説明

恒温型圧電発振器

【課題】感温素子を含む温度制御素子および加熱用素子を備えることにより、周囲の温度変化に対する周波数の安定度が高く、小型化が可能な恒温型圧電発振器を提供する。
【解決手段】水晶振動子30、加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、および温度制御回路素子80などの回路素子が接合された回路基板40は、ベース基板121に複数立設された金属ピン5a〜5dに支持されている。金属ピン5a〜5dにより支持された回路基板40を備えたベース基板121上には、その回路基板40上に空間を介して被せられるように蓋体が設けられている。本実施形態の蓋体は、回路基板40が支持されたベース基板121上に被せられるように設けられた金属カバー体129と、その金属カバー体129の外周面を覆うモールド樹脂層95とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数制御デバイスなどとして使用される圧電発振器に関し、特に、感温素子を含む温度制御素子および加熱用素子を備えることにより、周囲の温度変化に対する周波数の安定化を図るようにした恒温型圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器などの圧電発振器は周波数制御デバイスとして知られ、周波数や時間の基準源として移動体通信機器や伝送通信機器などの電子機器に内蔵されている。このような圧電発振器の周波数安定度を向上させてたものとして、例えば、圧電発振器の内部を恒温化する構造として、周辺環境の温度変化に影響されることなく高安定な周波数を出力することが可能な恒温型圧電発振器があり、移動体通信の基地局または測定計測機器などの基準周波数源として用いられている。また、これらの分野では、近年の各種電子機器に対する小型、軽量化への要求が高まっているのに伴って、電子機器に内蔵される恒温型圧電発振器においてもさらなる小型、軽量化が市場から求められている。
このような要求に応えるものとして、例えば、特許文献1に、パッケージタイプの所謂表面実装用の小型の圧電振動子を用いて、この圧電振動子や温度制御用素子、あるいは発振用素子などを実装した基板を、ベースおよび蓋体からなる容器内に収容した恒温型圧電発振器が紹介されている。
【0003】
特許文献1に記載の恒温型圧電発振器(水晶発振器)は、ベース(第1回路基板)および蓋体(金属カバー)からなる容器内に設けられた回路基板(第2回路基板)に、表面実装型の圧電振動子と、その圧電振動子に接続された発振用素子と、少なくとも感温素子を含む温度制御用素子およびその温度制御用素子に接続された加熱用素子が実装されている。
ここで、圧電振動子としては、パッケージ内に圧電振動片が封止された表面実装型の所謂SMD(Surface Mount Devise:表面実装部品)タイプの圧電振動子(水晶振動子)が用いられ、また、加熱用素子として、同じくSMD部品であるチップ抵抗が用いられ、それぞれが小型、薄型化に効果を奏している。
【0004】
このような構成の恒温型圧電発振器においては、加熱用素子に電力を供給することにより発生するジュール熱を熱源とし、感温素子によって検出される温度に基づいて温度制御用素子を経て加熱用素子に供給する電力を制御することにより、容器内の恒温化を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−341191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の恒温型圧電発振器では、ベースおよび金属製の蓋体からなる容器の熱容量と、蓋体の内壁から圧電振動子およびそれらが実装された回路基板までのギャップの大きさとに依存する。このため、恒温型圧電発振器の本体(容器)の小型化を図ろうとしたとき、小型になるほどに蓋体の内壁と圧電振動子とのギャップが小さくなるために外部の温度変化の影響を受け易くなるので、外部の温度変化の影響で周波数特性が不安定になる虞があり、小型化が図りにくいなどの問題があった。
また、上記のような小型のSMDタイプの水晶振動子を用いた恒温型圧電発振器においては、容積の大きい圧電振動子では問題にならなかった熱的なダメージによる周波数ずれなどが問題になる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
