説明

建設機械旋回機構の駆動装置

【課題】電動モータを有する建設機械旋回機構の駆動装置を建設機械の内部にて他の装備との干渉を避けながらコンパクトに収容することを容易に実現する。
【解決手段】ピニオン12は、下部体101に固定されたリングギア104に噛み合う。上部旋回体102に固定された電動モータ11の回転駆動力が出力軸13から出力されて入力軸14に入力される。減速部16は、入力軸14とピニオン12が固定された出力部15とに連結され、入力軸14に入力された回転駆動力を減速して伝達するとともに出力部15に対して出力する。入力位置変更機構17は、出力軸13の軸線方向C1と入力軸14の軸線方向C2とが平行になるように配置された出力軸13と入力軸14との間において回転駆動力を伝達可能に設けられていることで、出力軸13から出力される回転駆動力を入力軸14に入力するときにおける回転駆動力の回転軸線の位置を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部体の上部に配置された上部旋回体を下部体に対して旋回させる旋回機構と旋回用の電動モータとを有する建設機械において用いられ、上部旋回体を下部体に対して旋回駆動する建設機械旋回機構の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下部の走行体として構成された下部体の上部に上部旋回体が配置されたショベル機等の建設機械において、上部旋回体を下部体に対して旋回させる旋回機構と旋回用の電動モータとを有する建設機械が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された建設機械は、上記の旋回機構と、アクチュエータ駆動用のエンジンと、上記の電動モータとして設けられた電動発電機とを備えたハイブリッド建設機械として構成されている。そして、特許文献1の建設機械においては、上記のエンジンにより駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからの吐出油により駆動される油圧アクチュエータとが設けられるとともに、第1電動機及び第2電動機と蓄電装置とが設けられている。第1電動機はエンジンによって駆動され、この第1電動機による発電電力が蓄電装置に充電される。そして、蓄電装置の電力によって第2電動機(旋回用の電動モータ)が駆動され、これにより、上部旋回体が下部体に対して旋回駆動される。また、第2電動機は、旋回体の旋回制動時には、旋回体の慣性エネルギを電気エネルギに変換して回生するように発電作動する電動発電機として設けられている。この電動発電機による発電電力は、蓄電装置に充電される。
【0003】
特許文献1に開示された建設機械においては、上記の第2電動機として構成された電動モータを有するとともに上部旋回体を下部体に対して旋回駆動する駆動装置として設けられた、建設機械旋回機構の駆動装置が備えられている。また、特許文献2においても、上部旋回体を下部体に対して旋回駆動する装置として設けられた建設機械旋回機構の駆動装置が開示されている。特許文献2に開示された建設機械旋回機構の駆動装置は、旋回用の電動モータと、下部体に固定されたリングギアに噛み合うピニオンと、電動モータからの回転駆動力を減速してピニオンに出力する減速部とを有する装置として構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−275945号公報(第4−5頁、第1図)
【特許文献2】特開2000−104287号公報(第3頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示されているように、建設機械の旋回機構においては、上部旋回体を下部体に対して旋回駆動するための回転駆動力を発生させる旋回モータが電動モータとして構成された駆動装置が知られている。しかしながら、一般的な電動モータは高さ方向の寸法が大きいため、建設機械旋回機構の駆動装置において上記の旋回モータとして電動モータが用いられると、装置の大型化を招いてしまい易く、収容スペースが限られた建設機械においてこの駆動装置をコンパクトに収容することが困難となる。即ち、特許文献2の図3に開示されているように、建設機械旋回機構の駆動装置は、ピニオンがリングギアに噛み合うように配置されるため、ピニオンに出力する回転駆動力を減速する減速部に対して直列に連結された電動モータが上部旋回体の内部において大きく突出してしまい易くなる。