建築、土木用のプライマー塗布用刷毛
【課題】1回の塗布で目地の全内側面を同時に、塗布長さを長く、かつ塗布ムラがなく均一に綺麗に塗布できる、建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を提供する。
【解決手段】毛束部1と柄部2とからなる建築、土木用のプライマー塗布用刷毛であり、毛束部は心材部分3と毛の集合体部分4とから構成され、この毛束部が、該心材部分に略垂直に、かつ該心材部分の両側に対向するように設けた毛を少なくとも有している。
【解決手段】毛束部1と柄部2とからなる建築、土木用のプライマー塗布用刷毛であり、毛束部は心材部分3と毛の集合体部分4とから構成され、この毛束部が、該心材部分に略垂直に、かつ該心材部分の両側に対向するように設けた毛を少なくとも有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築、土木分野における構造物などのシーリングのため、シーリング材を施工する前に目地の両側の被塗布面にプライマーを1回で塗布ムラがなく綺麗に塗布できる刷毛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モルタルやコンクリート等の湿式の材料又は窯業系や金属系のサイディング、ALC板等の乾式の材料などから形成された、建築物の外壁やサッシ周り或いは土木構築物等において、板や部材の接合部分などには目地が生じ、この目地は1物件につき合計してかなりの長さになる。この目地に対しては、雨水等が内部に侵入するのを防ぐ目的で、ポリウレタン樹脂、変性シリコーン樹脂、ポリサルファイド樹脂或いはシリコーン樹脂などからなるシーリング材を充填施工し硬化させて防水をする必要がある。
この目地を形成しているモルタルやサイディングの被着面に対するシーリング材の接着性を向上させる目的で、シーリング材の施工に先立って、例えば図11及び図12に示すように、毛束部分51と木製の柄52からなる刷毛を用い、目地41の両側の被塗布面43aと43bに対してプライマー溶液を片側(一面)ずつ塗布して目地処理をする作業が一般的に行なわれている。
【0003】
しかし、前記の従来の刷毛は、図11に示すように毛束部51の毛の集合体部分54の毛が木製の柄部52の端に取り付けた心材部分53に、柄部の長手方向と平行の一方向に植え込まれている構造のため、これを用いて目地41の被塗布面にプライマー処理をする場合、図12に示すように、片側の被塗布面43aに先ずプライマーを塗布してから、もう一方の側の被塗布面43bに塗布しなければならず、合計2回の塗布作業を必要とし、プライマー塗布作業に非常に多くの手間と時間を費やしてしまうという問題があった。また、毛束部の毛が被塗布面に対し斜めに接触するため、プライマー溶液の被塗布面に対する供給が速やかに行われないためカスレが生じる問題もあった。
さらに、この刷毛を用いて両側の被塗布面に一度でプライマー処理をしようとしたとき、目地に対する刷毛の方向が図13に示すようになり、毛の集合体部分54が両側の被塗布面に同時に接触せず、塗布されない面が発生する。また同時に接触したとしても毛の方向が被塗布面に平行に接触し、プライマー溶液の供給が速やかに、かつ十分になされないため、塗布した面がカスレて塗布ムラを生じ、プライマーが均一に綺麗に塗布できず、その結果、シーリング材の充填、硬化後、接着不良を生じ剥離事故等の不具合を起こしてしまう問題もあり、これらの問題の解決が求められていた。
また、毛束部の幅方向の両側面又は一側面を上方から下方にかけて穂先がくさび型となるようにカットされた刷毛も提案されているが(特許文献1参照。)、この刷毛は、目地の隅は塗りやすいが、相変わらず目地の両側面を片側ずつ塗布しなければならないという欠点を有している。
【特許文献1】特開平08−24762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、1回の塗布で目地の全内側面を同時に、塗布長さを長く、かつ塗布ムラがなく均一に綺麗に塗布できる、建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、プライマー塗布用の刷毛の毛束部の毛が目地の両側の被塗布面に同時に接触する構造とすることにより上記問題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、次の(1)〜(15)である。
【0006】
(1) 毛束部と柄部とからなる建築、土木用のプライマー塗布用刷毛において、該毛束部が心材部分と毛の集合体部分とから構成され、該毛束部が、該心材部分に略垂直に、かつ該心材部分の両側に対向するように設けた毛を少なくとも有すること、を特徴とする前記刷毛。
【0007】
(2) 前記毛束部が、目地の両側の被塗布面に略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有する、前記(1)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0008】
(3) 前記毛束部が、多数の毛を前記心材部分の周囲に放射状となるように設けて形成されている、前記(1)又は(2)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0009】
(4) 前記毛束部が、板状の前記心材部分の両側面に略垂直に、かつ対向して毛を設けて形成されている、前記(1)又は(2)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0010】
(5) 前記毛の集合体部分が変形性と復元性とを有する、前記(1)〜(4)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0011】
(6) 前記毛の集合体部分の外部形状が、略球形状、略円柱状又は略角柱状である、前記(1)〜(5)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0012】
(7) 前記心材部分が弾力性、或いは弾力性と塑性変形性とを有する、前記(1)〜(6)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0013】
(8) 前記心材部分が、金属製材料からなる、前記(7)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0014】
(9) 前記心材部分が、金属製の撚り線からなる、前記(7)又は(8)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0015】