〔適用例1〕本適用例にかかる恒温型圧電発振器は、圧電振動片がパッケージ内部に収容された表面実装型の圧電振動子と、前記圧電振動子が接合された回路基板と、前記回路基板に配置され、前記圧電振動子に接続された発振用素子と、前記回路基板に配置された温度制御用素子と、前記温度制御用素子に接続された加熱用素子と、が、ベースおよび蓋体からなる容器内に収容された恒温型圧電発振器であって、前記蓋体のうち、前記恒温型圧電発振器の外面の一部となる面に樹脂層を有し、内側の面の少なくとも前記加熱用素子の主面に対向する面に金属層を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、容器の蓋体のうち、恒温型圧電発振器の外面の一部となる面が樹脂層により構成されているので、その樹脂層の厚みを調整して熱容量を向上させることより、外部の温度変化が圧電振動子などの物理部に及ぼす影響を抑えることができる。
また、蓋体の内側の面の少なくとも加熱用素子の主面に対向する面に金属層を有しているので、加熱用素子の熱の樹脂層への吸収を抑えるとともに、容器の内部に熱を反射するので、容器の内部を効率的に加熱・保温して恒温状態に保持することができる。
したがって、効率的で安定した加熱・保温構造を有し、高精度で安定した発振特性を備えた小型の恒温型圧電発振器を提供することができる。
【0010】
〔適用例2〕上記適用例にかかる恒温型圧電発振器は、前記蓋体が、前記金属層としての金属カバー体と、該金属カバー体を覆う前記樹脂層としてのモールド樹脂層とからなることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ベースおよび蓋体としての金属カバー体とからなる容器に圧電振動子などの物理部を収容した従来の恒温型圧電発振器において、少なくとも金属カバー体をモールド樹脂で覆ってモールド樹脂層を形成することにより、外部の温度変化の影響を受けにくい構造にすることができる。したがって、小型化した場合でも外部の温度変化の影響を受け難く、高精度で安定した発振特性を有する恒温型圧電発振器を比較的簡便な製造工程にて製造することができる。
【0012】
〔適用例3〕上記適用例にかかる恒温型圧電発振器は、前記蓋体の前記金属層が、前記樹脂層の表面に形成された金属被膜からなることを特徴とする。
【0013】
この構成において、例えば、樹脂を成形して作製した蓋体の原形の内壁に、スパッタリング法や蒸着法あるいはめっき法によって金属被膜からなる金属層を形成することにより、金属カバー体を金属層として用いて蓋体を構成する場合に比して、部品点数が少なく、より小型の恒温型圧電発振器を提供することが可能になる。
【0014】
〔適用例4〕上記適用例にかかる恒温型圧電発振器は、前記加熱用素子が、前記金属層に接触させて設けられていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、加熱用素子によって加温された金属層による輻射熱によって、容器の内部全体を安定した恒温状態に保つことが可能となり、恒温型圧電発振器の周波数温度特性の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】恒温型圧電発振器としての第1の実施形態の恒温型水晶発振器を上側からみて模式的に説明する平面図。
【図2】第1の実施形態の恒温型水晶発振器を模式的に説明する図1のA−A線断面図。
【図3】第1の実施形態の恒温型水晶発振器を底面側からみて模式的に説明する平面図。
【図4】(a)は、圧電振動子としての水晶振動子を模式的に説明する平面図、(b)は、(a)のC−C線断面図。
【図5】第2の実施形態の恒温型水晶発振器を模式的に示す断面図。
