説明

恒温型圧電発振器

【課題】周波数安定度を高め、消費電力を低減した小型化の高安定圧電発振器を得る。
【解決手段】恒温型圧電発振器は、ベース部材7と、ベース部材7から延びる接続ピン8
により電気的機械的に接続支持されたプリント基板5と、プリント基板に熱的に結合され
た状態で搭載された圧電振動子25と、プリント基板5に搭載された発振回路部品20と
、圧電振動子の温度制御用の第1の温度制御部10と、発振回路部品20の温度制御用の
第2の温度制御部14と、ケース9と、を備えている。第1の温度制御部は、圧電振動子
の加熱用の第1の発熱部品11、第1の感温素子12、及び第1の温度制御回路部品13
を含み、第1の発熱部品11及び第1の感温素子12は圧電振動子25のみに熱的に結合
されている。第2の温度制御部14は、発振回路部品加熱用の第2の発熱部品15、第2
の感温素子16、及び第2の温度制御回路部品17を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数制御デバイス等として使用される恒温型圧電発振器(高安定圧電発振
器)の改良に関し、特に圧電振動子をパワートランジスタ等の発熱部品により加熱すると
ともに、温度制御回路によって加熱温度を制御する構成を備えた恒温型電発振器において
、恒温槽内に配置された発振回路部品に対する温度制御が不十分であったことによる不具
合を解決することができる恒温型圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器や伝送通信機器に用いる周波数制御デバイスである水晶発振器等の圧電
発振器として、外部の温度変化に影響されることなく高安定な周波数を出力することがで
きる恒温槽型圧電発振器が従来から知られている。更に、近年これらの分野では、各種機
器に対して、小型、軽量であることが求められてきているため、それに対応して恒温槽型
圧電発振器についても小型、軽量、低消費電力化が市場から求められている。
従来の恒温槽型圧電発振器は、高安定な周波数を得る為に、熱容量が大きい金属ブロッ
ク等の恒温槽(oven)の凹所内に圧電振動子を収容し、更に金属ブロックをヒータに
より所定の温度に加熱していた。しかし、大型の金属ブロックを用いると、発振器全体の
嵩が増大するため、小型、軽量化という要請を満たすことができなかった。また、金属ブ
ロックを介して圧電振動子内部の圧電振動素子を加熱する構成であったため、ヒータから
の熱が圧電振動素子に達して、所望周波数に達するまでに長い時間を要するという問題が
あった。
【0003】
大型の金属ブロックを用いないタイプの小型化された高安定圧電発振器として、特開2
005−33315号公報(特許文献1)には、プリント基板側に発熱体を搭載したタイ
プの高安定圧電発振器が開示されている。図5は高安定発振器の構成を示す図で、同図(
a)は断面図、同図(b)は要部平面図である。高安定発振器は、水晶振動素子を金属ケ
ーシング内に封止した構成を有した水晶振動子67と、水晶振動子67に熱を供給して温
度を一定にする加熱供給体71と、水晶振動子67とともに発振回路を構成する発振用素
子68と、水晶振動子67の温度を制御する温度制御回路を構成する温度制御素子65と
、水晶振動子67、加熱供給体71、発振用素子68及び温度制御素子65を搭載する回
路基板61と、を備えている。加熱供給体71は、水晶振動子67のリード線の挿通孔を
有して回路基板61に装着され、水晶振動子67と対面して直接的に熱結合した導熱板7
2と、導熱板72に近接して回路基板61に実装され、導熱板72と熱結合した加熱用の
チップ抵抗73a、73bとから構成される。また、温度制御素子65のパワートランジ
スタ65B1、65B2も加熱用として利用する。
【0004】
アルミ板から成る導熱板72は、正方形状のアルミ板の一方の両端側に設けた第1窪み
74aと、これと直交する他方の両端側に設けた第2窪み74bと、中央領域に設けた開
口部75と、を有する。開口部75の外周には、水晶振動子67のリード線69が挿通す
