水(TS2500mg/L、Cu濃度100mg/L、H2O2濃度1000mg/L、スラリーのζ電位はpHにより異なるもののpH3−10の範囲でマイナス値(−20mV以下))を硫酸を用いてpH5に調整し、図3に示す過酸化水素分解装置により過酸化水素を分解した。触媒充填塔は3塔より構成され、各塔の間に設けられた気液分離装置により、過酸化水素分解に伴って発生した酸素ガスを脱気する構成である。
【0171】
処理条件は、通水速度30m/hr、接触時間3min(3塔の合計)とした。使用した触媒はPtを担持したメタルハニカム触媒(耐酸性コーティングあり)であり、細孔密度は、500セル/square inchであった。Pt担持量は2g/Lであった。この結果、原水中の過酸化水素は5mg/L未満まで分解された。
【0172】
なお、このような過酸化水素分解性能は、pH調整を行わない状態のCu-CMP廃水を対象とした場合でも同様に得られた。また、過酸化水素濃度:3000mg/L、Cu濃度100mg/LであるCuめっき廃水も前記と同条件で5mg/L未満まで分解された。
【0173】
<CMPスラリー分離試験>
過酸化水素分解処理(Cu-CMP廃水、pH未調整)で得られた過酸化水素分解処理水を対象として、スラリー分離試験を行った。過酸化水素分解処理水に、塩化第二鉄50mg/Lを添加・混合した後、KOHによりpH5に調整した。この結果、SS2200mg/Lの凝集フロックを含む混合液を得た。この混合液を30min静置することによりスラリーを含まない清澄な上澄み液が得られた。また、混合液に対してアニオン系高分子凝集剤を3mg/L添加してから静置することによっても、スラリーを含まない清澄な上澄み液が得られた。スラリーを含む凝集フロックの沈降速度は、アニオン系高分子凝集剤を使用する方が速く、100mm/min以上(固液分離後のSS濃度<10000mg/L)であった。上澄み液のCu濃度は、90mg/Lであり、原水中の殆どのCuは上澄み液中に残存することを確認した。
【0174】
この上澄み液に対して、孔径1.0μmの有機膜フィルターによる濾過を行い、スラリー分離水を得た。なお、孔径0.1μmのセラミックフィルターを用いた場合でも濾液が得られることを確認した。
【0175】
<Cu処理試験>
過酸化水素分解処理水(Cu-CMP廃水、pH5に調整、スラリー込み)を対象としたCu処理試験を行った。Cu処理装置は、図5と同様の構成とした。
【0176】
第1の脱塩室、第2の脱塩室には、カチオン交換不織布を充填した。カチオン交換不織布は基材不織布(日本バイリーン/商品名T6、芯鞘成分:PE)にスチレンをグラフト重合法により導入し(グラフト率107%)、これをスルホン化してイオン交換容量650〜700meq/m2を得たものである。濃縮室にはグラフト重合法で作成したカチオン交換不織布、カチオン交換スペーサーおよびアニオン交換不織布を充填した。
【0177】
分離工程の通水条件は、SV120[h−1](第1の脱塩室、第2の脱塩室の合計に対して)、通電条件:定電流運転(3A/dm2)、LV=60m/hrとした。
【0178】
Cu回収工程の処理条件は、定電位運転(陰極電位−0.1V)、陰極:Cu板(2dm2)、陽極Ti/Ptラス板(2dm2)とした。
【0179】
酸回収工程の処理条件は、通水条件:SV60[h−1]、通電条件:定電流運転(2〜3A/dm2)、LV=60m/hrとした。CuSO4およびH2SO4循環水のpHは共に1.5とした。
【0180】
この結果、Cu濃度0.050mg/Lの処理水が得られた。スラリーが処理性能に与える悪影響は認められなかった。また、CuSO4濃縮水として回収されたCuはCu回収工程の陰極表面にCuメタルとして回収されることを確認した。運転中のCuSO4およびH2SO4循環水のpHは共に1.4〜1.6の範囲で維持されることを確認した。
【0181】
同様に、CMPスラリー分離試験を経た後のスラリー分離水、またはCuめっき廃水の過酸化水素分解処理水を対象とした場合においても、処理水のCu濃度<0.1mg/Lが得られることを確認した。
【実施例4】
【0182】
ζ電位がプラスであるCMP砥粒(ζ電位:13mV、キュムラント平均粒径(流体力学的相当径):800nm、組成:SiO2及びAl2O3混合物)を2000ppmおよび銅イオンを100ppm含むCu−CMP処理装置からの銅含有廃水を図3に示すPtを担持したメタルハニカム触媒により残存するH2O2を1mg/L未満とした後に、図6に示すCu処理装置に供給した。運転条件を下記に示す。
【0183】
電流密度:3A/dm2
SV:100 l/h
この結果、運転電圧は運転初期は20Vであったものの、時間の経過と共に上昇し、30分後は40Vにまで上昇した。運転を停止して分離工程の装置の内部を点検したところ、脱塩室の陰極側のイオン交換膜表面にCMP砥粒の堆積が認められた。また、脱塩室内に充填されたカチオン交換不織布表面では、CMP砥粒がゲル化した状態で付着していた。
【実施例5】
【0184】
ζ電位がマイナスであるCMP砥粒(ζ電位:−25mV、流体力学的相当径:600nm、組成:SiO2およびAl2O3の混合物)を2000ppmおよび銅イオンを50ppm含む銅含有廃水を、図3に示すPtを担持したメタルハニカム触媒により残存するH2O2を1mg/Lとした後に、図6に示すCu処理装置に供給した。運転条件は実施例1と同様とした。この結果、運転電圧は20〜25Vの範囲であり、24時間以上において安定した運転が可能であった。24時間運転後に分離工程の装置の内部を点検したところ、脱塩室内の砥粒堆積およびゲル化は全く認められなかった。処理水Cu濃度は0.5mg/L未満であった。
【実施例6】
【0185】
実施例4で用いた銅含有廃水に対して、図3に示すPt担持触媒(メタルハニカム触媒)で残存H2O2を1mg/L未満とした後に、陰イオン界面活性剤を含む薬品原液を0.5%添加した。この結果、ζ電位は−15mVを示した。実施例4と同様のCu処理装置および運転条件で通水したところ、24時間以上において運転電圧は20〜25Vの範囲で安定した運転が可能となった。脱塩室内の砥粒堆積およびゲル化も認められなかった。
【実施例7】
【0186】
実施例4で用いた銅含有廃水に対して、図3に示すPt担持触媒(メタルハニカム触媒)で残存H2O2を1mg/L未満とした後に、実施例6とは別の陰イオン界面活性剤を含む薬品原液を添加したところ、添加率1.2%とすることで、ζ電位は−18mVに低下した。この水を実施例4と同様のCu処理装置および運転条件で通水したところ、24時間以上において運転電圧は20〜25Vの範囲で安定した運転が可能となった。脱塩室内の砥粒堆積およびゲル化も認められなかった。処理水質は、Cu:0.5mg/L未満であった。
【実施例8】
【0187】
ζ電位がプラスであるCMP砥粒(ζ電位:13mV、キュムラント平均粒径(流体力学的相当径):800nm、組成:SiO2及びAl2O3混合物)を2000ppmおよび銅イオンを100ppm含むCu−CMP処理装置からの銅含有廃水を図3に示すPtを担持したメタルハニカム触媒により残存するH2O2を1mg/L未満とした後に、強酸性カチオン交換樹脂ビーズを充填したイオン交換樹脂塔に供給した。通水条件はLV30m/hとした。この結果、処理水質は、初期はCu:0.5mg/L未満であったものの、Cu処理性能は時間の経過とともに低下する傾向を示し、12時間経過後はCu:3mg/Lに上昇した。これに対して、実施例6と同様に、H2O2分解を行った廃水に対して陰イオン界面活性剤を含む薬品原液を0.5%添加して、前記と同様に強酸性カチオン交換樹脂ビーズを充填したイオン交換樹脂塔に供給したところ、24時間通水後においてもCu:0.5mg/L未満を得ることができた。
【実施例9】
【0188】
ζ電位がプラスであるCMP砥粒(ζ電位:13mV、キュムラント平均粒径(流体力学的相当径):800nm、組成:SiO2及びAl2O3混合物)を2000ppmおよび銅イオンを100ppm含むCu−CMP処理装置からの銅含有廃水を図3に示すPtを担持したメタルハニカム触媒により残存するH2O2を1mg/L未満とした後に、塩化第二鉄を無機凝集剤として用いた凝集分離処理を行った。なお、塩化第二鉄添加量は50mg−Fe/L、廃水の凝集pHは5とした。この結果、凝集フロックは全く認められず、砥粒を廃水から分離することはできなかった。これに対して、H2O2分解後の廃水に対して実施例6と同様の陰イオン界面活性剤を含む薬品原液を0.5%添加し、前記と同様の凝集分離を行ったところ、凝集フロックが形成され、砥粒を分離することが可能となった。また、さらに凝集フロック形成時のpHを7に上昇させ、上澄液の濾液(濾紙の孔径1.0μm)中のCu濃度を測定したところ、0.5mg/L未満に低下していることが確認された。
【実施例10】
【0189】
スラリーが懸濁した状態のCu-CMP廃水(pH:5、TS(Total Solid):2500mg/L、TSS(Total Solid Soluble):500mg/L、Cu濃度:100mg/L、H2O2濃度:1200mg/L、スラリー組成:シリカ+アルミナ、スラリーのζ電位:−20mV)を、図3に示す過酸化水素分解装置により過酸化水素を分解した。触媒充填塔は3塔より構成され、各塔の間に設けられた気液分離装置により、過酸化水素分解に伴って発生した酸素ガスを脱気する構成である。使用した触媒はPtを担持したメタルハニカム触媒(耐酸性コーティングあり)であり、細孔密度は、500セル/square inchであった。Pt担持量は2g/Lであった。
【0190】
処理条件は、通水速度30m/hr、接触時間3min(3塔の合計)とした。この結果、原水中の過酸化水素は5mg/L未満まで分解された。
【0191】
過酸化水素分解処理後のCu−CMP廃水のpHを硫酸を用いて3に調整した。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ−15mVであった。次に、スルホン基を有する陰イオン界面活性剤(ライオン製ポリティPS−1900)を300mg/Lを該廃水に添加してスラリーのζ電位を測定したところ-25mVに低下した。
【0192】
界面活性剤添加後のCu−CMP廃水を原水として、図6に示すCu処理装置による処理試験を行った。下記に処理条件を示す。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は25Vで安定し、処理水質は、0.1〜0.3mg−Cu/Lであった。CuSO4濃縮水のCu濃度は80〜120mg/Lの範囲であった。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第1脱塩室及び第2脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。また、比較実験として前記Cu−CMP廃水に前記界面活性剤を添加しない条件で5日間の処理実験を行った。実験装置および実験条件は同様の条件とした。この結果、運転電圧は25Vから35Vに上昇し、運転後の第1脱塩室及び第2脱塩室の内部には、凝集したスラリーが認められた。これより、界面活性剤の添加は、処理運転の安定化に効果があることが確認された。
【0193】
1)分離工程
・通水速度
(a)被処理水:SV:50[l/hr](第1脱塩室と第2脱塩室の合計)
(b)CuSO4濃縮水:SV100[l/hr]
(c)H2SO4水溶液:SV100[l/hr]
・電流密度2A(アンペア)/dm2
【0194】
2)酸回収工程
・通水速度
(a)CuSO4濃縮水:SV100[l/hr]
(b)H2SO4水溶液:SV100[l/hr]
・電流密度2A(アンペア)/dm2
【0195】
3)Cu(銅)回収工程
・通電方法:定電位運転(陰極電位−0.1V)
・電極
(a)陰極:Cu板(2dm2)
(b)陽極Ti/Ptラス板(2dm2)
【0196】
4)循環水pH
・CuSO4濃縮水:1.5
・H2SO4:1.5
【0197】
5)使用素材(分離工程および酸回収工程)
・+極:Ti/Ptラス型電極
・−極:SUS304ラス型電極
・カチオン交換膜:トクヤマ製CMB
・アニオン交換膜:トクヤマ製AHA
・カチオン交換不織布
(a)第1脱塩室及び第2脱塩室:放射線グラフト重合法により作成。基材不織布
素材:PE、官能基:スルホン基
(b)第1脱塩室及び第2脱塩室以外の個所:放射線グラフト重合法により作成。
基材不織布素材:PP/PE、官能基:スルホン基
・アニオン交換不織布
放射線グラフト重合法により作成。基材不織布素材:PP/PE、官能基:第
4級アンモニウム基
・カチオン交換スペーサー:放射線グラフト重合法により作成。基材スペーサー:
PE、官能基:アクリル酸およびスルホン酸
・アニオン交換スペーサー:放射線グラフト重合法により作成。基材スペーサー:
PE、官能基:第4級アンモニウム基
【実施例11】
【0198】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP廃水に対して、硫酸およびスルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを用いてpH3に調整した。H型陰イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ−30mVであり、硫酸のみを用いてpH調整した場合におけるζ電位−15mVより低い値が得られた。
【0199】
該界面活性剤添加後のCu−CMP廃水を原水として、図6に示すCu処理装置による処理試験を行った。処理条件は実施例10と同様とした。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は25Vで安定し、処理水質は、期間を通じて0.1mg−Cu/L未満であった。処理水質は実施例10よりも低い値が得られた。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第1脱塩室及び第2脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。これより、H型陰イオン界面活性剤を利用することにより、Cu処理性能が更に高まることが確認された。
【実施例12】
【0200】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP廃水に対して、硫酸およびスルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを用いてpH3に調整した。H型陰イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ−30mVであり、硫酸のみを用いてpH調整した場合におけるζ電位−15mVより低い値が得られた。
【0201】
該界面活性剤添加後のCu−CMP廃水を原水として、図26に示すCu処理装置による処理試験を行った。下記に処理条件を示す。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は25Vで安定し、処理水質は、期間を通じて0.1mg−Cu/L未満であった。処理水質は実施例10よりも低い値が得られた。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第1脱塩室及び第2脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。これより、図26に示す分離工程および酸回収工程を兼ねた一体型電気透析装置を用いた場合においても効果が得られることが確認された。
【0202】
1)電気透析装置(分離工程および酸回収工程を兼ねる)
・通水速度
(a)被処理水:SV:50[l/hr](第1脱塩室と第2脱塩室の合計)
(b)CuSO4濃縮水:SV100[l/hr](酸回収室および濃縮室それぞれ
について)
(c)H2SO4水溶液:SV100[l/hr]
・電流密度2A(アンペア)/dm2
【0203】
2)Cu(銅)回収工程
・通電方法:定電位運転(陰極電位−0.1V)
・電極
(a)陰極:Cu板(2dm2)
(b)陽極Ti/Ptラス板(2dm2)
【0204】
3)循環水pH
・CuSO4濃縮水:1.5
・H2SO4:1.5
【0205】
4)使用素材(電気透析処理装置)
・+極:Ti/Ptラス型電極
・−極:SUS304ラス型電極
・カチオン交換膜:トクヤマ製CMB
・アニオン交換膜:トクヤマ製AHA
・カチオン交換不織布
(a)第1脱塩室及び第2脱塩室:放射線グラフト重合法により作成。基材不織布
素材:PE、官能基:スルホン基
(b)第1脱塩室及び第2脱塩室以外の個所:放射線グラフト重合法により作成。
基材不織布素材:PP/PE、官能基:スルホン基
・アニオン交換不織布:
放射線グラフト重合法により作成。基材不織布素材:PP/PE、官能基:第4
級アンモニウム基
・カチオン交換スペーサー:放射線グラフト重合法により作成。
基材スペーサー:PE、官能基:アクリル酸およびスルホン酸
・アニオン交換スペーサー:放射線グラフト重合法により作成。
基材スペーサー:PE、官能基:第4級アンモニウム基
【実施例13】
【0206】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP廃水に対して、硫酸および非イオン界面活性剤である花王製エマルゲン1118S−70を用いてpH3に調整した。非イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ0〜−10mVの範囲であった。
【0207】
該界面活性剤添加後のCu−CMP廃水を原水として、図6に示すCu処理装置による処理試験を行った。処理条件は実施例10と同様とした。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は23Vで安定し、処理水質は、期間を通じて0.1mg−Cu/L未満であった。処理水質は実施例10よりも低い値が得られた。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第1脱塩室及び第2脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。これより、非イオン界面活性剤を利用する場合であっても、Cu処理性能が更に高まることが確認された。
【実施例14】
【0208】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP排水に対して、硫酸およびスルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを用いてpH3に調整した。H型陰イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。該界面活性剤添加後のCu−CMP排水を原水として、強酸性カチオン交換樹脂ビーズを充填したイオン交換樹脂塔に供給した。通水条件はLV30m/hとした。この結果、処理水質は、24時間通水後においてもCu:0.5mg/L未満を得ることができた。
【実施例15】
