説明

恒温型圧電発振器

【課題】周波数安定度を高め、消費電力を低減した小型化の高安定圧電発振器を得る。
【解決手段】ベース部材7から延びる接続ピン8により電気的機械的に接続支持されたプ
リント基板5と、プリント基板5に熱的に非結合状態で支持された圧電振動子25と、プ
リント基板5に搭載された発振回路部品20と、圧電振動子25の温度制御用の第1の温
度制御部10と、発振回路部品20の温度制御用の第2の温度制御部14と、ケース9と
、を備え、第1の温度制御部は、圧電振動子の加熱用であり且つプリント基板と熱的に非
結合状態にある第1の発熱部品11、第1の感温素子12、及び第1の温度制御回路部品
13を含み、第2の温度制御部は、発振回路部品加熱用の第2の発熱部品15、第2の感
温素子16、及び第2の温度制御回路部品17を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数制御デバイス等として使用される恒温型圧電発振器(高安定圧電発振
器)の改良に関し、特に圧電振動子をパワートランジスタ等の発熱部品により加熱すると
ともに、温度制御回路によって加熱温度を制御する構成を備えた恒温型電発振器において
、実装基板上に配置された発振回路部品に対する温度制御が不十分であったことによる不
具合を解決することができる恒温型圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信の基地局や伝送通信装置に用いる周波数制御デバイスである水晶発振器等の
圧電発振器として、外部の温度変化に影響されることなく高安定な周波数を出力すること
ができる恒温槽型圧電発振器が従来から知られている。更に、近年これらの分野では、各
種機器に対して、小型、軽量であることが求められてきているため、それに対応して恒温
槽型圧電発振器についても小型、軽量化が市場から求められている。
従来の恒温槽型圧電発振器は、高安定な周波数を得る為に、熱容量が大きい金属ブロッ
ク等の恒温槽(oven)の凹所内に圧電振動子を収容し、更に金属ブロックをヒータに
より所定の温度に加熱していた。しかし、大型の金属ブロックを用いると、発振器全体の
嵩が増大するため、小型、軽量化という要請を満たすことができなかった。また、金属ブ
ロックを介して圧電振動子内部の圧電振動素子を加熱する構成であったため、ヒータから
の熱が圧電振動素子に達して、所望周波数に達するまでに長い時間を要するという問題が
あった。
大型の金属ブロックを用いないタイプの小型化された高安定圧電発振器として、特開2
008−28619号公報(特許文献1)には、高安定圧電発振器及びその製造方法が開
示されている。図5(a)は高安定圧電発振器に用いられる圧電振動子収納ケースの構造
を示した図である。収納ケース61は、一端開口内に水晶振動子72を収納する筒状の振
動子収納部62と、サーミスタ78を内部に収納する小径筒状のサーミスタ収納部63と
から構成され、振動子収納部62の側面にサーミスタ収納部63がハンダ64により接続
されている。
【0003】
図5(b)は高安定水晶発振器の構造を示した断面図である。高安定水晶発振器は、プ
リント基板71と、プリント基板71の底面に接続される水晶振動子72と、水晶振動子
12を加熱するためにプリント基板71に固定されたパワートランジスタ73と、発振器
ケース74(74a、74b)と、プリント基板11と接続された端子75と、を備えて
いる。更に、プリント基板71には、発振回路と加熱制御回路を構成する各種部品76が
実装されている。
図5(a)に示した収納ケース61の振動子収納部62の外面にパワートランジスタ7
3をハンダ付けして熱源ユニットを構成する。熱源ユニットの振動子収納部62及びサー
ミスタ収納部63には、それぞれ水晶振動子72及びサーミスタ78を収納する。さらに
、プリント基板71上には、水晶振動子72を収納した熱源ユニットと平面的に重なる部
分に貫通穴80を形成し、この貫通穴80内にパワートランジスタ73を配置する。この
ように構成すれば、水晶振動子72に対してパワートランジスタ73を直接ハンダ付けす
ることなく、水晶振動子72の金属ケース72aとパワートランジスタ73との間の熱抵
抗を極力小さくすることができると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−28619公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された高安定圧電発振器は、圧電振動子、圧電振動子加熱用の発熱部
品、感温素子を一体化構造として高安定な周波数を出力可能な圧電発振器を構成している
