説明

建具

【課題】内外の障子の縦框の上端部に設けられる振れ止め部材を兼用化することができる建具を提供する。
【解決手段】建物の開口部に設けられる上枠2a、下枠2b及び左右の縦枠2c,2dからなる枠体2と、その上枠2a及び下枠2bに設けられた内外のレール8a,8b,7a,7bと、枠体2内に内外のレールを介して左右方向に開閉移動自在に設けられた内外の障子3,4とを備え、前記障子3,4は上框5a、下框5b及び左右の縦框5c,5dを有し、前記上枠2aの内レール8aの厚さtaは外レール8bの厚さtbよりも厚く形成されており、内外の障子3,4の縦框5dの上端部には前記上枠2aの内外のレール8a,8bに対応する振れ止め部材13が設けられ、該振れ止め部材13は溝幅dxが可変に形成されていることにより内外の障子3,4に対して兼用可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内外の障子の縦框の上端部に設けられて上枠の内外のレールに対応する振れ止め部材を改良した建具に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば引違いサッシ等の建具においては、上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠及び下枠に設けられた内外のレールと、枠体内に内外のレールを介して左右方向に開閉移動自在に設けられた内外の障子とを備えている。また、前記障子は上框、下框及び左右の縦框を有している。
【0003】
前記建具においては、上枠の内外のレールの厚さが異なる場合がある。例えば図8に示すように、上枠の内外のレール8a,8bにおける内レール8aの室内側には合成樹脂製の断熱カバー材11が取付けられており、このため、内レール8aの厚さtaが外レール8bの厚さtbよりも厚くなっている。
【0004】
一方、内外の障子3,4の縦框の上端部には、障子の建て込み性能を考慮して内外のレール8a,8bの厚さta,tbに対応した溝幅da,dbを有する振れ止め部材13a,13bが取付けられている。例えば、厚さtbが1.5mm程度の外レール8bに対して溝幅dbが2.2mm程度の振れ止め部材13bが用いられ、厚さtaが2.6mm程度の内レール8aに対して溝幅daが3.4mm程度の振れ止め部材13aが用いられている。
【0005】
ところで、建具においては、部品の兼用化、すなわち前記内外の障子3,4に対して振れ止め部材13a,13bを兼用化することができれば、コストの低減を図ることができて好ましい。
【0006】
なお、関連する技術としては、室内外方向の寸法が異なる框に対する外れ止めの兼用化を図ったものがある(例えば特開2000−27525号公報参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−27525号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
部品を兼用化する場合、振れ止め部材は、厚さの厚い内レール8aの厚さtaに対応したものとなるが、その振れ止め部材を厚さの薄い外レール8bに使用した場合、障子走行時のガタツキが大きく発生する問題がある。従って、前記建具においては、振れ止め部材を内外の障子に対して兼用可能とすることが難しかった。
【0009】
本発明は、前記事情を考慮してなされたもので、内外の障子の縦框の上端部に設けられる振れ止め部材を兼用化することができる建具を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、建物の開口部に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠及び下枠に設けられた内外のレールと、枠体内に内外のレールを介して左右方向に開閉移動自在に設けられた内外の障子とを備え、前記障子は上框、下框及び左右の縦框を有し、前記上枠の内レールの厚さは外レールの厚さよりも厚く形成されており、内外の障子の縦框の上端部には前記上枠の内外のレールに対応する振れ止め部材が設けられ、該振れ止め部材は溝幅が可変に形成されていることにより内外の障子に対して兼用可能とされていることを特徴とする。この場合、前記振れ止め部材は障子開閉時のガタツキを軽減ないし抑制すべく内外のレールに共通の最小の溝幅に設定されていると共に内レールに対する内障子の建て込み性能の向上を図るために弾性により溝幅が拡開可能に形成されていることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を添付図面に基いて詳述する。図1は本発明を引違いサッシに適用した実施の形態を示す室内側正面図、図2は縦框の上端部に設けられた振れ止め部材の拡大平面図、図3は図1のA−A線拡大断面図、図4は図1のB−B線拡大断面図である。
【0012】
図1〜図4に示すように、建具として例示した引違いサッシ1は、建物の開口部に設けられる上枠2a、下枠2b及び左右の縦枠2c,2dからなる枠体2と、該枠体2内に左右方向に引違い状にスライド開閉自在に設けられた内外の障子3,4とを備えている。また、前記枠体2の室外側には30が左右方向にスライド自在に取付けられている。前記障子3,4は、上框5a、下框5b及び左右の縦框(召し合せ框,戸先框)5c,5dを有し、これら框材を框組してなる框体5内に面材例えばガラスプレート6が装着されている。前記枠体2を構成する枠材、框体5を構成する框材は、例えばアルミ形材からなっているが、アルミ製の室外側形材と室内側形材とを合成樹脂製のブリッジ材で結合した断熱構造になっていても良く、或いは、アルミ製の室外形材と合成樹脂製の室内側形材とを結合した複合断熱構造になっていても良い。
