説明

建物内排熱システム

【課題】建物内の熱を外部に排出することによって空調機の使用するエネルギーの低減を図る建物内排熱システムを提供することを目的とする。
【解決手段】建物BLに設けられる建物内排熱システム101は、建物BLに設けられて建物BLの外部に連通し、空気が建物BLの外部に向かって流通可能な内気排気ダクト14と、熱を発生し、発生した熱を内気排気ダクト14の空気に伝達可能に建物BLの内部に設けられる照明装置16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物内排熱システムに係り、特に、照明等の発熱機器の熱を建物の外部に排出する建物内排熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物内では、照明、OA機器等の発生する熱によって室温が上昇するため、外気温が低い場合でも室内を冷却する必要があり、ほぼ年間を通して空調機を使用した冷却が行われている。このような建物の空調機が使用するエネルギーの総量は年間を通じると多量なものになるので、建物内における空調機の冷却効率を向上させることによって、エネルギーの使用量を低減する空調方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、オフィス空間全体を冷却する天井空調装置に加えて、OA機器の近傍を冷却する別の空調機を使用してオフィス空間を冷却する空調方法が記載されている。なお、この別の空調機は、OA機器の近傍に配置された発熱エリア吸引ダクトを介して、OA機器から発生する熱空気を吸引して冷却機に導き、冷却機よって冷却した熱空気をオフィス空間に戻すものである。そして、この空調方法では、OA機器の近傍の空調機を使用した冷却によって、OA機器の局所発熱による室温分布の偏りを解消している。これにより、天井空調装置は、その冷房の設定が、局所的に室温の高くなった場所に合わせた設定温度の低いものではなく、オフィス空間全体の室温に合わせた比較的設定温度の高いものでよいため、過度の冷房の必要性が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−223358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1における空調方法は、オフィス空間内における室温の偏りを解消することによって天井空調装置のエネルギーの使用量を低減しているが、このために、別の空調機を使用して、OA機器近傍の局所的に室温の高い場所の熱空気を冷却している。よって、局所的な熱を除去するために、別の空調機によるさらなるエネルギーの消費が発生するので、オフィス空間の空調装置全体で使用されるエネルギーの低減量は少ないという問題がある。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、建物内の熱を外部に排出することによって空調機の使用するエネルギーを低減する建物内排熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、建物内排熱システムは、建物に設けられて建物の外部に連通し、空気が建物の外部に向かって流通可能な空気経路と、熱を発生し、発生した熱を空気経路の空気に伝達可能に建物の内部に設けられる発熱機器とを備える。
【0008】
また、上記の建物内排熱システムは、熱を蓄熱可能な建物の蓄熱躯体と、蓄熱躯体を通って設けられ、外気が流通可能な空気経路とを備え、発熱機器は、発熱機器の発生した熱を蓄熱躯体に伝達可能に設けられ、空気経路を流通する外気は、蓄熱躯体と熱交換を行い、発熱機器から伝達されて蓄熱体が蓄熱した熱を吸熱してもよい。
また、上記の建物内排熱システムは、蓄熱躯体及び発熱機器を連結し、発熱機器の発生する熱を蓄熱躯体に伝達する熱伝達手段を備えてもよい。
発熱機器は、蓄熱躯体に直接取り付けられてもよい。
蓄熱躯体は、発熱機器から伝達された熱を蓄熱する領域の表面に、領域の表面からの熱の出入りを防ぐ断熱層を有してもよい。
【0009】
また、上記の建物内排熱システムは、空気経路を形成し、建物の内部の空気を建物の外部に排出するダクトを備え、発熱機器は、発熱機器の発生した熱をダクトの内部に伝達可能に設けられてもよい。
また、上記の建物内排熱システムは、ダクト及び発熱機器を連結し、発熱機器の発生する熱をダクト内に伝達する熱伝達手段を備えてもよい。
発熱機器は、ダクトに直接取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る建物内排熱システムによれば、建物内の熱を外部に排出することによって空調機の使用するエネルギーの低減を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る建物内排熱システム101及びその周辺の構成を示す断面側面図である。
【図2】図1の内気排気ダクトの配置を示す模式平面図である。
【図3】図1及び図2のIII−III線に沿った断面の一部を示す模式断面図である。
【図4】図3の照明装置の構成を示す模式断面図である
【図5】この発明の実施の形態2に係る建物内排熱システムにおける内気排気ダクトの配置を示す模式平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面の一部を示す模式断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る建物内排熱システムの一部を示す模式断面側面図である。
【図8】この発明の実施の形態4に係る建物内排熱システムの断面の一部を示す模式断面図である。
【図9】図8の照明装置の構成を示す模式断面図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係る建物内排熱システム105及びその周辺の構成を示す断面側面図である。
【図11】図10のボイド穴の配置を示す模式平面図である。
【図12】図10及び図11のXII−XII線に沿った断面の一部を示す模式断面図である。
【図13】この発明の実施の形態6に係る建物内排熱システムの断面の一部を示す模式断面図である。
【図14】この発明の実施の形態7に係る建物内排熱システムの一部を示す模式断面側面図である。
【図15】この発明の実施の形態8に係る建物内排熱システムの断面の一部を示す模式断面図である。
【図16】図15の照明装置の構成を示す模式断面図である
【図17】図16の照明装置の別の形態の構成を示す模式断面図である
【図18】この発明の実施の形態9に係る建物内排熱システムの断面の一部を示す模式断面図である。
【図19】この発明の実施の形態10に係る建物内排熱システムの断面の一部を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1〜4を用いて、この発明の実施の形態1に係る建物内排熱システム101及びその周辺の構成を説明する。なお、以下の実施形態において、オフィス等を含むビル状の建物に建物内排熱システムを設けた場合の例について説明する。
【0013】
まず、図1を参照すると、建物内排熱システム101及びその周辺の構成を示す断面側面図が示されている。そして、図1には、建物BLの複数あるフロアのうちの1つであり、且つ建物内排熱システム101が設けられた、フロアF1が示されている。
フロアF1は、その下方のフロアF2とコンクリート製の床スラブ2によって仕切られ、その上方のフロアF3とコンクリート製の上階床スラブ3によって仕切られて形成されている。なお、フロアF2及びF3も、フロアF1と同様の構成を有している。ここで、床スラブ2及び上階床スラブ3は、建物BLの躯体を構成している。
フロアF1には、居室空間A1と、空間B1とが形成され、空間B1にはエレベータ等の共用設備が設けられている。
【0014】
また、床スラブ2及び上階床スラブ3は、紙面上で奥行き方向に延びる大梁4bと、紙面上で横方向に延びる図示しない大梁4a(図2参照)と、紙面上で奥行き方向に延びて大梁4a同士を連結する小梁5とによって支持されている。なお、床スラブ2はフロアF2の上階床スラブも形成し、上階床スラブ3はフロアF3の床スラブも形成している。
【0015】
床スラブ2の上方には床部材6が設けられており、床部材6は、床スラブ2との間に床下空間7を形成している。そして、床部材6には、複数の床吹出口6aが設けられている。
さらに、上階床スラブ3の下方には天井部材8が設けられており、天井部材8は、上階床スラブ3との間に天井空間9を形成している。そして、天井部材8には、複数の天井吸入口8aが設けられている。
【0016】
また、床下空間7は、空間B1に設けられた空調機(空気調和機)12に空調空気送気ダクト12aを介して連通している。天井空間9は、第一内気吸入ダクト12bを介して空調機12に連通し、また、第一内気吸入ダクト12bから分岐する第二内気吸入ダクト12baを介して、空間B1に設けられた外調機(外気処理空気調和機)13に連通している。