。しかしながら、この従来例は加熱対象を局所に絞っているため、低消費電力化を図れる
が、周囲温度が変化した場合に発振回路部品の温度が変化し、発振回路部品の負荷容量が
変化して周波数安定度が劣化する。つまり、加熱される対象が圧電振動子のみに限定され
ているため、発振回路部品が周囲温度変化による温度変化の影響を受け易く、更なる周波
数の高安定化の実現には限界があるという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、周波数安定度を高め、且つ消費電
力の少ない小型化された高安定圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本発明に係る恒温型圧電発振器は、周波数安定度を高め、且つ消費電力の
少ない小型化された高安定圧電発振器を実現するため、マザーボードへの搭載用のベース
部材と、該ベース部材上面から離間した位置で該ベース部材から延びる接続ピンにより電
気的機械的に接続支持されたプリント基板と、該プリント基板により熱的な非結合状態で
支持された圧電振動子と、前記プリント基板に搭載された発振回路部品と、前記圧電振動
子の温度制御用の第1の温度制御部と、前記発振回路部品の温度制御用の第2の温度制御
部と、前記ベース部材との間で上記各構成要素を封止する恒温槽を形成するケースと、を
備えた恒温型圧電発振器であって、前記第1の温度制御部は、前記圧電振動子加熱用であ
り且つ前記プリント基板と熱的に非結合状態にある第1の発熱部品、第1の感温素子、及
び第1の温度制御回路部品を含み、前記第2の温度制御部は、前記発振回路部品加熱用の
第2の発熱部品、第2の感温素子、及び第2の温度制御回路部品を含み、プリント基板に
実装されていることを特徴とする恒温型圧電発振器である。
【0008】
前記圧電振動子の温度制御用の第1の温度制御部と、前記発振回路部品の温度制御用の
第2の温度制御部との2つの温度制御部を設け、夫々個別に制御することにより、前記圧
電振動子を最適な温度に、また発振回路部品の温度を前記恒温型圧電発振器の使用温度範
囲の上限より略2℃だけ高めに、と夫々個別に設定することが可能となり、恒温型圧電発
振器の安定度を改善すると共に、省電力化にも効果がある。その上、発振回路部品の温度
を必要以上に上げないことにより、発振回路部品の劣化を遅らせることができるという効
果もある。
【0009】
[適用例2]また恒温型圧電発振器は、前記第1の温度制御部の設定温度が、前記圧電
振動子のゼロ温度係数の温度に設定され、前記第2の温度制御部の設定温度が、前記恒温
型圧電発振器の使用温度上限プラス略2℃に設定されていることを特徴とする適用例1に
記載の恒温型圧電発振器である。
【0010】
例えばSCカット水晶振動子の場合では、前記第1の温度制御部の設定温度が零温度係
数を示す頂点温度に設定されることにより、恒温型圧電発振器の安定度が改善されるとい
う効果がある。また、発振回路部品の温度を恒温型圧電発振器の使用温度範囲の上限より
略2℃だけ高めに設定することにより、発振回路部品の負荷容量の値が安定化し、恒温型
圧電発振器の安定度を高めると共に、省電力化にも効果がある。
【0011】
[適用例3]また恒温型圧電発振器は、前記プリント基板に発振周波数可変用の可変容
量素子が搭載されており、前記第2の温度制御部による加熱対象を、前記可変容量素子の
実装エリアに極限したことを特徴とする適用例1に記載の恒温型圧電発振器である。
【0012】
前記第2の温度制御部による加熱対象を、前記可変容量素子が実装されるプリント基板
周辺に極限することにより、第2の温度制御部で消費される電力を低減することができる
という効果がある。
【0013】
[適用例4]また恒温型圧電発振器は、前記ベース部材が、前記ケースとの協働によっ
て前記恒温槽を形成する下金属ケース部材であり、前記接続ピンが、該下金属ケース部材
に設けた穴を絶縁材を介して貫通して下端部を外部に突出させていることを特徴とする適
用例1乃至3の何れか一項に記載の恒温型圧電発振器である。
【0014】
前記ベース部材が下金属ケース部材で形成され、該ベース部材と前記ケースとの協働に
よって前記恒温槽を形成することにより、堅牢で且つ高安定の恒温型圧電発振器が構成さ
れるという効果がある。更に、金属性のケースとベース部材により外部ノイズを遮断する
と共に、外部に対してもノイズの放射を防ぐ効果がある。
【0015】
[適用例5]また恒温型圧電発振器は、前記ベース部材は、表面実装用のベースプリン
ト基板であり、前記接続ピンの下端部を支持していることを特徴とする適用例1乃至3の
