説明

建築用養生シート材

【課題】 シート材料の表面部位によって粘着剤の種類を使い分けることがなくても粘着力の差異を設けることができ、適度な粘着力により床面に固定しつつも、剥離性が良くて床面を損傷することがなく、使い勝手が良く施工性にも優れた建築用養生シート材を提供すること。
【解決手段】 シート本体1の片側表面には、粘着剤が塗布されて成る粘着層2を形成して、この粘着層2を、前記シート本体1の長手方向の両端側縁に沿ってそれぞれ粘着剤が塗布されて成る側縁粘着部21・21と、これら側縁粘着部21・21間の領域において、直交または斜眼格子状に粘着剤が塗布されて成る交差状粘着部22とから構成し、前記側縁粘着部21によって対象床面に貼着可能にする一方、この側縁粘着部21の貼着力よりも低粘着領域として、交差状粘着部22を易剥離に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用資材の改良、更に詳しくは、シート材料の表面部位に応じて粘着剤の種類を使い分けることがなくても粘着力の差異を設けることができ、適度な粘着力により床面に固定しつつも、剥離性が良くて床面を損傷することがなく、使い勝手が良く施工性にも優れた建築用養生シート材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、建築現場においては、室内等の工事の際に床面や壁面などを傷つけないように、養生用のシート材が仮設的に敷設されている。
【0003】
従来、合成樹脂シートの表面に多数の凹凸が形成され、裏面全体に粘着剤が塗布されて成る粘着層が形成された床パネル面保護用の滑り止め養生シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる養生シート材は、裏面全体に粘着剤が塗布されているため、シートの剥離性が悪くて、ロールからシートを巻き出し拡展し難く、しかも、合板から剥がすにも大きな力が必要であり、合板の繊維方向と平行になると合板表面がむしれることがあった。
【0005】
また、他には、表面に凹凸が形成されていて、裏面に粘着剤が塗布されている合成樹脂フィルムからなる床面養生フィルムがあり、粘着剤を長手方向に沿って連続して塗布した部位と、非塗布部とが両側部を除いて交互に形成されている床面養生フィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、かかる養生シート材は、長手方向に連続した粘着剤の非塗布部を有しているため、長手方向の切断部で雨水が浸入し拡散するおそれがある。
【特許文献1】実用新案登録第2599811号公報(第2−3頁、図1)
【特許文献2】特開2006−9250号公報(第3−4頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の建築用養生シート材に上記問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、シート材料の表面部位によって粘着剤の種類を使い分けることがなくても粘着力の差異を設けることができ、適度な粘着力により床面に固定しつつも、剥離性が良くて床面を損傷することがなく、使い勝手が良く施工性にも優れた建築用養生シート材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、建築用養生材として敷設するシート部材であって、
プラスチック材料から成るシート本体1の片側表面には、粘着剤が塗布されて成る粘着層2を形成して、この粘着層2を、前記シート本体1の長手方向の両端側縁に沿ってそれぞれ粘着剤が塗布されて成る側縁粘着部21・21と、これら側縁粘着部21・21間の領域において、直交または斜眼格子状に粘着剤が塗布されて成る交差状粘着部22とから構成し、
前記側縁粘着部21によって対象床面に貼着可能にする一方、この側縁粘着部21の貼着力よりも低粘着領域として、交差状粘着部22を易剥離に構成するという技術的手段を採用することによって、建築用養生シート材を完成させた。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、粘着層2の交差状粘着部22を、粘着剤の厚塗り部22aと薄塗り部22bとによって形成するという技術的手段を採用することができる。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シート本体1を、高密度プラスチック材料から成る高密度シート基材1Aと、低密度プラスチック材料から成る低密度シート基材1Bとを積層一体化することによって構成するという技術的手段を採用することができる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シート本体1を、表面に低密度シート基材1Bを配設して、これらの間に高密度シート基材1Aが少なくとも挟持して積層するという技術的手段を採用することができる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、高密度シート基材1Aの高密度プラスチック材料を、比重0.91〜0.93のポリエチレンとして、かつ、低密度シート基材1Bの低密度プラスチック材料を、比重0.94〜0.97のポリエチレンにするという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、粘着層2を構成する粘着剤を、アクリル樹脂系粘着剤にするという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にあっては、プラスチック材料から成るシート本体の片側表面には、粘着剤が塗布されて成る粘着層を形成し、この粘着層は、前記シート本体の長手方向の両端側縁に沿ってそれぞれ粘着剤が塗布されて成る側縁粘着部と、これら側縁粘着部間の領域において、直交または斜眼格子状に粘着剤が塗布されて成る交差状粘着部とから構成することによって、前記側縁粘着部によって対象床面に貼着可能にする一方、この側縁粘着部の貼着力よりも低粘着領域として、交差状粘着部を易剥離に構成することができる。
