説明

建造物の断熱パネル壁構造及び建造物の断熱パネル壁工法

【課題】 建造物の外壁及び内壁の構築行程を簡素化でき、建築工期の大幅短縮、建築コストの大幅低減が
実現可能な建造物の壁構造及び壁工法を提供する。
【解決手段】 断熱パネルと、所定間隔を有して設けられた複数の鉄骨柱と、隣り合う鉄骨柱の間に設けら
れた鋼間柱とからなり、断熱パネルは、リップ溝型鋼を介して鉄骨柱及び鋼間柱に貼付固定されることを特
徴とする。また、断熱パネルは、直方体をなし、一対の相対する面にはそれぞれ嵌合部が設けられ、一方の
嵌合部は、もう一方の嵌合部と合致可能な形状を有している。また、どちらか一方の嵌合部は、凸状に形成
され、もう一方の嵌合部は、凹状に形成されていても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の壁構造及び壁工法に関するものであり、断熱パネルを使用した壁構造及び壁工法に関 する。
【背景技術】
【0002】
建造物の壁構造には種々あるが、倉庫・工場・店舗といった柱のない大空間施設などでは、石膏ボードを 使用した壁構造が用いられている。
【0003】
図7は従来の壁構造を示した断面図である。また、図8は従来の壁構造の水平断面図であ り、図9は、図7中A部の部分拡大図である。この壁構造は、複数の鉄骨H型鋼柱30と鉄骨H型鋼柱30 の間に鉄骨H型鋼間柱12を有し、鉄骨H型鋼柱30及び鉄骨H型鋼間柱12にネコプレート24が溶接さ れている。ネコプレート24には、胴縁14としてリップ溝型鋼6がボルト28止めされ、胴縁14 には、外壁下地材18として石膏ボードが貼り付けられている。石膏ボードには、外壁仕上げ材20として カラー鉄板や珪酸カルシウム板等が貼り付けられ、仕上げとして塗装が施されている。また、壁構造を断熱 構造にする場合は、胴縁14部分にグラスウールなどの断熱材16を設けている。また、内壁を設ける場合 は、内壁仕上げ材22として石膏ボード又は珪酸カルシウム板を張り付け、仕上げに塗装を施している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した壁構造は作業工程が多く、工期に時間がかかってしまうという問題を有していた。特に 、ネコプレート24を鉄骨H型鋼柱30に溶接する行程、ネコプレート24にリップ溝型鋼6をボルト28 止めする行程、石膏ボードや珪酸カルシウム板等を張り付ける工程などは、省略及び短縮ができないため、 工期の大幅短縮が非常に困難であるという問題を有していた。
【0005】
また、倉庫・工場・店舗といった柱のない大空間施設の場合は、建造物の内部及び外部共に枠組足場が必 要なため、枠組足場の設置及び取り外しに時間及び費用がかかってしまうという問題も有していた。
【0006】
以上のことから、建造物の外壁及び内壁の構築行程を簡素化でき、建築工期の大幅短縮、建築コストの大 幅低減が可能な建造物の壁構造及び壁工法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る建造物の断熱パネル壁構造は、断熱パネルと、所定間隔を有して 設けられた複数の鉄骨柱と、隣り合う鉄骨柱の間に設けられた鋼間柱とからなり、鉄骨柱にはリップ溝型 鋼が設けられ、断熱パネルは、リップ溝型鋼及び鋼間柱に貼付固定されていることを特徴とする。
【0008】
また、断熱パネルは、直方体をなし、一対の相対する面にはそれぞれ嵌合部が設けられ、一方の嵌合部は 、もう一方の嵌合部と合致可能な形状を有していても良い。
【0009】
また、どちらか一方の嵌合部は、凸状に形成され、もう一方の嵌合部は、凹状に形成されていても良い。
【0010】
