説明

微細繊維集合体の製造方法、及び製造装置

【課題】
浄水器、空気清浄器、特殊マスクフィルターなど、有害化学物質、及びウイルスや細菌等の除去等に対して微細孔と吸着層を必要とする繊維集合体を製造する方法に関し、作業者に対する環境、及び安全に配慮し、メンテナンスが容易で、多品種少量生産に対する生産性に優れた静電紡糸法による微細繊維集合体を得る装置、及び方法は確立されてないのが現状で、それを提供すること。
【解決手段】
ナノ繊維化原料に水溶性、水分散性樹脂等を使用した完全水系仕様とすることにより作業者の作業環境と安全性を確保すると共に生産安定性とメンテナンスの容易さを追求。現有設備の1画に多品種少量生産に対応可能な不織布、布帛、成型体等へのナノ繊維層の複合加工装置としての設置を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業環境に配慮し、生産性及びメンテナンス性に優れた静電紡糸法による微細繊
維複合体の製造方法、及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、不織布に代表される繊維集合体は集塵、及び液体フィルター、防塵マスク、電池セパレーター等々に、構成する繊維の種類、繊維径、繊維密度等の組合わせ、又、他素材との複合等により多方面に用途展開が行なわれてきた。例えば、防塵マスク、ニッケル‐水素電池用セパレーター等では水流絡合等による複合繊維の繊維分割/絡合技術を 用い乾式、あるいは湿式不織布法により1〜25μmの微細孔を持つシートを得ている。
しかしながら、電池セパレーター分野ではニッケル‐水素電池と共に0.1〜1μmの孔径を有するリチウムイオンセパレーターが、防塵マスクでは、結核菌の捕獲に対するN−95規格対象品(0.45〜4μm)から、鳥インフルエンザに代表されるような0.01μm以下の細菌を捕獲できるものが要求されるなど、各種微多孔性機能材の用途分野は広がりを見せている。
【0003】


同様に、濾過機能に加え、微量有害物質の高選択性分離除去材料として、吸着機能を併せ持つ各種有害物除去フィルターの要求が高まり、液体、気体を対象物に、有害とされる微量重金属等の除去、土壌溶出液中有害微量物の吸着、排ガス中低濃度VOC、ダイオキシン等の化学負荷物質、ウイルス等の排除が求められている。
【0004】
吸着機能を併せ持つ有害物除去基材に必要とされる繊維比表面積、及びより小さな微細孔繊維構造体を得るためには、繊維径のより細い繊維で繊維集合体を形成する必要がある。サブミクロン領域の微細孔から成る繊維集合体を得るためには、サブミクロンの繊維径を有する繊維で繊維集合体を作成する事が必要で、作成方法としては静電紡糸法が知られている。
【0005】
この方法は高分子溶液等をノズル等から押し出す際に、ノズルと対向した電極基材間に1〜50KVの高電圧を印可、ノズル内の電荷を蓄積された溶液がノズル先端から吐出する際に、静電気的な反発力で超微細化され、対向電極基材表面に置かれた不織布等のターゲット基材表面にナノスケールの微細繊維として集積される。
【0006】
ノズル先端から吐出された溶液の溶媒はポリマーの分岐と共に繊維外に放出される為ターゲット基材上に集積された微細繊維はほとんど溶媒が含まれていない。織物、不織布等の基材に集積させれば、そのままでハンドリングが可能な繊維集合体が得られるため、樹脂を溶融してノズルから押し出す溶融紡糸法と同様に極めて簡便な繊維集合体の製造方法と言える。
【0007】
しかしながら、静電紡糸法による微細繊維シートの製造法は、溶融紡糸法と比較しても判るように、工業的規模での生産性に欠点を有している。現在、エレクトロスピニング装置はノズルタイプ(特許文献1〜4)、回転ドラムの表面から直接ナノ繊維化させるタイプ(非特許文献1)高分子溶液に多孔質材料、又は細管を介して圧縮空気を送り連続的な泡を発生させた状態で高電圧を印加し、微細繊維を生成させる方法(特許文献5)等々があるが工業的規模での生産設備では3方式とも構成部分において様々な課題を有している。
【0008】
ノズルタイプでは生産量、生産速度を高めるにはノズル本数を増やす必要があるが、ノズル数の増加は装置の大規模化や長時間連続生産に問題が生じる。特にノズル先端部に発生し易い紡糸されないポリマーの堆積がノズル閉塞の原因となり、集積繊維の均一化阻害や異物としてのシートへの混入、伴うメンテナンス等により、生産性の低下に繋がっている。また、集積部をノズル部上部に配置し異物のシート上への落下等の改良等を施した特表があるが、大量生産化を主目的に開発された製造装置の為、ノズル部の複雑さに加え、原料が溶剤仕様の為、既存設備の一角へ設備導入しての多品種少量生産には不向きな設備といえる。一方、ノズルを使用しない回転ドラム方式、泡方式は、原料溶液が開放状態である場合はノズルタイプに増して、溶液の濃度管理、環境対策などが必要となる。加えて、原料溶液に有機溶媒を用いる場合は、高電圧を印加する紡糸法であることから過度な紡糸条件ではスパークが生じることがあり、引火防止や流路の絶縁処理などの対策の必要性が生じる。以上のように、作業者に対する環境、及び安全に配慮し、メンテナンスが容易で多品種少量生産に対する生産性に優れた静電紡糸法による微細繊維集合体を得る方法は確立されてないのが現状である。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3525382
【特許文献2】特開2005−213668
【特許文献3】特開2005−218909
【特許文献4】特表2007−517991
【特許文献5】特許第3918179
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、各種フィルター層、及び、有害化学物質、ウイルスや細菌等の除去など微細孔と吸着層等を必要とする機能性繊維集合体等を製造、又は加工する方法に関し、作業者の安全性と作業環境に考慮し、且つ、多品種少量生産への対応性とメンテナンス性に優れた静電紡糸法による微細繊維集合体の製造方法、及び製造設備を提供するすることを課題としている。


