説明

引出の追加閉塞体

【課題】側板の前後幅寸法が異なる引出であっても側板の上方空間を閉塞することができる引出の追加閉塞体を提供すること。
【解決手段】キャビネット1に収納され、上方に開口する略箱状であって、側板14の上下幅寸法が前板16と後板15との上下幅寸法よりも短寸に形成されてなる引出10の、側板14の上方空間を閉塞する引出14の追加閉塞体23であって、追加閉塞体23は、側板14の上方に配置される閉塞本体24と、閉塞本体24の前後端部の少なくとも一方が挿入される保持体25と、から構成され、保持体25への閉塞本体24の挿入量を調整することで、追加閉塞体23の前後幅寸法を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出の側板に着脱可能に取り付けられ、側板の上方空間を閉塞する引出の追加閉塞体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引き出し(引出)としては、底板と背板と前板と両側の側板とで上面が開口する各箱状に形成されており、側板を他のサイズの引き出しと共通化するために、側板の上下幅寸法が前板と後板との上下幅寸法よりも短寸に形成され、側板の上方には前板と背板とに端部が結合された棧材(支持棒)が配置されている構造のものが知られている。このような引き出しにおいては、下端部に側板の上端部に嵌合する嵌合凹部を有する板状の側部カバー(閉塞本体)と、側部カバーの上端部に、棧材に嵌合させる棧取り付け部を有するクリップ(保持体)と、を備え、棧材にクリップの棧取り付け部を嵌合させるとともに、嵌合凹部を側板の上端部に嵌合させることで、側部カバーによって側板の上端部と棧材との間の側面開口を覆い、引き出しの側方から収納物が飛び出してしまうことを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3991984号公報(第3頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、側板の前後幅寸法が側部カバー(閉塞本体)の前後幅寸法と異なる場合には、側板の前後幅寸法に合わせた側部カバーを新規に製造する必要があるため、側部カバーの製作コストが嵩んでしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、側板の前後幅寸法が異なる引出であっても側板の上方空間を閉塞することができる引出の追加閉塞体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の引出の追加閉塞体は、
キャビネットに収納され、上方に開口する略箱状であって、側板の上下幅寸法が前板と後板との上下幅寸法よりも短寸に形成されてなる引出の、側板の上方空間を閉塞する引出の追加閉塞体であって、
前記追加閉塞体は、前記側板の上方に配置される閉塞本体と、該閉塞本体の前後端部の少なくとも一方が挿入される保持体と、から構成され、該保持体への前記閉塞本体の挿入量を調整することで、前記追加閉塞体の前後幅寸法を変更することを特徴としている。
この特徴によれば、追加閉塞体の前後幅寸法を前後幅寸法の異なる各種引出の側板の前後幅寸法に合わせることができるので、引出毎に引出の側板の前後幅寸法に合う新たな追加閉塞体を製作するコストを抑えて側板の上方空間を閉塞することができるばかりか、保持体への閉塞本体の挿入量を調整することで追加閉塞体の前後幅寸法を変更することができる。
また、保持体から閉塞本体を引き出すことで各保持体と閉塞本体との交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0007】
本発明の引出の追加閉塞体は、
前記保持体は透光性を有することを特徴としている。
この特徴によれば、保持体への閉塞本体の挿入量を視認することができ、追加閉塞体の前後幅調整を容易に行うことができる。
【0008】
本発明の引出の追加閉塞体は、
前記側板の上方には、前後方向を向く支持棒が前記引出の前記前板と前記後板との間に亘って設けられており、前記保持体は前記支持棒に支持されることを特徴としている。
この特徴によれば、追加閉塞体を保持体を介して支持棒に確実に支持させることができる。
【0009】
本発明の引出の追加閉塞体は、
前記保持体は、前記閉塞本体の前端部を保持する前端部保持体と、前記閉塞本体の後端部を保持する後端部保持体と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、閉塞本体は前端部と後端部とを前端部保持体と後端部保持体とを介して支持棒に支持されるので、上下方向に揺動することなく側板の上方空間を閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】引出が設けられたシステムキッチンを示す斜視図である。
【図2】引出を示す一部分解斜視図である。
【図3】引出に取り付けられた追加閉塞体を示す一部拡大断面図である。
【図4】追加閉塞体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る引出の追加閉塞体を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0012】
実施例に係る引出の追加閉塞体につき、図1から図4を参照して説明する。図1の符号1は、家庭内のキッチン等に設けられる本発明におけるキャビネットとしてのシステムキッチンである。このシステムキッチン1には、上部右側に使用者が食器等を洗うのに使用するシンク部2と、上部中央にシステムキッチン1上での作業スペース3と、上部左側に調理を行うためのコンロ部4と、が設けられている。
