説明

弾性緩衝部材

【解決手段】中心部分にゴム製の芯材1を有し、この芯材1にワイヤからなる補強材2が螺旋状に巻き付けられ、前記芯材1と螺旋状の補強材2の周囲を合成ゴム製の弾性材3で被覆し、一体構造の弾性緩衝部材とする。
【効果】ゴム製の芯材1とワイヤからなる螺旋状の補強材2の周囲を合成ゴム製の弾性材3で被覆してあるので、弾性を有する。また、耐摩耗性、耐衝撃性に優れ、さらに、緩衝機能にも優れており、極めて簡易な一体構造のものである。本弾性緩衝部材の緩衝機能は、本弾性緩衝部材への引張荷重作用時において、ワイヤからなる補強材2が螺旋状から直線状になってその外側を被覆している弾性材3が変形することによるものであり、それによって本弾性緩衝部材が緩衝機能を十二分に発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮桟橋、フローティングネットその他様々な浮揚構造物をアンカーなどに係留する場合に用いることができるほか、橋梁の落橋防止材、あるいは耐震構造物の支持材などにも適用できる弾性緩衝部材に関し、特に、弾性を有するのみならず、耐摩耗性、耐衝撃性に優れ、さらに、緩衝機能にも優れており、極めて簡易な一体構造のものに関する。
【背景技術】
【0002】
浮桟橋、フローティングネットその他様々な浮揚構造物をアンカーなどに係留する場合に用いられる係留材として、通常、チェンあるいはワイヤが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−269611号公報(0023段落、図1,図2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から係留材として用いられている部材は、耐摩耗性、弾性が欠如しているものが多く、直ぐに摩耗して使えなくなり、また、弾性の面でも問題があった。
このような理由から、係留材として耐摩耗性、弾性に優れ、しかも簡易構造のものが強く望まれていた。特に、係留材に作用する引張荷重(衝撃荷重)を吸収し得る一体構造のものが望まれていた。
【0005】
本発明は、係留材に適用する場合において上述したような様々な要望に応えることができるとともに、橋梁の落橋防止材、あるいは耐震構造物の支持材などにも適用できる弾性緩衝部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明では、中心部分に芯材を有し、この芯材に補強材が螺旋状に巻き付けられ、前記芯材と螺旋状の補強材の周囲を弾性材で被覆し、一体構造の弾性緩衝部材とする。
【0007】
本発明による弾性緩衝部材によれば、芯材と螺旋状の補強材の周囲を弾性材で被覆してあるので、弾性を有するのみならず、耐摩耗性、耐衝撃性に優れ、さらに、緩衝機能にも優れており、極めて簡易な一体構造のものである。
【0008】
また、浮桟橋などの浮揚構造物をアンカーなどに係留するために本弾性緩衝部材を用いた場合において、本弾性緩衝部材に耐摩耗性と耐衝撃性を付加したことにより、浮揚構造物の安全性を向上させることもできる。
【0009】
本発明による弾性緩衝部材の緩衝機能は、本弾性緩衝部材への引張荷重作用時において、補強材が螺旋状から直線状になってその外側を被覆している弾性材が変形することによるものであり、それによって本弾性緩衝部材が緩衝機能を十二分に発揮する。
【0010】
芯材をゴム製とするのが良い。このようにした場合には、ゴム製の芯材とこの芯材に螺旋状に巻き付けられている補強材と両部材の周囲を被覆している弾性材とが相俟って、一体構造の弾性緩衝部材の耐摩耗性能と耐衝撃性能とが大幅に向上する。
【0011】
補強材がワイヤからなり、ワイヤからなるこの補強材の両端を弾性材の両側から露出させてループ状としておくのが良い。このようにした場合には、弾性緩衝部材両端のループ部分を利用することができるので、係留すべきものをアンカーなどに係留したり、橋梁の落橋防止のために橋梁を本弾性緩衝部材で支えたり、耐震構造物を支持するに当ってそれらを本弾性緩衝部材で緊縛するのに、極めて便利である。
【0012】
ワイヤからなる補強材のループ部分の付け根をロック加工しておくと良い。このロック加工が施されていると、ワイヤからなる補強材の両端部分の強度が大幅に向上し、ひいては、一体構造の弾性緩衝部材全体の強度が大幅に向上する。
【0013】
ワイヤからなる補強材のループ部分の内側にシンブルを配置しておくと良い。このようにした場合には、ワイヤからなる補強材の両端部分であるループ部分の強度が大幅に向上し、ひいては、一体構造の弾性緩衝部材全体の強度が大幅に向上する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の弾性緩衝部材は、芯材と螺旋状の補強材の周囲を弾性材で被覆してあるので、弾性を有するのみならず、耐摩耗性、耐衝撃性に優れ、さらに、緩衝機能にも優れており、極めて簡易な一体構造の優れた部材である。
