説明

引き戸清掃装置

【課題】レールを備える引き戸装置におけるレールの走行面の清掃を行なうことができる清掃装置を提供する。
【解決手段】枠体2と、枠体に設けられたレール部材4に沿って動かされる引き戸3とを備える引き戸装置の引き戸に取り付けられ、レール部材4の走行面41を清掃するための清掃装置5a、5bであって、清掃装置5a、5bが、レール部材の走行面41に摺動係合されたワイパー部材であって、引き戸の走行方向における両端部において走行面41と摺動可能とされた摺動部を有するワイパー部と、走行面41から離れた位置に設けられた位置でワイパー部に取り付けられた連接部とを有するワイパー部材と、引き戸に取り付けられ、ワイパー部材の連接部を、遊びをもって受け入れる連接部受入部を備えるワイパー取付け部材とを備えてなる引き戸清掃装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの走行面を引き戸の開閉動作に伴って清掃することができる、引き戸清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引き戸の開閉動作に伴い、引き戸装置におけるレールの走行面を清掃できる引き戸清掃装置は特許文献1〜3において提案されている。例えば、特許文献1には、レール上を走行する戸車の左右両側にブラシ状の清掃部材を装着してなる清掃装置が、また特許文献2には、戸車の左右両側にスポンジからなる清掃部材を装着してなる清掃装置が開示されている。特許文献3には戸車の外周に清掃部材を配してなる清掃装置が開示されている。
【特許文献1】実開昭57−16575号公報
【特許文献2】実開昭60−150286号公報
【特許文献3】特許第3694574号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1及び2において提案されているこれら清掃装置は、戸車を乗せて案内するレールのない引き戸装置に使用するものであり、戸車の走行面がレールである場合にはブラシ状又はスポンジからなる清掃部材がレールの表面全面にしっかりと当接しなかったり、強く当接させてしまうと戸車の走行性を阻害したりするという問題があった。また、特許文献3の清掃装置は、戸車と清掃部材とが直接当接してしまい戸車の走行性を阻害するという問題があった。
【0004】
本発明は、レールを備える引き戸装置におけるレールの走行面の清掃を行なうことができる清掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解消すべく、
枠体(以下に述べる実施形態の説明では参照番号2で示す。以下同様)と、該枠体(2)に設けられたレール部材(4)に沿って動かされる引き戸(3)とからなる引き戸装置の引き戸(3)に取り付けられ、該レール部材(4)の走行面(41)を清掃するための清掃装置(5a,5b)であって、
該レール部材(4)の走行面(41)に摺動係合されたワイパー部材(50)であって、当該引き戸(3)の走行方向における両端部において該走行面(41)と摺動可能とされた摺動部(53)を有するワイパー部(51)と、該走行面(41)から離れた位置に設けられた位置で該ワイパー部(51)に取り付けられた連接部(52)とを有するワイパー部材(50)と、
該引き戸(3)に取り付けられ、該ワイパー部材(50)の該連接部(52)を、受け入れる連接部受入部(61)を備えるワイパー取付け部材(60)と
を備え、
該連接部受入部(61)は、引き戸(3)がレール部材(4)上を走行するときに、該連接部(52)に当該引き戸の走行方向への力をかける第1壁面部分(61a)と、それにより該ワイパー部材(50)が、該力と該力に対応してレール部材(4)からかけられる該走行方向とは反対方向への摩擦力によって、該レール部材(4)に対して所定角度だけ傾斜したときに該連接部(52)に係合して該ワイパー部材(50)のそれ以上の傾斜を止める第2壁面部分(61b)とを有する引き戸装置(1)を提供する。
【0006】
この引き戸清掃装置(5a,5b)によれば、引き戸の開閉動作に伴い連接部受入部(61)内で連接部(52)が移動し、これによりワイパー部(51)が傾斜するので、進行方向側のワイパー部(51)の端部の摺動部(53)のみにより走行面(41)全面を清掃する。これにより、走行面との接触面積が大きくならず、戸車の走行性を阻害することなく、効率よく当該走行面(41)を清掃することができる。