また、外調機13は、外気吸入ダクト13cを介して建物BLの外部に連通し、内気排気ダクト14及び換気口15を介して建物BLの外部に連通している。さらに、外調機13は、外気送気ダクト13aを介して空調機12に連通している。なお、内気排気ダクト14は、小梁5と天井部材8との間を通って紙面上で横方向に延びるようにして設けられ、建物BLの外壁30に設けられた換気口15に接続している。また、内気排気ダクト14には、内部の熱の天井空間9への放熱を防ぐために断熱性を有する材料を使用することが好ましい。ここで、内気排気ダクト14は、空気経路を構成している。
【0017】
そして、外調機13は、天井吸入口8aから吸入されて天井空間9及び第一内気吸入ダクト12bを流通する居室空間A1の室内空気の一部、すなわちレターン空気の一部を、第二内気吸入ダクト12baを介して吸入し、同時に、外気吸入ダクト13cを介して建物BLの外部の外気を吸入する。さらに、外調機13は、外気の熱による空調機12の負荷を低減するために、吸入した外気をレターン空気と熱交換させて冷却又は加熱処理し、この処理した外気を、外気送気ダクト13aを介して空調機12に送る。また、外調機13は、吸入したレターン空気を、内気排気ダクト14に送り、排出空気として換気口15から建物BLの外部に排出する。
【0018】
また、空調機12は、第一内気吸入ダクト12bを介して吸入したレターン空気と外調機13から送られた外気とを一緒に冷却又は加熱処理し、この処理したレターン空気及び外気を、空調空気送気ダクト12aに送り、床下空間7を通過させて、床吹出口6aから居室空間A1に空調空気として吹き出させる。
よって、居室空間A1からのレターン空気が、天井吸入口8aから吸入されて、その一部が外調機13によって建物BLの外部に排出され、残りの多くのレターン空気は空調機12によって冷却又は加熱されて居室空間A1に戻される。さらに、建物BLの外部に排出されたレターン空気に相当する量の外気が、外調機13によって吸入されて空調機12に送られ、空調機12によって冷却又は加熱されて居室空間A1に送られる。そして、本実施の形態1の居室空間A1では、空調空気が床から吹き出され、レターン空気が天井から吸い出されて、室内空調が行われる。
【0019】
また、図1及び図3を合わせて参照すると、天井部材8には、発熱機器である複数の照明装置16が取り付けられている。照明装置16のそれぞれには、棒状の熱伝達手段であるヒートパイプ17が取り付けられており、ヒートパイプ17の先端は、内気排気ダクト14を貫通してその内部に延びている。そして、内気排気ダクト14は、照明装置16の位置に合わせて、例えば、図2に示すように配置されている。
【0020】
ここで、図2を参照すると、内気排気ダクト14の平面的な配置の一例が示されている。内気排気ダクト14は、空間B1において外調機13から大梁4a同士の間に延びる3つの集合ダクト14aと、居室空間A1において集合ダクト14aから分岐して延びる複数の独立ダクト14b(本実施の形態1では4つ)と、複数の独立ダクト14bが再び集結した集合ダクト14cとによって構成されている。さらに、集合ダクト14cは、換気口15に接続している。そして、独立ダクト14bが、照明装置16(図1参照)の位置に合わせて配置されている。
【0021】
さらに、図4を参照すると、照明装置16の構成が示されている。図4では、照明装置16として、LEDライトを使用している。
照明装置16は、天井部材8に埋め込むようにして取り付けられている。照明装置16は、LED発光素子部16a1が下方を照射するようにして天井部材8に取り付けられた発光部16aと、発光部16aの上部に設けられて発光部16aへの電力の供給を制御する電源部16bとを有している。
また、発光部16aにおいて、LED発光素子部16a1が設けられている基盤部16a2の上部には、上方に延びるヒートパイプ17が連結されている。
【0022】
ヒートパイプ17は、円筒状の容器17aと、容器17aの内部に封入された作動液17bとを有している。また、容器17aは、その両端に熱の出入りが可能な入熱部17c及び放熱部17dを有している。そして、ヒートパイプ17は、入熱部17cと放熱部17dとの間に温度差がある場合に、入熱部17cと放熱部17dとの間で熱伝達を行う。
【0023】
また、ヒートパイプ17は、入熱部17cを発光部16aの基盤部16a2及び電源部16bと接触させるようにし、且つ、放熱部17dを内気排気ダクト14の内部に位置させるようにして、設けられている。
さらに、ヒートパイプ17の放熱部17dには、容器17aから外側に向かって突出する放熱板17gが設けられている。放熱板17gは、放熱部17dにおける空気との接触面積を増加させて熱交換の効率を向上させる機能を有している。
【0024】
また、照明装置16では、点灯中、発光部16aの基盤部16a2及び電源部16bが発熱してその温度が高温になる。このため、ヒートパイプ17では、入熱部17cでの温度が放熱部17dでの温度より高くなる。このとき、ヒートパイプ17の入熱部17cでは、作動液17bが、基盤部16a2及び電源部16bで発生する熱と熱交換を行って蒸発し、蒸気となる。蒸気となった作動液17bは、容器17aの内部を放熱部17dに移動し、さらに、放熱部17dでは、内気排気ダクト14内の排出空気と熱交換を行い、排出空気に熱を放出して凝縮する。そして、凝縮した作動液17bは、入熱部17cに移動する。この作動液17bの作用の繰り返しにより、入熱部17cから放熱部17dへの熱伝達が行われ、照明装置16の発生する熱が、内気排気ダクト14内の排出空気に伝達される。
【0025】
ここで、内気排気ダクト14、照明装置16及びヒートパイプ17は、建物内排熱システム101を構成している。
【0026】
次に、この発明の実施の形態1に係る建物内排熱システム101及びその周辺の動作を説明する。
図1を参照すると、居室空間A1では、照明装置16の他に、熱を発生するOA機器18が多数配置されているため、内部での発熱量が多くなっている。このため、空調機12は、一年を通じてほとんどの期間、居室空間A1を冷却する冷房状態で運転される。このため、本実施の形態1、及び実施の形態2以降では、冷房時における建物内排熱システム及びその周辺の動作について説明する。
【0027】
まず、外調機13は、外気吸入ダクト13cを介して建物BLの外部の外気を吸入すると共に、天井空間9、第一内気吸入ダクト12bを介して吸入された居室空間A1からのレターン空気の一部を第二内気吸入ダクト12baを介して吸入する。さらに、外調機13は、吸入した外気とレターン空気とを熱交換させ、外気を居室空間A1の温度程度に冷却して空調機12に送ると共に、レターン空気を排出空気として、内気排気ダクト14を介して建物BLの外部に排出する。
【0028】
次に、空調機12は、外調機13から送られた外気及び第一内気吸入ダクト12bを介して居室空間A1から吸入したレターン空気を冷却し、冷却した空気を空調空気として、空調空気送気ダクト12a及び床下空間7を介して居室空間A1に戻す。
よって、空調機12は、冷却した空調空気の導入を行って居室空間A1を冷却し、外調機13は、居室空間A1からのレターン空気の排出及び居室空間A1への外気の導入を行って、居室空間A1を換気する。
【0029】
また、図4を参照すると、照明装置16が点灯されている場合、照明装置16の発生する熱は、ヒートパイプ17に入熱してその内部を伝達し、放熱部17dにおいて内気排気ダクト14内に放熱され、内気排気ダクト14内を流通する排出空気に伝達される。これにより、照明装置16が発生する熱は、内気排気ダクト14内を流通する排出空気に伝達され、排出空気と共に建物BLの外部に排出される。すなわち、照明装置16の発生する熱は、ヒートパイプ17及び内気排気ダクト14を介して、建物BLの外部に直接排出される。そして、内気排気ダクト14が断熱性を有する材料により形成されている場合、内気排気ダクト14内の熱が天井空間9内のレターン空気に伝達されないため、レターン空気の温度上昇が抑えられる。これにより、空調機12が吸入する空気の温度上昇が抑えられ、空調機12の冷房負荷の増大が抑制される。
よって、照明装置16が発生する熱の排出は、建物BLに元々備え付けられて稼動している外調機13の排出空気の流れを利用して行われるため、熱の排出のために、機器等を別個に使用することによるエネルギーの消費を伴わない。
【0030】
また、照明装置16が発生する熱が居室空間A1の外部に直接排出されることにより、居室空間A1内における室温の偏り及び上昇が防がれる。さらに、照明装置16が発生する熱を、空調機12から吹き出された空調空気が冷却する必要がなくなる。よって、空調機12に戻ってくるレターン空気の温度上昇が低減されるため空調機12内で設定温度まで空気を冷却するのに要するエネルギーを削減することが可能になり、また、空調機12の搬送空気量を減少させることが可能になる。これにより、空調機12の使用するエネルギーが低減し、さらに、居室空間A1内の人が、体感的に暑い又は寒いと感じることが少なくなる。
【0031】
このように、この実施の形態1に係る建物内排熱システム101は、建物BLに設けられて建物BLの外部に連通し、空気が建物BLの外部に向かって流通可能な内気排気ダクト14と、熱を発生し、発生した熱を内気排気ダクト14の空気に伝達可能に建物BLの内部に設けられる照明装置16とを備える。