(10) 前記毛束部が、金属製の撚り線からなる前記心材部分に、多数の毛を放射状に撚り込んで形成されている、前記(1)、(2)、(3)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0016】
(11) 前記心材部分が、金属製の板状物からなる、前記(7)又は(8)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0017】
(12) 前記毛束部が、表面側に毛を植毛した基布の裏面を板状の前記心材部分の両側面に対向するように接着して形成されている、前記(1)、(2)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(11)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0018】
(13) 前記心材部分と前記柄部とが金属製の撚り線で一体的に形成されている、前記(1)、(2)、(3)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0019】
(14) 前記心材部分と前記柄部とが金属製の板状物で一体的に形成されている、前記(1)、(2)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(11)、(12)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0020】
(15) 前記心材部分と前記柄部とが異なる材質で形成されている、前記(1)〜(12)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプライマー塗布用刷毛は、毛束部と柄部より構成され、さらにこの毛束部は心材部分と、この心材部分に多数の毛を植えて、その毛先を揃えた毛の集合体部分とから構成されている。そして、この毛束部はこの心材部分に略垂直に、かつこの心材部分の両側に対向するように心材部分に設けた毛を少なくとも有する構造をしていることにより、このプライマー塗布用刷毛を用いて、プライマーを目地に塗布したとき、毛束部が、目地の両側の被塗布面に略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有することとなり、毛束部の毛の集合体部分に含浸させたプライマー溶液が十分な量で速やかに両側の被塗布面に同時に供給され、1回の塗布作業で、プライマー溶液を目地の両側の被塗布面に同時に均一にムラがなく綺麗に、かつ塗布長さを長く塗布することが初めて可能となった。
なお、本発明において、略垂直とは少し斜めであっても垂直とみなしても、また、略同時とは極めて短時間の時間差はあっても同時とみなしても、本発明の効果を得る上でそれぞれ差し支えのないことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は本発明の第1実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の正面図であり、図2は図1の刷毛を左側から見た側面図であり、図3は図1の刷毛のA−A線断面を模式的に表した図である。図4は図1の刷毛の毛束部の毛の撚り込み構造を示す図である。図5は図1の刷毛の毛の集合体部分の外部形状を変えたものである。なお、図1、図2及び図5において毛の集合体部分の毛を一部簡略化し、そして心材部分の見えない部分を破線で表している。
【0023】
図1に示す本発明の第1実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛は、毛束部1と柄2とから構成され、さらにこの毛束部1は、心材部分3と毛の集合体部分4とから構成された基本構成である。ここにおいて、柄部2と心材部分3は金属製の撚り線で一体的に形成されている。
金属製の撚り線は、具体的には2本のメッキ処理した鉄製の針金が撚り合わされたものであり、2本の針金を撚り合わせて心材部分3を形成する際に、多数の毛を撚り込んで、毛先を揃えて設けて(植え込んで)毛の集合体部分4を形成し、毛束部1を形成している(図3及び図4参照)。ここにおいて金属製の撚り線は2本以上の針金を用いてもよく、また、針金は、アルミニウム、ステンレス、銅などの他の金属材料であってもよい。
そして、毛束部1の毛の集合体部分4は、密集した多数の毛が(外部に向かって)放射状となるように植え込まれている。
したがって、毛束部1は、心材部分3の長手方向に対して略垂直に、かつ心材部分3の両側に対向するように設けた毛を少なくとも有している。
【0024】
そして、図10は建築物などの外壁部材(例えばサイディング部材)42aと42bとを、ハットジョイナー44を間に挟み対向して配して形成された目地41に、図1の刷毛を用いてプライマーを塗布するために、毛束部1を目地に挿入したときの目地部分を断面図として、刷毛を正面図として表した図である。なお、ハットジョイナー44の目地底となる面には、予め後述するような離型処理がなされている。この図10に示すように、毛束部1は前記の構造を有し、かつ目地41の両側の被塗布面43aと43bに略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有するような大きさ(毛の長さ)で形成されているため、毛の集合体部分4に含浸させたプライマー溶液が速やかに毛先に移動し、十分な量で両側の被塗布面43aと43bに同時に供給され、1回の塗布作業で、両側の被塗布面43aと43bに同時にプライマー溶液を均一にムラなく、かつ長く塗布することが可能となり、プライマー処理にかかる作業時間を大幅に短縮することができるのである。
【0025】
さらに、毛の集合体部分4は、プライマー溶液に毛束部1を浸したとき十分な量のプライマー溶液を含浸できるように、そして毛束部1を目地41に挿入したとき圧縮されて楽に入り、目地41の形状に沿うように変形し、プライマー溶液を両側の被塗布面に速やかに供給することができ、また目地から出したとき、毛の集合体部分が元の形に速やかに戻り、再び毛束部をプライマー溶液に浸したとき、十分な量のプライマー溶液を含浸させることができるように、毛の集合体部分4は密集した多数の毛で構成され、変形性と復元性に富んでいることが好ましい。
【0026】
なお、毛の集合体部分4の外部形状は略球形状であるが、図5の毛の集合体部分14に示すように、略円柱状でもよい。ここにおいて略球形状とは、球形状、フットボール状、繭玉状、いびつな球形状などあるが、おおよそ球形状とみなしても差し支えない形を意味し、また、略円柱状とは、長さの長い円柱状、短い円柱状、葉巻状などあるが、おおよそ円柱状とみなしても差し支えない形を意味する。