【0209】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP排水に対して、スルホン基を有する陰イオン界面活性剤(ライオン製ポリティPS−1900)を添加した。添加率は300mg/Lとした。該界面活性剤添加後のCu−CMP排水を原水として、イミノジ酢酸基を有するカチオン交換樹脂ビーズを充填したイオン交換樹脂塔に供給した。通水条件はLV30m/hとした。この結果、処理水質は、24時間通水後においてもCu:0.5mg/L未満を得ることができた。
【実施例16】
【0210】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP排水に対して、スルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを添加した。添加率は300mg/Lとした。
【0211】
該界面活性剤添加後のCu−CMP排水を原水として、イミノジ酢酸基を有するカチオン交換樹脂ビーズを充填したイオン交換樹脂塔に供給した。通水条件はLV30m/hとした。この結果、処理水質は、24時間通水後においてもCu:0.5mg/L未満を得ることができた。
【実施例17】
【0212】
図28Aに示すような、Cu研磨ユニットとバリア研磨ユニットで別々のターンテールを用いる構成のCu−CMP装置から、Cu研磨ユニットからのみ排出される排水を採取して原水とした。スラリーが懸濁した状態の該廃水のTS(Total Solid)は5000mg/L、Cu濃度は150mg/L、H2O2濃度は1400mg/L、スラリーの主成分はシリカ、スラリーのζ電位は−20mVであった。実施例10と同様の過酸化水素分解装置により過酸化水素を分解した。使用した触媒はPtを担持したメタルハニカム触媒(耐酸性コーティングあり)であり、細孔密度は、500セル/square inchであった。Pt担持量は5g/Lであった。処理条件は、通水速度30m/hr、接触時間3min(3塔の合計)とした。この結果、原水中の過酸化水素は5mg/L未満まで分解された。
【0213】
得られた過酸化水素分解処理後の排水に対して、硫酸およびスルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを用いてpH3に調整した。H型陰イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ−30mVであり、硫酸のみを用いてpH調整した場合におけるζ電位−15mVより低い値が得られた。
【0214】
該界面活性剤添加後のCu−CMP排水を原水として、図6に示すCu処理装置による処理試験を行った。処理条件は実施例10と同様とした。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は20Vで安定し、処理水質は、期間を通じて0.5mg−Cu/L未満であった。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第一脱塩室及び第二脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。これより、Cu−CMP装置のCu研磨工程の排水のみを対象とした場合においても、良好な結果が得られることを確認できた。
【実施例18】
【0215】
図28Bに示すような、Cu研磨工程とバリア研磨工程を同じターンテーブルで行う構成のCu−CMP装置から、Cu研磨工程からのみ排出される排水を採取して原水とした。スラリーが懸濁した状態の該廃水のTS(Total Solid)は3000mg/L、Cu濃度は150mg/L、H2O2濃度は2000mg/L、スラリーの主成分はシリカ、スラリーのζ電位は−20mVであった。実施例10と同様の過酸化水素分解装置により過酸化水素を分解した。使用した触媒はPtを担持したメタルハニカム触媒(耐酸性コーティングあり)であり、細孔密度は、500セル/square inchであった。Pt担持量は5g/Lであった。処理条件は、通水速度30m/hr、接触時間3min(3塔の合計)とした。この結果、原水中の過酸化水素は5mg/L未満まで分解された。
【0216】
得られた過酸化水素分解処理後の排水に対して、硫酸およびスルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを用いてpH3に調整した。H型陰イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ−35mVであり、硫酸のみを用いてpH調整した場合におけるζ電位−15mVより低い値が得られた。
【0217】
該界面活性剤添加後のCu−CMP排水を原水として、図6に示すCu処理装置による処理試験を行った。処理条件は実施例10と同様とした。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は20Vで安定し、処理水質は、期間を通じて0.5mg−Cu/L未満であった。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第一脱塩室及び第二脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。これより、Cu−CMP装置のCu研磨工程の排水のみを対象とした場合においても、良好な結果が得られることを確認できた。
【0218】
本発明によれば、銅を含む被処理水を処理して、銅濃度が低められた処理水を得ると共に、銅を金属単体として回収することができる。本発明は、例えば、半導体製造プロセスから排出される廃水、例えば、CMP工程や銅めっき工程からの廃水を処理して、排出基準値以下の銅濃度の処理水を得ると共に、廃水中の銅を銅金属として回収することができるので、排出規制及び資源保護の両方の観点から、極めて有用性の高いものである。
【0219】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その特許請求の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明は、CMP工程や銅めっき工程からの廃水などの各種廃水から銅等の金属を除去・回収する方法および装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】図1は本発明に係る電解析出操作と電気透析操作とを組み合わせた被処理水の処理方法を示す処理フローの概略図である。
【図2】図2は図1の処理フローの構成を更に詳細に図示した処理フローの全体を示す概略図である。
【図3】図3は過酸化水素分解工程の詳細を示す概略図である。
【図4】図4はスラリー分離工程の構成を更に詳細に示す概略図である。
【図5】図5はCu処理工程の1例を示す概略図である。
【図6】図6はCu処理工程の別の例を示す概略図である。
【図7】図7は第1の形態の電解析出装置の詳細を示す概略図である。
【図8】図8A及び図8Bは第2の形態の電解析出装置の詳細を示す概略図である。
【図9】図9は本発明にかかる電解析出装置において発生した水素ガスの別の処理方法を示す概念図である。
【図10】図10は本発明にかかる電解析出装置において発生した水素ガスの別の処理方法を示す概略図である。
【図11】図11は本発明にかかる電解析出装置において発生した水素ガスの処理方法を示す概略図である。
【図12】図12A及び図12Bは本発明に係る廃水処理装置によって得られた処理水の水質や水量をモニターして異常検知を行う方法を示す概念図である。
【図13】図13は半導体装置製造工程からの廃水の処理システムの構成例を示す概略図である。
【図14】図14はCMP装置と本発明に係る廃水処理システムとの関係を示す概略図である。
【図15】図15は、同一チャンバ内でエッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を行なう装置から排出される廃水を廃水処理システムに導入する場合の構成例を示す概略図である。
【図16】図16は同じ工程を担う複数の装置から排出される廃水をまとめて処理する場合の構成例を示す概略図である。
【図17】図17は本発明に係る廃水処理ユニットを筐体に収容した場合の例を示す斜視図である。
【図18】図18A及び図18Bは、CMP装置と、めっき処理装置またはECP装置と、本発明に係る廃水処理システムとの好適な位置関係を示す図である。
【図19】図19A乃至図19Cは異なる工程を担う装置から排出される廃水をまとめて処理する場合の構成例を示す図である。
【図20】図20は本発明の他の態様に係る廃水処理システムの構成例を示す図である。
【図21】図21A及び図21Bは本発明の一態様に係る廃液処理システムを実際の半導体装置製造工場において使用する場合の設置方法の例を示す概略図である。
【図22】図22は本発明の他の態様に係るCu処理装置の構成図である。
【図23】図23A及び図23Bは、Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設ける場合の処理工程のフローを示す概略図である。
【図24】図24A及び図24Bは、ζ電位転化工程を実施するζ電位転化装置の構成を示す概略図である。
【図25】図25A乃至図25Eは半導体チップの銅配線形成方法を示す概略図である。
【図26】図26は一組の陽極と陰極の間に2つの工程を受け持つ電気透析装置を示す概略図である。
【図27】図27は隔膜併用型の電解析出装置の一例を示す図である。
【図28】図28A及び図28Bは、Cu−CMP装置の一例を示す概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種廃水から銅等の金属を除去・回収する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき廃水、半導体装置製造工程廃水、プリント基板製造廃水、鉱山廃水などのような重金属を含む廃水の処理にあたっては、廃水中の重金属を除去し、必要に応じてこれを回収することが求められている。
【0003】
例えば、近年、半導体集積回路などの半導体装置の製造において、微細化への要求が一段と厳しくなるのに伴って、配線抵抗による信号遅延が問題になってくる。この問題を解決するために、アルミニウムやタングステンなどに代えて銅配線が用いられるようになってきた。
【0004】
即ち、中央処理装置(CPU)やダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)などの半導体チップの高集積化に伴い、チップ内の配線材料として、従来のアルミニウムから、より電気抵抗の低い銅が、特に配線の最小線幅が0.13μm以下のチップで採用されつつある。
【0005】
このような銅配線を用いる場合、銅はエッチングによるパターン形成が困難なため、通常、めっきによるダマシンプロセスで成膜し、成膜後に化学機械研磨(CMP)や電解研磨(ECP)などの方法によって膜の表面を研磨して配線を形成する。
【0006】
図25A乃至図25Eにその配線形成方法の一例を示す。まず、図25Aに示すように、半導体素子を形成した半導体基材201の上に導電層202を形成し、この上に更にSiO2からなる絶縁膜203を堆積する。そして、絶縁膜203の層の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、コンタクトホール204と配線用の溝205を形成する。次に、図25Bに示すようにバリア層206を形成する。バリア層としては、例えば、Ta、TaN、TiN、WN、SiTiN、CoWP、CoWB等の金属若しくは金属化合物材料が用いられる。次に、電解めっき法で銅層を形成する場合には、図25Cに示すように、バリア層206の上に電解めっきの給電層としての銅シード層207をスパッタリング法などにより形成する。また、銅層を無電解めっき法で形成する場合には、銅シード層に代えて、バリア層206の上に前処理を行って触媒層207を形成する。
【0007】
次に、図25Dに示すように、銅シード層若しくは触媒層207の表面に電解めっき法若しくは無電解めっき法で銅めっきを施すことにより、コンタクトホール204及び配線用溝205内に銅を充填させると共に、絶縁膜203の上に銅層208を堆積させる。その後、化学機械研磨(CMP)法や電解研磨(ECP)法などによって絶縁膜203上の銅層208を除去して、コンタクトホール204及び配線用溝205に充填した銅層208の表面と絶縁膜203の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図25Eに示すように、絶縁膜203の内部に銅シード層若しくは触媒層207、銅層208からなる配線を形成する。
【0008】
このような状況下で、半導体装置製造工程における電解若しくは無電解めっき法による銅めっき工程や、集積回路マイクロチップの化学機械研磨(CMP)若しくは電解研磨(ECP)工程においては、銅イオンを大量に含む廃水が生じる。廃水中の銅イオンに関しては、許容限度として、日本では最大濃度が3.0mg/L以下に規制されており、また米国においては、一例として最大濃度が2.7mg/L以下、一日あたりの平均濃度が1.0mg/L以下、1年あたりの平均濃度が0.4mg/L以下に、より厳しく規制されている。従って、廃水中の銅を効率よく除去する技術を提供することが強く求められている。
【0009】
現在の半導体装置製造工場においては、CMP装置1台あたり最大で0.5m3/h程度の廃水が生成し、廃水中の銅濃度は最大で100mg/L程度、同様に銅めっき装置1台あたり最大で0.2m3/h程度の廃水が生成し、廃水中の銅濃度は最大で100mg/L程度というのが大凡の現状である。銅配線を利用する半導体装置の平均的な半導体装置製造工場では、一つの工場あたり銅配線工程用のCMP装置が10台程度、銅めっき装置が10〜20台程度設置されている場合があり、これら装置から排出される銅含有廃水の総量は最大で220m3/日程度になり、廃水中に含まれる銅の総量は最大で約22kg−Cu/日にもなる。従って、この廃水から銅を効率よく回収して再利用することが、環境保護のみならず、省資源の観点からも、強く求められている。
【0010】
また、従来の半導体装置製造を含む設備産業では、工場内における各種工程からの廃水を集めて回収し、これを一括して処理するという総合廃水処理設備の考え方が主流であったが、製造プロセスの技術の進化が早い半導体装置製造においては、それぞれの工程での廃水をその場で処理するという方法、即ちユースポイントで廃水を処理する方法が求められている。これは、従来の少品種・大量生産型から多品種・少量生産型へと生産方式が変わってきているため、製造品種の変更頻度の増加に伴って廃水の性状変動が大きくなってきていることによる。
【0011】
CMPプロセス廃水や銅めっき廃水中の銅濃度は通常100mg/L以下であるので、これまでは、これらの廃水からの銅の回収処理には、運転電圧の上昇の問題から電解析出法は用いられていなかった。また、イオン交換樹脂法では銅は銅イオンとしてイオン交換樹脂に吸着されて回収され、また凝集沈殿法では銅は水酸化物又は酸化物の形態で沈殿・回収されるので、いずれも、回収された銅を再利用する際には、更なる処理が必要であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のような現状の下、被処理水の水質変動に対応可能で、高濃度の銅イオンを含む廃水から低濃度の銅イオンを含む廃水まで幅広く処理することが可能で、更に、被処理水量が多くても十分に対応することのできる、廃水から銅等の金属を除去・回収する方法および装置、特に半導体装置製造プロセス廃水から銅を除去・回収する方法および装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、銅を含有する半導体装置製造プロセスからの廃水を処理する方法として、電解析出操作と、電気透析操作とを組み合わせることにより、廃水中の銅を効果的に除去・回収することができることを見出した。即ち、本発明の一態様は、電解析出操作と電気透析操作とを組み合わせたことを特徴とする、銅を含む被処理水の処理方法に関する。
【0014】
本発明の第1の態様に係る廃水の処理方法は、銅を含む廃水を電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるCu処理工程により処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、銅を廃水から回収することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第2の態様に係る廃水の処理方法は、銅を含む廃水中の酸化剤を酸化剤分解工程にて分解し、前記酸化剤分解工程から排出された廃水をCu処理工程に供給し、前記Cu処理工程において電気透析操作と電解析出操作を組み合わせることにより廃水を処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、銅を廃水から回収することを特徴とするものである。
【0016】
上記のような被処理水中に含まれる過酸化水素などの酸化剤を除去する目的で用いることのできる処理工程としては、活性炭による触媒分解、貴金属触媒、例えばチタニア担持白金触媒、アルミナ担持白金触媒などによる触媒分解、二酸化マンガン触媒による触媒分解、電気分解、紫外線処理、オゾン添加、ヒドラジン、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤による分解処理、H2O2分解酵素(カタラーゼ)などによる酵素分解などの処理を挙げることができる。アルミナ担持白金触媒などの白金触媒を用いる場合には、ハニカム形状の触媒を用いると比表面積が大きくとれ、ガスの分離性もよく分解速度が増すのでより好ましい。
【0017】
また、ハニカム形状の触媒は流路方向に連続した開口部を得ることができるので、開口部面積より小さな粒子であれば触媒内に蓄積することなく触媒を通過することが可能である。このため、例えばハニカム形状の触媒は、CMP廃水などのスラリーを含有する廃水中に含まれる酸化剤の分解に好適に用いることができる。
【0018】
本発明の一態様によれば、前記酸化剤分解工程は、白金を担持させた触媒を用いることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記酸化剤分解工程は、過酸化水素分解工程であることを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様によれば、廃水から回収される銅は銅金属であることを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様によれば、前記酸化剤分解工程と前記Cu処理工程との間に、廃水からスラリーを分離するスラリー分離工程を設けたことを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様によれば、前記スラリー分離工程は、凝集分離処理または濾過処理を設けることを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記Cu処理工程は、電気透析操作により廃水中のCuをCuSO4濃縮水として分離濃縮する分離工程と、前記CuSO4濃縮水を電解析出操作により電解析出装置の陰極上にCuを析出する回収工程と、前記回収工程の処理水から硫酸の回収を行う酸回収工程とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様によれば、前記Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設け、固体の微粒子を含む前記廃水を前記ζ電位転化工程により処理することを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様によれば、前記廃水は固体の微粒子を含み、前記微粒子のζ電位がマイナスの値を有する場合には廃水を直接に前記Cu処理工程に導入することを特徴とする。