このため、建設機械においては、電動モータを有する建設機械旋回機構の駆動装置について、油圧機器や制御機器等の各種機器、作業者の運転席等が設置される運転室、などの他の装備との干渉を避けながらコンパクトに収容することが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、建設機械で用いられて電動モータを有する建設機械旋回機構の駆動装置に関し、建設機械の内部において他の装備との干渉を避けながらコンパクトに収容することを容易に実現できる、建設機械旋回機構の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための第1発明に係る建設機械旋回機構の駆動装置は、下部体の上部に配置された上部旋回体を前記下部体に対して旋回させる旋回機構と電動モータとを有する建設機械において用いられ、前記上部旋回体を前記下部体に対して旋回駆動する、建設機械旋回機構の駆動装置に関する。そして、第1発明に係る建設機械旋回機構の駆動装置は、前記下部体に固定されたリングギアに対して噛み合うピニオンと、前記上部旋回体に固定された前記電動モータと、前記電動モータの回転駆動力を出力する出力軸と、前記出力軸から出力される回転駆動力が入力される入力軸と、前記ピニオンが固定された出力部と、前記入力軸及び前記出力部に連結され、前記入力軸に入力された回転駆動力を減速して伝達するとともに前記出力部に対して出力する減速部と、前記出力軸の軸線方向と前記入力軸の軸線方向とが平行になるように配置された当該出力軸と当該入力軸との間において回転駆動力を伝達可能に設けられていることで、前記出力軸から出力される回転駆動力を前記入力軸に入力するときにおける回転駆動力の回転軸線の位置を変更する入力位置変更機構と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この発明によると、建設機械で用いられて電動モータを有する建設機械旋回機構の駆動装置において、電動モータ側の出力軸と減速部側の入力軸との間において回転駆動力を伝達可能な入力位置変更機構が設けられる。そして、入力位置変更機構は、電動モータ側の出力軸の軸線方向と減速部側の入力軸の軸線方向とが平行になるように配置されていることで、上記出力軸から出力される回転駆動力を上記入力軸に入力するときにおける回転駆動力の回転軸線の位置を変更するように構成されている。このため、電動モータは、リングギアに噛み合うピニオンが固定された出力部に連結された減速部に対して、直列に配置されことなく、回転駆動力の回転軸線が平行にずれた位置に配置される。よって、特許文献2に開示された建設機械旋回機構の駆動装置のように減速部に対して直列に配置された電動モータが上部旋回体の内部に大きく突出して他の装備との干渉を招き易くなってしまうことを防止できる。即ち、電動モータを有する建設機械旋回機構の駆動装置について、油圧機器や制御機器等の各種機器、作業者の運転席等が設置される運転室、などの他の装備との干渉を避けながら、建設機械の内部にコンパクトに収容することを容易に実現することができる。
【0009】
従って、本発明によると、建設機械で用いられて電動モータを有する建設機械旋回機構の駆動装置において、建設機械の内部にて他の装備との干渉を避けながらコンパクトに収容することを容易に実現できる。
【0010】
第2発明に係る建設機械旋回機構の駆動装置は、第1発明の建設機械旋回機構の駆動装置において、前記電動モータが、前記入力位置変更機構に対して、前記減速部が配置される側と反対側に配置されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によると、電動モータが、減速部に対して直列に配置されることなく回転駆動力の回転軸線が平行にずれた位置に配置されるとともに、入力位置変更機構に対して減速部が配置される側と反対側に配置される。このため、減速部に対して上下方向において重なることなくずれた位置に配置される電動モータについて、上部旋回体の内部にて配置スペースとしての余裕がある領域に(例えば、運転席の下部のスペースなどに)容易に配置することができ、他の装備との干渉を避けながらコンパクトに収容することができる。
【0012】
第3発明に係る建設機械旋回機構の駆動装置は、第1発明の建設機械旋回機構の駆動装置において、前記電動モータが、前記入力位置変更機構に対して、前記減速部が配置される側と同じ側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