何れか一項に記載の恒温型圧電発振器である。
【0016】
ベース部材に表面実装用のベースプリント基板を用いて恒温型圧電発振器を構成するこ
とにより、表面実装タイプの恒温型圧電発振器が可能となり、マザーボードへの実装が自
動化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施例の恒温型圧電発振器1の構成を示した図であり、(a)はプリント基板の上面図、(b)はその側面図、(c)は圧電振動子ブロック体の側面図、(d)はベース部材と接続ピンの側面図、(e)は恒温型圧電発振器1の断面図。
【図2】第2の実施例の恒温型圧電発振器2の構成を示した図であり、(a)はプリント基板の上面図、(b)はその側面図、(c)は圧電振動子ブロック体の側面図、(d)はベース部材と接続ピンの側面図、(e)は恒温型圧電発振器2の断面図。
【図3】第3の実施例の恒温型圧電発振器3の断面図。
【図4】第4の実施例の恒温型圧電発振器4の断面図。
【図5】(a)は圧電振動子収納ケースの構造を示した図、(b)は従来の高安定圧電発振器の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施
形態に係る恒温型圧電発振器(高安定圧電発振器)1の構成を示す概略図である。図1(
a)はプリント基板の上面図、同図(b)はプリント基板の側面図、同図(c)は圧電振
動子に第1の発熱部品と、第1の感温素子とを取り付けた状態を示す側面図、同図(d)
はベース部材に絶縁材を介して接続ピンを取り付けた部材の側面図、同図(e)は本発明
に係る恒温型圧電発振器1の断面図である。
恒温型圧電発振器1は、図1(e)に示すように、マザーボードへの搭載用のベース部
材7と、ベース部材7上面から離間した位置で該ベース部材7から延びる接続ピン8によ
り電気的機械的に接続支持されたプリント基板5と、該プリント基板5により熱的に非結
合な状態で支持された圧電振動子25と、プリント基板5に搭載された発振回路部品20
(20a、20b)と、圧電振動子25の温度制御用の第1の温度制御部10(11、1
2、13)と、発振回路部品20の温度制御用の第2の温度制御部14(15、16、1
7)と、ベース部材7との間で上記各構成要素を封止して恒温槽を形成するケース9と、
を備えている。
【0019】
第1の温度制御部10は、圧電振動子25の加熱用であり且つプリント基板5と熱的に
非結合状態にある第1の発熱部品11(例えばパワートランジスタ等)と、例えばサーミ
スタ等の第1の感温素子12と、第1の感温素子12からの温度検知信号に基づき第1の
発熱部品11を制御する第1の温度制御回路部品13と、を備えており、プリント基板5
に搭載されている。
第2の温度制御部14は、発振回路部品20の加熱用の第2の発熱部品15(例えば、
ジュール熱を発生するチップ抵抗、ヒータ等)と、例えばサーミスタ等の第2の感温素子
16と、第2の感温素子16からの温度検知信号に基づいて第2の発熱部品15を制御す
る第2の温度制御回路部品17と、を備えており、プリント基板5の上面に搭載されてい
る。
発振回路部品20は、圧電振動子25を発振させるためのIC化された発振回路素子2
0aと、例えばバリキャップダイオード等の可変容量素子20bと、を備えている。なお
、可変容量素子20bを備えているのは、恒温型圧電発振器1の発振周波数を必要に応じ
て可変するためである。
【0020】
図1(a)に示すようにプリント基板5にはその周縁に接続ピン8を貫通させ接続・固
定するためのスルーホール6aが複数個形成されている。また、プリント基板5には、圧
電振動子25のリード端子25a用の複数のスルーホール6b、第1の発熱部品の端子1
1a用の複数のスルーホール6c、第1の感温素子の端子12a用の複数のスルーホール
6d等が形成されている。
そして図1(a)、(b)に示すように、プリント基板5の一方の面には、第1の温度
制御回路部品13と、第2の発熱部品15と、第2の感温素子16と、第2の温度制御回
路部品17と、が実装されている。また、他方の面には、発振回路素子20aと、可変容
量素子20bとから成る発振回路部品20が実装されている。
【0021】
図1(c)に示すように、圧電振動子25の図中上面に第1の発熱部品(例えばパワー
トランジスタ等)11をクリーム半田、あるいは熱伝導の良好な接着剤等を用いて接着・
固定し、圧電振動子25の側面に第1の感温素子12(例えばサーミスタ等)を、熱伝導
の良好な接着剤を用いて接着・固定して、圧電振動子ブロック体23を構成する。圧電振
