説明

建屋内冷却機構

【課題】ポンプを使用することなく、また効率よく建屋内の様々な箇所に設置されるOA機器を冷却することができる建屋内冷却機構を提供する。
【解決手段】建屋42内において床42上に載置されているOA機器17を収納するOA機器室41を冷却する建屋内冷却機構10は、内部に作動液14が封入され、ループ形状を有するヒートパイプ11を備えている。ヒートパイプ11は、OA機器室41内に配置される受熱部12と、OA機器室41外方、例えば建屋42外に配置される放熱部13とを有している。またヒートパイプ11は、作動液14が受熱部12から放熱部13に流通する際に作動液14が通る第1パイプ部15と、作動液14が放熱部13から受熱部12に流通する際に作動液14が通る第2パイプ部16とを有している。そして、第1パイプ部15の一部15aと第2パイプ部16の一部16aは接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートパイプを用いて建屋内を冷却する建屋内冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
室内に電算機などのOA機器が配置される建屋においては、OA機器内部で発生される熱負荷大きいため、建屋外が冷涼である場合であっても、年間を通じて室内を冷却する必要がある。このため、この種の建屋においては、室内を冷却する装置、例えば空調機の運転に要するエネルギーコストが嵩むという問題がある。
【0003】
従来の空調機の一例として、ポンプを含むヒートポンプと、このヒートポンプ内を循環する冷却液とからなる空調機を備えた空調システムが知られている。この空調システムを用いて室内の空気を冷却することにより、室内に配置されているOA機器が冷却される。
【0004】
しかしながら、上記空調システムにおいては、この空調システムにより熱伝導率の小さな空気を介してOA機器が冷却されるため、冷却効率が悪い。また、建屋外が冷涼である場合であっても常にヒートポンプを駆動させる必要があるため、省エネルギーの点でも望ましくない。さらに、ポンプを用いて冷却液を循環させる必要があるため、さらに余分なエネルギーが消費され、かつ、ポンプが駆動されることに伴う騒音が発生する。
【0005】
そこで、ポンプが不要であり、また建屋外が冷涼である場合は外気を利用して建屋内の冷却を行うことができる、ヒートパイプを用いた室内空調装置が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−195223号公報
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されている室内空調装置はヒートパイプを有し、このヒートパイプは室内と床下空間との間の限られた領域内にのみ直線状に設けられている。このため、特許文献1に示されている室内空調装置によって、建屋内の様々な箇所に設置されるOA機器を冷却することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ポンプを使用することなく、また高い冷却効率で、建屋内の様々な箇所に設置されるOA機器を冷却することができる、ヒートパイプを有する建屋内冷却機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、建屋内の冷却対象区域を冷却する建屋内冷却機構において、内部に作動液が封入され、ループ形状を有するヒートパイプを備え、ヒートパイプは、冷却対象区域内に配置される受熱部と、冷却対象区域外に配置される放熱部とを有し、作動液は、受熱部と放熱部との間を一方向に循環することを特徴とする建屋内冷却機構である。
【0009】
本発明は、ヒートパイプの放熱部は、建屋外に配置されることを特徴とする建屋内冷却機構である。
【0010】
本発明は、ヒートパイプの一部を冷却する冷却装置と、冷却対象区域の温度をモニタする温度モニタ手段と、モニタされた冷却対象区域の温度に応じて冷却装置を制御する制御装置と、を更に備えることを特徴とする建屋内冷却機構である。
【0011】
本発明は、冷却対象はOA機器であり、ヒートパイプの受熱部は、OA機器と直接的にまたは間接的に接触していることを特徴とする建屋内冷却機構である。
【0012】
本発明は、OA機器は、筺体と、筺体に収納され、作動中に発熱する発熱部品と、その一端が発熱部品に接続され、その他端が筺体の内面の一部に接続され、発熱部品から生じる熱を筺体に移送する熱移送手段とを有し、ヒートパイプの受熱部は、OA機器の筺体の外面の一部に接触していることを特徴とする建屋内冷却機構である。