これによって、建物BLの内部において照明装置16が発生した熱は、内気排気ダクト14の空気に伝達され、内気排気ダクト14の空気の流れにのって建物BLの外部に排出される。よって、照明装置16が建物BL内に放出する熱量が低減されるので、照明装置16が発生する熱による建物BL内の温度上昇が抑制される。このため、空調機12の使用するエネルギーを低減することが可能になる。
【0032】
また、内気排気ダクト14内に、外調機13が建物BLの外部に排出する室内空気を流通させることによって、元々、排出されるべき空気に照明装置16の発生する熱を伝達させて、排出することができる。すなわち、内気排気ダクト14内の空気を排出するために、新たなエネルギーを使用することなく既存の設備を使用することができ、また、新たな機器を使用する必要がない。さらに、空調機12に戻ってくるレターン空気の温度上昇が低減されるため、空調機12内で設定温度まで空気を冷却するのに要するエネルギーが削減される。これにより、建物BL全体で使用するエネルギーを低減することが可能になる。
【0033】
また、建物内排熱システム101は、内気排気ダクト14及び照明装置16を連結し、照明装置16の発生する熱を内気排気ダクト14内に伝達するヒートパイプ17を備えている。これにより、内気排気ダクト14と照明装置16とが離れて配置されていても、ヒートパイプ17により照明装置16が発生する熱を内気排気ダクト14に伝達することが可能になる。よって、照明装置16及び内気排気ダクト14のレイアウトに自由度が生まれ、これらを経済的に配置することができる。
【0034】
また、実施の形態1では、内気排気ダクト14内に照明装置16の発生する熱を放熱していたが、これに限定されるものでなく、居室空間A1の室内空気を建物BLの外部に直接排出するための単なる換気用のダクト内に、照明装置16の発生する熱を放熱するようにしてもよい。
【0035】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る建物内排熱システムは、実施の形態1の建物内排熱システム101において天井部材8及び天井空間9を設けずに、内気排気ダクト214を居室空間A1内に露出させて設け、内気排気ダクト214に照明装置16を直接取り付けたものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
図6を参照すると、内気排気ダクト214は、紙面上で横方向に延びる小梁5の周囲を囲むようにして上階床スラブ3に取り付けられている。なお、内気排気ダクト214には、内部の熱の居室空間A1への放熱を防ぐために断熱性を有する材料を使用することが好ましい。
さらに、図5を参照すると、内気排気ダクト214は、外調機13から大梁4a同士の間に延びる3つの梁型ダクト214a、214b及び214cを有している。
【0037】
例えば、梁型ダクト214aは、空間B1から居室空間A1に延び、さらに、居室空間A1内においては、各小梁5を囲む小梁部2141a(図6の小梁部2141参照)と、小梁部2141a同士を連結し且つ大梁4aと一体に設けられた連結部2142a(図6の連結部2142参照)とを有している。これにより、梁型ダクト214aは、居室空間A1では、連続する略S字状の形状を形成して延びている。そして、梁型ダクト214aは、居室空間A1の端部において、換気口15に接続している。
また、梁型ダクト214b及び214cも、梁型ダクト214aと同様にして設けられている。
【0038】
図6に戻り、内気排気ダクト214の小梁部2141には、照明装置16が直接取り付けられている。このため、照明装置16は、内気排気ダクト214内を流通する排出空気と直接接触して熱を伝達することが可能になっている。
よって、照明装置16の発生する熱が、内気排気ダクト214内を流通する排出空気に直接伝達され、伝達された熱は排出空気と共に建物BLの外部に排出される。すなわち、照明装置16の発生する熱は、内気排気ダクト214を介して、建物BLの外部に直接排出される。
【0039】
また、上階床スラブ3の下面3bには、外調機13(図5参照)が居室空間A1からレターン空気を吸入するための図示しないダクトが、内気排気ダクト214と別個に設けられており、実施の形態1と同様に、外調機13が居室空間A1の上部からレターン空気を吸入し、空調機12(図1参照)が床部材6の床吹出口6aから空調空気を居室空間A1に送る。
また、この発明の実施の形態2に係る建物内排熱システムのその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0040】
このように、実施の形態2における建物内排熱システムによれば、上記実施の形態1の建物内排熱システム101と同様な効果が得られる。
また、照明装置16を内気排気ダクト214に直接取り付けることによって、ヒートパイプ17が必要でなくなり、照明装置16の設置に要する手間も低減する。よって、コストを低減することが可能になる。
【0041】
また、実施の形態2では、内気排気ダクト214内に照明装置16の発生する熱を放熱していたが、これに限定されるものでなく、居室空間A1の室内空気を建物BLの外部に直接排出するための単なる換気用のダクト内に、照明装置16の発生する熱を放熱するようにしてもよい。
また、実施の形態2では、内気排気ダクト214は、大梁4及び小梁5に沿って形成した梁型ダクトの形態を有していたが、これに限定されるものでなく、大梁4及び小梁5から離れた位置で上階床スラブ3の下面3bに単独で取り付けられたダクトであってもよい。
【0042】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る建物内排熱システム103は、実施の形態1の建物内排熱システム101において空間B1に設けられていた空調機12を、居室空間A1の天井部材8に設けるようにしたものである。
図7を参照すると、居室空間A1の天井部材8に設けられた空調機312は、居室空間A1の室内空気を吸入して冷却した後、この冷却した空気を空調空気として再び居室空間A1に戻すものである。
【0043】
また、空間B1の外調機13は、内気吸入ダクト313bを介して床下空間7に連通し、天井空間9を通る外調空気送気ダクト313aを介して居室空間A1に連通している。さらに、外調機13は、外気吸入ダクト13cを介して建物BLの外部に連通し、内気排気ダクト14を介して建物BLの外部に連通している。よって、外調機13は、床部材6に形成された床下吸入口36aから床下空間7及び内気吸入ダクト313bを通って吸入した居室空間A1のレターン空気と、外気吸入ダクト13cを通って吸入した外気とを熱交換する。さらに、外調機13は、熱交換により冷却した外気を、外調空気送気ダクト313aを通過させて居室空間A1に外調空気として吹き出す。また、外調機13は、熱交換後のレターン空気を内気排気ダクト14に送り、建物BLの外部に排出する。
【0044】
従って、本実施の形態3では、空調機312による居室空間A1の冷房と、外調機13による居室空間A1の換気とが、別々に形成された系統で行われている。そして、実施の形態1と同様に、照明装置16の発生する熱は、ヒートパイプ17を介して外調機13の内気排気ダクト14の排出空気に伝達されて、排出空気と共に建物BLの外部に排出される。
【0045】
上述より、照明装置16の発生する熱は、空調機312と別個に設けられた、居室空間A1の換気系統を利用して建物BLの外部に排出することができる。
また、この発明の実施の形態3に係る建物内排熱システム103のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態3における建物内排熱システム103によれば、上記実施の形態1の建物内排熱システム101と同様な効果が得られる。
【0046】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る建物内排熱システムは、実施の形態1の建物内排熱システムにおけるLEDライトを使用した照明装置16の代わりに、蛍光灯を使用した照明装置416を内気排気ダクト414に直接取り付けたものである。
図8を参照すると、照明装置416は、その一部を、矩形状の断面形状を有する内気排気ダクト414の内部に埋め込むようにして、天井部材8に取り付けられている。
【0047】
図9を参照すると、照明装置416は、矩形状の断面形状をもつ筐体416cを有しており、さらに、筐体416c内の下部に、カバー416a2の内側に蛍光灯416a1が配置された発光部416aを有し、筐体416c内の上部に電源部416bを有している。そして、筐体416cは、天井部材8に取り付けられ、筐体416cの一部が内気排気ダクト414の内部に突出している。なお、筐体416cは、熱伝導性の高い金属材料等を使用して形成される。
【0048】