動子ブロック体23の第1の発熱部品11のリード端子11a(パワートランジスタの場
合は3本)は、所定の位置から第1の発熱部品11の主表面に対し、略直角に折り曲げら
れている。同様に、圧電振動子25のリード端子25a(通常は2本)も所定の位置から
主表面に対し略直角に折り曲げられている。第1の感温素子の端子12a(2本)は、他
のリード端子11a、25aに比べて細く、柔軟であり、予め曲げておく必要はない。
圧電振動子ブロック体23のリード端子11a、12a、25aを、プリント基板5の
スルーホール6c、6d及び6bに通し、第1の発熱部品11の上面が発振回路素子20
a及び可変容量素子20bの夫々の面に当接するようにし、リード端子11a、12a、
25aをスルーホール6c、6d、6bに半田で固定してプリント板ブロックを構成する

なお、圧電振動子25は、例えば水晶振動子であり、金属ケース内に圧電振動素子(水
晶振動素子)を気密封止し、金属ケース内に延びるリード端子25aの内側端部により圧
電振動素子を金属ケースと非接触に支持した構成を有している。圧電振動素子とは、圧電
基板(水晶基板)の主面に励振電極を形成した素子である。
【0022】
図1(d)に示すようにベース部材7と接続ピン8とを絶縁材を介して接続する。具体
的には、ベース部材7として金属板を用いる場合には金属板に複数の穴7aを開け、穴7
a内にハーメチックシール材(絶縁材料)を介して接続ピン8を挿通支持する。
また、ベース部材7として表面実装用のプリント基板、セラミック基板等の絶縁材を用
いる場合には、これらの絶縁材に複数のスルーホールを形成し、該スルーホールに金属製
の接続ピン8を通し、所定の長さで接続ピン8とスルーホールを半田付けする。この場合
、接続ピン8の下端部がベース部材7から突出しないように支持する。
図1(d)に示したベース部材7面から直交して伸びる接続ピン8に、プリント板ブロ
ックのスルーホール6aを通し、プリント板ブロックの圧電振動子25がベース部材7か
ら離間した位置で、スルーホール6aと接続ピン8とを半田で接続・固定する。
そして、図1(e)の断面図に示すように、プリント板ブロックを覆うように金属ケー
ス9を被せ、ベース部材7の外側周縁とケース9の下部とを半田付けして、恒温型圧電発
振器1を完成する。なお、図1(e)の例は金属製のベース部材7を想定した断面図であ
る。
図示した例では、ベース部材7は、金属ケース(上金属ケース)9との協働によって恒
温槽を形成する下金属ケース部材であり、接続ピンは、下金属ケース部材7に設けた穴を
絶縁材を介して貫通して下端部を外部に突出させている。
【0023】
本発明に係る恒温型圧電発振器(高安定圧電発振器)1に用いる圧電振動子には、例え
ばSCカット水晶振動子を用いる。SCカット水晶振動子は二回回転の水晶基板を用いた
水晶振動子で、3つの振動モードが励振され、その中で一番低い周波数である主振動は厚
みすべり振動モード(Cモード)である。この振動モードより高周波側に厚みねじれモー
ド(Bモード)、厚み縦モード(Aモード)等が存在する。主振動のCモード(共振周波
数f1)に隣接するBモードの共振周波数(f2)は、Cモードの共振周波数f1より約
9〜10%程度高周波側に存在するため、周波数ジャンプ現象等を引き起こさないように
発振回路に工夫を施す必要がある。
また、SCカット振動子(Cモード)の周波数温度特性は3次曲線を呈し、その変曲点
温度(Ti)は約95℃にある。そして、変曲点温度(Ti)より低温側で零温度係数を
示す頂点温度Tpは、切断する2回回転角に依存し、頂点温度Tpの設定範囲は70℃〜
85℃程度となる。従って、第1の温度制御部10の設定温度を頂点温度Tpの近傍に設
定する。
【0024】
本発明の恒温型圧電発振器(高安定圧電発振器)1の特徴は、圧電振動子25の温度を
、零温度係数を示す頂点温度Tpに保持する第1の温度制御部10と、発振回路部品20
を恒温型圧電発振器1の使用温度範囲の上限より略2℃高く保持する第2の温度制御部1
4と、の2つの温度制御部を設けたことである。しかも圧電振動子25はプリント基板5
と接触させず、第1の温度制御部10の第1の発熱部品11も発振回路部品20(発振回
路素子20a、可変容量素子20b)を介してプリント基板5に接するようにしてある。
これは発熱部品11から発生する熱のプリント基板5への伝導を抑えるためである。
恒温型圧電発振器1の周囲の温度が変化すると、発振回路部品20の温度が変化し、圧
電振動子25からみた負荷容量が変化することになる。発振回路部品20の負荷容量がわ
ずかに変化しても恒温型圧電発振器1の発振周波数が変動する。この点に留意して恒温型