また、この心材部分3は金属製の撚り線で形成されていることにより、弾力性と塑性変形性を有しており、目地41に毛束部1を挿入して刷毛を引いたとき撓うため、目地に沿って引きやすく作業性に優れている。さらに心材部分3の柄部2との境界部分に力を加えて自在に折り曲げることができ、離れたところにある目地41にも毛束部1を挿入しやすくすることができ作業性に優れている。必要のないときには形状を元に戻すことも容易にできる。
なお、柄部2の毛束部1に対して反対側の端部には、刷毛をフック等に引っ掛けて保持できるような係止環5をつけておくこともできる。
【0027】
図6は、本発明の第2実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の斜視図である。
図7は、図6の刷毛のB−B断面図を模式的に表した図である。図8は、図6の刷毛の毛束部と柄部の一部を示す斜視図である。
【0028】
図6に示す本発明の第2実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛は、毛束部21と金属製の横長の板状物(平板)で形成された柄部22とから構成され、さらにこの毛束部21は、金属製の板状物(平板)の柄部22と一体的に形成された、金属製の板状物の心材部分23と毛の集合体部分24とから構成された基本構成である。ここにおいて、毛の集合体部分24は、心材部分23の平板の面積の大きな方の対向する両面とその先端部分を囲むように、心材部分23に多数の毛が植毛されて形成されている。
毛束部21は、前記第1実施例におけるのと同様に、心材部分23に略垂直に、かつ心材部分23の両側に対向するように心材部分に設けた毛を少なくとも有していることにより(図6及び図7参照)、図10に示す目地41に毛束部21を挿入したとき、目地41の両側の被塗装面43aと43bに略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有していることとなる。かつ毛束部21は、両側の被塗布面43aと43bに略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有するような大きさ(毛の長さ)である。そのため、第1実施例と同様に、1回の塗布作業で、目地41の両側の被塗布面43aと43bに同時にプライマー溶液を均一にムラなく、かつ長く塗布することができる効果を発揮する。
なお、毛の集合体部分24の外部形状は、平板状、サイコロ状、四角柱状等の略角柱状である。
また、前記第1実施例と同様の効果を発揮するように、毛の集合体部分24は密集した多数の毛で構成され、変形性と復元性に富んでいることが好ましい。
また、心材部分23は金属製の平板で形成され、弾力性と塑性変形性を有しているため、前記第1実施例と同様の効果を発揮することができる。
前記金属製の板状物の金属材料としては、鉄、ステンレス、アルミニウムあるいはこれらをメッキ処理や塗装処理したものなど挙げられるが、これら以外に、弾力性を有している材料も使用でき、木質材料、竹質材料等の植物材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂材料などが挙げられる。
また、心材部分23に多数の毛を植毛する方法は、図8に示すように、表面側に多数の毛を密集して植毛した基布26の裏面を心材部分23の面積の大きな方の対向する両表面とその先端面に接着剤27を用いて接着することにより形成するのが好ましいが、その他、心材部分23に穴を開けて毛を直接植え込む方法、毛を接着剤で直接接着する方法などが挙げられる。
なお、柄部22の毛束部21に対して反対側の端部には、刷毛をフック等に引っ掛けて保持できるような係止穴25を設けておくこともできる。
【0029】
図9は、本発明の第3実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の斜視図であり、柄部と心材部分が異なる材質で形成されている例である。
図9に示す本発明の第3実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛は、前記第1実施例の刷毛において、柄部2を木製の丸棒の柄部32に変えた場合であり、毛束部1の構造は前記第1実施例におけるものと同じである。
毛束部1は、柄部32の一方の端に、心材部分3の毛が植え込まれていない端を直接差し込むことにより連結されている。この連結方法としては、他の金属製金具などを介して連結してもよい。
なお第3実施例においては、柄部32の形状を丸棒で示したが、角棒や平板状などであってもよい。
また、柄部32の材質は、木製の他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製であってもよい。
なお、柄部32の毛束部1に対して反対側の端部には、刷毛をフック等に引っ掛けて保持できるような係止穴35を設けておくとこもできる。
【0030】
また、前記実施例1〜3において、多数の毛の集合体部分4、14あるいは24を形成する毛の材料としてはどのようなものであってもよいが、例えば、牛毛、馬毛、豚毛、羊毛、山羊毛、猪毛などの獣毛、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維、木繊維、竹繊維、椰子の実繊維等の植物繊維など各種挙げられる。
これらは単独または2種以上組み合わせて使用できるが、これらのうち毛の集合体部分の弾力性が良く、プライマー溶液の保持性と排出性のバランスのよい点で獣毛または合成繊維が好ましく、さらに羊毛、山羊毛、豚毛、ポリエステル繊維、アクリル繊維が好ましい。
【0031】
次に本発明の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を用いるプライマーの塗布方法について図10を用いて説明するが、これに限定されるものではない。
図10は前記したように、第1実施例の刷毛を用いて、建築物などの外壁部材(例えばサイディング部材)42aと42bとを、ハットジョイナー44を間に挟み対向して配して形成された目地41に、プライマーを塗布する方法を説明する図であり、毛束部1を目地に挿入したときの目地部分を断面図として、刷毛を正面図として表した図である。また、ハットジョイナー44の目地底となる面には、プライマーが塗布されシーリング材を充填施工したとき三面接着となってしまうのを防止するため、テープ状等のボンドブレーカーを貼付したり、または離型塗料を塗布したりして、予め離型処理がなされている。
なお、ここにおいて実際は柄部2を手に持って塗布作業するのであるが、手を省略して示している。