さらに、筐体416cの内部において、電源部416bと発光部416aとの間には、これらを上下に仕切る隔壁416dが形成されている。そして、筐体416cの内部では、筐体416cと隔壁416dとによって、電源部416bを内部に含む熱溜空間416eが形成される。なお、隔壁416dは、熱溜空間416eが内気排気ダクト414の内部に含まれるような位置に形成されるのが好ましい。
また、隔壁416dには穴416d1が形成されている。これにより、発光部416aで発生した熱は、上昇して穴416d1を通過し、熱溜空間416eに溜まる。一方、熱溜空間416eに溜まった熱は、隔壁416dによって、熱溜空間416eの下方外側への拡散が抑えられている。
【0049】
よって、照明装置416の発光部416aが発生した熱は、熱溜空間416eに溜まり。そして、電源部416bが発生した熱は、一部の熱が、筐体416cを間に挟んで電源部416bと隣り合う内気排気ダクト414内部の排出空気に直接伝達され、その他の熱が、熱溜空間416eに溜まる。さらに、熱溜空間416eに溜まった熱は、筐体416cを間に挟んで熱溜空間416eの周囲を流通する内気排気ダクト414の排出空気に伝達される。そして、伝達された熱は、排出空気と共に建物BLの外部に排出される。
また、この発明の実施の形態4に係る建物内排熱システムのその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
このように、実施の形態4における建物内排熱システムによれば、上記実施の形態1の建物内排熱システム101と同様な効果が得られる。
また、実施の形態4では、照明装置416の電源部416bが内気排気ダクト414の内部に位置して、内気排気ダクト414の排出空気と直接熱交換することができるため、照明装置416から排出空気への熱の伝達効率を向上させることが可能になる。
【0051】
また、実施の形態4では、照明装置416の発熱を熱溜空間416eに滞留させ、熱溜空間416eを内気排気ダクト414の内部に位置するようにしたため、熱溜空間416eに滞留する熱と内気排気ダクト414の排出空気との間の熱交換面積を増大させることができる。これにより、照明装置416から排出空気への熱の伝達効率を向上させることが可能になる。
また、実施の形態4では、照明装置416を内気排気ダクト414に直接取り付けることによって、ヒートパイプ17が必要でなくなり、照明装置416の設置に要する手間も低減する。よって、コストを低減することが可能になる。
【0052】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5に係る建物内排熱システム105は、実施の形態1の建物内排熱システム101において床スラブ2及び上階床スラブ3をボイドスラブとし、このボイドスラブに照明装置16の発生する熱を伝達させるようにしたものである。
【0053】
まず、図10〜12を用いて、この発明の実施の形態5に係る建物内排熱システム105及びその周辺の構成を説明する。
図10を参照すると、建物内排熱システム105及びその周辺の構成を示す断面側面図が示されている。
実施の形態1と同様にして、フロアF1は、その下方のフロアF2と床ボイドスラブ52によって仕切られ、その上方のフロアF3と上階床ボイドスラブ53によって仕切られている。
【0054】
ここで、図12を参照すると、上階床ボイドスラブ53は、中空のコンクリートスラブであり、スラブの内部に複数のパイプ状のボイド管531を一方向に並べてスラブを製作することによって、スラブの中を通る複数のボイド穴532が形成されている。
例えば、上階床ボイドスラブ53には、スラブの中を通る複数のボイド穴を形成することにより、I型状の断面形状を有する複数の梁を隣接させて並べた形態を形成して、スラブの構造的な断面性能を向上させている一般的なボイドスラブを使用してもよい。
なお、床ボイドスラブ52も、上階床ボイドスラブ53と同様の構造を有している。
また、コンクリートは、単位体積あたりの空気の比熱に対して、約1500倍の単位体積あたりの比熱を有しており、比熱が大きいため、コンクリート製の上階床ボイドスラブ53及び床ボイドスラブ52は、熱を蓄熱する能力が高くなっている。そして、上階床ボイドスラブ53及び床ボイドスラブ52は、蓄熱躯体を構成し、ボイド穴532は、空気経路を構成している。
【0055】
図10及び図12を合わせて参照すると、床ボイドスラブ52の上面52a及び上階床ボイドスラブ53の上面53aには、その全体に断熱性を有する材料が取り付けられており、この断熱性を有する材料は第一断熱層501を形成している。例えば、第一断熱層501は、フエルト等を使用して形成される。
さらに、床ボイドスラブ52の上方には、床ボイドスラブ52と間隔をあけて床部材6が設けられている。
また、上階床ボイドスラブ53の下方には、上階床ボイドスラブ53と間隔をあけて天井部材8が設けられている。
【0056】
また、外調機13は、実施の形態1と同様に、第一内気吸入ダクト12bから第二内気吸入ダクト12baを介して吸入した、居室空間A1からのレターン空気と、外気吸入ダクト13cを介して吸入した外気とを熱交換させ、それにより、外気を冷却して空調機12に送るように構成されている。さらに、外調機13には、建物BLの外部に連通する内気排気ダクト13dが設けられており、外調機13は、吸入したレターン空気を、内気排気ダクト13dを介して建物BLの外部に排出空気として排出するように構成されている。なお、空調機12は、実施の形態1と同様の構成を有している。
【0057】
また、上階床ボイドスラブ53のボイド穴532は、建物BLの外壁30に設けられた第一シャッタ機構515に連通している。さらに、ボイド穴532は、居室空間A1における外壁30と反対側の端部に設けられたボイドスラブ接続チャンバ503に連通している。なお、ボイドスラブ接続チャンバ503は、上階床ボイドスラブ53の下部において、天井空間9に隣接して設けられている。
ボイドスラブ接続チャンバ503には、複数のボイド穴532と通気ダクト533とが連通している。通気ダクト533は、ボイドスラブ接続チャンバ503から空間B1を通って建物BLの外部に向かって延び、空間B1の外壁30に設けられた第二シャッタ機構516に接続されている。よって、第一シャッタ機構515及び第二シャッタ機構516を開放することによって、ボイド穴532への外気の導入・導出が可能になり、閉鎖することによって、ボイド穴532への外気の導入及び導出が遮断される。
【0058】
ここで、図11を参照すると、上階床ボイドスラブ53のボイド穴532の平面的な配置の一例が示されている。
上階床ボイドスラブ53において、複数のボイド穴532は、居室空間A1では、大梁4aと同じ方向に沿って形成されている。複数のボイド穴532は、居室空間A1の端部の大梁4bに沿って形成されたボイドスラブ接続チャンバ503に連通している。また、ボイドスラブ接続チャンバ503は、空間B1に設けられた3つの通気ダクト533及び3つの第二シャッタ機構516を介して、建物BLの外部に連通している。
また、複数のボイド穴532は、居室空間A1において、ボイドスラブ接続チャンバ503と反対側の端部で、第一シャッタ機構515を介して建物BLの外部に連通している。
【0059】
図10に戻ると、天井部材8には、複数の照明装置16が取り付けられている。照明装置16のそれぞれには、ヒートパイプ517が連結されており、ヒートパイプ517の上端部分が、上階床ボイドスラブ53に取り付けられている。
【0060】
図12を参照すると、上階床ボイドスラブ53の下面53bには、略台形形状の断面を有する複数の第一溝部53c1及び第二溝部53c2が大梁4aと同じ方向に沿って形成されている。
【0061】
ヒートパイプ517は、入熱部517cを照明装置16に連結させて上方に延び、放熱部517dを第一溝部53c1において上階床ボイドスラブ53に接触させるようにして設けられている。なお、ヒートパイプ517は、実施の形態1のヒートパイプ17の放熱部17dのように、放熱板17gを有してはいない。そして、ヒートパイプ517は、照明装置16の発生する熱を上階床ボイドスラブ53に直接伝達し、上階床ボイドスラブ53は伝達された熱を蓄熱する。
さらに、上階床ボイドスラブ53の下面53bには、ヒートパイプ517の取付部位の周りに、断熱性を有する材料からなる第二断熱層502が形成されている。例えば、第二断熱層502は、フエルト等を使用して形成される。
【0062】
ここで、コンクリート製の上階床ボイドスラブ53は、比熱が大きく熱伝達率が低い。このため、例えば、照明装置16を24時間点灯した場合であっても、上階床ボイドスラブ53が熱を蓄熱する領域、すなわち蓄熱により上階床ボイドスラブ53の温度が上昇する領域は限定されたものとなり、その領域は、図面上に示す蓄熱領域H5となる。そして、第二断熱層502は、蓄熱領域H5の下部を少なくとも覆うようにして形成されている。これにより、天井空間9に吸入されたレターン空気が、蓄熱領域H5と接触して加熱されることがない。
【0063】
