説明

引き戸の閉止装置

【課題】引き戸を閉動限で衝撃を伴うことなく且つ確実に制止保持させることができる引き戸閉止装置を提案する。
【解決手段】引き戸移動経路脇に取り付けられる取付けユニットには、引き戸移動方向と平行に移動自在な可動体12と、この可動体12に垂直支軸48の周りで水平揺動自在に支承され且つ引き戸2A側の係合片56と係脱自在な被係合片13と、この可動体12を引き戸閉動方向側の行程限に付勢保持するスプリング15と、可動体12の往復移動に連動して回転するロータリーダンパー14と、被係合片13に設けられたカム従動用軸部50に作用する姿勢制御用カム39が設けられ、この姿勢制御用カム39は、直線経路部39aと折曲経路部39bとを備え、この折曲経路部39bによって被係合片13が、被係合片56の係脱動作を許す傾倒姿勢に保持されると共に可動体12が引き戸開動方向側の行程限で保持される構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉じられる引き戸を、衝撃を発生させずに、しかも確実に閉動限で制止させることができる引き戸閉止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の引き戸閉止装置としては、例えば特許文献1に記載されるように、引き戸移動方向と平行に出退移動するピストンロッドを備えたシリンダータイプのエアダンパーを利用するものが知られている。而して、この従来周知のエアダンパー利用の引き戸閉止装置は、ガイドレールの傾斜により重力で自動的に閉動するように構成した引き戸とエアダンパーのピストンロッドとを、一定以上の引き離し力で自動的に外れるキャッチ手段で連結したもので、引き戸を閉動方向に開動させたとき、キャッチ手段を介してエアダンパーのピストンロッドを引き出し、ピストンロッドが限界まで引き出されたところでキャッチ手段から引き戸が離脱して開動を継続する。引き戸が重力で閉動するときは、閉動行程の途中で引き戸がキャッチ手段を介してエアダンパーのピストンロッドと連結され、それ以降は、エアダンパーの負荷により引き戸に制動がかかって減速され、閉動限に達するように構成されたものである。
【特許文献1】特開2007−77580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような従来の引き戸閉止装置では、シリンダータイプのエアダンパーを含む装置全体の引き戸移動方向の長さが非常に長い大型のものになるから、この閉止装置を、例えば引き戸で開閉される空間の天井面に付設しようとすると、引き戸を開いたときに長尺で大型の閉止装置が目立ってしまうことになるので、上記文献に記載されるように、この閉止装置全体を内装することができる特殊な引き戸吊下用ガイドレールを採用しなければならない。又、引き戸の開動によりエアダンパーのピストンロッドを限界まで引き出した後、引き戸がピストンロッドから離れると、当該ピストンロッドがフリーの状態になって位置が不測に変動する可能性があり、この結果、閉動する引き戸をエアダンパーで制動減速させるときのピストンロッドの縮動ストロークにばらつきが生じて、制動減速動作が安定しない。更に、引き戸を閉動方向に下り勾配のガイドレールで支持して重力で引き戸が閉動するように構成し、この引き戸の閉動力でエアダンパーのピストンロッドを縮動させなければならないので、軽量引き戸には採用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る引き戸閉止装置を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の引き戸閉止装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、引き戸2Aに取り付けられる係合片56と、引き戸移動経路脇に取り付けられる取付けユニット9とから成り、取付けユニット9には、引き戸移動方向と平行に移動自在な可動体12と、この可動体12に垂直支軸48の周りで水平揺動自在に支承され且つ前記係合片56と係脱自在な被係合片13と、前記可動体12を引き戸閉動方向側の行程限に付勢保持するスプリング15と、前記可動体12の往復移動に連動して回転し且つ前記可動体12の引き戸閉動方向への移動に対して負荷をかけるロータリーダンパー14と、前記被係合片13に設けられたカム従動部(カム従動用軸部50)に作用する姿勢制御用カム39が設けられ、この姿勢制御用カム39は、前記可動体12が引き戸閉動方向側の行程限から引き戸開動方向側の行程限直前迄の間にあるときには前記被係合片13を前記係合片56に対する係合姿勢に保持する直線経路部39aと、前記可動体12が引き戸開動方向側の行程限に達したときに、前記係合片56の係脱動作を許す傾倒姿勢と前記係合姿勢との間で前記被係合片13が揺動するのを許す折曲経路部39bとを備え、この折曲経路部39bは、前記被係合片13のカム従動部(カム従動用軸部50)と前記スプリング15の付勢力とを介して、前記被係合片13を傾倒姿勢に保持すると共に前記可動体12を引き戸開動方向側の行程限に保持するように形成され、傾倒姿勢に保持されている前記被係合片13に引き戸2Aの前記係合片56が係合して引き戸閉動方向に移動することにより、当該被係合片13が係合姿勢に切り換えられると共に引き戸開動方向側の行程限での前記可動体12の保持が解除される構成となっている。
【0005】
上記構成の引き戸閉止装置によれば、引き戸側の係合片と引き戸移動経路脇に取り付けられた取付けユニットの被係合片とが係合し、引き戸が閉じ位置にあって且つ取付けユニットの可動体が引き戸閉動方向側の行程限にある状態から引き戸を開動させると、互いに係合する係合片と被係合片とを介して可動体がスプリングの付勢力に抗して引き戸に連動して引き戸開動方向へ移動する。従って、引き戸の開動操作は前記スプリングの付勢力に抗して開始されることになる。このとき、可動体の移動に連動してロータリーダンパーの受動軸も回転するが、このときのロータリーダンパー受動軸の回転方向では負荷が掛からないロータリーダンパー、又は可動体の引き戸開動方向への移動時はロータリーダンパー受動軸が回転しない一方向伝動手段を当該可動体とロータリーダンパー受動軸との間に介装すれば、引き戸の開動操作開始時にロータリーダンパーが負荷として働くのを防ぐことができる。
