説明

心土作溝土層改良機

【課題】
圃場の心土層の土を掘削し、地表面に排出し作溝することで透水性を良くし、作土層に心土を充填し心土層を改良する心土作溝土層改良機において、時間の経過と共に発生する作溝閉塞を防ぐことと、地表に放擲した心土を効率良く作土と混和させ、養分の少ない心土による作物の初期育成への影響を軽減することが望まれていた。
【解決手段】
心土作溝犂体中段部後方にウイングとウイングモールを取り付けることにより、作溝部に強制的に作土を充填させると共にウイングモールによって地表に放擲された心土を作土に合理的に混和させるようにし、作物への影響を軽減したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圃場において収穫後の秋起こし等で、切り株や雑草を犂体によって下から持ち上げてほぐしながら耕す、粗耕起作業を行う心土作溝土層改良機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粗耕起(あらこうき)とは粗起こしともいい、作物栽培に必要な土壌の耕耘(こううん)整地における第一段階の耕起のことである。一般には秋起こしといわれている秋の作物収穫後の冬前に行う耕起をさすことが多い。
【0003】
粗耕起の目的は、土壌をこぶし大程度の土塊にし、圃場全体を膨軟にし乾燥させることである。粗耕起によって土塊間の空隙が大きくできるため透排水性が向上し、土壌深部まで空気が入り微生物を大量に育てることによって有機物の分解を早めることができ、次回収穫時の養分を増加することができる。従ってできるだけ深く耕耘し、土壌の深い部分まで微生物にとって好条件になるようにすることが望ましい。
【0004】
更に雑草が実をつけないうちに耕起することで、雑草種子を減少させることができる。また、収穫物の残り株を反転し根を切断することで芽が出ないようにする効果もある。
【0005】
一般に行われている図9のようなロータリ耕耘では粗耕起はできない。ロータリ耕耘による方法では土壌が細かくなりすぎてしまい、粗耕起本来の目的である土塊間の空隙を大きくして、透排水性を向上させることができないからである。また、毎年のロータリ耕耘によってロータリー爪70の回転で生じる下層への打圧による圧密やトラクタの踏圧のために地中に固い層(硬盤層)ができ、透水性を阻害している場合がある。
【0006】
本来ロータリ作業機は播種前の床作りに使用されるものである。したがってロータリ耕耘では土壌中の気相の増加が十分とはならず、緑肥等の肥料を混入しても腐植の促進の面では犂体を使用する粗耕起作業機には劣るものである。
【0007】
また、ロータリ耕耘による方法では浅く土壌を耕耘するのみである為、土壌中に作られた作土層と心土層の境界部にある硬盤層を破砕することができない。
【0008】
硬盤層とは、重量のあるトラクタに何度も踏圧される、またロータリー爪の回転で生じる下層への打圧による圧密の為にできた、土中の水を透過させない硬い層のことである。通常このトラクタで踏圧された場所はロータリ耕耘作業によって砕土されるが、図9のようにロータリ刃70の届かない部分は、毎年の作業によって年々硬くなって層が形成される。
【0009】
硬盤層は透水性の阻害だけでなく作物の根の発育を止めてしまうことがあり、深く根を伸ばせなかった作物が倒伏しやすい原因となる。
【0010】
従来の粗耕起作業機としては、特許文献1に記載されている作業機が実用化されている。図7のように犂体を30cm以上深く地中に差し込み、トラクタ等の牽引車両の最大牽引力を利用して、できる限り地中深くから土壌を膨軟にし透排水性を向上させようとするものであり、同時に硬盤層を破砕するものである。
【0011】
図9のようなロータリ作業機では水田では8cm前後、畑では10〜15cm程度の深さしか耕起しないのに比較して、特許文献1ないし図7に記載されている粗耕起作業機は、30cm以上の深さを一定間隔で耕起することによって、硬盤層を破砕し、透水性を良くすることができる。
【0012】
図7に示される圃場断面において上部の作物を作る為の土は作土と言う。作土層aの下の土は心土と言う。硬盤層kは作土層aと心土層bの境目に発生し、心土よりも硬くなっていることが多い。そのために透水性を悪化させ湿害となり狭い根圏域は作物が天候に激しく左右される結果となる。