【0015】
また、浮桟橋などの浮揚構造物をアンカーなどに係留するために本弾性緩衝部材を用いた場合において、本弾性緩衝部材に耐摩耗性と耐衝撃性とを付加したことにより、浮揚構造物の安全性を向上させることもできる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、ゴム製の芯材とこの芯材に螺旋状に巻き付けられている補強材と両部材の周囲を被覆している弾性材とが相俟って、一体構造の弾性緩衝部材の耐摩耗性能と耐衝撃性能とが大幅に向上する。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、弾性緩衝部材両端のループ部分を利用することができるので、係留すべきものをアンカーなどに係留したり、橋梁の落橋防止のために橋梁を本弾性緩衝部材で支えたり、耐震構造物を支持するに当ってそれらを本弾性緩衝部材で緊縛するのに、極めて便利である。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、ワイヤからなる補強材の両端部分の強度が大幅に向上し、ひいては、一体構造の弾性緩衝部材全体の強度が大幅に向上する。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、ワイヤからなる補強材の両端部分であるループ部分の強度が大幅に向上し、ひいては、一体構造の弾性緩衝部材全体の強度が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による弾性緩衝部材の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す弾性緩衝部材の内部構造を示す斜視図である。
【図3】図1に示す弾性緩衝部材を係留材に適用した場合の使用状態を示す側面図である。
【図4】図1に示す弾性緩衝部材を係留材に適用した場合の別の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
ここでは、本発明による弾性緩衝部材を係留材Aに適用した場合を例に挙げて、以下詳細に説明する。例えば、図3に示すように、浮桟橋などの浮揚構造物Cを海底に設置されたアンカーBに係留する場合や、図4に示すように、フローティングネットなどの浮揚構造物C’を陸上に設置されたアンカーB’に係留する場合に、本係留材Aを用いる。
【0022】
この係留材Aは、摺れる長さや伸縮させるべき長さに応じて適宜の長さにして用いることができる。この係留材Aの内部構造を示す図2に示すように、係留材Aの中心部分には芯材1を備え、この芯材1に1本の補強材2が螺旋状に巻き付けられており、前記芯材1と螺旋状の補強材2の周囲を弾性材3で被覆してある。
【0023】
一体構造のこの係留材Aによれば、芯材1と螺旋状の補強材2の周囲を弾性材3で被覆してあるので、弾性を有するのみならず、耐摩耗性、耐衝撃性に優れ、さらに、緩衝機能にも優れており、極めて簡易な一体構造のものである。
【0024】
また、浮桟橋などの浮揚構造物CをアンカーBに係留するために本係留材Aを用いた場合において、本係留材Aに耐摩耗性と耐衝撃性を付加したことにより、浮揚構造物Cの安全性を向上させることもできる。
【0025】
ところで、この係留材Aの緩衝機能は、本係留材Aへの引張荷重作用時において、ワイヤからなる補強材2が螺旋状から直線状になってその外側を被覆している弾性材3が変形することによるものであり、それによってこの係留材Aが緩衝機能を十二分に発揮する。引張力が小さくなると、元の状態に戻る。
【0026】
前記芯材1をゴム製とすることができる。また、補強材2をワイヤからなるものとすることができる。さらに、弾性材3を合成ゴム製とすることができる。芯材1、補強材2、弾性材3をこのような材質とした場合には、ゴム製の芯材1とこの芯材1に螺旋状に巻き付けられているワイヤからなる補強材2と両部材の周囲を被覆している合成ゴム製の弾性材3とが相俟って、一体構造の係留材Aの耐摩耗性能と耐衝撃性能とが大幅に向上する。
ゴムとしては、硬質ゴムあるいは軟質ゴムを用いることができる。硬質ゴムであれば、例えば硬度75、70、65程度のものを、軟質ゴムであれば、例えば硬度50、45、30程度のものを用いることができる。
【0027】
このように、本係留材Aは、ゴム製の芯材1とこの芯材1に螺旋状に巻き付けられているワイヤからなる補強材2と両部材の周囲を被覆している合成ゴム製の弾性材3とからなるので、いわゆるゴムライニングワイヤと呼ぶこともできる。