【0007】
また、ワイパー部材が傾斜した状態では、引き戸の開閉力の分力が第2壁面部分(61b)から連接部に作用し、その力がワイパー部(51)の端部の摺動部(53)からレール部材の走行面に作用するので、走行面を確実に清掃できる。
【0008】
具体的には、該連接部(52)が、該ワイパー部(51)の両端部間の位置とされているようにすることができ、これにより、引き戸(3)を開放方向と閉鎖方向とのいずれの方向に移動させる場合であってもワイパー部(51)の端部の摺動部(53)をレール部材(4)の走行面(41)に確実に摺動係合させることができる。
【0009】
また、該レール部材(4)が該枠体(2)の上部縁に沿って設けられ、該走行面(41)が該レール部材(4)の上面に形成されており、該ワイパー部材(50)が該走行面(41)の上から摺動係合されているようにすることができる。これにより、引き戸(3)の開閉動作をスムーズにすることができると共にレール部材(4)の走行面(41)の清掃効果をより向上させることができる。
【0010】
また、該連接部(52)が円柱状とされ、水平で該走行方向に対して直角に延びるように設定されているようにすることができる。これにより、安定してワイパー部(51)を保持することができる。
【0011】
該連接部受入部(61)が、該走行面(41)から離れる方向に細長い長円形とされているようにすることができる。これにより、ワイパー部(51)の端部の摺動部(53)のみが走行面(41)に係合して、引き戸の良好な走行性と清掃とを最適な状態にコントロールすることが可能となる。
【0012】
該ワイパー部(51)が、走行方向に直線的に延び、該走行面(41)に摺動係合される摺動部(53)を有するようにすることができる。摺動部が直線的とされ走行面と係合するようにすることにより、当該ワイパー部を、レール部材との適正な位置関係にしながら引き戸に設定することを容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の引き戸清掃装置につき添付図面を参照して更に具体的に説明する。
【0014】
図1に示す本実施形態の引き戸装置1は、枠体2と、枠体2の上部縁に沿って設けられたレール部材4に沿って動かされる引き戸3と、引き戸3に取り付けられ、レール部材4の走行面41を清掃するための清掃装置5a,5bと、を備えている。
【0015】
本実施形態における引き戸装置1は、以下に述べるように、引き戸3を開放した場合に自動的に閉鎖するように構成されている。先ず、レール部材4の走行面41を走行する走行部材7a,7bが引き戸3の上部縁における左右端部に設けられている。該走行部材は、それぞれ、引き戸3に固定するための固定用ケーシング71と、固定用ケーシング71に回転自在に取り付けられ、レール部材4の走行面41を転動する戸車72とを備える。戸車72は、外周面の全面に渡って半円形状の凹部73が形成されている(図2参照)。引き戸3の閉鎖方向側(すなわち、図1で見て左側)の走行部材7aには、レール部材4の上方縁部に設けられたラック74と噛合するピニオン75を備え、引き戸が閉鎖方向で動かされるときの該ピニオンの回転に伴って適宜の制動を行なって引き戸3の閉鎖速度を調節するための制動装置(図示せず)が設けられている。また、レール部材4の閉鎖方向側の端部には、一端が走行部材7aに連結され他端がゼンマイバネによって駆動されるドラム(図示せず)に連結されたワイヤー76を具備し、引き戸3を開放した場合に、走行部材7aを介して引き戸3を閉鎖方向に付勢する自動閉鎖装置77が設けられている。
【0016】
レール部材4は、図2に示すように、断面L字状であり、枠体2の上部縁に沿って設けられている。レール突条42の上面にある走行面41は、戸車72の凹部73と係合するように断面半円形状に形成されている。
【0017】
清掃装置5a,5bは、各走行部材7a,7bにそれぞれ設けられており、図1に示すように、走行部材7aに設けられた清掃装置5aは、固定ケーシングから閉鎖方向側に突出しているのに対して、走行部材7bに設けられた清掃装置5bは、固定ケーシングの開放方向側の内部に設けられて、引き戸3を開放した際に清掃装置5bが戸あたりに衝突することがないようにしている。
