説明

建物の開口部装置

【課題】 室内からは框及び枠材のいずれか一方しか見えず、あるいは室外からは該框及び該枠材のいずれかの他方しか見えないことにより建物の壁と一体感を有し、ガラスパネル等の面材周りをシンプルで開放的な印象を与えることができる開口部装置を提供する。
【解決手段】 建物開口部の縁に沿って備えられた枠材(10)と、該枠材内に配置された障子(20)とを備え、障子を閉鎖した姿勢において室内側正面から見た場合に障子の框(22)及び枠材のいずれか一方が、障子の框及び枠材の他方により隠蔽され、及び/又は建物開口部の縁に沿って備えられた枠材と、該枠材内に配置された障子とを備え、障子を閉鎖した姿勢において室外側正面から見た場合に障子の框及び枠材のいずれか一方が、障子の框及び枠材の他方により隠蔽される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅や公共施設等の建物開口部に好適に用いられる開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の洋風化がこれまで以上に進み、いわゆるモダンなデザインである洋風建物が増加している。このような洋風建物では建物の形そのものだけではなく、建物を構成する各要素の随所にも洋風なデザインが採用されてきている。
【0003】
洋風なデザインの建物の中でも特にシンプルモダン住宅と呼ばれるシンプルで開放的な印象を与える建物が好まれる傾向にあり、そのための建物及び建物を構成する各要素の設計が必要となってきている。かかる建物の要素設計において建物の窓は重要な要素の1つである。建物の窓は室内外の換気及び採光の手段としての機能に留まらず、建物の印象を決める重要な役割を有している。例えば窓の配置や形が異なると、同じ形状の建物でもその雰囲気は全く異なる。
【0004】
従来において、建物の窓等の開口部を室内又は室外から見た場合、ガラスパネルに代表される障子の面材と建物の壁との間に開口部に取り付けられた枠材と障子の框の両方が見えるため、枠材や框の端が線として現れ、シンプルな印象とならなかったり、枠材や框自身がガラスパネル等の面材周りの厚い縁取りのように見え、ガラスパネル部分を小さく感じさせる場合もあった。
【0005】
上述したようなシンプルモダン住宅では、シンプルで開放的な印象を与える建物が望まれるが、これまでかかる要望に十分に応え得る開口部装置は存在しなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、今後も洋風建築は増加し、その要望も多様化するため、シンプルな印象を与え開放的な空間を演出する開口部装置に対する需要が高まっている。
【0007】
そこで、本発明では、かかる要望に応えるため、室内からは框及び枠材のいずれか一方しか見えず、あるいは室外からは該框及び枠材の他方しか見えないことにより建物の壁と一体感を有し、ガラスパネル等の面材周りをシンプルで開放的な印象を与えることができる開口部装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
請求項1に記載の発明は、建物(1000)開口部の縁に沿って備えられた枠材(10)と、該枠材内に配置された障子(20)とを備え、障子を閉鎖した姿勢において、室内側正面から見た場合に障子の框(22)及び枠材のいずれか一方が、障子の框及び枠材のいずれかの他方により隠蔽されることを特徴とする開口部装置(100)により前記課題を解決する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、建物(1000)開口部の縁に沿って備えられた枠材(10)と、該枠材内に配置された障子(20)とを備え、障子を閉鎖した姿勢において、室外側正面から見た場合に障子の框(22)及び枠材のいずれか一方が、障子の框及び枠材のいずれかの他方により隠蔽されることを特徴とする開口部装置(100)により前記課題を解決する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、建物(1000)開口部の縁に沿って備えられた枠材(10)と、該枠材内に配置された障子(20)とを備え、障子を閉鎖した姿勢において、室内側正面から見た場合に障子の框(22)及び枠材のいずれか一方が、障子の框及び枠材のいずれかの他方により隠蔽されるとともに、室外側正面から見た場合に障子の框及び枠材のいずれか一方が、障子の框及び枠材のいずれかの他方により隠蔽されることを特徴とする開口部装置(100)により前記課題を解決する。
【0012】