まず、第1実施例の刷毛の毛束部1をプライマー溶液に漬けて、毛の集合体部分4にプライマー溶液を含浸させ、次いで毛束部1を目地41に挿入すると、毛束部1の毛が、目地41の両側の被塗布面43aと43bに略同時に、略垂直に接触するため、目地に沿って、目地内で刷毛を移動させると、両側の被塗布面43aと43bに同時にプライマーを塗布することができる。
つまり、1回の刷毛の(塗布)操作で、目地内の両側の被塗布面を一度で完全に(ムラがなく綺麗に)塗布することができるため、プライマー塗布にかかる作業時間を大幅に短縮することができることとなる。
次いで、所定の時間放置した後、このプライマー塗布処理した目地41にシーリング材を充填、施工する。硬化後のシーリング材は、前記したように、目地の両側の被着面がムラなく綺麗にプライマー塗布処理されていることにより、被着面に対して優れた接着強さを有することにより、長期間剥離などの不具合を発生させない良好なものとなる。
本発明において、施工の対象とする目地は、建築物外壁の目地や土木構築物の目地などが挙げられ、中でも建築物外壁の目地で、外壁を構成する部材(外装材)としてコンクリート板、金属系や窯業系のサイディング、ALC板、さらにサイディング、ALC板を用いて形成されている目地が、本発明の効果を最大限に発揮できる点で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を示す正面図である。なお、心材部分の見えない部分を破線で示している。
【図2】図1の刷毛の左側面図である。
【図3】図1の刷毛のA−A線断面を模式的に表した図である。
【図4】図1の刷毛の毛束部の毛の撚り込み構造を示す図である。
【図5】図1の刷毛の毛の集合体部分の外部形状を変えた毛束部と、柄部の一部を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の斜視図である。
【図7】図6の刷毛のB−B線断面を模式的に表した図である。
【図8】図6の刷毛の毛束部と、柄部の一部を示す斜視図である。
【図9】本発明の第3実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の斜視図である。
【図10】第1実施例の刷毛を用いて、建築物の外壁の目地にプライマーを塗布する方法を説明する図である。
【図11】従来の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を示す正面図である。
【図12】従来の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を用いて、建築物の外壁の目地にプライマーを塗布する方法を説明する図である。
【図13】従来の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の毛束部を、目地の両側の被塗布面に同時に接触させようとして目地に挿入した場合を示す図である
【符号の説明】
【0033】
1、11、21、51 毛束部
2、22、32、52 柄部
3、23、53 心材部分
4、14、24、54 毛の集合体部分
5 係止環
25、35、55 係止穴
26 基布
27 接着剤
41 目地
42a、42b 外壁部材
43a、43b 目地のプライマー被塗布面
44 ハットジョイナー
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築、土木分野における構造物などのシーリングのため、シーリング材を施工する前に目地の両側の被塗布面にプライマーを1回で塗布ムラがなく綺麗に塗布できる刷毛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モルタルやコンクリート等の湿式の材料又は窯業系や金属系のサイディング、ALC板等の乾式の材料などから形成された、建築物の外壁やサッシ周り或いは土木構築物等において、板や部材の接合部分などには目地が生じ、この目地は1物件につき合計してかなりの長さになる。この目地に対しては、雨水等が内部に侵入するのを防ぐ目的で、ポリウレタン樹脂、変性シリコーン樹脂、ポリサルファイド樹脂或いはシリコーン樹脂などからなるシーリング材を充填施工し硬化させて防水をする必要がある。
この目地を形成しているモルタルやサイディングの被着面に対するシーリング材の接着性を向上させる目的で、シーリング材の施工に先立って、例えば図11及び図12に示すように、毛束部分51と木製の柄52からなる刷毛を用い、目地41の両側の被塗布面43aと43bに対してプライマー溶液を片側(一面)ずつ塗布して目地処理をする作業が一般的に行なわれている。
【0003】
しかし、前記の従来の刷毛は、図11に示すように毛束部51の毛の集合体部分54の毛が木製の柄部52の端に取り付けた心材部分53に、柄部の長手方向と平行の一方向に植え込まれている構造のため、これを用いて目地41の被塗布面にプライマー処理をする場合、図12に示すように、片側の被塗布面43aに先ずプライマーを塗布してから、もう一方の側の被塗布面43bに塗布しなければならず、合計2回の塗布作業を必要とし、プライマー塗布作業に非常に多くの手間と時間を費やしてしまうという問題があった。また、毛束部の毛が被塗布面に対し斜めに接触するため、プライマー溶液の被塗布面に対する供給が速やかに行われないためカスレが生じる問題もあった。
さらに、この刷毛を用いて両側の被塗布面に一度でプライマー処理をしようとしたとき、目地に対する刷毛の方向が図13に示すようになり、毛の集合体部分54が両側の被塗布面に同時に接触せず、塗布されない面が発生する。また同時に接触したとしても毛の方向が被塗布面に平行に接触し、プライマー溶液の供給が速やかに、かつ十分になされないため、塗布した面がカスレて塗布ムラを生じ、プライマーが均一に綺麗に塗布できず、その結果、シーリング材の充填、硬化後、接着不良を生じ剥離事故等の不具合を起こしてしまう問題もあり、これらの問題の解決が求められていた。
また、毛束部の幅方向の両側面又は一側面を上方から下方にかけて穂先がくさび型となるようにカットされた刷毛も提案されているが(特許文献1参照。)、この刷毛は、目地の隅は塗りやすいが、相変わらず目地の両側面を片側ずつ塗布しなければならないという欠点を有している。
【特許文献1】特開平08−24762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、1回の塗布で目地の全内側面を同時に、塗布長さを長く、かつ塗布ムラがなく均一に綺麗に塗布できる、建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、プライマー塗布用の刷毛の毛束部の毛が目地の両側の被塗布面に同時に接触する構造とすることにより上記問題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、次の(1)〜(15)である。