この発明によると、電動モータが、減速部に対して直列に配置されることなく回転駆動力の回転軸線が平行にずれた位置に配置されるとともに、入力位置変更機構に対して減速部が配置される側と同じ側に配置される。このため、入力位置変更機構の下方の領域において、減速部に対してその側方において並んだ状態で平行に電動モータを配置でき、他の装備との干渉を避けながらコンパクトに駆動装置を収容することを更に容易に実現できる。そして、本発明によると、上下方向における減速部の高さ寸法の範囲内で電動モータを配置でき、収容の更なるコンパクト化を図ることができる。または、下部体に固定されたリングギアの内側のスペースを有効的に活用して電動モータを配置でき、収容の更なるコンパクト化を図ることができる。尚、リングギアの内側のスペースを有効活用して電動モータを配置する場合は、減速部よりも高さ方向の寸法が大きい(減速部よりも軸方向長さが長い)電動モータであっても容易に配置することができる。
【0014】
第4発明に係る建設機械旋回機構の駆動装置は、第1発明乃至第3発明のいずれかの建設機械旋回機構の駆動装置において、前記入力位置変更機構は、前記出力軸の回転駆動力を前記入力軸に対して減速して伝達することを特徴とする。
【0015】
この発明によると、入力位置変更機構において出力軸の回転駆動力が入力軸に対して減速して伝達されるため、所望される減速比を減速部だけでなく入力位置変更機構に効率よく分担させることができ、減速部での減速比を小さく設定することができる(減速部で減速される速度の量が小さくなるように設定することができる)。これにより、減速部の小型化を図ることができ、駆動装置の更にコンパクトな収容を実現することができる。
【0016】
第5発明に係る建設機械旋回機構の駆動装置は、第4発明の建設機械旋回機構の駆動装置において、前記入力位置変更機構は、前記入力軸に固定された減速部側歯車と、前記出力軸に固定されて前記減速部側歯車に噛み合うとともに当該減速部側歯車よりも直径寸法が小さい電動モータ側歯車と、を有していることを特徴とする。
【0017】
この発明によると、出力軸の回転駆動力を入力軸に対して減速する入力位置変更機構が減速部側歯車とこの減速部側歯車よりも小径の電動モータ側歯車とを備えて構成される。このため、出力軸から出力される回転駆動力を入力軸に入力するときにおける回転駆動力の回転軸線の位置を変更する機能を有するとともに減速機能も有する入力位置変更機構を2つの噛み合う歯車を有する機構として簡素な構成で実現することができる。また、2つの噛み合う歯車による簡素な機構として設けられるため、入力位置変更機構における駆動力伝達効率の低下を抑制することもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、建設機械で用いられて電動モータを有する建設機械旋回機構の駆動装置において、建設機械の内部にて他の装備との干渉を避けながらコンパクトに収容することを容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建設機械旋回機構の駆動装置が用いられる建設機械を模式的に示す側面から見た断面図である。
【図2】図1における建設機械旋回機構の駆動装置及びその近傍を拡大して示す図である。
【図3】比較例に係る建設機械旋回機構の駆動装置が用いられる建設機械を模式的に示す側面から見た断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る建設機械旋回機構の駆動装置が用いられる建設機械を模式的に示す側面から見た断面図である。
【図5】図4における建設機械旋回機構の駆動装置及びその近傍を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態においては、下部体の上部に配置された上部旋回体を下部体に対して旋回させる旋回機構とアクチュエータ駆動用のエンジンと電動発電機として設けられた旋回用の電動モータとを有するハイブリッド建設機械において用いられる建設機械旋回機構の駆動装置を例にとって説明するが、この例に限らず、本発明を広く適用することができる。即ち、本発明は、下部体の上部に配置された上部旋回体を下部体に対して旋回させる旋回機構と旋回用の電動モータとを有する建設機械において用いられ、上部旋回体を下部体に対して旋回駆動する建設機械旋回機構の駆動装置に関して、広く適用することができるものである。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る建設機械旋回機構の駆動装置1(以下、単に「駆動装置1」ともいう)が適用されるショベル機100を模式的に示す側面から見た断面図である。図1に示すショベル機100は、一対の走行クローラ101a(図1では一方のクローラ101aのみを図示)を有する下部の走行体を構成する下部体101の上部に上部旋回体102が旋回自在に配置されている。そして、このショベル機100は、上部旋回体102を下部体101に対して旋回させる旋回機構103と、アクチュエータ駆動用のエンジン(図示せず)と、電動発電機として設けられた旋回用の電動モータ11とを有するハイブリッド建設機械として構成されている。尚、このショベル機100は、いわゆるミニショベルとして構成されている。