【図6】恒温型水晶発振器の変形例を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、恒温型圧電発振器の一実施形態としての恒温型水晶発振器について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1〜図3は、本実施形態にかかる恒温型水晶発振器を模式的に説明するものであり、図1は上側からみた平面図、図2は、図1のA−A線断面図、図3は、底面側からみた平面図である。なお、図1では、恒温型水晶発振器の内部の構成を説明する便宜上、恒温型水晶発振器の外形をなす蓋体の一部を切り欠いて図示している。また、図4は、本実施形態の恒温型水晶発振器に用いられる圧電振動子としての水晶振動子を説明するものであり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。なお、(a)において、水晶振動子の内部の構成を説明する便宜上、水晶振動子の上部に接合されたリッド29の一部を切り欠いて図示している。
【0019】
〔水晶振動子〕
まず、恒温型水晶発振器1に備えられた水晶振動子30について説明する。
図4に示すように、本実施形態の恒温型水晶発振器1には、振動子用パッケージ20内に圧電振動片としての水晶振動片10が接合されて封止された所謂SMDタイプ(表面実装型)の水晶振動子30が用いられている。
SMDタイプの水晶振動子30は小型、薄型化が進んでいるので、恒温型水晶発振器1の小型、薄型化を図るのに有利である。また、表面実装部品として規格化されているSMDタイプの水晶振動子30は、例えば、基板に接合した水晶振動片を筒状のキャップで覆うことにより封止するタイプの水晶振動子のように、外部接続用のリード線を外部基板の接続端子形状に合わせて切断したり成形したりする必要がなく、外部基板への搭載の自動化も図りやすいので、実装工程の簡略化や低コスト化に有利である。
【0020】
図4(a)において、本実施形態の水晶振動片10は、矩形平板状に成形された水晶基板の一方の主面の略中央に、駆動用の電極である励振電極15が設けられ、水晶基板の一端側近傍に設けられた外部接続電極16aに接続されている。これと同様に、水晶基板の他方の主面には、励振電極15の対向電極である励振電極(励振電極15の下方に隠れて図示されず)が設けられ、水晶基板の一端側近傍の外部接続電極16aと異なる領域に設けられた外部接続電極16bに接続されている。
【0021】
なお、励振電極15や外部接続電極16a,16bなどの電極は、水晶基板の母体となる水晶ウェハをエッチングして水晶振動片10の外形を形成した後に、蒸着またはスパッタリングにより、例えばニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を下地層として、その上に例えば金(Au)による金属膜を成膜し、その後フォトリソグラフィを用いてパターニングすることにより形成できる。
【0022】
振動子用パッケージ20は、略矩形の平板状の第1層基板21と、その第1層基板21上に順次積層された略矩形フレーム状の第2層基板22、第3層基板23、およびシールリング28を有している。このような構成により、振動子用パッケージ20には、第1層基板21の上面側を凹底部分として第2層基板22および第3層基板23側に開口された凹部が形成されている。
【0023】
振動子用パッケージ20の凹部の凹底部分となる第1層基板21上に段差を形成する第2層基板22の棚部には、水晶振動片10が接合される複数の振動片接続端子26a,26bが設けられている。また、図4(b)に示すように、振動子用パッケージ20の外底面となる第1層基板21の下面側には、外部実装基板と実装される複数の外部接続端子25a,25bが設けられている。これらの各振動片接続端子26a,26bや、外部接続端子25a,25bは、第1層基板21に形成された図示しない引き回し配線またはスルーホールなどの層内配線により、それぞれ対応する端子同士が接続されている。
【0024】
なお、振動子用パッケージ20の第1層基板21、第2層基板22、および第3層基板23は、セラミックス絶縁材料などからなる。また、振動子用パッケージ20に設けられた振動片接続端子26a,26bや外部接続端子25a,25b、あるいはそれらを接続する配線パターンまたは層内配線パターンなどは、一般に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属配線材料をセラミックス絶縁材料上にスクリーン印刷して焼成し、その上にニッケル(Ni)、金(Au)などのめっきを施すことにより形成される。
【0025】