【0006】
(1) 毛束部と柄部とからなる建築、土木用のプライマー塗布用刷毛において、該毛束部が心材部分と毛の集合体部分とから構成され、該毛束部が、該心材部分に略垂直に、かつ該心材部分の両側に対向するように設けた毛を少なくとも有すること、を特徴とする前記刷毛。
【0007】
(2) 前記毛束部が、目地の両側の被塗布面に略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有する、前記(1)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0008】
(3) 前記毛束部が、多数の毛を前記心材部分の周囲に放射状となるように設けて形成されている、前記(1)又は(2)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0009】
(4) 前記毛束部が、板状の前記心材部分の両側面に略垂直に、かつ対向して毛を設けて形成されている、前記(1)又は(2)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0010】
(5) 前記毛の集合体部分が変形性と復元性とを有する、前記(1)〜(4)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0011】
(6) 前記毛の集合体部分の外部形状が、略球形状、略円柱状又は略角柱状である、前記(1)〜(5)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0012】
(7) 前記心材部分が弾力性、或いは弾力性と塑性変形性とを有する、前記(1)〜(6)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0013】
(8) 前記心材部分が、金属製材料からなる、前記(7)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0014】
(9) 前記心材部分が、金属製の撚り線からなる、前記(7)又は(8)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0015】
(10) 前記毛束部が、金属製の撚り線からなる前記心材部分に、多数の毛を放射状に撚り込んで形成されている、前記(1)、(2)、(3)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0016】
(11) 前記心材部分が、金属製の板状物からなる、前記(7)又は(8)の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0017】
(12) 前記毛束部が、表面側に毛を植毛した基布の裏面を板状の前記心材部分の両側面に対向するように接着して形成されている、前記(1)、(2)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(11)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0018】
(13) 前記心材部分と前記柄部とが金属製の撚り線で一体的に形成されている、前記(1)、(2)、(3)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0019】
(14) 前記心材部分と前記柄部とが金属製の板状物で一体的に形成されている、前記(1)、(2)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(11)、(12)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【0020】
(15) 前記心材部分と前記柄部とが異なる材質で形成されている、前記(1)〜(12)のいずれかの建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプライマー塗布用刷毛は、毛束部と柄部より構成され、さらにこの毛束部は心材部分と、この心材部分に多数の毛を植えて、その毛先を揃えた毛の集合体部分とから構成されている。そして、この毛束部はこの心材部分に略垂直に、かつこの心材部分の両側に対向するように心材部分に設けた毛を少なくとも有する構造をしていることにより、このプライマー塗布用刷毛を用いて、プライマーを目地に塗布したとき、毛束部が、目地の両側の被塗布面に略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有することとなり、毛束部の毛の集合体部分に含浸させたプライマー溶液が十分な量で速やかに両側の被塗布面に同時に供給され、1回の塗布作業で、プライマー溶液を目地の両側の被塗布面に同時に均一にムラがなく綺麗に、かつ塗布長さを長く塗布することが初めて可能となった。
なお、本発明において、略垂直とは少し斜めであっても垂直とみなしても、また、略同時とは極めて短時間の時間差はあっても同時とみなしても、本発明の効果を得る上でそれぞれ差し支えのないことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は本発明の第1実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の正面図であり、図2は図1の刷毛を左側から見た側面図であり、図3は図1の刷毛のA−A線断面を模式的に表した図である。図4は図1の刷毛の毛束部の毛の撚り込み構造を示す図である。図5は図1の刷毛の毛の集合体部分の外部形状を変えたものである。なお、図1、図2及び図5において毛の集合体部分の毛を一部簡略化し、そして心材部分の見えない部分を破線で表している。
【0023】
図1に示す本発明の第1実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛は、毛束部1と柄2とから構成され、さらにこの毛束部1は、心材部分3と毛の集合体部分4とから構成された基本構成である。ここにおいて、柄部2と心材部分3は金属製の撚り線で一体的に形成されている。
金属製の撚り線は、具体的には2本のメッキ処理した鉄製の針金が撚り合わされたものであり、2本の針金を撚り合わせて心材部分3を形成する際に、多数の毛を撚り込んで、毛先を揃えて設けて(植え込んで)毛の集合体部分4を形成し、毛束部1を形成している(図3及び図4参照)。ここにおいて金属製の撚り線は2本以上の針金を用いてもよく、また、針金は、アルミニウム、ステンレス、銅などの他の金属材料であってもよい。
そして、毛束部1の毛の集合体部分4は、密集した多数の毛が(外部に向かって)放射状となるように植え込まれている。
