説明

建設機械用カプラ装置

【課題】雌雄のカプラ同士の接続、分離が労力少なく容易に行え、接続、分離が迅速に行えると共に、接続状態が確実に保持できる建設機械用カプラ装置を提供する。
【解決手段】互いに嵌合される雌雄のカプラのうちの一方のカプラ48を保持する第1のホルダ49に枠体54を設ける。第2のホルダ57に他方のカプラ46を保持すると共に、第2のホルダ57を枠体54に対して相対的に摺動可能に設ける。第2のホルダ57と枠体54との間に、カプラ46,48同士を嵌合、分離する油圧シリンダ69を設ける。第2のホルダ57に移動可能に係止爪77を設け、枠体54に係止部80を設ける。枠体54の係止部80に係止爪77を係止した状態において、カプラ46,48同士の嵌合状態を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送時に分解される比較的大型の油圧ショベル、クレーンあるいはこれらの応用機械として構成される建設機械において、分離される構成部品にそれぞれ添設される油圧配管同士の接続に用いられるカプラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の建設機械においては、輸送時の重量制限やサイズの制限をクリアするため、構成部品の一部を他の構成部品から分離して輸送することが行われる。例えば作業用フロント(ブーム、アームおよびアームの先端に取付けるバケット、ブレーカ、破砕具等の作業具)を本体から分離して輸送したり、さらにブーム、アームを分離輸送したり、クローラを上部旋回体から分離輸送したりする。このような分離輸送にあたり、分離する部品にそれぞれ添設される油圧配管は部品の分離箇所において同時に分離され、作業現場において接続される。このような油圧配管の分離、接続を行なうため、特許文献1に記載のように雌雄のカプラ(継手)からなるカプラ装置が設けられる。このような従来のカプラ装置として、作業員が人力により雌雄のカプラ同士を押圧、引き抜いて嵌合、分離するものと、ねじを用いて嵌合、分離するものとがある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−61061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のカプラ装置のうち、人力を用いて雌雄のカプラ同士を押圧、引き抜いて接続、分離するものは、建設機械が大型になると、油圧配管に内圧が存在する場合に、多大の労力を要し、接続が困難になるという問題点がある。また、ねじを用いて雌雄のカプラ同士を締結する構造のカプラ装置においては、接続、分離に手間を要するという問題点がある。特に大型のカプラの入手が困難であって、1つの油路ラインに対して2対のカプラを準備する必要がある場合、接続すべきカプラ数が2倍となり、接続、分離に要する手間、労力が多大となり、現場における段取り時間が長くかかることになる。
【0005】
そこで、油圧シリンダを用いてカプラ同士の接続、分離を行なうことが考えられる。しかしながら、油圧シリンダでカプラの接続、分離を行う場合、油漏れあるいは油圧回路のトラブルにより接続状態が維持できなくなる恐れがあるという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、雌雄のカプラ同士の接続、分離が労力少なく容易に行え、接続、分離が迅速に行えると共に、接続状態が確実に保持できる建設機械用カプラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の建設機械用カプラ装置は、建設機械の分離、連結可能な複数の構成部品にそれぞれ添設される油圧配管同士を互いに分離可能に接続する建設機械用カプラ装置において、
互いに嵌合される雌雄のカプラのうちの一方のカプラを保持する第1のホルダと、
前記第1のホルダに設けられた枠体と、
互いに嵌合される雌雄のカプラのうちの他方のカプラを保持すると共に、前記枠体に対して相対的に摺動可能に設けられる第2のホルダと、
前記第2のホルダと前記枠体との間に設けられ、前記第1のホルダと前記第2のホルダとの間を近接、離反させてカプラ同士を嵌合、分離する油圧シリンダと、
前記第2のホルダに設けたガイド部に沿って摺動可能に取付けられる係止爪と、
前記枠体に凹状に設けられ、前記係止爪が挿嵌される係止爪係止部と、
前記第2のホルダに設けられ、前記係止爪を前記係止爪係止部に対して挿嵌する位置と離間する非係止位置とで保持する係止爪保持手段とを備えた
ことを特徴とする。
【0008】
請求項2の建設機械用カプラ装置は、請求項1に記載の建設機械用カプラ装置において、