【0013】
本発明は、冷却装置は、ヒートパイプの一部に接触する冷却水管と、冷却水管に冷却水を流通させる冷却水ポンプとを有することを特徴とする建屋内冷却機構である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建屋内の冷却対象区域を冷却する建屋内冷却機構は、内部に作動液が封入され、ループ形状を有するヒートパイプを備え、ヒートパイプは、冷却対象区域内に配置される受熱部と、冷却対象区域外に配置される放熱部とを有している。このため、ポンプを使用することなく、冷却対象区域を冷却することが出来る。これによって、ポンプを駆動することに要するエネルギーを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1および図2は、本発明の第1の実施の形態における建屋内冷却機構を示す図である。このうち図1は、本発明の第1の実施の形態において、建屋に設けられた建屋内冷却機構を示す断面図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態において、ヒートパイプのうちヒートパイプの受熱部を拡大して示す図である。
【0016】
まず、図1により建屋内冷却機構10の全体構成について説明する。図1に示すように、建屋42の床43上に載置されているOA機器17(冷却対象)を収納するOA機器室41(冷却対象区域)を冷却するため、建屋内冷却機構10が設置されている。この建屋内冷却機構10は、内部に作動液14が封入され、ループ形状を有するヒートパイプ11を備えている。この場合、ヒートパイプ11は、OA機器室41内に配置される受熱部12と、OA機器室41外方、例えば建屋42の外方42aに配置される放熱部13と、循環パイプ11aとを有しており、また作動液14は、受熱部12と放熱部13との間の循環パイプ11a内を、図1において矢印で示されている方向に循環している。
【0017】
また、ヒートポンプ11の循環パイプ11aの一部18を冷却するため、建屋42内のダクトスペース42bには冷却装置20が設置されている。さらにOA機器室41内には、OA機器室41内に設置されたOA機器17内部の温度、とりわけ後述する発熱部品28の温度をモニタするための温度モニタ手段25が設けられ、モニタされたOA機器17内部の温度に応じて制御装置26により冷却装置20が制御される。
【0018】
このうち冷却装置20は、建屋42のダクトスペース42bに設置されヒートパイプ11の循環パイプ11aの一部18に接触する冷却水管22と、ダクトスペース42bに設置され冷却水管22に冷却水23を流通させる冷却水ポンプ21とを有している。また、冷却水管22に接触する循環パイプ11aの一部18は、冷却水管22との接触面積がより大きくなるよう、複数の屈曲部を有している。同様に冷却水管22のうち、ヒートパイプ11の一部18に接触する部分は、複数の屈曲部22aとなっている。
【0019】
またOA機器17は、図2に示すように、筺体27と、筺体27に収納され、作動中に発熱する発熱部品28と、その一端29aが発熱部品28に接続され、その他端29bが筺体27の内面の一部27aに接続され、発熱部品28から生じる熱を筺体27に移送する熱移送手段29とを有している。そしてヒートパイプ11の受熱部12は、OA機器17の筺体27の外面の一部27bに接触している。この場合、図2に示すように、発熱部品28と熱移送手段29の一端29aとの間には放熱シート30aが介在され、筺体27の外面の一部27bと熱移送手段29の他端29bとの間には放熱シート30bが介在されている。また、ヒートパイプ11の受熱部12とOA機器17の筺体27の外面の一部27bとの間には放熱シート30cが介在されている。
【0020】
なお発熱部品28は、OA機器17の作動中に発熱し高温に達する部品であり、例えばCPU、チップセット、ハードディスクなどである。また熱移送手段29は、発熱部品28から生じる熱を筺体27に移送する手段であり、例えばOA機器用ヒートパイプ、ヒートシンク、金属板などである。また放熱シート30a、30b、30cは、高い熱伝導率を有するとともに柔軟性および粘着性を有するシートであり、例えばシリコン系粘着材中に熱伝導性フィラーが配合されたシートなどである。
【0021】