【0013】
図7のような粗耕起作業機は心土作溝土層改良機とも呼ばれており、ビーム前面に撥土板22が取り付けられており、タガネ状のチゼル21が掘削した土壌を、撥土板22に沿って上昇(滑動)させ、地表面に排出する構造になっている。
【0014】
図7の心土作溝機で作業すると図8の1に示す作溝部gが形成され、作業直後には作土の一部が落下する。しかし自然落下のため空隙が多い。そのため土圧によって徐々に作溝部g上方から閉塞され、時間が経過した後ロータリ耕耘などで整地しても図8の2に示すように上部が完全に閉塞した状態になってしまう。秋起こし時の作溝作業であれば、作物栽培の頃には更に作溝閉塞が継続され図8の3に示すように、作溝部gは消滅してしまう。
【0015】
図8の3に示す状態に圃場断面がなったとしても、作溝下部には崩落作土による膨軟な部分と、心土層b上部には亀裂状態の作溝跡fが残される。心土層に含まれた余剰水の流れqは作溝跡fの部分に集まる。このことは例えば井戸を掘るとまわりの水が井戸に集まると同じ現象である。
しかしできることならば上下につながった作溝溝gが残っている方が透・排水性が良く好ましい。
【0016】
図8の2のように土圧によって作溝閉塞が生じても、透水性を示す矢印のように上が太く(多い余剰水の流れq)下が細い(少ない余剰水の流れq´)。施工後は作溝閉塞が生じても上のほうが多い余剰水の流れqとなる。
【0017】
しかしこれが時間の経過でそこが流れ難くなり少ない余剰水の流れq´となり、下のほうが空隙があるため、図8の3のように下のほうが多い余剰水の流れqとなる。作溝閉塞の進行が遅くなれば、その分長期間の透水性が維持できる。
【0018】
図7のように硬盤層を破砕しながら、心土を上昇させ地表に排出する粗耕起方法は、硬盤層を破砕し透水性を長期間改善する、優れた土質改良機であるが、心土は風化不十分であり有機物を含まない密なる土壌であり、養分が少ないとされている為、一度に大量に地表に排出すると、作物の初期育成に影響を及ぼし減収を余儀なくされる場合がある。
【0019】
そこで図7のような従来の心土作溝土層改良機においては、心土作溝深さを調整又は犂体の本数を制限し、耕起間隔幅全体作土量の6〜8%の量を地表に排出する心土量の目安にし、必要以上に心土を地表に放擲しないようにしている。
【0020】
【特許文献1】特開平9-322601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
圃場に必要とされる水分調整力は、大量の雨が降ったときにはいち早く水分を地下に逃がす透水性と、干ばつの時には地下の水分を毛細管現象によって吸い上げる保水力である。図8に示す硬盤層kがあることによってこの両方が阻害される。
【0022】
図7のような粗耕起作業機では、犂体の通過した直後は、硬盤層kを貫通するように作られた作溝部gもしっかりしており、作溝部g周囲も膨軟になり、透水性と保水力が保たれた状態になる。
【0023】
しかし図8の1のように作溝部g内部には作土の一部が崩落するが空隙が多く、時間が経過すると作溝閉塞によって整地が行われる頃には図8の2のようにすっかり閉塞してしまう。
作溝部gが閉塞してしまう原因は1平方メートル当たり1トン以上発生する土圧と水の流れによる目詰まりである。
【0024】
土質にも影響されるが何も充填しない心土の作溝部gは数日で閉塞してしまうことがあるが、作溝部gに籾殻を充填すると作溝部gは細くなるが、籾殻が腐食して消滅しない限り(実際例で20年)透・排水性が持続することが確認されている。同様に心土層bに異質の作土が充填すれば図8の3のように作土が心土に囲まれない限り透排水性は持続される。
【0025】
作溝閉塞がゆっくりすすめば、それだけ養分が多く微生物の多い作土が心土に働きかける時間が長くなり心土改良が促進される。作溝閉塞が早いと図8の3のように作溝部gは心土改良が進まないうちに養分の少ない心土に囲まれて、心土改良が進まない。
また、図8の2のようにロータリー等の他の作業機で整地作業すると、新しい硬盤層が発生し再び透水性を悪化させ、水と一緒に空気の流れも遮断する。
