説明

建築用板材及び建築用柱材

【課題】突き板を採用した建築用部材(板材・柱材)において、シックハウス対策が可能で、且つ施工後の変形(乾燥・吸湿による縮み、反り、曲がり、割れ、膨れ等)が生じなく、また施工後の補修も容易に行なえるようにする。
【解決手段】適宜厚さの芯材1a(無垢板材:床材は約27mm厚、床板材・壁板材は13mm厚、壁板材・天井材は7.5mm厚)を、含水率10%以下に乾燥させ、所定形状に修正加工し、表面に同程度の含水率に乾燥させた突き板2a(床材は3mm厚、他は1.5mm厚)を貼着する。更に薄板材の芯材1aの木表面には、細溝3を複数本均等間隔で設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材や壁板材等の建築用板材並びに床柱や真壁用化粧柱に使用する建築用柱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床材や壁板材には、芯材の表面に突き板(化粧用表面材)を貼着している板材が採用されている。また床柱のような化粧柱においても同様に芯材の表面に突き板(化粧用表面材)を貼着している柱材が採用されている。
【0003】
前記の芯材としては、従前から合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)、集成材が採用されており、表面の化粧用の突き板は通常0.3mm程度の厚さが採用されている(特許文献1,2)。
【0004】
また特に特許文献3(特開2006−57249号公報)には、電気カーペット使用による加熱乾燥によって、突き板を使用した床材に生ずるクラック対策として、突き板貼着後の床材を乾燥させて、突き板表面に予めクラックを生じさせた後、表面を研磨し更に表面塗装を行なう手段が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−332607号公報。
【特許文献2】特開平9−144291号公報。
【特許文献3】特開2006−57249号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合板や集成材等の芯材を採用した場合には、当該芯材を形成するに際して相応の強度を備える必要上、接着剤の揮発性やシックハウス症候群の発生を考慮する以上に接着強度が重要視されてしまう問題がある。
【0007】
また合板や集成材等は、建築後の乾燥・吸湿によって縮み、反り、曲がり、割れ、膨れ等が生じ、隣接部材の境界箇所の継ぎ目が開いたり、表面が変形する虞がある。
【0008】
更に突き板の厚さを0.3mm程度としているために、表面にクラックが生じたり、或いは施工後に突き板表面を傷付けると、突き板の化粧補修が困難となる。
【0009】
尚特許文献3に開示されているように突き板を貼着した後に強制乾燥を施し、予めクラックを形成し、これを補修する工程を経た部材においても、芯材に合板を採用している限り接着剤の問題は回避することが出来ない。勿論突き板の再修正作業を考慮すると、製造コストも無視することができない。
【0010】
そこで本発明は、一定以下の含水率に乾燥させた木材は、施工後の反り、曲がり等が生じないことに着目し、突き板を使用した新規な建築用板材及び柱材を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る建築用板材及び柱材(請求項1,8)は、適宜厚さの無垢板材や無垢柱材を、含水率10%以下に乾燥させ、所定形状に修正加工し、表面に同程度の含水率に乾燥させた突き板を貼着してなることを特徴とするものである。
【0012】
従って乾燥によって当該木材(芯材及び突き板)は、乾燥前に比較して反り・曲がりが生じるが、実質的に含水率10%以下まで乾燥すると、多少の吸湿や更なる乾燥による変形が新たに生ずる事がないか確認できたもので、前記乾燥後の状態では、板材や柱材並びに突き板を反りや曲がりを解消する所定の形状(規格材に対応する寸法)に加工し、芯材の表面に突き板を貼着すると、当該部材は施工後の変形を抑えることができる。また、芯材自体が備える強度をもって充分であるから、接着剤は、構造強度を考慮する必要がない突き板の貼着使用がなされるものであれば良く、シックハウス症候群対応の接着剤を優先的に使用することができる。
【0013】
また本発明(請求項2)は、前記建築用板材において、芯材となる無垢板材を厚さ30mm以下とし、突き板を1mm厚以上としたもので、施工時や施工後に、突き板表面に傷がついた場合でも、カンナ掛けを行なっても突き板が削り取られて、芯材が露出する虞がなく容易に補修できる。
【0014】
また本発明(請求項3,4,5)は、所定の厚さの無垢板材の表面平均含水率を、その厚さに対応した所定値以下として実質の内部含水率10%以下に実現したものである。
【0015】
また本発明は、所定幅の無垢板材の突き板貼着面に反り防止用の細溝を2〜4本穿設してなり、更に貼着面を無垢板材の木表面としてなるものである。
【0016】
従って壁板材や天井材として使用される薄い板材は、所定水分以下の乾燥を施したとしても、ある程度乾燥状態を維持して組織の安定(乾燥収縮状態の維持)を行なわないと、その後の吸湿乾燥のための反りを完全には防止できない。特に突き板貼着面は接着剤による吸湿がなされるもので、この吸湿による反りが防止されるものである。
【0017】
また乾燥状態を一定時間維持することは生産性を考慮すると好ましくなく、特に吸湿・乾燥による縮む面となる木表面に細溝を入れると共に木表面を貼着面とすることで、僅かな表裏の収縮差による反りを防止するので、前記の木材乾燥と相まって薄板材の反りの発生を完全に防止した。
【0018】
更に、壁板材・天井材の表面には細溝が露出することがなく、外観上は従前の突き板化粧材と同様となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の構成は上記のとおりで、芯材に所定の含水率以下に乾燥した木材を採用したことによって、施工後の変形の発生を抑えることができ、当該芯材で所定の強度を維持することになるので、接着剤は強度を重要視する必要がない接着剤を選択することができ、シックハウス対策を容易に実現することができたものである。更に芯材に無垢材を採用することで、製造コストも低減できたものである。