また、ヒートパイプ517が取り付けられておらず且つ蓄熱領域H5の外側に位置する第二溝部53c2は、その下部を板状の蓋部材53dによって覆われており、蓋部材53dには、開口53d1が複数設けられている。さらに、第二溝部53c2は、その端部で第一内気吸入ダクト12b(図10参照)に連通している。このため、天井空間9内のレターン空気は、空調機12及び外調機13(図10参照)によって開口53d1から第二溝部53c2内に吸引され、第二溝部53c2を流通した後、空調機12及び外調機13に吸入される。
ここで、上階床ボイドスラブ53、ボイド穴532、照明装置16、並びにヒートパイプ517は、建物内排熱システム105を構成している。
また、この発明の実施の形態5に係る建物内排熱システム105のその他の構成は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
次に、図10〜12を用いて、この発明の実施の形態5に係る建物内排熱システム105及びその周辺の動作を説明する。
図10を参照すると、空調機12及び外調機13の稼動中、空調機12からの空調空気が、床下空間7を通過して床吹出口6aから居室空間A1に送られる。また、居室空間A1内からのレターン空気は、天井吸入口8aから天井空間9に吸入され、空調機12及び外調機13に吸入される。
【0065】
図12を参照すると、照明装置16が点灯されている場合、照明装置16の発生する熱は、入熱部517cにおいてヒートパイプ517に入熱してヒートパイプ517内を伝達し、放熱部517dにおいて上階床ボイドスラブ53に伝達する。そして、上階床ボイドスラブ53は、伝達された熱を蓄熱領域H5に蓄熱する。さらに、上階床ボイドスラブ53は、蓄熱領域H5内に位置するボイド穴532aにおいて、その内部の空気と熱交換を行うことによって、蓄熱領域H5の蓄熱をボイド穴532aの内部の空気に放出する。
【0066】
さらに、図10及び図12を合わせて参照すると、上階床ボイドスラブ53は、ボイド穴532a及び532b(ボイド穴532)に外気を流通させることによって、流通する外気と熱交換を行ってその蓄熱を外気に放熱し、放熱した熱を外気と共に建物BLの外部に排出することができる。
特に、蓄熱領域H5では、上階床ボイドスラブ53は、ボイド穴532aに外気を流通させることによって、流通する外気と熱交換を行って、蓄熱領域H5の蓄熱を外気に放熱し、熱交換により温度上昇した外気は、そのまま建物BLの外部に排出される。これにより、上階床ボイドスラブ53の蓄熱領域H5の蓄熱が、建物BLの外部に排出されて、照明装置16の発生した熱が、建物BLの外部に排出されることになる。
【0067】
一方、蓄熱領域H5以外の領域では、ボイド穴532b(ボイド穴532)に流通させる外気の温度によって、蓄熱領域H5以外の領域における上階床ボイドスラブ53の温度を変化させることができる。すなわち、蓄熱領域H5以外の領域では、ボイド穴532bに天井空間9内の温度以下の外気を流通させることによって、上階床ボイドスラブ53は、流通する外気と熱交換を行って、上階床ボイドスラブ53のコンクリート躯体温度を低下させる。このとき、レターン空気が、コンクリート躯体温度を低下させた上階床ボイドスラブ53に接触しつつ流通することで、居室空間A1内での室内発熱によって温度上昇したレターン空気が冷却される。
そして、ボイド穴532a及び532b(ボイド穴532)への外気の導入・遮断の制御は、第一シャッタ機構515及び第二シャッタ機構516を開閉することによって行われる。
【0068】
第一シャッタ機構515及び第二シャッタ機構516が開放されると、外気は、自然通風が建物BLの外部を流れることにより発生する第一シャッタ機構515及び第二シャッタ機構516間の圧力差によって、ボイド穴532a及び532b(ボイド穴532)に導入されてこの内部を流通する。そして、第一シャッタ機構515及び第二シャッタ機構516が閉鎖されると、ボイド穴532a及び532b(ボイド穴532)への外気の導入及び導出が遮断される。
さらに、第一シャッタ機構515及び第二シャッタ機構516の開度を調節することによって、ボイド穴532a及び532b(ボイド穴532)を流通する外気の流量を制御し、上階床ボイドスラブ53の温度を適正な温度域に調節することもできる。例えば、適正な温度域として、上階床ボイドスラブ53の温度を、空調機12の空調負荷を増加させない温度域、居室空間A1内での室内発熱によって温度上昇したレターン空気を上階床ボイドスラブ53が冷却することができる温度域、天井空間9内において上階床ボイドスラブ53に有害な結露を発生させない温度域、又は、これらの温度域を組み合わせて得られる温度域に調節することができる。
【0069】
また、第一シャッタ機構515及び第二シャッタ機構516は、例えば、高温期では、夜間早朝(例えば20時〜8時)に開放され、昼間(例えば8時〜20時)は閉鎖される。すなわち、外気温の高い昼間には上階床ボイドスラブ53への蓄熱のみを行って、外気温が低下する夜間に上階床ボイドスラブ53の蓄熱を建物BLの外部に排出する。これにより、上階床ボイドスラブ53の温度を、居室空間A1内で発生する室内発熱で温まったレターン空気の温度より下げることができ、空調機12の冷房負荷が低減される。
【0070】
よって、第一シャッタ機構515及び第二シャッタ機構516の開放は、蓄熱領域H5以外の領域での上階床ボイドスラブ53の温度上昇を防ぐために、外気温が天井空間9内の空気の温度より低くなっている場合に行われる。さらに、第一シャッタ機構515及び第二シャッタ機構516の開放は、上階床ボイドスラブ53に結露が発生することを防止するために、上階床ボイドスラブ53の表面温度が天井空間9内の空気の露点温度より高くなっている場合に行うのが好ましい。
【0071】
従って、建物内排熱システム105では、照明装置16の発生する熱を上階床ボイドスラブ53に吸熱させて一時的に蓄熱し、望ましい外気温条件の時に、ボイド穴532a及び532b(ボイド穴532)に外気を流通させることによって、上階床ボイドスラブ53の蓄熱を建物BLの外部に排出することができる。
【0072】
また、図12を参照すると、天井空間9に吸入されたレターン空気は、開口53d1から第二溝部53c2内に吸入されて第二溝部53c2内を流通し、空調機12及び外調機13(図10参照)に吸入される。
【0073】
また、上階床ボイドスラブ53は、ボイド穴532に外気を流通させることによって冷却され、蓄熱領域H5以外の部位では、室内発熱で温度が上昇したレターン空気よりその温度が低くなっている。
このため、第二溝部53c2を流通するレターン空気は、第二溝部53c2内で上階床ボイドスラブ53と熱交換を行って上階床ボイドスラブ53に吸熱され、その温度を低下させる。そして、レターン空気に第二溝部53c2を流通させることによって、上階床ボイドスラブ53との接触面積が増大しているため、レターン空気と上階床ボイドスラブ53との間で効率の高い熱交換が行われる。
【0074】
また、開口53d1から第二溝部53c2内に吸入される前のレターン空気は、天井空間9を通過するが、第二断熱層502の遮熱作用によって、蓄熱領域H5によって温められることはない。これにより、レターン空気を吸入する空調機12における冷房負荷の増大が防がれる。
よって、レターン空気が、第二溝部53c2で上階床ボイドスラブ53に吸熱されてその温度を低下させて空調機12及び外調機13に吸入されることにより、空調機12における冷房負荷が低減する。
【0075】
また、上階床ボイドスラブ53の上面53aには第一断熱層501が形成されているため、フロアF3(図10参照)の床下空間7を通って居室空間A3に送られる空調空気は、上階床ボイドスラブ53の熱による影響を受けない。同様に、フロアF1(図10参照)の床下空間7を通って居室空間A1に送られる空調空気は、フロアF2(図10参照)の照明装置16の発生する熱を蓄熱した床ボイドスラブ52(図10参照)の熱による影響を受けない。
また、この発明の実施の形態5に係る建物内排熱システム105のその他の動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
このように、実施の形態5における建物内排熱システム105によれば、上記実施の形態1の建物内排熱システム101と同様な効果が得られる。
【0077】
また、建物内排熱システム105は、熱を蓄熱可能な建物BLの上階床ボイドスラブ53と、上階床ボイドスラブ53を通って設けられ、外気が流通可能なボイド穴532とを備え、照明装置16は、照明装置16の発生した熱を上階床ボイドスラブ53に伝達可能に設けられ、ボイド穴532を流通する外気は、上階床ボイドスラブ53と熱交換を行い、照明装置16から伝達されて上階床ボイドスラブ53が蓄熱した熱を吸熱する。
【0078】
これによって、照明装置16が発生した熱は、上階床ボイドスラブ53に伝達されて蓄熱され、上階床ボイドスラブ53は、ボイド穴532に外気が流通することによって、蓄熱を外気に伝達して外気と共に建物BLの外部に排出し、冷却される。このため、外気温が高い場合は、上階床ボイドスラブ53による蓄熱のみを行い、外気温が上階床ボイドスラブ53の冷却に適した温度に低下した場合にのみ、上階床ボイドスラブ53に外気を流通させて冷却することができる。すなわち、上階床ボイドスラブ53の熱容量をバッファとして使用することができるので、外気温の変動に合わせて、上階床ボイドスラブ53の蓄熱を排出することが可能になる。