【0026】
本発明の一態様によれば、前記ζ電位転化工程は、スルホン酸基を有する有機化合物を廃水に添加することを特徴とする。
【0027】
本発明の一態様によれば、前記固体の微粒子はCMP工程で用いられる砥粒であることを特徴とする。
【0028】
本発明の一態様によれば、前記砥粒はSiO2、Al2O3、CeO2の少なくとも1種類を含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の一態様によれば、前記ζ電位転化工程は、界面活性剤又はpH調整剤を廃水に添加することを特徴とする。
【0030】
本発明の第3の態様に係る廃水の処理方法は、上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水を電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるCu処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得るとともに、銅を廃水から回収することを特徴とするものである。
【0031】
本発明の一態様によれば、前記Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設けることを特徴とする。
【0032】
本発明の一態様によれば、前記界面活性剤は、陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤であることを特徴とする。
【0033】
本発明の一態様によれば、前記陰イオン界面活性剤は金属カチオンを含まないことを特徴とする。
【0034】
本発明の一態様によれば、前記固体の微粒子は砥粒であり、該砥粒はSiO2、Al2O3、CeO2の少なくとも1種類を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の一態様によれば、前記洗浄工程における洗浄液は、界面活性剤を含んでいることを特徴とする。
【0036】
本発明の第4の態様に係る廃水の処理方法は、上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水をζ電位転化工程に導入して廃水中の固体の微粒子のζ電位をマイナスにし、前記微粒子を含む廃水をイオン交換処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とするものである。
【0037】
本発明の一態様によれば、前記イオン交換処理工程の前段に酸化剤分解工程を設けることを特徴とする。
【0038】
本発明の第5の態様に係る廃水の処理方法は、上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水をζ電位転化工程に導入して廃水中の固体の微粒子のζ電位をマイナスにし、前記微粒子を含む廃水を凝集沈殿処理工程又は凝集分離処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とするものである。
【0039】
本発明の一態様によれば、前記凝集沈殿処理工程又は前記凝集分離処理工程の前段に酸化剤分解工程を設けることを特徴とする。
【0040】
本発明の第6の態様に係る廃水の処理方法は、CMP工程のうちCu研磨工程から排出された廃水のみを処理して、銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とする。
【0041】
本発明の一態様によれば、前記廃水の処理は、電気透析処理、電解析出処理、イオン交換処理、凝集沈殿処理のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0042】
本発明の第7の態様に係る廃水の処理装置は、電気透析装置と、電解析出装置とを備え、前記電気透析装置と前記電解析出装置とを組み合わせることにより銅を含む廃水を処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、銅を回収することを特徴とするものである。
【0043】
本発明の一態様によれば、廃水から回収される銅は銅金属であることを特徴とする。
【0044】
本発明の一態様によれば、前記電気透析装置において電気透析操作により廃水中の銅をCuSO4濃縮水として分離濃縮し、前記電解析出装置において前記CuSO4濃縮水を電解析出操作により前記電解析出装置の陰極上に銅を析出し、前記電解析出装置から排出された処理水から硫酸の回収を行う酸回収装置を設けることを特徴とする。
【0045】
本発明の一態様によれば、前記電気透析装置の脱塩室内にイオン交換体を充填することを特徴とする。
【0046】
本発明の一態様によれば、前記電気透析装置の前段にζ電位転化装置を設けることを特徴とする。
【0047】
本発明の一態様によれば、前記ζ電位転化装置は、界面活性剤又はpH調整剤を貯留する薬液貯槽と、該薬液貯槽に貯留された界面活性剤又はpH調整剤を廃水に添加する添加手段とを備えることを特徴とする。
【0048】
本発明の一態様によれば、前記界面活性剤は、陰イオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤であることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面を参照しながら本発明の各種態様を説明する。以下の図面において、同じ参照番号は同じ構成要素を意味し、その重複する説明を省略する。
【0050】
図1は、本発明に係る電解析出操作と電気透析操作とを組み合わせた被処理水の処理方法を示す処理フローの概略図である。
【0051】
半導体装置製造プロセスにおけるCu−CMP工程、またはCuめっき工程1からのCuを含有した廃水は、過酸化水素分解工程2に供給される。過酸化水素分解工程2では、廃水に含まれている過酸化水素を白金担持触媒で分解する。過酸化水素分解工程2から排出された廃水は、スラリー分離工程3に供給される。Cu−CMP工程では、シリカやアルミナからなる砥粒が含まれているスラリーが用いられるため、このスラリーをスラリー分離工程3で凝集分離する。次いで、スラリー分離工程3の上澄み水を銅処理工程(Cu処理工程)10に供給してCu(銅)を銅金属の形で回収する。
【0052】
銅処理工程10は、分離工程11と、回収工程12と、酸回収工程13の3つの工程からなる。分離工程11に設けられた電気透析装置により、電気透析操作を行い、スラリー分離工程3から排出された廃水中のCuをCuSO4濃縮水として分離濃縮する。CuSO4濃縮水は、回収工程12に供給され、回収工程12に設けられた電解析出装置により、電解析出操作を行い、陰極上にCuが析出される。回収工程12の処理水は、酸回収工程13に供給され、酸回収工程13に設けられた酸回収装置により硫酸の回収を行う。ここで硫酸(H2SO4)の回収とは、分離工程11において、H2SO4循環ラインからCuSO4循環ラインに、移動したSO42−をH2SO4循環ラインに電気透析により戻すことをいう。これにより、H2SO4循環ライン中の硫酸濃度を維持することができる。
【0053】
分離工程と酸回収工程とを隣接または一体化して設けても良い。この場合は、図26に示すように一組の陽極と陰極の間に両方の工程を受け持つ電気透析装置とすることができる。
【0054】
図1に示すように、回収工程12は、電解析出装置が2系列並列に設けてある。電解析出装置の一方を20A、他方を20Bで表すと、電解析出装置20AにCuSO4濃縮水が循環されている場合は、電解析出装置20Bは循環系統から切り離されている。電解析出装置20AがCuSO4循環水中のCuを電解析出操作している間、電解析出装置20Bは槽内の残存CuSO4濃縮水中のCu濃度を下げる役割を果たす。槽内のCu濃度が十分に低減された後に槽内の水を排出する。また、排出後は新たに純水と硫酸を用いて酸性の溶液で槽内を満たす。その後、CuSO4濃縮水循環ラインを電解析出装置20Aから電解析出装置20Bに切り替え、電解析出装置20B側で循環させる。このとき電解析出装置20Aは循環系統から切り離され、電解析出装置20Bは槽内の残存液に対するCuの析出を行う。このような交互運転を繰り返し行うことにより、廃水中に銅イオン以外のカチオン類が存在する場合でも、Cuと共に濃縮されるカチオン類を定期的に系外へ排出することができる。また、定常的な運転が可能となる。電解析出槽内の液を系外へ排出する場合の排出先は、処理水の排出先と同じでもよく、異なっていてもよい。装置の設置スペースに制約がある場合または銅以外のカチオン類の濃度が極めて薄い場合は、電解析出装置は2系列並列に設けずに、1系列のみとしてもよい。
【0055】
図1において、処理水槽14は、分離工程11でCuが除去された処理水を溜める槽である。なお、処理水の排出先の事情に応じて、pH調整が可能なことは言うまでもない。図1において、スラリー分離工程3は、括弧を用いて示してあるが、スラリー分離工程3を省いて、過酸化水素分解工程2から流出した水を直接、Cu処理工程10に供給するフローも可能である。
【0056】
スラリー分離工程を設ける場合、スラリー分離に伴って発生する汚泥と共に汚泥に付着している母液として廃水中のCuの一部が排出され、Cu処理工程での処理対象とならない問題がある。
【0057】
スラリーを含んだ水をそのままCu処理工程10に供給する場合では、廃水中に含まれる全てのCuをCu処理工程に供給することができる。これにより、Cuの実質的な回収率を高めることができる。
【0058】
図2は、図1の処理フローの構成を更に詳細に図示した処理フローの全体を示す概略図である。図2では、電解析出装置は一系列としてある。過酸化水素分解工程2においては、Cu−CMP工程またはCuめっき工程1からの廃水は調整槽21に供給され、調整槽21内の攪拌機21aにより攪拌される。過酸化水素分解は、過酸化水素分解塔22で、メタルハニカム基材表面に白金を担持させた白金担持触媒を用いて行われる。過酸化水素分解塔22には、白金担持触媒を充填した3つのカラム22a,22b,22cが設けられており、この中に廃水を直列に通水させることにより、過酸化水素を酸素ガスと水に分離する。
【0059】
スラリー分離工程3は、混合槽31、凝集槽32、固液分離槽33、循環槽34、遠心分離機35、セラミック膜36から構成されている。混合槽31では、無機凝集剤として塩化第二鉄およびアルカリとして水酸化カリウムが添加され、凝集フロックが形成される。無機凝集剤およびアルカリは他の公知のものを用いても良い。凝集槽32では、高分子凝集剤が添加される。高分子凝集剤はアニオン系のものが好ましい。また、高分子凝集剤の添加率は1〜5mg/L、好ましくは3mg/Lである。無機凝集剤として塩化第二鉄を用いる場合、添加率は5〜200mg/L、好ましくは50mg/Lである。水酸化カリウムは、pHが5になるように、アルカリ剤として、添加される。高分子凝集剤が添加されることにより、凝集フロックが粗大化し、沈降速度を高めることができる。得られる沈降速度は、高分子凝集剤の添加率によって異なるが、スラリーの性状により概ね100mm/minである。
【0060】
固液分離槽33では固形分(凝集フロックの濃縮物)と液体との分離が行われる。固液分離槽33で沈降分離された汚泥は遠心分離機35に供給され、含水率が約85%の脱水汚泥が得られる。遠心分離機35で回収されたCuを含む母液は、混合槽31に循環返送される。固液分離槽33で得られた上澄み水はセラミック膜36で濾過され、これにより、凝集フロックまたは微粒子をほぼ完全に除去した膜透過水を得ることができる。セラミック膜36の孔径は、0.1〜1.0μmの範囲であるが、好ましくは0.1μmである。得られるフラックスは、概ね0.5〜2m3/(m2日)である。運転圧力は5〜20m−H2Oの範囲である。膜透過水は、透過水槽37に貯留される。透過水槽37から出た水は、銅処理工程10に供給される。なお、銅処理工程内のCu回収工程12は電解析出装置1台で構成されているが、共存カチオン濃度が低い、または共存カチオンがCuSO4循環ライン中に濃縮され続けても良い場合は1台でも良い。電解析出装置を2台以上並列接続して交互運転を行っても良いことは言うまでもない。
【0061】
図3は、過酸化水素分解工程の詳細を示す概略図である。図3に示すように、過酸化水素分解工程2は、調整槽21および過酸化水素分解塔22の2つから構成されている。調整槽21は、Cu−CMP工程またはCuめっき工程1の廃水を一時的に貯留する槽であり、水質変動を抑制し、均一な組成の廃水を後段に供給する役割を担う。調整槽21には、酸又はアルカリをpH調整剤として投入することも可能である。pH調整は、Cu−CMP工程またはCuめっき工程1から排出された廃水そのもののpHが高い場合に銅が水酸化銅つまり固形物の状態で存在することを考慮して、廃水に酸を添加して少なくともpH6以下、好ましくはpH5以下に調整することにより、水酸化銅の状態で存在する銅もCu2+イオンの状態にする操作を指す。Cu2+イオンの状態にすることにより、後段のCu処理工程10の性能を好適に保つことができる。
【0062】
過酸化水素分解工程2における過酸化水素分解塔22は、白金を担持したメタルハニカム触媒が充填された3つのカラム22a,22b,22cにより構成されている。メタルハニカム触媒の白金担持量は、1〜10g/Lの範囲、好ましくは2〜5g/Lの範囲である。セル密度(ハニカム細孔の密度)は、100〜1000セル/square inch、好ましくは200〜600セル/square inchである。メタルハニカム触媒は耐酸性コーティングを施した基材を用いることが好ましい。メタルハニカム触媒を充填したカラム22a,22b,22cに通水するときの通水条件は、LV(線速度)で10〜100m/hr、好ましくは、30〜60m/hrであり、接触時間としては、1〜10min、好ましくは、3〜5minである。過酸化水素が酸素と水に分解した結果生じる酸素ガスは、気液分離装置23を介して、過酸化水素分解塔22から排出される。過酸化水素分解を終えた処理水は、後段のスラリー分離工程3、またはスラリー分離工程3を介しない場合は、Cu処理工程10に直接供給される。なお、過酸化水素分解塔22における塔数は、分解すべき過酸化水素の量が少ない場合は、3塔よりも少なくても良い。分解すべき過酸化水素の量が多い場合は、過酸化水素の分解により発生する酸素ガスの発生量も増加し、実質的な水滞留時間が短くなってしまうことが懸念されるため、酸素ガスを被処理水から分離することを目的として3塔よりも多くしても良い。
【0063】
図4はスラリー分離工程の構成を更に詳細に示す概略図である。図4に示すように、スラリー分離工程は、混合槽41、凝集槽42、固液分離槽43、循環槽44、透過水槽37およびセラミック膜45から構成される。
【0064】
過酸化水素分解工程を経た処理水は混合槽41に供給される。混合槽41では、無機凝集剤としてFeCl3が供給される。この時混合槽41中のpHが約2.7程度になるが、アルカリを供給することによりpHが約5となるように処理水を調整する。このようにすることにより、水酸化鉄の微細なフロックが生成する。混合槽41の流出水は凝集槽42に供給される。
【0065】
凝集槽42では、高分子凝集剤(原液として0.1%溶液のものを挙げることができる)を供給する。この操作により、無機凝集フロックを粗大化し、沈降分離性のよいフロックを得ることができる。
【0066】
次に、凝集槽42で生成した凝集フロックを固液分離槽43により、濃縮スラッジと上澄み液に分離する。固液分離槽43は水のアップフローを汚泥の沈降速度以下となるような構成とする。
【0067】
上澄液はセラミック膜45に供給され、膜透過水は透過水槽37に貯留される。セラミック膜の運転は水を循環させつつ、一部の水を膜透過水として得るものであり、通常得ようとする膜透過水の10倍の流量を循環させる。なお、膜の材質はセラミック以外、例えば有機高分子であっても良い。
【0068】
本工程で使用される遠心分離機35はデカンタ型であり、固液分離槽43で得られた濃縮スラッジをさらに濃縮し、脱水を行う。遠心分離機は、概ね3000〜5000Gのものを用いることができる。この結果、脱水汚泥として含水率85%程度の脱水汚泥を得ることができる。分離された汚泥中の母液つまり分離水は、Cuを含んでいるため、混合槽41に返送される構成としている。
【0069】
図5及び図6は、銅処理工程の詳細の例を示す概略図である。
図5に示す銅処理工程10の1例は、Cu分離工程51、Cu回収工程52、酸回収工程53の3つから構成される。
【0070】
Cu分離工程51は、電気透析により原水中のCuをCuSO4濃縮水として分離回収する役目を担い、Cu分離工程を行なう電気透析装置は、第1の脱塩室54、第2の脱塩室55、濃縮室56、陰極室57、陽極室58の5つの部屋を有している。
【0071】
原水は、まず、第1の脱塩室54に供給される。第1の脱塩室54はグラフト重合法で作製したカチオン交換不織布が充填されている。また、隣接した部屋とはカチオン交換膜で仕切られている。第1の脱塩室54中に原水が供給されることにより、原水中のCuがカチオン交換不織布に捕捉され、捕捉されたCuは+極と−極の間に架けられた電位勾配により濃縮室56に移動する。なお、原水中に含まれるCu以外のカチオンもCuとほぼ同様の挙動を示す。第1の脱塩室54を流出した水は中間タンク59に一時的に貯留され、中間タンク59から出た水は第2の脱塩室55に供給される。なお、中間タンクは、必ずしも設ける必要はない。この場合は、第1の脱塩室54の流出水は直接第2の脱塩室55に供給される。
【0072】
第2の脱塩室55は第1の脱塩室54と同様にカチオン交換グラフト重合法で作製したカチオン交換不織布が充填されている。このような構成にすることにより、第1の脱塩室(中間脱塩室)54から漏れ出たCuをも第2の脱塩室55で捕捉除去し、電位勾配により第1の脱塩室54を介して最終的に濃縮室56へ移動させることができる。第2の脱塩室55においても、隣接する部屋とはカチオン交換膜で仕切られている。第2の脱塩室55で流出する水が最終的な処理水となる。ここで、第1または第2の脱塩室54,55の流入水に空気などの気体を加えることができる。気体を加えることにより発生する強い流動は、カチオン交換不織布の表面にスラリーが捕捉された場合に、このスラリーをカチオン交換不織布から剥離させる効果をもたらす。このような気体の注入操作を定期的に行うことにより、脱塩室の詰まりおよびカチオン交換不織布表面のスラリーによる被覆を抑制でき、定常的に原水中のCuを処理することが可能となる。
