説明

建設機械のフロント構造

【課題】油圧ポンプの吐出油を油圧シリンダへ導く第1圧油誘導手段及び油圧シリンダからの戻り油をタンクに導く第2圧油誘導手段の作業具に対する位置ずれを防止すると共に、フロント作業機の重量を軽量化することができる建設機械のフロント構造の提供。
【解決手段】油圧ショベル1の旋回体3の前方に設けられたフロント作業機4は、圧油によって伸縮するブームシリンダ12a、アームシリンダ13a、及びバケットシリンダ14aと、これらの油圧シリンダ12a,13a,14aが伸縮して動作するブーム12、アーム13、及びバケット14と、第1圧油誘導手段及び第2圧油誘導手段とを有し、これらの第1圧油誘導手段と第2圧油誘導手段の両方は、ブーム12を形成する板材16a,16bに穿設された孔25a,25b,26a,26b,27a,27bから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回体の前方に設けられ、作業具を有して掘削等の作業を行うフロント作業機を備えた建設機械のフロント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧ショベル等で知られる旋回式の建設機械は、履帯等を有して走行する走行体と、この走行体の上方に連結されて左右方向に旋回する旋回体と、この旋回体の前方に設けられて掘削等の作業を行うフロント作業機と、このフロント作業機を駆動する圧油を供給する油圧ポンプとを備えている。
【0003】
そして、フロント作業機は、圧油によって伸縮する油圧シリンダと、この油圧シリンダが伸縮することによって動作する作業具と、油圧ポンプから吐出された圧油を油圧シリンダへ導く第1圧油誘導手段及び油圧シリンダからの戻り油をタンクに導く第2圧油誘導手段とを有している。また、フロント作業機の作業具は、例えば、中間部分が湾曲したく字型状に形成され、基端が旋回体に回動可能に取り付けられて上下方向に回動するブームと、このブームの先端に回動可能に取り付けられたアームと、このアームの先端に回動可能に取り付けられたバケットとから構成されている。
【0004】
さらに、油圧シリンダは、例えば旋回体とブームとを接続し、伸縮することによってブームを回動させるブームシリンダと、ブームの上側に配置されると共にブームとアームとを接続し、伸縮することによってアームを回動させるアームシリンダと、アームとバケットとを接続し、伸縮することによってバケットを回動させるバケットシリンダとから成っている。
【0005】
ここで、上述の第1圧油誘導手段は、例えばブーム等に沿って配設され、圧油をアームシリンダ、バケットシリンダ等の各油圧シリンダへ導く供給配管とから成り、第2圧油誘導手段は、例えばブーム等に沿って配設され、各油圧シリンダからの戻り油をタンクに導く戻り配管とから成っており、これらの各油圧シリンダと供給配管との接続部分、及び各油圧シリンダと戻り配管との接続部分には、アーム及びバケットの動作を妨げないように可撓性を有するホースが継手によって接続されている。そして、供給配管と戻り配管は、掘削等の作業に伴う振動によって各配管と互いに干渉しないように、例えば所定の間隔で配置された配管クランプによってブームに固定されている。
【0006】
具体的に、このような供給配管と戻り配管を作業具に固定する配管クランプを備えた建設機械の従来技術の1つとして、フロント作業機の長さ方向に延設され油圧シリンダに圧油を給排する標準配管、すなわち供給配管及び戻り配管と、これらの供給配管及び戻り配管をフロント作業機の長さ方向の複数箇所で固定する配管クランプと、バケットと交換してフロント作業機に取り付けられる他の作業具に圧油を給排するためフロント作業機の長さ方向に延設される追加配管と、一端側が配管クランプに固定され、他端側で追加配管をクランプする追加クランプとを備えた建設機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