【0079】
特に、上階床ボイドスラブ53をコンクリート製とすると、コンクリートの単位体積あたりの比熱が、空気の単位体積あたりの比熱の約1500倍であるため、建物BL内の照明装置16の照明発熱を上階床ボイドスラブ53に蓄熱した場合、その温度上昇は非常に少なくなる。その結果として、本実施の形態5のように、空調機12及び外調機13へ戻ってくる居室空間A1での室内発熱による負荷を大幅に削減することができる。また、このコンクリートに蓄熱した熱は、第一シャッタ機構515及び第二シャッタ機構516を開放すると、自然通風により建物BL内を通る外気の流れによって、建物BLの外部に捨てられるため、さらなる別のエネルギーを使用することなく、コンクリートに蓄熱した熱を建物BLの外部に捨てることを可能としている。
【0080】
建物内排熱システム105は、上階床ボイドスラブ53及び照明装置16を連結し、照明装置16の発生する熱を上階床ボイドスラブ53に伝達するヒートパイプ517を備えている。これにより、上階床ボイドスラブ53と照明装置16とが離れて配置されていても、ヒートパイプ517により、照明装置16が発生する熱を上階床ボイドスラブ53に伝達することが可能になる。よって、照明装置16のレイアウトに自由度が生まれ、照明装置16を経済的に配置することができる。
【0081】
また、上階床ボイドスラブ53は、照明装置16から伝達された熱を蓄熱する蓄熱領域H5の下面53bに、蓄熱領域H5の表面からの熱の出入りを防ぐ第二断熱層502を有している。これにより、蓄熱領域H5の熱が、居室空間A1の天井空間9、すなわち居室空間A1に放出されることを抑制することが可能になる。また、蓄熱領域H5の上面53aに、第一断熱層501を有することにより、蓄熱領域H5の熱が、居室空間A3の床下空間7、すなわち居室空間A3に放出されることを抑制することが可能になる。
【0082】
また、実施の形態5において、上階床ボイドスラブ53は、その下面53bに第一溝部53c1及び第二溝部53c2を有していたが、これに限定されるものではなく、平坦になっていてもよい。
また、上階床ボイドスラブ53の第二溝部53c2の表面に鉄板等の熱伝導性の高い部材を設けてもよい。これにより、上階床ボイドスラブ53と、第二溝部53c2内を流れるレターン空気との間における熱伝達効率が向上し、レターン空気の冷却効率を向上させることができる。
【0083】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6に係る建物内排熱システムは、実施の形態5の建物内排熱システム105において、空調機12からの空調空気を、天井空間9を通って天井部材8から居室空間A1に吹き出させ、居室空間A1からのレターン空気を床吸入口66aから床下空間7に吸入して空調機12及び外調機13に吸入させるようにしたものである。
【0084】
図13を参照すると、実施の形態5と同様にして、上階床ボイドスラブ63、天井部材8、床部材6、照明装置16、及びヒートパイプ517が設けられている。
また、上階床ボイドスラブ63は、その下面63bが溝部を有さずに平坦になっている。さらに、上階床ボイドスラブ63は、その上面63aに、蓄熱領域H6の上部を少なくとも覆うようにして第一断熱層601を有し、下面63bに、蓄熱領域H6の下部を少なくとも覆うようにして第二断熱層602を有している。
なお、図示しない床ボイドスラブも、上階床ボイドスラブ63と同様の構成を有している。
【0085】
また、空調機12(図10参照)の空調空気送気ダクト612aが、天井空間9内を通り、天井部材8において居室空間A1に開口している。このため、空調機12からの空調空気は、空調空気送気ダクト612aを通り、空調空気送気ダクト612aから直接、居室空間A1に吹き出される。一方、居室空間A1の室内空気は、レターン空気として、床部材6に形成された複数の床吸入口66aから床下空間7内に吸入され、床下空間7を通って空調機12及び外調機13(図10参照)に吸入される。さらに、外調機13は、吸入したレターン空気を建物BLの外部に排出し、建物BLの外部から吸入する外気を空調機12に送る。よって、居室空間A1では、空調空気が天井から吹き出され、室内空気が床から吸い出されて、室内空調が行われる。
【0086】
また、上階床ボイドスラブ63は、照明装置16が点灯されている場合、照明装置16の発生する熱を吸熱して蓄熱領域H6に蓄熱する。そして、上階床ボイドスラブ63は、ボイド穴632a内の空気と熱交換を行うことによって、蓄熱領域H6の蓄熱をボイド穴632a内の空気に放出する。
【0087】
さらに、居室空間A3の床下空間7において、上階床ボイドスラブ63は、その上面63aで、床下空間7を流通するレターン空気と熱交換を行う。しかしながら、上階床ボイドスラブ63全体に占める蓄熱領域H6の割合は小さい。また、上面63aでは、第一断熱層601によって蓄熱領域H6からの熱の上方への放出が遮断されている。このため、居室空間A3の床下空間7を流通するレターン空気は、上階床ボイドスラブ63の上面63aでは、蓄熱領域H6の熱による影響を受けず、室内発熱により温度上昇したレターン空気よりも低温になっている蓄熱領域H6以外の領域において、上階床ボイドスラブ63により冷却され、その温度を低下させる。同様に、居室空間A1の床下空間7を通るレターン空気も、図示しない床ボイドスラブによって冷却され、その温度を低下させる。
【0088】
また、天井空間9では、第二断熱層602によって蓄熱領域H6からの熱の下方への放出が遮断されているため、天井空間9を通る空調空気送気ダクト612a内の空調空気は、蓄熱領域H6の熱の影響を受けない。
また、この発明の実施の形態6に係る建物内排熱システムのその他の構成及び動作は、実施の形態5と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
このように、実施の形態6における建物内排熱システムによれば、上記実施の形態5の建物内排熱システム105と同様な効果が得られる。
また、実施の形態6における上階床ボイドスラブ63は、その上面63aに、蓄熱領域H6の上部を少なくとも覆うようにして第一断熱層601を有している。このため、上階床ボイドスラブ63の上面63aにおける第一断熱層601以外の領域では、床下空間7内に配置されている図示しないOA機器の配線、ルータ等の発生する熱を、上階床ボイドスラブ63が吸熱することができる。これにより、床下空間7を流通するレターン空気の温度上昇が低減されるため、空調機12の空調負荷を低減することが可能になる。
【0090】
また、実施の形態6における上階床ボイドスラブ63は、その下面63bに、蓄熱領域H6の下部を少なくとも覆うようにして第二断熱層602を有している。このため、本実施の形態6のように天井から空調空気を吹き出す構成を有する、天吊り型の空調機又は吹き出しダクトが、天井部材8に設けられている場合であっても、これらへの蓄熱領域H6の熱の影響を第二断熱層602によって抑えることができる。
また、実施の形態6における上階床ボイドスラブ63は、その下面63bが平坦であったがこれに限定されるものでなく、実施の形態5における上階床ボイドスラブ53と同様にして、下面63bに溝を有していてもよい。
【0091】
実施の形態7.
この発明の実施の形態7に係る建物内排熱システム107は、実施の形態6の建物内排熱システムにおいて、空調機312を居室空間A1の天井部材8に設けるようにしたものである。
図14を参照すると、居室空間A1の天井部材8には空調機312が設けられ、空間B1には外調機13が設けられている。
空調機312及び外調機13は、実施の形態3と同様な構成を有している。なお、本実施の形態7の外調機13には、実施の形態3の内気排気ダクト14の代わりに、実施の形態5と同様にして、建物BLの外部に連通する内気排気ダクト13dが接続されている。
【0092】
よって、空調機312は、居室空間A1の室内空気を吸入及び冷却して居室空間A1に戻す。このとき、外調機13は、床下空間7を介して吸入した居室空間A1のレターン空気と、外気吸入ダクト13cから吸入した外気とを熱交換し、それによって温度を低下させた外気を外調空気として、外調空気送気ダクト313aを介して居室空間A1に吹き出す。さらに、外調機13は、熱交換後のレターン空気を、内気排気ダクト13dを介して建物BLの外部に排出する。
また、この発明の実施の形態7に係る建物内排熱システム107のその他の構成及び動作は、実施の形態6と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
このように、実施の形態7における建物内排熱システム107によれば、上記実施の形態6の建物内排熱システムと同様な効果が得られる。
また、実施の形態7では、居室空間A1に吹き出される外調空気送気ダクト313aの外調空気は、第二断熱層602によって、上階床ボイドスラブ63の蓄熱領域H6の熱の影響を受けないため、空調機312の冷房負荷を低減することができる。
【0094】
実施の形態8.