【0026】
作溝部gには閉塞作用が始まる前に作土を充填して閉塞作用をできるだけ遅らせることが望ましい。また、作溝部gに充填された作土は心土層を改良する土壌であり作物の根圏域を広げる効果も著しい。
【0027】
図8の1の状態では地表に養分が少ないとされる心土が地表に排出され、風化に時間を要す。
そこでロータリ作業機を使用して地表面の心土を作土に混入するべく図8の2のように整地作業するが、前述の通りこのとき新しい硬盤層が、作溝部g上面に発生し再び透排水性を悪化させ、水と空気の流れを遮断する。
【0028】
図7の作業機で何度も圃場を耕耘すれば透水性保水性共改善することはできるが、前述したように養分の少ない心土を大量に地表に放擲することが危惧される場合は犂体本数を減らし限られた量の耕耘しかできない。
【0029】
また、作土層に排出された心土がたくさん入った場所とそうでない場所とでは、作物の育成にむらができてしまう。
【0030】
つまりたくさんの作土を作溝部gに充填し作溝閉塞をできるだけ遅らせ、地表に心土が放置されないように作土と混和させれば更に良い粗耕起作業といえる。更に作溝部gの場所を作業ごとにずれるようにすれば、やがては硬盤層kがなくなり、心土層bも作土で満たされ根圏域が広がることになる。
【0031】
本発明は、新たな硬盤層kを作る事無く、より多くの作土を作溝部gに充填し作溝閉塞を遅らせ、心土改良を促進し、更に地表に心土が放置されないように作土と心土を混和させるようにした心土作溝土層改良機を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0032】
ビームに取り付けられた、心土層を作溝し心土を上昇させ両側又は一側方向の地表に排出する心土作溝犂体と、
該心土作溝犂体の中段部の後部に作土層と心土層の境界近傍を切断して膨軟にし作溝部に作土を落下させるように取り付けられたウイングとをそなえ、作溝するとともに作溝部に作土を落下させ充填し心土層改良するようにしたことを特徴とする心土作溝土層改良機である。
【0033】
ビームに取り付けられた、心土層を作溝し心土を上昇させ両側又は一側方向の地表に排出する心土作溝犂体と、
該心土作溝犂体の中段部の後部に作土層と心土層の境界近傍を切断して膨軟にし作溝部に作土を落下させるように取り付けられたウイングと、該ウイングの後部に作土を耕起反転するように取り付けられたウイングモールとをそなえ、心土を作溝し地表に排出した後、作溝部に作土を落下させて充填し、かつ膨軟になった作土を耕起反転することで、地表に排出した心土を作土層に混和するようにしたことを特徴とする心土作溝土層改良機である。
【0034】
前記ウイングは前記心土作溝犂体の後部に作業位置を変更可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の心土作溝土層改良機である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の心土作溝土層改良機で作業すると、丁字型の耕耘断面になる。硬盤層が破砕され、心土層から地表面まで連続した溝が作られ、その後ウイングが通過するので、作土層部分が膨軟になり、膨軟になった作土は作溝部に寄せられ、強制的に充填される。
【0036】
図1、図2、図3に記載した心土作溝土層改良機2で作業すると、図4の場合より作土層a部の耕耘断面t上部が左右に広がると共に、ウイングモール26が大型で後方位置になるため、心土作溝犂体20によって地表面に排出された心土hが着地した後ウイングモール26によって作土と混和される。
【0037】
この場合、図1に描かれた耕耘断面t´のように土がウイングモール26によって寄せられて中央部がやや盛り上った耕耘断面になる。排出された心土hは作土中に混和されるので、初期育成に悪影響を及ぼすことが少なくできる。
【0038】
その後土圧によって多少は閉塞したとしても作溝部には作土が充填されているので、作溝部は上部を開口したまま残り、また新たな硬盤層も発生しないので透水性の劣化を防止することができ、空気の流れが遮断されず微生物の活動が維持される。
【0039】