【0073】
濃縮室56では、第1の脱塩室54および第2の脱塩室55から供給されたCuイオンと陰極室57に満たされた硫酸から供給されるSO42−とが混合され、CuSO4濃縮水となってCu回収工程52に供給される。Cu分離工程51において、通電条件は、定電流運転であり、電流密度は1〜4A(アンペア)/dm2、好ましくは約3アンペア/dm2である。この場合の電圧は10〜40Vの範囲である。脱塩室および濃縮室の厚みは3〜10mm、好ましくは3〜5mmとする。
【0074】
また、CuSO4濃縮水はpHが2以下、好ましくは1.5以下になるように硫酸を添加する。CuSO4濃縮水中のCu濃度は500〜3000ppm、好ましくは約1000ppmである。500ppm以下ではCu回収工程でのCu析出速度が遅くなり、析出される電極面積が大きくなり、装置が大型化する。3000ppm以上ではCu分離工程で濃縮室と第1脱塩室とのCu濃度差が大きくなりすぎ、逆拡散が生じて効率を低下させてしまう。Cu回収工程のCuの析出能力がCu分離工程によるCu濃縮能力を上回る場合は原水のCu濃度を下回ってもよい。H2SO4循環ライン中のpHは2.0以下、好ましくは1.5以下とする。
【0075】
CuSO4濃縮水またはH2SO4循環ライン水のpH調整は、酸回収工程を担う電気透析装置にかける電流値の調整または硫酸の添加により行う。
【0076】
Cu回収工程52は、電解析出操作を行うことにより陰極表面上にCuをCuメタルとして回収する。図1に示したように、Cu回収工程52は電解析出装置を2系列以上並列に設けて交互運転する。または図2に示すように1系列で運転する。酸回収工程53は電気透析操作によりCuSO4循環ライン中に濃縮されたSO42−イオンをH2SO4循環ラインに戻す役目を担っている。CuSO4濃縮水が供給される部屋と硫酸水溶液が供給される部屋はアニオン交換膜により仕切られており、+極と−極の間に電位をかけることにより、CuSO4濃縮水から硫酸水溶液にSO42−が移動する。このようにして、SO42−を回収することにより、CuSO4循環ラインおよびH2SO4循環ライン中のSO42−濃度を定常的な濃度とすることができる。極室を除く各部屋の厚みは3〜10mm、好ましくは3〜5mmとする。
【0077】
酸回収工程53に設けられた酸回収装置における電流密度は2〜3アンペア/dm2である。酸回収装置は図5においては、1台であるが、酸回収工程53の能力により複数台必要な場合もある。この場合は、同様の構成の装置を複数台ならべてもよい。また、設置スペースを小さくする場合は、複極式として、1台あたりの処理能力を高めてもよい。
【0078】
図6に示す銅処理工程の別の1例は、Cu分離工程51におけるセルの構成が濃縮室56と陰極室57の間に硫酸水溶液が循環される部屋が設けられており、陰極室57には純水が充填されている点で図5と異なる。このような構成にすることにより、陰極室57で発生したOH−が直接的に濃縮室56に流入し、Cu(OH)2が濃縮室56内に析出する現象を抑制することができる。また、液の循環経路に圧力がかかる、またはイオン交換体およびイオン交換膜がCu(OH)2で被覆されイオン交換機能が損なわれるというデメリットを抑制することができる。なお、図5及び図6においては、極室に純水を連続的に供給または循環させる構成としても良い。また、Cu析出工程で発生するCu金属微粉を除去する目的で、Cu回収工程流出水を対象としたフィルターによる濾過設備を設けても良い。
【0079】
Cu分離工程51の設置スペースを小さくする場合は、酸回収工程53と同様に複極式としてもよい。
【0080】
図7及び図8A,8Bは、電解析出装置の詳細を示す概略図であり、図7は第1の形態の電解析出装置を、図8A及び図8Bは第2の形態の電解析出装置を示す。
【0081】
図7を参照して、第1の形態の電解析出装置60によるCu析出工程(Cu回収工程)における電流の流し方について説明する。図7において、符号61はカロメル電極などの参照電極であり、符号62は電解析出槽であり、符号63はスターラであり、符号64は電源装置である。
【0082】
Cu析出工程における電流の流し方は、大きく分けて定電流運転、定電圧運転、定電位運転の3種類の方法があるが、いずれも採用することができる。図7では定電位運転の場合の構成について説明する。
【0083】
定電位運転では、参照電極により陰極電位を測定し、陰極電位が所定値で一定となるように電流値が調整される。この場合には、水の電気分解に伴うOH−の生成および電流効率の低下が抑制されるという効果が得られる。運転条件としては、陰極の電位が−0.3〜0.2、好ましくは−0.1〜0.1(V)となるように陰極の電位を設定するのがよい。
【0084】
電解析出槽62内はポンプまたは攪拌機により撹拌することが好ましい。また、陰極又は陽極が回転運動などにより動くことによる攪拌でも良い。
【0085】
図8A及び図8Bは、第2の形態の電解析出装置70A,70Bを示す概略図である。
半導体工場では、Cuの濃度のみならず異物の濃度をできる限り低くすること、すなわち、雰囲気のクリーン度が高いことが要求される。Cuメタルが露出した状態で陰極が交換される場合は、Cu汚染を引き起こすことが懸念される。
【0086】
図8A及び図8Bに示す電解析出装置70A,70Bは、ともにカートリッジ式であり、上下のバルブ71を閉めてカートリッジごと交換するように構成することにより、Cuメタルの露出を伴うことなく、Cuが充分に析出した陰極を交換することが可能となる。このような構成により、作業性がよくなるという利点も得られる。
【0087】
電解析出装置70Aは陰極72が1つだけの構成である。また、電解析出装置70Bはカートリッジの寿命を長くすることを目的とし、陰極72を複数設ける構成である。陽極73と陰極72はともに、通水性及び通ガス性を備えていることが望ましい。陰極72としては、発泡金属又は網状の電極、ラス板状の電極などを用いることができる。また、陽極73についても同様の構造の材料を用いることができる。なお、カートリッジは1系列あたり複数設けても良いし、直列、並列に配置しても良い。
【0088】
ここで、電解析出装置70A,70Bとして、カートリッジ式のものを図示しているが、電解析出装置としてはこのような構成のもののほかに、従来技術で示されているものももちろん使用することができる。
【0089】
電解析出装置は、陰極表面に析出した銅をスクレイパーで掻き取り、バグフィルター内に回収する方法などでも良い。電解析出装置の型式が、図27に示すように、陰極175が設置されている水槽171と陽極176が設置されている水槽172とがイオン交換膜173で隔離されている隔膜併用型の電解析出装置である場合は、CuSO4濃縮水は、陰極175が設置されている水槽171にのみ供給する。
【0090】
電気透析操作で用いるイオン交換繊維材料としては、高分子繊維基材にイオン交換基をグラフト重合法によって導入したものが好ましく用いられる。高分子繊維よりなるグラフト化基材は、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの一種の単繊維であってもよく、また、軸芯と鞘部とが異なる高分子によって構成される複合繊維であってもよい。
【0091】
用いることのできる複合繊維の例としては、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンを鞘成分とし、鞘成分として用いたもの以外の高分子、例えばポリプロピレンを芯成分とした芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。かかる複合繊維材料に、イオン交換基を、放射線グラフト重合法を利用して導入したものが、イオン交換能力に優れ、厚みが均一に製造できるので、上記の目的で用いられるイオン交換繊維材料として好ましい。イオン交換繊維材料の形態としては、織布、不織布などを挙げることができる。
【0092】
また、斜交網等のスペーサー部材の形態のイオン交換体としては、ポリオレフィン系高分子製樹脂、例えば、電気透析槽において広く使用されているポリエチレン製の斜交網(ネット)を基材として、これに、放射線グラフト重合法を用いてイオン交換機能を付与したものが、イオン交換能力に優れ、被処理水の分散性に優れているので、好ましい。
【0093】
なお、放射線グラフト重合法とは、高分子基材に放射線を照射してラジカルを形成させ、これにモノマーを反応させることによってモノマーを基材中に導入するという技法である。
【0094】
放射線グラフト重合法に用いることができる放射線としては、α線、β線、ガンマ線、電子線、紫外線等を挙げることができるが、本発明においてはガンマ線や電子線を好ましく用いる。放射線グラフト重合法には、グラフト基材に予め放射線を照射した後、グラフトモノマーと接触させて反応させる前照射グラフト重合法と、基材とモノマーの共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあるが、本発明においては、いずれの方法も用いることができる。
【0095】
また、モノマーと基材との接触方法により、モノマー溶液に基材を浸漬させたまま重合を行う液相グラフト重合法、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後モノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸気相グラフト重合法などを挙げることができるが、いずれの方法も本発明において用いることができる。
【0096】
不織布などの繊維基材やスペーサー基材に導入するイオン交換基としては、特に限定されることなく種々のカチオン交換基又はアニオン交換基等を用いることができる。例えば、カチオン交換基としては、スルホン基などの強酸性カチオン交換基、リン酸基などの中酸性カチオン交換基、カルボキシル基などの弱酸性カチオン交換基、アニオン交換基としては、第1級〜第3級アミノ基などの弱塩基性アニオン交換基、第4級アンモニウム基などの強塩基性アニオン交換基を用いることができ、或いは、上記カチオン交換基及びアニオン交換基の両方を併有するイオン交換体を用いることもできる。
【0097】
また、官能基として、イミノジ酢酸及びそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリン及びプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有するイオン交換体を用いてもよい。
【0098】
この目的で用いることのできるイオン交換基を有するモノマーとしては、アクリル酸(AAc)、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0099】
例えば、スチレンスルホン酸ナトリウムをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強酸性カチオン交換基であるスルホン基を導入することができ、また、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を導入することができる。
【0100】
また、イオン交換基に転換可能な基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)などが挙げられる。例えば、メタクリル酸グリシジルを放射線グラフト重合によって基材に導入し、次に亜硫酸ナトリウムなどのスルホン化剤を反応させることによって強酸性カチオン交換基であるスルホン基を基材に導入したり、又はクロロメチルスチレンをグラフト重合した後に、基材をトリメチルアミン水溶液に浸漬して4級アンモニウム化を行うことによって、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を基材に導入することができる。
【0101】
また、基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、スルフィドを反応させてスルホニウム塩とした後、イミノジ酢酸ナトリウムを反応させることによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。或いは、まず基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、クロロ基をヨウ素で置換し、次にイミノジ酢酸ジエチルエステルを反応させてヨウ素をイミノジ酢酸ジエチルエステル基で置換し、次に水酸化ナトリウムを反応させてエステル基をナトリウム塩に変換することによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。
【0102】
上述の各種の形態のイオン交換体の中では、不織布又は織布などの形態のイオン交換繊維材料が特に好ましい。織布、不織布などの繊維材料は、樹脂ビーズや斜交網などの形態の材料と比較して表面積が極めて大きいのでイオン交換基の導入量が大きく、また、樹脂ビーズのようにビーズ内部のミクロポア又はマクロポア内にイオン交換基が存在するということはなく、全てのイオン交換基が繊維の表面上に配置されるので、処理水中の金属イオンが容易にイオン交換基の近傍に拡散され、イオン交換によって吸着される。従って、イオン交換繊維材料を用いると、金属イオンの除去・回収効率をより向上させることができる。
【0103】
発生した水素ガスの処理方法としては、図9乃至図11に示す方法を採用することができる。すなわち、水素ガスとモル当量以上の酸素を含有するガスとを混合させ、水素ガスと酸素ガスを再結合させて水とする能力を有する触媒充填層101を通過させて触媒反応させ、残存する水素ガス濃度を爆発限界濃度である4容積%未満にする方法(図9参照)、水素ガスに大量の空気またはN2などの不活性ガス等を混合して爆発限界濃度未満となるように水素濃度をさげる方法(図10参照)、水素ガスを燃料電池102に供給する方法(図11参照)などを採用することができる。燃料電池102を用いる場合は得られた電気エネルギー(電力)を廃水処理施設103または他施設の運用に用いることができる。
【0104】
次に、上記のような本発明に係る廃水処理装置によって得られた処理水の水質や水量をモニターして異常検知を行う方法について図12A及び図12Bを参照して説明する。図12A及び図12Bにおいて、105は上記に説明した本発明の各種態様に係る廃水処理装置、104は被処理水、107は処理水である。
【0105】
まず第一の方法として、図12Aに示すように、本発明に係る廃水処理装置105から得られた処理水107の銅イオン濃度を、銅イオン濃度測定装置106によって測定し、処理水の銅イオン濃度が設定値よりも高くなった場合に警報を出すようにすることができる。この場合、電解析出装置または電気透析装置での電流不足、原水の銅イオン濃度の増大、電気透析処理でのイオン交換体の劣化などが考えられるが、電解析出装置または電気透析装置での運転電流の上昇や、イオン交換体の交換などの作業によって対処することができる。
【0106】
このような目的で使用することのできる液中の銅イオン測定装置としては、例えば、イオン電極法、電極ポーラロ法、HPLC電気泳動法、蛍光光度法などに基づく測定装置を挙げることができる。なお、銅イオン濃度測定装置106は処理水ラインを分岐した位置に設けられているが、処理水ラインに直接設けても良い。
【0107】
また、図12Bに示すように、本発明に係る廃水処理装置105から得られた処理水107の流量を流量計(FI)で測定して、処理水量が設定値を下回った場合に警報を出すようにすることができる。この場合、イオン交換体の目詰まり、処理水入口の導入圧力の不足などが考えられるが、それぞれ、イオン交換体の交換、処理水入口圧力の上昇などによって対処をすることができる。なお、このような対処は、測定装置による測定値に連動した自動的制御によって行うこともできる。
【0108】
CMPで使用される砥液には、過酸化水素、硝酸鉄、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの酸化剤が加えられることもある。また銅めっき工程ではウエハ表面に銅膜を形成した後、ウエハの周辺部(エッジ部分)に付着した銅膜或いはウエハ裏面に付着した銅膜が剥離して、クリーンルームを汚染するおそれがあるので、所謂ベベルエッチングによってウエハ周辺或いはウエハ裏面に付着した銅膜を過酸化水素などの酸化剤で酸化させながらクエン酸、シュウ酸、塩酸又は硫酸等の酸で溶かして除去を行う。
【0109】
このように、半導体の銅配線形成に使われるCMPやECP或いは銅めっき装置の廃液には、大量の銅イオンに加えて過酸化水素などの酸化剤が含まれていることが多い。このような酸化剤、特に過酸化水素は電気分解によって容易に分解されるが、過酸化水素の電気分解は銅などの重金属の電解析出よりも優先して進行するので、廃水中に過酸化水素が多く含まれていると、電解析出に大きな電流が必要になる。
【0110】
また、被処理水中に過酸化水素などの酸化剤が含まれていると、イオン交換体の機能を低下させるという問題もある。また、析出した金属、水酸化物、酸化物が再溶解する懸念もある。従って、この過酸化水素を除去または低減する設備を含めた廃水処理システムとすることが好ましい。
【0111】
このような点を考慮した半導体装置製造工程からの廃水の処理システムの構成例を図13に示す。図13に示すシステムでは、CMP工程、ECP工程や銅めっき工程などの各種工程108からの廃水を、酸化剤除去工程109でまず処理して、次に本発明に係る電解析出操作と電気透析操作とを組み合わせた廃水処理装置110で処理する。符号111は処理水を示す。
【0112】
図14は、CMP装置と本発明に係る廃水処理システムとの関係を示す図である。CMP装置112は研磨ユニット(研磨工程)112aと洗浄ユニット(洗浄工程)112bを有しており、研磨工程112aではウエハの研磨が行われる。
【0113】
研磨工程112aで、スラリー、分散剤、酸、アルカリ、キレート剤など(1つまたは複数)を含む薬液および純水などの液体が使用される。これらの廃液体を廃水処理システム(廃水処理装置110)に導入する。
【0114】
洗浄工程112bでは、ウエハ上に残留するスラリー、研磨粉、薬液を純水などにより洗浄する。これらの洗浄廃水も廃水処理システムに導入する。なお、研磨ユニット112aは電解研磨法によるものでもよい。いずれかの廃水に特有の物質が含まれており、廃水処理を阻害する場合は、薬品処理112c、固液分離処理112dなどにより、予め阻害要因を取り除くこともできる(例えば、エッジ欠けにより発生したSSの分離、金属メタル粉の溶解または分離)。なお、研磨工程と洗浄工程は多段で行われる場合もある。
【0115】