【課題を解決するための手段】
【0011】
解決しようとする課題に関して、この発明は次のような技術的手段を講じている。
【0012】
この発明の微細繊維集合体の製造方法は原料の溶媒に有機溶剤、特定の酸等を使用せずに、水溶性、又は水分散性高分子溶液等を主原料とすることにより、生産者の作業環境、及び安全性を確保することを可能とした。
【0013】
原料を水系仕様とし、ノズル部はもとより、乾燥、架橋、溶剤回収等を含め、溶剤仕様から為る個別化したライン設計の必要性を排除。また、原料配合、ノズル部の洗浄等々が容易な事から、既存の不織布、及び布帛複合加工ラインの1画に設備導入してのナノ繊維層の複合加工等が可能な多品種少量生産対応型設備仕様としている。
加えて、個々に供給原料の違うノズル部を複数個用意し、ノズルフォルダー部に集積基材の流れ方向と並行、又は直角方向に配置することにより、ナノ繊維層の複合紡糸、混合紡
糸を可能としている。
【0014】
また、繊維集積部をノズル部の上方に配置することにより、液垂れによる繊維径のばらつき、ノズル詰まりによる繊維集合体への堆積物の落下等を解消。加えて、ノズル先端部と下部に安定した液の流入出を確保する為の加工を施し、供給された溶液の一部はノズル先端部より常にノズル着装部へ溢れつたい落ち、ノズル着装部での一定量の保液を経て独立した補助原料貯蔵槽に回収される方式を採用することにより、ノズル閉塞による異物の混入、伴う装置の停止、清掃等のトラブルを排除し安定した連続生産を可能とした。

【発明の効果】
【0015】
この発明の微細繊維集合体の製造方法は、上記のような構成からなり、高分子溶液溶媒に有機溶剤を使用せず、水溶液、あるいは、水分散溶液等を用いることにより製造設備の密閉化、溶剤回収等の大型付帯設備の設置を排除。単体でのナノ繊維製造設備としてはもとより、ナノ繊維層複合加工設備として、例えば既存のマスク、フィルター、その他の布帛等へのナノ繊維層の複合など、布帛複合加工ラインへの1画に安全性とメンテナンスの極めて容易な設備として設置することを可能とした。
【0016】
加えて、設備的には従来のノズル方式とは異なり、分離配置した複数個のノズル装着部と対応した個々の原料貯蔵槽の設置により、例えば、各々に機能性の違う原料を使用して、集積布帛の進行方向と並行にノズル配列し、左右駆動を加えての混合ナノ層形成による多機能化、又、集積布帛の進行方向と直角にノズル配列してノズル部に左右駆動を加え、中間に機
能性ナノ繊維層を挟んで複合体との接着を兼ねた複合ナノ繊維層の集積による複合材との一


