説明

建築用着色ガラス物品及びその製造方法

【課題】新たな外観を呈する建築用着色ガラス物品とその製造方法を提供する。
【解決手段】建築用着色ガラス物品10は、内部にクリストバライトの結晶が生じて多数の薄片状模様11を分散状態で形成してなる。また、製造方法は、NiO、CoO及びCuOのうち一種以上の金属酸化物着色剤を添加したガラス原料を溶融し、得られたガラス固化体を粉砕して透光性の生地着色ガラス小体を得る着色ガラス小体形成工程と、着色剤が無添加のガラス原料を溶融し、得られたガラス固化体を粉砕して透光性の未着色ガラス小体を得る未着色ガラス小体形成工程と、複数個の生地着色ガラス小体と未着色ガラス小体とを混合してガラス小体混合物を得る混合工程と、該ガラス小体混合物を耐火容器内に集積してガラス集積層を形成する集積工程と、ガラス集積層を焼成することによりガラス焼結体を得る焼成工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用の着色ガラス物品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスレンガは、化学的耐久性、機械的強度等の特性に優れており、また石材、人工石材の人研、陶板、タイル、着色ガラス等とは異なる新しい独特の外観を呈するデザインを追及する各種の提案がなされている。
【0003】
耐火性容器内に複数個のガラス粒を充填し、熱処理して融着一体化する、いわゆる集積法によって作製された建築用のガラスレンガは、耐火性容器と接触する面が粗面となり、また、ガラスレンガの中に多くの気泡を含有し、透光不透視となるため、焼成クレーレンガや中空ガラスブロックとは異なった意匠性を有する。そのため、このガラスレンガは、その透光性を利用して床や壁の躯体に固定し、ガラスレンガと躯体との間に光源(照明)を設置して誘導灯、歩道灯、足元灯の面材として使用されてきた。
【0004】
また、装飾性を向上させるため、従来の着色ガラスレンガは、複数個のガラス小体と着色剤及びバインダーを混合撹拌して複数個の着色剤付ガラス小体を作製し、耐火容器内に、複数個の着色剤付ガラス小体を集積し、耐火容器内の着色剤付ガラス小体を熱処理して互いに焼結させることで製造されている。
【0005】
また、装飾性を向上させたガラス建材として、例えば、特許文献1〜4に、着色ガラスを使用した建築用着色ガラス物品等が提案されている。
【特許文献1】特開2002−068763号公報
【特許文献2】特開2002−226224号公報
【特許文献3】特開2004−203656号公報
【特許文献4】特開2004−203657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図2に写真で示すように、従来の白色の着色剤で着色した建築用着色ガラスレンガ1は、複数個のガラス小体と着色剤及びバインダーを混合撹拌して複数個の着色剤付ガラス小体を作製する混合工程があるため、生産の効率が悪く、また、着色剤付ガラス小体の焼成時に着色剤が軟化したガラス小体の流動に影響してガラス小体の輪郭を浮き上がらせてガラスレンガ1の外観を見苦しくし、場合によっては焼成時にガラスの流動を阻害してガラスレンガ1の意匠面の平滑性が低下することがあった。また、ガラス小体に青色の着色剤を付着させて着色したガラスレンガ2は、着色剤により透光性が優れず、全体が濁ったような外観を呈するものである。
【0007】
本発明は上記事情に着目し、ガラス原料を調合する際に金属酸化物を添加することで、あらかじめガラス生地が着色されたガラス小体を使用して焼成することにより成型することで、新たな外観を呈する建築用着色ガラス物品と、ガラス小体の焼成の際に軟化したガラスに流動性の問題が生じない建築用着色ガラス物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る本発明の建築用着色ガラス物品は、内部に、クリストバライトの結晶を生じて、多数の薄片状模様を形成してなることを特徴とする。
【0009】
本発明で、内部にクリストバライトの結晶の薄片状模様を形成する結晶成長の核になる着色剤としては、NiO、CoO又はCuOが使用可能である。
【0010】
また、本発明の建築用着色ガラス物品は、ガラス生地がNiO、CoO及びCuOのうち一種以上の金属酸化物着色剤により着色された透光性の生地着色ガラス小体と、前記着色剤により着色しない未着色ガラス小体とを混合したガラス小体混合物が焼結一体化されたガラス焼結体よりなることを特徴とする。
【0011】
