説明

強化木製バット

【課題】 打球部だけを強化してきた従来の木製バットは、テーパー部に弱点があったために、飛距離が伸びず、耐久性に欠点があったが、そのテーパー部を強化することにより、木製バットの耐久性を上げ、折れにくいバットを実現し、さらに、スイートスポットを広げ、反発力を高め、打率と飛距離を向上させる強化木製バットを提供する。
【解決手段】 2の打球部を除く4のテーパー部から5のグリップエンドまで合成樹脂を内部深くまで加圧注入し、硬化することでテーパー部を強化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球、ソフトボールで打撃に使用する強化木製バットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
木製バットは、金属バットに比べ、反発力が弱く、飛距離が伸びないとされている。その理由は、木製バットのテーパー部のたわみが大きく、打球時にたわんだバットが元に戻る時間が長いためであり、また、スイートスポットが狭いためである。一方金属バットは、木製バットに比べ、一般的に反発力が強く、飛距離が伸びるとされている。その理由は、テーパー部のたわみが少なく、打球時にたわんだバットが元に戻る時間が短いためであり、また、スイートスポットが広いためである。従来の木製バットは、打球感はいいがスイートスポットが狭く、飛距離が伸びない上に折れやすかった。(例えば特開文献1参照)。
【特許文献1】 特開2006−51063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1記載のバットにおいて、耐久性、反発性を得るために、打球部に合成樹脂を加圧注入・硬化しているが、打球部に合成樹脂を加圧注入・硬化することにより、反発性は高まるが、その反面、ボールをとらえる打球面も硬くなるために、打球時にボールが滑り、ボールに回転がかからなくなり、ボールは失速するという欠点が推測される。また、合成樹脂をバットの内心部には加圧注入せず、表面のみに加圧注入しているために、バット全体の強化にはつながらない。
【0004】
木製バットの材料の内心部まで、合成樹脂を加圧注入・硬化することにより、前記材料は約1.5倍程度重量及び強度が増すことが分かっている。この効果を利用して木製バットの強度、バランスを変え、従来の木製バットにはない特徴を出せることに着目し、従来の木製バットの表面に合成樹脂を含浸させる方法に加え、テーパー部或いはグリップ部、或いは頭頂部に合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化した強化木製バットを考案するものである。木製バット特有の、打球時に大きくたわむテーパー部に、合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化することにより、テーパー部を強化させ、金属バット同様の、或いはそれに近いテーパー部の強く小さなたわみを実現し、木製バットでありながら、反発力が強く、加えてスイートスポットの広い強化木製バットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、通常の打球部、テーパー部、グリップ部、グリップエンドを備える木製バットから成り、前記木製バットの打球部を除く、テーパー部からグリップエンドまでの長手方向に、合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化する、ことを特徴とする。
【0006】
また、第2の課題解決手段は、前記強化木製バットの前記打球部と、前記グリップの中間部分のテーパー部長手方向に、合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化する、ことを特徴とする。
【0007】
また、第3の課題解決手段は、請求項1及び請求項2に記載の本発明において、前記強化木製バットの頭頂部に、合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化する、ことを特徴とする。
【0008】
また、第4の解決手段は、請求項1及び請求項2に記載の本発明において、前記強化木製バットに注入する樹脂は、植物性樹脂或いは合成樹脂など、少なくとも2種類以上の異なる樹脂を多重層にし、バットの内心に沿いロール状に加圧注入することを特徴とする。
【0009】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。バットのボールを打つ打球部を作用点、手で握るグリップ部を力点、打球部から下側のテーパー部となる部分を支点と考えた場合、力点と作用点の中間にある支点は、力点及び作用点の力を大きくも小さくもできる要素を持っている。その支点となるテーパー部に合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化することにより、テーパー部を最大限に強化し、木製バットの作用点となる打球部の力を大きくすることができる。打球時に大きくたわむテーパー部を強化することで、たわみを少なくし、これにより、従来の木製バットよりスイートスポットを広げることができ、反発力を高め飛距離を伸ばすことができる。また、テーパー部からグリップエンドまで合成樹脂を内心部まで注入することにより、テーパー部の重みが増し、手元バランスのバットを作ることができる。
