説明

建物

【課題】外壁部の開口部窓ガラスにおける、ペリメータゾーンへの日射量を低減できながらしかも太陽光エネルギーを有効利用できるようにする。
【解決手段】外壁部1に設ける窓ガラス2を、その外面が斜め下方に向くように下部を室内側に引退させて外壁部1に凹部3を形成し、凹部3における窓ガラス2の下方に太陽電池パネル4を外壁部1から遠ざかる側に斜め上方を向く様に傾斜姿勢で取り付ける。さらに窓ガラス2はLowーEガラスにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁部には、一般的に窓ガラスを鉛直面に沿わせて設置する。
しかし、建物の室内で外壁部近くのペリメータゾーンは、窓ガラスを通して侵入する日射の影響で熱負荷が大きく、空調用エネルギーが多く必要となる。
そこで、窓ガラスの上部を室外側に突出させて下向きに傾斜させることによって、窓ガラスによる太陽光の反射率を高めて、室内への入射熱を低減することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−15990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の建物では、ペリメータゾーンに対する日射量を低減して空調エネルギーの消費を抑える事ができるものの、太陽光エネルギーの有効利用は考えられていなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、ペリメータゾーンへの日射量を低減しながらしかも太陽光エネルギーを有効利用できるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、外壁部に設ける窓ガラスを、その外面が斜め下方に向くように下部を室内側に引退させて前記外壁部に凹部を形成し、前記凹部における前記窓ガラスの下方に、太陽電池パネルを前記外壁部から遠ざかる側に斜め上方を向くように傾斜姿勢で取付けてあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、外壁部に設ける窓ガラスを、その外面が斜め下方に向くように下部を室内側に引退させて外壁部に凹部を形成することにより、窓ガラスを通して太陽光がペリメータゾーンに侵入するのを低減できるばかりか、斜め下方に向いた窓ガラスに斜め上方から照射する太陽光は、窓ガラス表面での反射量が多くなり、そのために室内への窓ガラスを通しての太陽光の侵入は低減される。
また、前記凹部における前記窓ガラスの下方に、太陽電池パネルを設置してあることにより、外壁部における窓ガラスの下方に設置した太陽電池パネルで太陽光を直接受止めて電気エネルギーとして確保でき、その上、窓ガラスの表面で反射した太陽光をも下方の太陽電池パネルで受止めて、電気エネルギーとして確保できるようになる。
その上、太陽電池パネルを前記外壁部から遠ざかる側に斜め上方を向くように傾斜姿勢で取付けてあるために、傾斜姿勢の太陽電池パネルに直接照射される太陽光を効率よく受けることができ、発電効率を上げることができるばかりか、前記凹部の深さが一定の場合には、例えば図8(b)に示すように、水平に設置するのに比べて、傾斜姿勢のほうが図8(a)に示すように、前後幅Wを大きくして受光表面積を大きく取れ、発電量もより多くできる。
しかも、前記外壁部に取り付けた傾斜姿勢の太陽電池パネルには、雨が溜まることなくスムーズに流下し、そのために、防水性がよく埃が溜まりにくく発電能力の低下を防止できる。
従って、ペリメータゾーンへの日射量を抑えながら、窓ガラスで受けた太陽光エネルギーをも電気エネルギーとして確保して空調等のエネルギーに利用でき、経済性を向上できる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は前記窓ガラスはLow−Eガラスであることにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、Low−Eガラスでできた窓ガラスは、普通ガラスよりも光反射率が高く、室内へ侵入する熱エネルギー量を抑えて、より省エネルギー空調ができるだけでなく、下方の太陽電池パネルへの反射光の供給量も増加させて発電量を上げることができるようになる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記窓ガラスと前記太陽電池パネルとの組み合わせを、複数階に亘って設けてあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、多層階の建物の場合、特に建物全体の高い省エネルギー化が図れ、経済的になる。その上、建物全体として、彫りの深いリズム感のある外観を期待でき、意匠性に富んだものにできる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記窓ガラスの表面に沿って下方から昇降操作自在なブラインドを設けてあるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、例え軒や庇があったとしても、特に窓ガラスの下側部分から侵入しやすい太陽光を、下方から昇降操作自在なブラインドにより遮光でき、ペリメータゾーンへの熱エネルギーの侵入を抑制できる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記ブラインドの外表面を、光反射面に形成してあるところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、ブラインドによる遮光効果を上げることができると共に、ブラインドの外表面での光反射面で反射された太陽光を、より効率よく太陽電池パネルに導いて発電量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】多層階の建物の外壁部の一部を示す斜視図及び要部拡大断面図である。
【図2】建物の要部縦断面図である。
【図3】各種建物の年間熱取得率の棒グラフである。
【図4】Low−Eガラスに対する光の入射角に基づく透過率と反射率の関係を示すグラフである。
【図5】別実施例の要部縦断面図である。
【図6】従来例の建物の縦断面図である。
【図7】従来例の建物の縦断面図である。