る貫通孔76が設けられる。そして、導熱板72の4隅が図示しないネジによって回路基
板61上にネジ止めされる。回路基板61と導熱板72との間には熱導電性の樹脂が塗布
され、両者を熱的に結合する。また、導熱板72の4つの角部となる回路基板61には貫
通した鉤状の切り込み77が設けられている。
熱高感度素子である電圧可変容量素子68A及びサーミスタ65Aは、導熱板72に設
けた開口部75に配置される。他の発振用素子68は回路基板61の他主面に配置し、温
度制御素子65は回路基板61の両主面の外周に搭載される。
回路基板61に実装したチップ抵抗73a、73bによって導熱板72を加熱し、これ
に水晶振動子67を対面させて直接的に熱結合するので、恒温槽が不要となる。回路基板
が一枚で構造が簡易であり、特に背丈寸法を小さくできると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−333315公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された高安定圧電発振器では、水晶振動子と、発熱体
を実装したプリント基板とを導熱板を介して実装することで、加熱供給体(チップ抵抗、
導熱板)、水晶振動子、回路基板を一つの熱の塊としている。このため、加熱供給体によ
る発熱により回路基板温度が非常に高くなり、搭載される発振用素子、電圧可変容量素子
及び温度制御素子等の回路部品が過剰に加熱され、熱ストレスによって回路部品の故障率
が増え、高安定圧電発振器の信頼性が低下する虞があるという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、圧電振動子の加熱と、発振回路部
品(発振回路素子及び可変容量素子)の加熱と、を分離し、両者を温度勾配を持たせて熱
結合させる構成とし、回路部品の過剰な加熱を防いだ恒温型圧電発振器を提供することに
ある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本発明に係る恒温型圧電発振器は、周波数安定度が高く、且つ消費電力が
少なく、信頼性の高い小型の高安定圧電発振器を実現するため、マザーボードへの搭載用
のベース部材と、該ベース部材上面から離間した位置で該ベース部材から延びる接続ピン
により電気的機械的に接続支持されたプリント基板と、該プリント基板の下面に熱的に結
合された状態で搭載された圧電振動子と、前記プリント基板に搭載された発振回路部品と
、前記圧電振動子の温度制御用の第1の温度制御部と、前記発振回路部品の温度制御用の
第2の温度制御部と、前記ベース部材との間で上記各構成要素を封止する恒温槽を形成す
るケースと、を備えた恒温型圧電発振器であって、前記第1の温度制御部は、前記圧電振
動子加熱用の第1の発熱部品、第1の感温素子、及び第1の温度制御回路部品を含み、前
記第1の発熱部品及び前記第1の感温素子は前記圧電振動子のみに熱的に結合されており
、前記第2の温度制御部は、プリント基板に搭載された前記発振回路部品加熱用の第2の
発熱部品、第2の感温素子、及び第2の温度制御回路部品を含み、且つ前記プリント基板
に搭載されていることを特徴とする恒温型圧電発振器である。
【0009】
前記圧電振動子の温度制御用の第1の温度制御部と、前記発振回路部品の温度制御用の
第2の温度制御部との2つの温度制御部を設け、夫々個別に温度制御することにより、前
記圧電振動子を最適な温度に、また発振回路部品の温度を前記恒温型圧電発振器の使用温
度範囲の上限より略2℃だけ高めに、と夫々個別に設定することが可能となった。圧電振
動子のホルダーベースと、プリント基板とは熱結合し、前記第1の発熱部品、圧電振動子
からプリント基板にかけて温度勾配が形成される。この温度勾配と第2の温度制御部とに
より、圧電振動子の温度を前記発振回路部品より高く保持することができ、恒温型圧電発
振器の安定度を改善すると共に、省電力化が図られる。その上、発振回路部品の温度を過
度に上げないことにより、発振回路部品の故障を低減し信頼性を高めることができるとい
う効果もある。
【0010】
