説明

建設車両用バルブ装置

【課題】 スプールの切り換え方向に応じて圧力損失に差が出ず、しかも、従来の供給ポート本体4を不要にしたバルブ装置を提供することである。
【解決手段】 第2の方向切換弁V2のバルブハウジング23に、第1の方向切換弁V1のポンプポート42,43に連通するポンプ通路36を形成する。さらに、第2の方向切換弁V2のバルブハウジング23と第1の方向切換弁V1のバルブハウジング39との連接面に凹部38を形成し、この凹部38を介してポンプポート42,43とを常時連通させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設車両の一対の走行モータを制御するバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のバルブ装置として、特許文献1に記載されたものが従来から知られているが、この従来の装置の模式図を図4として示している。この従来のバルブ装置は、各アクチュエータを制御するための複数の方向切換弁を連接してバルブ連接体1を構成するとともに、これらバルブ連接体1を構成する方向切換弁のうち、方向切換弁2が一方の走行モータM1を制御し、方向切換弁3が他方の走行モータM2を制御するようにしている。そして、これら方向切換弁2,3は、それら両者間に供給ポート本体4を介在させている。この供給ポート本体4には、一対のポンプP1,P2を個別に接続するとともに、一方のポンプP1を、方向切換弁2を介して一方の走行モータM1に連通し、他方のポンプP2を、方向切換弁3を介して他方の走行モータM2に連通している。
【0003】
また上記方向切換弁2,3の断面を図5に示している。この方向切換弁2,3は、バルブハウジング5に中立流路6を形成するとともに、その両側に、ポンプに連通するポンプポート7,8を形成している。また、上記バルブハウジング5にはスプール9を摺動自在に組み込むとともに、このスプール9には環状溝10,11を形成している。
そして、スプール9が図示の中立位置にあるとき、ポンプポート7,8は環状溝10,11を介して中立流路6に連通する。この中立流路6は、バルブ連接体1を構成する他の方向切換弁の中立流路を介して図示していないタンクに連通し、スプール9が、左右いずれかに移動すると、スプール9によって中立流路6が閉じられる。
【0004】
また、上記バルブハウジング5には、ブリッジ通路12を形成しているが、このブリッジ通路12は、通路13を介して上記ポンプポート7に連通している。さらに、このブリッジ通路12はスプール9が図面右方向に移動したとき、スプール9に形成した環状溝14を介して一方のアクチュエータポート15に連通し、スプール9が図面左方向に移動したとき、スプール9に形成した環状溝16を介して他方のアクチュエータポート17に連通するものである。
なお、図中符号18はバルブハウジング5に形成したタンク通路で、スプール9が図面左方向に移動したとき、上記環状溝14を介して一方のアクチュエータポート15に連通し、スプール9が右方向に移動したとき、上記環状溝16を介して他方のアクチュエータポート17に連通するものである。
【0005】
上記のようにした方向切換弁のスプール9を図面左方向に移動すると、中立流路6が環状溝11に対応して閉じられる。中立流路6が閉じられると、ポンプとタンクとの連通が遮断されるので、ポンプポート7に流入した圧力流体は、通路13からブリッジ通路12及び環状溝16を経由してアクチュエータポート17から流出する。またアクチュエータポート15からの戻り流体は、環状溝14を経由してタンク通路18に流出する。
【0006】
また、スプール9を図面右方向に移動すると、同じく中立流路6が閉じられるとともに、ポンプポート7に流入した圧力流体が、通路13からブリッジ通路12及び環状溝14を経由してアクチュエータポート15から流出する。またアクチュエータポート17からの戻り流体は、環状溝16を経由してタンク通路18に流出する。
【特許文献1】特開平11−344143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにした従来のバルブ装置では、スプール9が左右いずれの方向に移動しても、ポンプポート7からの流体が通路13に導かれることになるが、例えば、スプール9が左方向に移動したときには、ポンプポート7と通路13との間に環状溝10が介在するので、その流路面積は十分に確保される。しかし、スプール9が右方向に移動したときは、環状溝10がポンプポート7と通路13との間に介在しなくなるので、その分、流路面積が小さくなり、流路抵抗も大きくなる。
上記のようにスプール9を左右に切り換えたときに、その流路抵抗が異なると、例えば、一対の走行モータを一つのポンプで駆動するタンデム回路においては、スプール9の切り換え方向に応じて圧力損失に差が発生し、走行曲がりの原因になるという問題があった。
【0008】
また、図4に示すように、走行モータM1,M2に対して一対のポンプP1,P2をパラレルに接続した回路では、供給ポート本体4を必要とするが、この供給ポート本体4の位置はその機能上おのずと特定されてくる。そのために、各方向切換弁のレイアウトに関して、設計の自由度が損なわれるという問題があった。また、上記のように供給ポート本体4を必要ということは、その分、部品点数が増えることになり、それがコストアップの要因にもなっていた。