また、上記課題を解決するため本発明に係る建造物の断熱パネル壁工法は、鉄骨柱にリップ溝型鋼を取 り付けるリップ溝型鋼取付行程と、所定間隔に複数の鉄骨柱を設置する鉄骨柱設置行程と、隣り合う鉄 骨柱の間に鋼間柱を設置する鋼間柱設置行程と、リップ溝型鋼及び鋼間柱に断熱パネルを貼付固定する 断熱パネル固定行程からなる建造物の断熱パネル壁工法であって、断熱パネルは、直方体をなし、一対 の相対する面にはそれぞれ嵌合部が設けられ、一方の嵌合部は、もう一方の嵌合部と合致可能な形状を有し ていることを特徴とする。
【0011】
また、どちらか一方の嵌合部は、凸状に形成され、もう一方の嵌合部は、凹状に形成されていても良い。
【0012】
また、断熱パネル固定行程は、高所作業車で断熱パネルを貼付固定しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る断熱パネル壁構造は、断熱パネルと、所定間隔を有して設けられた複数の鉄骨柱と、隣り合 う鉄骨柱の間に設けられた鋼間柱とからなり、鉄骨柱にはリップ溝型鋼が設けられ、断熱パネルは、リッ プ溝型鋼及び鋼間柱に貼付固定されているため、熟練した技術を必要とせず、誰でも容易に壁構造の構 築が可能となる。
【0014】
また、断熱パネルは、直方体をなし、一対の相対する面にはそれぞれ嵌合部が設けられ、一方の嵌合部は 、もう一方の嵌合部と合致可能な形状を有しているため、断熱パネルの位置決定・貼り付けが非常に容易で 、作業効率が飛躍的に向上する。
【0015】
また、どちらか一方の嵌合部は、凸状に形成され、もう一方の嵌合部は、凹状に形成されているため、容 易に嵌合部が合致しやすく、嵌合部を合致した後は、断熱パネルが位置ずれしにくくなり、断熱パネルの貼 り付け作業の作業効率が向上する。
【0016】
本発明に係る建造物の断熱パネル壁工法は、鉄骨柱にリップ溝型鋼を取り付けるリップ溝型鋼取付行程 と、所定間隔に複数の鉄骨柱を設置する鉄骨柱設置行程と、隣り合う鉄骨柱の間に鋼間柱を設置する鋼 間柱設置行程と、リップ溝型鋼及び鋼間柱に断熱パネルを貼付固定する断熱パネル固定行程からなるため 、従来と比べて壁構築に係る作業工程及び作業量を低減・短縮することができ、工期の大幅な短縮及び コストの大幅な低減に貢献することができる。
【0017】
また、断熱パネル固定行程は、高所作業車で断熱パネルを貼付固定が可能であるため、高所での作業時 に枠組み足場を設置する必要が無く、枠組み足場の設置、取り外しにかかる費用及び時間を削減でき、工期 の大幅短縮、コストの大幅低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る建造物32の断熱パネル8壁構造について図を参照にしながら説明する。図1は本発明に係 る建造物の断熱パネル壁構造を示した断面図であり、図2は建造物の断熱パネル壁構造を示した 水平断面図である。なお、これらの図は、本発明を説明するためだけのものであり、本発明を何ら限定 するものではない。
【0019】
本発明に係る建造物の断熱パネル壁構造は、断熱パネル8と、所定間隔を有して設けられた複数の鉄骨柱 2と、隣り合う鉄骨柱2の間に設けられた鋼間柱4とからなる。鉄骨柱にはリップ溝型鋼が設けられ、断 熱パネルは、リップ溝型鋼及び鋼間柱に貼付固定されていることを特徴とする。
【0020】
鉄骨柱2については、図示されたように建造物32で一般的に使用されるH型鋼を使用すれば良いが、そ の他の鋼材を使用しても良く、建造物32の大きさ、形状、強度などを考慮して適宜設定すれば良い。また 、鋼間柱4については、図3に示されたように角パイプを使用すれのが良いが、H型鋼や軽量型鋼などを使 用しても良い。また、図4及び図5に示されたように2つのリップ溝型鋼6を組み合わせて鋼間柱4として も良いし、図6に示されたようにH型鋼や軽量型鋼などとリップ溝型鋼6を組み合わせても良く、適宜設定 することができる。また、図2では鉄骨柱2間に鋼間柱4が1つのみ設けられているが、複数設けても良 く、建造物の規模、壁構造の強度、建造物を設置する周辺の環境などを考慮して適宜設定すれば良い。
【0021】