本発明では、ガラス生地がNiO、CoO及びCuOのうち一種以上の金属酸化物着色剤により着色された透光性の生地着色ガラス小体と、前記着色剤により着色しない未着色ガラス小体とを混合したガラス小体混合物を焼結一体化する熱処理工程においてNiO、CoO又はCuOを核としてクリストバライトの結晶が析出し、薄片状模様を形成してなるものである。また薄片状模様は、葉状、鱗片状、フレーク状、平らな花弁状とも表現できるものである。
【0012】
また、本発明の建築用着色ガラス物品は、金属酸化物着色剤として、NiO、CoO又はCuOの添加量がガラス物品の質量比で0.01%〜5%程度であることが、上記の色彩模様を呈し、かつガラス小体を焼成する際に軟化したガラスの良好な流動性を確保する上で好ましい。また、他の酸化物着色剤と組み合わせて用いると、多様な彩色が可能となる。
【0013】
また、建築用着色ガラス物品を構成する透光性のガラス小体が、焼成後に、波長400nm〜700nmの範囲において、肉厚7mmで平均透過率が15%より低いと、光源からの光がほとんど透過しないため、暗所における意匠面としては殆ど目立たないものとなり、例えば、誘導灯、歩道灯、又は足元灯等の機能を果たし難くなる。一方、平均透過率が85%を超えると、施工した際、構造材が透けて見えるので、外観及びプライバシー保護性の点で好ましくなく、あるいは反対側の光源からの光が直接目に入り好ましくない。本発明の建築用着色ガラス物品としては、焼成後に、波長400nm〜700nmの範囲において、肉厚7mmで平均透過率が15%〜85%となる透光性のガラス小体を使用してガラス焼結体を作製することで、ガラス物品の内部で光が散乱し、意匠面からは目にやさしい散乱光が放射されることになり好ましい。
【0014】
また、本発明の建築用着色ガラス物品は、建築物の床面に使用する場合、意匠面が凹凸状であると、雨で濡れても滑りにくく、正反射率が2%以下であると、柔らかな光が放射され目にやさしいため好ましい。
【0015】
また、本発明の建築用着色ガラス物品は、ガラスが、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス(B23−SiO2系ガラス)、アルミノケイ酸ガラス(Al23−SiO2系ガラス)およびアルミノホウケイ酸ガラス(B23−Al23−SiO2系ガラス)からなる群より選択される一種または二種以上のガラスからなるものであり、熱衝撃に強く、耐薬品性に優れているため、熱処理工程における冷却時の熱衝撃や、激しい気候変化による寒暖差に起因する熱衝撃でも破損することがなく、耐候性に優れている点でホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、あるいはアルミノホウケイ酸ガラスからなることが好ましい。
【0016】
また、本発明の建築用着色ガラス物品は、ガラスに102〜1012個/kgの気泡を有していると、波長400nm〜700nmの範囲において、肉厚7mmで平均透過率が15%〜85%になるため好ましい。すなわち、ガラス物品内部の気泡が、光入射面からガラス物品に入射した光を反射あるいは散乱するため、気泡の量によって平均透過率を調整できるからである。また、本発明の建築用着色ガラス物品は、1kgあたり102個〜1012個の気泡を含有するものであると透光不透視となるため、透光性を有しながら人物や物体を明瞭に視認することができないという、いわゆるプライバシー保護性が得られやすいとともに、本発明の建築用着色ガラス物品からなるガラスレンガ構築体の背面側に光源を設置した場合、光源からの光がガラスレンガ中の気泡によって散乱されて、意匠面側からあたかもガラスレンガ自体が発光しているように見えるため意匠的に好ましい。気泡の数が1kgあたり100個よりも少ないガラスからなると上記した効果が得られにくく、1kgあたり1012個よりも多いガラスからなると、肉厚7mmで可視光線の平均透過率が15%よりも低くなりやすいとともに機械的強度が損なわれやすい。なお、気泡とは0.01mm以上の直径を有するものを指す。
【0017】
また、本発明の建築用着色ガラス物品は、波長400nm〜700nmの範囲において、肉厚7mmで平均透過率が15%〜85%になればよい。なお、平均透過率の好ましい範囲は30%〜80%、さらに好ましくは40%〜65%である。
【0018】