研磨工程がCu研磨工程とバリア研磨工程などCu研磨工程以外の工程から成り、排出されるCuのうち大部分がCu研磨工程に由来する場合は、Cu研磨工程由来の排水のみを、本発明に関わる廃水処理装置の処理対象とするのが望ましい。図28A,図28BにおけるCu−CMP装置のうち、図28AではCu研磨ユニットのみの排水を対象とすることができる。図28Bでは研磨ユニットの排水ラインを研磨工程の種類により自動的に切換える制御を行うことでCu研磨ユニットのみの排水を対象とすることができる。
【0116】
図15は、本発明に係る廃水処理システムを同一チャンバ内でエッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を行なう装置に導入した場合の構成例を示す図である。図15に示す装置113は、エッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を同一チャンバ113a内で行なうものである。
【0117】
エッチング方法としては、電解研磨などの電気化学的な方法を用いることができる。ケミカル・メカニカルポリッシング(CMP)を用いてもよい。各工程の廃水を全て廃水処理システム(廃水処理装置110)に導入してもよいし、また、一部の工程の廃水のみを廃水処理装置110に導入してもよい。
【0118】
図16は、同じ工程を担う複数の装置から排出される廃水をまとめて処理する場合を示す図である。例えば、CMP装置112などの研磨装置から排出される廃水のうち、ある同じ工程(例えばA工程)を担うものからの廃水はまとめて本発明に係る廃水処理システム(廃水処理装置110a)に導入する。またCMP装置112から排出される廃水のうち、別の同じ工程(例えばB工程またはC工程)を担うものからの廃水は別にまとめて廃水処理装置110bまたは110cにおいて処理を行う。
【0119】
図17は、本発明に係る廃水処理ユニット(廃水処理システム)を筐体に収容した場合の例を示す斜視図である。図17に示すように、廃水処理ユニット113は、pH調整手段(pH調整ユニット)113b、内部負圧形成手段、廃水受容タンク、移動用キャスター等を1つ以上備えた筺体114の内部に備えられる。内部負圧形成手段は、圧力計信号により制御されるものであってもよい。筺体114は分割できる構成であってもよい。上記のような構成であれば、クリーンルームあるいはクリーンルーム階下のようなある一定以上のクリーン度を要するスペースにも設置可能となる。
【0120】
図18A及び図18Bは、本発明に係る廃水処理システムをめっき処理装置またはCMP装置、ECP装置に導入した場合の両者の好適な位置関係を示す図である。図18A及び図18Bにおいて、符号115はクリーンルームを示している。図18Aは、廃水処理装置110を、クリーンルーム115内の半導体製造装置116(めっき処理装置118またはCMP装置112)の直下にグレーチング117を介して設置する例である。図18Bは、廃水処理装置110を、半導体製造装置116に隣接して設置する例である。
【0121】
これらのように、廃水処理装置を半導体製造装置116の直近に設置することにより、設備コスト(配管など)を低減するとともに、工場全体の体積(大きさ)をコンパクトにすることができる。工場全体の建設コストを低減することができる。
【0122】
図19A乃至図19Cは、異なる工程を担う装置から排出される廃水をまとめて処理する場合を示す図である。例えば、図19Aに示すように、装置119では、電解研磨工程(ECP工程)119aから排出される廃水とめっき工程119bから排出される廃水を混合して廃水処理システム(廃水処理装置110)で処理することができる。
【0123】
また、図19Bに示すように、同一動作ではあるが異なる工程(例えば、CMP工程120a、120b)を担う装置120においても、CMP工程120aから排出される廃水と、CMP工程120bから排出される廃水を混合して廃水処理装置110で処理することができる。
【0124】
また、図19Cに示す装置121のように、CMP工程121aからの廃水と、めっき工程またはECP工程121bからの異なる性状の廃水それぞれを、廃水処理システム(廃水処理装置110)の異なる処理工程(例えば、工程122と工程123)に導入しても良い。また、処理水を廃水処理装置110から排出する際は、工程122と工程123からそれぞれ別に処理水を取出しても良い。
【0125】
なお、図13に示すようなシステムにおいては、廃水の処理装置を2系列にして、イオン交換体、電解析出装置の陰極などの交換部品の交換の際に経路を切替えることにより、連続的な処理を確保することができる。
【0126】
例えば、図20のシステムでは、各種半導体装置製造プロセス108からの廃水は、まず廃水タンク124に受容され、次に、酸化剤除去工程109にかけられ、次に、2系統にされた本発明に係る電解析出操作と電気透析操作とを組み合わせた廃水処理装置110の一方に供給され、銅イオンが除去されて処理水111が得られる。電解析出装置の陰極や電気透析装置のイオン交換体などの交換部品の交換時期になったら、経路を切替えてもう一方の廃水処理装置110に被処理水を通水し、通水が停止された側の廃水処理装置110の交換部品の交換を行う。これにより、廃水の連続処理が確保される。
【0127】
本発明に係る廃液の処理システムを実際の半導体装置製造工場において使用する場合の設置方法の例を図21A及び図21Bに示す。図21A及び図21Bにおいて、130は半導体装置製造工場、131は銅めっき装置、132はCMP、ECPなどのポリッシング装置、133は上記に説明した本発明の各種態様に係る廃液の処理装置又は廃液処理システムを意味する。
【0128】
例えば、図21Aに示すように、半導体装置製造工場130内の銅めっき装置131や、CMP、ECPなどのポリッシング装置132などからの廃液を集めて、これを本発明の各種態様に係る廃液の処理装置又は廃液処理システム133で処理して、銅などの銅イオンが除去された処理水111を得ることができる。
【0129】
また、図21Bに示すように、銅めっき装置131からの廃水や、CMP、ECPなどのポリッシング装置132などの廃水をそれぞれ別々に集めて、これを別々に本発明の各種態様に係る廃液の処理装置又は廃液処理システム133で処理して、銅などの重金属イオンが除去された処理水111を得ることができる。従って、各工場での廃液を発生する装置の実状に合わせてユースポイントに本発明の廃液処理装置を配置することにより廃液処理をすることができる。
【0130】
なお、CMPとECPとが共存する場合には、これらの廃液を別々に処理しても、混合して処理してもよい。本発明による処理水111を下水道放流または別途設置した総合廃水処理施設に供する場合、pHなどの水質項目が適さない場合においてはこれらの調整を行ってから供することは勿論である。
【0131】
銅含有廃水に含まれる砥粒などの固体微粒子の表面(電気二重層表面)におけるζ電位(ゼータ電位)には−の場合と+の場合がある。固体微粒子表面のζ電位が−の場合では、電気透析操作において固体微粒子が銅イオン(Cu2+)と異なる挙動を示すこと、及びイオン交換操作においてイオン交換体(カチオン交換不織布、カチオン交換樹脂ビーズ、カチオン交換膜)への吸着が生じないことより、Cu処理工程に悪影響を与えない。これに対して、固体微粒子表面のζ電位が+の場合では、電気透析操作において固体微粒子がCu2+と類似した挙動を示し、カチオン交換膜表面に堆積する、または、イオン交換操作において、カチオン交換樹脂またはカチオン交換不織布などのカチオン交換体にCu2+と共に吸着され、吸着サイトを被覆するという問題がある。また、凝集沈殿操作においては、一般的に用いられる無機凝集剤である塩化第二鉄、PACなどとの反応性が悪く、凝集フロックが形成されないまたはスラリーの凝集が生じないなどの問題がある。
【0132】
これより、ζ電位が+の値を示す場合は、ζ電位を−にするような処理を予め行ってからCu処理工程に供給することが望ましい。
【0133】
ζ電位を転化する手段としては、陰イオン系界面活性剤などの界面活性剤またはpH調整剤(酸またはアルカリ)を廃水に添加する方法を挙げることができる。
【0134】
なお、銅含有廃水中に、ζ電位がプラスの固体微粒子とζ電位がマイナスの固体微粒子が共に存在している場合、銅含有廃水中の固体微粒子全体としてのζ電位の値はそれぞれの固体微粒子のζ電位の強弱および固体微粒子の存在割合に影響され、プラスを指す場合とマイナスを指す場合の2つのケースがある。このような場合は、銅含有廃水中の固体微粒子全体としてのζ電位の値がマイナスであっても、ζ電位がプラスである固体微粒子の悪影響を排除する目的で、ζ電位を転化する手段により、ζ電位がプラスの固体微粒子のζ電位をマイナスに転化させて、銅含有廃水中の固体微粒子全体としてのζ電位をより低くすることが望ましい。
【0135】
界面活性剤の種類としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン界面活性剤を挙げることができ、ζ電位を+から−に転換させる場合に界面活性剤を適用する場合は疎水基の部分が陰イオンとなる陰イオン界面活性剤を用いることが好ましい。陰イオン界面活性剤の種類としては、カルボン酸塩型、例えば脂肪酸塩、エーテルカルボン酸塩、アルケニルコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩、ロジン酸塩(樹脂酸塩)、ナフテン酸塩、また、硫酸エステル塩型、例えば第一級アルキル硫酸エステル塩、第二級アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、モノアシルグリセリン硫酸エステル塩、硫酸化油/硫酸化脂肪酸アルキルエステル、また、スルホン酸塩型、例えばα−オレフィンスルホン酸塩、第二級アルキルスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アシルイセチオン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、また、リン酸エステル塩型、例えばアルキルリン酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩などを挙げることができる。
【0136】
これらの界面活性剤の例としては、ライオン製リポランPB−800、ライオン製ポリティN−100K、ライオン製ポリティPS−1900、ライオン製ポリティA−550、花王製エマルゲン1118S−70、花王製ネオペレックスなどを挙げることができる。
【0137】
上記に挙げたもののような塩型の陰イオン界面活性剤を利用する際は、界面活性剤を廃水に添加した際にナトリウムイオン又はアンモニウムイオンなどのカチオンも加わり、電気透析処理におけるカチオン負荷が増加する。このため、電気透析処理におけるCuの分離性能が悪化するという問題が発生する場合がある。このような場合では、マイナスの電荷をもつ親水基が水素イオンとイオン結合している、H型の界面活性剤を用いる。このような界面活性剤の例としては、界面活性剤の製造工程において、アルカリ加水分解工程を行う前の段階の未中和品である、花王製ネオペレックスGSを挙げることができる。
【0138】
界面活性剤の添加率は、固体微粒子の濃度およびζ電位などの性状により異なるが、固体微粒子濃度が500〜5000mg/L、銅含有廃水中の固体微粒子全体としてのζ電位の値が−50mV〜+50mVの範囲の場合においては、通常10〜1000mg/L、好ましくは10〜500mg/Lの範囲とするのがよい。界面活性剤添加後のζ電位は、通常−20mV以下、好ましくは−30mV以下とするのが良い。但し、非イオン系界面活性剤を用いる場合の界面活性剤添加後のζ電位はこの限りではない。
【0139】
ここで用いる界面活性剤の分子量は、200〜100000の範囲である。廃水に添加した後の起泡性が高すぎる場合は、分子量が10000以上の比較的高分子の界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0140】
本発明で定義する界面活性剤は、スラリー分散効果または、ζ電位を低下させる効果があれば特に呼称による制限は受けない。界面活性剤は分散剤と呼ばれるものは含む。スルホン基を官能基として有する有機物は含む。
【0141】
pH調整剤を用いる場合は、一般的にアルカリを添加し、pHを上げることでζ電位を下げることが可能である。
利用するアルカリとしては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア及びTMAH、コリンなどのアミン系アルカリ剤などを挙げることができる。
【0142】
上述したように、銅を含む廃水が砥粒などの固体微粒子を含む場合において、微粒子のζ電位が+の値を有する場合には、Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設ける。一方、銅を含む廃水が固体の微粒子を含む場合において、微粒子のζ電位が−の値を有する場合には、廃水を直接にCu処理工程に導入する。ζ電位転化工程を設ける位置は、Cu処理工程の前段であればいずれの位置でもよく、酸化剤分解工程の前段であっても後段であってもよい。界面活性剤の添加はCMP処理装置内であってもよい。なお、ζ電位転化工程を設ける場合におけるCu処理工程としては、電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるものでもよく、またはイオン交換処理、凝集沈殿処理などのいずれの方法であってもよい。
【0143】
次に、Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設ける場合の実施形態について、図23A及び図23Bを参照して説明する。
【0144】
図23Aに示される実施形態においては、半導体装置製造プロセスにおけるCMP工程及び/又はCMP工程後の洗浄工程から排出されたCuを含有した廃水は、過酸化水素分解工程等の酸化剤分解工程2Aに供給される。酸化剤分解工程2Aでは、廃水に含まれている過酸化水素、または過硫酸アンモニウム等の酸化剤を、例えば、白金担持触媒で分解する。酸化剤分解工程2Aから排出された廃水は、ζ電位転化工程5に供給される。このζ電位転化工程5において、上述したように陰イオン界面活性剤等の界面活性剤、またはpH調整剤を廃水に添加する。このζ電位転化工程5により、廃水中に含まれる微粒子のζ電位が−の値を有するように転化され、この転化工程後の廃水はCu処理工程10に導入され、Cu処理工程10により処理され、銅濃度が低められた処理水を得ると共に、銅を銅金属として回収する。
【0145】
過酸化水素分解工程等の酸化剤分解工程2AおよびCu処理工程10は、図1乃至図8の実施形態において説明した工程と同様である。
【0146】
図23Bに示される実施形態においては、半導体装置製造プロセスにおけるCMP工程及び/又はCMP工程後の洗浄工程から排出されたCuを含有した廃水は、ζ電位転化工程5に供給される。このζ電位転化工程5において、上述したように陰イオン界面活性剤等の界面活性剤、またはpH調整剤を廃水に添加する。このζ電位転化工程5により、廃水中に含まれる微粒子のζ電位が−の値を有するように転化され、この転化工程後の廃水は、過酸化水素分解工程等の酸化剤分解工程2Aに供給される。酸化剤分解工程2Aでは、廃水に含まれている過酸化水素等の酸化剤を、例えば、白金担持触媒で分解する。酸化剤分解工程2Aから排出された廃水は、Cu処理工程10に導入され、Cu処理工程10により処理され、銅濃度が低められた処理水を得ると共に、銅を銅金属として回収する。
【0147】
過酸化水素分解工程等の酸化剤分解工程2AおよびCu処理工程10は、図1乃至図8の実施形態において説明した工程と同様である。
【0148】
図24A及び図24Bは、上述したζ電位転化工程を実施するζ電位転化装置の構成を示す概略図である。図24Aに示すように、ζ電位転化装置は、撹拌槽150と、界面活性剤等の薬液を貯留する薬液貯槽151と、薬液貯槽151に貯留された薬液を撹拌槽150に供給するためのポンプ152とから構成されている。撹拌槽150には、CMP工程及び/又は洗浄工程から排出された銅を含む廃水が供給されるとともに、薬液貯槽151から薬液が供給され、これら廃水と薬液は攪拌機150aにより撹拌された後にCu処理工程10に送られる。図24Bに示すように、ζ電位転化装置は、薬液を薬液貯槽151からポンプ152を介して廃液ライン153に直接供給し、ライン153に設けられたラインミキサ155においてCMP工程及び/又は洗浄工程から排出された銅を含む廃水と薬液とを混合する構成としてもよい。
【0149】
図23A及び図23BにおけるCu処理工程は、以下に説明するイオン交換処理又は凝集沈殿処理で行ってもよい。
【0150】
次に、イオン交換処理の詳細について説明する。図23A及び図23Bにおいて、ζ電位転化工程又は酸化剤分解工程を経た廃水は、イオン交換体を用いたイオン交換処理がなされる。イオン交換処理にかける操作は、例えばビーズ形状のイオン交換樹脂を充填したカラムや、織布・不織布などの繊維材料や多孔膜或いは斜交網等のスペーサー部材などの形態のイオン交換体によって形成された通水性シートを備えた液体フィルター装置などに、金属イオンを含む廃水(被処理水)を通液することによって、被処理水中に残留している金属イオンM+をイオン交換によってイオン交換体に吸着させることによって、被処理水中から残留する金属イオンをより高度に除去・回収するというものである。イオン交換処理における被処理水の通水方法としては、イオン交換体の層に被処理水を通液する方法と、イオン交換体の層の表面に沿って被処理水を流す方法とがあるが、何れの方法を採用してもよい。
【0151】
この目的で用いることのできるイオン交換体樹脂ビーズとしては、当該技術において公知のものを用いることができる。例えば、ポリスチレンをジビニルベンゼンで架橋したビーズなどを基材樹脂として用い、これを硫酸やクロロスルホン酸のようなスルホン化剤で処理してスルホン化を行なって基材にスルホン基を導入することにより、本発明で使用することのできる強酸性カチオン交換樹脂ビーズを得ることができる。このような製造方法は当該技術において周知であり、またこのような手法によって製造されたカチオン交換樹脂ビーズとしては、種々の商品名で市販されているものを挙げることができる。また、官能基としてイミノジ酢酸及びそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリン及びプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有する樹脂ビーズを用いてもよい。
【0152】
また、同様の目的で用いることのできるイオン交換繊維材料としては、高分子繊維基材にイオン交換基をグラフト重合法によって導入したものが好ましく用いられる。高分子繊維よりなるグラフト化基材は、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの一種の単繊維であってもよく、また、軸芯と鞘部とが異なる高分子によって構成される複合繊維であってもよい。用いることのできる複合繊維の例としては、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンを鞘成分とし、鞘成分として用いたもの以外の高分子、例えばポリプロピレンを芯成分とした芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。かかる複合繊維材料に、イオン交換基を、放射線グラフト重合法を利用して導入したものが、イオン交換能力に優れ、厚みが均一に製造できるので、上記の目的で用いられるイオン交換繊維材料として好ましい。イオン交換繊維材料の形態としては、織布、不織布などを挙げることができる。