以上に示した本発明の開口部装置は、住宅、公共施設等に限らず様々な建物の開口部に適用が可能であり、多種多様な窓に対しても対応できる。その中でも特に住宅におけるスリット窓に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、室内側において障子を閉めた状態で開口部装置は、框の全てを枠材の室外側に隠して配置するか、又は枠材の全てを框の室外側に隠して配置するため、室内側からは、壁、枠材又は框、ガラスパネル等の障子の面材しか見えない。これにより框又は枠材のいずれか一方の端が線として現れないので、非常にシンプルな印象を与える上、ガラスパネル等の面材の周りには枠材又は框しかないので縁取りが薄く、窓を大きく見せることができる。従って室内空間において開口部装置と建物の壁との間に一体感が生じ、シンプルな印象とともに開放感も与えることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、室外側において障子を閉めた状態で開口部装置は、框の全てを枠材の室内側に隠して配置するか、又は枠材の全てを框の室内側に隠して配置するため、室外側からは、壁、枠材又は框、ガラスパネル等の障子の面材しか見えない。これにより框又は枠材のいずれか一方の端が線として現れないので、非常にシンプルな印象を与える上、ガラスパネル等の面材の周りには枠材又は框しかないので縁取りが薄く、窓を大きく見せることができる。従って建物の外観において開口部装置と建物の壁との間に一体感が生じ、シンプルな印象とともに開放感も与えることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、室内外いずれにおいても框又は枠材のいずれか一方が必ず隠されるので、室内外問わず、壁、枠材又は框、ガラスパネル等の障子の面材しか見えない。これにより框又は枠材のいずれか一方の端が線として現れないので、非常にシンプルな印象を与える上、ガラスパネル等の面材の周りには枠材又は框しかないので縁取りが薄く、窓を大きく見せることができる。従って開口部装置と建物の壁との間に一体感が生じ、シンプルな印象とともに開放感も与えることができる。
【0016】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0018】
図1は、本発明の開口部装置100が使用される1つの実施形態にかかる建物1000の外観を示す正面図である。建物1000は、1階及び2階からなり、各階に開口部を有している。1階には玄関150や窓160が、2階にも窓170が備えられている。2階にはさらにスリット状の開口を備え、該開口に本発明の開口部装置100が配置されている。開口部装置100は、このようなスリット窓に好適に使用されるが、スリット窓に限らずあらゆる種類の窓にも適用が可能である。また、建物の種類も住宅に限定されず、公共施設やオフィスなどの大型建物にでも適用できる。
【0019】
図2は実施形態1にかかる開口部装置100の正面図である。図2(A)は室外側からの正面図、図2(B)は室内側からの正面図である。開口部装置100は、建物1000開口部の縁に沿って備えられた枠材10と、該枠材10内に配置される障子20とを有している。障子20は、ガラスパネル21と該ガラスパネル21の全周に渡り取り付けられた框22とを備えている。各部材の位置関係は後で説明する。図2(A)に示すように、開口部装置100を室外側から見ると建物の壁200、框22及びガラスパネル21しか見えず、開口部装置100を室内側から見ると図2(B)に示すように建物の室内側壁201、枠材10及びガラスパネル21しか見えない。従ってガラスパネル21と建物の壁200又は建物の室内側壁201との間に見える部材が少なくなり、シンプルで開放的な印象を与えることができる。実施形態1においては、室外から開口部装置100を見た場合に枠材10が見えず、室内からは框22が見えないようになっているが、反対に室内から開口部装置100を見た場合に枠10が見えず、室外からは框22が見えないように構成することも可能である。詳細な構成は後に説明する。
【0020】
図3は、開口部装置100の高さ方向中心付近における水平断面を示す図である。開口部装置100の紙面上方が室外側、紙面下方が室内側である。理解しやすさのために説明に利用しない部材は適宜省略する。図3には、開口部装置100のうち開口部の左右に鉛直に配置された枠材10、10、該枠材10、10に沿って配置された左右の框22、22及びガラスパネル21が現れている。さらに分かり易くするため図3の鎖線で囲んだ部分Aを拡大し図4に示す。部材同士の境界が分かり難いため、一部の部材を破線で示す。枠材10は、開口部における建物の壁200及び建物の室内側壁201に接して取り付けられる。枠材10は建物の壁200に略直角な部材10aと、部材10aの室内側の一端から略直角にガラスパネル21の方向へ延設された部材10b及び10bのガラスパネル21側端部から略直角に室外方向へ延設された部材10cを有し、部材10a、10b、10cは一体に成型されている。部材10aの室外側端部は室外に突出している。部材10bは、建物の室内側壁201に設けられた切欠き部201aのガラスパネル21に平行である部分に接して配置される。