【0013】
また、システムキッチン1の下部は食器や食材等を収納しておくための収納部5が設けられている。具体的には、シンク部2の下部には引出6,7、作業スペース3の下部には引出8,9,10、コンロ部4の下部には引出11,12がそれぞれ上下に連設されている。以下、この収納部5に設けられた引出10について説明する。
【0014】
以下、引出10がシステムキッチン1の収納部5内に取り付けられている状態において、引出10の右側とは、使用者がシステムキッチン1の正面側に立って右側のことであり、引出10の左側とは、使用者がシステムキッチン1の正面側に立って左側のことであり、引出10の後方側とは、システムキッチン1を挟んで前方側と対向する側のことであるものとする。
【0015】
図2に示すように、引出10は、底板13と、この底板13の左右両端に取り付けられる一対の側板14と、これら底板13と側板14との後端に取り付けられる後板15と、これら底板13と側板14との前端に取り付けられる前板16とを備えている。また、前板16の正面には、使用者が掴む把手17が取り付けられており、引出10は上面が開口した略四角箱状に形成されている。
【0016】
引出10におけるこれら底板13と左右一対の側板14と後板15と前板16とにより囲まれた空間は、例えば食器や調理器具等を収納するための収納空間Sに構成されている。また、側板14の上下幅寸法は、前板16及び後板15の上下幅寸法よりも短く形成されている。更に、側板14の上方には、前後端が前板16と後板15とに支持された円筒状の支持棒18が前後方向に向いて渡設されている。
【0017】
尚、図3に示すように、側板14はアルミやステンレス等の板材の曲げ加工により形成された部材であり、その内部は中空となっている。更に、側板14の下部にはスライドレール19が設けられている。
【0018】
これらのスライドレール19は、一端側がシステムキッチン1の収納部5を縦に仕切る本体側の仕切板21に螺子で螺着された板片20の屈曲された他端側に摺動可能に係合されており、これらスライドレール19及び板片20により、引出10はシステムキッチン1に対して前後方向に移動自在に案内されている。
【0019】
そして、左右の両支持棒18には、側板14と支持棒18との間に形成された上方空間22を閉塞するための追加閉塞体23が取り付けられるようになっており、収納空間S内に収納されている皿や調理器具等の収納物が引出10の側方から飛び出してしまうことを防止している。
【0020】
以下、引出10は左右対称構造であり、左右の支持棒18に取り付けられる追加閉塞体23は同一構成のため、引出10の右側部及び右の支持棒18に取り付けられる追加閉塞体23についてのみ説明する。
【0021】
図3及び図4に示すように、追加閉塞体23は、本発明における閉塞本体としての側面視方形状に形成されている閉塞板24と、この閉塞板24を保持し支持棒18と側板14の間に閉塞板24を固定する保持体25と、から構成されている。より具体的には、保持体25は、閉塞板24を前端部側で保持する前端部側保持体26と後端部側で保持する後端部側保持体27とから成っている。これら前端部側保持体26と後端部側保持体27とは、透光性と弾性とを有する硬質プラスチックから構成されている。
【0022】
これら前端部側保持体26と後端部側保持体27のうち、前端部側保持体26は、後方に向けて挿入孔28が形成されている。また、後端部側保持体27は、前方に向けて挿入孔29が形成されている。これら挿入孔28,29は、上下幅寸法が閉塞板24の上下幅寸法と略同一となるように形成されており、挿入孔28は閉塞板24の前端部が、挿入孔29には閉塞板24の後端部がそれぞれ挿入可能となっている。
【0023】
そして、閉塞板24は、前端部の挿入孔28に対する挿入量と後端部の挿入孔29に対する挿入量とを変化させることにより、追加閉塞体23の前後幅寸法を最短長さL1から最長長さL2にかけての間で調整可能となっている。尚、閉塞板24の前端部と後端部は、挿入孔28,29の内壁からの摩擦力や挟持力により挿入量を固定させることができ、追加閉塞体の前後幅寸法を維持可能となっている。
【0024】
また、前端部側保持体26と後端部側保持体27とは、支持棒18に係合するためのフック部30を上端部に備えている。これらフック部30を支持棒18に上方から係合させることにより、前端部側保持体26と後端部側保持体27とは支持棒18に吊持される。
【0025】
更に、前端部側保持体26と後端部側保持体27との下端部には、前端部側保持体26と後端部側保持体27との前後方向略全長に亘って下方に開口する嵌合凹部31が形成されている。これら嵌合凹部31は、側板14の上端部と補形に形成されており、前端部側保持体26と後端部側保持体27とのフック部30が支持棒18に吊持されると同時に、側板14の上端部に嵌合するようになっている。
【0026】
つまり、追加閉塞体23は、前端部側保持体26と後端部側保持体27とのフック部30による支持棒18への係合と、嵌合凹部31による側板14の上端部への嵌合とによって上方空間22に閉塞板24を配置し、この閉塞板24によって上方空間22を閉塞するようになっている。
【0027】
このとき、前述したように、予め側板14の前後幅寸法に合わせて閉塞板24の前端部と後端部との前端部側保持体26と後端部側保持体27への挿入量を調整することによって、側板14の前後幅寸法の異なる各種引出10の上方空間22の閉塞に対応することができる。
【0028】