なお、ゴム製の芯材1と合成ゴム製の弾性材3の硬度を適宜変えることにより、一体構造の係留材Aの変位量(伸縮量)、ならびに耐摩耗性能を適宜調整することができる。
【0028】
ここには、ワイヤからなる補強材2の両端を、合成ゴム製の弾性材3の両側から露出させてループ2a状とした場合が例示されている。このようにした場合には、一体構造の係留材A両端のループ2a部分を利用して、図3あるいは図4に示すように、係留すべきもの(浮桟橋などの浮揚構造物Cやフローティングネットなどの浮揚構造物C’)をアンカーB、B’に簡単に係留することができる。
【0029】
このように、本発明による弾性緩衝部材の両端にはループ2aが形成されているので、上述したように係留材Aとして係留すべきものをアンカーB、B’に簡単に係留することができるほか、橋梁の落橋防止のために橋梁を本弾性緩衝部材で支えたり、耐震構造物を支持するに当ってそれらを本弾性緩衝部材で緊縛するのに、極めて便利である。
【0030】
なお、図3において、図面符号Dは、海底に設置されたアンカーBの係留環bと本係留材Aの一端であるループ2aとを、また、浮桟橋などの浮揚構造物Cに一端が係留されている係留索Eの他端と本係留材Aの他端であるループ2aとを連結するためのシャックルである。
一方、図4において、図面符号D’は、地上に設置されたアンカーB’の係留環b’と本係留材Aの一端であるループ2aとを、また、フローティングネットなどの浮揚構造物C’と本係留材Aの他端であるループ2aとを連結するためのシャックルである。
【0031】
ここには、ワイヤからなる補強材2のループ2a部分の付け根をロック加工2bした場合が例示されている。このようにロック加工2bが施されていると、ワイヤからなる補強材2の両端部分の強度が大幅に向上し、ひいては、一体構造の係留材A全体の強度が大幅に向上する。
【0032】
ワイヤとして最も好ましいのはステンレス製であり、ワイヤがステンレス製の場合におけるループ2a部分の付け根のロック加工2bもステンレス製とすることができる。ロック加工2bのための部材には、JIS規格のロックを用いることができる。
なお、合成ゴム製の弾性材3の両側からロック加工2b部分が出ているが、その長さはロック加工2bの全体長さの1/2以下とすることができる。
【0033】
また、ここには、ワイヤからなる補強材2のループ2a部分の内側にシンブル4が配置された場合が例示されている。このようにシンブル4が配置されている場合には、ワイヤからなる補強材2の両端部分であるループ2a部分の強度が大幅に向上し、ひいては、一体構造の係留材A全体の強度が大幅に向上する。シンブル4もJIS規格のA型シンブルを用いることができる。
【0034】
本係留材Aを構成する各部材については、すなわち、芯材1、補強材2、弾性材3の太さ(直径)については、要求される強度、設計条件その他の様々な条件に応じて当該太さ(直径)を決定することができる。また、ワイヤからなる補強材2の芯材1への巻き付け方についても、一体構造の係留材Aに要求される伸縮長さに応じて適宜変更することができる。
【0035】
なお、本発明による弾性緩衝部材は、ここに例示し、かつ、図面に示した場合にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
ここでは、弾性緩衝部材を浮桟橋やフローティングネットなどの浮揚構造物の係留用として利用した場合を例に挙げて説明したが、浮揚構造物の係留用以外に、橋梁の落橋防止材や耐震構造物の支持材等、様々な分野に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…芯材、2…補強材、2a…ループ、2b…ロック加工、3…弾性材、4…シンブル、A…係留材、B、B’…アンカー、C、C’…浮揚構造物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部分に芯材を有し、この芯材に補強材が螺旋状に巻き付けられ、前記芯材と螺旋状の補強材の周囲を弾性材で被覆したことを特徴とする弾性緩衝部材。
【請求項2】
芯材をゴム製としたことを特徴とする請求項1記載の弾性緩衝部材。
【請求項3】
補強材がワイヤからなり、ワイヤからなるこの補強材の両端を弾性材の両側から露出させてループ状としたことを特徴とする請求項1記載の弾性緩衝部材。
【請求項4】
ワイヤからなる補強材のループ部分の付け根を、ロック加工したことを特徴とする請求項3記載の弾性緩衝部材。
【請求項5】
ワイヤからなる補強材のループ部分の内側に、シンブルを配置したことを特徴とする請求項3又は4記載の弾性緩衝部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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