また、リップ溝型鋼6は、一般的に市販されているものを使用することができ、形状、寸法などについて は、建造物32の大きさ、形状、構造、強度などを考慮して適宜設定すれば良い。また、リップ溝型鋼6の 鉄骨柱2への取り付け方法は、溶接による取り付けが好ましいが、必要に応じて他の連結部材、固定 部材、補助部材などを使用しても良い。
【0022】
図6は、本発明に係る断熱パネル8を示した説明図である。この断熱パネル8は、一般的に市販されてい る断熱パネル8を使用することができるが、断熱材81と断熱材の外周面を被覆する外周面材82とを備え ている構造のものが良い。外周面材82としては、カラー鋼板、ガルバリウム鋼板、ステンレス板等を使用 するのが良いが、その他の部材でも良い。また、断熱材81としては、成型容易、耐久性、強度などを考慮 し、硬質発泡ウレタンフォーム、グラスウール、発泡スチロール等を使用するのが良い。また、その他の部 材を使用しても良いし、これらの部材を複数組み合わせて使用しても良く、種々の条件を考慮して適宜設定 すれば良い。また、断熱パネル8の表面又は周面に、例えば防水、防錆といった何らかの加工、処理を施し ても良い。
【0023】
また、断熱パネル8の形状は、図6に示されたように直方体状に形成され、一対の相対する面にはそれぞ れ嵌合部10が設けられているのが良い。この嵌合部10は、一対の相対する面の一方に設けられた嵌合部 10と、もう一方の嵌合部10とが合致可能な形状になっている。これにより、複数の断熱パネル8を設置 する時、嵌合部10を合致しながら設置することができるため、断熱パネル8の位置決定や貼り付け作業が 非常に容易となる。また、この嵌合部10の形状としては、図示されたように、どちらか一方を凸状に形成 し、もう一方を凹状に形成するのが良い。これにより、図1に示されたように、断熱パネル8を上方に積載 して設置する時、凸状の嵌合部10を上にして積載すれば、断熱パネル8の設置が容易になると共に、断熱 パネル8が位置ずれしにくくなる。嵌合部10は、凹凸状以外の形状であっても良く適宜設定することがで きる。
【0024】
次に、本発明に係る建造物の断熱パネル壁工法について説明する。本発明に係る建造物の断熱パネル壁工 法は、鉄骨柱2にリップ溝型鋼6を取り付けるリップ溝型鋼取付行程と、所定間隔に複数の鉄骨柱2 を設置する鉄骨柱設置行程と、隣り合う鉄骨柱2の間に鋼間柱4を設置する鋼間柱設置行程と、断熱パネ ル8をリップ溝型鋼6及び鋼間柱4に貼付固定する断熱パネル固定行程からなることを特徴とする。
【0025】
リップ溝型鋼取付行程は、鉄骨柱設置行程の前に行われるのが良く、鉄骨柱2の加工時にリップ溝型鋼 6を鉄骨柱2に溶接固定するのが良い。また、断熱パネル8をリップ溝型鋼6及び鋼間柱4に貼 付固定する方法としては、ビス26止めで良いが、ボルト28を使用しても良い。また、必要に応じて他の 連結部材、固定部材、補助部材などを使用しても良い。
【0026】
また、断熱パネル固定行程は、高所作業車で断熱パネルを貼付固定しても良い。つまり、従来と比べて 断熱パネル8の固定作業が非常に容易で簡便であるため、高所での作業時に枠組み足場を設置する必要が無 く、リフト車などの高所作業車で作業が可能となる。枠組み足場については、建築物の規模や建築物周辺の 環境などを考慮し、必要に応じて設置しても良い。
【0027】
この建造物の断熱パネル壁工法で使用される鉄骨柱2、鋼間柱4、断熱パネル8については、上記した建 造物の断熱パネル壁構造で述べたものと同様で良いため、説明は省略する。
【0028】