【0022】
上部旋回体102には、ショベル機100の運転を行う作業者の運転席106aや後述のアクチュエータを操作するための操作機器などが設置された運転室106が設けられている。また、上部旋回体102においては、運転席106aが設置される床板107と、床板107の下方に配置されて上部旋回体102の底部を構成するとともに駆動装置1が設置される底板108とが設けられている。
【0023】
図2は、図1において本実施形態の駆動装置1とその近傍とを拡大して示す図である。図1及び図2に示すように、ショベル機100の旋回機構103は、駆動装置1、リングギア104、旋回軸受105、等を備えて構成されている。旋回軸受105は、外輪105a、内輪105b、転動体105c等を備えて構成されている。上部旋回体102の底板108には円形の貫通孔が形成されており、この貫通孔の縁部分において、底板108に対して外輪105aが固定されている。また、外輪105aの内側に対して転動体105cを介して回転自在に配置された内輪105bは、下部体101に対して固定されている。そして、リング状に形成されるとともに内周に歯が形成されたリングギア104は、内輪105bの内周に対して固定されている。このように、リングギア104は、内輪105bを介して、下部体101に固定されている。
【0024】
駆動装置1は、上部旋回体102に設置されており、ピニオン12においてリングギア104に対して噛み合うように配置されている。そして、駆動装置1が後述のように作動することで、上部旋回体102が下部体101に対して旋回駆動されることになる。尚、図1においては、上部旋回体102の旋回動作時における回転中心線Pを一点鎖線にて、回転中心線Pを中心とする上部旋回体102の旋回方向を両端矢印Qにてそれぞれ示している。また、上部旋回体102の旋回制動時には、駆動装置1における電動モータ11が駆動されることで、上部旋回体102の慣性エネルギを電気エネルギに変換して回生する発電が電動発電機としての電動モータ11において行われることになる。
【0025】
また、ショベル機100においては、前述のエンジンによって駆動される油圧ポンプ(図示せず)と、旋回体102に設けられた複数のアクチュエータと、上記エンジンによって駆動される発電機(図示せず)と、この発電機による発電電力が充電される蓄電装置(図示せず)とが備えられている。電動発電機として設けられた電動モータ11は、上記の蓄電装置から供給される電力によって駆動されるとともに、上部旋回体102の旋回制動時には発電した電力をこの蓄電装置に充電するように構成されている。また、上記の複数のアクチュエータは、上記の油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される。そして、ショベル機100においては、複数のアクチュエータとして、上記圧油により油圧シリンダによって駆動されるブーム109、アーム(図示せず)、アタッチメントとしてのバケット(図示せず)が設けられている。
【0026】
次に、本実施形態に係る駆動装置1について詳しく説明する。図1及び図2に示すように、駆動装置1は、電動モータ11、ピニオン12、出力軸13、入力軸14、出力部15、減速部16、入力位置変更機構17、等を備えて構成されている。
【0027】
電動モータ11は、前述のように電動発電機として設けられ、上部旋回体102に固定されている。尚、減速部16のハウジングが、上部旋回体102の底板108に対して又は底板108に固定された外輪105aに対して固定され、このハウジングに対して固定された入力位置変更機構17のケース18に対して電動モータ11が固定されている。これにより、電動モータ11が、減速部16及び入力位置変更機構17を介して、上部旋回体102に固定されている。
【0028】