【0006】
そして可動体が引き戸開動方向側の行程限に達したとき、前記姿勢制御用カムの折曲経路部によって前記被係合片が傾倒姿勢に切り換わり、引き戸の開動に伴って引き戸側の係合片が前記傾倒姿勢の被係合片から自動的に外れる。この後は、引き戸を係合片と共に可動体側の抵抗を受けることなく開動させることができる。一方、可動体は前記スプリングの付勢力で引き戸閉動方向に復帰移動しようとするが、前記姿勢制御用カムの折曲経路部によって、傾倒姿勢に保持された前記被係合片を介して引き戸開動方向側の行程限に保持される。
【0007】
開いている引き戸を閉動させると、この引き戸側の係合片が、前記のように引き戸開動方向側の行程限に保持されている可動体の傾倒姿勢にある被係合片に係合して引き戸閉動方向に移動することにより、当該被係合片が係合姿勢に切り換えられると共に引き戸開動方向側の行程限での前記可動体の保持が解除されるので、以降は、可動体が係合姿勢の被係合片と共に前記スプリングの付勢力で引き戸閉動方向に移動するので、引き戸から手を離しても、当該引き戸は係合片、被係合片、及び可動体を介して前記スプリングの付勢力を受け、自動的に閉動して閉じ位置に到達する。このときの可動体の引き戸閉動方向の移動はロータリーダンパーに伝わり、このロータリーダンパーが閉動する引き戸に対して負荷を掛け、閉動する引き戸を制動減速させる結果、当該引き戸は、緩やかに閉動限に到達することになる。
【0008】
上記構成の本発明を実施するについて、具体的には請求項2に記載のように、前記可動体12は、取付けユニットの長さ方向の両端間で往復移動自在に支持し、この可動体12の引き戸閉動方向側の端部に前記被係合片13を軸支し、前記係合片56は、引き戸2Aの閉動方向側の側辺の背面側に付設し、前記取付けユニット9は、引き戸2Aで開閉される空間の天井面5又は当該空間5に架設された棚の下側面や上側面に取り付けることができる。
【0009】
又、請求項3に記載のように、前記係合片56は垂直向きの軸状部材から構成し、前記被係合片13は、前記係合片56が嵌入する凹入溝部16を備えると共に、この凹入溝部16を形成する一対の突起部の内、引き戸開動方向側の突起部13aの外側には傾斜カム面51を形成し、前記取付けユニット9は、取付け用基板8に対し引き戸移動方向と直交する水平前後方向に一定範囲内で横動自在に取り付け、この取付けユニット9を、被係合片13の凹入溝部16に係合片56が係合する前側行程限に付勢保持する付勢手段20を併設することができる。
【0010】
又、請求項4に記載のように、前記取付けユニット9は、互いに結合一体化される上下2部材10,11間で前記可動体12、被係合片13、スプリング15、及びロータリーダンパー14を保持する構造とし、前記被係合片13は、前記可動体12の上下一側面に軸支すると共に前記上下2部材10,11間に形成された横長窓部17から突出させ、前記姿勢制御用カム39は、前記上下2部材10,11の内、前記被係合片13に隣接する側の部材11の内側に形成し、前記スプリング15は、前記上下2部材10,11の内、前記可動体12に隣接する側の部材10と前記可動体12との間で当該可動体12の移動方向と平行に掛張された引張コイルスプリングとすることができる。
【0011】
更に、請求項5に記載のように、前記係合片56は、引き戸2Aへの取付け座板54から突設された上下一対の水平板部55間に垂直に架設された軸状部材から構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記請求項1に記載の本発明によれば、先ず、従来のシリンダータイプのエアダンパーに代えてロータリーダンパーを採用しているので、引き戸移動経路脇に取り付けられる取付けユニットの全長を、引き戸移動方向に往復移動する可動体の全長に当該可動体の往復移動距離を加えた程度に短く構成することができる。しかも、引き戸移動経路脇に取り付けられる1つの取付けユニットが全ての構成部材を備えることになり、この取付けユニットの全長を前記の理由により短く構成できるので、この取付けユニットを、引き戸で開閉される空間の天井面や当該空間内に架設された棚に付設しても、引き戸を開いたときに短く小さな取付けユニットが見えるだけであり、従来のような長尺で大型の装置が目立ってしまうことがない。従って、従来のような閉止装置全体を内装することができる特殊な引き戸吊下用ガイドレールは不要であり、簡単容易且つ安価に実施することができる。
【0013】
又、引き戸の開動により可動体を引き戸開動方向の行程限まで移動させたとき、可動体とこれに軸支された被係合片、及び姿勢制御用カムを介して、スプリングに、引き戸を閉じ位置まで強制的に閉動させるための付勢力を畜力させた状態を自動的に保持させ、引き戸を閉動させたとき、当該引き戸側の係合片が所定位置(傾倒姿勢の被係合片が引き戸側の係合片が係合する位置)に達した以降は、畜力された前記スプリングの付勢力で当該引き戸を閉じ位置まで自動的に閉動させることができるので、従来のように引き戸に閉動方向の重力を与えるための傾斜レールが不要であり、軽量引き戸でもスプリング力で確実に閉動限まで閉じさせることができる。しかも、このスプリング力で引き戸を閉動させる段階では、この閉動する引き戸をロータリーダンパーにより制動減速させて、閉動限に引き戸が衝撃的に衝突するのを防止し、緩やかに且つ安全に制止させることができる。
【0014】