したがって、毛束部1は、心材部分3の長手方向に対して略垂直に、かつ心材部分3の両側に対向するように設けた毛を少なくとも有している。
【0024】
そして、図10は建築物などの外壁部材(例えばサイディング部材)42aと42bとを、ハットジョイナー44を間に挟み対向して配して形成された目地41に、図1の刷毛を用いてプライマーを塗布するために、毛束部1を目地に挿入したときの目地部分を断面図として、刷毛を正面図として表した図である。なお、ハットジョイナー44の目地底となる面には、予め後述するような離型処理がなされている。この図10に示すように、毛束部1は前記の構造を有し、かつ目地41の両側の被塗布面43aと43bに略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有するような大きさ(毛の長さ)で形成されているため、毛の集合体部分4に含浸させたプライマー溶液が速やかに毛先に移動し、十分な量で両側の被塗布面43aと43bに同時に供給され、1回の塗布作業で、両側の被塗布面43aと43bに同時にプライマー溶液を均一にムラなく、かつ長く塗布することが可能となり、プライマー処理にかかる作業時間を大幅に短縮することができるのである。
【0025】
さらに、毛の集合体部分4は、プライマー溶液に毛束部1を浸したとき十分な量のプライマー溶液を含浸できるように、そして毛束部1を目地41に挿入したとき圧縮されて楽に入り、目地41の形状に沿うように変形し、プライマー溶液を両側の被塗布面に速やかに供給することができ、また目地から出したとき、毛の集合体部分が元の形に速やかに戻り、再び毛束部をプライマー溶液に浸したとき、十分な量のプライマー溶液を含浸させることができるように、毛の集合体部分4は密集した多数の毛で構成され、変形性と復元性に富んでいることが好ましい。
【0026】
なお、毛の集合体部分4の外部形状は略球形状であるが、図5の毛の集合体部分14に示すように、略円柱状でもよい。ここにおいて略球形状とは、球形状、フットボール状、繭玉状、いびつな球形状などあるが、おおよそ球形状とみなしても差し支えない形を意味し、また、略円柱状とは、長さの長い円柱状、短い円柱状、葉巻状などあるが、おおよそ円柱状とみなしても差し支えない形を意味する。
また、この心材部分3は金属製の撚り線で形成されていることにより、弾力性と塑性変形性を有しており、目地41に毛束部1を挿入して刷毛を引いたとき撓うため、目地に沿って引きやすく作業性に優れている。さらに心材部分3の柄部2との境界部分に力を加えて自在に折り曲げることができ、離れたところにある目地41にも毛束部1を挿入しやすくすることができ作業性に優れている。必要のないときには形状を元に戻すことも容易にできる。
なお、柄部2の毛束部1に対して反対側の端部には、刷毛をフック等に引っ掛けて保持できるような係止環5をつけておくこともできる。
【0027】
図6は、本発明の第2実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の斜視図である。
図7は、図6の刷毛のB−B断面図を模式的に表した図である。図8は、図6の刷毛の毛束部と柄部の一部を示す斜視図である。
【0028】
図6に示す本発明の第2実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛は、毛束部21と金属製の横長の板状物(平板)で形成された柄部22とから構成され、さらにこの毛束部21は、金属製の板状物(平板)の柄部22と一体的に形成された、金属製の板状物の心材部分23と毛の集合体部分24とから構成された基本構成である。ここにおいて、毛の集合体部分24は、心材部分23の平板の面積の大きな方の対向する両面とその先端部分を囲むように、心材部分23に多数の毛が植毛されて形成されている。
毛束部21は、前記第1実施例におけるのと同様に、心材部分23に略垂直に、かつ心材部分23の両側に対向するように心材部分に設けた毛を少なくとも有していることにより(図6及び図7参照)、図10に示す目地41に毛束部21を挿入したとき、目地41の両側の被塗装面43aと43bに略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有していることとなる。かつ毛束部21は、両側の被塗布面43aと43bに略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有するような大きさ(毛の長さ)である。そのため、第1実施例と同様に、1回の塗布作業で、目地41の両側の被塗布面43aと43bに同時にプライマー溶液を均一にムラなく、かつ長く塗布することができる効果を発揮する。
なお、毛の集合体部分24の外部形状は、平板状、サイコロ状、四角柱状等の略角柱状である。
また、前記第1実施例と同様の効果を発揮するように、毛の集合体部分24は密集した多数の毛で構成され、変形性と復元性に富んでいることが好ましい。
また、心材部分23は金属製の平板で形成され、弾力性と塑性変形性を有しているため、前記第1実施例と同様の効果を発揮することができる。
前記金属製の板状物の金属材料としては、鉄、ステンレス、アルミニウムあるいはこれらをメッキ処理や塗装処理したものなど挙げられるが、これら以外に、弾力性を有している材料も使用でき、木質材料、竹質材料等の植物材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂材料などが挙げられる。
また、心材部分23に多数の毛を植毛する方法は、図8に示すように、表面側に多数の毛を密集して植毛した基布26の裏面を心材部分23の面積の大きな方の対向する両表面とその先端面に接着剤27を用いて接着することにより形成するのが好ましいが、その他、心材部分23に穴を開けて毛を直接植え込む方法、毛を接着剤で直接接着する方法などが挙げられる。
なお、柄部22の毛束部21に対して反対側の端部には、刷毛をフック等に引っ掛けて保持できるような係止穴25を設けておくこともできる。
【0029】
図9は、本発明の第3実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の斜視図であり、柄部と心材部分が異なる材質で形成されている例である。
図9に示す本発明の第3実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛は、前記第1実施例の刷毛において、柄部2を木製の丸棒の柄部32に変えた場合であり、毛束部1の構造は前記第1実施例におけるものと同じである。
毛束部1は、柄部32の一方の端に、心材部分3の毛が植え込まれていない端を直接差し込むことにより連結されている。この連結方法としては、他の金属製金具などを介して連結してもよい。