【0020】
また特に薄板材においては、更に突き板貼着面に細溝を形成したもので、薄板材における反りを完全に防止したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した建築用板材は、床板材として使用されるもので、芯材1と突き板2とで形成され、芯材1は、無垢の板材で、厚さ約27mmで、突き板2は柾目板・節なし木目板等の所定の化粧板で、約3mm厚としたもので、両者の乾燥後の表面含水率が平均5%以下とし、乾燥後に芯材1及び突き板2を規格形状に修正加工(整形)し、シックハウスへの影響が少ない酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤で芯材1の表面に貼着したものである。
【0022】
即ち芯材1や突き板2の適宜数箇所の含水率を計測して平均5%以下となるまで乾燥させたもので、乾燥ムラを考慮しても最大8%以下の含水率まで乾燥したものとなる。
【0023】
この程度まで乾燥させると、施工後の床暖房用の床材として使用しても、また直接電気カーペットを敷いて使用しても、床材の変形(縮み・割れ・曲がり)が生ずることがない。
【0024】
更に突き板2の厚さを約3mmとすると、家具移動等で誤って床面を傷つけたとしても、芯材1が露出することは稀であり、その補修も通常の無垢材を使用した場合と同様に容易に行なうことができる。
【0025】
また床板材・壁板材として使用することのできる15mm厚の板材の場合には、芯材1aは厚さ約13mmとし、表面の突き板2aは、約2mm厚とし、所定の規格(180mm×3800mm)の板材としたもので、両者の乾燥後の表面含水率が平均6%以下とした。表面含水率の計測平均が平均6%以下であると、乾燥ムラを考慮しても確実に最大10%以下の含水率まで乾燥したものとみることができる。
【0026】
更に壁板材・天井材として使用することのできる9mm厚の板材の場合には、芯材1aは厚さ約7.5mmとし、表面の突き板2aは、約1.5mm厚とし、所定の規格(180mm×3800mm)の板材としたもので、両者の乾燥後の表面含水率が平均8%以下とした。表面含水率の計測平均が8%以下であると、乾燥ムラを考慮しても確実に最大10%以下の含水率まで乾燥したものとみることができる。
【0027】
この15mm厚板材及び9mm厚板材は、芯材1aの木表面(突き板貼着面)の長手方向に、幅1.3mm、深さ1mm程度の細溝3を、複数本(種々実験した結果厚さに対応して設けるもので15mm厚板材は2〜3本が適切であり、9mm厚板材は3〜4本が適当であることが認められた)均等間隔に設け、この木表面に突き板2aを貼着したものである。
【0028】
従って15mm厚板材及び9mm厚板材は、多少接着剤の塗布によって吸湿し、その後乾燥がなされたとしても、芯材1aの木表裏の僅かな収縮差による反りも防止できたものである。しかも細溝形成面に突き板2aを貼着することになり、細溝が露出することがない。
【0029】
この15mm厚板材及び9mm厚板材も、確実10%以下の含水率とし、反りの発生を防止でき、且つ突き板の厚さも1.5mmとして充分施工後の補修に対しても対応できるものである。
【0030】
また本発明は、図3に例示するとおり、無垢柱材を芯材1bとし、その表面に突き板2bを貼着したものでも良く、芯材1bも含水率10%以下に乾燥させ、乾燥後に所定の規格形状に修正加工(整形)し、必要とする表面に突き板2bを貼着して所定の化粧柱とするもので、低含水率まで乾燥させているので、経年変化(乾燥・吸湿)による柱の撓みや突き板2bの割れが生じにくく、また前記した板材と同様に、無垢材で強度を負担するものであるから、シックハウス対策用の接着剤を使用することができ、且つ製造コストも安価になる利点も有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態の説明図(建築用板材)。
【図2】同図(薄板材)。
【図3】同図(建築用柱材)。
【符号の説明】
【0032】
1,1a,1b 芯材
2,2a,2b 突き板
3 細溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜厚さの無垢板材を含水率10%以下に乾燥させ、所定形状に修正加工し、表面に同程度の含水率に乾燥させた突き板を貼着してなることを特徴とする建築用板材。
【請求項2】
厚さ30mm以下の無垢板材の表面に、1mm厚以上の突き板を貼着してなる請求項1記載の建築用板材。
【請求項3】
厚さ約27mmで、表面含水率が平均5%以下の床材対応の無垢板材の表面に、約3mm厚の突き板を貼着してなる請求項2記載の建築用板材。
【請求項4】
厚さ約13mmで、表面含水率が平均6%以下の床材・壁板材対応の無垢板材の表面に、約2mm厚の突き板を貼着してなる請求項2記載の建築用板材。
【請求項5】
厚さ約7.5mmで、表面含水率が平均8%以下の壁板材・天井材対応の無垢板材の表面に、約1.5mm厚の突き板を貼着してなる請求項2記載の建築用板材。
【請求項6】
所定幅の無垢板材の突き板貼着面にそり防止用の細溝を2〜4本穿設してなる請求項2乃至5記載の何れかの建築用板材。
【請求項7】
突き板貼着面が無垢板材の木表面である請求項6記載の建築用板材。
【請求項8】
適宜太さの無垢柱材を含水率10%以下に乾燥させ、所定形状に修正加工し、表面に同程度の含水率に乾燥させた突き板を貼着してなることを特徴とする建築用柱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−40029(P2009−40029A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15981(P2008−15981)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(596169691)株式会社東新工務 (2)
【Fターム(参考)】