水晶振動片10は、その水晶振動片10の一端側近傍に設けられた外部接続電極16a,16bと、振動子用パッケージ20の第2層基板22上に設けられた対応する振動片接続端子26a,26bとを位置合わした状態で、例えば導電性接着剤90などの接合部材により接合されている。これにより、水晶振動片10は、振動子用パッケージ20と接合された外部接続電極16a,16b側の反対側を自由端として第1層基板21と接触しないように隙間を空けた状態で片持ち支持されている。
なお、導電性接着剤90としては、一般に、ポリイミド、シリコン系、またはエポキシ系などの樹脂に、銀(Ag)フィラー、またはニッケル(Ni)フィラーを混入したものが使用される。また、水晶振動片10を接合する接合部材は導電性接着剤90に限らず、半田などの他の接合部材を用いることもできる。
【0026】
水晶振動片10が接合された振動子用パッケージ20の第3層基板23上にはリッド29が接合されている。本実施形態では、金属製のリッド29が、鉄−ニッケル(Fe−Ni)合金などをフレーム状に型抜きして形成されたシールリング28を介してシーム溶接されている。これにより、振動子用パッケージ20の凹部内に接合された水晶振動片10が気密に封止されている。
【0027】
〔恒温型水晶発振器〕
次に、上記に説明したSMDタイプの水晶振動子30を備えた本実施形態の恒温型水晶発振器1について説明する。
図1〜図3において、恒温型水晶発振器1は、水晶振動子30が接合された回路基板40と、その回路基板40に配置された発振用素子70、温度制御用素子としての感温素子60および温度制御回路素子80、あるいは加熱用素子50が、ベースとしてのベース基板121および蓋体からなる容器内に収容されている。ここで、本実施形態の恒温型水晶発振器1の蓋体は、ベース基板121上に上記回路基板40を包囲するように設けられた金属層としての金属カバー体129と、その金属カバー体129を覆う樹脂層としてのモールド樹脂層95とからなる。
【0028】
回路基板40は、例えばガラスエポキシ樹脂などからなる平面視で略矩形状の基材のコーナー部分近傍に、恒温型水晶発振器1において回路基板40を支持する金属ピン5a〜5dが挿設される複数のピン孔が設けられている。また、回路基板40の一方の主面側には、水晶振動子30の外部接続端子25a,25bと対応する振動子接続端子43と、水晶振動子30の近傍に配置される感温素子60が接合される感温素子接続端子(図示せず)が設けられている。また、回路基板40の他方の主面側には、図示はしないが、加熱用素子50、発振用素子70、および温度制御回路素子80などの回路素子が接合される回路素子接続端子が設けられている。これらの回路素子接続端子、および、上記感温素子接続端子や振動子接続端子43などの接続端子は、端子間配線や基材内に形成された層内配線などにより対応する端子同士が接続され、回路基板40に回路配線が形成されている。
【0029】
回路基板40の一方の主面側には、水晶振動子30が接合されている。具体的には、水晶振動子30の外底部分に設けられた外部接続端子25a,25bと、回路基板40の対応する振動子接続端子43とが位置合わせされ、図示しない半田や導電性接着剤などの接合部材により電気的な接続をはかりながら接合されている。また、水晶振動子30の近傍には、感温素子60が接合されている。なお、感温素子60としては、温度上昇に伴って比抵抗が比較的大きく変化する、例えば、p型半導体酸化物などからなるSMDタイプのサーミスター(Thermistor)素子を用いることができる。
【0030】
回路基板40の他方の主面側には、加熱用素子50、発振用素子70、および温度制御回路素子80などの回路素子が接合されている。具体的には、各回路素子それぞれの端子部(図示せず)と、上記に説明した回路基板40の対応する回路素子接続端子(図示せず)とが位置合わせされ、図示しない半田や導電性接着剤などの接合部材、あるいはホンディングワイヤーなどを介して電気的な接続をはかりながら接合される。
なお、加熱用素子50としては、比較的高い抵抗値を有するチップ抵抗素子や、チップタイプのパワートランジスターなどの発熱素子を用いることができる。
また、発振用素子70や温度制御回路素子80としては、発振回路または温度制御回路が形成された専用あるいは汎用の半導体回路素子である、所謂ICチップなどが用いられる。
【0031】