なお第3実施例においては、柄部32の形状を丸棒で示したが、角棒や平板状などであってもよい。
また、柄部32の材質は、木製の他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製であってもよい。
なお、柄部32の毛束部1に対して反対側の端部には、刷毛をフック等に引っ掛けて保持できるような係止穴35を設けておくとこもできる。
【0030】
また、前記実施例1〜3において、多数の毛の集合体部分4、14あるいは24を形成する毛の材料としてはどのようなものであってもよいが、例えば、牛毛、馬毛、豚毛、羊毛、山羊毛、猪毛などの獣毛、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維、木繊維、竹繊維、椰子の実繊維等の植物繊維など各種挙げられる。
これらは単独または2種以上組み合わせて使用できるが、これらのうち毛の集合体部分の弾力性が良く、プライマー溶液の保持性と排出性のバランスのよい点で獣毛または合成繊維が好ましく、さらに羊毛、山羊毛、豚毛、ポリエステル繊維、アクリル繊維が好ましい。
【0031】
次に本発明の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を用いるプライマーの塗布方法について図10を用いて説明するが、これに限定されるものではない。
図10は前記したように、第1実施例の刷毛を用いて、建築物などの外壁部材(例えばサイディング部材)42aと42bとを、ハットジョイナー44を間に挟み対向して配して形成された目地41に、プライマーを塗布する方法を説明する図であり、毛束部1を目地に挿入したときの目地部分を断面図として、刷毛を正面図として表した図である。また、ハットジョイナー44の目地底となる面には、プライマーが塗布されシーリング材を充填施工したとき三面接着となってしまうのを防止するため、テープ状等のボンドブレーカーを貼付したり、または離型塗料を塗布したりして、予め離型処理がなされている。
なお、ここにおいて実際は柄部2を手に持って塗布作業するのであるが、手を省略して示している。
まず、第1実施例の刷毛の毛束部1をプライマー溶液に漬けて、毛の集合体部分4にプライマー溶液を含浸させ、次いで毛束部1を目地41に挿入すると、毛束部1の毛が、目地41の両側の被塗布面43aと43bに略同時に、略垂直に接触するため、目地に沿って、目地内で刷毛を移動させると、両側の被塗布面43aと43bに同時にプライマーを塗布することができる。
つまり、1回の刷毛の(塗布)操作で、目地内の両側の被塗布面を一度で完全に(ムラがなく綺麗に)塗布することができるため、プライマー塗布にかかる作業時間を大幅に短縮することができることとなる。
次いで、所定の時間放置した後、このプライマー塗布処理した目地41にシーリング材を充填、施工する。硬化後のシーリング材は、前記したように、目地の両側の被着面がムラなく綺麗にプライマー塗布処理されていることにより、被着面に対して優れた接着強さを有することにより、長期間剥離などの不具合を発生させない良好なものとなる。
本発明において、施工の対象とする目地は、建築物外壁の目地や土木構築物の目地などが挙げられ、中でも建築物外壁の目地で、外壁を構成する部材(外装材)としてコンクリート板、金属系や窯業系のサイディング、ALC板、さらにサイディング、ALC板を用いて形成されている目地が、本発明の効果を最大限に発揮できる点で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を示す正面図である。なお、心材部分の見えない部分を破線で示している。
【図2】図1の刷毛の左側面図である。
【図3】図1の刷毛のA−A線断面を模式的に表した図である。
【図4】図1の刷毛の毛束部の毛の撚り込み構造を示す図である。
【図5】図1の刷毛の毛の集合体部分の外部形状を変えた毛束部と、柄部の一部を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の斜視図である。
【図7】図6の刷毛のB−B線断面を模式的に表した図である。
【図8】図6の刷毛の毛束部と、柄部の一部を示す斜視図である。
【図9】本発明の第3実施例の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の斜視図である。
【図10】第1実施例の刷毛を用いて、建築物の外壁の目地にプライマーを塗布する方法を説明する図である。
【図11】従来の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を示す正面図である。
【図12】従来の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛を用いて、建築物の外壁の目地にプライマーを塗布する方法を説明する図である。
【図13】従来の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛の毛束部を、目地の両側の被塗布面に同時に接触させようとして目地に挿入した場合を示す図である
【符号の説明】
【0033】
1、11、21、51 毛束部
2、22、32、52 柄部
3、23、53 心材部分
4、14、24、54 毛の集合体部分
5 係止環
25、35、55 係止穴
26 基布
27 接着剤
41 目地
42a、42b 外壁部材
43a、43b 目地のプライマー被塗布面
44 ハットジョイナー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛束部と柄部とからなる建築、土木用のプライマー塗布用刷毛において、該毛束部が心材部分と毛の集合体部分とから構成され、該毛束部が、該心材部分に略垂直に、かつ該心材部分の両側に対向するように設けた毛を少なくとも有すること、を特徴とする前記刷毛。
【請求項2】
前記毛束部が、目地の両側の被塗布面に略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有する、請求項1に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項3】
前記毛束部が、多数の毛を前記心材部分の周囲に放射状となるように設けて形成されている、請求項1又は2に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項4】
前記毛束部が、板状の前記心材部分の両側面に略垂直に、かつ対向して毛を設けて形成されている、請求項1又は2に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項5】
