説明

引止クランプの羽子板部切断工具

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】送電線の新旧線を交換する際、旧線のけん引に先立って旧線の前後端引止クランプの羽子板部を切除する工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】数径間にまたがる旧線を新線に交換する場合は、旧線の端末に新線を接続させ、旧線の始端をパイロットワイヤで金車を介してけん引するが、旧線始端及び後端の引止クランプには、ジャンパ線取付用羽子板部があり、これが下方へ突出しているので金車を通過することができない。このため従来は旧線にカムアロングを装着してワイヤロープで鉄塔へ仮止めし、引止クランプの口元附近で電線を切断して、金車通過型の延線クランプを装着する方法によった。これによってけん引は可能となるが、かなりの時間と労力を要する高所作業となっていた。
【0003】
【課題解決の手段】引止クランプは直線形の圧着部と基部が円錐形の羽子板部とから成る。羽子板部の外周アルミ材に切込を入れてこれを切除し、内部の鋼スリーブを露出させることとする。けん引力は圧着部で確保されているので、延線に支障はない。羽子板部の外皮をはぎとるだけですむので工事は著しく簡略化される。
【0004】切除には特殊な工具が必要となる。そのため羽子板部円錐形の側線へ切込を入れる直線刃工具と、羽子板部口元環状部へ円弧形切込を入れる円弧刃工具とを用意する。可搬式油圧プレスの上下ダイス部にまず前者を装着して直線切込を、次に後者に取替えて環状切込を入れる。あとは手作業ではぎ取り可能となる。
【0005】
【実施例】引止クランプは図5の如く、鋼心アルミ撚線Eの鋼心線eを鋼クランプSの中心孔へ挿入圧着し、予め図の左方に組込んでおいたアルミスリーブAをずらせてその上にかぶせ圧着したものである。いまこのアルミスリーブの羽子板部に側線p−gをマークし、まずこの線に沿うてアルミスリーブに直線切込を入れ、次にp点を含む環状部に環状切込を入れることとする。
【0006】図1は線p−gに沿う切込を入れる上下工具1,2を可搬プレスの上下に取付けたものを示す。工具1,2の刃は対称均等の直線刃である。この刃を両側からp−g線にあてて圧し、同じ線上で2〜3度位置を変え全長を切断する。加圧の際は刃がアルミ層を切断して内部の鋼クランプに当接すると、急に油圧が上がるのでこのとき附設油圧切替スイッチ(図示せず)を切替えることにより、夫々の刃工具はアルミ層から離れて元の位置に復する。
【0007】次に工具1,2を取外し、円弧形刃の工具3,4に変える(図2)。これでp点を含む環状部を両側から圧する。両側の円弧形工具3、4が突き当たるとほぼ鋼クランプSの外側に位置し、アルミ層は全周にわたり切除される。あとは手作業で羽子板部をはぎとることが容易で、はぎ取りにより引止クランプは図6のようになる。
【0008】
【発明の効果】工具を取付けた可搬プレスの重量はせいぜい7kg程度であり、1〜2人の作業者で容易に全作業を実施できる。この工具の使用により羽子板部は容易に切除可能となり、金車通過型延線クランプとの交換を不要にする。また附設の油圧切替スイッチ(図示せず)を切替えることにより、油圧が急上昇する点で油圧を絶つこととし、刃が内部の鋼クランプを傷つける恐れが一掃される。
【図面の簡単な説明】
【図1】直線形工具の正面図である。
【図2】円弧形工具の正面図である。
【図3】直線形工具の斜視図である。
【図4】円弧形工具の斜視図である。
【図5】引止クランプの正面図である。
【図6】羽子板部撤去後の正面図である。
【符号の説明】
1,2 直線形工具
3,4 円弧形工具
E 電線
e 鋼心線
S 鋼クランプ
A アルミスリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋼クランプとこれに被挿する羽子板部を備えたアルミスリーブとから成る引止クランプを対象とする可搬式油圧プレスに用いられ、上型下型それぞれを上下対称直線形凸起刃或いは円弧形凹み刃とし、かつ両者を交換装着可能として成り、上記の刃が引止クランプ羽子板部の対象位置に於いて、アルミ層を切断後鋼クランプと当接して、急上昇する油圧変化により、後退に転じるように切替スイッチを設定し、羽子板部を切除することを特徴とする引止クランプの羽子板部切断工具。

【図6】
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【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3505267号(P3505267)
【登録日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【発行日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−155519
【出願日】平成7年5月31日(1995.5.31)
【公開番号】特開平8−331722
【公開日】平成8年12月13日(1996.12.13)
【審査請求日】平成14年2月21日(2002.2.21)
【出願人】(391036921)川北電気工業株式会社 (4)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【参考文献】
【文献】特開 平5−207622(JP,A)
【文献】特開 昭60−96119(JP,A)
【文献】実開 昭60−141929(JP,U)
【文献】実開 平1−120719(JP,U)
【文献】実開 昭62−51911(JP,U)