次に図1および図2を参照して、ヒートパイプ11について詳細に説明する。図1に示すように、ヒートパイプ11の循環パイプ11aは、作動液14が受熱部12から放熱部13に流通する際に作動液14が通る第1パイプ部15と、作動液14が放熱部13から受熱部12に流通する際に作動液14が通る第2パイプ部16とを有している。また図1および図2に示すように、第1パイプ部15の一部15aは第2パイプ部16の一部16aに接触されており、これによって第1パイプ部15と第2パイプ部16との間で熱が伝導される。本実施例においては、後述するように第1パイプ部15の一部15aの温度は第2パイプ部16の一部16aの温度よりも高く、このため第1パイプ部15の一部15aから第2パイプ部16の一部16aへ熱が伝導される。すなわち、第1パイプ部15の一部15aが第2パイプ部16の一部16aによって冷却される。
【0022】
また図2に示すように、ヒートパイプ11の受熱部12はOA機器17の筺体27の外面の一部27bに接続されており、このため、OA機器17で発生する熱は直接にヒートパイプ11の受熱部12へ伝導される。これによってヒートパイプ11の受熱部12が加熱され、この結果、ヒートパイプに封入されている作動液14が沸騰し蒸気泡19が発生する。なお本実施例において、作動液14として水が使用されており、またヒートパイプ11内部は大気圧以下に減圧されている。このため作動液14は40度以下の温度でも沸騰することができる。
【0023】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0024】
図1および図2に示すように、ヒートパイプ11に封入されている作動液14は、ヒートパイプ11の受熱部12と放熱部13との間で、矢印で示される方向に循環している。ここで、ヒートパイプ11の受熱部12に到達したときの作動液14の温度が約20度、OA機器17の発熱部品28の温度が約70度、OA機器17の筺体27のうち、外面の一部27bの温度が約65度であるとする。この場合、ヒートパイプ11の受熱部12がOA機器の筺体27の外面の一部27bに接続されているため、OA機器17からヒートパイプ11の受熱部12へ熱が伝導される。これによってヒートパイプ11の受熱部12内にある作動液14が加熱され、この結果、作動液14が沸騰し蒸気泡19が発生する。
【0025】
発生した蒸気泡19は、蒸気泡19に働く浮力により上昇する。この際、蒸気泡19は周りの作動液14を伴って上昇する。このため、作動液14は図1および図2において矢印で示されている方向に循環することができる。このように本実施の形態において、ポンプを用いることなく、ヒートパイプ11の作動液14を自然対流により循環させることができるため、ポンプを駆動することに要するエネルギーを削減するとともに、ポンプが発生させる騒音による問題を解決することもできる。
一般にポンプは可動部を有するために、その性能を保持するための定期的なメンテナンスが必要とされる。本実施の形態においては、ポンプを使用する代わりに、可動部を有さないヒートパイプ11を使用するため、建屋内冷却機構10の信頼性・耐久性が向上し、これによって、建屋内冷却機構10のメンテナンスに要する費用を削減することができる。
【0026】
その後、第1パイプ部15の一部15aまで上昇した蒸気泡19は、第1パイプ部15の一部15aに形成されている気体部19aに吸収される。その後、第1パイプ部15の一部15aに形成されている気体部19aは、第2パイプ部16の一部16a内を流通する作動液14により冷却される。これによって、気体部19aは凝縮され、温度が約40度の作動液14となる。なお第2パイプ部16の一部16a内を流通する作動液14は、後述するように建屋42外の外気および冷却装置20により冷却された後の作動液14であるため、その温度は例えば12度となっている。
【0027】
その後、温度約40度の作動液14は、第1パイプ部15の一部15aを通った後、ヒートパイプ11の放熱部13に到達する。建屋42外の外気の温度は作動液14の温度よりも低く、例えば約20度であり、このため、作動液14がヒートパイプの放熱部13を通る間、作動液14は外気により冷却される。これによって、作動液14の温度は約22度から約25度となる。なお図1に示すように、ヒートパイプの放熱部13において、ヒートパイプ11に多数の屈曲部13aが設けられている。これらの多数の屈曲部13aは、作動液14がヒートパイプの放熱部13を通るのに要する時間を長くし、これによって作動液14を外気によってより低温まで冷却するために設けられている。
【0028】