【0153】
また、斜交網等のスペーサー部材の形態のイオン交換体としては、ポリオレフィン系高分子製樹脂、例えば、電気透析槽において広く使用されているポリエチレン製の斜交網(ネット)を基材として、これに、放射線グラフト重合法を用いてイオン交換機能を付与したものが、イオン交換能力に優れ、被処理水の分散性に優れているので、好ましい。
【0154】
なお、放射線グラフト重合法とは、高分子基材に放射線を照射してラジカルを形成させ、これにモノマーを反応させることによってモノマーを基材中に導入するという技法である。
【0155】
放射線グラフト重合法に用いることができる放射線としては、α線、β線、ガンマ線、電子線、紫外線等を挙げることができるが、本発明においてはガンマ線や電子線を好ましく用いる。放射線グラフト重合法には、グラフト基材に予め放射線を照射した後、グラフトモノマーと接触させて反応させる前照射グラフト重合法と、基材とモノマーの共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあるが、本発明においては、いずれの方法も用いることができる。また、モノマーと基材との接触方法により、モノマー溶液に基材を浸漬させたまま重合を行う液相グラフト重合法、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後モノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸気相グラフト重合法などを挙げることができるが、いずれの方法も本発明において用いることができる。
【0156】
不織布などの繊維基材やスペーサー基材に導入するイオン交換基としては、特に限定されることなく種々のカチオン交換基又はアニオン交換基等を用いることができる。例えば、カチオン交換基としては、スルホン基などの強酸性カチオン交換基、リン酸基などの中酸性カチオン交換基、カルボキシル基などの弱酸性カチオン交換基、アニオン交換基としては、第1級〜第3級アミノ基などの弱塩基性アニオン交換基、第4級アンモニウム基などの強塩基性アニオン交換基を用いることができ、或いは、上記カチオン交換基及びアニオン交換基の両方を併有するイオン交換体を用いることもできる。また、官能基としてイミノジ酢酸及びそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリン及びプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有するイオン交換体を用いてもよい。
【0157】
これらの各種イオン交換基は、これらのイオン交換基を有するモノマーを用いてグラフト重合、好ましくは放射線グラフト重合を行うか、又はこれらのイオン交換基に転換可能な基を有する重合性モノマーを用いてグラフト重合を行った後に当該基をイオン交換基に転換することによって、繊維基材又はスペーサー基材に導入することができる。この目的で用いることのできるイオン交換基を有するモノマーとしては、アクリル酸(AAc)、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。例えば、スチレンスルホン酸ナトリウムをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強酸性カチオン交換基であるスルホン基を導入することができ、また、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を導入することができる。
【0158】
また、イオン交換基に転換可能な基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)などが挙げられる。例えば、メタクリル酸グリシジルを放射線グラフト重合によって基材に導入し、次に亜硫酸ナトリウムなどのスルホン化剤を反応させることによって強酸性カチオン交換基であるスルホン基を基材に導入したり、又はクロロメチルスチレンをグラフト重合した後に、基材をトリメチルアミン水溶液に浸漬して4級アンモニウム化を行うことによって、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を基材に導入することができる。また、基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、スルフィドを反応させてスルホニウム塩とした後、イミノジ酢酸ナトリウムを反応させることによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。或いは、まず基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、クロロ基をヨウ素で置換し、次にイミノジ酢酸ジエチルエステルを反応させてヨウ素をイミノジ酢酸ジエチルエステル基で置換し、次に水酸化ナトリウムを反応させてエステル基をナトリウム塩に変換することによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。
【0159】
上述の各種の形態のイオン交換体の中では、不織布又は織布などの形態のイオン交換繊維材料が特に好ましい。織布、不織布などの繊維材料は、樹脂ビーズや斜交網などの形態の材料と比較して表面積が極めて大きいのでイオン交換基の導入量が大きく、また、樹脂ビーズのようにビーズ内部のミクロポア又はマクロポア内にイオン交換基が存在するということはなく、全てのイオン交換基が繊維の表面上に配置されるので、処理水中の金属イオンが容易にイオン交換基の近傍に拡散され、イオン交換によって吸着される。従って、イオン交換繊維材料を用いると、金属イオンの除去・回収効率をより向上させることができる。
【0160】
次に、凝集沈殿処理の詳細について説明する。
図23A及び図23Bにおいて、ζ電位転化工程5又は酸化剤分解工程2Aを経た被処理水は凝集沈殿槽に受容される。凝集沈殿槽では、凝集剤が被処理水に添加されて、被処理水中の金属イオンが凝集沈殿することで被処理水中から除去され、上澄み液が処理水として回収される。凝集沈殿槽内で沈殿した金属は、沈殿物として回収され、必要に応じてその後の処理にかけられる。このようなシステムにおいて、被処理水中の金属イオンを凝集沈殿させるために使用される凝集剤としては、当該技術において、水系媒体から金属イオンを凝集沈殿させることができる公知の各種の薬剤を用いることができる。
【0161】
具体的な例としては、例えば、NaOH、Ca(OH)2、KOHなどのアルカリや、高分子凝集剤、無機凝集剤、例えばFeSO4、FeCl3等を挙げることができる。FeSO4などのFe2+を含む無機凝集剤を使う時には、フェントン反応が起きるので、過酸化水素とキレート剤が分解され、より好ましい。なお、凝集処理によって生成したスラッジをMF膜などの排水処理に一般的に用いられている膜によって濾過してもよい。
【0162】
実施例
以下の実施例により、本発明をより具体的に説明する。以下の実施例の記載は、本発明の一具体例を説明するもので、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0163】
<カチオン交換不織布の製造>
表1に、本実施例において使用したカチオン交換不織布の製造に使用した基材不織布の仕様を示す。この不織布は、芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンから構成される複合繊維を、熱融着によって不織布としたものである。
【表1】
【0164】
上記不織布に、ガンマ線を窒素雰囲気下で照射した後、メタクリル酸グルシジル(GMA)溶液に浸漬して反応させ、グラフト率175%を得た。次に、このグラフト不織布を、亜硫酸ナトリウム/イソプロピルアルコール/水の混合液中に浸漬して反応させることによって、スルホン化を行った。得られたカチオン交換不織布のイオン交換容量を測定したところ、中性塩分解容量が2.82meq/gの強酸性カチオン交換不織布が得られたことが分かった。
【実施例2】
【0165】
図22に示す構成の実験装置を用いて実験を行った。図22において、符号134はカチオン交換膜を示し、符号136は処理水を示し、符号138は濃縮水を示し、符号141は電解析出装置を示し、符号142は被処理水を示す。分離処理においては、脱塩室135の内部にはイオン交換体としてスルホン基を有するカチオン交換不織布を充填した。濃縮室137の内部にはイオン交換体としてスルホン基を有するカチオン交換不織布を充填した。電極材は、陰極140がエキスパンドメタル(材質:SUS)、陽極139がエキスパンドメタル(材質:チタンに白金コーティング)とした。陰極室には硫酸をpH1.5以下となるように供給した。
【0166】
銅の回収においては、板状の電極を用いた。陽極の材質はチタン/白金コーティング、陰極は銅とした。槽内は攪拌機により300rpmで撹拌した。
【0167】
実験1は、原水として銅めっきリンス廃水を用いて行った。実験2は原水として銅を研磨するCMP廃水を用いて行った。CMP廃水はPtを担持したメタルハニカム触媒により予め残存するH2O2を1mg/L以下に除去した。CMP廃水のスラリー濃度はTS(Total Solid:「Residue, Total」 EPA Method 160.3)として2000ppmであった。
【0168】
電流密度は分離処理および回収処理ともに3A(アンペア)/dm2とした。
この結果、実験1では、原水のCu濃度が120ppmであるのに対して処理水Cu濃度は<0.1ppmであり、本実施例の構成においても効果は変わりがないことを確認した。濃縮室中に濃縮された銅イオン濃度は1000ppm以上となった。濃縮水中の銅イオンは回収処理工程の陰極において銅金属として回収された。
【0169】
実験2においても、原水のCu濃度が110ppmに対して処理水Cu濃度は<0.1ppmであり、濃縮水中の銅イオンは回収処理工程の陰極において銅金属として回収された。CMP廃水を対象とした場合においても長時間運転においてもスラリーの影響は認められず、効果が得られることを確認した。
【実施例3】
【0170】
<過酸化水素分解処理>
スラリーが懸濁した状態のCu-CMP廃水(TS2500mg/L、Cu濃度100mg/L、H2O2濃度1000mg/L、スラリーのζ電位はpHにより異なるもののpH3−10の範囲でマイナス値(−20mV以下))を硫酸を用いてpH5に調整し、図3に示す過酸化水素分解装置により過酸化水素を分解した。触媒充填塔は3塔より構成され、各塔の間に設けられた気液分離装置により、過酸化水素分解に伴って発生した酸素ガスを脱気する構成である。
【0171】
処理条件は、通水速度30m/hr、接触時間3min(3塔の合計)とした。使用した触媒はPtを担持したメタルハニカム触媒(耐酸性コーティングあり)であり、細孔密度は、500セル/square inchであった。Pt担持量は2g/Lであった。この結果、原水中の過酸化水素は5mg/L未満まで分解された。
【0172】
なお、このような過酸化水素分解性能は、pH調整を行わない状態のCu-CMP廃水を対象とした場合でも同様に得られた。また、過酸化水素濃度:3000mg/L、Cu濃度100mg/LであるCuめっき廃水も前記と同条件で5mg/L未満まで分解された。
【0173】
<CMPスラリー分離試験>
過酸化水素分解処理(Cu-CMP廃水、pH未調整)で得られた過酸化水素分解処理水を対象として、スラリー分離試験を行った。過酸化水素分解処理水に、塩化第二鉄50mg/Lを添加・混合した後、KOHによりpH5に調整した。この結果、SS2200mg/Lの凝集フロックを含む混合液を得た。この混合液を30min静置することによりスラリーを含まない清澄な上澄み液が得られた。また、混合液に対してアニオン系高分子凝集剤を3mg/L添加してから静置することによっても、スラリーを含まない清澄な上澄み液が得られた。スラリーを含む凝集フロックの沈降速度は、アニオン系高分子凝集剤を使用する方が速く、100mm/min以上(固液分離後のSS濃度<10000mg/L)であった。上澄み液のCu濃度は、90mg/Lであり、原水中の殆どのCuは上澄み液中に残存することを確認した。
【0174】
この上澄み液に対して、孔径1.0μmの有機膜フィルターによる濾過を行い、スラリー分離水を得た。なお、孔径0.1μmのセラミックフィルターを用いた場合でも濾液が得られることを確認した。
【0175】
<Cu処理試験>
過酸化水素分解処理水(Cu-CMP廃水、pH5に調整、スラリー込み)を対象としたCu処理試験を行った。Cu処理装置は、図5と同様の構成とした。
【0176】
第1の脱塩室、第2の脱塩室には、カチオン交換不織布を充填した。カチオン交換不織布は基材不織布(日本バイリーン/商品名T6、芯鞘成分:PE)にスチレンをグラフト重合法により導入し(グラフト率107%)、これをスルホン化してイオン交換容量650〜700meq/m2を得たものである。濃縮室にはグラフト重合法で作成したカチオン交換不織布、カチオン交換スペーサーおよびアニオン交換不織布を充填した。
【0177】
分離工程の通水条件は、SV120[h−1](第1の脱塩室、第2の脱塩室の合計に対して)、通電条件:定電流運転(3A/dm2)、LV=60m/hrとした。
【0178】
Cu回収工程の処理条件は、定電位運転(陰極電位−0.1V)、陰極:Cu板(2dm2)、陽極Ti/Ptラス板(2dm2)とした。
【0179】
酸回収工程の処理条件は、通水条件:SV60[h−1]、通電条件:定電流運転(2〜3A/dm2)、LV=60m/hrとした。CuSO4およびH2SO4循環水のpHは共に1.5とした。
【0180】
この結果、Cu濃度0.050mg/Lの処理水が得られた。スラリーが処理性能に与える悪影響は認められなかった。また、CuSO4濃縮水として回収されたCuはCu回収工程の陰極表面にCuメタルとして回収されることを確認した。運転中のCuSO4およびH2SO4循環水のpHは共に1.4〜1.6の範囲で維持されることを確認した。
【0181】
同様に、CMPスラリー分離試験を経た後のスラリー分離水、またはCuめっき廃水の過酸化水素分解処理水を対象とした場合においても、処理水のCu濃度<0.1mg/Lが得られることを確認した。
【実施例4】
【0182】
ζ電位がプラスであるCMP砥粒(ζ電位:13mV、キュムラント平均粒径(流体力学的相当径):800nm、組成:SiO2及びAl2O3混合物)を2000ppmおよび銅イオンを100ppm含むCu−CMP処理装置からの銅含有廃水を図3に示すPtを担持したメタルハニカム触媒により残存するH2O2を1mg/L未満とした後に、図6に示すCu処理装置に供給した。運転条件を下記に示す。
【0183】
電流密度:3A/dm2
SV:100 l/h
この結果、運転電圧は運転初期は20Vであったものの、時間の経過と共に上昇し、30分後は40Vにまで上昇した。運転を停止して分離工程の装置の内部を点検したところ、脱塩室の陰極側のイオン交換膜表面にCMP砥粒の堆積が認められた。また、脱塩室内に充填されたカチオン交換不織布表面では、CMP砥粒がゲル化した状態で付着していた。
【実施例5】
【0184】
ζ電位がマイナスであるCMP砥粒(ζ電位:−25mV、流体力学的相当径:600nm、組成:SiO2およびAl2O3の混合物)を2000ppmおよび銅イオンを50ppm含む銅含有廃水を、図3に示すPtを担持したメタルハニカム触媒により残存するH2O2を1mg/Lとした後に、図6に示すCu処理装置に供給した。運転条件は実施例1と同様とした。この結果、運転電圧は20〜25Vの範囲であり、24時間以上において安定した運転が可能であった。24時間運転後に分離工程の装置の内部を点検したところ、脱塩室内の砥粒堆積およびゲル化は全く認められなかった。処理水Cu濃度は0.5mg/L未満であった。
【実施例6】
【0185】
実施例4で用いた銅含有廃水に対して、図3に示すPt担持触媒(メタルハニカム触媒)で残存H2O2を1mg/L未満とした後に、陰イオン界面活性剤を含む薬品原液を0.5%添加した。この結果、ζ電位は−15mVを示した。実施例4と同様のCu処理装置および運転条件で通水したところ、24時間以上において運転電圧は20〜25Vの範囲で安定した運転が可能となった。脱塩室内の砥粒堆積およびゲル化も認められなかった。
【実施例7】
【0186】
実施例4で用いた銅含有廃水に対して、図3に示すPt担持触媒(メタルハニカム触媒)で残存H2O2を1mg/L未満とした後に、実施例6とは別の陰イオン界面活性剤を含む薬品原液を添加したところ、添加率1.2%とすることで、ζ電位は−18mVに低下した。この水を実施例4と同様のCu処理装置および運転条件で通水したところ、24時間以上において運転電圧は20〜25Vの範囲で安定した運転が可能となった。脱塩室内の砥粒堆積およびゲル化も認められなかった。処理水質は、Cu:0.5mg/L未満であった。
【実施例8】
【0187】
ζ電位がプラスであるCMP砥粒(ζ電位:13mV、キュムラント平均粒径(流体力学的相当径):800nm、組成:SiO2及びAl2O3混合物)を2000ppmおよび銅イオンを100ppm含むCu−CMP処理装置からの銅含有廃水を図3に示すPtを担持したメタルハニカム触媒により残存するH2O2を1mg/L未満とした後に、強酸性カチオン交換樹脂ビーズを充填したイオン交換樹脂塔に供給した。通水条件はLV30m/hとした。この結果、処理水質は、初期はCu:0.5mg/L未満であったものの、Cu処理性能は時間の経過とともに低下する傾向を示し、12時間経過後はCu:3mg/Lに上昇した。これに対して、実施例6と同様に、H2O2分解を行った廃水に対して陰イオン界面活性剤を含む薬品原液を0.5%添加して、前記と同様に強酸性カチオン交換樹脂ビーズを充填したイオン交換樹脂塔に供給したところ、24時間通水後においてもCu:0.5mg/L未満を得ることができた。
【実施例9】
【0188】
ζ電位がプラスであるCMP砥粒(ζ電位:13mV、キュムラント平均粒径(流体力学的相当径):800nm、組成:SiO2及びAl2O3混合物)を2000ppmおよび銅イオンを100ppm含むCu−CMP処理装置からの銅含有廃水を図3に示すPtを担持したメタルハニカム触媒により残存するH2O2を1mg/L未満とした後に、塩化第二鉄を無機凝集剤として用いた凝集分離処理を行った。なお、塩化第二鉄添加量は50mg−Fe/L、廃水の凝集pHは5とした。この結果、凝集フロックは全く認められず、砥粒を廃水から分離することはできなかった。これに対して、H2O2分解後の廃水に対して実施例6と同様の陰イオン界面活性剤を含む薬品原液を0.5%添加し、前記と同様の凝集分離を行ったところ、凝集フロックが形成され、砥粒を分離することが可能となった。また、さらに凝集フロック形成時のpHを7に上昇させ、上澄液の濾液(濾紙の孔径1.0μm)中のCu濃度を測定したところ、0.5mg/L未満に低下していることが確認された。