【0021】
框22は、ガラスパネル21が挿入されるスリット22a、ガラスパネル21と略平行で部材10aの室外側に配置される部材22b及びスリット22aと部材22bを連結する部材22c、22dを備えている。框22は、略L字型をした部材22dのガラスパネル21に平行な一部分を緩衝材32を介して部材10cの端部に接している。このとき、部材22dの全てが部材10cの室外側延長面よりも壁200方向に位置するようになっている。これにより、室内側から正面で開口部装置100を見たとき、框22の部材22dは部材10cの室外側に隠蔽され、壁201と枠材10及びガラスパネル21しか見えない。また、部材22bの壁200側端部はシール材30を介して部材10aの端部と接することにより配置される。このとき、部材10aの室外側延長面が部材22bに含まれるように配置される。これにより室外側から正面で開口部装置100を見たとき、枠材10の部材10aは框22の部材22bにより隠蔽され、壁200と框22及びガラスパネル21しか見えない。以上の構造により、開口部装置100がシンプルで開放的な印象を与えることができる。ガラスパネル21は、該ガラスパネル21の端部に取り付けられた固定部材23とともに框22のスリット22aにシール材31を介して配置される。
【0022】
図5は、実施形態1の開口部装置100の幅方向中心付近における垂直断面を示す図である。開口部装置100の紙面左が室外側、紙面右が室内側である。部材同士の境界が分かり難いため、一部の部材を破線で示す。図5には開口部装置100のうち開口部の上下に水平に配置された枠材10、10、該枠10、10に沿って配置された上下の框22、22及びガラスパネル21が現れている。上下の枠材10、10、框22、22及びガラスパネル21も各部材が図4に示した場合と同様の位置関係にあることにより、同じ効果を得ることができる。従って本発明の開口部装置100においては、全周に渡り室外側からは枠材10が隠蔽され、室内側からは框22が隠蔽され、シンプルで開放的な印象を与えることができる。
【0023】
開口部装置100は以上のような構造となっているので、室内外の関係を反対に配置することが可能である。従って、開口部装置100の全周に渡って、室外側から見たとき框が見えず、室内側から見たとき枠が見えないように配置すれば、実施形態1とは室内外が反対となっているが、同じ効果を得ることができる。
【0024】
図6は、図5のBで示した部分から雨など水が入ったときの排出経路を示した図である。Bで示した部分は、通常、シール部材30により閉鎖されており、水の浸入は防がれているが、何らかの理由で水が入った場合でも、水は図4及び図5にCで示した框22と枠材10との間隔を図6に破線で示した矢印の経路を通り、図5のDに示した位置から排出される。
【0025】
図7は、実施形態2にかかる本発明の開口部装置101である。実施形態1にかかる開口部装置100は開閉ができないが、実施形態2にかかる開口部装置101は開閉が可能である。開口部装置101の框22及び枠材10は実施形態1の開口部装置100と同じだが、框22と枠材10のうちのいずれか1辺の該框及び枠材が蝶番40により連結され、他の辺における枠材10と框22は連結されていないので、蝶番40の回動に連動し、框22及びガラスパネル21が回動する。よって開口部装置101は、不図示の開閉のための把手を使用し、図7に矢印で示した方向に開閉が可能となっている。これにより開口部装置101の開放時には換気ができ、閉鎖時においては実施形態1と同じ状態となるので、本発明の機能を維持しつつ換気もできる開口部装置101となる。
【0026】
開口部装置101において、蝶番40はその全体を框22により隠される位置に配置されているので、蝶番40は室外側から見えず、室内側からも枠材によって隠されているのでほとんど見えない。従って、非常にシンプルな印象を与えることができる。また、蝶番40は、左右のいずれか1つの框22、枠材10に取り付けられると片開き窓として、上下のいずれか1辺の框22、枠材10に取り付けられると突き出し窓となるので、使用者の希望により選択することができる。
【0027】
障子20の開閉は框22が正面から見える方向にのみ可能であるので、実施形態2においては、室外側へ開くようになっているが、枠材10及び障子20の室内外の関係を反対にすれば、室内側へ開くようにすることもできる。これは例えば室外側に障害物があり室外側に障子20を開くことができない場合に有効である。
【0028】