体化機能付与などの複合ナノ層形成を可能とした。
【0017】
また、例えば、疎水性原料と親水性原料を原料配合段階で溶液混合せずに、ナノ繊維化時に混合紡糸を行なうことでナノ繊維層の疎水基、親水基比率を任意にコントロールすることが可能となるなど、各種有害物質などの濾過、吸着対象物質に対して、より効果的なナノ繊維層を効率的に得ることを可能とした。
【0018】
また、ノズル着装部個々の原料、原料濃度等を変化させることにより、繊維径違いの混合、及び複合ナノ繊維層の形成が可能となるなど、格段に生産、及び加工適正が高く、加えて、作業者に対する健康と安全性を考慮した製造方法と設備を提供することを可能とした。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】製造装置の概念的模式図である
【図2】ノズル形状、及びノズル部仕様
【図3】カートリッジフィルター加工用集積部概念図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の微細繊維集合体の製造装置、及び製造方法は不織布、布帛等へのナノ繊維層の複合加工装置等として、作業者の作業環境と安全性に配慮し、且つ、メンテナンスの容易な設備と製造方法を提供するもので、上記製造装置の概念的模式図である図1をもとに説明
する。
【0021】
図1のナノ繊維の製造装置、及び布帛構造体との複合方法は、紡糸原液をノズル部へ供給できる複数個の紡糸原液供給装置(1)紡糸原液供給装置から供給された紡糸原液を吐出する複数個のノズル部(2)とナノ繊維層の均一化のため左右に任意の巾及び速度で移動可能なノズルフォルダー部(3)ノズルとアースされた捕集体との間に電界を形成するためにノズルに電圧を印加できる電圧印加装置(4)ノズルから吐出され電界によってナノ化された繊維の捕集体であるアースされた板状の金属製電極(5)加えて、ノズル部とアースされた捕集体との間に集積複合基材である不織布等の布帛構造体(6)を挿入することで、布帛表面に均一な形状でナノレベルの微細繊維集合体を得ることができる。布帛構造体を連続的に移動させることにより、又、必要であればナノ繊維層を中間として布帛構造体(7)を複合することで引張強度、表面磨耗強度等の安定したナノ繊維複合構造体の量産が可能となる。
【0022】
(1)紡糸原液と供給装置
この発明の微細繊維集合体の製造方法は、紡糸原液となる高分子溶液の溶媒に有機溶剤、酸等を使用せず、水溶液、あるいは水分散溶液等を用いる事により、原液タンク、及び原液供給装置の選定は作業者の安全を前提として印加電流の漏電を考慮しての選定を行なうことが必要ではあるが、特に限定されるものではない。また、原料供給装置は、本発明がナノ加工機的な多品種少量生産、布帛等とのナノ繊維複合化を主目的としており、複数原料の使用と清掃の容易さからチューブポンプを選定しているが、これに限定されるものではない。
【0023】
(2)ノズル部
ノズルは金属製であっても非金属製であっても良いが、上記供給装置と同様に清掃の容易さ等からステンレスチューブの使用を基本仕様としている。ノズル内径は0.5mmから0.9mmが最適で、図2にあるようノズル上部、及び下部に0.2mmから0.5mmの直線、十文字、アスタリスク等の切れ目を入れることで、溶液の濃度変化による曵糸度(水系原料の独自測定法による曵糸性の単位)粘度等の変化に対して、各ノズルへの均一供給とノズル