[適用例2]また恒温型圧電発振器は、第1の温度制御部及び第2の温度制御部の夫々
の消費電力量において、第1の温度制御部の消費電力量が第2の温度制御部の消費電力量
より大きいことを特徴とする適用例1に記載の恒温型圧電発振器である。
【0011】
第2の温度制御部の消費電力量を第1の温度制御部の消費電力量より少なくし且つ恒温
型圧電発振器の周波数安定度を維持することが可能となり、消費電力の低減の効果がある
。更に発振回路部品の温度を低く保持することで故障率を小さくし、恒温型圧電発振器の
信頼性を高めることができるという効果もある。
【0012】
[適用例3]また恒温型圧電発振器は、第1の発熱部品がパワートランジスタ、または
ヒータ線であることを特徴とする適用例1に記載の恒温型圧電発振器である。
【0013】
前記圧電振動子に接する第1の発熱部品にパワートランジスタ、またはヒータ線を用い
ることにより、圧電振動子を所定温度に上昇させる速度が速く、また温度制御が容易にな
り、小型化も図れるという効果がある。
【0014】
[適用例4]また恒温型圧電発振器は、前記ベース部材が、前記ケースとの協働によっ
て前記恒温槽を形成する下金属ケース部材であり、前記接続ピンは、該下金属ケース部材
に設けた穴を絶縁材を介して貫通して下端部を外部に突出させていることを特徴とする適
用例1乃至3の何れか一項に記載の恒温型圧電発振器である。
【0015】
前記ベース部材が下金属ケース部材で形成され、該ベース部材と前記ケースとの協働に
よって前記恒温槽を形成することにより、気密で堅牢な恒温型圧電発振器が構成できると
いう効果がある。更に、金属性のケースとベース部材により外部からのノイズを遮断する
と共に、外部に対してもノイズの放射を防ぐ効果がある。
【0016】
[適用例5]また恒温型圧電発振器は、前記ベース部材が、表面実装用のベースプリン
ト基板であり、前記接続ピンの下端部を支持していることを特徴とする適用例1乃至3の
何れか一項に記載の恒温型圧電発振器である。
【0017】
ベース部材に表面実装用のベースプリント基板を用いて恒温型圧電発振器を構成するこ
とにより、表面実装タイプの恒温型圧電発振器が可能となり、マザーボードへの実装作業
を自動化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施例の恒温型圧電発振器1の構成を示した図であり、(a)はプリント基板の上面図、(b)はその側面図、(c)は圧電振動子ブロック体の側面図、(d)はベース部材と接続ピンの側面図、(e)は恒温型圧電発振器1の断面図。
【図2】(a)は圧電振動子ブロック体の側面図、(b)は恒温型圧電発振器2の断面図。
【図3】第3の実施例の恒温型圧電発振器3の断面図。
【図4】第4の実施例の恒温型圧電発振器4の断面図。
【図5】(a)は従来の高安定圧電発振器の構成を示す断面図、(b)は要部平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施
形態に係る恒温型圧電発振器(高安定圧電発振器)1の構成を示す概略図である。図1(
a)はプリント基板の上面図、同図(b)はプリント基板の側面図、同図(c)は圧電振
動子に第1の発熱部品と、第1の感温素子とを取り付けた状態を示す側面図、同図(d)
はベース部材に絶縁材を介して接続ピンを取り付けた状態を示す側面図、同図(e)は本
発明に係る恒温型圧電発振器1の断面図である。
恒温型圧電発振器1は、マザーボードへの搭載用のベース部材7と、ベース部材7の上
面から離間した位置でベース部材7から延びる接続ピン8により電気的機械的に接続支持
されたプリント基板5と、プリント基板5の下面に熱的に結合された状態で搭載された圧
電振動子25と、プリント基板5に搭載された発振回路部品20(20a、20b)と、
圧電振動子25の温度制御用の第1の温度制御部10と、発振回路部品20の温度制御用
の第2の温度制御部14と、ベース部材7との間で上記各構成要素を封止して恒温槽を形
成するケースと、を備えている。
【0020】