圧電発振器1の熱分布の設計を行った。
従来の二重恒温槽タイプの高安定圧電発振器は、内側の恒温槽に圧電振動子を収容し、
外側の恒温槽に発振回路部品を収容して、内側の恒温槽の温度変化を略0.1℃、外側の
恒温槽の温度変化を略1℃に保持し、安定度として10-10程度を得ていた。このことか
らも周囲の温度変化に対し発振回路部品の温度を恒温に保持することが重要であることが
分かる。
しかし、移動体通信、例えばWCDMA基地局には小型(一例として25mm×20m
m×12)、低価格であり、周波数安定度が10-9程度の周波数可変型高安定圧電発振器
が要求されている。周波数可変型にするには可変容量素子(バリキャップダイオード等)
を搭載する必要がある。
【0025】
そこで、本発明の恒温型圧電発振器1は以上のことを考慮し、プリント基板5上に第2
の発熱部品15、第2の感温素子16及び第2の温度制御回路部品17から成る第2の温
度制御部14を設け、発振回路素子20a、可変容量素子20bから成る発振回路部品2
0の温度変化を所定の温度範囲内に保持できるようにした。つまり、圧電振動子25の温
度保持は第1の温度制御部10で、発振回路部品20の温度保持は第2の温度制御部14
でと、夫々個別に制御することにした。このように個別に制御することにより、圧電振動
子25を最適な温度、つまり零温度係数を示す頂点温度Tpに、発振回路部品20の温度
を恒温型圧電発振器1の使用温度範囲の上限より略2℃だけ高めに、と夫々個別に設定す
ることが可能となり、恒温型圧電発振器1の安定度が改善されると共に、省電力化にも適
している。その上、発振回路部品20の温度を必要以上に上げないことにより、発振回路
部品20の特性劣化を遅らせることができるという効果もある。
【0026】
恒温型圧電発振器1の安定度向上に寄与するのは、第1及び第2の発熱部品11、15
で発生する熱の外部への伝導を抑える構成であり、プリント基板5とベース部材7とを接
続する接続ピン8の太さを細くして熱抵抗を高める等の細かい点の考慮も必要である。
また、図1(e)に示す恒温型圧電発振器1の断面図では、第1の発熱部品11と発振
回路部品20とを当接した図を示したが、第1の発熱部品11と発振回路部品20との間
に空間を設け、第1の発熱部品11から生じる熱が圧電振動子25に集中し、発振回路部
品20、プリント基板5等への熱伝導を低減するようにしてもよい。
また、プリント基板5の一部を切欠きし、この切欠き部に圧電振動子25、第1の発熱
部品11、第1の感温素子12から成る圧電振動子ブロック体23を取り付けた構造にす
れば、第1の発熱部品11からの発生する熱のプリント基板5等への伝導を抑えることが
できるし、恒温型圧電発振器1の低背化にも寄与する。
金属製のベース部材7及びケース9と、第1及び第2の温度制御部との協働により恒温
槽を形成することになり、堅牢で且つ高安定の恒温型圧電発振器が構成されるという効果
がある。更に、金属性のケースとベース部材により外部ノイズを遮断すると共に、外部に
対してもノイズの放射を防ぐ効果がある。
【0027】
図2は第2の実施例の恒温型圧電発振器2の構成を示す概略図である。図2(a)はプ
リント基板の上面図、同図(b)はプリント基板の側面図、同図(c)は圧電振動子25
に第1の発熱部品11と、第1の感温素子12とを取り付けた圧電振動子ブロック体23
の側面図、同図(d)はベース部材7に絶縁材を介して接続ピン8を取り付けた部材の側
面図、同図(e)は第2の実施例の恒温型圧電発振器2の断面図である。図1と同じ部位
で同じ機能の部品には同じ符号を付している。第2の実施例の恒温型圧電発振器2が、図
1に示した恒温型圧電発振器1と異なる点は、第2の温度制御部14、特に第2の発熱部
品15の配置である。恒温型圧電発振器2では、発振回路部品20の中、特に可変容量素
子20b(バリキャップダイオード等)の温度保持に留意している。第2の温度制御部1
4により、発振回路部品20の中でも特に周波数安定度の敏感な可変容量素子20bの周
辺の局所のプリント基板5の温度を所定の温度に維持することが、恒温型圧電発振器1の
安定度に大きく寄与する。つまり、第2の温度制御部による加熱対象を可変容量素子20
bの実装エリアに極限したことである。プリント基板5の局所の温度のみを維持するので
、低消費電力化にも効果がある。
【0028】
図3は、第3の実施例の表面実装タイプの恒温型圧電発振器3の構造を示す概略断面図
である。図1に示した恒温型圧電発振器1と異なる点は、プリント基板5を貫通する接続
ピン8をベース部材7の上面に形成したランド電極に半田付けして、表面実装タイプとし