この発明の目的は、スプールの切り換え方向に応じて圧力損失に差が出ず、しかも、従来の供給ポート本体を不要にしたバルブ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、複数の方向切換弁を連接してバルブ連接体を構成するとともに、一対の走行モータのそれぞれに別々のポンプを対応させ、一方の走行モータを制御する第1の方向切換弁と他方の走行モータを制御する第2の方向切換弁とを上記バルブ連接体内で隣接させる。また、一方の走行モータに圧力流体を供給するポンプに連通したポンプ通路は、上記第2の方向切換弁のバルブハウジングを貫通させて、上記第1の方向切換弁のポンプポートに連通させている。そして、上記第2の方向切換弁のバルブハウジングには、タンクに連通する中立流路と、この中立流路の両側に形成した一対のポンプポートと、このポンプポートと連通するブリッジ通路とを備えている。しかも、上記バルブハウジングには、スプールを摺動自在に組み込み、当該スプールが中立位置にあるとき、上記両ポンプポートが中立流路に連通し、スプールが中立位置から切換位置に切り換ったとき、いずれか一方のポンプポートがブリッジ通路に連通する構成にしている。さらに、第2の方向切換弁を第1の方向切換弁に連接したときに、第2の方向切換弁のバルブハウジングの連接面に上記一対のポンプポートを常時連通させる凹部を形成し、さらに、一方の走行モータに圧力流体を供給するポンプに連通したポンプ通路を、第2の方向切換弁のブリッジ通路とスプールとの間を貫通させている。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、第1の方向切換弁に連通するポンプ通路を、第2の方向切換弁のバルブハウジングを貫通させて、第1の方向切換弁のポンプ通路に連通させたので、従来のように供給ポート本体を用いずに、一対のポンプのそれぞれを、所定の方向切換弁を介して、それぞれの走行モータに連通させることができる。
したがって、供給ポート本体を用いない分、レイアウトに関する設計の自由度が大きくなるとともに、コストダウンにもつながる。
【0011】
また、第2の方向切換弁のバルブハウジングに、第1の方向切換弁に連通するポンプ通路を貫通させているが、このポンプ通路を第2の方向切換弁のバルブハウジングに貫通させたとしても、当該第2の方向切換弁の操作性に影響を及ぼすことはない。つまり、上記のように凹部を形成して、一対のポンプポートを常時連通させることによって、第2の方向切換弁が左右いずれに切り換えられたとしても、ポンプポートを経由する流路面積は、十分に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この実施形態のバルブ装置は、図1に示すように、複数の方向切換弁を連接してバルブ連接体Aを構成するとともに、一方の走行モータM1を制御する第1の方向切換弁V1と他方の走行モータM2を制御する第2の方向切換弁V2とを互いに隣接させている。そして、第2の方向切換弁V2の外側にはインレット19を連接し、このインレット19とは反対端にアウトレット20を連接している。そして、上記インレット19には、一対のポート21,22を形成し、一方のポート21にはポンプP1を接続し、他方のポート22にポンプP2を接続している。
【0013】
上記第2の方向切換弁V2は、図3に示すようにそのバルブハウジング23に中立流路24を形成するとともに、その両側に、ポンプP2に連通するポンプポート25,26を形成している。また、上記バルブハウジング23にはスプール27を摺動自在に組み込むとともに、このスプール27には環状溝28,29を形成している。
そして、スプール27が図示の中立位置にあるとき、ポンプポート25,26は環状溝28,29を介して中立流路24に連通する。この中立流路24は、バルブ連接体Aを構成する他の方向切換弁の中立流路を介して図示していないタンクに連通し、スプール27が、左右いずれかに移動すると、スプール27によって中立流路24が閉じられる。
【0014】
また、第2の方向切換弁V2のバルブハウジング23には、ブリッジ通路30を形成しているが、このブリッジ通路30は、通路37を介して上記ポンプポート25に連通している。
さらに、このブリッジ通路30はスプール27が図面右方向に移動したとき、スプール27に形成した環状溝31を介して一方のアクチュエータポート32に連通し、スプール27が図面左方向に移動したとき、スプール27に形成した環状溝33を介して他方のアクチュエータポート34に連通するものである。
なお、図中符号35はバルブハウジング23に形成したタンク通路で、スプール27が図面左方向に移動したとき、上記環状溝31を介して一方のアクチュエータポート32に連通し、スプール27が右方向に移動したとき、上記環状溝33を介して他方のアクチュエータポート34に連通するものである。
【0015】
上記のようにした第2の方向切換弁V2のバルブハウジング23には、図3に示すように、上記ブリッジ通路30とスプール27との間であって、上記ポンプポート26と対向する位置に、第1の方向切換弁V1に連通するポンプ通路36を貫通させている。
さらに、図2に示すように、上記バルブハウジング23には、それが第1の方向切換弁V1のバルブハウジング39と連接したときの連接面に凹部38を形成し、この凹部38と上記第1の方向切換弁V1のバルブハウジング39の連接面とが相まって通路が形成されるが、この通路を介して、一対のポンプポート25,26をブリッジ通路30に常時連通させている。