尚、請求項2に記載の構成によれば、取付けユニットを、引き戸で開閉される空間の天井面又は当該空間に架設された棚に、引き戸の閉動方向側の端に隣接させて取り付けて、引き戸の閉動方向側の側辺の背面側に付設された係合片に取付けユニット側の被係合片を係合させることができる。即ち、従来のように、引き戸側の係合片を、引き戸の閉動方向側の端から開動方向に離れた位置に設ける必要がない。従って、周囲の枠材にガラス板などを嵌め込んで構成された引き戸であっても、その枠材の引き戸閉動方向側の側辺を構成する箇所に係合片を取り付けることが可能になり、本発明の閉止装置の汎用性を高めることができる。
【0015】
又、請求項3に記載の構成によれば、可動体がスプリングの付勢力で引き戸閉動方向の行程限に保持されていて、当該可動体に軸支された被係合片が姿勢制御用カムによって係合姿勢に保持されている状態の取付けユニットを、引き戸を開いた状態で引き戸移動経路脇の所定位置に取付け用基板を介して取り付け、その後、引き戸を閉動限まで閉じることにより、引き戸側の係合片が、被係合片の傾斜カム面を介して取付けユニットを、付勢手段に抗して前側行程限から後退移動させ、当該係合片が被係合片の凹入溝部に対応する位置に達したときに、前記付勢手段により取付けユニットが前側行程限まで前進移動して、引き戸側の係合片に取付けユニット側の係合姿勢にある被係合片の凹入溝部が嵌合する。即ち、引き戸移動経路脇の所定位置に取付けユニットを取り付けた後、引き戸を閉じる前に、可動体をスプリングの付勢力に抗して引き戸開動方向の行程限まで強制移動させて、被係合片を傾倒姿勢に人為的操作で切り換える必要がなくなる。
【0016】
又、請求項4に記載の構成によれば、可動体、被係合片、スプリング、及びロータリーダンパーの全ての構成部材を、取付けユニットを構成する上下2部材間に内装すると共に、当該上下2部材の一方に姿勢制御用カムを形成し、当該上下2部材の他方と可動体との間に引張コイルスプリングを介在させるものであるから、本発明の閉止装置を必要最小限の部品点数でコンパクトにまとめて実施することができる。
【0017】
更に、請求項5に記載の構成によれば、丈夫で且つ引き戸への取り付けも容易な係合片を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1において、1は2枚の引き戸2A,2Bで構成される引き違い戸装置であって、収納空間Sを開閉する。3A,3Bは各引き戸2A,2Bに併設された本発明の閉止装置であって、各閉止装置3A,3Bは、引き戸2A,2Bの閉動方向側の側辺の裏面に取り付けられた係合具4と、前記収納空間Sの天井面5に、前記収納空間Sの引き戸閉動方向側の側面6に隣接するように取り付けられた閉止装置本体7とから構成されている。
【0019】
以下、図1の左側の閉止装置3A、即ち、右向きに閉じられる引き戸2Bの内側に配置されて左向きに閉じられる引き戸2Aを閉止する閉止装置3Aについて説明すると、閉止装置3Aの閉止装置本体7は、図2に示すように、取付け用基板8と取付けユニット9とから構成され、取付けユニット9は、内側部材10と外側部材11、内外両部材10,11間に内装される可動体12、被係合片13、ロータリーダンパー14、及び引張コイルスプリング15から構成され、外側部材11には、前記被係合片13の先端凹入溝部16を取付けユニット9の外側へ突出させるための横長窓部17を内側部材10との間で形成する横長切欠き凹部18が設けられている。
【0020】
取付け用基板8は、図2B及び図3に示すように矩形平板状のものであって、その下側面側に長手方向一対のスライドガイド19a,19bが一体に突設されると共に、前側辺には付勢手段20が設けられ、更に左右長手方向一対の被係合開口部21a,21bと2つの下側座ぐりの取付け孔22が設けられている。スライドガイド19a,19bは、取付け用基板8と平行に前後幅方向に延出する角柱状のもので、その後端部が取付け用基板8に垂直柱部23a,23bを介して一体につながっている。又、付勢手段20は一対の弾性舌片24a,24bで構成されたもので、各弾性舌片24a,24bは、その長手方向の右端部で取付け用基板8の前側辺に一体につながる帯板状のもので、他端側が取付け用基板8と平行に左方へ且つ取付け用基板8の前側辺から離れるように延出している。
【0021】
取付けユニット9の内側部材10は、図2B及び図4に示すように矩形平板状のものであって、その上面には、後側辺と左右長手方向の左側辺とが開放し且つ取付け用基板8がその前後幅方向に滑動自在に重なる凹窪部25が形成され、この凹窪部25内に、取付け用基板8のスライドガイド19a,19bの垂直柱部23a,23bがこの内側部材10の後側辺側から遊嵌する切欠き凹部26a,26b、取付け用基板8の被係合開口部21a,21bに嵌合する2つのストッパー片27a,27b、取付け用基板8の取付け孔22と合致する2つの貫通孔28、及び外側部材11とのねじ結合のための4つの座ぐり孔29が設けられ、この内側部材10の肉厚の前側辺部分の下側には、スプリング内装用凹溝部30がこの内側部材10の左右長手方向に沿って形成され、このスプリング内装用凹溝部30内の左端には、スプリング係止柱部31が下向きに一体に突設され、更にこの内側部材10の下面側には、左右一対のロータリーダンパー押え部32が下向きに一体に突設されている。尚、貫通孔28の下端には、この内側部材10の下側面から突出するリング状突出部28aが一体且つ同心状に突設され、ストッパー片27a,27bは、この内側部材10の前後幅方向に長い弾性舌片状のもので、後端においてこの内側部材10に一体につながると共に前端上面に、前記凹窪部25の上面より上側に突出する逆止用突起部33を備えている。
【0022】