図8は実施形態3にかかる本発明の開口部装置102を示す図である。本実施形態は円形の建物開口部に開口部装置102を適用したものである。基本的な構造は実施形態1と同様であり、四辺形の框22の代わりに円形の框26を、四辺形の枠材10の代わりに円形の枠材11を、矩形のガラスパネル21の代わりに円形のガラスパネル25を使用している。また、実施形態2と同様にいずれかの位置に框26と枠材11とを連結する蝶番を取り付ければ開閉が可能な円形窓にすることができる。この場合においてもシンプルで開放的な印象の開口部装置102を提供することができる。
【0029】
図9は、実施形態4にかかる本発明の開口部装置103の一部を拡大して示した水平断面を示した図である。本実施形態は、複数の開口部装置を備えた場合を示したものでいわゆる連窓の開口部装置である。左右に配置された開口部装置を連結部材50により連結し、連窓が可能となる。室内側における連結部は、パネル60を使用して隠蔽される。連窓は水平方向及び垂直方向いずれかの連窓でもよいし、両方向組み合わせた連窓あってもよい。これにより本発明の効果を活かしつつさらに需要者の選択の幅を広くすることができる。
【0030】
各実施形態に使用される枠材及び框の材質は通常の開口部装置に利用されるあらゆる材質が使用可能である。その中でもアルミニウムが特に好ましい材料である。またガラスパネルに代えて通常の開口部装置に利用されるあらゆる材質が使用可能である。例えば採光の観点から考えるとアクリル樹脂パネル、ポリカーボネートパネルを使用することができる。また、ロック機構やシール材等、その他通常の開口部装置が備える部材は本発明の開口部装置にも使用することができる。
【0031】
以上のように、本発明の開口部装置は多くの種類の建物の開口部に適用が可能であり、各実施形態においてその効果を十分に発揮することができる。
【0032】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う建物の開口部装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の開口部装置が使用される1つの実施形態にかかる建物の外観を示す正面図である。
【図2】実施形態1にかかる開口部装置の正面図である。
【図3】開口部装置の高さ方向中心付近における水平方向断面を示す図である。
【図4】図3のAで示された部分を拡大した図である。
【図5】実施形態1にかかる開口部装置における幅方向中心付近における垂直断面を示す図である。
【図6】図5のBで示した部分から雨など水が入ったときの排出経路を示した図である。
【図7】実施形態2にかかる本発明の開口部装置である。
【図8】実施形態3にかかる本発明の開口部装置を示す正面図である。
【図9】実施形態4にかかる本発明の開口部装置における一部を拡大して示した水平方向断面を示した図である。
【符号の説明】
【0034】
10 枠材
20 障子
21 ガラスパネル
22 框
100 開口部装置
101 開口部装置
102 開口部装置
103 開口部装置
200 建物の壁
201 建物の室内側壁
1000 建物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部の縁に沿って備えられた枠材と、該枠材内に配置された障子と、を備え、
前記障子を閉鎖した姿勢において、室内側正面から見た場合に前記障子の框及び前記枠材のいずれか一方が、前記障子の框及び前記枠材のいずれかの他方により隠蔽されることを特徴とする開口部装置。
【請求項2】
建物開口部の縁に沿って備えられた枠材と、該枠材内に配置された障子と、を備え、
前記障子を閉鎖した姿勢において、室外側正面から見た場合に前記障子の框及び前記枠材のいずれか一方が、前記障子の框及び前記枠材のいずれかの他方により隠蔽されることを特徴とする開口部装置。
【請求項3】
建物開口部の縁に沿って備えられた枠材と、該枠材内に配置された障子と、を備え、
前記障子を閉鎖した姿勢において、
室内側正面から見た場合に前記障子の框及び前記枠材のいずれか一方が、前記障子の框及び前記枠材のいずれかの他方により隠蔽されるとともに、
室外側正面から見た場合に前記障子の框及び前記枠材のいずれか一方が、前記障子の框及び前記枠材のいずれかの他方により隠蔽される
ことを特徴とする開口部装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−249732(P2006−249732A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65766(P2005−65766)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】