そして、上述の配管クランプ及び追加クランプは、フロント作業機上に固着された基台、すなわちブーム等の作業具上に固着された基台と、この基台上で供給配管及び戻り配管を上下方向から一緒に挟持する上側挟持体及び下側挟持体と、各挟持体を基台に締着するボルトと有し、各配管が一定の距離を保って配管クランプ及び追加クランプによってフロント作業機上に固定されるので、掘削等の作業に伴って振動が生じても各配管が変位して互いに干渉することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−73393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1に開示された従来技術の建設機械では、第1圧油誘導手段及び第2圧油誘導手段、すなわち供給配管及び戻り配管は、上下方向から上側挟持体及び下側挟持体で挟持された状態で、ブーム等の作業具上に固着された基台にボルトによって押さえられているので、フロント作業機の長さ方向に対しては、各配管と各挟持体との間に生じる摩擦力だけで保持された状態となっている。そのため、例えば、掘削等の作業に伴って供給配管と戻り配管がフロント作業機の長さ方向に対して強い力を受けた場合や、長期間に渡って各配管の交換等のメンテナンス作業が行われなかった場合には、供給配管と戻り配管が互いに干渉しなくてもフロント作業機の長さ方向へ変位することにより、作業具に対して位置ずれが生じる可能性がある。
【0010】
この場合、各油圧シリンダと供給配管との間に接続されたホースや各油圧シリンダと戻り配管との間に接続されたホースに各配管から力が加わるので、これらのホースが伸縮することによってホースや継手に負荷がかかり、ホースや継手が損傷して内部を流れる圧油が漏洩することが懸念されている。また、上述した供給配管と戻り配管は、ブーム等の作業具の構成部材に別体として、配管クランプや追加クランプによって取り付けられるので、フロント作業機の重量が配管の分だけ大きくなり、フロント作業機の操作性や燃費が悪くなることが懸念されている。特に、大型の油圧ショベル等の建設機械は、フロント作業機の大きさも大きく、配設される供給配管と戻り配管の重量も大きくなるので、可能な限りフロント作業機を軽量化することが要望されている。
【0011】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、油圧ポンプから吐出された圧油を油圧シリンダへ導く第1圧油誘導手段及び油圧シリンダからの戻り油をタンクに導く第2圧油誘導手段の作業具に対する位置ずれを防ぐと共に、フロント作業機の重量を軽量化することができる建設機械のフロント構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の建設機械のフロント構造は、走行体と、この走行体の上方に設けられた旋回体と、この旋回体の前方に設けられて作業を行うフロント作業機と、このフロント作業機を駆動する圧油を供給する油圧ポンプとを備えた建設機械に備えられ、前記フロント作業機は、圧油によって伸縮する油圧シリンダと、この油圧シリンダが伸縮することによって動作する作業具と、前記油圧ポンプから吐出された圧油を前記油圧シリンダへ導く第1圧油誘導手段及び前記油圧シリンダからの戻り油をタンクに導く第2圧油誘導手段とを有する建設機械のフロント構造において、前記第1圧油誘導手段及び前記第2圧油誘導手段の少なくとも一方は、前記作業具を形成する板材に穿設された孔から成ることを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、第1圧油誘導手段及び第2圧油誘導手段の少なくとも一方は、作業具を形成する板材に穿設された孔から成っていることにより、例えば第1圧油誘導手段が板材に穿設された孔から成っている場合には、油圧ポンプによって圧油が板材の孔内部を通って油圧シリンダに供給される。また、第2圧油誘導手段が板材に穿設された孔から成っている場合には、油圧シリンダからの戻り油が板材の孔内部を通ってタンクに戻される。そして、この孔が設けられた板材は作業具を構成し、一体に設けられているので、掘削等の作業に伴う振動等が生じても板材が作業具に対して安定した固定状態を保つことができ、第1圧油誘導手段及び第2圧油誘導手段の作業具に対する位置ずれを防ぐことができる。また、上述したように板材に穿設された孔の内部に圧油を通す構成とすることにより、圧油を油圧シリンダへ導くために、例えば配管を作業具と別体に設けなくて済むので、フロント作業機の重量を低減することができる。このように、油圧ポンプから吐出された圧油を油圧シリンダへ導く第1圧油誘導手段及び油圧シリンダからの戻り油をタンクに導く第2圧油誘導手段の作業具に対する位置ずれを防止すると共に、フロント作業機の重量を軽量化することができる。
【0014】
また、本発明に係る建設機械のフロント構造は、前記発明において、前記板材は、前記作業具の構成部材の直線形状部分に配置されたことを特徴としている。このように構成すると、圧油を流通可能にさせる孔を穿設する板材に曲げ加工等を施さなくても良いので、この板材を構成部材の一つとする作業具を容易に製作することができ、製作コストを抑えることができる。また、この板材を作業具の構成部材の直線形状部分に溶接等で固定することにより、作業具を迅速に製作することができ、製作時間を短縮することができる。