前記係止爪保持手段は、前記係止爪にその変位方向に間隔を有して設けられた2つの凹部に対して弾性的に押圧嵌合され、前記係止爪係止部に対する係止位置、非係止位置をそれぞれ保持する係合体を備えたものである
ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の建設機械用カプラ装置は、請求項1または2に記載の建設機械用カプラ装置において、
前記油圧シリンダへ供給する圧油を制御するコントロール弁が3位置切換弁でなり、前記コントロール弁は、中立位置において、前記油圧シリンダのボトム室およびロッド室が油タンクに連通する構成を有する
ことを特徴とする。
【0010】
請求項4の建設機械用カプラ装置は、請求項1から3までのいずれか1項に記載の建設機械用カプラ装置において、
前記第1のホルダと前記第2のホルダと前記油圧シリンダとを1つの油圧アクチュエータ対応のユニットとしてそれぞれ備えた
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、油圧シリンダの力を利用して雌雄カプラの接続、分離を行うため、油圧配管の内部に内圧が残留する大型建設機械の油圧配管の接続、分離も人力による労力を要することなく、容易かつ迅速に行える。したがって、現場における段取り時間や輸送にあたっての建設機械の分解に要する時間の短縮が可能となる。また、係止爪によりホルダの位置が雌雄のカプラ同士の嵌合位置、分離位置に保持されるため、雌雄のカプラ同士を嵌合した状態において、油圧シリンダを駆動状態にしておく必要がなく、駆動状態における油漏れあるいは油圧回路のトラブルによるカプラ同士の外れの問題の発生を回避できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、係止爪に設けた2つの凹部のいずれかに対し、係合体が弾性的に係合することにより、係止爪が固定され、係止爪と枠体の係止爪係止部との係止位置、非係止位置の保持が人力による操作を行うことなく自動的に確実に行える。
【0013】
請求項3の発明によれば、雌雄のカプラ同士を嵌合、分離する油圧シリンダのコントロール弁の中立位置において、前記油圧シリンダのボトム室およびロッド室を油タンクに連通しておくことができるため、油圧シリンダに与える負担が軽減され、油圧シリンダを延命化することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、前記第1のホルダと第2のホルダと油圧シリンダとを1つの油圧アクチュエータ対応のユニットとしてそれぞれ備えたので、多関節フロントの構成変更や作業具の取替え等に伴って油圧ラインの増減を行う場合、ユニットの着脱によって容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明のカプラ装置を適用する建設機械の一例を示す側面図である。この建設機械は、下部走行体1上に旋回装置2を介して上部旋回体3を設置し、この上部旋回体3には油圧パワーユニット4や運転室5を設置して建設機械本体を構成する。上部旋回体3の前部にはフロント取付け用のブラケット6を設ける。このブラケット6には直接多関節フロント7を取付ける場合もあるが、この例においては、このブラケット6にピン9,10によりアダプタ8を介して多関節フロント7を取付けている。
【0016】
多関節フロント7は、アダプタ8にピン11により起伏可能に取付けられた第1のアーム12と、アダプタ8と第1アーム12にそれぞれピン13,14により両端を連結して取付けられた第1のアームシリンダ15と、第1のアーム12の先端にピン16により回動可能に取付けられた第2のアーム17と、第1のアーム12と第2のアーム17にそれぞれピン18,19により両端を連結して取付けられた第2のアームシリンダ20と、第2のアーム17の先端にピン21により回動可能に取付けられた第3のアーム22と、第2のアーム17と第3のアーム22にそれぞれピン23,24により両端を連結して取付けられた第3のアームシリンダ25とを有する。
【0017】
この例では作業具としての破砕具27がピン28により第3のアーム22の先端に回動可能に取付けられる。この破砕具27を回動させるための作業具シリンダ29の一端は第3のアーム22にピン30により連結される。作業具シリンダ29の他端は、一端が第3のアーム22にピン連結されたアームリンク31および一端が破砕具27にピン連結された作業具リンク32の各他端にピン33により連結される。作業具としては破砕具のみならず、掘削用バケット、ブレーカ、圧砕器等、その他の特殊作業具が交換可能に取付け可能である。