次にヒートパイプ11の作動液14は、冷却装置20の冷却水管22に接触しているヒートパイプ11の循環ポンプ11aの一部18に到達する。冷却水管22には、冷却装置20の冷却水ポンプ21により冷却水23が流通されている。この冷却水23の温度は作動液14の温度よりも低く、例えば10度となっている。このため、作動液14がヒートパイプ11の循環ポンプ11aの一部18を通る間、作動液14は冷却装置20の冷却水管22により冷却され、これによって作動液14の温度が約12度となる。なお図1に示すように、冷却水管22に接触する循環ポンプ11aの一部18は、冷却水管22との接触面積がより大きくなるよう、複数の屈曲部18aを有している。同様に冷却水管22も、ヒートパイプ11の一部18に対応して、複数の屈曲部22aを有している。これによって、作動液14をより低温まで冷却することができる。
【0029】
その後、ヒートパイプ11の作動液14は、図1および図2に示すように、ヒートパイプの第2パイプ部16を通って、第2パイプ部16の一部16aに到達する。第2パイプ部16の一部16aにおいて、上述のように、第2パイプ部16の一部16aにある作動液14は、第1パイプ部15の一部15aに形成されている気体部19aから熱を受け取り、これによって、第2パイプ部16の一部16aにある作動液14が約20度に加熱される。その後、第2パイプ部16の一部16aを通った後の作動液14は、上述のようにヒートパイプ11の受熱部12に到達してOA機器17を冷却する。
【0030】
この間、冷却装置20の冷却水23の温度は、制御装置26により調整される。例えば、OA機器17の熱負荷が小さい場合は、冷却装置20の冷却水23の温度が上述の10度よりも高い温度であったとしても、OA機器17を適切に冷却することができる。この場合、制御装置26により、冷却水の温度を上述の10度よりも高い温度、例えば13度にすることができる。このことにより、冷却装置20の冷却水23が生成されるのに使用されるエネルギーを削減し、これによって、建屋内冷却機構10の消費エネルギーを削減することができる。なおこの場合、制御装置26は、モニタ手段25によりモニタされるOA機器17の発熱部品28の温度が所定の温度、例えば70度を超えないように、冷却装置20の冷却水23の温度を制御することができる。
【0031】
さらに、建屋42外の外気の温度が20度よりも低い場合、例えば約10度の場合、制御装置26は、冷却装置20を停止させ、ヒートパイプ11の作動液14を建屋42外の外気のみにより冷却させてもよい。このことにより、冷却装置20により消費されるエネルギーを削減することができ、建屋内冷却機構10の消費エネルギーをさらに削減することができる。なおこの場合も、制御装置26は、モニタ手段25によりモニタされるOA機器17の発熱部品28の温度が所定の温度、例えば70度を超えた際に、冷却装置20が再度運転するよう冷却装置20を制御してもよい。
【0032】
このように本実施の形態によれば、建屋内冷却機構10は、内部に作動液14が封入された、ループ形状を有する循環パイプ11aを含むヒートパイプ11を備えている。このため、熱伝導率が小さい空気を介することなく、ヒートパイプ11により直接にOA機器17を冷却することができる。このことにより、建屋内冷却機構10の冷却効率を改善することができる。
【0033】
また本実施の形態によれば、建屋内冷却機構10のヒートパイプ11は、OA機器室41内に配置される受熱部12と、OA機器室41外方、例えば建屋42の外方42aに配置される放熱部13とを有している。またヒートパイプ11は、作動液14が受熱部12から放熱部13に流通する際に作動液14が通る第1パイプ部15と、作動液14が放熱部13から受熱部12に流通する際に作動液14が通る第2パイプ部16とを有している。このため、ポンプを用いることなく、ヒートパイプ11の作動液14を、受熱部12と放熱部13との間の循環パイプ11a内において一方向に循環させることができる。このことにより、OA機器17を冷却するうえで、ポンプを駆動することに要するエネルギーを削減することができ、かつポンプが発生させる騒音による問題を解決することもできる。また、ポンプを使用する代わりに、可動部を有さないヒートパイプ11を使用することにより、建屋内冷却機構10の信頼性・耐久性が向上させることができる。これによって、建屋内冷却機構10のメンテナンスに要する費用を削減することができる。
【0034】