取付けユニット9の外側部材11は、図2B及び図5に示すように内側部材10と同一サイズの矩形平板状のものであって、その上面側には、この外側部材11の左右長手方向一対のスライドガイド用凹溝部34a,34bが、この外側部材11の後側辺側が開放されるように前後幅方向に形成されると共に、内側部材10の2つの貫通孔28に合致する2つの貫通孔35と、4つの座ぐり孔29に合致する4つのねじ結合用下孔36が設けられている。更にこの外側部材11の上面側には、この外側部材11のほぼ全長に及ぶ長さで且つ外側部材11の前側辺に沿って形成された可動体案内溝部37と、ロータリーダンパー取付け凹部38とが設けられ、可動体案内溝部37の左側ほぼ半分の領域の下側には、被係合片13の姿勢制御用カム溝39と被係合片案内溝40が形成されている。
【0023】
尚、2つの貫通孔35の上端内側には、内側部材10側の貫通孔28の下端に形成されているリング状突出部28aが嵌合する凹段部35aが形成されている。又、可動体案内溝部37の左側ほぼ半分の領域の前側壁部は、内側部材10との間で横長窓部17を形成する横長切欠き凹部18によって切除されており、当該可動体案内溝部37の右側ほぼ半分の領域の後側には、当該可動体案内溝部37の前側に位置する前側壁部11aとの間で可動体12を案内する低い可動体案内用壁部41が一体に立設されている。ロータリーダンパー取付け凹部38の底面には、左右一対の位置決め用突起38aが突設されている。姿勢制御用カム溝39は、左端から右側終端までの直線経路部39aと、この直線経路部39aの右側終端から後側に折曲連設された折曲経路部39bとから構成され、折曲経路部39bは、直線経路部39aから離れるに従って幅広になるように形成されて、その傾斜左側面39cは、直線経路部39aから離れるに従って左側へ変位するように傾斜している。
【0024】
可動体12は、図2B及び図6に示すように、外側部材11の可動体案内溝部37の全長の半分より長い長さの棒状のものであって、その長さ方向の左端下面に設けられた被係合片軸支用孔42、この長さ方向の左端から被係合片13を支承する領域だけ離れた位置から右端までの領域において下側に一体に突設された下側スライドガイド部43、左端から所要長さの領域にわたって後側辺から一体に突設されたラックギヤ部44、長さ方向の全長にわたって上面から上向きに突設された上側スライドガイド部45、この上側スライドガイド部45の前側で長さ方向のほぼ全長にわたって上面に形成されたスプリング案内用凹溝46、及びこのスプリング案内用凹溝46の右端に上向きに一体に突設されたスプリング係止柱部47を備えている。
【0025】
先端凹入溝部16を備えた被係合片13は、図2B及び図7に示すように、後端部から上向きに支軸48を一体に突設すると共に、この支軸48と同心状にスライドガイド軸49を下向きに一体に突設し、右側辺にはカム従動用軸部50を下向きに一体に突設し、前端側が開放した先端凹入溝部16を形成する左右一対の突起部の内、右側の短い突起部13aは、先端ほど細くなるように外側(右側)を傾斜カム面51に形成したものである。
【0026】
ロータリーダンパー14は、図2B及び図8に示すように、本体上面から上向きに突出する受動軸14aにピニオンギヤ52が取り付けられ、本体の下端から直径方向両側に一体に突設された左右一対の翼板部53に、その先端から切欠き溝53aを形成したものである。
【0027】
閉止装置本体7と対を成す係合具4は、図1及び図9に示すように、上下方向に長く且つ取付け孔54aを備えた取付け座板54と、この取付け座板54の上端部から同一側に突設された上下一対の水平板部55と、両水平板部55間に垂直に架設された丸軸状部材から成る係合片56とで構成されている。尚、図1に示すように、左側の引き戸2Aは、右側の引き戸2Bの内側を左右方向に滑動するものであるから、左側の引き戸2Aに対する閉止装置3Aの係合具4は、図1及び図9A,Bに示すように、取付け座板54の取付け面と係合片56との間の距離が必要最小限に短くなるように構成されているのに対し、右側の引き戸2Bに対する閉止装置3Bの係合具4は、図1及び図9C,Dに示すように、取付け座板54の取付け面と係合片56との間の距離が、引き戸2Bの内側に引き戸2Aの滑動空間が存在する分だけ大きくなるように構成されている。具体的には、閉止装置3Aの係合具4と閉止装置3Bの係合具4とで取付け座板54の厚さを変えている。尚、閉止装置3Bの閉止装置本体7は、閉止装置3Aの閉止装置本体7と左右対称構造に構成されているだけであるから、詳細構造の図示及び説明は省略する。
【0028】
次に、図2及び図10〜図15に基づいて上記閉止装置本体7の組立てについて説明すると、可動体12の被係合片軸支用孔42に被係合片13の支軸48を嵌合させて、可動体12の左端部下側に被係合片13を配置した状態で、当該可動体12の下側スライドガイド部43を、外側部材11の前側壁部11aと可動体案内用壁部41との間で可動体案内溝部37に嵌合させると共に、被係合片13のスライドガイド軸49を外側部材11の被係合片案内溝40に、そしてカム従動用軸部50を外側部材11の姿勢制御用カム溝39における直線経路部39aに、それぞれ嵌合させる。このとき被係合片13の先端凹入溝部16は、外側部材11の横長切欠き凹部18から外側(前側)に突出する。ロータリーダンパー14は、外側部材11のロータリーダンパー取付け凹部38に嵌合させるが、このときロータリーダンパー14の下端の左右一対の翼板部53の各切欠き溝53aを、ロータリーダンパー取付け凹部38の底面上の左右一対の位置決め用突起38aに嵌合させ、ロータリーダンパー14を位置決めする。
【0029】