【0015】
また、本発明に係る建設機械のフロント構造は、前記発明において、前記作業具は、中間部分が湾曲する形状に形成され、基端が前記旋回体に回動可能に取り付けられて上下方向に回動するブームを含み、このブームは、側板を形成するウェブと、このウェブの下側に配置され、前記ウェブに対して垂直に固定された下側フランジと、前記ウェブの上側に配置され、前記ウェブに対して垂直に固定された上側フランジとから少なくとも構成され、前記板材が前記上側フランジから成ることを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明は、この板材がブームの上側フランジを形成することにより、例えばブームの上側フランジ上に配置されるアームシリンダとこの板材に設けられた孔とを接続するホースの配設を容易に行うことができる。また、この板材をアームシリンダの近傍に配置することができるので、ホースの長さを短くすることができる。これにより、ホースの破損リスクを低減することができる。さらに、ブームの構成部材としてこの板材と上側フランジを別に構成するよりもブームの部品点数を減らすことができる。
【0017】
また、本発明に係る建設機械のフロント構造は、前記発明において、前記板材のうち前記孔を形成する部分の厚さを、孔が形成されない他の部分の厚さよりも大きく設定したことを特徴としている。このように構成すると板材の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の建設機械のフロント構造は、第1圧油誘導手段及び第2圧油誘導手段の少なくとも一方は、作業具を形成する板材に穿設された孔から成っていることにより、掘削等の作業に伴う振動等が生じても板材は作業具に対して安定した固定状態を保つことができるので、第1圧油誘導手段及び第2圧油誘導手段の作業具に対する位置ずれの発生を防ぐことができる。また、板材に穿設された孔の内部に圧油を通す構成とすることにより、圧油を油圧シリンダへ導くために、例えば配管を作業具と別体に設けなくて済むので、フロント作業機の重量を低減することができる。このように、油圧ポンプから吐出された圧油を油圧シリンダへ導く第1圧油誘導手段及び油圧シリンダからの戻り油をタンクに導く第2圧油誘導手段の作業具に対する位置ずれを防ぐと共に、フロント作業機の重量を軽量化することができる。これにより、従来よりもフロント作業機の機械性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るフロント構造が備えられる建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】本発明に係る建設機械のフロント構造の第1実施形態の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態の要部を説明する図であり、図2に示すA−A断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の要部を説明する図であり、図2に示すB−B断面図である。
【図5】図2におけるC部を拡大して示す図である。
【図6】図2におけるD部を拡大して示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態の要部を説明する図であり、図2に示すA−A断面図に対応する断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の要部を説明する図であり、図2に示すB−B断面図に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る建設機械のフロント構造を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1に示すように、本発明に係る建設機械のフロント構造の第1実施形態は、建設機械、例えば油圧ショベル1に備えられる。この油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2の上側に配置され、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3の前方に取り付けられて上下方向に回動するフロント作業機4とから構成されている。また、旋回体3は、前方にキャブ7を備え、後方にカウンタウェイト6を備え、また、これらキャブ7及びカウンタウェイト6の間にエンジンルーム5を備えている。