前記毛の集合体部分が変形性と復元性とを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項6】
前記毛の集合体部分の外部形状が、略球形状、略円柱状又は略角柱状である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項7】
前記心材部分が弾力性、或いは弾力性と塑性変形性とを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項8】
前記心材部分が、金属製材料からなる、請求項7に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項9】
前記心材部分が、金属製の撚り線からなる、請求項7又は8に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項10】
前記毛束部が、金属製の撚り線からなる前記心材部分に、多数の毛を放射状に撚り込んで形成されている、請求項1、2、3、5、6、7、8、9のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項11】
前記心材部分が、金属製の板状物からなる、請求項7又は8に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項12】
前記毛束部が、表面側に毛を植毛した基布の裏面を板状の前記心材部分の両側面に対向するように接着して形成されている、請求項1、2、4、5、6、7、8、11のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項13】
前記心材部分と前記柄部とが金属製の撚り線で一体的に形成されている、請求項1、2、3、5、6、7、8、9、10のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項14】
前記心材部分と前記柄部とが金属製の板状物で一体的に形成されている、請求項1、2、4、5、6、7、8、11、12のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項15】
前記心材部分と前記柄部とが異なる材質で形成されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項1】
毛束部と柄部とからなる建築、土木用のプライマー塗布用刷毛において、該毛束部が心材部分と毛の集合体部分とから構成され、該毛束部が、該心材部分に略垂直に、かつ該心材部分の両側に対向するように設けた毛を少なくとも有すること、を特徴とする前記刷毛。
【請求項2】
前記毛束部が、目地の両側の被塗布面に略同時に、略垂直に接触する毛を少なくとも有する、請求項1に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項3】
前記毛束部が、多数の毛を前記心材部分の周囲に放射状となるように設けて形成されている、請求項1又は2に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項4】
前記毛束部が、板状の前記心材部分の両側面に略垂直に、かつ対向して毛を設けて形成されている、請求項1又は2に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項5】
前記毛の集合体部分が変形性と復元性とを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項6】
前記毛の集合体部分の外部形状が、略球形状、略円柱状又は略角柱状である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項7】
前記心材部分が弾力性、或いは弾力性と塑性変形性とを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項8】
前記心材部分が、金属製材料からなる、請求項7に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項9】
前記心材部分が、金属製の撚り線からなる、請求項7又は8に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項10】
前記毛束部が、金属製の撚り線からなる前記心材部分に、多数の毛を放射状に撚り込んで形成されている、請求項1、2、3、5、6、7、8、9のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項11】
前記心材部分が、金属製の板状物からなる、請求項7又は8に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項12】
前記毛束部が、表面側に毛を植毛した基布の裏面を板状の前記心材部分の両側面に対向するように接着して形成されている、請求項1、2、4、5、6、7、8、11のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項13】
前記心材部分と前記柄部とが金属製の撚り線で一体的に形成されている、請求項1、2、3、5、6、7、8、9、10のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項14】
前記心材部分と前記柄部とが金属製の板状物で一体的に形成されている、請求項1、2、4、5、6、7、8、11、12のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【請求項15】
前記心材部分と前記柄部とが異なる材質で形成されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の建築、土木用のプライマー塗布用刷毛。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−239497(P2006−239497A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55942(P2005−55942)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000103541)オート化学工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000103541)オート化学工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】
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