また本発明の建築用着色ガラス物品は、ガラスの質量に対して0.1質量%から10質量%の発光材を含有する部位を形成してなることを特徴とする。本発明で、発光材の含有量がガラスの質量に対して0.1質量%未満であると、発光現象を殆ど観察することができない。一方、発光材の含有量が10質量%を超えると、熱処理工程においてガラス小体が十分に流動しないので、平滑な表面を得ることが困難になる。好ましくは、意匠面側に、ガラス質量に対して発光材の含有量が1質量%から5質量%の部位を設けてなることで、十分な発光性能を有する建築用着色ガラス物品を得ることができる。
【0019】
本発明で発光材としては、1000℃前後の焼成温度でも発光性を失わなければ使用可能であり、SrAl24にEu2+、Dy3+をドープした蓄光材やZnSにCu+、Al3+をドープした蛍光材などが適している。
【0020】
また、本発明の建築用着色ガラス物品は、発光材が蓄光材を含むものであることを特徴とする。現在、入手可能な蓄光材は、焼成時に外気により酸化すると発光能力が経時的に低下し、かつ、焼成後においても外気との酸化や水分との接触により、発光能力が低下する。そこで、本発明では、予め蓄光材を透光性ガラスで覆って酸化を抑制した、すなわち蓄光材をガラス封止したガラス小体を使用すると、焼成後の建築用着色ガラス物品で半永久的に安定した発光が可能となる。この蓄光材を封じたガラス小体とは、蓄光材とガラス片とが焼結された後、破砕されるなどして発光材が融着されたガラス小体内に密封されたもの、または蓄光材が融着されたガラス小体に付着して部分的に埋設されもの等のガラス小体を意味している。このような蓄光材を封じたガラス小体を使用した場合には、ガラス小体に発光性物質を直接分散させて作製したものとは外観が異なり、建築用着色ガラス物品の意匠面に奥行き感を有する模様が観察される状態となる。また、優れた耐候性により、ガラス焼結体の外面に、蓄光材をガラス封止したガラス小体を配置しても、蓄光材を建築用着色ガラス物品内部に均一に分散した従来のものに比べて遜色のない表面の発光能力を得ることができる。
【0021】
また、本発明の建築用着色ガラス物品の蓄光材を含む部位の発光性能としては、1000ルクスの光を20分間照射した直後の初期発光強度が200〜4000mcd/m2であり、照射停止10分後の発光強度が、初期発光強度の10%以上であることが好ましい。
【0022】
本発明に係る建築用着色ガラス物品の製造方法は、NiO、CoO及びCuOのうち一種以上の金属酸化物着色剤を添加したガラス原料を溶融し、得られたガラス固化体を粉砕して透光性の生地着色ガラス小体を得る着色ガラス小体形成工程と、前記着色剤が無添加のガラス原料を溶融し、得られたガラス固化体を粉砕して透光性の未着色ガラス小体を得る未着色ガラス小体形成工程と、複数個の生地着色ガラス小体と未着色ガラス小体とを混合してガラス小体混合物を得る混合工程と、該ガラス小体混合物を耐火容器内に集積してガラス集積層を形成する集積工程と、該ガラス集積層を焼成することによりガラス焼結体を得る焼成工程とを有することを特徴とする。
【0023】
本発明の建築用着色ガラス物品の製造方法で、着色ガラス小体形成工程は、NiO、CoO及びCuO等の金属酸化物よりなる着色剤のうち一種以上をガラス原料に添加し、そのガラス原料を加熱・溶融することで溶融ガラスとし、この溶融ガラスを適宜の形状寸法に固化させ、水砕その他の粉砕手段により粉砕して、粒状または鱗片状等の所望する形状とし、必要ならば篩いで分級して透光性の生地着色ガラス小体を得るものである。また、未着色ガラス小体形成工程は、前記着色剤が無添加のガラス原料を使用し、30℃〜380℃における平均線膨張係数が70×10-7/K以下で、ガラス焼結体が波長400nm〜700nmの範囲において、肉厚7mmで平均透過率が15%〜85%になる未着色ガラス小体が得られるものであればよい。
【0024】
本発明の建築用着色ガラス物品の製造方法で、透光ガラス集積層を形成するための耐火容器としては、1200℃以下の温度で軟化変形しない材質が好ましく、ムライト、コージエライト、アルミナセラミックス製等の耐火性容器が好適である。また、耐火性セラミックスシートを使用する場合、ガラスレンガと耐火性容器との離型材として作用するものであれば何ら制限なく使用できるが、特にシリカ、ムライト、アルミナ等のファイバーシートが好ましく、単独あるいは組み合わせて用いてもよい。また、耐火性セラミックスシートを耐火性容器内に施す方法は、シートを箱型にする方法、シートを分割して容器の内壁に設置する方法があるが、前もって容器の内壁にアルミナ等の微粉末をエアースプレー塗装、刷毛塗装、浸漬塗装等の方法による塗布することが、融着を防止する上で好適である。
【0025】