【0022】
さらに、油圧ショベル1は、エンジンルーム5の上側に設けられ、エンジンルーム5を開閉可能に閉塞する車体カバー15と、この車体カバー15を挿通し、エンジンルーム5内に設けられた図示しないエンジンから排出された排気ガスを旋回体3の外部へ排出する排気管11とを備えている。なお、キャブ7内にはフロント作業機4を操作する操作レバーが配設されている。
【0023】
旋回体3は、図示されないが、エンジンルーム5内のエンジンを冷却する冷却ファンと、エンジンの駆動力で回転し、フロント作業機4を駆動する圧油を供給する油圧ポンプと、この油圧ポンプに吸入される作動油を貯蔵する作動油タンクと、作動油を冷却する熱交換器と、油圧ポンプに接続されて油圧ポンプから吐出され、フロント作業機4を駆動する後述の油圧シリンダに供給される圧油を制御する多連バルブとを備えている。
【0024】
フロント作業機4は、多連バルブから供給された圧油によって伸縮する前述の油圧シリンダと、この油圧シリンダが伸縮することによって動作する作業具と、油圧ポンプから吐出された圧油を油圧シリンダへ導く第1圧油誘導手段及び油圧シリンダからの戻り油をタンク、すなわち作動油タンクに導く第2圧油誘導手段とを有している。具体的には、フロント作業機4の作業具は、例えば基端が旋回体3に回動可能に取り付けられて上下方向に回動するブーム12と、このブーム12の先端に回動可能に取り付けられたアーム13と、このアーム13の先端に回動可能に取り付けられたバケット14とから構成されている。
【0025】
さらに、油圧シリンダは、例えば旋回体3とブーム12とを接続し、伸縮することによってブーム12を回動させるブームシリンダ12aと、ブーム12の上側に配置されると共にブーム12とアーム13とを接続し、伸縮することによってアーム13を回動させるアームシリンダ13aと、アーム13とバケット14とを接続し、伸縮することによってバケット14を回動させるバケットシリンダ14aとから成っている。
【0026】
そして、本発明の第1実施形態は、第1圧油誘導手段及び第2圧油誘導手段の少なくとも一方、例えば第1圧油誘導手段及び第2圧油誘導手段の両方は、図2に示すように作業具、例えばブーム12の上面を形成する板材16a,16bに穿設された後述する孔から成っている。なお、図2に示すフロント作業機4のブーム12は、図1に示すブーム12に対して左右が反転した状態で図示されている。
【0027】
ブーム12は、図2、3に示すようにフロント作業機4の左右方向に所定の距離を保って平行に配置され、側板を形成する一対のウェブ24a,24bと、これらのウェブ24a,24bの下側に配置され、ウェブ24a,24bに対して垂直に固定された下側フランジ17と、ウェブ24a,24bの上側に配置され、ウェブ24a,24bに対して垂直に固定された上側フランジ16とから構成されており、全体として中間部分が湾曲したく字型状に形成されている。
【0028】
すなわち、ウェブ24a,24b、上側フランジ16、及び下側フランジ17で囲まれたボックス状のブーム12の内部は、空洞になっている。このように、ブーム12が、ウェブ24a,24b、上側フランジ16、及び下側フランジ17から構成されることによって強度を保ちつつ、ブーム12の重量を軽減している。なお、アーム13は、ブーム12と同様にウェブ、上側フランジ、及び下側フランジによって構成されているが、ブーム12の形状と異なり、直線状に形成されている。
【0029】
さらに、本発明の第1実施形態では、ブーム12の上面を形成する上側フランジ16は、ブーム12の基端側及び先端側において板材16a,16bを有し、この板材16a,16bは、例えばブーム12の構成部材の直線形状部分に設けられている。また、ブーム12の上側フランジ16の曲線形状部分には、板材16a,16bの板厚よりも薄い板厚に設定され、円弧状に曲げられた曲板16cが設けられている。具体的には、曲板16cがブーム12の中央部分に配置されてウェブ24a,24bの上側端部に固着されている。
【0030】
板材16aは、ブーム12のうち基端側に配置されてウェブ24a,24bの上側端部に固着されている。また板材16bは、ブーム12のうち先端側、すなわちアーム13側に配置されてウェブ24a,24bの上側端部に固着されている。そして、曲板16cのうちフロント作業機4の長さ方向における両端が板材16a,16b間を繋ぐように固着され、板材16a、曲板16c、板材16bによりブーム12の上面を形成する上側フランジ16を構成する。なお、板材16a,16bの厚さは、図3、4に示すようにフロント作業機4の左右方向において一定に設定されている。