【0018】
図2は上部旋回体3に設けたブラケット6とアダプタ8との間の油路の接続を行うカプラ装置の一実施の形態を示す側面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図2の背面図である。図2ないし図4において、35は上部旋回体3上に設置されるコントロール弁(図示せず)に接続される油圧配管として設けられた可撓性を有する油圧ホースである。36は多関節フロント7に添設される油圧配管として設けられた可撓性を有する油圧ホースである。37は油圧ホース35,36間を接続するカプラ装置である。フロント側油圧ホース36は、前記アームシリンダ15,20,25並びに作業具シリンダ29への作動油および破砕具27に備える油圧シリンダ27a(図1参照)や旋回モータ(図示せず)への作動油を供給するためのものである。
【0019】
この実施の形態においては、建設機械が大型であり、多関節フロント7に添設する大径の油圧ホース36に対応する雌雄カプラを用いず、入手が容易な市販の雌雄カプラを用い、1本の油圧ホース36に対して2対のカプラを使用して構成した例を示す。このため、フロント7側の1本の油圧ホース36に対し、上部旋回体3側の油圧ホース35は2本が対応する。この構成を実現するため、フロント側7には1本の油圧ホース36をそれぞれ2本の中継ホース39,39に分流させるための分流装置40を設ける。41はこの分流装置40をアダプタ8に取付けるための取付け板であり、この取付け板41はボルト44によりアダプタ8に取付けられる。分流装置40は、取付け板41にボルト42によって取付けられる複数の分流ブロック43からなる。各分流ブロック43は、内部に分流させるための油路43aを設けたものであり、1本の油圧ホース36に対し、2本の中継ホース39,39が内部の油路43aを通して連通する。
【0020】
45はボルト46によってブラケット6に取付けられるカプラ装置取付け板である。フロント側油圧ホース36の1本に対し、上部旋回体3側油圧ホース35が2本設けられる関係上、1枚のフロント側取付け板41に対し、上部旋回体3側に2枚の取付け板45が設けられる。カプラ装置37は、アームシリンダ15,20,25、作業具シリンダ29および破砕具27の油圧シリンダ27aや旋回モータ対応にそれぞれ1つのユニット37aを構成して設けられる。ただし、一部の油圧アクチュエータはユニット間に跨がって配設される場合もある。各ユニット37aは、カプラ装置取付け板45にボルト47によって取付けられる。油圧ホース35は、取付け板45に設けた穴45aに通して設置される。
【0021】
図5ないし図10はカプラ装置37の構造を説明する図であり、図5はカプラ同士を接続した状態を示す斜視図、図6はその分解斜視図、図7はその一部断面側面図、図8、図9はそれぞれカプラ同士を接続した状態、分離した状態で示す一部省略背面図、図10は一部断面底面図である。
【0022】
図2〜図10において、46は上部旋回体3側油圧ホース35の端部に設けた雌カプラ、48は中継ホース39の端部に設けられ、雌カプラ46に嵌合される雄カプラである。49は雄カプラ48を保持する第1のホルダである。図6に示すように、第1のホルダ49の片面にはU字形の取付け溝49aが設けられ、この取付け溝49aの内面に抜け止め溝49bを有する。雄カプラ48は鍔部48aを有し、この鍔部48aを第1のホルダ49の抜け止め溝49bに嵌めた状態で取付け溝49aに嵌め、固定板51を第1のホルダ49の外面に当て、この固定板51に設けたボルト挿通孔52にボルト58を通し、第1のホルダ49に設けたねじ孔53に螺合することにより、雄カプラ48が第1のホルダ49に着脱可能に固定される。
【0023】
図6に示すように、第1のホルダ49には枠体54が設けられる。図7〜図9に示すように、枠体54は左右の縦枠54aと横枠54bとがボルト55により結合されたものである。この枠体54は、左右の縦枠54aの一端を第1のホルダ49に設けた取付け穴49cに嵌合し、ボルト56によって第1のホルダ49に固定して取付けられる。
【0024】
57は雌カプラ46は保持する第2のホルダである。図6に示すように、第2のホルダ57は、両側面に矩形の凹部57aを有し、これらの凹部57aにそれぞれ枠体54の縦枠54aを嵌め、図8〜図10に示すように、縦枠54aの外側および第2のホルダ57の側面に蓋板59を当ててボルト61によって第2のホルダ57に固定する。これにより、第2のホルダ57と枠体54とは縦枠54aの長手方向に相対的に移動可能に組み合わせる。
【0025】