本発明の建築用着色ガラス物品の製造方法では、700℃〜1100℃、好ましくは800℃〜1000℃で熱処理することがよい。熱処理温度が700℃より低いと、ガラスの軟化流動が充分に行われず、機械的強度が低くなり、1100℃を超えると、ガラス焼結体の気泡が少なくなり、可視光の透過率が高くなって、施工時に構造材が透けて見え、また、ガラス小体と離型材との反応性が高くなり、ガラス小体と耐火性容器とが融着しやすくなるため好ましくない。
【0026】
また、本発明の建築用着色ガラス物品の製造方法は、ガラスがリボイルする温度範囲内で熱処理すると、ガラス小体の間隙が残存することによって生じる気泡に加えて、リボイルによりガラス焼結体の内部に新たに気泡が生成されるため好ましい。ガラス内部に溶存していたガスが気泡となってリボイルの現れ始める温度は、ガラスの軟化点よりも約50℃高い温度である。熱処理温度をさらに上昇させると、それに伴い、ガラス内部での気泡の生成がさらに活発になるが、ガラスの粘度も低下するため、生成した気泡は、次第に大きくなり、浮上してガラスの外部に放出されてしまう。ここでは、ガラスがリボイルする温度範囲とは、ガラス内部に溶存していたガスが気泡となって現れ始めてからガラスの外部に放出されてしまうまでの温度範囲を指し、例えば、B23−SiO2系ガラスでは、約800℃〜1000℃となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の建築用着色ガラス物品は、内部にクリストバライトの結晶を生じて多数の薄片状模様を形成してなるので、着色された透光性ガラスの内部に多数の薄片状模様が分散配置された過去にない独特の新た意匠を有するガラス建材を提供することができる。
【0028】
また、本発明のガラス生地がNiO、CoO及びCuOのうち一種以上の金属酸化物着色剤により着色された透光性の生地着色ガラス小体と、前記着色剤により着色しない未着色ガラス小体とを混合したガラス小体混合物が焼結一体化されたガラス焼結体よりなる建築用着色ガラス物品によれば、着色剤に、NiO、CoO又はCuOの金属酸化物を使用することで、褐色、青色又は黒色のガラス生地中に白みがかった薄片状模様を呈する建築用着色ガラス物品を得ることができる。
【0029】
また、本発明の建築用着色ガラス物品は、ガラスの質量に対して0.1質量%から10質量%の発光材を含有する部位を形成してなるので、暗所において従来に無い奥行き感と色調を備えた発光模様の外観を有する意匠性に富んだ建築用着色ガラス物品を提供することができる。また、発光材が、蓄光材を含むものであると、光源がなくても光る点、光の演出の自由度が広がる点及び発光効率の点で優れた建築用着色ガラス物品となる。
【0030】
本発明の建築用着色ガラス物品の製造方法は、NiO、CoO及びCuOのうち一種以上の金属酸化物着色剤を添加したガラス原料を溶融し、固化体を粉砕して透光性の生地着色ガラス小体を得る着色ガラス小体形成工程と、前記着色剤を添加しないガラス原料を溶融し、固化体を粉砕して透光性の未着色ガラス小体を得る未着色ガラス小体形成工程と、複数個の生地着色ガラス小体と未着色ガラス小体とを混合してガラス小体混合物を得る混合工程と、該ガラス小体混合物を耐火容器内に集積してガラス集積層を形成する集積工程と、該ガラス集積層を焼成することによりガラス焼結体を得る焼成工程とを有するので、独特の新た意匠を有する上記本発明の建築用着色ガラス物品を製造することができる。また、ガラス小体の焼成時に着色剤がガラスの流動に悪影響を及ぼすこともないので、ガラス焼結体を構成するガラス小体の輪郭を浮き上がらせて外観を見苦しくすることがなく、またガラスの流動を阻害しないので、平滑性に優れた建築用着色ガラス物品を効率よく製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0032】
本実施例に係る建築用着色ガラス物品として、模様入り着色ガラスレンガ10は、図1の写真に示すように、200mm×100mm×150mmの寸法を有し、黒色に着色された透光性ガラスの内部にクリストバライトの結晶析出による失透が局所的に現れて多数の薄片状模様11が分散して配置された従来に無い独特の外観を呈する建築用着色ガラス物品である。模様入り着色ガラスレンガ10は、質量%表示で、SiO2 70.2%、Al23 5.4%、B23 13.5%、CaO 0.5%、BaO 1.5%、Na2O 6.7%、K2O 2.2%の組成を有するように調合したガラス原料に対して、質量比でNiOを1.0%、CoOを0.15%添加して溶融し、得られた生地着色ガラス小体と、NiO及びCoOを添加しない未着色ガラス小体とを混合したガラス小体混合体が焼結一体化されたガラス焼結体よりなるものである。