第1の温度制御部10は、圧電振動子25の加熱用の第1の発熱部品11(例えばパワ
ートランジスタ等)と、例えばサーミスタ等の第1の感温素子12と、第1の感温素子1
2の信号に基づき第1の発熱部品11を制御する第1の温度制御回路部品13と、備えて
おり、プリント基板5に搭載されている。第1の発熱部品11及び第1の感温素子12は
、圧電振動子25のみに熱的に結合されている。
第2の温度制御部14は、プリント基板5に搭載された発振回路部品20の加熱用の第
2の発熱部品15(例えば、ジュール熱を発生するチップ抵抗、ヒータ等)と、例えばサ
ーミスタ等の第2の感温素子16と、第2の感温素子16の信号に基づいて第2の発熱部
品15を制御する第2の温度制御回路部品17と備えており、プリント基板5に搭載され
ている。
発振回路部品20は、圧電振動子25を発振させるためのIC化された発振素子20a
と、例えばバリキャップダイオード等の可変容量素子20bと、を備えており、プリント
基板5に搭載されている。なお、可変容量素子20bを備えているのは、恒温型圧電発振
器1の発振周波数を必要に応じて外部より可変するためである。
圧電振動子25は、例えば水晶振動子であり、金属ケース内に圧電振動素子(水晶振動
素子)を気密封止し、金属ケース内に延びるリード端子25aの内側端部により圧電振動
素子を金属ケースと非接触に支持した構成を有している。圧電振動素子とは、圧電基板(
水晶基板)の主面に励振電極を形成した素子である。
【0021】
図1(a)に示すようにプリント基板5にはその周縁に接続ピン8を貫通させ接続・固
定するためのスルーホール6aが複数個形成されている。また、プリント基板5には、圧
電振動子25のリード端子25a用の複数のスルーホール6b、第1の発熱部品11のリ
ード端子11a用の複数のスルーホール6c、第1の感温素子12のリード端子12a用
の複数のスルーホール6d等が形成されている。
そして図1(a)、(b)に示すように、プリント基板5の一方の面には、第1の温度
制御回路部品13と、第2の発熱部品15と、第2の感温素子16と、第2の温度制御回
路部品17と、が実装されている。また、他方の面には、発振回路素子20aと、可変容
量素子20bとから成る発振回路部品20が実装されている。
【0022】
図1(c)に示すように、圧電振動子25の図中下面に第1の発熱部品(例えばパワー
トランジスタ等)11をクリーム半田を用いて半田付けするか、あるいは熱伝導の良好な
接着剤等を用いて接着・固定し、圧電振動子25の側面に第1の感温素子12(例えばサ
ーミスタ等)を、接着剤を用いて接着・固定して、圧電振動子ブロック体23を構成する
。圧電振動子ブロック体23の第1の発熱部品11のリード端子11a(パワートランジ
スタの場合は3本)は、所定の位置から第1の発熱部品11の主表面に対して略直角に折
り曲げられている。第1の感温素子の端子12a(2本)は、リード端子11a、圧電振
動子25のリード端子25aに比べて細く、柔軟であり、予め曲げておく必要はない。
圧電振動子ブロック体23のリード端子11a、12a、25aを、プリント基板5に
設けたスルーホール6c、6d及び6bに通し、圧電振動子25のホルダーベース25b
をプリント基板5に当接させて、リード端子11a、12a、25aをスルーホール6c
、6d、6bに半田付けして、プリント板ブロックを構成する。圧電振動子25は、ホル
ダーベース25bと、リード端子25aとを介して、プリント基板5と熱的に結合させて
いる。
【0023】
図1(d)に示すようにベース部材7と接続ピン8とを絶縁材を介して接続する。具体
的には、ベース部材7に金属板を用いる場合には金属板に複数の穴を開け、これらの穴に
充填したハーメチックシール材(絶縁材料)を介して接続ピン8を挿通支持する。
また、ベース部材7としてプリント基板、セラミック基板等の絶縁材を用いる場合には
、これらの絶縁材に複数のスルーホールを形成し、スルーホールに金属性の接続ピン8を
通し、所定の長さで接続ピン8とスルーホールを半田付けする。
図1(d)に示したベース部材7から垂直に伸びる接続ピン8に、前記プリント板ブロ