側面部への安定した液の流出を確保することを可能とした。又、必要であれば、側面への溢れる溶液量をコントロールすることによりノズル側面からのナノ繊維化を促すことでノズル1本あたりの吐出量の増加を可能としている。
【0024】
また、ノズル部は下記ノズルフォルダー部の仕様にあるよう、集積基材である複合布帛の進行方向、又は直角方向に複数個装着できる仕様にしており、各ノズル部に機能の異なる原料を供給しノズルホルダーを左右に駆動することにより、ナノ繊維層を混合ナノ繊維構造、複合ナノ繊維構造にすることを可能にしている。
【0025】
(3)ノズルフォルダー部
設備的には従来の量産ノズルフォルダー部の仕様とは異なり、ノズルフォルダー部には目的とするナノ繊維層の積層構造を得るためノズル着装方向に調整機能を持たせている。例えば、図1にあるよう複合布帛の進行方向に対して直角に複数個のノズルを配置、機能性の違う原料を交互に供給し、フォルダー部の左右駆動を加えてナノ繊維化することにより複数層の複合機能構造体を得ることを可能に、また、ノズルを進行方向と並行に配置、機能性の違う原料をノズル部毎に交互に複数個供給し、ナノ繊維化することにより混合機能構造体を得ることを可能としている。なお、求める機能 層構造により、ノズル部間隔、ノズル/ターゲット間長さ、ノズル部個数、フォルダー部駆動速度等を変化できる仕様と
している。
【0026】
これにより、例えば、疎水性原料と親水性原料を原料配合段階で混合せずに、ナノ繊維化時に混合紡糸を行なうことで、ナノ繊維層の疎水基、親水基比率等を任意にコントロールすることを可能にしている。また、ノズル最前部、又は最後部、あるいは両端部に接着機能を付与した原料を供給することにより、不織布等の布帛構造体との接着による複合機能を併せ持つナノ繊維層の複合紡糸を可能とするなど、裁断、折り加工、縫製等の加工適正を合わせ持つナノ繊維複合体として、例えば、大気汚染対策マスク、医療用マスク、産業用マスク、及びカートリッジ液体フィルターなどの各種 液体濾過材などの加工適性の向上はもとより、性能的にも各種有害物質の濾過対象物質及び吸着対象物質に対して、より効果的なナノ繊維層を効率的に得ることを可能としている。
【0027】
(4)電圧印加装置
ノズルとアースされた捕集体との間に電界を形成するためのノズル部に印加する電圧印加装置。この電圧印加装置は特に限定されるものではないが、本発明では直流高電圧発生装置を使用している。印加電圧は限定するものではないが、10〜35Kv程度が好ましい。なお、印加する電圧の極性はマイナスとプラスのいずれであっても良いが、電圧印加時のコロナの放電を抑制しやすいように捕集体側の電極を接地しノズル側をプラス電位とするのが好ましい。
【0028】
(5)金属製接地電極
ノズルから吐出され、電界によってナノ化された繊維の捕集体であるアースされた板状の金属製電極。
【0029】
(6)集積複合基材(捕集体)
ノズル部とアースされた上記金属製接地電極との間に集積複合基材である不織布等の布帛構造体(F)を挿入することで、布帛表面に均一な形状でナノレベルの微細繊維集合体を得ることができる。布帛構造体を連続的に移動させることにより、又、必要であればナノ繊維層を中間として不織布等の布帛構造体を上下に複合することで引張強度表面磨耗強度等の安定したナノ繊維複合構造体の量産が可能となる。なお、集積複合基材はノズル側から見て、対抗電極である金属製接地電極よりも前方に位置しており必ずしも導電性材料である必要は