【0016】
上記のように凹部38を設けてポンプポート25,26を常時連通させたのは、このバルブハウジング23に上記したポンプ通路36を形成したためである。すなわち、ポンプ通路36を特にブリッジ通路30の内側に形成すれば、当該第2の方向切換弁V2の対称性が保てなくなる。そのために、スプール27の左右の切換時における制御特性が異なってしまうことがあるが、上記のように凹部38を介してポンプポート25,26を常時連通させておくことによって、そのような問題がなくなる。
【0017】
一方、第1の方向切換弁V1は、図2に示すように、そのバルブハウジング39にスプール40を摺動自在に組み込むとともに、第2の方向切換弁V2と同様に中立流路41と、その中立流路41の両側にポンプポート42,43とを形成するとともに、このポンプポート42,43を、第2の方向切換弁V2のバルブハウジング23に形成したポンプ通路36に連通させている。
【0018】
また、このバルブハウジング39には、第2の方向切換弁V2と同様のブリッジ通路49を形成しているが、このブリッジ通路49は、スプール40の切換位置に応じて、ポンプポート42あるいは43のいずれかに連通するものである。さらに、このブリッジ通路49はスプール40が図面右方向に移動したとき、スプール40に形成した環状溝44を介して一方のアクチュエータポート45に連通し、スプール40が図面左方向に移動したとき、スプール40に形成した環状溝46を介して他方のアクチュエータポート47に連通するものである。
【0019】
なお、図中符号48はバルブハウジング39に形成したタンク通路で、スプール40が図面左方向に移動したとき、上記環状溝44を介して一方のアクチュエータポート45に連通し、スプール40が右方向に移動したとき、上記環状溝46を介して他方のアクチュエータポート47に連通するものである。
【0020】
上記のようにしたこの実施形態によれば、一方の走行モータM1に圧力流体を供給するポンプP1に連通したポンプ通路36は、上記第2の方向切換弁V2のバルブハウジング23を貫通して、上記第1の方向切換弁V1のポンプポート42,43に連通しているので、従来のバルブ装置のように供給ポート本体4を必要としない。したがって、この発明の所期の効果を遺憾なく発揮することができる。
また、第1の方向切換弁V1に連通するポンプ通路36を、第2の方向切換弁V2のバルブハウジング23に貫通させているが、当該第2の方向切換弁V2の操作性に影響を及ぼすことはない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態を示す模式図である。
【図2】第1,2の方向切換弁を連接した状態の断面図である。
【図3】第2の方向切換弁の断面図である。
【図4】従来のバルブ装置の模式図である。
【図5】従来のバルブ装置の方向切換弁の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
M1,M2 走行モータ
P1,P2 ポンプ
A バルブ連接体
V1 第1の方向切換弁
V2 第2の方向切換弁
23 第2の方向切換弁のバルブハウジング
24 中立流路
25,26 第2の方向切換弁のポンプポート
27 第2の方向切換弁のスプール
30 ブリッジ通路
36 ポンプ通路
38 凹部
39 第1の方向切換弁のハウジング
42,43 第1の方向切換弁のポンプポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の方向切換弁を連接してバルブ連接体を構成するとともに、一対の走行モータのそれぞれに別々のポンプを対応させ、一方の走行モータを制御する第1の方向切換弁と他方の走行モータを制御する第2の方向切換弁とを上記バルブ連接体内で隣接させる一方、一方の走行モータに圧力流体を供給するポンプに連通したポンプ通路は、上記第2の方向切換弁のバルブハウジングを貫通させて、上記第1の方向切換弁のポンプポートに連通させ、上記第2の方向切換弁のバルブハウジングには、タンクに連通する中立流路と、この中立流路の両側に形成した一対のポンプポートと、このポンプポートと連通するブリッジ通路とを備えるとともに、上記バルブハウジングには、スプールを摺動自在に組み込み、当該スプールが中立位置にあるとき、上記両ポンプポートが中立流路に連通し、スプールが中立位置から切換位置に切り換ったとき、いずれか一方のポンプポートがブリッジ通路に連通する構成にし、第2の方向切換弁を第1の方向切換弁に連接したときに、第2の方向切換弁のバルブハウジングの連接面に上記一対のポンプポートを常時連通させる凹部を形成し、さらに、一方の走行モータに圧力流体を供給するポンプに連通したポンプ通路を、第2の方向切換弁のブリッジ通路とスプールとの間を貫通させてなる建設車両用バルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228872(P2009−228872A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78220(P2008−78220)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】