【0018】
清掃装置5aについて図2及び図4を参照して説明すると、清掃装置5aは、レール部材4の走行面41に摺動係合されるワイパー部材50とワイパー部材50を取り付けるワイパー取付け部材60とを備え、ワイパー部材50は走行面41の上から摺動係合されている。
【0019】
ワイパー部材50は、走行面41と摺動可能な摺動部53を有するワイパー部51と、走行面41から離れた位置でワイパー部51に取り付けられた連接部52とを有する。
【0020】
ワイパー部51は、図4に示すように、台形状に形成され、その下面には、走行方向に直線的に延び、走行面41に摺動係合されるように断面半円形とされた摺動部53を有する。
【0021】
連接部52は、図2〜4に示すように、ワイパー部51の上方位置で且つ当該ワイパー部材の両端部間の位置に取り付けられており、その形状は円柱状であり、水平で走行方向に対して直角に延びるように設定されている。
【0022】
また、本実施形態においては、脱落防止用の止め具54が連接部52の先端部に設けられている。
【0023】
ワイパー取付け部材60は、図1及び2に示すように、1枚の板体を折り曲げて形成されており、ボルト62により固定ケーシング71に固定される第1の部分60aと、該第1の部分から固定ケーシングの左側縁71aに沿って折れ曲げられた第2の部分60bと、該第2の部分から図1で見て左側に折り曲げられた第3の部分60cとからなる。第3の部分には連接部受入部61が形成されている。連接部受入部61は、貫通した開口であり、連接部52を、遊びをもって受け入れ、以下に述べるように、引き戸の開閉に伴ってワイパー部材が傾動されるようにしてある。すなわち、連接部受入部61はワイパー部材50が傾斜されるときにそれに伴う連接部52の動きを許容し、且つ、傾斜が所定角度になったときに、連接部52の動きを止めて、ワイパー部材50の傾斜を保持するための遊びをもって連接部52を受け入れるようになされている。本実施形態において連接部受入部61は、引き戸3がレール部材4上を走行するときに、連接部52に引き戸3の走行方向への力をかける第1の壁面部分61a(図4参照)と、それによりワイパー部材が、力と力に対応してレール部材4からかけられる走行方向とは反対方向への摩擦力によって、レール部材に対して所定角度だけ傾斜したときに連接部52に係合してワイパー部材50のそれ以上の傾斜を止める第2の壁面部分61b(図4参照)とを有する。具体的には、連接部受入部61は、走行面41から離れる方向に細長い長円形とされ、連接部52の上下方向には多くの遊びが、また左右方向には若干の遊びが設けられており、図4(a)〜(c)に示す長円形の開口におけるほぼ直線状の側壁部分が「連接部52に引き戸3の走行方向への力をかける第1の壁面部分61a」を形成しており、図4(a)〜(c)に示す長円形の開口における上部の半円形状の壁面が「連接部52に係合してワイパー部材50のそれ以上の傾斜を止める第2の壁面部分61b」を形成している(図4参照)。
【0024】
清掃装置5bは、図3に示すように図2に示す形態の清掃装置5aとは異なる形態であるが、連接部52が戸車72の走行を阻害しないように枠体側を向いて設置されている点、及びワイパー取り付け部材60が図3の上方から見て1枚のコの字状の板体からなり、図1に示すように、正面から見て、清掃装置がケーシングの裏側に位置して、見えないようにされている点を除いては、清掃装置5aと同様に形成されている。
【0025】
次に図4(a)〜(c)を参照して清掃措置5aの作用について説明する。なお、清掃装置5bも同様に作用する。また、図4においては便宜上、止め具を省略して示すと共にワイパー部材を実線で示している。
【0026】
図4(a);静止状態では、連接部52がほぼ連接部受入部61中央部に位置し、ワイパー部51は水平状態であり、摺動部53はその全面が走行面41に当接している。
【0027】