図2において破線で示す出力軸13は、電動モータ11の回転駆動力を出力する電動モータ11の出力軸部として設けられ、先端側が下方に向かって突出するとともに後述する入力位置変更機構17のケース18内に向かって突出するように配置されている。図2において破線で示す入力軸14は、出力軸13から出力される回転駆動力が入力位置変更機構17を介して入力される軸部材として設けられている。図2において破線で示す出力部15は、例えば、軸状の部分として形成されて減速部16の回転駆動力を出力する部分として設けられている。そして、出力部15は、先端側が減速部16の下方に向かって突出するとともにリングギア104の内側に突出するように配置されている。また、出力部15の先端側の外周には、リングギア104の内周の歯に噛み合うピニオン12が、例えばスプライン結合を介して固定されている。
【0029】
減速部16は、床板107の下方のスペース、即ち、上部旋回体102における床板107と底板108との間のスペースに配置されている。また、減速部16は、その上端側において入力軸14に連結されるとともにその下端側において出力部15に連結され、前述のように、そのハウジングの下端部において底板108又は外輪105aに固定されている。そして、減速部16は、入力軸14に入力された回転駆動力を減速して伝達するとともに出力部15に対して出力するように構成されている。この減速部16は、例えば、平歯車を備えて構成された平歯車減速機、太陽歯車と遊星歯車と遊星枠とを備えて構成された遊星歯車減速機、クランク軸と外歯歯車とキャリアとを備えて構成された偏心型減速機、又は、これらの任意の組み合わせによる減速機等を備えて構成される。
【0030】
入力位置変更機構17は、床板107の下方のスペース、即ち、上部旋回体102における床板107と底板108との間のスペースに配置され、ケース18、減速部側歯車19、電動モータ側歯車20、等を備えて構成されている。ケース18は、減速部側歯車19及び電動モータ側歯車20が収容される筐体として設けられるとともに、出力軸13及び入力軸14のそれぞれの端部が内部に突出するように配置されている。そして、ケース18の下面側には減速部16のハウジングにおける上端部が固定され、ケース18の上面側には電動モータ11のハウジングにおける下端部が固定されている。これにより、駆動装置1においては、電動モータ11が、入力位置変更機構17に対して、減速部16が配置される側(下側)と反対側(上側)に配置されるように構成されている。また、駆動装置1においては、電動モータ11は、運転席106aの下部のスペースに配置されている。尚、運転席106aの下部においては、床板107に切り欠かれた部分が形成されており、この床板107における切り欠かれた部分を介して電動モータ11が運転席106aの下部のスペースに突出して配置されている。
【0031】
減速部側歯車19は、入力軸14の端部に固定されたスパーギア又はヘリカルギアとして設けられている。電動モータ側歯車20は、出力軸13の端部に固定されて減速部側歯車19に噛み合うとともに減速部側歯車19よりも直径寸法が小さいスパーギア又はヘリカルギアとして設けられている。上記のように構成された減速部側歯車19及び電動モータ側歯車20が設けられていることで、入力位置変更機構17は、出力軸13の回転駆動力を入力軸14に対して減速して伝達するように構成されている。
【0032】
また、入力位置変更機構17においては、出力軸13の軸線方向C1(図2において破線C1で示す方向)と入力軸14の軸線方向C2(図2において破線C2で示す方向)とが平行になるように配置された出力軸13と入力軸14との間において回転駆動力を伝達可能に設けられている。これにより、入力位置変更機構17は、出力軸13から出力される回転駆動力を入力軸14に入力するときにおける回転駆動力の回転軸線の位置を軸線方向C1から軸線方向C2に変更するように構成されている。
【0033】
次に、上述した駆動装置1の作動について説明する。上部旋回体102の旋回駆動時には、駆動装置1は、図示しない蓄電装置から供給される電力によって駆動される電動モータ11の運転が行われることにより作動する。そして、電動モータ11の運転が開始されると、出力軸11とともに入力位置変更機構17の電動モータ側歯車20が回転し、この電動モータ側歯車20に噛み合う減速部側歯車19が回転する。減速部側歯車19が回転すると、電動モータ11から出力されて入力位置変更機構17を介して回転軸線の位置が軸線方向C1から軸線方向C2に変更された回転駆動力が入力軸14に入力される。入力軸14に入力された回転駆動力は、減速部16で減速して伝達されて出力部15から出力される。これにより、リングギア104に噛み合うピニオン12から大きなトルクが出力され、上部旋回体102が下部体101に対して旋回駆動されることになる。
【0034】