【0016】
したがって、本発明のシート材によれば、シート材料の表面部位によって粘着剤の種類を使い分けることがなくても粘着力の差異を設けることができ、適度な粘着力により床面に固定しつつも、剥離性が良くて床面を損傷することがないので、使い勝手が良く施工性にも優れている。
【0017】
また、本発明のシートは、ロールからの巻き出し性や床面からの剥離性が良く、合板のむしれもなく、また、中央部が破けても雨水の浸入および拡散を防ぐことができる。
【0018】
更にまた、側縁粘着部による重ね合せ部においては接着強度が落ちないので、剥がれがなく、雨水の浸入を防ぐことができることから、建築資材としての利用価値は頗る大きいと云える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0020】
本発明の実施形態を図1から図3に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものはシート本体であり、このシート本体1は、プラスチック材料(本実施形態では、ポリエチレン(PE))により作製されている。
【0021】
また、符号2で指示するものは粘着層であり、この粘着層2は、前記シート本体1の片側表面に、粘着剤が塗布されて形成されており、この粘着層2は、前記シート本体1の長手方向の両端側縁に沿ってそれぞれ粘着剤が塗布されて成る側縁粘着部21・21と、これら側縁粘着部21・21間の領域において、直交または斜眼格子状に粘着剤が塗布されて成る交差状粘着部22とから構成されている。
【0022】
しかして、本発明は、建築用養生材として敷設するシート部材であって、まず、シート材1を構成する。このシート材1は、単体のシートを採用することも可能であるが、本実施形態では、高密度プラスチック材料から成る高密度シート基材1Aと、低密度プラスチック材料から成る低密度シート基材1Bとを積層一体化する。なお、単体シートで構成する場合に使用するプラスチック材料の密度は問わない。
【0023】
更に、本実施形態では、高密度シート基材1Aの高密度プラスチック材料として、比重0.91〜0.93の高密度ポリエチレン(HDPE)を採用し、かつ、低密度シート基材1Bの低密度プラスチック材料として、比重0.94〜0.97の低密度ポリエチレン(LDPE)を採用する。
【0024】
なお、前記シート基材1A・1Bの使用材料としては、ポリエチレン(PE)が好ましいが、アイソタクチックポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートなどの単独重合体、共重合体、重縮合体およびこれらの混合物、またはこれらを主体とした他の樹脂との混合物を採用することもでき、これらの両シートを接着する際には、熱融着ラミネートを施す。
【0025】
そして、前記シート本体1の片側表面には、粘着剤(本実施形態では、アクリル樹脂系粘着剤)が塗布されて成る粘着層2を形成する。本実施形態では、まず、公知のロールコーターを用い、ピックアップロールやドクターロールにより粘着剤をコーティングロールに付着させる。
【0026】
この際、前記コーティングロールの表面の両側縁が平滑に形成され、かつ、中央部には凹凸が形成されている。そして、コーティングロールに付着した粘着剤をシート本体1の表面に転写することにより塗布して、表面に粘着層2を形成することができる。
【0027】
こうすることにより、粘着層2として、前記シート本体1の長手方向の両端側縁に沿ってそれぞれ粘着剤が塗布されて成る側縁粘着部21・21と、これら側縁粘着部21・21間の領域において、直交または斜眼格子状に粘着剤が塗布されて成る交差状粘着部22とを構成することができる。
【0028】
なお、交差状粘着部22においては、粘着剤の厚塗り部22aと薄塗り部22bとによって形成することができ、薄塗り部22bは、全く塗布されていない厚みの状態のものも含むものとする。
【0029】
このようにして形成されたシート材は、前記側縁粘着部21によって対象床面に貼着可能である一方、この側縁粘着部21の貼着力よりも低粘着領域として、交差状粘着部22が易剥離に構成されるのであって、本実施形態では、例えば、シート材の部位によって強度の異なる粘着剤の種類を使い分けることがなくても、接着層の厚みに差異を設けることのみによって、粘着力を抑えた弱粘着部を形成することができ、合板のむしれを効果的に防止することができる。
【0030】
本実施形態では、シート本体1は、表面にそれぞれ低密度シート基材1B・1Bを配設して、これらの間に高密度シート基材1Aを挟持して3層に積層することにより、表面に対する粘着剤の付着性を良くするとともに、表面の滑り抵抗性を維持して優れた防滑性を付与しつつも、中間に挟持される高密度シート基材1Aによってシート全体の伸縮を抑え、良好な形態安定性を付与することができる。
【0031】