上記の外側部材11の上に内側部材10を重ねるのであるが、このとき、引張コイルスプリング15の一端を内側部材10側のスプリング係止柱部31に係合させると共に、引張コイルスプリング15の他端を可動体12側のスプリング係止柱部47に係合させることにより、当該引張コイルスプリング15は、内側部材10のスプリング内装用凹溝部30内に納められ且つ可動体12のスプリング案内用凹溝46に下辺が遊嵌する状態で、初期引張応力により可動体12を可動体案内溝部37の左端に付勢保持することになる。一方、外側部材11の上に内側部材10を重ねるとき、内側部材10側の2つの貫通孔28の下端リング状突出部28aを外側部材11側の2つの貫通孔35の上端凹段部35aに嵌合させることにより、内側部材10と外側部材11とが正確に位置決めされると共に、内側部材10の左右一対のロータリーダンパー押え部32が、外側部材11のロータリーダンパー取付け凹部38に内嵌されているロータリーダンパー14の左右両側でロータリーダンパー取付け凹部38内に入り込み、その先端がロータリーダンパー14の左右一対の翼板部53をそれぞれ押さえてロータリーダンパー14を固定することになる。この状態で内側部材10の上側から4つの座ぐり孔29を経由して外側部材11の4つのねじ結合用下孔36に締結用タッピングねじ57をねじ込み、内側部材10と外側部材11とを結合一体化することにより、取付けユニット9を完成させる。
【0030】
組み立てられた取付けユニット9においては、可動体12の上側スライドガイド部45は、内側部材10のスプリング内装用凹溝部30の後側面に摺接する。又、内側部材10と外側部材11との間には、外側部材11の横長切欠き凹部18によって横長窓部17が形成され、この横長窓部17から被係合片13の先端凹入溝部16が前方に突出する。このとき可動体12は、図11に示すように引張コイルスプリング15の引張力で可動体案内溝部37の左端に付勢保持されているので、そのラックギヤ部44は、図19に示すように、ロータリーダンパー14の上端のピニオンギヤ52から左側に外れた位置にある。又、当該可動体12の左端(引き戸閉動方向側の端部)に軸支されている被係合片13は、取付けユニット9の横長窓部17の左端にあって、当該被係合片13のカム従動用軸部50が取付けユニット9側の姿勢制御用カム溝39の直線経路部39aに嵌合しているので、支軸48及びスライドガイド軸49の周りに回転することはできず、その先端凹入溝部16が可動体12の移動方向に対し直角向きとなる姿勢に保持されている。
【0031】
次に取付けユニット9の上、即ち、内側部材10の上側凹窪部25内に取付け用基板8を組み付けるために、この取付け用基板8の左右一対のスライドガイド19a,19bを、内側部材10の下側面と外側部材11の左右一対のスライドガイド用凹溝部34a,34bとで形成された左右幅方向の角柱状孔内に後ろ側から差し込む。このとき、取付け用基板8の右側辺は、内側部材10の上側凹窪部25の右側にのみ形成されている一側辺垂直面25bに摺接し、スライドガイド19a,19bの後端の垂直柱部23a,23bは、内側部材10の切欠き凹部26a,26b内に遊嵌する。このスライドガイド用凹溝部34a,34b内へのスライドガイド19a,19bの差し込みの過程では、内側部材10の左右一対のストッパー片27a,27bの先端の逆止用突起部33が取付け用基板8の下側面で押し下げられることによりストッパー片27a,27bが下側へ弾性に抗して撓んで、スライドガイド用凹溝部34a,34b内へのスライドガイド19a,19bの差し込みが許される。そして所定深さまでスライドガイド用凹溝部34a,34b内へスライドガイド19a,19bが差し込まれると、ストッパー片27a,27bが上方に弾性復帰して逆止用突起部33が取付け用基板8の左右一対の被係合開口部21a,21b内に嵌まり込むことになるが、このとき、取付け用基板8の付勢手段20を構成する左右一対の弾性舌片24a,24bが内側部材10の凹窪部25の前側垂直面25aに圧接しており、当該弾性舌片24a,24bの弾性復帰力で取付け用基板8が差し込み方向とは反対の後方に押し戻される状態になるが、既にストッパー片27a,27bの逆止用突起部33が被係合開口部21a,21bの前側内側面に当接して、内側部材10の凹窪部25から取付け用基板8が後方に抜け出すのを阻止している。
【0032】
以上のようにして組み立てられた閉止装置本体7では、図13に示すように、取付け用基板8の2つの取付け孔22の真下に内側部材10の2つの貫通孔28と外側部材11の2つの貫通孔35とが同心状に位置して、取付け用基板8の2つの取付け孔22が閉止装置本体7の下側面(外側部材11の下側面)に開放されているので、図17に示すように、これら貫通孔28,35を利用して、取付け用基板8の2つの取付け孔22に上向きに挿入した取付け用ねじ58により、各閉止装置3A,3Bにおける閉止装置本体7の取付け用基板8を、引き戸装置1で開閉される収納空間Sの天井面5に、引き戸2A,2Bの閉動方向側の側面6に隣接するように取り付けることができる。又、各閉止装置3A,3Bにおける係合具4は、引き戸2A,2Bの閉じ方向の側辺の裏面側に、取付け座板54の取付け孔54aと取付け用ねじとを利用して取り付けられる。これら閉止装置本体7(取付け用基板8)と係合具4の取付け位置は、後述するように引き戸2A,2Bを閉じたときに、係合具4の係合片56と閉止装置本体7の引き戸閉動方向側の行程限又はその直前位置にある被係合具13とが係合して、引き戸2A,2Bが閉じ位置に保持される位置である。
【0033】
引き戸2Aを閉止する閉止装置3Aと引き戸2Bを閉止する閉止装置3Bとは、引き戸2A,2Bの閉動方向が正反対向きであるだけで、作用は同一であるから、以下は、図16〜図21に基づいて、引き戸2A側の閉止装置3Aについて作用を説明する。
【0034】
上記のように収納空間Sの天井面5に取り付けられた閉止装置本体7では、図16に示すように、被係合片13が引き戸2Aの閉動方向側の行程限にあって、取付けユニット9の横長窓部17から正面側に、その先端凹入溝部16が引き戸2Aの移動方向に対して直角向きで突出している。このとき、被係合片13の右側の短い突起部13aの傾斜カム面51も取付けユニット9の正面側に突出し、これら被係合片13の先端凹入溝部16及び傾斜カム面51が、引き戸2A側の係合片56の移動経路内に位置している。この状態で引き戸2Aを、閉止装置本体7から引き戸開動方向側に離れた適当位置(引き戸2A側に取り付けられた係合具4が閉止装置本体7と干渉しない適当位置)において、引き戸ガイドにセットし、当該引き戸2Aを閉動させる。