【0010】
また、第2の課題解決手段による作用は、支点となるテーパー部のみに合成樹脂を加圧注入・硬化することで、たわみを左右するテーパー部の強化をはかり、木製バットの反発力を強くすることができる。また、木製バットでありながら、打球面及びグリップ面は通常の木製バットの感触、打球感を損なうことなくスイートスポットを広げることができ、更に飛距離を伸ばすことができる。また、テーパー部に合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化することにより、テーパー部の重みが増し、ミドルバランスのバットを作ることができる。
【0011】
また、第3の課題解決手段による作用は、強化木は、材料に合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化することにより、重量が約1.5倍程度重くなるため、バットの頭頂部に合成樹脂を内心部まで加圧注入することにより、通常の木製バットのヘッドにおもりをつけたことと同じ効果が現れ、ヘッドバランスの調整をすることができる。
【0012】
また、第4の解決手段による作用は、例えば柔らかい樹脂、硬い樹脂、柔らかい樹脂など、性質の異なる植物性樹脂或いは合成樹脂など少なくとも2種類以上の樹脂を多重層にし、バットの内心に沿ってロール状に加圧注入・硬化することにより、バットの強度を増大させ、折れにくく安全で経済的なバットを作ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように請求項1に記載の本発明は、強化木製バットのヘッドとグリップの中間部分であるテーパー部の一番細くて折れやすい部分に、合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化することで、弱点となるテーパー部を強化し、強化することによりテーパー部のたわみを小さくし、反発力の強いバットを提供することができる。また、植物性樹脂或いは合成樹脂を内心部まで加圧注入することで、手元側が重くなり、木製バットでありながら、手元バランスを可能にしたバットを提供できる。
【0014】
また、請求項2に記載の本発明は、打球部とグリップ部には合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化しないために、打球感及びグリップの握りの感触は従来と変わらない木製バットとしてなんら違和感なく使用することができ、木製バットの特性である、ボールに回転をきかせた打球を得ることができる。
【0015】
また、請求項3に記載の本発明は、ヘッドの先端部に合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化し、合成樹脂の注入量によりヘッドの重さを調整することができ、木製バットでありながら、ヘッドバランスを意識した素振り練習、及びバッティングができる。
【0016】
また、請求項4に記載の本発明は、性質の異なる植物性樹脂或いは合成樹脂を多重層にし、内心部まで加圧注入・硬化することにより、バットの強度をさらに向上させることができ、折れにくいバットを実現することができる。環境に配慮した樹脂を注入することで環境に優しくい強化木製バットと、折れにくく安全性と経済性の高い木製バットを提供できる。
【0017】
また、通常の木製バットのスイートスポットは、投球方向からバットが90度のところで球を捉えた場合、長さ約11.3センチ程度とされているが、金属バットの場合、スイートスポットは、木製バットのおよそ3倍程度広く、よって、球を捕らえる部分が広くなるために、木製バットより、打率、飛距離が向上する。本発明は、テーパー部を強化し、打球時のたわみを少なくすることで、スイートスポットを広げ、打率、飛距離を向上させるための反発力の高い強化木製バットを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。ただし、各実施の形態により、本発明が限定されるものではなく、以下の実施の形態は、本発明の強化木製バットについての一例として説明するものであり、この説明の項に限定されるものではない。
【0019】
図1の1においては、強化木製バットの側面図をあらわしたものであり、2は打球部(作用点)、3はグリップ部(力点)、4はテーパー部(支点)、5はグリップエンド、6はスイートスポット、7は合成樹脂を加圧注入・硬化する部分を表したものである。
【0020】
図2において、8は強化木製バットの頭頂部への合成樹脂を加圧注入・硬化する部分、9はテーパー部からグリップエンドまで合成樹脂を加圧注入する部分を表したものである。
【0021】
図3において、10はテーパー部に合成樹脂を加圧注入・硬化する部分を表したものである。
【0022】
図4において、10′はテーパー部に合成樹脂を加圧注入・硬化した強化木製バットを断面で表したものである。
【0023】
図5において、11は硬い合成樹脂、12は柔らかい合成樹脂、13は硬い合成樹脂といったように、性質の異なる樹脂を多重層にし、円心に沿ってロール状に加圧注入・硬化した強化木製バットの断面を表したものである。また、図5の14は、合成樹脂を注入する別の一例を表したものである。