一方、上部旋回体102の旋回制動時には、上記とは逆方向に回転駆動力が伝達される。即ち、上部旋回体102の慣性エネルギによる駆動力がピニオン12を介して出力部15に入力され、減速部16において増速して伝達されて入力軸14から出力され、減速部側歯車19及び電動モータ側歯車20を介して出力軸13に入力され、制動中の電動モータ11において発電が行われることになる。発電された電力は、図示しない蓄電装置に充電されることになる。
【0035】
以上説明したように、駆動装置1によると、電動モータ11側の出力軸13と減速部16側の入力軸14との間において回転駆動力を伝達可能な入力位置変更機構17が設けられる。そして、入力位置変更機構17は、電動モータ11側の出力軸13の軸線方向C1と減速部16側の入力軸14の軸線方向C2とが平行になるように配置されていることで、出力軸13から出力される回転駆動力を入力軸14に入力するときにおける回転駆動力の回転軸線の位置を変更するように構成されている。このため、電動モータ11は、リングギア104に噛み合うピニオン12が固定された出力部15に連結された減速部16に対して、直列に配置されことなく、回転駆動力の回転軸線が平行にずれた位置に配置される。よって、特許文献2に開示された建設機械旋回機構の駆動装置のように減速部に対して直列に配置された電動モータが上部旋回体の内部に大きく突出して他の装備との干渉を招き易くなってしまうことを防止できる。
【0036】
尚、図3は、電動モータ11が減速部16に直列に配置された比較例に係る建設機械旋回機構の駆動装置10が用いられたショベル機110を模式的に示す側面から見た断面図である。図3に示す比較例に係る駆動装置10の場合、減速部16に対して直列に配置された電動モータ11が上部旋回体102の運転室106の内部に大きく突出してしまうことになる。このため、運転室106内で作業者が運転操作を行う際の妨げとなり、運転室106の機能が損なされることになる。即ち、電動モータ11の配置が運転室106との干渉を生じてしまうことになる。しかしながら、駆動装置1においては、前述のように、電動モータ11が、減速部16に対して直列に配置されことなく、回転駆動力の回転軸線が平行にずれた位置に配置される。このため、電動モータ11を有する駆動装置1について、油圧機器や制御機器等の各種機器、運転室106、などの他の装備との干渉を避けながら、ショベル機100の内部にコンパクトに収容することを容易に実現することができる。
【0037】
従って、本実施形態によると、建設機械であるショベル機100で用いられて電動モータ11を有する建設機械旋回機構の駆動装置1において、ショベル機100の内部にて他の装備との干渉を避けながらコンパクトに収容することを容易に実現できる。
【0038】
また、駆動装置1によると、電動モータ11が、減速部16に対して直列に配置されることなく回転駆動力の回転軸線が平行にずれた位置に配置されるとともに、入力位置変更機構17に対して減速部16が配置される側と反対側に配置される。このため、減速部16に対して上下方向において重なることなくずれた位置に配置される電動モータ11について、上部旋回体102の内部にて配置スペースとしての余裕がある領域(図1に及び図2に図示するように、運転席106aの下部のスペースなどに)容易に配置することができ、他の装備との干渉を避けながらコンパクトに収容することができる。
【0039】
また、駆動装置1によると、入力位置変更機構17において出力軸13の回転駆動力が入力軸14に対して減速して伝達されるため、所望される減速比を減速部16だけでなく入力位置変更機構17に効率よく分担させることができ、減速部16での減速比を小さく設定することができる(減速部16減速される速度の量が小さくなるように設定することができる)。これにより、減速部16の小型化を図ることができ、駆動装置1の更にコンパクトな収容を実現することができる。
【0040】
また、駆動装置1によると、出力軸13の回転駆動力を入力軸14に対して減速する入力位置変更機構17が減速部側歯車19とこの減速部側歯車19よりも小径の電動モータ側歯車20とを備えて構成される。このため、出力軸13から出力される回転駆動力を入力軸14に入力するときにおける回転駆動力の回転軸線の位置を変更する機能を有するとともに減速機能も有する入力位置変更機構17を2つの噛み合う歯車を有する機構として簡素な構成で実現することができる。また、2つの噛み合う歯車による簡素な機構として設けられるため、入力位置変更機構17における駆動力伝達効率の低下を抑制することもできる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、第2実施形態に係る建設機械旋回機構の駆動装置2(以下、単に「駆動装置2」ともいう)が適用されるショベル機200を模式的に示す側面から見た断面図である。