【0013】
前記障子3,4を案内するために、下枠2bの上面には突状の内外のレール7a、7bが形成され、上枠2aの下面にも突状の内外のレール8a,8bが形成されている。前記下框5bには、レール7a,7b上を走行する戸車10が取付けられている。上枠2aの内外のレール8a,8bのうちの内レール8aの室内面には合成樹脂製の断熱カバー材11が設けられ、これにより外レール8bの厚さtbが例えば1.5mm程度であるのに対して内レール8aの厚さtaは例えば2.6mm程度になっている。
【0014】
前記框体5は、縦框2c,2dの上端部と下端部が露出するように縦通しに組まれている。少なくとも縦框2c,2dは中空部12を有するホロー構造とされており、縦框2c,2dの上端部と下端部にはレール7a,7b,8a,8bに対応したプラスチック製の振れ止め部材が嵌合装着されている。なお、本実施例では、召し合せ框5cの上端部及び下端部の振れ止め部材及び戸先框5dの下端部の振れ止め部材については既存のものと同じであるため説明を省略し、内外の障子3,4における戸先框5dの上端部の振れ止め部材13について説明する。内外の障子3,4の召し合せ框5cにおいては、相互に断面形状が異なるため振れ止め部材は兼用化されていない。内外の障子3,4の戸先框下端部の振れ止め部材については、内外の障子の戸先框5dの断面形状が同じで、下枠2bの内外のレール7a,7bの厚さも同じであるため、内外の障子に対して同じ振れ止め部材を用いることができ、既に兼用されている。
【0015】
一方、内外の障子3,4における戸先框5dの上端部の振れ止め部材13については、上枠2aの内外のレール8a,8bの厚さが異なる場合、今まで兼用化が困難であった。本実施の形態では、以下に述べるように構成することで兼用化を可能にしている。本実施例の戸先框5dは、図5に示すように中空部12を挟んで一側に戸先溝部14を、他側にガラス装着用溝部15を有している。前記振れ止め部材13は、戸先框5dの上端部の中空部12及び戸先溝部14に嵌挿される嵌挿部16a,16bと、戸先框5dのガラス装着用溝部15を除く上端縁部に当接される縁部17とを有している。
【0016】
戸先框5dの上端部には振れ止め部材13の溝部18と対応する若干大きめの切欠部20が形成されている。この切欠部20の一側部には凹状の係止受部21が形成され、前記振れ止め部材13の嵌挿部16a、16bにはこれを戸先框5dの中空部12及び戸先溝部14に嵌挿した時に弾性力で前記係止受部21に係合して係止される凸状の係止部22が形成されている。
【0017】
振れ止め部材13は、図2、図5、図6ないし図7に示すように、上枠の厚さの異なる内外のレール8a.8bに対応する所定の溝幅dxを有する断面U字状の溝部18を有しており、この溝部18のをレール8a,8bに緩く係合させた状態とすることにより風圧等で障子3,4の上部が室内外方向に振れるのを抑制している。前記溝部18の対向壁部には、その上端側で互いに接近する方向に突出した突出部23,24が形成されており、この突出部23,24間が前記所定の溝幅dxとされている。
【0018】
そして、前記振れ止め部材13においては、その溝幅dxが可変に形成され、内外の障子3,4に対して兼用可能とされている。すなわち、前記突出部23,24のうちの一方の突出部23が他方の突出部24から離間する方向(開く方向に)に移動(後退)し、これにより溝幅がdxかdyに変化するようになっている。具体的には、他方の突出部24がレール8a,8bに沿って平面直線状に形成されているのに対し、一方の突出部23は平面凸曲面状(山形状ないし平面円弧状ともいう)に形成されており、両突出部23,24の最も接近した部分間の溝幅がdxに設定されている。前記一方の突出部23は上端からの2つの切込み(スリット)25,25により山の中央部23aと両側部23b,23cの計3つに分割されており、両側部23b,23cが固定であるのに対して中央部23aが開く方向に弾性変形可能になっている(弾性で拡開可能になっている)。
【0019】
この場合、両側部23b,23cにおける溝幅がdyに設定されており、中央部23aの弾性変形により溝幅がdxからdyに可変するようになっている。この場合、dxは上枠2aの内外のレール8a,8bに共通の最小の溝幅、例えば2.9mm程度に設定され、dyは内レール8aに対する内障子3の建て込み性能を考慮した溝幅、例えば3.4mm程度に設定されている。
【0020】
以上の構成からなる建具(引違いサッシ)1によれば、建物の開口部に設けられる上枠2a、下枠2b及び左右の縦枠2c,2dからなる枠体2と、その上枠2a及び下枠2bに設けられた内外のレール8a,8b,7a,7bと、枠体2内に内外のレールを介して左右方向に開閉移動自在に設けられた内外の障子3,4とを備え、前記障子3,4は上框5a、下框5b及び左右の縦框5c,5dを有し、前記上枠2aの内レール8aの厚さtaは外レール8bの厚さtbよりも厚く形成されており、内外の障子3,4の縦框(実施例では戸先框)5dの上端部には前記上枠2aの内外のレール8a,8bに対応する振れ止め部材13が設けられ、該振れ止め部材13は溝幅dxが可変に形成されていることにより内外の障子3,4に対して兼用可能とされているため、内外の障子3,4の縦框5cの上端部に設けられる振れ止め部材13を兼用化することができ、コストの低減が図れる。