【0035】
閉動する引き戸2Aが閉動限位置の直前に達すると、図16に仮想線で示すように、係合具4の係合片56が閉止装置本体7(取付けユニット9)側の被係合片13の傾斜カム面51に当接するので、なおも引き戸2Aを強制的に閉動させることにより、姿勢制御用カム溝39の直線経路部39aにカム従動用軸部50が嵌合して支軸48及びスライドガイド軸49の周りに回転することができない被係合片13の傾斜カム面51を介して、取付けユニット9の全体を取付け用基板8に対して後退移動させる。即ち、取付けユニット9は、取付け用基板8側のスライドガイド19a,19bに案内されて、内側部材10の凹窪部25の前側垂直面25aで取付け用基板8側の付勢手段20の弾性舌片24a,24bを弾性に抗して変形させながら、引き戸2Aから後ろ側へ直角水平に離れるようにスライドすることになる。そして引き戸2A側の係合片56が被係合片13の右側の短い突起部13aを乗り越えたとき、後退していた取付けユニット9が、取付け用基板8側の弾性舌片24a,24bの弾性復帰力により取付け用基板8に対し前進移動して、定位置、即ち、内側部材10側のストッパー片27a,27bが取付け用基板8側の被係合開口部21a,21bの前端内側面に当接する定位置に自動復帰し、この結果、図19に示すように、取付けユニット9側の被係合片13の先端凹入溝部16が引き戸2A側の係合片56に嵌合すると同時に、引き戸2Aも閉動限に到達する。
【0036】
尚、取付けユニット9の前進移動により被係合片13の先端凹入溝部16が引き戸2A側の係合片56に嵌合するとき、丸軸状部材から成る係合片56の円柱状周面に対する被係合片13の突起部13aの先端との押し合いにより、可動体12が引張コイルスプリング15の引張力に抗して若干量だけ引き戸開動方向側に後退するように構成し、引き戸2Aが閉動限(側面6又はこの側面6に付設された戸当たりに当接した位置)にあるとき、引張コイルスプリング15の付勢力が、可動体12、被係合片13、及び係合片56を介して引き戸2Aに伝達され、引き戸2Aが閉じ位置で開閉方向に遊ぶことなく確実に閉動限に保持されるように構成するのが好ましい。
【0037】
閉動限にある引き戸2Aを開動させると、係合具4の係合片56を介して取付けユニット9側の被係合片13を引き戸開動方向に引っ張ることになるが、被係合片13は、そのカム従動用軸部50が取付けユニット9側の姿勢制御用カム溝39の直線経路部39aに嵌合していて、支軸48及びスライドガイド軸49の周りに回転することができないので、結果として、被係合片13を介して可動体12が引張コイルスプリング15の付勢力に抗して引き戸2Aと一体に開動方向へ移動することになる。従って、引き戸2Aの開動操作に対して引張コイルスプリング15の付勢力が抵抗になる。又、可動体12が少し引き戸開動方向へ移動することにより、可動体12側のラックギヤ部44とロータリーダンパー14のピニオンギヤ52とが咬合し、ロータリーダンパー14の受動軸14aが回転することになるが、このときの回転方向ではダンパー作用が生じない一方向動作のロータリーダンパー14を使用すれば、引き戸2Aの開動操作時にロータリーダンパー14が実質的に抵抗になることはない。
【0038】
引き戸2Aの開動に連動して引張コイルスプリング15の付勢力に抗して同一方向に移動する可動体12は、その移動方向側の端部が、可動体案内溝部37の両側に位置する外側部材11の前側壁部11aと可動体案内用壁部41とで挟まれて案内され、被係合片13を軸支する端部は、当該被係合片13のスライドガイド軸49が被係合片案内溝40に嵌合していることと、当該被係合片13のカム従動用軸部50が姿勢制御用カム溝39の直線経路部39aに嵌合していることとにより、これら被係合片案内溝40と姿勢制御用カム溝39の直線経路部39aとで案内され、引き戸2Aと一体に引き戸開動方向に移動する。
【0039】
そして引き戸2Aの開動が進んで、一体に移動する可動体12が引き戸閉動方向の行程限に達したとき、図21に示すように、当該可動体12に軸支されている被係合片13のカム従動用軸部50が姿勢制御用カム溝39の直線経路部39aの終端に達し、以降の引き戸2Aの開動に伴って、引き戸2A側の係合片56が、被係合片13の先端凹入溝部16を介して当該被係合片13を、カム従動用軸部50が姿勢制御用カム溝39の折曲経路部39b内に進入する向き、即ち、引き戸2Aから後ろ側へ離れる方向に支軸48及びスライドガイド軸49の周りで回転させることになり、この被係合片13の回転に伴って、図20に示すように、引き戸2A側の係合片56が被係合片13の先端凹入溝部16内から脱出し、引き戸2Aのみが係合具4と共に開動を続行することになる。
【0040】
図20に示すように、被係合片13が回転して、引き戸2A側の係合片56が当該被係合片13の先端凹入溝部16内から脱出すると、引き戸2A側の係合片56から被係合片13を介して可動体12に与えられていた引き戸開動方向への引っ張り力が無くなるので、可動体12は引き戸開動方向の行程限から引き戸閉動方向へ引張コイルスプリング15の付勢力で復帰移動しようとするが、このとき、可動体12と一体に移動しようとする被係合片13のカム従動用軸部50が姿勢制御用カム溝39の折曲経路部39bにおける傾斜左側面39cに当接するので、当該傾斜左側面39cとカム従動用軸部50との圧接により、被係合片13には、カム従動用軸部50が折曲経路部39b内へ進入するときの回転方向の回転力が働き、カム従動用軸部50が折曲経路部39bの終端部に保持されて、可動体12の復帰移動が阻止されると共に、被係合片13が、先端凹入溝部16内から引き戸2A側の係合片56が脱出したときの傾倒姿勢に保持される。
【0041】