さらに本実施の形態によれば、建屋内冷却機構10は、ヒートパイプ11を冷却する冷却装置20と、OA機器室41に設置されたOA機器17内部の温度をモニタする温度モニタ手段25と、モニタされたOA機器17内部の温度に応じて冷却装置20を制御する制御装置26とを備えている。このため、OA機器17の熱負荷に応じて、冷却装置20を最適に制御することができる。このことにより、建屋内冷却機構10により消費されるエネルギーを必要最小限の量にすることができる。
【0035】
なお、本実施の形態において、ヒートパイプ11の受熱部12とOA機器17の筺体27の外面の一部27bとの間には放熱シート30cが介在されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、放熱シート30cの代わりに放熱グリースを介在させてもよく、若しくは、ヒートパイプ11の受熱部12をOA機器17の筺体27の外面の一部27bに直接に接触させてもよい。または、ヒートパイプ11の受熱部12とOA機器17の筺体27の外面の一部27bとの間に、熱伝導率の高い板を介在させてもよい。例えば、OA機器室41内において、ヒートパイプ11の受熱部12をスチール製の壁面(図示せず)によって覆ってもよい。これによって、建屋内冷却機構10の冷却効率を大きく損なうことなく、OA機器室41内の見栄えをよくすることができる。
【0036】
また、本実施の形態において、発熱部品28から生じた熱が熱移送手段29の他端29bへ移送された後、移送された熱が放熱シート30b、OA機器の筺体27、および放熱シート30cを経てヒートパイプ11の受熱部12へ伝導される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、移送された熱を、放熱シート30bおよび放熱シート30cを経てヒートパイプ11の受熱部12へ伝導させるようにしてもよい。この場合、例えばOA機器の筺体27のうち放熱シート30bに対応する領域を開口させ(図示せず)、開口している領域に放熱シート30bを嵌め込むことで、放熱シート30bと放熱シート30cとを接触させることができ、このことにより、移送された熱は放熱シート30bおよび放熱シート30cを経てヒートパイプ11の受熱部12へ伝導される。またこの場合、開口に嵌め込まれた放熱シート30bと、受熱部12側の放熱シート30cとを一体に形成してもよい。
【0037】
また、本実施の形態において、ヒートパイプ11の受熱部12が、OA機器室41内に配置される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、ヒートパイプ11の受熱部12を、建屋42内のうちOA機器室41外の場所に配置してもよい。この場合、ヒートパイプ11の受熱部12が、OA機器室41の側壁または床と直接的にまたはヒートシンクや放熱シートなどの熱伝導部品を介して間接的に接触するように、OA機器室41外の場所にヒートパイプ11の受熱部12を配置する(図示せず)。そして受熱部12と直接的にまたは間接的に接触する側壁または床と、OA機器17とを、熱伝導手段、例えばOA機器室用ヒートパイプ(図示せず)により接続し、これによって、OA機器17から生じる熱をOA機器室用ヒートパイプを介してヒートパイプ11の受熱部12へ伝導させてもよい。
【0038】
また、本実施の形態において、冷却装置20は、ヒートパイプ11の一部18と接触される冷却水管22と、冷却水管22に冷却水23を流通させる冷却水ポンプ21とを有する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、冷却装置20は、冷却水23が貯められた貯水タンク(図示せず)を有していてもよい。この場合、ヒートパイプ11を冷却装置20の貯水タンクの中に通すことにより、ヒートパイプ11の作動液14が冷却される。
【0039】
また、本実施の形態において、ヒートパイプ11の作動液14として水が使用されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、作動液14として、気体状態と液体状態での密度の差が大きい液体、例えばアルコール、液体金属または磁性流体などを用いてもよい。
【0040】