ない。又、捕集体は対向電極と接触していても良いし離間していても良い。
なお、捕集体は必ずしも布帛状物に限られたものでは無く、例えば、図3に有るようなカートリッジフィルター用のキットを複数個並べることにより、コアー表面層、複合層の中間層、フィルター表面層などにナノ繊維層を複合するなど、既存繊維半製品へのナノ加工を可能とした。
【0030】
このように本発明は原料、及びノズル部、集積部に特徴を持たせた製造方法、及び製造装置に関するもので、水系原料仕様とすることによる作業環境、及び安全性の確保。繊維集積部の上方配置によるナノ繊維層の物性安定化、及びナノ繊維層の混合/複合仕様の容易性など、多品種少量生産に対応できるメンテナンス性の良さを併せ持つ微細繊維層複合繊維集合体の生産を可能とした。
【実施例1】
【0031】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない
【0032】
本実施例ではナノ層の主要機能層と不織布等との複合化を目的として、集積する不織布基
材の流れ方向と直角にノズル部3対をノズルホルダー部に設置し、図1に示すような複合繊維層集積仕様の製造装置を用意した。
【0033】
複数個のチューブポンプ(原料供給装置)にPTFE製チューブを装着し、一方は原料容器に他方はノズル部に接続。ノズル部には各々両端に0.5mmの直線状の切れ目を入れたノズル内径0.9mmのステンレス性ノズル(液面より3cm)を3cm間隔で着装した。また、ノズル部と対向したステンレス板(捕集体、アース)上にはポリエステル系不織布を着装して複合用捕集体とし、ノズル先端部と捕集体との間隔を12cmとした。
【0034】
2個の原料容器A、Bを用意し、Aの容器には複合用基材との接着性の付与を考慮し、水溶性PES樹脂20%溶液(ペスレジンA−160P;高松油脂製)にナノ繊維化に最適な曵糸度(曵糸性の尺度とする独自測定法)に溶液調整するため、ポリエチレンオキサイド(アルコックスL−11;明成化学;最良平均分子量110、000mw)を添加し疎水基リッチの紡糸原液を準備。Bの溶器には中間ナノ層の原料として、上記水溶性PES樹脂20%溶液75部に対して易反応性ポリビニルアルコール(DF−17;日本酢ビ・ポバール株式会社20%溶液25部を混合し、ナノ繊維化に 適した粘度溶液として一様になったところで、架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジド1wt%を加えて紡糸水溶液を調整した。
【0035】
次にチューブポンプを駆動、全てのノズル先端から溶液が吐出しホルダー部に一定量の溶液が保液できた状態で紡糸原液に電界を作用。電界はノズルと捕集体との距離紡糸原液の濃度、曵糸性、粘度などによって変化するため特に限定するものでは無いが、1.5〜3.5KV/cmであるのが好ましい。
【0036】
ノズルホルダー部を一定速度(表面速度:0.6cm/秒)で集積基材の移動方向と直角方向に往復運動を行いナノ繊維と不織布集積体との複合繊維構造体を得た。得られたナノ繊維層は3層の複合構造で、第一繊維、及び第三繊維集合体層はPES樹脂/PEOを基本配合とした複合用不織布基材との密着性を兼ね備えた疎水基リッチな繊維層、中間の第二繊維集合体層はPES樹脂/PVAを混合配合した疎水基/親水基原料のポリマーアロイナノ層からなる構造体であり、使用目的により疎水基/親水基比率は任意に選択が可能である。
【0037】
上記繊維集合体を水玉柄エンボスロールを用い、ポリエステル系不織布側とは反対側にレーヨン系開孔不織布を装着し温度120℃で加圧複合。部分的に3層が接着補強された複合


体を製造した。これを用いて簡易マスク、立体マスク等を縫製、立体成型することが可能で加工性にも優れるものであった。

【産業上の利用可能性】
【0038】
原料を水系仕様にすることにより、作業者に対する環境、及び安全に配慮し、メンテナンスが容易で多品種少量生産に対する生産性に優れ、各種布帛とのナノ繊維複合体の生産、及び加工が容易なことから、既存のマスク、フィルター等々へ布帛複合加工ラインへの1画へ設備挿入してのナノ繊維層付与による更なる高機能化など、環境分野、ヘルスケアー分野、各種工業分野等、各種布帛構造物の高機能化に貢献ができる。

【符号の説明】
【0039】
1 ノズル部
2 ノズルフォルダー部
3 金属製接地電極
4 集積基材巻き出し部(捕集体)
5 複合基材巻き出し部(カバー材)
6 ノズル、及びノズル形状
7 原料供給口
8 原料回収口
9 印加端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性、又は水分散性高分子樹脂を主原料とし、作業者の作業環境と安全性を確保するとともに、不織布、布帛等へのナノ繊維層の複合加工装置として、浄水器、空気清浄器、特殊マスクフィルターなどの高機能化された微細孔と吸着層を必要とする繊維集合体に対して、加工性とメンテナンスの容易さを併せ持つ、多品種少量生産に対する生産性に優れた静電紡糸方法による繊維集合体の製造方法、及び製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−74507(P2011−74507A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224607(P2009−224607)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(300074101)株式会社イマック (27)
【Fターム(参考)】