ックのスルーホール6aを通し、プリント板ブロックの第1の発熱部品(例えばパワート
ランジスタ等)11がベース部材7から離間した位置で、スルーホール6aと接続ピン8
とを半田で接続・固定する。
そして、図1(e)の断面図に示すように、プリント板ブロックを覆うように金属ケー
ス9を被せ、ベース部材7の外側周縁とケース9の下部とを半田付けして、恒温型圧電発
振器1を完成する。なお、図1(e)において発振回路素子20aは圧電振動子25より
図中奥に位置するので示されていない。また、図1(e)の例は金属製のベース部材7を
想定した断面図である。
図示した例では、ベース部材7は、金属ケース(上金属ケース)9との協働によって恒
温槽を形成する下金属ケース部材であり、接続ピンは、下金属ケース部材7に設けた穴を
絶縁材を介して貫通して下端部を外部に突出させている。
【0024】
本発明に係る恒温型圧電発振器(高安定圧電発振器)1に用いる圧電振動子には、例え
ばSCカット水晶振動子を用いる。SCカット水晶振動子は二回回転の水晶基板を用いた
水晶振動子で、3つの振動モードが励振され、その中で一番低い周波数である主振動は厚
みすべり振動モード(Cモード)である。この振動モードより高周波側に厚みねじれモー
ド(Bモード)、厚み縦モード(Aモード)等が存在する。主振動のCモード(共振周波
数f1)に隣接するBモードの共振周波数(f2)は、Cモードの共振周波数f1より約
9〜10%程度高周波側に存在するため、周波数ジャンプ現象等を引き起こさないように
発振回路に工夫を施す必要がある。
また、SCカット振動子(Cモード)の周波数温度特性は3次曲線を呈し、その変曲点
温度(Ti)は約95℃にある。そして、変曲点温度(Ti)より低温側で零温度係数を
示す頂点温度Tpは、切断する2回回転角に依存し、頂点温度Tpの設定範囲は70℃〜
85℃程度となる。従って、第1の温度制御部10の設定温度を頂点温度Tpの近傍に設
定する。
【0025】
本発明の恒温型圧電発振器(高安定圧電発振器)1の特徴は、圧電振動子25の温度を
、零温度係数を示す頂点温度Tpに保持する第1の温度制御部10と、発振回路部品20
を恒温型圧電発振器1の使用温度範囲の上限より略2℃高く保持する第2の温度制御部1
4と、の2つの温度制御部を設けたことである。圧電振動子25はプリント基板5と接触
しており、第1の温度制御部10の第1の発熱部品11が発生する熱は、圧電振動子25
を介してプリント基板5に伝導する。しかし、圧電振動子25のホルダーベース25b、
ホルダーケース25cは共に金属製であり、プリント基板5より熱伝導率が高い。そのた
め、温度が定常状態になると圧電振動子25とプリント基板5との間には温度勾配が形成
され、プリント基板5の温度は圧電振動子25の温度よりも低くなる。
恒温型圧電発振器1の周囲の温度が変化すると、発振回路部品20の温度も変化し、圧
電振動子25からみた発振回路部品20の負荷容量が変化することになる。発振回路部品
20の負荷容量がわずかに変化しても恒温型圧電発振器1の発振周波数が変動する。
従来の二重恒温槽タイプの高安定圧電発振器は、内側の恒温槽に圧電振動子を収容し、
外側の恒温槽に発振回路部品を収容して、内側の恒温槽の温度変化を略0.1℃、外側の
恒温槽の温度変化を略1℃に保持し、周波数安定度として10-10程度を得ていた。この
ことからも周囲の温度変化に対し発振回路部品の温度を恒温に保持することが重要である
ことが分かる。
しかし、移動体通信の基地局、例えばWCDMA基地局では小型(一例として25mm
×20mm×12)、低価格であり、周波数安定度が10-9程度の周波数可変型の高安定
圧電発振器が要求されている。周波数可変型にするには可変容量素子(バリキャップダイ
オード等)を搭載する必要がある。
【0026】
そこで、本発明の恒温型圧電発振器1は以上のことを考慮し、プリント基板5上に第2
の発熱部品15、第2の感温素子16及び第2の温度制御回路部品17から成る第2の温
度制御部14を設け、発振回路素子20a、可変容量素子20bから成る発振回路部品2