図6に示すように、第2のホルダ57は背面にU字形の取付け溝57bを有し、この取付け溝57bは先端に内周に突出した突出部57cを有する。雌カプラ46は先端に抜け止め用のくびれ部46aを有する。雌カプラ46は、くびれ部46aを突出部57cに嵌めて取付け溝57bに雌カプラ46を嵌め、固定板64を第2のホルダ57と雌カプラ46の背面に当て、この固定板64に設けたボルト挿通孔65にボルト63を通し、第2のホルダ57に設けたねじ孔66に螺合することにより、雌カプラ46が第2のホルダ57に固定される。この第2のホルダ57はボルト47により取付け板45に固定される。
【0026】
69はカプラ同士を嵌合、分離する油圧シリンダである。この油圧シリンダ69は、図8〜図10に示すように、チューブ側をボルト70によって第2のホルダ57に固定し、ロッド側を枠体54の横枠54bにボルト71によって固定することにより、第2のホルダ57と枠体54との間に取付けられる。図9に示すように油圧シリンダ69を収縮させた状態においては、雌カプラ46と雄カプラ48とは分離状態にあり、油圧シリンダ69の伸長により、図8に示すように雌カプラ46と雄カプラ48とが結合される。図5に示すように、各油圧シリンダ69のボトム室は互いに油圧ホース72によって並列に接続され、ロッド室も互いに油圧ホース73により並列に接続される。
【0027】
図11は油圧シリンダ69を伸縮させる油圧回路である。74は上部旋回体3上の油圧パワーユニット4に含まれる油圧源、75は同じく油タンク、76はコントロール弁である。コントロール弁76は上部旋回体3上に設置されたコントロール弁用の予備のポートに接続される。このコントロール弁76は、図示の上位置に切換えられると油圧シリンダ69が伸長し、下位置に切換えらえると油圧シリンダ69が収縮し、中立位置においては、油圧シリンダ69のボトム室、ロッド室が共に油タンク75に連通する構成を有する。
【0028】
図5、図6、図12において、77は油圧シリンダ69を伸長させてカプラ46,48同士を嵌合させた状態でこの嵌合状態を保持するために設けられた係止爪である。78は左右の係止爪77間に設けられ、両端をボルト79により締結して設けた係止爪操作用ハンドルである。図6に示すように、この係止爪77は、第2のホルダ57の両側面に設けた凹部57dと前記蓋板59とからなるガイド部に摺動可能に嵌め込まれて取付けられている。80は枠体54の縦枠54aに係止爪77の係止部として設けられた凹部である。
【0029】
図6および図12において、81は係止爪77の凹部80に対する係止位置、非係止位置をそれぞれ保持する係合体として設けられた球体である。この球体81は、第2のホルダ57に設けたねじ孔82内に嵌合され、係止爪77の側面に当接する。83はこの球体81を係止爪77に対して押圧する弾性体として備えたばねである。84はこのばね83の弾性力を受けるためにねじ孔82に螺合して取付けたボルトである。係止爪77の球体81との当接面には係止爪77の変位方向に間隔を有して2つの凹部77a,77bを有する。85は係止爪77の抜け止め用ストッパであり、このストッパ85は第2のホルダ57の端面にボルト86によって固定され、係止爪77の段部77cがストッパ85に当接することにより、係止爪77が抜け止めされる。
【0030】
このカプラ装置を用いて雌雄のカプラ46,48の接続を行う場合の手順は以下の通りである。接続を行う前の状態においては、油圧シリンダ69は収縮状態にしてある。取付け板41に固定してある中継ホース39の端部の雄カプラ48を、取付け板45に取付けられているカプラ装置37の第1のホルダ49の取付け溝49aに嵌め、固定板51を雄カプラ48に被せ、ボルト58でこの固定板51を第1のホルダ49に固定することにより、雄カプラ48を第1のホルダ49に保持させる。一方、雌カプラ48は、予め第2のホルダ57に固定板64およびボルト63により固定しておく。この状態を図9に示す。ただし、図9においては、固定板51,64の図示を省略している。また、このとき、係止爪77は段部77cがストッパ85に当接した状態(図12の2点鎖線で示す)としておく。このとき、球体81は係止爪77の先端側の凹部77aに嵌合されている。
【0031】
次に図11において、油圧シリンダ69のコントロール弁76を上位置に切換え、油圧シリンダ69を伸長させる。ここで、第2のホルダ57は取付け板45に固定されているので、油圧シリンダ69の伸長により枠体54が第1のホルダ49と共に下降し、第2のホルダ57に保持された雌カプラ46に第1のホルダ49に保持された雄カプラ48が嵌合され、両カプラ46,48の嵌合、接続が行われる。
【0032】