また、本実施の形態において、ヒートパイプ11内部は大気圧以下に減圧されており、このため作動液14は40度以下の温度でも沸騰することができる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、作動液14が例えば60度で沸騰するようにヒートパイプ11内部を減圧してもよい。この場合、建屋42外の外気の温度が高温、例えば40度であったとしても、作動液14が沸騰して発生した蒸気泡19により形成された気体部19aを、外気により冷却して凝縮させることができる。これによって、建屋42外の外気の温度が高温、例えば40度であったとしても、冷却装置20を用いることなくOA機器を冷却することができる。
【0041】
第2の実施の形態
以下、図3を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここで、図3は、本発明の第2の実施の形態において、建屋に設けられた建屋内冷却機構を示す断面図である。
【0042】
図3に示す第2の実施の形態は、冷却対象区域が居室53からなり、ヒートパイプ11の受熱部12と居室53との間に放射パネル52が配置されている点が異なるのみであり、他の構成は、図1および図2に示す第1の実施の形態と略同一である。図3において、図1および図2に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
図3に示すように、居室53の天井部54上方に放射パネル52が取付けられ、放射パネル52に、建屋内冷却機構10のうちヒートパイプ11の受熱部12が接触されている。また居室53内に、居室53内の温度をモニタするモニタ手段51が設けられている。そして居室53内において、作業者34が机31に向ってデスクトップ33を操作している。
【0044】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0045】
図3に示すように、ヒートパイプに封入されている作動液14は、ヒートパイプ11の受熱部12と放熱部13との間の循環パイプ11a内で、矢印で示される方向に循環している。なお本実施例において、建屋42の外方42aの外気温度は約20度となっている。居室52内でデスクトップ33などの電子機器が使用されているため、居室52内の温度は建屋42の外方42aの外気温度よりも高く、例えば約28度となっている。この場合、ヒートパイプ11の受熱部12に到達したときの作動液14の温度は約15度、第1パイプ部15の一部15aを通った後の作動液14の温度は約25度、冷却装置20の冷却水23の温度は約10度、冷却装置20により冷却された直後の作動液14の温度は約12度となっている。
【0046】
図1および図2に示す第1の実施の形態の場合と同様に、図3において、ヒートパイプ11の受熱部12を通る作動液14により放射パネル52が冷却される。このため、放射パネル52からの放射冷却により、居室52内が冷却される。このことにより、従来の空調機のように作業者34に直接冷風を当てることなく、居室52内を冷却することができる。
【0047】
この際、放射パネル52を介して居室52から伝導される熱により、ヒートパイプ11の受熱部12を通る作動液14が沸騰する。その後の作動液14の作用は、図1および図2に示す第1の実施の形態の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0048】
このように本実施の形態によれば、居室53の天井部54に放射パネル52が取付けられ、放射パネル52に、建屋内冷却機構10のうちヒートパイプ11の受熱部12が接触されている。このため、放射パネル52からの放射冷却により、居室52内が冷却される。このことにより、従来の空調機のように作業者34に直接冷風を当てることなく、居室52内を冷却することができる。
【0049】
また本実施の形態によれば、建屋内冷却機構10のヒートパイプ11は、OA機器室41内に配置される受熱部12と、OA機器室41外方、例えば建屋42の外方42aに配置される放熱部13とを有している。またヒートパイプ11は、作動液14が受熱部12から放熱部13に流通する際に作動液14が通る第1パイプ部15と、作動液14が放熱部13から受熱部12に流通する際に作動液14が通る第2パイプ部16とを有している。このため、ポンプを用いることなく、ヒートパイプ11の作動液14を、受熱部12と放熱部13との間において一方向に循環させることができる。このことにより、居室52内を冷却するうえで、ポンプを駆動することに要するエネルギーを削減することができ、かつポンプが発生させる騒音による問題を解決することができる。また、ポンプを使用する代わりに、可動部を有さないヒートパイプ11を使用することにより、建屋内冷却機構10の信頼性・耐久性が向上させることができる。これによって、建屋内冷却機構10のメンテナンスに要する費用を削減することができる。