【図8】太陽電池パネルの設置姿勢の比較概略図で、(a)は傾斜姿勢を示し、(b)は水平姿勢を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、外壁部1の開口部を閉塞する窓ガラス2を、その外面が斜め下方に向くように下部を室内側に引退させて外壁部1に凹部3を形成し、その凹部3を各階ごとに形成して凹凸のある多層階の建物を構成してある。
【0018】
前記外壁部1に形成した凹部3は、図2に示すように、窓ガラス2の下方の上向き外壁部分に、太陽電池パネル4を設置してある。その太陽電池パネル4は、例えば、南向きに設置する場合には、太陽光エネルギーを直接受光する上で日本において通年で発電効率の高い20〜40度(望ましくは30度)の角度(水平面に対して)に傾斜させて固定してある。
また、窓ガラス2は、日本の緯度における地理的な略中心部を基準にして、夏至の日射角度約78度と平行な角度に下向きに傾斜させて固定してある。
尚、地域差及び意匠上の要因を鑑みて、窓ガラスの傾斜角度は、73度〜83度の範囲(78度±5度)が適切と考えられる。
従って、夏期は、太陽光が室内に侵入するのを防ぎ、それ以外の時期においても、ガラス面に入射する太陽光は、そのガラス面での反射率が高く室内への侵入量を低減でき、特に夏期の室内におけるペリメータの温度上昇を抑えることができる。
しかも、窓ガラス2で反射した太陽光は、下方の太陽電池パネル4に照射され、太陽電池パネル4における発電量は増加する。
【0019】
前記窓ガラス2は、Low−Eガラスを使用してあり、室内へ侵入する熱エネルギー量を抑えて、より省エネルギー空調ができるようにしてある。
【0020】
外壁部1における窓ガラス2の外側下部には、窓ガラス2に沿ってその外側で下方から昇降操作自在なブラインド5を設けてある。このブラインド5により、室内に対する遮光性を上げられるようにして、特に窓ガラス2の下側部分より室内に侵入しやすい太陽光を抑えられるようにすると共に、窓ガラス2上側部分においては、室内から室外の景色を見るのを阻害しにくくしてある。しかも、ブラインド5は、窓ガラス2の外側に設けてあることによって、太陽光をブラインド5が直接受けて遮光するだけでなく、太陽光エネルギーを受けてブラインド5の温度が上昇しても、室内への熱エネルギーの侵入を室外で食い止めてくれる。
【0021】
なお、前記ブラインド5は、メッシュシート又は、アルミ製のすだれ状の形状のものを使用する。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施形態と、窓ガラス2を鉛直状態に取付けた一般的な建物で庇のない建物(図6)や、庇を設けた建物(図7)などとの年間熱取得率を測定して図3のグラフに示した。
尚、グラフ中のAは、図6の構造の建物の場合で、Bは、図7の建物の場合を示し、Cが本発明の実施形態の場合の室内への年間熱取得率を示す。尚、Aを100%とした比較データにして示してある。
このデータから、本発明の実施形態(C)の場合は、単に庇を設けた建物(B)よりも更に室内への熱の侵入率が低下(80%以下)していることが明確である。
【0023】
図4には、Low−Eガラスを使用した窓ガラス2に対する太陽光の入射角に基づいた反射率と透過率とをグラフに示したもので、例えば図4のグラフより、前記A、Bの建物の場合(窓ガラス2を鉛直に沿った姿勢で取付け)、太陽光が60度の入射角で照射すると反射率は約30%より少し少なく透過率は約40%であるのに対し、本発明のCの場合(窓ガラス2を地面に対して78度で設置)、太陽光は窓ガラス2に72度で入射することになり、この時反射率は約40%で、透過率は30%より少ない値になる。つまり、本発明の建物において室内への太陽光の透過率が減少することが明確である。
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0024】
〈1〉 図5に示すように、外壁部1に形成した凹部3の上半部に窓ガラス2を設け、その外面が斜め下方に向くように下部を室内側に引退させて設置し、凹部3の下半部で窓ガラス2の下方に室外の斜め上方に向く腰壁部6を形成し、その腰壁部6に太陽電池パネル4を設置して、窓ガラス2と腰壁部6とで外壁部1を形成してあってもよい。
〈2〉 前記凹部3を形成する外壁部1は、複数階の建物の一部の階のみに設けてあっても良く、また、複数階の建物に設ける以外に、平屋建ての建物に設ける場合であってもよい。
〈3〉 前記ブラインド5は、前述のように窓ガラス2の下側部分を優先的に遮光するように設けると共に、そのブラインド5の外表面を光反射面に形成して反射率を高めるようにすれば、下方の太陽電池パネル4に反射により集光する光量が増え、発電効率が向上する。
〈4〉 窓ガラス2の遮光だけを考えると、前記ブラインド5は、窓ガラス2の内側に配置したり、上から下に昇降する一般的な取付け方をしてあってもよい。
〈5〉 前記窓ガラス2の下方に設ける太陽電池パネル4は、窓ガラス2からの反射光を優先的に受けるようにするならば、その設置角度は、30度に設置する以外に、水平に設けたりして、窓ガラス2による反射光の受光効率を向上できるようにしてもよい。
【0025】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 外壁部
2 窓ガラス
3 凹部
4 太陽電池パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁部に設ける窓ガラスを、その外面が斜め下方に向くように下部を室内側に引退させて前記外壁部に凹部を形成し、前記凹部における前記窓ガラスの下方に、太陽電池パネルを前記外壁部から遠ざかる側に斜め上方を向くように傾斜姿勢で取付けてある建物。
【請求項2】
前記窓ガラスはLow−Eガラスである請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記窓ガラスと前記太陽電池パネルとの組み合わせを、複数階に亘って設けてある請求項1または2に記載の建物。
【請求項4】
前記窓ガラスの表面に沿って下方から昇降操作自在なブラインドを設けてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の建物。
【請求項5】
前記ブラインドの外表面を、光反射面に形成してある請求項4に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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