この発明の実施の形態8に係る建物内排熱システムは、実施の形態6の建物内排熱システムにおいてヒートパイプ517、天井部材8及び天井空間9を設けずに、照明装置816を上階床ボイドスラブ63に直接設けたものである。
図15を参照すると、上階床ボイドスラブ63の下面63bには、照明装置816が直接取り付けられている。
【0095】
さらに、図16を参照すると、上階床ボイドスラブ63に密着して取り付けることのできる、本実施の形態8に好適な照明装置816の構成が示されている。図16では、照明装置816として、LEDライトを使用している。
照明装置816は、上階床ボイドスラブ63の下部に一部を埋め込むようにして取り付けられる取付部816cと、取付部816cの両側に設けられたカバー816dと、取付部816cの両側に配置されてカバー816dの下部に取り付けられている電源部816bと、電源部816bの外側に配置されてカバー816dの下部に取り付けられている発光部816aとを有している。
発光部816aは、下方を照射するように設けられたLED発光素子部816a1と、カバー816dに取り付けられて下部にLED発光素子部816a1が設けられている基盤部816a2とを有している。そして、カバー816dは、LED発光素子部816a1の光が下方を照射するように、発光部816aの外側で下方に突出している。
【0096】
また、カバー816dは、上階床ボイドスラブ63に直接接触しており、少なくとも発光部816a及び電源部816bが取り付けられた部位において、上階床ボイドスラブ63に密着している。そして、電源部816b及び発光部816aの基盤部816a2は、カバー816dを間に挟んで上階床ボイドスラブ63と接触している。なお、カバー816dは、空気より高い熱伝導性を有する金属等によって製作されている。
これにより、照明装置816の点灯中に高温になる発光部816aの基盤部816a2及び電源部816bにおいて、基盤部816a2の熱は、カバー816dを介して上階床ボイドスラブ63に高い効率で伝達され、電源部816bの熱は、カバー816d及び取付部816cを介して、上階床ボイドスラブ63に高い効率で伝達される。
【0097】
よって、図15に戻り、照明装置816の発生する熱は、上階床ボイドスラブ63に直接伝達されて蓄熱領域H8に蓄熱される。そして、上階床ボイドスラブ63は、ボイド穴632a内の空気と熱交換を行うことによって、蓄熱領域H8の蓄熱をボイド穴632a内の空気に放出する。
【0098】
さらに、上階床ボイドスラブ63の上面63aには、蓄熱領域H8の上部を少なくとも覆うようにして第一断熱層801が形成されており、下面63bには、照明装置816の周囲に第二断熱層802が形成されている。なお、第二断熱層802は、蓄熱領域H8の下部を少なくとも覆うようにして形成されている。
なお、図示しない床ボイドスラブも、上階床ボイドスラブ63と同様の構成を有している。
【0099】
また、空調機12(図10参照)から送られた空調空気は、上階床ボイドスラブ63の下面63bに設けられた図示しないダクトから下方に向かって吹き出され、吹き出された空調空気は、レターン空気として床部材6の床吸入口66aから床下空間7内に吸入され、さらに、空調機12及び外調機13(図10参照)に吸入される。
また、居室空間A3の床下空間7を流通するレターン空気は、第一断熱層801によって、蓄熱領域H8の熱による影響を受けない。同様に、居室空間A1の床下空間7を通るレターン空気も、図示しない床ボイドスラブの蓄熱領域H8の熱による影響を受けない。
【0100】
一方、居室空間A1の室内空気は、上階床ボイドスラブ63の下面63bと接触している。そして、居室空間A1の室内空気は、第二断熱層802の遮熱作用によって、上階床ボイドスラブ63の蓄熱領域H8と熱交換を行わずに、蓄熱領域H8以外の部位と熱交換を行うことが可能である。さらに、上階床ボイドスラブ63における蓄熱領域H8以外の領域では、ボイド穴632に外気を流通させることによって、下面63bの表面温度を居室空間A1の室温より低くすることができる。これによって、居室空間A1では、上階床ボイドスラブ63の下面63bとの温度差による熱伝導により室内空気が冷却され、さらに、遠赤外域の電磁波による輻射効果によって、居室空間A1内の人の発熱が奪われて、上階床ボイドスラブ63による冷房効果が発揮される。すなわち、上階床ボイドスラブ63は、輻射冷房効果を有している。
また、この発明の実施の形態8に係る建物内排熱システムのその他の構成及び動作は、実施の形態6と同様であるため、説明を省略する。
【0101】
このように、実施の形態8における建物内排熱システムによれば、上記実施の形態6の建物内排熱システムと同様な効果が得られる。
また、照明装置816を上階床ボイドスラブ63に直接取り付けることによって、ヒートパイプ517が必要でなくなり、照明装置816の設置に要する手間も低減する。よって、コストを低減することが可能になる。
【0102】
また、図17を参照すると、天井に取り付けられる従来の一般的な照明装置826の構成が示されている。図17では、照明装置826として、蛍光灯を使用している。
照明装置826は、取付部826c、支持板826e、電源部826b、蛍光灯826a1、及びカバー826dとを有している。
【0103】
取付部826cは、上階床ボイドスラブ63の下部に一部を埋め込むようにして取り付けられている。
支持板826eは、取付部826cの両側に設けられて、上階床ボイドスラブ63との間に間隙826gを形成している。
電源部826bは、取付部826cの両側に配置されて支持板826eの下部に取り付けられている。
蛍光灯826a1は、電源部826bの外側に配置されて支持板826eの下部に取り付けられている。
カバー826dは、支持板826eの下部に取り付けられて蛍光灯826a1、電源部826b及び取付部826cを下方から覆っている。
また、支持板826eには、蛍光灯826a1と電源部826bとの間となる位置に、開口部826fが形成されている。
【0104】
これにより、照明装置826の点灯中、電源部826bが発生する熱は、支持板826eを介して間隙826gに放熱され、間隙826gを通って照明装置826の外部に排出される、又は、カバー826dの内側に放熱されて開口部826fから間隙826gに排出され、間隙826gを通って照明装置826の外部に排出される。また、蛍光灯826a1が発生する熱は、カバー826dの内側に放熱されて開口部826fから間隙826gに排出され、間隙826gを通って照明装置826の外部に排出される。
このとき、間隙826gでは、間隙826gを通る温度上昇している空気の熱が、上階床ボイドスラブ63と熱交換することによって上階床ボイドスラブ63に伝達し、カバー826dの内部では、電源部826bの熱の一部が取付部826cを介して上階床ボイドスラブ63に伝達する。よって、照明装置826は、照明装置816に比べて効率が低くなるが、点灯中に発生した熱を上階床ボイドスラブ63に伝達させることができる。
従って、一般的な照明装置826を使用した場合であっても、照明装置826が発生する熱を、上階床ボイドスラブ63を介して建物BLの外部に排出することができる。
【0105】
実施の形態9.
この発明の実施の形態9に係る建物内排熱システムは、実施の形態6の建物内排熱システムにおいて、上階床ボイドスラブ63の構成と、上階床ボイドスラブ63及びヒートパイプ517の接続構造を変更したものである。
【0106】
図18を参照すると、上階床スラブ93は、実施の形態6の上階床ボイドスラブ63のボイド穴632の代わりに、下面93bに第一溝部93c1及び第二溝部93c2を複数有している。第一溝部93c1及び第二溝部93c2は、略台形形状の断面を有し、大梁4aと同じ方向に沿って形成されている。
【0107】
また、天井部材8には、照明装置16が取り付けられ、照明装置16の上部にはヒートパイプ517が取り付けられている。さらに、ヒートパイプ517の先端となる放熱部517dには、比熱が大きく熱伝導性の高い蓄熱部材903が取り付けられている。そして、ヒートパイプ517が取り付けられた蓄熱部材903は、第一溝部93c1の下部を覆うようにして、上階床スラブ93の下面93bに取り付けられている。
蓄熱部材903は、例えば、紙面上で横方向に1.0m、奥行き方向に1.0mの略直方体状の形状で形成されている。さらに、蓄熱部材903には、例えば、コンクリートと同様の比熱とコンクリートの約10倍以上の熱伝導率を有するカーボンれんがを使用することができる。
【0108】
また、第一溝部93c1において、蓄熱部材903によって下部が覆われていない部位は、板状の蓋部材93eによって覆われている。よって、第一溝部93c1、蓄熱部材903及び蓋部材93eは、上階床スラブ93の下面93bに沿った通気通路93fを形成している。
さらに、通気通路93fは、実施の形態5のボイド穴532と同様にして、図示しないシャッタ機構を介して建物BLの外部に連通している。
【0109】
これにより、照明装置16の発生する熱は、ヒートパイプ517によって蓄熱部材903に伝達されて蓄熱され、このとき、蓄熱部材903へは高い効率で熱が伝達される。さらに、蓄熱部材903の蓄熱が上階床スラブ93に伝達して蓄熱され、上階床スラブ93の温度が温度上昇領域H9において上昇する。
そして、蓄熱部材903及び温度上昇領域H9の上階床スラブ93は、通気通路93f内の空気と熱交換を行うことによって、その蓄熱を通気通路93f内の空気に放出する。
また、上階床スラブ93の下面93bには、第二断熱層902が形成されている。第二断熱層902は、蓄熱部材903全体を覆い、さらに、上階床スラブ93の下面93bでは、蓄熱部材903の周囲において、温度上昇領域H9の下部を少なくとも覆うようにして設けられている。また、上階床スラブ93の上面93aには、温度上昇領域H9の上部を少なくとも覆うようにして、第一断熱層901が形成されている。
なお、図示しない床スラブも、上階床スラブ93と同様の構成を有している。
【0110】
上述より、蓄熱部材903及び上階床スラブ93の蓄熱は、通気通路93fに外気を流通させて外気と蓄熱部材903及び上階床スラブ93とを熱交換させることにより、外気と共に建物BLの外部に排出することができる。
また、居室空間A3の床下空間7を通るレターン空気は、第一断熱層901の遮熱作用によって、温度上昇領域H9の熱による影響を受けない。同様に、居室空間A1の床下空間7を通るレターン空気も、図示しない床スラブの温度上昇領域H9の熱による影響を受けない。
さらに、天井空間9を通る空調空気送気ダクト612aの空調空気は、第二断熱層902の遮熱作用によって、蓄熱部材903の熱及び上階床スラブ93の温度上昇領域H9の熱による影響を受けない。
【0111】
また、この発明の実施の形態9に係る建物内排熱システムのその他の構成及び動作は、実施の形態6と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態9における建物内排熱システムによれば、上記実施の形態6の建物内排熱システムと同様な効果が得られる。
また、建物の床スラブは、一般的に、波形の断面形状を有するデッキプレートを底型枠に使用して、コンクリートを打設することによって製作される。このため、上階床スラブ93の第一溝部93c1及び第二溝部93c2には、デッキプレートによって形成された溝を利用することができる。よって、上階床スラブ93は、その製作を容易にすることができる上、実施の形態5の上階床ボイドスラブ53に比べて重量を軽減することができるため、コストの低減が可能になる。
【0112】
実施の形態10.