【0050】
さらに本実施の形態によれば、建屋内冷却機構10は、ヒートパイプ11を冷却する冷却装置20と、居室52内の温度をモニタする温度モニタ手段51と、モニタされた居室52内の温度に応じて冷却装置20を制御する制御装置26とを備えている。このため、居室52内の温度に応じて、冷却装置20を最適に制御することができる。このことにより、建屋内冷却機構10により消費されるエネルギーを必要最小限の量にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態において、建屋に設けられた建屋内冷却機構を示す断面図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態において、ヒートパイプのうちヒートパイプの受熱部を拡大して示す図。
【図3】図3は、本発明の第2の実施の形態において、建屋に設けられた建屋内冷却機構を示す断面図。
【符号の説明】
【0052】
10 建屋内冷却機構
11 ヒートパイプ
11a 循環パイプ
12 ヒートパイプの受熱部
13 ヒートパイプの放熱部
13a 放熱部の屈曲部
14 作動液
15 ヒートパイプの第1パイプ部
15a 第1パイプ部の一部
16 ヒートパイプの第2パイプ部
16a 第2パイプ部の一部
17 OA機器
18 循環パイプの一部
18a 循環パイプの一部の屈曲部
19 蒸気泡
19a 気体部
20 冷却装置
21 冷却水ポンプ
22 冷却水管
23 冷却水
25 温度モニタ手段
26 制御装置
27 OA機器の筺体
27a 筺体の内面の一部
27b 筺体の外面の一部
28 発熱部品
29 熱移送手段
29a 熱移送手段の一端
29b 熱移送手段の他端
30a 放熱シート
30b 放熱シート
30c 放熱シート
31 机
32 OA機器用モニタ
33 デスクトップ
34 作業者
35 椅子
41 OA機器室
42 建屋
42a 建屋の外方
42b 建屋のダクトスペース
43 床
51 温度モニタ手段
52 放射パネル
53 居室
54 天井部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内の冷却対象区域を冷却する建屋内冷却機構において、
内部に作動液が封入され、ループ形状を有するヒートパイプを備え、
ヒートパイプは、冷却対象区域内に配置される受熱部と、冷却対象区域外に配置される放熱部とを有し、
作動液は、受熱部と放熱部との間を一方向に循環することを特徴とする建屋内冷却機構。
【請求項2】
ヒートパイプの放熱部は、建屋外に配置されることを特徴とする請求項1に記載の建屋内冷却機構。
【請求項3】
ヒートパイプの一部を冷却する冷却装置と、
冷却対象区域の温度をモニタする温度モニタ手段と、
モニタされた冷却対象区域の温度に応じて冷却装置を制御する制御装置と、を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の建屋内冷却機構。
【請求項4】
冷却対象はOA機器であり、
ヒートパイプの受熱部は、OA機器と直接的にまたは間接的に接触していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建屋内冷却機構。
【請求項5】
OA機器は、筺体と、筺体に収納され、作動中に発熱する発熱部品と、その一端が発熱部品に接続され、その他端が筺体の内面の一部に接続され、発熱部品から生じる熱を筺体に移送する熱移送手段とを有し、
ヒートパイプの受熱部は、OA機器の筺体の外面の一部に接触していることを特徴とする請求項4に記載の建屋内冷却機構。
【請求項6】
冷却装置は、ヒートパイプの一部に接触する冷却水管と、冷却水管に冷却水を流通させる冷却水ポンプとを有することを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の建屋内冷却機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−98063(P2010−98063A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266580(P2008−266580)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(301042686)株式会社三菱地所設計 (24)
【Fターム(参考)】