【0024】
以下、上記構成の意味を説明する。3の手で握るグリップ部(力点)、2のボールを打つ打球部(作用点)、力点と作用点の中間にあって、作用点の力を大きくしたり、小さくしたりできる支点の部分を、4のテーパー部(支点)と考えた場合に、打球時において飛距離及び反発力を大きくしたり、小さくしたりする部分は、必然的に4のテーパー部(支点)と考えられる。この4のテーパー部(支点)は、2の打球部(作用点)から3のグリップ部(力点)にかけて徐々に細くなっていき、打球時にたわみが一番大きい部分であり、強度的にも一番弱い部分である。この4のテーパー部から5のグリップ部まで樹脂を内心部まで加圧注入・硬化することにより、4のテーパー部の強化が図られる。
【0025】
4のテーパー部から5のグリップエンドまで合成樹脂を加圧注入・硬化する理由は、木製バットのテーパー部は、たわみが大きく、そのために打球時にボールに伝わるエネルギーが損なわれ、ボールに対する反発力が低かった。一方、金属バットのテーパー部はたわみが少なく、そのために打球時にボールに伝わるエネルギーの消耗が少なく、ボールに対する反発力が高かった。本発明は、ボールに対する反発力を高めるのは、打球部ではなくバットのテーパー部であることに着目し、このテーパー部及びグリップ部に樹脂を加圧注入・硬化することにより、テーパー部の硬化と強度を図り、たわみの少ない強化木製バットを実現することとした。これにより、スイートスポットが広がり、反発力と飛距離を伸ばす強化木製バットができる。
【0026】
また、8の頭頂部及び9、10への合成樹脂の加圧注入量により、ヘッド、センター、手元の重さを調整し、ヘッドバランス、ミドルバランス、手元バランスが調整できる強化木製バットとする。
【0027】
10′は、合成樹脂を加圧注入・硬化させた強化木製バットの断面図であるが、図のように木製バットの材料の内心部まで合成樹脂を加圧注入・硬化することにより、素材の重量及び硬度は、通常の材料の約1.5倍程になり、テーパー部及びグリップ部の強度、硬化を実現し、スイートスポットを広げることができる。
【0028】
11から14は、植物性樹脂或いは化学合成樹脂の注入の一例を断面図で示したものである。11から13は、それぞれ粘度、性質の異なる樹脂を重ねて注入することにより反発力、強度が更に向上する。14は、イチョウ形に樹脂を注入することで、バットのテーパー部分の強度をより強固にし、スイートスポットを広げる効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 強化木製バットの側面図
【図2】 同強化木製バットの側面図
【図3】 同強化木製バットの側面図
【図4】 テーパー部からグリップ部における樹脂注入部の断面図
【図5】 テーパー部からグリップ部における樹脂注入部の断面の一例
【符号の説明】
【0030】
1 強化木製バット
2 打球部(作用点)
3 グリップ部(力点)
4 テーパー部(支点)
5 グリップエンド
6 スイートスポット
7 合成樹脂を加圧注入・硬化する部分
8 強化木製バットの頭頂部への合成樹脂を加圧注入・硬化する部分
9 テーパー部からグリップ部へかけて合成樹脂を加圧注入・硬化する部分
10 テーパー部へ合成樹脂を加圧注入・硬化する部分
10′ テーパー部へ合成樹脂を加圧注入・硬化する部分の断面図
11 テーパー部へ加圧注入する合成樹脂の断面図
12 テーパー部へ加圧注入する合成樹脂の断面図
13 テーパー部へ加圧注入する合成樹脂の断面図
14 テーパー部への合成樹脂注入部の断面の一例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の打球部、テーパー部、グリップ部、グリップエンドを備える木製バットから成り、前記木製バットの打球部を除く、テーパー部からグリップエンドまでの長手方向に、合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化する、ことを特徴とする強化木製バット。
【請求項2】
前記強化木製バットの前記打球部と、前記グリップ部の中間部分のテーパー部長手方向に、合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化する、ことを特徴とする強化木製バット。
【請求項3】
前記強化木製バットの頭頂部に、合成樹脂を内心部まで加圧注入・硬化する、ことを特徴とする請求項1、請求項2に記載の強化木製バット。
【請求項4】
前記強化木製バットに注入する樹脂は、植物性樹脂或いは合成樹脂など少なくとも2種類以上の異なる樹脂を多重層にし、バットの内心に沿いロール状に加圧注入・硬化することを特徴とする請求項1、請求項2に記載の強化木製バット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−237857(P2008−237857A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113506(P2007−113506)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(399043417)有限会社内田販売システム (24)
【出願人】(592047663)
【出願人】(597030637)