尚、本実施例では、前述したように保持体25を前端部側保持体26と後端部側保持体27とで構成し、閉塞板24の前端部と後端部とを挿入孔28,29に挿入させることで、閉塞板24を保持したが、前端部側保持体26と後端部側保持体27とのいずれか一方のみで閉塞板24を保持し、片持ち支持された閉塞板24によって上方空間を閉塞するようにしてもよい。
【0029】
更に尚、前述したように、追加閉塞体23は、閉塞本体24を保持体25に挿入する構造で部品分割しているため、閉塞本体24には、長手方向に断面形状が同一の部材を使用することができる。その上、板状で断面長方形状や棒材で断面円形等、様々な形状デザインに対応することができるとともに、フック部30や嵌合凹部31を保持体25に形成しているため、閉塞本体24には、長尺材部材を所定の前後幅寸法に切断するだけで使用することができ、複雑加工の必要のない樹脂、金属、ガラス、木材等の様々な材料で閉塞本体24を構成することができる。
【0030】
以上、本実施例における引出10の追加閉塞体にあっては、追加閉塞体23は、側板14の上方に配置される閉塞板24と、閉塞板24の前後端部の少なくとも一方が挿入される保持体25と、から構成され、保持体25への閉塞板24の挿入量を調整することで、追加閉塞体23の前後幅寸法を変更することで、追加閉塞体23の前後幅寸法を前後幅寸法の異なる各種引出10の側板14の前後幅寸法に合わせることができるので、引出毎に引出10の側板14の前後幅寸法に合う新たな追加閉塞体23を製作するコストを抑えて側板14の上方空間22を閉塞することができるばかりか、保持体25への閉塞板24の挿入量を調整することで追加閉塞体23の前後幅寸法を変更することができるので、各保持体25と閉塞板24との交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。また、保持体25から閉塞体24を引き出すことで各保持体25と閉塞板24との交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0031】
また、保持体25は透光性を有するので、保持体25への閉塞板24の挿入量を視認することができ、追加閉塞体23の前後幅寸法の調整を容易に行うことができる。
【0032】
また、側板14の上方には、前後方向を向く支持棒18が引出10の前板16と後板15との間に亘って設けられており、保持体25は支持棒18に支持されるので、追加閉塞体23を保持体25を介して支持棒18に確実に支持させることができる。
【0033】
また、保持体25は、閉塞板24の前端部を保持する前端部側保持体26と、閉塞板24の後端部を保持する後端部側保持体27と、を備えるので、閉塞板24は前端部と後端部とを前端部側保持体26と後端部側保持体27とを介して支持棒18に支持されるので、上下方向に揺動することなく側板14の上方空間22を安定して閉塞することができる。
【0034】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0035】
例えば、前記実施例では、閉塞本体を板状の閉塞板24として構成したが、閉塞本体を前後方向を向く複数本の棒材によって構成して、追加閉塞体23の軽量化を図ってもよい。
【0036】
また、前記実施例では、引出10が設けられるキャビネットを家庭内のキッチンに設けられるシステムキッチン1として説明したが、引出10が設けられるキャビネットは、脱衣場等に設けられる洗面台や、衣装箪笥等であってもよい。
【0037】
また、前記実施例では、前端部側保持体26と後端部側保持体27とのフック部30を支持棒18に吊持させるとともに、嵌合凹部31を側板14の上端部に嵌合させることで上方空間22に閉塞板24を配置したが、前端部側保持体26と後端部側保持体27とのフック部30を支持棒18に吊持させるのみ、または、前端部側保持体26と後端部側保持体27との嵌合凹部31を側板14の上端部に嵌合させるのみで上方空間22に閉塞板24の配置を行ってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 システムキッチン(キャビネット)
10 引出
14 側板
18 支持棒
22 上方空間
23 追加閉塞体
24 閉塞板(閉塞本体)
25 保持体
26 前端部側保持体
27 後端部側保持体
28,29 挿入孔
30 フック部
31 嵌合凹部
S 収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットに収納され、上方に開口する略箱状であって、側板の上下幅寸法が前板と後板との上下幅寸法よりも短寸に形成されてなる引出の、側板の上方空間を閉塞する引出の追加閉塞体であって、
前記追加閉塞体は、前記側板の上方に配置される閉塞本体と、該閉塞本体の前後端部の少なくとも一方が挿入される保持体と、から構成され、該保持体への前記閉塞本体の挿入量を調整することで、前記追加閉塞体の前後幅寸法を変更することを特徴とする引出の追加閉塞体。
【請求項2】
前記保持体は透光性を有することを特徴とする請求項1に記載の引出の追加閉塞体。
【請求項3】
前記側板の上方には、前後方向を向く支持棒が前記引出の前記前板と前記後板との間に亘って設けられており、前記保持体は前記支持棒に支持されることを特徴とする請求項1または2に記載の引出の追加閉塞体。
【請求項4】
前記保持体は、前記閉塞本体の前端部を保持する前端部保持体と、前記閉塞本体の後端部を保持する後端部保持体と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の引出の追加閉塞体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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