【0033】
また、模様入り着色ガラスレンガ10は内部に気泡を約5×104個/kgの割合で有しているため、肉厚が7mmで波長400〜700nmの範囲における平均透過率が30%のガラス焼結体からなり、図1に示すような外観を呈するものである。また、模様入り着色ガラスレンガ10は、30℃〜380℃における平均線膨張係数が55×10-7/Kであり、熱衝撃に強く、かつ耐薬品性に優れているものでもある。また、厚さ100mm前後の実際の模様入り着色ガラスレンガ10での平均透過率は数%程度になるので、構造材が透けて見えることがなく、プライバシー保護性にも優れ意匠的に好ましい。
【0034】
これに対して、比較例として、透光性のガラス小体に、後から珪酸ジルコニウム及びバインダーを添加して混合撹拌して複数個の着色剤付ガラス小体を作製し、耐火容器内に、複数個の着色剤付ガラス小体を集積して焼結一体化した図2に示す建築用ガラスレンガ1は、焼成時にガラスの一部に流動不足を生じた痕跡がある外観を呈している。
【0035】
次に、本発明の模様入り着色ガラスレンガ10を製造する方法を説明する。
【0036】
上記本発明の模様入り着色ガラスレンガ10を製造する場合、まず、質量%で、SiO2 70.2%、Al23 5.4%、B23 13.5%、CaO 0.5%、BaO 1.5%、Na2O 6.7%、K2O 2.2%の組成を有するようにガラス原料を調合し、着色剤としてガラス質量に対し質量比でNiOを1.0%、CoOを0.15%となるように添加してガラス原料とし、加熱溶融した溶融ガラスを板状に成形した後、粉砕、分級等により最大30mmで薄片状の透光性の生地着色ガラス小体を作製する。また、SiO2 70.2%、Al23 5.4%、B23 13.5%、CaO 0.5%、BaO 1.5%、Na2O 6.7%、K2O 2.2%の組成を有するようにガラス原料を調合し、加熱溶融した溶融ガラスを板状に成形した後、粉砕、分級等により最大30mmで薄片状の透光性の未着色ガラス小体を作製する。次に、生地着色ガラス小体と未着色ガラス小体とを混合してガラス小体混合体を作製する。次に内寸が200mm×100mm×150mmのコージエライト製容器の内壁に、アルミナのスラリーを刷毛で塗布し、放置乾燥させた後、SiO2 52質量%、Al23 42質量%、有機バインダー 6質量%のセラミックファイバーシートを容器の寸法に加工し、容器の内壁面に載置した。次いで、その耐火性容器内に、ガラス小体混合体を積層してガラス集積層とし、950℃で5時間熱処理して、197mm×97mm×60mmのブロック状のガラス焼結体からなる模様入り着色ガラスレンガ10を得た。
【0037】
得られた模様入り着色ガラスレンガ10は、図1に示すように、黒色のガラス生地の内部に分散状態で一部白色の薄片状模様11を呈し、かつ光沢のある独特の意匠面10aを有する建築用着色ガラス物品となった。なお、裏面10b及び側面10cは、セラミックファイバーシートとの接触により梨子地面になっている。
【実施例2】
【0038】
次ぎに、実施例2の模様入り着色ガラスレンガについて説明する。まず実施例2の模様入り着色ガラスレンガを作製する場合、模様入り着色ガラスレンガ10と同様のガラス原料を調合し、着色剤としてガラス質量に対し質量比でNiOを1.0%、CoOを0.15%となるように添加してガラス原料とし、加熱溶融した溶融ガラスを板状に成形した後、粉砕、分級等により最大30mmで薄片状の透光性の生地着色ガラス小体を作製する。また、模様入り着色ガラスレンガ10と同様の組成を有するようにガラス原料を調合し、加熱溶融した溶融ガラスを板状に成形した後、粉砕、分級等により最大30mmで薄片状の透光性の未着色ガラス小体を作製する。次に、生地着色ガラス小体と未着色ガラス小体と混合してガラス小体混合体を作製する。これとは別に生地着色ガラス小体と、未着色ガラス小体と、ガラスの質量に対して蓄光材を2.5質量%含む量の発光材として無機質蓄光材(商品名:α‐FLASH PG500 LTI社製)と、バインダーとを混合し、発光材付きガラス小体混合体を作製する。この際、予め蓄光材とガラス片と焼結させた後、破砕して融着されたガラス小体内に蓄光材をガラス封止して密封した発光材付きガラス小体を作製し、使用することが好ましい。次にコージエライト製容器の内壁に、アルミナのスラリーを刷毛で塗布し、放置乾燥させた後、セラミックファイバーシートを容器の寸法に加工し、容器の内壁面に載置した。次いで、その耐火性容器内に、ガラス小体混合体を積層してガラス集積層とし、その上に、発光材付きガラス小体混合体を積層し、さらにその上を該ガラス小体混合体で覆うように充填する。その後、950℃で5時間熱処理して、197×97×60mmのブロック状の内部に発光材も封入された模様入り着色ガラスレンガを得た。この模様入り着色ガラスレンガの意匠面側の内部には、ガラスの質量に対して2.5質量%の蓄光材を含む発光部位が形成されている。