図4(b);引き戸3を開放方向すなわち右方に移動させて、引き戸3がレール部材4上を走行すると、連接部受入部61の側壁(左側面)によって連接部52に右向きへの力が加えられて、ワイパー部材50が引き戸3の走行方向への力を受け、これにより、当該ワイパー部材は右方へ動かされるようになるが、摺動部53がレール部材の走行面41から左向きの摩擦抵抗(走行方向とは反対方向への力)を受けるために、当該ワイパー部材には全体として(図4bで見て)時計周りの回転モーメントがかかる。このため、連接部52は連接部受入部61の周縁に図中のAで当接すると共にワイパー部材は図示のように右向き前のめりのように傾斜した状態とされて、図中のBで示す部分でレール部材41の走行面上を摺動し、同走行面の清掃を行う。
【0028】
図4(c);引き戸を開放方向に移動させた後、引き戸への力を解除すると、自動閉鎖装置77(図1参照)の作用により引き戸は閉鎖方向に自動的に移動する。この際、清掃装置5aは、ワイパー部材50に図4(b)とは逆方向の力が加わるために逆向きに傾斜した状態で走行面41を摺動し、該走行面41の清掃を行なう。
【0029】
本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0030】
例えば、レール部材の走行面を凹状とし、ワイパー部の摺動部を凸状とすることもできる。
【0031】
また、連接部の形状は円柱状でなく、断面矩形状でもよい。また、連接部受入部は、連接部を受け入れられるようになっていれば貫通した開口でなくてもよく、その形状も長円形でなく、矩形状でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の清掃装置を備えた引き戸装置を示す正面図であり、引き戸が閉鎖された状態を示すと共に引き戸が開放された状態を一部部分示す図である。
【図2】図2は、本発明の清掃装置の1実施形態を示す断面図(ハッチングは一部省略)である。
【図3】図3は、本発明の清掃装置の他の実施形態を示す断面図(ハッチングは一部省略)である。
【図4】図4(a)〜(c)は、それぞれ清掃装置の作用を説明するために清掃装置のみを拡大して示す正面図である。
【符号の説明】
【0033】
引き戸装置1;枠体2;レール部材4;引き戸3;走行面41;清掃装置5a,5b;走行部材7a,7b;固定用ケーシング71;戸車72;凹部73;ラック74;ピニオン75;ワイヤー76;自動閉鎖装置77;ワイパー部材50;ワイパー取付け部材60;ワイパー部51;連接部52;摺動部53;止め具54;連接部受入部61;第1の壁面部分61a;第2の壁面部分61b

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と該枠体に設けられたレール部材に沿って動かされる引き戸とからなる引き戸装置の引き戸に取り付けられ、該レール部材の走行面を清掃するための引き戸清掃装置であって、
該レール部材の走行面に摺動係合されたワイパー部材であって、当該引き戸の走行方向における両端部において該走行面と摺動可能とされた摺動部を有するワイパー部と、該走行面から離れた位置で該ワイパー部に取り付けられた連接部とを有するワイパー部材と、
該引き戸に取り付けられ、該ワイパー部材の該連接部を受け入れる連接部受入部を備えるワイパー取付け部材と
を備え、
該連接部受入部は、引き戸がレール部材上を走行するときに、該連接部に当該引き戸の走行方向への力をかける第1壁面部分と、それにより該ワイパー部材が、該力と該力に対応してレール部材からかけられる該走行方向とは反対方向への摩擦力によって、該レール部材に対して所定角度だけ傾斜したときに該連接部に係合して該ワイパー部材のそれ以上の傾斜を止める第2壁面部分とを有する引き戸清掃装置。
【請求項2】
該連接部が、該ワイパー部の両端部間の位置とされている請求項1に記載の引き戸清掃装置。
【請求項3】
該レール部材が該枠体の上部縁に沿って設けられ、該走行面が該レール部材の上面に形成されており、該ワイパー部材が該走行面の上から摺動係合されている請求項1又は2に記載の引き戸清掃装置。
【請求項4】
該連接部が円柱状とされ、水平で該走行方向に対して直角に延びるように設定されている請求項1乃至3のいずれかに記載の引き戸清掃装置。
【請求項5】
該連接部受入部が、該走行面から離れる方向に細長い長円形とされている請求項4に記載の引き戸清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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