このように雌雄のカプラ46,48が嵌合、接続された状態において、図13に示すように、左右の係止爪77,77間に設けられたハンドル78を押して図12の実線に示すように、係止爪77の先端を縦枠54aに設けた凹部80に挿入する。この係止爪77の押し込み操作において、当初は球体81はばね83により係止爪77に設けた凹部77aに加圧して嵌め込まれた状態であり、係止爪77が凹部80との非係止位置に保持される。この状態から係止爪77を押し込むと、球体81がばね83の力に抗して浮き上がり、続いて係止爪77が凹部80に差し込まれると、球体81がばね83の力により係止爪77の凹部77bに自動的に嵌まり込む。この球体81の凹部77bへのばね83による押圧力、嵌り込みにより、振動等によって係止爪77が凹部80から抜け出ることを阻み、係止状態を保持する。このように係止爪77を凹部80に嵌めて係止した状態にした後、図11に示すコントロール弁76を中立位置に切換え、油圧シリンダ69のボトム室69aとロッド室69bを油タンク75に連通させ、ボトム室69aとロッド室69bをタンク圧(無圧)とする。
【0033】
このように、このカプラ装置は、油圧シリンダ69の力を利用して雌雄カプラ46,48の接続、分離を行うため、大型建設機械において、油圧ホース35,39の内部に内圧が残留する場合も、油圧ホース35,39の接続、分離も人力による労力を要することなく、容易かつ迅速に行える。したがって、現場における段取り時間や輸送にあたっての建設機械の分解に要する時間の短縮が可能となる。また、係止爪77により第1のホルダ49の位置が雌雄のカプラ46,48同士の嵌合位置、分離位置に保持されるため、雌雄のカプラ46,48同士を嵌合した状態において、油圧シリンダ69を駆動状態にしておく必要がなく、駆動状態における油漏れあるいは油圧回路のトラブルによるカプラ同士の外れの問題の発生を回避できる。
【0034】
また、本実施の形態においては、係止爪77に設けた2つの凹部77a,77bのいずれかに対し、係合体である球体81が弾性的に係合することにより、係止爪77が固定され、係止爪77と枠体54の凹部80との係止位置、非係止位置の保持が人力による操作を行うことなく自動的に確実に行える。なお、係合体としては、球体81ではなく、素材自体が弾性を持つ曲成された板ばね等を用いてもよい。
【0035】
また、本実施の形態においては、雌雄のカプラ46,48同士を嵌合、分離する油圧シリンダ69のコントロール弁76の中立位置において、油圧シリンダ69のボトム室69aおよびロッド室69bを油タンク75に連通しておくことができるため、油圧シリンダ69に与える油圧による負担が軽減され、油圧シリンダ69を延命化することができる。
【0036】
また、本実施の形態においては、第1のホルダ49と第2のホルダ57と油圧シリンダ69とを1つの油圧アクチュエータ対応のユニットとしてそれぞれ備えたので、多関節フロント7の構成変更や作業具の取替え等に伴って油圧ラインの増減を行う場合、ユニットの着脱によって容易に対応することができる。
【0037】
本発明を実施する場合、第1のホルダ49を取付け板45に固定し、第2のホルダ57を枠体54の縦枠54aに沿って可動としてもよい。また、本発明は、上記実施の形態の多関節フロント7における上部旋回体3と第1のアーム12との関節部以外の各構成部品の連結部に適用できる。本発明のカプラ装置が適用できる例として、例えば第1のアーム1と第2のアーム12との間の関節部や第1のアーム1と第2のアーム12との間の関節部、または作業具と第3のアーム22との間の関節部、あるいは図示のように第1のアーム12を下段アーム12aと上段アーム12bで構成し、下段アーム12aと上段アーム12bとを分離可能に連結する場合の連結部、もしくは下部走行体1の左右の走行用構造体をセンターフレームから分割輸送する構造等において、油圧配管をカプラによって接続する場合に本発明のカプラ装置を適用することができる。また、本発明は、多関節フロント構造以外のクレーン等、他の建設機械にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるカプラ装置を適用する建設機械の一例を示す側面図である。
【図2】本発明のカプラ装置の一実施の形態を示す側面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2の背面図である。
【図5】本実施の形態のカプラ装置を示す斜視図である。
【図6】図5のカプラ装置の分解斜視図である。
【図7】本実施の形態のカプラ装置の一部断面側面図である。
【図8】本実施の形態のカプラ装置を雌雄カプラの嵌合状態で一部省略して示す背面図である。