0の温度変化を所定の温度範囲内に保持できるようにした。つまり、圧電振動子25の温
度保持は第1の温度制御部10により、発振回路部品20の温度保持は第2の温度制御部
14により、夫々個別に制御することにした。このように個別に制御することにより、圧
電振動子25を最適な温度、つまり零温度係数を示す頂点温度Tpに、発振回路部品20
を使用温度範囲の上限より略2℃だけ高めに、と夫々個別に設定することが可能となった

【0027】
例えばSCカット水晶振動子を用いる場合には、零温度係数を示す頂点温度Tpは80
℃近傍であり、第1の温度制御部10の設定温度を80℃近傍に設定する。一方、恒温型
圧電発振器1の一例の使用温度範囲の上限は70℃程度であり、第2の温度制御部14の
設定温度は上限の温度より略2℃高い72℃程度に設定する。つまり、第1の温度制御部
及び第2の温度制御部10、14の夫々の消費電力量は、第1の温度制御部の設定温度が
高いため、第1の温度制御部の消費電力量が第2の温度制御部の消費電力量より大きくな
る。
このように、第1及び第2の2つの温度制御部10、14により、圧電振動子25と、
プリント基板5上に搭載された発振回路部品20とを高精度で温度制御することにより、
恒温型圧電発振器1の安定度を改善すると共に、省電力化にも効果がある。その上、発振
回路部品20等の温度を過度に上げないことにより、発振回路部品20の故障率を低減し
、信頼性を向上させるという効果もある。
圧電振動子25に接する第1の発熱部品11(11’)にパワートランジスタ、または
ヒータ線を用いることにより、所定温度までの温度上昇の速度が速く、また温度制御が容
易になり、小型化も図れるという効果がある。
また、恒温型圧電発振器1の安定度に寄与するのは、第1及び第2の発熱部品11、1
5で発生する熱の外部への伝導を抑えることであり、プリント基板5とベース部材7とを
接続する接続ピン8の太さを細くして熱抵抗を高める等の細かい点の考慮も必要である。
また、ベース部材7が金属部材で形成され、ベース部材7とケース9との協働によって
前記恒温槽を形成することにより、気密で堅牢な恒温型圧電発振器が構成できるという効
果がある。更に、金属製のケースとベース部材により外部からのノイズを遮断すると共に
、外部に対してもノイズの放射を防ぐ効果がある。
【0028】
図2は第2の実施例の恒温型圧電発振器2の構成を示す概略図である。プリント基板の
構成は図1(a)、(b)と同様であるので省略する。図1(a)は圧電振動子25に第
1の発熱部品11’と、第1の感温素子12とを取り付けた圧電振動子ブロック体23の
側面図、同図(b)は第2の実施例の恒温型圧電発振器2の断面図である。第2の実施例
の恒温型圧電発振器2が、図1に示した恒温型圧電発振器1と異なる点は、第1の温度制
御部10、特に第1の発熱部品11’である。第1の発熱部品11’は圧電振動子25の
ホルダーケース25cに抵抗線(ヒータ線)を巻きつけて構成した発熱体である。または
、ホルダーケース25cの径よりわずかに大きな径の熱伝導のよい金属ボビンに抵抗線を
巻きつけて発熱体を構成し、ホルダーケース25cに装着してもよい。
第1の発熱部品11’に巻線を用いることにより第2の実施例の恒温型圧電発振器2の
低背化を図ることができるという効果がある。
【0029】
図3は、第3の実施例の表面実装タイプの恒温型圧電発振器3の構造を示す概略断面図
である。図1に示した恒温型圧電発振器1と異なる点は、プリント基板5を貫通する接続
ピン8をベース部材7の上面に形成したランド電極に半田付けして、表面実装タイプとし
た例である。ベース部材7としては絶縁材のベース部材を用いる。また、ベース部材7の
下面にはマザーボードと接続する複数の端子電極が形成されている。端子電極を介して発
振回路素子20a、第1及び第2の温度制御部10、14の電源が供給されると共に、恒
温型圧電発振器3の生成する発振周波数をマザーボード側に供給する。
ベース部材に表面実装用のベースプリント基板を用いて恒温型圧電発振器を構成するこ