これらの作用の結果、作物栽培をする頃になっても透水性が充分に確保される。また、作溝部には作土の一部が崩落するよりもおおくの作土が充填され微生物の働きを活性化し心土に働きかけるので心土を改良する効果が大である。
その結果、作溝閉塞がすすみ作溝部が養分の少ない心土に囲まれてしまう前に作溝部に接する心土を芳醇に改良することができる。
【0040】
また、心土作溝土層改良機のウイングに反転作用をそなえるようにすれば、地表面に排出された心土塊は反転され作土中に混和され、耕耘断面中央部が盛り上ったような形状になる。したがって養分の少ない心土が地表に放置されることがない。また、心土が作土中に混和されるので微生物に囲まれ風化に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の実施例を図1~図4に示すトラクタ1のような牽引車両に牽引された心土作溝土層改良機2によって説明する。
図4のように心土作溝する心土作溝犂体20の中段部の後部に、水平に作土を切断し膨軟にした後、作溝部gに作土を寄せ充填する小型ウイング35及び小型ウイングモール36を備え、作溝閉塞を防止し心土改良を効果的に行うものである。
【0042】
更に、図1図2図3のようにウイング25を後方に伸ばし、ウイングモール26を大きくしたことで作土層aの地表面を地中に鋤き込み下層面を地表に出すようにして、耕起反転できる。
その結果、心土作溝犂体20が排出した心土が地表面に着地した後にウイングモール26によって、作土層a内に反転もしくは混和されることになり、養分が少ない心土による作物の初期育成時の悪影響を防止することができる。

【実施例1】
【0043】
本発明の第一の実施例を図1、図2、図3に、第二の実施例を図4に示す。トラクタ1の後部には油圧で上下する2本のロアリンク8と1本のトップリンク9があり、作業機のマスト10にはトップリンク9がピンによって連結され、フレーム11にはロアリンク8がピンによって連結され、トラクタ1によって牽引され作業する。
【0044】
道路走行時や圃場内における枕地でのターンの時には、ロアリンク8を油圧によって高々と差し上げることによって作業機を持ち上げ耕耘作業を中断して移動できるようになっている。
【0045】
角フレーム12にはマスト10とフレーム11が固着されており、角フレーム12にはビームプレート13が角フレームボルト15によって移動もしくは取外し可能なように取り付けられている。
【0046】
ビームプレート13にはビーム14が取り付けられビーム14の下端部にはチゼル21が取り付けられ、中間部には撥土板22が取り付けられている。このような組み合わせによって心土作溝犂体20が構成され、この作業機を牽引することによってチゼル21が掘削した心土が撥土板22によって上昇させられ地表面に排出されるようになっている。
【0047】
トラクタ1のロアリンク8は、作業中フリー状態になっている。ロアリンク8は作業機を持ち上げる力はあるが、下方向に押し付ける力はない。作業機は犂体20のもつ刺さり込み能力(サクションによって発生する)によって土中に食い込み牽引時の作用によってトップリンク9の長さと、作業機のフレーム形状に応じた位置に犂体20が留まるようになっている。
【0048】
サクションとは例えばプラウの場合であれば、犂体の地側板、耕起刃板、犂床の3者には、一種の逃げ(凹み)を付与してあり、耕深耕幅、進行方向等の安定を保ち、かつ常に土中への食い込みを良好にする。その逃げのことである。
【0049】
また、角フレームボルト15を弛めることによってビームプレート13が角フレーム12上をスライドし、任意の位置に固定できるようになっている。この構成によって心土作溝犂体20の位置をトラクタ幅より広い幅広にしたり中心に寄せて幅狭にしたりできるようになっている。
【0050】
心土作溝犂体20のビーム14中段部には、ウイング25が旅客機の翼のような形状で取り付けられており、ウイング25後方にはウイングモール26が取り付けられている。ビーム14中段部にはウイング取付用ボルト穴16が複数あけられており、ウイング25及びウイング35、35´の取り付け高さ及び取り付け角度を変更できる様になっている。ボルト穴を選定することによって硬盤層の深さや土質の違いによってウイング25、35、35´の高さと角度を調節することができる。