この工法によれば、予め鉄骨柱2にリップ溝型鋼6を取り付け、鉄骨柱2及び鋼間柱4を所定位置に設 置した後、断熱パネル8をリップ溝型鋼6及び鋼間柱4に貼付固定するだけで建造物32の壁を構築す ることができる。特に、断熱パネル8は、一対の相対する面にそれぞれ嵌合部10が設けられており、一方 の面に設けられた嵌合部10と、もう一方の嵌合部10とが合致可能な形状になっているため、最初に断熱 パネル8を貼付固定すれば、嵌合部10を合致させるだけで次の断熱パネル8が設置でき、位置決定が非常 に容易であり、作業効率が飛躍的に向上する。また、従来と比べて作業工程が少なく作業が容易であるため 、高所での作業も高所作業車のみで可能で、枠組み足場を設置する必要が無く、工期の大幅短縮、コストの 大幅低減が可能となる。
【0029】
以上が本発明に係る建造物の断熱パネル壁構造及び建造物の断熱パネル壁工法についての説明であるが、 本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の条件及び設定は変更が可能であ
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る建造物の断熱パネル壁構造を示した断面図である。
【図2】本発明に係る建造物の断熱パネル壁構造を示した水平断面図である。
【図3】本発明に係る建造物の断熱パネル壁構造を示した水平断面図である。
【図4】本発明に係る建造物の断熱パネル壁構造を示した水平断面図である。
【図5】本発明に係る建造物の断熱パネル壁構造を示した水平断面図である。
【図6】本発明に係る断熱パネルを示した説明図である。
【図7】従来の建造物の壁構造を示した断面図である。
【図8】従来の建造物の壁構造を示した水平断面図である。
【図9】図8中A部の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0031】
2 鉄骨柱
4 鋼間柱
6 リップ溝型鋼
8 断熱パネル
81 断熱材
82 外周面材
10 嵌合部
12 鉄骨H型鋼間柱
14 胴縁
16 断熱材
18 外壁下地材
20 外壁仕上げ材
22 内壁仕上げ材
24 ネコプレート
26 ビス
28 ボルト
30 鉄骨H型鋼柱
32 建造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱パネルと、所定間隔を有して設けられた複数の鉄骨柱と、隣り合う該鉄骨柱の間に設けられた鋼間柱 とからなり、該鉄骨柱にはリップ溝型鋼が設けられ、前記断熱パネルは、該リップ溝型鋼及び該鋼間柱に 貼付固定されていることを特徴とする建造物の断熱パネル壁構造。
【請求項2】
前記断熱パネルは、直方体をなし、一対の相対する面にはそれぞれ嵌合部が設けられ、一方の嵌合部は、 もう一方の嵌合部と合致可能な形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の建造物の断熱パネル壁 構造。
【請求項3】
前記どちらか一方の嵌合部は、凸状に形成され、もう一方の嵌合部は、凹状に形成されていることを特徴 とする請求項1又は2に記載の建造物の断熱パネル壁構造。
【請求項4】
該鉄骨柱にリップ溝型鋼を取り付けるリップ溝型鋼取付行程と、所定間隔に複数の鉄骨柱を設置す る鉄骨柱設置行程と、隣り合う該鉄骨柱の間に鋼間柱を設置する鋼間柱設置行程と、該リップ溝型鋼及び 該鋼間柱に断熱パネルを貼付固定する断熱パネル固定行程からなる建造物の断熱パネル壁工法であって 、前記断熱パネルは、直方体をなし、一対の相対する面にはそれぞれ嵌合部が設けられ、一方の嵌合部は、 もう一方の嵌合部と合致可能な形状を有していることを特徴とする建造物の断熱パネル壁工法。
【請求項5】
前記どちらか一方の嵌合部は、凸状に形成され、もう一方の嵌合部は、凹状に形成されていることを特徴 とする請求項4に記載の建造物の断熱パネル壁工法
【請求項6】
前記断熱パネル固定行程は、高所作業車で前記断熱パネルを貼付固定することを特徴とする請求項4又 は5に記載の建造物の断熱パネル壁工法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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