上記のように回路素子が接合された回路基板40を含む恒温型水晶発振器1の物理部において、温度制御回路素子80により制御された電力を加熱用素子50に供給すると、加熱用素子50のジュール熱が水晶振動子30に伝播される。また、感温素子60によって水晶振動子30直下の回路基板40の温度を直接的に検出して、その温度データを温度制御回路素子80にフィードバックすることにより、加熱用素子50への供給電力を制御する。
なお、本実施形態では、加熱用素子50が、回路基板40の反対側の主面に接合された水晶振動子30と平面視で重なるように配置され、加熱用素子50が発生する熱を、回路基板40を介して水晶振動子30に効率よく伝導させる一例を図示して説明する。加熱用素子50の配置はこれに限らず、実用レベルにて加熱用素子50による水晶振動子30近傍の温度の恒温化が図れるように配置されればよい。
【0032】
水晶振動子30、加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、および温度制御回路素子80などの回路素子が接合された回路基板40は、ベース基板121に複数立設された金属ピン5a〜5dに支持されている。具体的には、回路基板40のコーナー部分近傍に設けられたピン孔に、ベース基板121に立設された対応する金属ピン5a〜5dが挿し込まれた状態で回路基板40が水平に固定されている。
【0033】
複数の金属ピン5a〜5dは、各種回路素子が接合された回路基板40を支持するとともに回路基板40とベース基板121との電気的な接続に供している。また、ベース基板121の恒温型水晶発振器1の外底面となる側の面には、恒温型水晶発振器1と外部基板とを接合するための複数の実装端子125a〜125dが設けられている(図3を参照)。実装端子125a〜125dは、ベース基板121に設けられた図示しない引き回し配線またはスルーホールなどの層内配線により対応する金属ピン5a〜5dと接続されている。本実施形態では、図3に示すように、金属ピン5aと実装端子125a、金属ピン5bと実装端子125b、金属ピン5cと実装端子125c、金属ピン5dと実装端子125dが、それぞれ対応して接続されている。
【0034】
上記のように、金属ピン5a〜5dにより支持された回路基板40を備えたベース基板121上には、その回路基板40上に空間を介して被せられるように蓋体が設けられている。本実施形態の蓋体は、回路基板40が支持されたベース基板121上に被せられるように設けられた金属カバー体129と、その金属カバー体129の外周面を覆うモールド樹脂層95とからなる。
【0035】
ここで、ベース基板121と金属カバー体129とは、例えば、金属カバー体129の開口端面に設けられた図示しない爪部が、ベース基板121の外周に設けた孔(図示せず)に嵌入されて接合される。
そして、金属カバー体129の外周を覆うように、モールド樹脂をディスペンサーなどにより塗布してから固化させたり、あるいはトランスファーモールド法によりモールド樹脂成形することによりモールド樹脂層95が形成されている。
【0036】
これにより、ベース基板121から立設された金属ピン5a〜5dに支持された回路基板40に接合された加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、温度制御回路素子80などの回路素子、および水晶振動子30が、金属カバー体129とモールド樹脂層95とからなる蓋体およびベース基板121からなる容器内に収容された恒温型水晶発振器1が構成される。
【0037】
上記第1の実施形態の恒温型水晶発振器1によれば、恒温型水晶発振器1の外形を成す容器の蓋体が、蓋体として従来用いられている金属カバー体129と、その金属カバー体129を覆うモールド樹脂とにより構成されているので、金属カバー体129のみを蓋体とした構成の容器を用いた場合に比して熱容量が高くなる。これにより、恒温型水晶発振器1の小型化を図るのに伴い金属カバー体129を小型化した場合でも、モールド樹脂層95が断熱効果を奏して、外部の温度変化が水晶振動子30などの物理部に及ぼす影響を抑えることができる。
また、蓋体の内壁となる面が金属カバー体129により構成されているので、その金属カバー体129の内側の面が、加熱用素子50からの熱や他の回路素子の動作に伴う熱などを容器の内部に反射するので、容器の内部を効率的に加熱・保温して恒温状態に保持することができる。