【0051】
ウイングモール26は作溝部gに作土を寄せると共にウイング25が切断し膨軟にした作土層aの土壌を反転するように曲面形状になっている。
【0052】
以上のように構成された作業機で、粗耕起作業をする場合を説明する。図1、図2、図3において心土作溝犂体20とウイング25とウイングモール26が通過した際の破断面は図1の耕耘断面t´のように丁字型の形状をしている。
【0053】
心土作溝犂体20によって作溝部gが掘削される際に、撥土板22によって心土は表層に滑動し浮上するが、この際作溝部g周辺の土壌も破砕されウイング25の抵抗が少なくウイングモール26もよく作用し、作土を作溝部gに落下させ充填する。
【0054】
浮上した心土は地表面に排出されウイングモール26によって反転され、作土に混和する。耕耘断面tの丁字型の地表部中央はウイングモール26によって中央部に作土を寄せるように反転するので、図1の耕起断面t´及び図5の2のように反転された作土によって中央がやや盛り上った形状になる。
【0055】
図4の実施例で作業した場合の圃場断面は図5の1の状態になる。心土層bに深く伸びた作溝部gの内部に作土が充填される。充填された作土によって作溝閉塞が発生しにくく、作土層a部も膨軟になっているので透水性が良い。
【0056】
図5の1の図は耕耘断面tと耕耘断面tとの間に間隔Sを設けたが、角フレームボルト15を弛めて心土作溝犂体20の間隔を調整するか、心土作溝犂体20を追加するかウイング25を左右に伸ばせば、耕耘断面t同士の間隔がなくなり、作土層aは全て膨軟になり一作業で図5の2の状態にすることができる。
【0057】
この状態であれば作溝閉塞が進行しておらず上部が開口しているので、作土層aの水は作溝部gを通り透水性は良好の状態で維持される。また図5の3のように土圧によって作溝閉塞が生じにくく長期間に渡って多い余剰水の流れqを確保することができる。
【0058】
施肥等によって養分の多い作土が、心土内の作溝部gに充填され、微生物の働きを活性化するので、根が張りやすくなり根圏域を広げ心土改良効果をもたらすものである。
【0059】
本発明の第二の実施例を図4に示す。この実施例では小型ウイング35と小型ウイングモール36を使用している。牽引力に乏しい場合は通常の大きさのウイング25とウイングモール26を小型化すると牽引抵抗を少なくすることができる。
小型のウイングモール36をできるだけ小さくし、牽引抵抗を少なくすることができる。小型ウイング35と小型ウイングモール36は一体型ウイング35´としても良い。
【0060】
但し作業速度が速いと、心土作溝犂体20が排出する心土が小型ウイング35と小型ウイングモール36を越えて後方に落下してしまい心土を作土層aに混和させる作用が上手く働かない場合がある。しかし小型ウイング35と小型ウイングモール36、一体型ウイング35´によって硬盤層kを作る事無く、作土を作溝部gに充填することを主目的にすれば、作溝閉塞を防止する効果は充分である。
【0061】
次に心土作溝犂体20の他の実施例を示す。図6の1のように撥土板22は片方にねじれが与えられており側方に撥土角θが与えられている。これによって浮上した心土は側方に排出される。しかし掻き揚げられた土壌はどちらかに片寄り列を作る。ウイングモール26で反転したとしても、混和が充分でない場合は影響が残る場合がある。
【0062】
図6の2には、混和を充分に行わせるための別の実施例である撥土部を示している。
該撥土部は、上昇撥土板22aと分割撥土板22bとナイフ22cの3種類のパーツによって構成されている。この構成の撥土部によれば掻き揚げられた土は左右に分散され片寄り列を防止し、ウイングモール26の反転作用による混和が不十分であっても影響を少なくすることができる。
【0063】
図6の3は上昇兼分割撥土板22dとナイフ22cの2種のパーツで撥土部が構成されている。図6の2の場合と同様に掻き揚げられた土は左右に分散され片寄り列を防止することができる。但し撥土角θを大きくすると上昇途中で心土が作溝部gの壁面に押し付けられるように分布してしまうことがあるので撥土角θを大きくすることはできない。