た例である。また、ベース部材7の下面にはマザーボードと接続する複数の端子電極が形
成されている。該端子電極を介して発振回路素子20a、第1及び第2の温度制御部10
、14の電源が供給され、また、生成した発振周波数をマザーボード側に供給する。
ベース部材に表面実装用のベースプリント基板を用いて恒温型圧電発振器を構成するこ
とにより、表面実装タイプの恒温型圧電発振器が可能となり、マザーボードへの実装が自
動化できるという効果がある。
【0029】
図4は、第4の実施例の表面実装タイプの恒温型圧電発振器4の構造を示す概略断面図
である。図2に示した恒温型圧電発振器2と異なる点は、プリント基板5を貫通する接続
ピン8をベース部材7の上面に形成したランド電極に半田付けして表面実装タイプとした
例である。ベース部材7の下面には複数の端子電極が形成されている。恒温型圧電発振器
4は、可変容量素子20bの実装エリアの温度、つまりプリント基板5の局所の温度のみ
を保持するように熱設計されているので、低消費電力化に効果がある。また、恒温型圧電
発振器4の自動実装ができるという効果がある。
【符号の説明】
【0030】
1、2、3、4…恒温型圧電発振器、5…プリント基板、6a、6b、6c、6d…ス
ルーホール、7…ベース部材、8…接続ピン、9…ケース、10…第1の温度制御部、1
1…第1の発熱部品、11a…第1の発熱部品の端子、12…第1の感温素子、12a…
第1の感温素子の端子、13…第1の温度制御回路部品、14…第2の温度制御部、15
…第2の発熱部品、16…第2の感温素子、17…第2の温度制御回路部品、20…発振
回路部品、20a…発振回路素子、20b…可変容量素子、23…圧電振動子ブロック体
、25…圧電振動子、25a…リード端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マザーボードへの搭載用のベース部材と、該ベース部材上面から離間した位置で該ベー
ス部材から延びる接続ピンにより電気的機械的に接続支持されたプリント基板と、該プリ
ント基板により熱的な非結合状態で支持された圧電振動子と、前記プリント基板に搭載さ
れた発振回路部品と、前記圧電振動子の温度制御用の第1の温度制御部と、前記発振回路
部品の温度制御用の第2の温度制御部と、前記ベース部材との間で上記各構成要素を封止
する恒温槽を形成するケースと、を備えた恒温型圧電発振器であって、
前記第1の温度制御部は、前記圧電振動子加熱用であり且つ前記プリント基板と熱的に
非結合状態にある第1の発熱部品、第1の感温素子、及び第1の温度制御回路部品を含み

前記第2の温度制御部は、前記発振回路部品加熱用の第2の発熱部品、第2の感温素子
、及び第2の温度制御回路部品を含んでいることを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項2】
前記第1の温度制御部の設定温度は、前記圧電振動子のゼロ温度係数の温度に設定され

前記第2の温度制御部の設定温度は、前記恒温型圧電発振器の使用温度上限プラス略2
℃に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の恒温型圧電発振器。
【請求項3】
前記プリント基板には発振周波数可変用の可変容量素子が搭載されており、前記第2の
温度制御部による加熱対象を、前記可変容量素子の実装エリアに極限したことを特徴とす
る請求項1に記載の恒温型圧電発振器。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記ケースとの協働によって前記恒温槽を形成する下金属ケース部
材であり、前記接続ピンは、該下金属ケース部材に設けた穴を絶縁材を介して貫通して下
端部を外部に突出させていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の恒温
型圧電発振器。
【請求項5】
前記ベース部材は、表面実装用のベースプリント基板であり、前記接続ピンの下端部を
支持していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の恒温型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−183227(P2010−183227A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23421(P2009−23421)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】