【0021】
具体的には、前記振れ止め部材13が上枠2aの内外のレール8a,8bに共通の最小の溝幅dxから内レール8aに対する内障子3の建て込み性能を考慮した溝幅dyに弾性で拡開可能に構成されていることから、振れ止め部材13を内障子3に使用(すなわち厚さの厚い内レール8aに使用)したときには、内障子3の建て込み時に振れ止め部材13の溝部18が弾性で溝幅dxからdyに押し広げられ、内障子3の建て込み性能が低下することが無く、建て込み後は溝幅がdyからdxに弾性で復元し、内障子3の開閉時のガタツキを軽減することができる。また、前記振れ止め部材13を外障子4に使用(すなわち厚さの薄い外レール8bに使用)したときには、外障子4の建て込み性能が良いことは勿論、外障子4の開閉時のガタツキを軽減ないし抑制することができる。
【0022】
更に具体的には、前記振れ止め部材13における溝部18の両突出部23,24のうちの一方の突出部23が平面凸曲面状に形成されると共に、その突出部23が2つの縦の切込み25,25により中央部23a及び両側部23b,23cに三分割され、中央部23aにおける溝幅がdx、両側部23b,23cにおける溝幅がdyとされ、中央部23aが自らの弾性力(弾性復元力)に抗して拡開され(押し広げられ)て溝幅がdxからdyに広がるようになっていることが好ましい。これにより、簡単な構造で部品の兼用化が可能となり、コストの低減が図れる。なお、前記構造は、溝部18の両突出部23,24における少なくとも一方の突出部23に設けられていれば良く、両突出部23,24に設けられていても勿論構わない。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。例えば、前記実施の形態では本発明を内外2枚の障子を引違い状に有する引違いサッシに適用した場合が示されているが、本発明は、障子(戸)が4枚建ての建具にも適用可能である。障子は、閉鎖時には枠体の戸当り部に設けられている規制部材により動きが規制されると共に、クレセントで締め付けられるため、風圧等でガタツクようなことはない。召し合せ框上端部の振れ止め部材は実施例の場合兼用化されていないが、勿論本発明の適用により兼用化されていても良い。
【0024】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、建物の開口部に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠及び下枠に設けられた内外のレールと、枠体内に内外のレールを介して左右方向に開閉移動自在に設けられた内外の障子とを備え、前記障子は上框、下框及び左右の縦框を有し、前記上枠の内レールの厚さは外レールの厚さよりも厚く形成されており、内外の障子の縦框の上端部には前記上枠の内外のレールに対応する振れ止め部材が設けられ、該振れ止め部材は溝幅が可変に形成されていることにより内外の障子に対して兼用可能とされているため、内外の障子の縦框の上端部に設けられる振れ止め部材を兼用化することができ、コストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を引違いサッシに適用した実施の形態を示す室内側正面図である。
【図2】縦框の上端部に設けられた振れ止め部材の拡大平面図である。
【図3】図1のA−A線拡大断面図である。
【図4】図1のB−B線拡大断面図である。
【図5】縦框の上端部に取付けられる振れ止め部材を示す図で、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図6】縦框の上端部に振れ止め部材を取付けた状態を示す斜視図である。
【図7】本実施形態の振れ止め部材を示す図で、(a)は内障子に適用した場合の断面図、(b)は外障子に適用した場合の断面図である。
【図8】従来の振れ止め部材を示す図で、(a)は内障子用の断面図、(b)は外障子用の断面図である。
【符号の説明】
1 引違いサッシ(建具)
2 枠体
2a 上枠
2b 下枠
2c、2d 縦枠
3,4 障子
5a 上框
5b 下框
5c、5d 縦框
7a,7b,8a,8b レール
13 振れ止め部材
dx,dy 溝幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に設けられる上枠、下枠及び左右の縦枠からなる枠体と、その上枠及び下枠に設けられた内外のレールと、枠体内に内外のレールを介して左右方向に開閉移動自在に設けられた内外の障子とを備え、前記障子は上框、下框及び左右の縦框を有し、前記上枠の内レールの厚さは外レールの厚さよりも厚く形成されており、内外の障子の縦框の上端部には前記上枠の内外のレールに対応する振れ止め部材が設けられ、該振れ止め部材は溝幅が可変に形成されていることにより内外の障子に対して兼用可能とされていることを特徴とする建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2004−257137(P2004−257137A)
【公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−49826(P2003−49826)
【出願日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】