【0031】
図3〜図6に示すように板材16a,16bには、その長手方向に圧油の流通が可能な孔25a,25b,26a,26b,27a,27bが穿設され、板材16aは、図3、図5に示すようにブーム12の基端側でアームシリンダ13a、バケットシリンダ14aへの圧油の給排を行う、孔25a,25b,26a,26bの4本の孔がそれぞれ2本ずつ左右両側に分かれて設けられ、板材16bは、図4、図6に示すようにブーム12の先端側でバケットシリンダ14aへの圧油の給排を行う孔27a,27bの2本が、それぞれ1本ずつ左右両側に分かれて設けられる。図5、図6に示すように板材16a,16bの間に設けられる曲板16cは、板材16a,16bよりも薄い板厚で形成され、孔25a,25b,26a,26b,27a,27bを塞ぐことがないように、孔25a,25b,26a,26b,27a,27bよりも下方位置で板材16a,16bの端部に接合される。また、曲板16c上には、板材16aの孔25a,25bの各一端とアームシリンダ13aとをそれぞれ接続する2本のホース21と、板材16aの孔26a,26bと板材16bの孔27a,27bとを接続する2本のホース22が配設されている。なお、孔25a,25bとホース21とは継手31を介して油密に接続され、孔27a,27bとホース22とは継手32を介して油密に接続される。
【0032】
さらに、ブーム12の基端側には、図示されないが、板材16aの孔25a,25b,26a,26bの各他端と旋回体3に設けられる多連バルブとをそれぞれ接続する4本のホースが配設されている。そして、これらの孔25a,25b,26a,26bの各他端と当該ホースとの接続部分は、上述したのと同様に、図示しない継手を介して油密に接続されている。
【0033】
また、図2に示すようにブーム12の先端側には、板材16bの孔27a,27bの各他端とバケットシリンダ14aとをそれぞれ接続する2本のホース23がそれぞれ配設されている。そして、これらの孔27a,27bの各他端と各ホース23との接続部分は、上述したのと同様に、図示しない継手を介して油密に接続されている。
【0034】
従って、本発明の第1実施形態では、キャブ7内の作業者が操作レバーを操作してアーム13を動作させた場合には、油圧ポンプから圧油が吐出され、多連バルブで圧油の流量が調整される。そして、圧油がブーム12の基端側に配設されたホースを通って図3に示す板材16aの孔25aへ流入し、この孔25aを流通した圧油は、図2に示す曲板16c上に配設されたホース21を通ってアームシリンダ13aへ導かれる。一方、アームシリンダ13aからの戻り油は、曲板16c上に配設された他のホース21を通って図3に示す板材16aの孔25bへ流入し、この孔25bを流通した圧油は、ブーム12の基端側に配設されたホースを通って多連バルブを介して作動油タンクへ戻される。
【0035】
また、キャブ7内の作業者が操作レバーを操作してバケット14を動作させた場合には、油圧ポンプから圧油が吐出され、多連バルブで圧油の流量が調整される。そして、圧油が板材16aの孔26aに流入し、曲板16c上に配設された2本のホース22のうち、1本のホース22を通って図4に示す板材16bの孔27aへ流入し、孔27aを流通した圧油は、ブーム12の先端側に配設された2本のホース23のうち1本のホース23を通ってバケットシリンダ14aへ導かれる。一方、バケットシリンダ14aからの戻り油は、ブーム12の先端側に配設された他の1本のホース23を通って図4に示す板材16bの孔27bへ流入し、孔27bを流通した圧油は、図2に示す曲板16c上の他の1本のホース22を通って板材16aの孔26bを通って多連バルブを介して作動油タンクへ戻される。なお上述した説明は、シリンダの伸長または収縮の一方向の動作についてのものであり、他方向への動作では、圧油の給排方向が逆となる。そのため、伸長時にシリンダへの供給側となる孔は、収縮時には、排出側(戻り油側)となり、伸長時にシリンダから排出側(戻り油)側となる孔は、収縮時には、供給側となる。また、キャブ7内の作業者が操作レバーを操作してブーム12を動作させた場合には、油圧ポンプから圧油が吐出され、多連バルブで圧油の流量が調整された後に、圧油がホースによってブームシリンダ12aへ供給される。一方、ブームシリンダ12aからの戻り油は、ホースを通って多連バルブを介して作動油タンクへ戻される。