【実施例10】
【0189】
スラリーが懸濁した状態のCu-CMP廃水(pH:5、TS(Total Solid):2500mg/L、TSS(Total Solid Soluble):500mg/L、Cu濃度:100mg/L、H2O2濃度:1200mg/L、スラリー組成:シリカ+アルミナ、スラリーのζ電位:−20mV)を、図3に示す過酸化水素分解装置により過酸化水素を分解した。触媒充填塔は3塔より構成され、各塔の間に設けられた気液分離装置により、過酸化水素分解に伴って発生した酸素ガスを脱気する構成である。使用した触媒はPtを担持したメタルハニカム触媒(耐酸性コーティングあり)であり、細孔密度は、500セル/square inchであった。Pt担持量は2g/Lであった。
【0190】
処理条件は、通水速度30m/hr、接触時間3min(3塔の合計)とした。この結果、原水中の過酸化水素は5mg/L未満まで分解された。
【0191】
過酸化水素分解処理後のCu−CMP廃水のpHを硫酸を用いて3に調整した。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ−15mVであった。次に、スルホン基を有する陰イオン界面活性剤(ライオン製ポリティPS−1900)を300mg/Lを該廃水に添加してスラリーのζ電位を測定したところ-25mVに低下した。
【0192】
界面活性剤添加後のCu−CMP廃水を原水として、図6に示すCu処理装置による処理試験を行った。下記に処理条件を示す。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は25Vで安定し、処理水質は、0.1〜0.3mg−Cu/Lであった。CuSO4濃縮水のCu濃度は80〜120mg/Lの範囲であった。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第1脱塩室及び第2脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。また、比較実験として前記Cu−CMP廃水に前記界面活性剤を添加しない条件で5日間の処理実験を行った。実験装置および実験条件は同様の条件とした。この結果、運転電圧は25Vから35Vに上昇し、運転後の第1脱塩室及び第2脱塩室の内部には、凝集したスラリーが認められた。これより、界面活性剤の添加は、処理運転の安定化に効果があることが確認された。
【0193】
1)分離工程
・通水速度
(a)被処理水:SV:50[l/hr](第1脱塩室と第2脱塩室の合計)
(b)CuSO4濃縮水:SV100[l/hr]
(c)H2SO4水溶液:SV100[l/hr]
・電流密度2A(アンペア)/dm2
【0194】
2)酸回収工程
・通水速度
(a)CuSO4濃縮水:SV100[l/hr]
(b)H2SO4水溶液:SV100[l/hr]
・電流密度2A(アンペア)/dm2
【0195】
3)Cu(銅)回収工程
・通電方法:定電位運転(陰極電位−0.1V)
・電極
(a)陰極:Cu板(2dm2)
(b)陽極Ti/Ptラス板(2dm2)
【0196】
4)循環水pH
・CuSO4濃縮水:1.5
・H2SO4:1.5
【0197】
5)使用素材(分離工程および酸回収工程)
・+極:Ti/Ptラス型電極
・−極:SUS304ラス型電極
・カチオン交換膜:トクヤマ製CMB
・アニオン交換膜:トクヤマ製AHA
・カチオン交換不織布
(a)第1脱塩室及び第2脱塩室:放射線グラフト重合法により作成。基材不織布
素材:PE、官能基:スルホン基
(b)第1脱塩室及び第2脱塩室以外の個所:放射線グラフト重合法により作成。
基材不織布素材:PP/PE、官能基:スルホン基
・アニオン交換不織布
放射線グラフト重合法により作成。基材不織布素材:PP/PE、官能基:第
4級アンモニウム基
・カチオン交換スペーサー:放射線グラフト重合法により作成。基材スペーサー:
PE、官能基:アクリル酸およびスルホン酸
・アニオン交換スペーサー:放射線グラフト重合法により作成。基材スペーサー:
PE、官能基:第4級アンモニウム基
【実施例11】
【0198】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP廃水に対して、硫酸およびスルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを用いてpH3に調整した。H型陰イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ−30mVであり、硫酸のみを用いてpH調整した場合におけるζ電位−15mVより低い値が得られた。
【0199】
該界面活性剤添加後のCu−CMP廃水を原水として、図6に示すCu処理装置による処理試験を行った。処理条件は実施例10と同様とした。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は25Vで安定し、処理水質は、期間を通じて0.1mg−Cu/L未満であった。処理水質は実施例10よりも低い値が得られた。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第1脱塩室及び第2脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。これより、H型陰イオン界面活性剤を利用することにより、Cu処理性能が更に高まることが確認された。
【実施例12】
【0200】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP廃水に対して、硫酸およびスルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを用いてpH3に調整した。H型陰イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ−30mVであり、硫酸のみを用いてpH調整した場合におけるζ電位−15mVより低い値が得られた。
【0201】
該界面活性剤添加後のCu−CMP廃水を原水として、図26に示すCu処理装置による処理試験を行った。下記に処理条件を示す。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は25Vで安定し、処理水質は、期間を通じて0.1mg−Cu/L未満であった。処理水質は実施例10よりも低い値が得られた。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第1脱塩室及び第2脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。これより、図26に示す分離工程および酸回収工程を兼ねた一体型電気透析装置を用いた場合においても効果が得られることが確認された。
【0202】
1)電気透析装置(分離工程および酸回収工程を兼ねる)
・通水速度
(a)被処理水:SV:50[l/hr](第1脱塩室と第2脱塩室の合計)
(b)CuSO4濃縮水:SV100[l/hr](酸回収室および濃縮室それぞれ
について)
(c)H2SO4水溶液:SV100[l/hr]
・電流密度2A(アンペア)/dm2
【0203】
2)Cu(銅)回収工程
・通電方法:定電位運転(陰極電位−0.1V)
・電極
(a)陰極:Cu板(2dm2)
(b)陽極Ti/Ptラス板(2dm2)
【0204】
3)循環水pH
・CuSO4濃縮水:1.5
・H2SO4:1.5
【0205】
4)使用素材(電気透析処理装置)
・+極:Ti/Ptラス型電極
・−極:SUS304ラス型電極
・カチオン交換膜:トクヤマ製CMB
・アニオン交換膜:トクヤマ製AHA
・カチオン交換不織布
(a)第1脱塩室及び第2脱塩室:放射線グラフト重合法により作成。基材不織布
素材:PE、官能基:スルホン基
(b)第1脱塩室及び第2脱塩室以外の個所:放射線グラフト重合法により作成。
基材不織布素材:PP/PE、官能基:スルホン基
・アニオン交換不織布:
放射線グラフト重合法により作成。基材不織布素材:PP/PE、官能基:第4
級アンモニウム基
・カチオン交換スペーサー:放射線グラフト重合法により作成。
基材スペーサー:PE、官能基:アクリル酸およびスルホン酸
・アニオン交換スペーサー:放射線グラフト重合法により作成。
基材スペーサー:PE、官能基:第4級アンモニウム基
【実施例13】
【0206】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP廃水に対して、硫酸および非イオン界面活性剤である花王製エマルゲン1118S−70を用いてpH3に調整した。非イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ0〜−10mVの範囲であった。
【0207】
該界面活性剤添加後のCu−CMP廃水を原水として、図6に示すCu処理装置による処理試験を行った。処理条件は実施例10と同様とした。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は23Vで安定し、処理水質は、期間を通じて0.1mg−Cu/L未満であった。処理水質は実施例10よりも低い値が得られた。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第1脱塩室及び第2脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。これより、非イオン界面活性剤を利用する場合であっても、Cu処理性能が更に高まることが確認された。
【実施例14】
【0208】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP排水に対して、硫酸およびスルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを用いてpH3に調整した。H型陰イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。該界面活性剤添加後のCu−CMP排水を原水として、強酸性カチオン交換樹脂ビーズを充填したイオン交換樹脂塔に供給した。通水条件はLV30m/hとした。この結果、処理水質は、24時間通水後においてもCu:0.5mg/L未満を得ることができた。
【実施例15】
【0209】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP排水に対して、スルホン基を有する陰イオン界面活性剤(ライオン製ポリティPS−1900)を添加した。添加率は300mg/Lとした。該界面活性剤添加後のCu−CMP排水を原水として、イミノジ酢酸基を有するカチオン交換樹脂ビーズを充填したイオン交換樹脂塔に供給した。通水条件はLV30m/hとした。この結果、処理水質は、24時間通水後においてもCu:0.5mg/L未満を得ることができた。
【実施例16】
【0210】
実施例10で得られた過酸化水素分解処理後のCu−CMP排水に対して、スルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを添加した。添加率は300mg/Lとした。
【0211】
該界面活性剤添加後のCu−CMP排水を原水として、イミノジ酢酸基を有するカチオン交換樹脂ビーズを充填したイオン交換樹脂塔に供給した。通水条件はLV30m/hとした。この結果、処理水質は、24時間通水後においてもCu:0.5mg/L未満を得ることができた。
【実施例17】
【0212】
図28Aに示すような、Cu研磨ユニットとバリア研磨ユニットで別々のターンテールを用いる構成のCu−CMP装置から、Cu研磨ユニットからのみ排出される排水を採取して原水とした。スラリーが懸濁した状態の該廃水のTS(Total Solid)は5000mg/L、Cu濃度は150mg/L、H2O2濃度は1400mg/L、スラリーの主成分はシリカ、スラリーのζ電位は−20mVであった。実施例10と同様の過酸化水素分解装置により過酸化水素を分解した。使用した触媒はPtを担持したメタルハニカム触媒(耐酸性コーティングあり)であり、細孔密度は、500セル/square inchであった。Pt担持量は5g/Lであった。処理条件は、通水速度30m/hr、接触時間3min(3塔の合計)とした。この結果、原水中の過酸化水素は5mg/L未満まで分解された。
【0213】
得られた過酸化水素分解処理後の排水に対して、硫酸およびスルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを用いてpH3に調整した。H型陰イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ−30mVであり、硫酸のみを用いてpH調整した場合におけるζ電位−15mVより低い値が得られた。
【0214】
該界面活性剤添加後のCu−CMP排水を原水として、図6に示すCu処理装置による処理試験を行った。処理条件は実施例10と同様とした。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は20Vで安定し、処理水質は、期間を通じて0.5mg−Cu/L未満であった。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第一脱塩室及び第二脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。これより、Cu−CMP装置のCu研磨工程の排水のみを対象とした場合においても、良好な結果が得られることを確認できた。
【実施例18】
【0215】
図28Bに示すような、Cu研磨工程とバリア研磨工程を同じターンテーブルで行う構成のCu−CMP装置から、Cu研磨工程からのみ排出される排水を採取して原水とした。スラリーが懸濁した状態の該廃水のTS(Total Solid)は3000mg/L、Cu濃度は150mg/L、H2O2濃度は2000mg/L、スラリーの主成分はシリカ、スラリーのζ電位は−20mVであった。実施例10と同様の過酸化水素分解装置により過酸化水素を分解した。使用した触媒はPtを担持したメタルハニカム触媒(耐酸性コーティングあり)であり、細孔密度は、500セル/square inchであった。Pt担持量は5g/Lであった。処理条件は、通水速度30m/hr、接触時間3min(3塔の合計)とした。この結果、原水中の過酸化水素は5mg/L未満まで分解された。
【0216】
得られた過酸化水素分解処理後の排水に対して、硫酸およびスルホン基を有するH型陰イオン界面活性剤である花王製ネオペレックスGSを用いてpH3に調整した。H型陰イオン界面活性剤の添加率は300mg/Lとした。この状態において、スラリーのζ電位を測定したところ−35mVであり、硫酸のみを用いてpH調整した場合におけるζ電位−15mVより低い値が得られた。
【0217】
該界面活性剤添加後のCu−CMP排水を原水として、図6に示すCu処理装置による処理試験を行った。処理条件は実施例10と同様とした。5日間の処理運転を行ったところ、運転電圧は20Vで安定し、処理水質は、期間を通じて0.5mg−Cu/L未満であった。運転後に分離工程の電気透析装置を分解し、第一脱塩室及び第二脱塩室の内部を観察して、スラリーの凝集が全く認められないことを確認した。これより、Cu−CMP装置のCu研磨工程の排水のみを対象とした場合においても、良好な結果が得られることを確認できた。
【0218】
本発明によれば、銅を含む被処理水を処理して、銅濃度が低められた処理水を得ると共に、銅を金属単体として回収することができる。本発明は、例えば、半導体製造プロセスから排出される廃水、例えば、CMP工程や銅めっき工程からの廃水を処理して、排出基準値以下の銅濃度の処理水を得ると共に、廃水中の銅を銅金属として回収することができるので、排出規制及び資源保護の両方の観点から、極めて有用性の高いものである。
【0219】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その特許請求の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明は、CMP工程や銅めっき工程からの廃水などの各種廃水から銅等の金属を除去・回収する方法および装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】図1は本発明に係る電解析出操作と電気透析操作とを組み合わせた被処理水の処理方法を示す処理フローの概略図である。
【図2】図2は図1の処理フローの構成を更に詳細に図示した処理フローの全体を示す概略図である。
【図3】図3は過酸化水素分解工程の詳細を示す概略図である。
【図4】図4はスラリー分離工程の構成を更に詳細に示す概略図である。
【図5】図5はCu処理工程の1例を示す概略図である。
【図6】図6はCu処理工程の別の例を示す概略図である。
【図7】図7は第1の形態の電解析出装置の詳細を示す概略図である。
【図8】図8A及び図8Bは第2の形態の電解析出装置の詳細を示す概略図である。
【図9】図9は本発明にかかる電解析出装置において発生した水素ガスの別の処理方法を示す概念図である。
【図10】図10は本発明にかかる電解析出装置において発生した水素ガスの別の処理方法を示す概略図である。
【図11】図11は本発明にかかる電解析出装置において発生した水素ガスの処理方法を示す概略図である。
【図12】図12A及び図12Bは本発明に係る廃水処理装置によって得られた処理水の水質や水量をモニターして異常検知を行う方法を示す概念図である。
【図13】図13は半導体装置製造工程からの廃水の処理システムの構成例を示す概略図である。
【図14】図14はCMP装置と本発明に係る廃水処理システムとの関係を示す概略図である。
【図15】図15は、同一チャンバ内でエッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を行なう装置から排出される廃水を廃水処理システムに導入する場合の構成例を示す概略図である。
【図16】図16は同じ工程を担う複数の装置から排出される廃水をまとめて処理する場合の構成例を示す概略図である。
【図17】図17は本発明に係る廃水処理ユニットを筐体に収容した場合の例を示す斜視図である。
【図18】図18A及び図18Bは、CMP装置と、めっき処理装置またはECP装置と、本発明に係る廃水処理システムとの好適な位置関係を示す図である。
【図19】図19A乃至図19Cは異なる工程を担う装置から排出される廃水をまとめて処理する場合の構成例を示す図である。
【図20】図20は本発明の他の態様に係る廃水処理システムの構成例を示す図である。
【図21】図21A及び図21Bは本発明の一態様に係る廃液処理システムを実際の半導体装置製造工場において使用する場合の設置方法の例を示す概略図である。
【図22】図22は本発明の他の態様に係るCu処理装置の構成図である。