図4に示すショベル機200は、第1実施形態のショベル機100と同様に構成されているが、上部旋回体102を下部体101に対して旋回駆動する装置として、駆動装置1ではなく駆動装置2が備えられている点が異なっている。そして、駆動装置2は、第1実施形態の駆動装置1と同様に、電動モータ11、ピニオン12、出力軸13、入力軸14、出力部15、減速部16、入力位置変更機構17、等を備えて構成されているが、電動モータ11の配置構成において第1実施形態と異なっている。尚、以下の説明においては、第1実施形態と同様の構成については図面において同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態とは構成の異なる電動モータ11の配置構成について説明する。
【0042】
図5は、図4において駆動装置2とその近傍とを拡大して示す図である。図4及び図5に示すように、入力位置変更機構17のケース18の下面側には、減速部16のハウジングにおける上端部が固定されるとともに、電動モータ11のハウジングにおける上端部が固定されている。そして、電動モータ11は、減速部16と同様に、床板107の下方のスペース、即ち、上部旋回体102における床板107と底板108との間のスペースに配置されている。また、出力軸13は、電動モータ11に対してその上端側において連結され、先端側が上方に向かって突出するとともにケース18内に向かって突出するように配置されている。このように、駆動装置2においては、電動モータ11が、入力位置変更機構17に対して、減速部16が配置される側(下側)と同じ側(下側)に配置されるように構成されている。よって、駆動装置2においては、電動モータ11、減速部16及び入力位置変更機構17の全てが、床板107の下方のスペース、即ち、上部旋回体102における床板107と底板108との間のスペースに配置されている。
【0043】
以上説明した駆動装置2によると、第1実施形態の駆動装置1と同様の効果を奏することができる。即ち、第2実施形態によると、建設機械であるショベル機200で用いられて電動モータ11を有する建設機械旋回機構の駆動装置2において、ショベル機100の内部にて他の装備との干渉を避けながらコンパクトに収容することを容易に実現できる。
【0044】
そして、駆動装置2によると、電動モータ11が、減速部16に対して直列に配置されることなく回転駆動力の回転軸線が平行にずれた位置に配置されるとともに、入力位置変更機構17に対して減速部16が配置される側と同じ側に配置される。このため、入力位置変更機構17の下方の領域において、減速部16に対してその側方において並んだ状態で平行に電動モータ11を配置でき、他の装備との干渉を避けながらコンパクトに駆動装置2を収容することを更に容易に実現できる。そして、本実施形態によると、上下方向における減速部16の高さ寸法の範囲内で電動モータ11を配置でき、収容の更なるコンパクト化を図ることができる。
【0045】
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施することができる。
【0046】
(1)第1及び第2実施形態では、ショベル機として構成されたハイブリッド建設機械において用いられる場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、本発明は、ショベル機以外のハイブリッド建設機械において用いられる建設機械旋回機構の駆動装置に適用されてもよく、また、ハイブリッド建設機械ではない建設機械(ショベル機及びショベル機以外のいずれでもよい)において用いられる建設機械旋回機構の駆動装置に適用されてもよい。よって、商用電源等を用いた電動ショベルやバッテリーショベル、旋回機構を備えたクレーンなどにも本発明を適用することができる。尚、第1及び第2実施形態では、ショベル機としてミニショベルを例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、20tクラスなどのショベル機に本発明が適用されてもよい。
【0047】
(2)第1及び第2実施形態では、入力位置変更機構が、出力軸の回転駆動力を入力軸に対して減速して伝達する形態を例にとって説明したが、この通りでなくもよい。即ち、入力位置変更機構が、出力軸の回転駆動力を入力軸に対して減速せずに伝達する形態であってもよい。また、入力位置変更機構が、出力軸の回転駆動力を入力軸に対して減速して伝達する場合であっても、スパーギア又はヘリカルギア以外の形態の歯車によって回転駆動力を減速して伝達する形態であってもよい。