【0036】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、圧油を流通可能にさせる孔25a,25b,26a,26bを有する板材16a、及び圧油を流通可能にさせる孔27a,27bを有する板材16bを備えていることにより、第1圧油誘導手段として油圧ポンプから供給される圧油を板材16aの孔25a,25bのいずれか一方に流通させてアームシリンダ13aへ導く共に、第2圧油誘導手段として、アームシリンダ13aからの戻り油を板材16aの孔25a,25bのいずれか他方に流通させて作動油タンクへ導くとともに、第1圧油誘導手段として油圧ポンプから供給される圧油を板材16aの孔26a,26bのいずれか一方及び、板材16bの孔27a,27bのいずれか一方に流通させてバケットシリンダ14aへ導くと共に、第2圧油誘導手段として、バケットシリンダ14aからの戻り油を板材16bの孔27a,27bのいずれか他方及び、板材16aの孔26a,26bのいずれか他方に流通させて作動油タンクに導くことができる。
【0037】
そして、板材16a,16bはブーム12の上面を構成し、ブーム12と一体に設けられているので、掘削等の作業に伴う振動等が生じても板材16a,16bがブーム12に対して安定した固定状態を保つことができ、第1圧油誘導手段及び第2圧油誘導手段のブーム12に対する位置ずれを防止することができる。これにより、板材16a,16bの各孔25a,25b,26a,26b,27a,27bに接続されるホース21,22,23の伸縮を抑制することができるので、これらのホース21,22,23や継手31,32が損傷して内部を流れる圧油が漏洩することを低減することができる。
【0038】
また、本発明の第1実施形態では、上述したように板材16a,16bの内部に各孔25a,25b,26a,26b,27a,27bを有する構成とすることにより、圧油をアームシリンダ13aやバケットシリンダ14aへ導くために、例えば配管をブーム12と別体に設けなくて済むので、フロント作業機4の重量を低減することができる。このように、油圧ポンプから吐出された圧油をアームシリンダ13aやバケットシリンダ14aへ導く第1圧油誘導手段及びアームシリンダ13aやバケットシリンダ14aからの戻り油を作動油タンクに導く第2圧油誘導手段のブーム12に対する位置ずれを防止すると共に、フロント作業機4の重量を軽量化することができる。これにより、フロント作業機4の機械性能を向上させることができる。
【0039】
また、本発明の第1実施形態は、板材16a,16bは、中間部分が湾曲したく字型状に形成されたブーム12の上側フランジ16の直線形状部分に配置され、すなわち板材16aがブーム12のうち基端側に配置されると共に、板材16bがブーム12のうち先端側に配置されていることにより、これらの板材16a,16bに曲げ加工等を施さなくても良いので、板材16a,16bを構成部材の一つとするブーム12を容易に製作することができ、製作コストを抑えることができる。また、板材16a,16bをブーム12のウェブ24a,24bの上側端部に溶接によって固定することにより、ブーム12を迅速に製作することができ、製作時間を短縮することができる。
【0040】
また、本発明の第1実施形態は、板材16a,16bがブーム12の上側フランジ16を形成することにより、ブーム12の上側フランジ16の曲板16c上に設けられるホース21,22の配設を容易に行うことができ、ホース21,22の配設作業を行う作業者の負担を軽減することができる。また、ブーム12の構成部材として板材16a,16bと上側フランジ16を別々に構成するよりもブーム12の部品点数を減らすことができ、ブーム12の生産性を高めることができる。さらに、板材16a,16bがアームシリンダ13の近傍に位置するので、ホース21の長さを短くすることができる。これにより、ホース21の破損リスクを低減することができる。
【0041】
また、本発明の第1実施形態は、ブーム12の側板を形成する一対のウェブ24a,24bに板材16a,16bを垂直に固定することにより、これらの板材16a,16bがフロント作業機4の左右方向の力に対して高い剛性を有するので、掘削等の作業に伴う振動等によって板材16a,16bがフロント作業機4の左右方向の力を受けても、板材16a,16bが変形して破損する等の影響を受け難い。これにより、板材16a,16bの高い耐久性を確保することができ、板材16a,16bの内部における孔25a,25b,26a,26b,27a,27bからの圧油の漏れを抑えて信頼性を向上させることができる。
【0042】
[第2実施形態]
図7は本発明の第2実施形態の要部を説明する図であり、図2に示すA−A断面図に対応する断面図、図8は本発明の第2実施形態の要部を説明する図であり、図2に示すB−B断面図に対応する断面図である。