とにより、表面実装タイプの恒温型圧電発振器が可能となり、マザーボードへの実装が自
動化できるという効果がある。
【0030】
図4は、第4の実施例の表面実装タイプの恒温型圧電発振器4の構造を示す概略断面図
である。図2に示した恒温型圧電発振器2と異なる点は、プリント基板5を貫通する接続
ピン8をベース部材7の上面に形成したランド電極に半田付けして、表面実装タイプとし
た例である。ベース部材7としては絶縁材のベース部材を用い、ベース部材7の下面には
複数の端子電極が形成されている。第4の実施例の恒温型圧電発振器4もマザーボードへ
の実装が自動化できるという効果がある。
【符号の説明】
【0031】
1、2、3、4…恒温型圧電発振器、5…プリント基板、6a、6b、6c、6d…ス
ルーホール、7…ベース部材、8…接続ピン、9…ケース、10…第1の温度制御部、1
1、11’…第1の発熱部品、11a、11’a…第1の発熱部品のリード端子、12…
第1の感温素子、12a…第1の感温素子のリード端子、13…第1の温度制御回路部品
、14…第2の温度制御部、15…第2の発熱部品、16…第2の感温素子、17…第2
の温度制御回路部品、20…発振回路部品、20a…発振回路素子、20b…可変容量素
子、23…圧電振動子ブロック体、25…圧電振動子、25a…リード端子、25b…ホ
ルダーベース、25c…ホルダーケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マザーボードへの搭載用のベース部材と、該ベース部材上面から離間した位置で該ベー
ス部材から延びる接続ピンにより電気的機械的に接続支持されたプリント基板と、該プリ
ント基板の下面に熱的に結合された状態で搭載された圧電振動子と、前記プリント基板に
搭載された発振回路部品と、前記圧電振動子の温度制御用の第1の温度制御部と、前記発
振回路部品の温度制御用の第2の温度制御部と、前記ベース部材との間で上記各構成要素
を封止する恒温槽を形成するケースと、を備えた恒温型圧電発振器であって、
前記第1の温度制御部は、前記圧電振動子加熱用の第1の発熱部品、第1の感温素子、
及び第1の温度制御回路部品を含み、前記第1の発熱部品及び前記第1の感温素子は前記
圧電振動子のみに熱的に結合されており、
前記第2の温度制御部は、プリント基板に搭載された前記発振回路部品加熱用の第2の
発熱部品、第2の感温素子、及び第2の温度制御回路部品を含み、且つ前記プリント基板
に搭載されていることを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項2】
第1の温度制御部及び第2の温度制御部の夫々の消費電力量は、第1の温度制御部の消
費電力量が第2の温度制御部の消費電力量より大きいことを特徴とする請求項1に記載の
恒温型圧電発振器。
【請求項3】
第1の発熱部品がパワートランジスタ、またはヒータ線であることを特徴とする請求項
1に記載の恒温型圧電発振器。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記ケースとの協働によって前記恒温槽を形成する下金属ケース部
材であり、前記接続ピンは、該下金属ケース部材に設けた穴を絶縁材を介して貫通して下
端部を外部に突出させていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の恒温
型圧電発振器。
【請求項5】
前記ベース部材は、表面実装用のベースプリント基板であり、前記接続ピンの下端部を
支持していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の恒温型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−183228(P2010−183228A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23422(P2009−23422)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】