〔実験データ〕
本実施形態品の機能を測定したデータは以下のとおりである。なお、粘着強度の観点から、厚塗り部22aに形成された粘着層を強粘着部として、かつ、薄塗り部22bに形成された粘着層を弱粘着部とする。
【0032】
【表1】

上記〔表1〕中、(注1)〜(注5)の注釈は以下のとおりである。
【0033】
(注1)接着力の評価は、JIS Z 0237に準じて測定した。
【0034】
(注2)防水性の評価は下記の方法にて評価した。
【0035】
(注3)合板のむしれは、屋外暴露試験後、剥がしたシート裏面に付着した合板表皮を目視確認した。
【0036】
(注4)表面粗さはsurfcom 554A(商品名、東京精密社製)を用い、測定距離4mm、cut off0.8mm、測定速度0.3m/minにて測定した。
【0037】
(注5)引張強度はJIS Z 0237に準じて測定した。
【0038】
なお、「強部塗布率」とは、シート材の全体面積に対する強粘着部の面積割合をいい、50%未満では、有効な接着力が得られず、85%を超えると、粘着力が強すぎて、合板のむしれなどが起こる。
【0039】
また、前記(注2)の防水性の評価方法は、以下の方法で行った。
【0040】
(1)300mm角 程度の合板の4辺に、「箱型」となるように桟木を取り付ける。
【0041】
(2)箱内の中央部に重ね合わせ部100mmができるようにシートを貼り付ける。
【0042】
(3)箱に約300ml(紙コップ1.5杯分)の水を溜め、1週間 常温放置する。
【0043】
1日置きに経過を見ながら、重ね合わせ部からの水漏れが無いかを確認する。
【0044】
強粘着部の塗布厚みは5〜50μmであり、非粘着部若しくは弱粘着部の塗布厚みは0〜20μmである。この際、強粘着部の粘着力は1.0〜7.0N/25mmであり、非粘着部若しくは弱粘着部の粘着力は0〜3.0N/25mmである。また、強粘度部と弱粘度部との厚みの差を5μmとすることで、貼り付けた場合の表面に凹凸の形成が可能である。
【0045】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、シート本体1を積層するときは、高密度シート基材1Aと低密度シート基材1Bの組み合わせであれば、何層に積層したものであっても良く、本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態のシート材を表わす正面図である。
【図2】本発明の実施形態のシート材を表わす拡大正面図である。
【図3】本発明の実施形態のシート材の構造を表わす説明断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 シート本体
1A 高密度シート基材
1B 低密度シート基材
2 粘着層
21 側縁粘着部
22 交差状粘着部
22a 厚塗り部
22b 薄塗り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用養生材として敷設するシート部材であって、
プラスチック材料から成るシート本体1の片側表面には、粘着剤が塗布されて成る粘着層2が形成されており、この粘着層2は、前記シート本体1の長手方向の両端側縁に沿ってそれぞれ粘着剤が塗布されて成る側縁粘着部21・21と、これら側縁粘着部21・21間の領域において、直交または斜眼格子状に粘着剤が塗布されて成る交差状粘着部22とから構成されており、
前記側縁粘着部21によって対象床面に貼着可能である一方、この側縁粘着部21の貼着力よりも低粘着領域として、交差状粘着部22が易剥離に構成されていることを特徴とする建築用養生シート材。
【請求項2】
粘着層2の交差状粘着部22が、粘着剤の厚塗り部22aと薄塗り部22bとによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の建築用養生シート材。
【請求項3】
シート本体1が、高密度プラスチック材料から成る高密度シート基材1Aと、低密度プラスチック材料から成る低密度シート基材1Bとが積層一体化されることによって構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の建築用養生シート材。
【請求項4】
シート本体1は、表面に低密度シート基材1Bが配設され、これらの間に高密度シート基材1Aが少なくとも挟持されて積層されていることを特徴とする請求項3記載の建築用養生シート材。
【請求項5】
高密度シート基材1Aの高密度プラスチック材料が、比重0.91〜0.93のポリエチレンであって、かつ、低密度シート基材1Bの低密度プラスチック材料が、比重0.94〜0.97のポリエチレンであることを特徴とする請求項3または4記載の建築用養生シート材。
【請求項6】
粘着層2を構成する粘着剤が、アクリル樹脂系粘着剤であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の建築用養生シート材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−303543(P2008−303543A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149374(P2007−149374)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【出願人】(000214043)蝶理株式会社 (14)