【0048】
(3)第2実施形態では、電動モータが入力位置変更機構に対して減速部と同じ側に配置される場合において、上下方向における減速部の高さ寸法の範囲内で電動モータが配置される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。電動モータが入力位置変更機構に対して減速部と同じ側に配置される場合において、下部体に固定されたリングギアの内側のスペースを有効的に活用して電動モータが配置され、収容の更なるコンパクト化が図られる形態であってもよい。尚、リングギアの内側のスペースを有効活用して電動モータが配置される場合は、減速部よりも高さ方向の寸法が大きい(減速部よりも軸方向長さが長い)電動モータであっても容易に配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、下部体の上部に配置された上部旋回体を下部体に対して旋回させる旋回機構と旋回用の電動モータとを有する建設機械において用いられ、上部旋回体を下部体に対して旋回駆動する建設機械旋回機構の駆動装置として、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 ショベル機(建設機械)
11 電動モータ
12 ピニオン
13 出力軸
14 入力軸
15 出力部
16 減速部
17 入力位置変更機構
101 下部体
102 上部旋回体
103 旋回機構
104 リングギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部体の上部に配置された上部旋回体を前記下部体に対して旋回させる旋回機構と旋回用の電動モータとを有する建設機械において用いられ、前記上部旋回体を前記下部体に対して旋回駆動する、建設機械旋回機構の駆動装置であって、
前記下部体に固定されたリングギアに対して噛み合うピニオンと、
前記上部旋回体に固定された前記電動モータと、
前記電動モータの回転駆動力を出力する出力軸と、
前記出力軸から出力される回転駆動力が入力される入力軸と、
前記ピニオンが固定された出力部と、
前記入力軸及び前記出力部に連結され、前記入力軸に入力された回転駆動力を減速して伝達するとともに前記出力部に対して出力する減速部と、
前記出力軸の軸線方向と前記入力軸の軸線方向とが平行になるように配置された当該出力軸と当該入力軸との間において回転駆動力を伝達可能に設けられていることで、前記出力軸から出力される回転駆動力を前記入力軸に入力するときにおける回転駆動力の回転軸線の位置を変更する入力位置変更機構と、
を備えていることを特徴とする、建設機械旋回機構の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械旋回機構の駆動装置であって、
前記電動モータが、前記入力位置変更機構に対して、前記減速部が配置される側と反対側に配置されていることを特徴とする、建設機械旋回機構の駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械旋回機構の駆動装置であって、
前記電動モータが、前記入力位置変更機構に対して、前記減速部が配置される側と同じ側に配置されていることを特徴とする、建設機械旋回機構の駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の建設機械旋回機構の駆動装置であって、
前記入力位置変更機構は、前記出力軸の回転駆動力を前記入力軸に対して減速して伝達することを特徴とする、建設機械旋回機構の駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械旋回機構の駆動装置であって、
前記入力位置変更機構は、前記入力軸に固定された減速部側歯車と、前記出力軸に固定されて前記減速部側歯車に噛み合うとともに当該減速部側歯車よりも直径寸法が小さい電動モータ側歯車と、を有していることを特徴とする、建設機械旋回機構の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−241540(P2011−241540A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112320(P2010−112320)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】