開動させた引き戸2Aを閉動させるとき、上記のように取付けユニット9における可動体12が引き戸開動方向の行程限に保持されていると共に、被係合片13が、その先端凹入溝部16内から引き戸2A側の係合片56が脱出したときの傾倒姿勢に保持されているので、引き戸2Aが閉動限の少し手前の位置に達したとき、引き戸2A側の係合片56が傾倒姿勢にある被係合片13の先端凹入溝部16内に自然に進入し、この後の引き戸2Aの閉動に伴う係合片56の引き戸閉動方向への移動により、当該係合片56が先端凹入溝部16を介して被係合片13を傾倒姿勢から元の係合姿勢へと、支軸48及びスライドガイド軸49の周りに回転させることになる。このとき、被係合片13のカム従動用軸部50が姿勢制御用カム溝39における折曲経路部39bの傾斜左側面39cに沿って移動するだけで、支軸48及びスライドガイド軸49の位置が殆ど変化しないように、傾斜左側面39cを形成しておくのが望ましい。
【0042】
引き戸2Aの閉動に連動して、被係合片13が傾倒姿勢から元の係合姿勢へと回転することにより、被係合片13のカム従動用軸部50が姿勢制御用カム溝39の折曲経路部39bから直線経路部39aに移ると、このカム従動用軸部50と折曲経路部39bの傾斜左側面39cとによる可動体12の保持作用が解消され、可動体12が引張コイルスプリング15の付勢力で引き戸閉動方向へ移動することができる状態になる。従ってこれ以降は、引き戸2Aは、引張コイルスプリング15の付勢力を可動体12、被係合片13、及び係合片56を介して受けるので、引き戸2Aから手を離しても、可動体12の引き戸閉動方向行程限への復帰移動に連動して自動的に閉動することになる。一方、この時の可動体12の移動は、ラックギヤ部44からピニオンギヤ52を介してロータリーダンパー14の受動軸14aに伝達され、当該ロータリーダンパー14が作用して、引張コイルスプリング15の付勢力によって引き戸閉動方向に移動する可動体12と引き戸2Aを制動・減速することになるので、引き戸2Aが引張コイルスプリング15の付勢力で勢い良く閉動限に衝突することがなくなり、円滑に閉動限で閉止することになる。
【0043】
外側(右側)の引き戸2Bに対しても、当該引き戸2Bに対応する右側の閉止装置3Bが上記閉止装置3Aと同様に作用し、引き戸2Bを閉動限で確実にしかし衝撃なく制止させ、保持させることができる。尚、両引き戸2A,2Bの開動は、外側の引き戸2Bの閉動方向側の側辺の内側に付設されている係合具4と、内側の引き戸2Aの開動方向側の側辺との当接により、制限されることになる。又、閉止装置本体7を収納空間Sの天井面5に取り付けているが、この収納空間Sに中間棚板が固定状態で架設されているときは、当該棚板の下側面又は上側面に閉止装置本体7を取り付けることもできる。
【0044】
本発明の引き戸閉止装置は、以上のように実施することができるものであるが、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、1枚の引き戸から構成される引き戸装置に対して利用できることは勿論であるが、取付けユニット9が位置固定されるように構成しても良い。この場合は、先に定位置に取り付けられた取付けユニット9から引き戸閉動方向の行程限で突出している被係合片13の先端凹入溝部16内に係合具4の係合片56が嵌合するように、引き戸を引き戸ガイドにセットするか又は、被係合片13を手作業で引き戸開動方向の行程限まで移動させ、当該被係合片13を傾倒姿勢に切り換えて保持させた状態で、この取付けユニット9から離れた位置で引き戸ガイドにセットされた引き戸を閉動させることにより、被係合片13の先端凹入溝部16内に係合具4の係合片56を嵌合させれば良い。このように構成するときは、取付け用基板8を省いて取付けユニット9を直接天井面5などに取り付けるように構成するか又は、先に取り付けられた取付け用基板8に対して上記実施形態のように取付けユニット9を後ろ側から差し込んで自動的に両者を定位置で係合一体化できるように構成することができ、付勢手段20や被係合片13の傾斜カム面51を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】A図は引き戸装置全体の一部切欠き横断平面図、B図は同A図のA−A線断面図、C図は同A図のB−B線断面図である。
【図2】A図は左側閉止装置本体の斜視図、B図は同閉止装置本体の分解斜視図である。
【図3】A図は左側閉止装置本体の取付け用基板の平面図、B図は同取付け用基板の正面図、C図は同取付け用基板の左側面図、D図は同A図のC−C線断面図、E図は同A図のD−D線断面図である。
【図4】A図は左側閉止装置本体の内側部材の平面図、B図は同内側部材の底面図、C図は同A図のE−E線断面図、D図は同A図のF−F線断面図、E図は同A図のG−G線断面図、F図は同A図のH−H線断面図である。
【図5】A図は左側閉止装置本体の外側部材の平面図、B図は同外側部材の正面図、C図は同外側部材の背面図、D図は同A図のI−I線断面図、E図は同A図のJ−J線断面図、F図は同A図のK−K線断面図、G図は同A図のL−L線断面図である。
【図6】A図は左側閉止装置本体の可動体の平面図、B図は同可動体の正面図、C図は同可動体の底面図、D図は同A図のM−M線断面図、E図は同可動体の左側面図、F図は同可動体の右側面図である。
【図7】A図は左側閉止装置本体の被係合片の平面図、B図は同被係合片の底面図、C図は同被係合片の正面図である。
【図8】A図はロータリーダンパーの平面図、B図は同ロータリーダンパーの正面図である。
【図9】A図は左側閉止装置の係合具の斜視図、B図は同係合具の横断平面図、C図は右側閉止装置の係合具の斜視図、D図は同係合具の横断平面図である。
【図10】組み立てられた左側閉止装置本体のロータリーダンパー位置での縦断正面図である。
【図11】同左側閉止装置本体の可動体位置での縦断正面図である。
【図12】同左側閉止装置本体のスライドガイド位置での縦断側面図である。
【図13】同左側閉止装置本体のストッパー片位置での縦断側面図である。
【図14】同左側閉止装置本体のロータリーダンパー位置での縦断側面図である。