【0039】
本実施例2の模様入り着色ガラスレンガ2は、厚さ10mmにおいて、透光率が数%であり、1000ルクスの光を20分間照射した直後の初期発光強度が500mcd/m2であり、照射停止10分後の発光強度が、初期発光強度の10%以上であった。なお、透光率は、50×50×10mmの大きさに切断し両面を光学研磨した板状の試料を作製し、光源である蛍光灯から照度計に直接照射された光が1000ルクスの照度となるように調整し、蛍光灯と照度計の間に試料を挿置したときの照度(ルクス)を10回測定し、その平均値を1000ルクスで除し、100を乗じた値を指す。
【0040】
なお、上記の気泡量は、作製した模様入り着色ガラスレンガ10を約30mm×30mm×10mmに切断し、その質量を測定し、次いで、その中に存在する気泡数をカウントし、単位質量当たりの個数に換算して求めた。
【0041】
また、30℃〜380℃における平均線膨張係数は、ブルカー・エイエックスエス株式会社製の熱機械分析装置 ディラトメータにて測定した。波長400nm〜700nmの範囲における、肉厚7mmでの平均透過率は、光学研磨された20mm×20mm×7mmの試料を作製し、株式会社島津製作所製の分光光度計 UV2500PCで測定した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、着色ガラス小体と未着色ガラス小体とが焼結一体化された建築用着色ガラス物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の建築用着色ガラス物品の写真。
【図2】従来の建築用着色ガラス物品の写真。
【符号の説明】
【0044】
1、2 従来のガラスレンガ
10 模様入り着色ガラスレンガ(建築用着色ガラス物品)
10a 意匠面
10b 裏面
10c 側面
11 薄片状模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に、クリストバライトの結晶を生じて、多数の薄片状模様を形成してなることを特徴とする建築用着色ガラス物品。
【請求項2】
ガラス生地がNiO、CoO及びCuOのうち一種以上の金属酸化物着色剤により着色された透光性の生地着色ガラス小体と、前記着色剤により着色しない未着色ガラス小体とを混合したガラス小体混合物が焼結一体化されたガラス焼結体よりなることを特徴とする請求項1に記載の建築用着色ガラス物品。
【請求項3】
102〜1012個/kgの気泡を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建築用着色ガラス物品。
【請求項4】
ガラスの質量に対して0.1質量%から10質量%の発光材を含有する部位を形成してなることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の建築用着色ガラス物品。
【請求項5】
発光材が、蓄光材を含むものであることを特徴とする請求項4に記載の建築用着色ガラス物品。
【請求項6】
NiO、CoO及びCuOのうち一種以上の金属酸化物着色剤を添加したガラス原料を溶融し、得られたガラス固化体を粉砕して透光性の生地着色ガラス小体を得る着色ガラス小体形成工程と、前記着色剤が無添加のガラス原料を溶融し、得られたガラス固化体を粉砕して透光性の未着色ガラス小体を得る未着色ガラス小体形成工程と、複数個の生地着色ガラス小体と未着色ガラス小体とを混合してガラス小体混合物を得る混合工程と、該ガラス小体混合物を耐火容器内に集積してガラス集積層を形成する集積工程と、該ガラス集積層を焼成することによりガラス焼結体を得る焼成工程とを有することを特徴とする建築用着色ガラス物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−173514(P2009−173514A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87642(P2008−87642)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】