【図23】図23A及び図23Bは、Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設ける場合の処理工程のフローを示す概略図である。
【図24】図24A及び図24Bは、ζ電位転化工程を実施するζ電位転化装置の構成を示す概略図である。
【図25】図25A乃至図25Eは半導体チップの銅配線形成方法を示す概略図である。
【図26】図26は一組の陽極と陰極の間に2つの工程を受け持つ電気透析装置を示す概略図である。
【図27】図27は隔膜併用型の電解析出装置の一例を示す図である。
【図28】図28A及び図28Bは、Cu−CMP装置の一例を示す概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含む廃水を電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるCu処理工程により処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、
銅を廃水から回収することを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項2】
銅を含む廃水中の酸化剤を酸化剤分解工程にて分解し、
前記酸化剤分解工程から排出された廃水をCu処理工程に供給し、
前記Cu処理工程において電気透析操作と電解析出操作を組み合わせることにより廃水を処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、
銅を廃水から回収することを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項3】
前記酸化剤分解工程は、白金を担持させた触媒を用いることを特徴とする請求項2記載の廃水の処理方法。
【請求項4】
前記酸化剤分解工程は、過酸化水素分解工程であることを特徴とする請求項2又は3記載の廃水の処理方法。
【請求項5】
廃水から回収される銅は銅金属であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項6】
前記酸化剤分解工程と前記Cu処理工程との間に、廃水からスラリーを分離するスラリー分離工程を設けたことを特徴とする請求項3又は4記載の廃水の処理方法。
【請求項7】
前記スラリー分離工程は、凝集分離処理又は濾過処理を含むことを特徴とする請求項6記載の廃水の処理方法。
【請求項8】
前記Cu処理工程は、電気透析操作により廃水中のCuをCuSO4濃縮水として分離濃縮する分離工程と、前記CuSO4濃縮水を電解析出操作により電解析出装置の陰極上にCuを析出する回収工程と、前記回収工程の処理水から硫酸の回収を行う酸回収工程とを備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項9】
前記Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設け、固体の微粒子を含む前記廃水を前記ζ電位転化工程により処理することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項10】
前記廃水は固体の微粒子を含み、前記微粒子のζ電位がマイナスの値を有する場合には廃水を直接に前記Cu処理工程に導入することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項11】
前記ζ電位転化工程は、スルホン酸基を有する有機化合物を廃水に添加することを特徴とする請求項9記載の廃水の処理方法。
【請求項12】
前記固体の微粒子はCMP工程で用いられる砥粒であることを特徴とする請求項9又は10記載の廃水の処理方法。
【請求項13】
前記砥粒はSiO2、Al2O3、CeO2の少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項12記載の廃水の処理方法。
【請求項14】
前記ζ電位転化工程は、界面活性剤又はpH調整剤を廃水に添加することを特徴とする請求項9又は12又は13記載の廃水の処理方法。
【請求項15】
上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水を電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるCu処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得るとともに、
銅を廃水から回収することを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項16】
廃水から回収される銅は銅金属であることを特徴とする請求項15記載の廃水の処理方法。
【請求項17】
前記Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設けることを特徴とする請求項15記載の廃水の処理方法。
【請求項18】
前記Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設け、
固体の微粒子を含む前記廃水を前記ζ電位転化工程により処理することを特徴とする請求項15記載の廃水の処理方法。
【請求項19】
前記ζ電位転化工程は、界面活性剤又はpH調整剤を廃水に添加することを特徴とする請求項17又は18記載の廃水の処理方法。
【請求項20】
前記界面活性剤は、陰イオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項14又は19記載の廃水の処理方法。
【請求項21】
前記陰イオン界面活性剤は金属カチオンを含まないことを特徴とする請求項20記載の廃水の処理方法。
【請求項22】
前記固体の微粒子は砥粒であり、該砥粒はSiO2、Al2O3、CeO2の少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項18乃至21のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項23】
前記洗浄工程における洗浄液は、界面活性剤を含んでいることを特徴とする請求項15乃至20のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項24】
上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水をζ電位転化工程に導入して廃水中の固体の微粒子のζ電位をマイナスにし、
前記微粒子を含む廃水をイオン交換処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項25】
前記イオン交換処理工程の前段に酸化剤分解工程を設けることを特徴とする請求項24記載の廃水の処理方法。
【請求項26】
上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水をζ電位転化工程に導入して廃水中の固体の微粒子のζ電位をマイナスにし、
前記微粒子を含む廃水を凝集沈殿処理工程又は凝集分離処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項27】
前記凝集沈殿処理工程又は前記凝集分離処理工程の前段に酸化剤分解工程を設けることを特徴とする請求項26記載の廃水の処理方法。
【請求項28】
CMP工程のうちCu研磨工程から排出された廃水のみを処理して、銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項29】
前記廃水の処理は、電気透析処理、電解析出処理、イオン交換処理、凝集沈殿処理のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項28記載の廃水の処理方法。
【請求項30】
電気透析装置と、
電解析出装置とを備え、
前記電気透析装置と前記電解析出装置とを組み合わせることにより銅を含む廃水を処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、銅を回収することを特徴とする廃水の処理装置。
【請求項31】
廃水から回収される銅は銅金属であることを特徴とする請求項30記載の廃水の処理装置。
【請求項32】
前記電気透析装置において電気透析操作により廃水中の銅をCuSO4濃縮水として分離濃縮し、
前記電解析出装置において前記CuSO4濃縮水を電解析出操作により前記電解析出装置の陰極上に銅を析出し、
前記電解析出装置から排出された処理水から硫酸の回収を行う酸回収装置を設けることを特徴とする請求項30記載の廃水の処理装置。
【請求項33】
前記電気透析装置の脱塩室内にイオン交換体を充填することを特徴とする請求項32記載の廃水の処理装置。
【請求項34】
前記電気透析装置の前段にζ電位転化装置を設けることを特徴とする請求項30乃至33のいずれか一項に記載の廃水の処理装置。
【請求項35】
前記ζ電位転化装置は、界面活性剤又はpH調整剤を貯留する薬液貯槽と、該薬液貯槽に貯留された界面活性剤又はpH調整剤を廃水に添加する添加手段とを備えることを特徴とする請求項34記載の廃水の処理装置。
【請求項36】
前記界面活性剤は、陰イオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項35記載の廃水の処理装置。
【請求項37】
前記陰イオン界面活性剤は金属カチオンを含まないことを特徴とする請求項36記載の廃水の処理装置。
【請求項1】
銅を含む廃水を電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるCu処理工程により処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、
銅を廃水から回収することを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項2】
銅を含む廃水中の酸化剤を酸化剤分解工程にて分解し、
前記酸化剤分解工程から排出された廃水をCu処理工程に供給し、
前記Cu処理工程において電気透析操作と電解析出操作を組み合わせることにより廃水を処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、
銅を廃水から回収することを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項3】
前記酸化剤分解工程は、白金を担持させた触媒を用いることを特徴とする請求項2記載の廃水の処理方法。
【請求項4】
前記酸化剤分解工程は、過酸化水素分解工程であることを特徴とする請求項2又は3記載の廃水の処理方法。
【請求項5】
廃水から回収される銅は銅金属であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項6】
前記酸化剤分解工程と前記Cu処理工程との間に、廃水からスラリーを分離するスラリー分離工程を設けたことを特徴とする請求項3又は4記載の廃水の処理方法。
【請求項7】
前記スラリー分離工程は、凝集分離処理又は濾過処理を含むことを特徴とする請求項6記載の廃水の処理方法。
【請求項8】
前記Cu処理工程は、電気透析操作により廃水中のCuをCuSO4濃縮水として分離濃縮する分離工程と、前記CuSO4濃縮水を電解析出操作により電解析出装置の陰極上にCuを析出する回収工程と、前記回収工程の処理水から硫酸の回収を行う酸回収工程とを備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項9】
前記Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設け、固体の微粒子を含む前記廃水を前記ζ電位転化工程により処理することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項10】
前記廃水は固体の微粒子を含み、前記微粒子のζ電位がマイナスの値を有する場合には廃水を直接に前記Cu処理工程に導入することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項11】
前記ζ電位転化工程は、スルホン酸基を有する有機化合物を廃水に添加することを特徴とする請求項9記載の廃水の処理方法。
【請求項12】
前記固体の微粒子はCMP工程で用いられる砥粒であることを特徴とする請求項9又は10記載の廃水の処理方法。
【請求項13】
前記砥粒はSiO2、Al2O3、CeO2の少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項12記載の廃水の処理方法。
【請求項14】
前記ζ電位転化工程は、界面活性剤又はpH調整剤を廃水に添加することを特徴とする請求項9又は12又は13記載の廃水の処理方法。
【請求項15】
上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水を電気透析操作と電解析出操作を組み合わせるCu処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得るとともに、
銅を廃水から回収することを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項16】
廃水から回収される銅は銅金属であることを特徴とする請求項15記載の廃水の処理方法。
【請求項17】
前記Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設けることを特徴とする請求項15記載の廃水の処理方法。
【請求項18】
前記Cu処理工程の前段にζ電位転化工程を設け、
固体の微粒子を含む前記廃水を前記ζ電位転化工程により処理することを特徴とする請求項15記載の廃水の処理方法。
【請求項19】
前記ζ電位転化工程は、界面活性剤又はpH調整剤を廃水に添加することを特徴とする請求項17又は18記載の廃水の処理方法。
【請求項20】
前記界面活性剤は、陰イオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項14又は19記載の廃水の処理方法。
【請求項21】
前記陰イオン界面活性剤は金属カチオンを含まないことを特徴とする請求項20記載の廃水の処理方法。
【請求項22】
前記固体の微粒子は砥粒であり、該砥粒はSiO2、Al2O3、CeO2の少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項18乃至21のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項23】
前記洗浄工程における洗浄液は、界面活性剤を含んでいることを特徴とする請求項15乃至20のいずれか一項に記載の廃水の処理方法。
【請求項24】
上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水をζ電位転化工程に導入して廃水中の固体の微粒子のζ電位をマイナスにし、
前記微粒子を含む廃水をイオン交換処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項25】
前記イオン交換処理工程の前段に酸化剤分解工程を設けることを特徴とする請求項24記載の廃水の処理方法。
【請求項26】
上面に銅層を含む半導体基板を研磨するCMP工程及び/又は研磨後の半導体基板を洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程から排出された銅を含む廃水をζ電位転化工程に導入して廃水中の固体の微粒子のζ電位をマイナスにし、
前記微粒子を含む廃水を凝集沈殿処理工程又は凝集分離処理工程により処理して銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項27】
前記凝集沈殿処理工程又は前記凝集分離処理工程の前段に酸化剤分解工程を設けることを特徴とする請求項26記載の廃水の処理方法。
【請求項28】
CMP工程のうちCu研磨工程から排出された廃水のみを処理して、銅濃度が低められた処理水を得ることを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項29】
前記廃水の処理は、電気透析処理、電解析出処理、イオン交換処理、凝集沈殿処理のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項28記載の廃水の処理方法。
【請求項30】
電気透析装置と、
電解析出装置とを備え、
前記電気透析装置と前記電解析出装置とを組み合わせることにより銅を含む廃水を処理し、銅濃度が低められた処理水を得るとともに、銅を回収することを特徴とする廃水の処理装置。
【請求項31】
廃水から回収される銅は銅金属であることを特徴とする請求項30記載の廃水の処理装置。
【請求項32】
前記電気透析装置において電気透析操作により廃水中の銅をCuSO4濃縮水として分離濃縮し、
前記電解析出装置において前記CuSO4濃縮水を電解析出操作により前記電解析出装置の陰極上に銅を析出し、
前記電解析出装置から排出された処理水から硫酸の回収を行う酸回収装置を設けることを特徴とする請求項30記載の廃水の処理装置。
【請求項33】
前記電気透析装置の脱塩室内にイオン交換体を充填することを特徴とする請求項32記載の廃水の処理装置。
【請求項34】
前記電気透析装置の前段にζ電位転化装置を設けることを特徴とする請求項30乃至33のいずれか一項に記載の廃水の処理装置。
【請求項35】
前記ζ電位転化装置は、界面活性剤又はpH調整剤を貯留する薬液貯槽と、該薬液貯槽に貯留された界面活性剤又はpH調整剤を廃水に添加する添加手段とを備えることを特徴とする請求項34記載の廃水の処理装置。
【請求項36】
前記界面活性剤は、陰イオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項35記載の廃水の処理装置。
【請求項37】
前記陰イオン界面活性剤は金属カチオンを含まないことを特徴とする請求項36記載の廃水の処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2006−527067(P2006−527067A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507724(P2006−507724)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006167
【国際公開番号】WO2004/096717
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006167
【国際公開番号】WO2004/096717
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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