この発明の実施の形態10に係る建物内排熱システムは、実施の形態8の建物内排熱システムにおいて上階床ボイドスラブ63の外部に外気が流通するようにしたものである。
なお、本実施の形態10では、ビルではなくマンション及び住宅等の住居に建物内排熱システムを適用した場合の例を説明する。
【0113】
図19を参照すると、上階床スラブ113は、ボイド穴を有した中空構造ではなく中実構造になっており、平坦な上面113a及び下面113bを有している。さらに、上階床スラブ113の下面113bには、照明装置816が直接取り付けられている。また、上階床スラブ113の上面113aには、その全体にわたって断熱層1101が形成されている。そして、上階床スラブ113の上面113aが、居室空間A1の上方の居室空間A3における床面を形成している。
【0114】
照明装置816が点灯されている場合、照明装置816の発生する熱は、上階床スラブ113に直接伝達して吸熱・蓄熱される。よって、照明装置816が点灯されている間において、照明装置816の発生する熱が上階床スラブ113によって吸熱されることにより、居室空間A1の室内空気の温度上昇が抑えられる。これにより、空調機の冷房負荷が低減される。
また、上階床スラブ113の蓄熱は、断熱層1101の遮熱作用によって、上方の居室空間A3の室内空気に影響を与えない。
【0115】
さらに、上階床スラブ113はその蓄熱を居室空間A1に自然放熱する。そして、人が居室空間A1に居ない時間は、居室空間A1の空調機を使用せず、図示しない窓を開放することによる自然換気や換気扇等を使用した強制換気を行い、居室空間A1の室内空気を建物の外部に排出することにより、自然放熱された熱が建物の外部に排出される。これにより、上階床スラブ113の温度及び居室空間A1の室温を低下させることができる。
上述より、照明装置816の発生する熱は、人が居室空間A1内に居る間、上階床スラブ113によって吸熱されて蓄熱され、人が居室空間A1内に居ない間、上階床スラブ113から自然放熱される蓄熱が居室空間A1の室内空気と共に外部に排出されることが可能である。そして、居室空間A1が空気経路を構成している。
なお、実施の形態10では、上階床スラブ113を中実構造としていたが、これに限定されるものでなく、ボイドスラブであってもよい。
【0116】
また、実施の形態1〜10において、照明装置16、416、816及び826の発生する熱を建物BLの外部に排出していたが、これに限定されるものでない。OA機器、天井空調装置、換気扇のモータ等にヒートパイプ17,517を連結し、ヒートパイプ17,517を内気排気ダクト14,214、上階床のスラブ、又は床のスラブに連結するようにしてもよい。
また、実施の形態1、3、5、6、7及び9において、照明装置16の発生する熱を伝達する手段としてヒートパイプ17,517を使用していたが、これに限定されるものでなく、金属製部材であってもよい。
【0117】
また、実施の形態5〜10において、照明装置16、816及び826の発生する熱を吸熱・蓄熱するスラブの材料としてコンクリートを使用していたが、これに限定されるものではなく、相転移蓄熱体等の材料を使用してもよい。
また、実施の形態5〜10において、照明装置16、816及び826の発生する熱を、上階床のスラブに吸熱・蓄熱させていたが、これに限定されるものでなく、床のスラブ又は壁に吸熱・蓄熱させてもよい。
【0118】
また、実施の形態5〜8では、上階床ボイドスラブ53,63の全てのボイド穴532,632に対して外気の導入及び遮断を同時に行っていたが、これに限定されるものでない。例えば、上階床ボイドスラブ53において、蓄熱領域H5に含まれるボイド穴532aへの外気の導入及び遮断と、蓄熱領域H5に含まれないボイド穴532bへの外気の導入及び遮断とを別個に制御し、外気温に応じて、ボイド穴532a及びボイド穴532bへの外気の導入を制御してもよい。
また、実施の形態5〜10において、断熱層501、502、601、602、801、802、901、902及び1101を形成する材料として天然素材系のフエルト等を使用していたが、これに限定されるものでなく、発泡スチロール、硬質ウレタン等の発泡プラスチック系の材料、又は、グラスウール、ロックウール等の無機繊維系の材料であってもよい。又は、断熱層501、502、601、602、801、802、901、902及び1101は、遮熱塗料を塗布することによって形成してもよい。
また、実施の形態1、2、4〜6、8及び9において、空調機12と外調機13とは別体としていたが、これに限定されるものでなく、一体型のものであってもよい。
【符号の説明】
【0119】
14,214,414 内気排気ダクト(空気経路,ダクト)、16,416,816,826 照明装置(発熱機器)、17,517 ヒートパイプ(熱伝達手段)、53,63 上階床ボイドスラブ(蓄熱躯体)、93,113 上階床スラブ(蓄熱躯体)、93f 通気通路(空気経路)、532,632 ボイド穴(空気経路)、501,601,801,901 第一断熱層、502,602,802,902 第二断熱層、1101 断熱層、A1 居室空間(空気経路)、BL 建物、101,103,105,107 建物内排熱システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設けられて前記建物の外部に連通し、空気が前記建物の外部に向かって流通可能な空気経路と、
熱を発生し、発生した熱を前記空気経路の空気に伝達可能に前記建物の内部に設けられる発熱機器と
を備える建物内排熱システム。
【請求項2】
熱を蓄熱可能な前記建物の蓄熱躯体と、
前記蓄熱躯体を通って設けられ、外気が流通可能な前記空気経路と
を備え、
前記発熱機器は、前記発熱機器の発生した熱を前記蓄熱躯体に伝達可能に設けられ、
前記空気経路を流通する外気は、前記蓄熱躯体と熱交換を行い、前記発熱機器から伝達されて前記蓄熱体が蓄熱した熱を吸熱する
請求項1に記載の建物内排熱システム。
【請求項3】
前記蓄熱躯体及び前記発熱機器を連結し、前記発熱機器の発生する熱を前記蓄熱躯体に伝達する熱伝達手段を備える
請求項2に記載の建物内排熱システム。
【請求項4】
前記発熱機器は、前記蓄熱躯体に直接取り付けられる
請求項2に記載の建物内排熱システム。
【請求項5】
前記蓄熱躯体は、前記発熱機器から伝達された熱を蓄熱する領域の表面に、前記領域の表面からの熱の出入りを防ぐ断熱層を有する
請求項2〜4のいずれか一項に記載の建物内排熱システム。
【請求項6】
前記空気経路を形成し、前記建物の内部の空気を前記建物の外部に排出するダクトを備え、
前記発熱機器は、前記発熱機器の発生した熱を前記ダクトの内部に伝達可能に設けられる
請求項1に記載の建物内排熱システム。
【請求項7】
前記ダクト及び前記発熱機器を連結し、前記発熱機器の発生する熱を前記ダクト内に伝達する熱伝達手段を備える
請求項6に記載の建物内排熱システム。
【請求項8】
前記発熱機器は、前記ダクトに直接取り付けられる
請求項6に記載の建物内排熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−220566(P2011−220566A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88017(P2010−88017)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(301042686)株式会社三菱地所設計 (24)
【Fターム(参考)】