【0043】
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態が図3、4に示すように板材16a,16bの厚さを、フロント作業機4の左右方向において一定に設定したのに対して、第2実施形態は、例えば図7、8に示すように板材36a,36bのうち孔40a,40b,41a,41b,42a,42bを形成する部分のみを他の部分の厚さよりも大きく設定したことである。すなわち、板材36a,36bのうちフロント作業機4の左右方向における両端の厚さを板材36a,36bの中央部分の厚さよりも大きく設定し、中央部分の板厚を曲板16cとほぼ同じ厚さに設定するものである。これにより、板材36a,36bの中央部分に凹部37a,37bがそれぞれ形成される。そして、アームシリンダ13aは、板材36bの凹部37b上に配置される。他の構成は、第1の実施の形態と同じである。
【0044】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、上述したように板材36a,36bのうち孔40a,40b,41a,41b,42a,42bを形成する部分の厚さを他の部分の厚さよりも大きく設定することにより、板材36a,36bの中央部分の板厚を薄くして板材36a,36bの断面を最適化しているので、板材36a,36bを軽量化することができる。これにより、フロント作業機4の操作性や燃費をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 油圧ショベル
3 旋回体
3a 旋回フレーム
4 フロント作業機
5 エンジンルーム
12 ブーム
12a ブームシリンダ
13 アーム
13a アームシリンダ
14 バケット
14a バケットシリンダ
16 上側フランジ
16a,16b,36a,36b 板材(第1圧油誘導手段、第2圧油誘導手段)
16c 曲板
17 下側フランジ
21,22,23 ホース
24a,24b ウェブ
25a,25b,26a,26b,27a,27b 孔
31,32 継ぎ手
37a,37b 凹部
40a,40b,41a,41b,42a,42b 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、この走行体の上方に設けられた旋回体と、この旋回体の前方に設けられて作業を行うフロント作業機と、このフロント作業機を駆動する圧油を供給する油圧ポンプとを備えた建設機械に備えられ、
前記フロント作業機は、圧油によって伸縮する油圧シリンダと、この油圧シリンダが伸縮することによって動作する作業具と、前記油圧ポンプから吐出された圧油を前記油圧シリンダへ導く第1圧油誘導手段及び前記油圧シリンダからの戻り油をタンクに導く第2圧油誘導手段とを有する建設機械のフロント構造において、
前記第1圧油誘導手段及び前記第2圧油誘導手段の少なくとも一方は、前記作業具を形成する板材に穿設された孔から成ることを特徴とする建設機械のフロント構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械のフロント構造において、
前記板材は、前記作業具の構成部材の直線形状部分に配置されたことを特徴とする建設機械のフロント構造。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械のフロント構造において、
前記作業具は、中間部分が湾曲する形状を有し基端が前記旋回体に回動可能に取り付けられて上下方向に回動するブームを含み、
このブームは、
側板を形成するウェブと、
このウェブの下側に配置され、前記ウェブに対して垂直に固定された下側フランジと、
前記ウェブの上側に配置され、前記ウェブに対して垂直に固定された上側フランジとから少なくとも構成され、
前記板材が前記上側フランジから成ることを特徴とする建設機械のフロント構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の建設機械のフロント構造において、
前記板材のうち前記孔を形成する部分の厚さを他の部分の厚さよりも大きく設定したことを特徴とする建設機械のフロント構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−172380(P2012−172380A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34951(P2011−34951)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】