図6の4に示す撥土部の形状は図6の2と同様であるがナイフ22eが強化されており石などの多い圃場で有効である。
【0064】
以上のような心土作溝土層改良機を使用することによって、一度の作業で作溝部gに作土を充填し、作溝閉塞を遅らせ、心土を改良し、同時に地表の心土を反転し作土層に混和することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の実施例において主に畑地で実施する場合について記載したが、輪作している水田においても実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施例をトラクタに取り付けた状態の鳥瞰図である。
【図2】本発明の実施例をトラクタに取り付けた状態の上面図、側面図、後面図である。
【図3】本発明の実施例をトラクタに取り付けた状態の側面図と圃場の断面図である。
【図4】本発明の第二の実施例をトラクタに取り付けた状態の上面図、側面図、後面図である。
【図5】本発明の作業機による作業後の圃場断面である。
【図6】本発明の心土作溝用犂体の第一の実施例と第二の実施例である。
【図7】従来例による作業機をトラクタに取り付けた状態の側面図と圃場の断面である。
【図8】従来例の作業機による作業後の圃場断面である。
【図9】ロータリによる耕耘の側面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 トラクタ
8 ロアリンク
9 トップリンク
10 マスト
11 フレーム
12 角フレーム
13 ビームプレート
14 ビーム
15 角フレームボルト
16 ウイング取付用ボルト穴
20 心土作溝犂体
21 チゼル
22 撥土板
22a 上昇撥土板
22b 分割撥土板
22c ナイフ
22d 上昇兼分割撥土板
22e 強化ナイフ
35 小型ウイング
35´ 一体型ウイング
36 小型ウイングモール
70 ロータリー爪
a 作土層
b 心土層
f 作溝跡
g 作溝部
k 硬盤層
s 間隔(耕起断面相互の)
t 耕耘断面
t´ 中央が盛り上った耕耘断面
q 多い余剰水の流れ
q´ 少ない余剰水の流れ
h 排出された心土




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームに取り付けられた、心土層を作溝し心土を上昇させ両側又は一側方向の地表に排出する心土作溝犂体と、
該心土作溝犂体の中段部の後部に作土層と心土層の境界近傍を切断して膨軟にし作溝部に作土を落下させるように取り付けられたウイングとをそなえ、
作溝するとともに作溝部に作土を落下させ充填し心土層改良するようにしたことを特徴とする心土作溝土層改良機。

【請求項2】
ビームに取り付けられた、心土層を作溝し心土を上昇させ両側又は一側方向の地表に排出する心土作溝犂体と、
該心土作溝犂体の中段部の後部に作土層と心土層の境界近傍を切断して膨軟にし作溝部に作土を落下させるように取り付けられたウイングと、
該ウイングの後部に作土を耕起反転するように取り付けられたウイングモールとをそなえ、
心土を作溝し地表に排出した後、作溝部に作土を落下させて充填し、かつ膨軟になった作土を耕起反転することで、地表に排出した心土を作土層に混和するようにしたことを特徴とする心土作溝土層改良機。

【請求項3】
前記ウイングは前記心土作溝犂体の後部に作業位置を変更可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の心土作溝土層改良機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−151469(P2007−151469A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351944(P2005−351944)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(391057937)スガノ農機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】