【図9】本実施の形態のカプラ装置を雌雄カプラの分離状態で一部省略して示す背面図である。
【図10】本実施の形態のカプラ装置の一部断面底面図である。
【図11】本実施の形態のカプラ装置の油圧シリンダの油圧回路の一例を示す油圧回路図である。
【図12】本実施の形態のカプラ装置において、係止爪による係止構造の一例を示す側面図である。
【図13】本実施の形態のカプラ装置の係止爪の操作を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1:下部走行体、2:旋回装置、3:上部旋回体、4:油圧パワーユニット、5:運転室、6:ブラケット、7:多関節フロント、8:アダプタ、12:第1のアーム、15:第1のアームシリンダ、17:第2のアーム、20:第2のアームシリンダ、22:第3のアーム、25:第3のアームシリンダ、27:破砕具、29:作業具シリンダ、31:アームリンク、32:作業具リンク、35,36:油圧ホース、37:カプラ装置、37a:カプラ装置ユニット、39:中継ホース、40:分流装置、41:分流装置取付け板、43:分流ブロック、43a:油路、44:ボルト、45:カプラ装置取付け板、47:ボルト、46:雌カプラ、46a:くびれ部、47:ボルト、48:雄カプラ、48a:鍔部、49:第1のホルダ,49a:取付け溝、49b:抜け止め溝49b、51:固定板、53:ねじ孔、54:枠体、54:縦枠、54b:横枠、55:ボルト、57:第2のホルダ、57a:凹部、57b:取付け溝、57c:突出部、58:ボルト、59:蓋板、61:ボルト、63:ボルト、64:固定板、66:ねじ孔、67:ボルト、69:油圧シリンダ、69a:ボトム室、69b:ロッド室、70,71:ボルト、72,73:油圧ホース、74:油圧源、75:油タンク、76:コントロール弁、77:係止爪、77a,77b:凹部、78:ハンドル、79,80:ボルト、81:係止体、82:ねじ孔、83:ばね、84:ボルト、85:ストッパ、86:ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の分離、連結可能な複数の構成部品にそれぞれ添設される油圧配管同士を互いに分離可能に接続する建設機械用カプラ装置において、
互いに嵌合される雌雄のカプラのうちの一方のカプラを保持する第1のホルダと、
前記第1のホルダに設けられた枠体と、
互いに嵌合される雌雄のカプラのうちの他方のカプラを保持すると共に、前記枠体に対して相対的に摺動可能に設けられる第2のホルダと、
前記第2のホルダと前記枠体との間に設けられ、前記第1のホルダと前記第2のホルダとの間を近接、離反させてカプラ同士を嵌合、分離する油圧シリンダと、
前記第2のホルダに設けたガイド部に沿って摺動可能に取付けられる係止爪と、
前記枠体に凹状に設けられ、前記係止爪が挿嵌される係止爪係止部と、
前記第2のホルダに設けられ、前記係止爪を前記係止爪係止部に対して挿嵌する位置と離間する非係止位置とで保持する係止爪保持手段とを備えた
ことを特徴とする建設機械用カプラ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械用カプラ装置において、
前記係止爪保持手段は、前記係止爪にその変位方向に間隔を有して設けられた2つの凹部に対して弾性的に押圧嵌合され、前記係止爪係止部に対する係止位置、非係止位置をそれぞれ保持する係合体を備えたものである
ことを特徴とする建設機械用カプラ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械用カプラ装置において、
前記油圧シリンダへ供給する圧油を制御するコントロール弁が3位置切換弁でなり、前記コントロール弁は、中立位置において、前記油圧シリンダのボトム室およびロッド室が油タンクに連通する構成を有する
ことを特徴とする建設機械用カプラ装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の建設機械用カプラ装置において、
前記第1のホルダと前記第2のホルダと前記油圧シリンダとを1つの油圧アクチュエータ対応のユニットとしてそれぞれ備えた
ことを特徴とする建設機械用カプラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−191519(P2009−191519A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33278(P2008−33278)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】