【図15】同左側閉止装置本体の被係合片位置での縦断側面図である。
【図16】取り付けられた左側閉止装置本体に対して引き戸側の係合具を組み合わせる作業の開始状況を説明する横断平面図である。
【図17】左側閉止装置を示す一部縦断側面図である。
【図18】取り付けられた左側閉止装置本体に対して引き戸側の係合具を組み合わせる作業の最終段階を説明する横断平面図である。
【図19】引き戸が閉止状態にあるときの左側閉止装置を示す横断平面図である。
【図20】引き戸の係合具が左側閉止装置から離れた直後、又は左側閉止装置と係合する直前位置にあるときの状態を説明する横断平面図である。
【図21】引き戸の係合具が左側閉止装置と係合した直後、又は左側閉止装置から離脱する直前位置にあるときの状態を説明する横断平面図である。
【符号の説明】
【0046】
S 収納空間
1 引き違い戸装置
2A,2B 引き戸
3A,3B 閉止装置
4 係合具
7 閉止装置本体
8 取付け用基板
9 取付けユニット
10 内側部材
11 外側部材
12 可動体
13 被係合片
14 ロータリーダンパー
15 引張コイルスプリング
16 先端凹入溝部
17 横長窓部
19a,19b スライドガイド
20 付勢手段
21a,21b 被係合開口部
24a,24b 弾性舌片
25 凹窪部
27a,27b ストッパー片
30 スプリング内装用凹溝部
31,47 スプリング係止柱部
32 ロータリーダンパー押え部
34a,34b スライドガイド用凹溝部
37 可動体案内溝部
38 ロータリーダンパー取付け凹部
39 姿勢制御用カム溝
39a 直線経路部
39b 折曲経路部
39c 傾斜左側面
40 被係合片案内溝
41 可動体案内用壁部
42 被係合片軸支用孔
43 下側スライドガイド部
44 ラックギヤ部
45 上側スライドガイド部
48 支軸
49 スライドガイド軸
50 カム従動用軸部
51 傾斜カム面
52 ピニオンギヤ
56 係合片
57 締結用タッピングねじ
58 取付け用ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き戸に取り付けられる係合片と、引き戸移動経路脇に取り付けられる取付けユニットとから成り、取付けユニットには、引き戸移動方向と平行に移動自在な可動体と、この可動体に垂直支軸の周りで水平揺動自在に支承され且つ前記係合片と係脱自在な被係合片と、前記可動体を引き戸閉動方向側の行程限に付勢保持するスプリングと、前記可動体の往復移動に連動して回転し且つ前記可動体の引き戸閉動方向への移動に対して負荷をかけるロータリーダンパーと、前記被係合片に設けられたカム従動部に作用する姿勢制御用カムが設けられ、この姿勢制御用カムは、前記可動体が引き戸閉動方向側の行程限から引き戸開動方向側の行程限直前迄の間にあるときには前記被係合片を前記係合片に対する係合姿勢に保持する直線経路部と、前記可動体が引き戸開動方向側の行程限に達したときに、前記係合片の係脱動作を許す傾倒姿勢と前記係合姿勢との間で前記被係合片が揺動するのを許す折曲経路部とを備え、この折曲経路部は、前記被係合片のカム従動部と前記スプリングの付勢力とを介して、前記被係合片を傾倒姿勢に保持すると共に前記可動体を引き戸開動方向側の行程限に保持するように形成され、傾倒姿勢に保持されている前記被係合片に引き戸の前記係合片が係合して引き戸閉動方向に移動することにより、当該被係合片が係合姿勢に切り換えられると共に引き戸開動方向側の行程限での前記可動体の保持が解除されるように構成された、引き戸の閉止装置。
【請求項2】
前記可動体は、取付けユニットの長さ方向の両端間で往復移動自在に支持され、この可動体の引き戸閉動方向側の端部に前記被係合片が軸支され、前記係合片は、引き戸の閉動方向側の側辺の背面側に付設され、前記取付けユニットは、引き戸で開閉される空間の天井面又は当該空間に架設された棚に取り付けられている、請求項1に記載の引き戸の閉止装置。
【請求項3】
前記係合片は垂直向きの軸状部材から構成され、前記被係合片は、前記係合片が嵌入する凹入溝部を備えると共に、この凹入溝部を形成する一対の突起部の内、引き戸開動方向側の突起部の外側には傾斜カム面が形成され、前記取付けユニットは、取付け用基板に対し引き戸移動方向と直交する水平前後方向に一定範囲内で横動自在に取り付けられ、この取付けユニットを、被係合片の凹入溝部に係合片が係合する前側行程限に付勢保持する付勢手段が併設されている、請求項1又は2に記載の引き戸の閉止装置。
【請求項4】
前記取付けユニットは、互いに結合一体化される上下2部材間で前記可動体、被係合片、スプリング、及びロータリーダンパーを保持するものであって、前記被係合片は、前記可動体の上下一側面に軸支されると共に前記上下2部材間に形成された横長窓部から突出し、前記姿勢制御用カムは、前記上下2部材の内、前記被係合片に隣接する側の部材の内側に形成され、前記スプリングは、前記上下2部材の内、前記可動体に隣接する側の部材と前記可動体との間で当該可動体の移動方向と平行に掛張された引張コイルスプリングである、請求項1〜3の何れか1項に記載の引き戸の閉止装置。
【請求項5】
前記係合片は、引き戸への取付け座板から突設された上下一対の水平板部間に垂直に架設された軸状部材から構成されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の引き戸の閉止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−127050(P2010−127050A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305892(P2008−305892)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000106553)サンライズ金属工業株式会社 (4)