したがって、効率的で安定した加熱・保温構造を有し、高精度で安定した発振特性を備えた小型の恒温型水晶発振器1を提供することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態の恒温型水晶発振器1では、蓋体として従来用いられる金属カバー体129を樹脂層としてのモールド樹脂層95で覆った構成の蓋体を用いた。これに限らず、樹脂層からなる蓋体の本体部分の内壁面に、金属層としての金属被膜を形成した構成の蓋体を用いることによって、恒温型水晶発振器のより小型化を図ることが可能である。
【0039】
図5は、第2の実施形態の恒温型水晶発振器を模式的に示す断面図であり、上記第1の実施形態の恒温型水晶発振器1を説明した図2と同じ断面位置を図示したものである。なお、第2の実施形態の恒温型水晶発振器の構成のうち、蓋体の金属層が金属被膜からなること以外の構成は上記第1の実施形態と同じであるため、上記第1の実施形態と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
図5に示す第2の実施形態の恒温型水晶発振器110は、水晶振動子30、発振用素子70、感温素子60や温度制御回路素子80などからなる温度制御用素子、および加熱用素子50が接合された回路基板40が、ベース基板121上に立設された複数の金属ピン5a〜5d(図中5c,5dは不図示)に支持されている。そして、そのベース基板121上に、上記回路基板40を包囲するように蓋体の本体部分としてのモールド樹脂層95が設けられている。
【0041】
モールド樹脂層95は樹脂成形金型を用いて形成することができ、例えば、射出成形用金型を用いて射出成形する方法などにより形成する。なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と同じくモールド樹脂をもちいて蓋体の本体部分となるモールド樹脂層95を形成する例を説明するが、樹脂層の材料はモールド用の樹脂に限らず、その他の樹脂材料を用いてもよい。
【0042】
モールド樹脂層95の内壁面には金属層としての金属被膜229が形成されている。金属被膜229は、スパッタリング法や蒸着法、あるいはめっき法などにより形成することができる。また、金属被膜229材料としては、金属被膜229が熱反射膜として機能し得るものであればよく、例えば、アルミニウム、ニッケル、あるいは金など、種々の金属を選択することができる。
以上、述べた構成により、ベース基板121から立設された回路基板40に接合された加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、温度制御回路素子80などの回路素子、および水晶振動子30が、モールド樹脂層95とそのモールド樹脂層95の内壁面に形成された金属被膜229とからなる蓋体およびベース基板121からなる容器内に収容された恒温型水晶発振器110が形成される。
【0043】
上記第2の実施形態の恒温型水晶発振器110の構成によれば、金属カバー体129を蓋体の金属層として用いた構成の第1の実施形態の恒温型水晶発振器1に比して、部品点数が少なく、より小型の恒温型水晶発振器110を提供することが可能になる。
【0044】
上記第1および第2の実施形態で説明した恒温型水晶発振器1,110は、以下の変形例として実施することも可能である。
【0045】
(変形例)
上記第1および第2の実施形態の恒温型水晶発振器1,110では、加熱用素子50を、水晶振動子30やその他の回路素子が接合された回路基板40上に配置した。これに限らず、加熱用素子50を蓋体の金属層に接触させて配置する構成としてもよい。
【0046】
図6は、本変形例の恒温型水晶発振器を模式的に示す断面図であり、上記第1および第2の実施形態の恒温型水晶発振器1,110を説明した図2または図5と同じ断面位置を図示したものである。なお、本変形例の恒温型水晶発振器の構成のうち、加熱用素子の配置以外の構成は上記第1および第2の実施形態と同じであるため、同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
図6に示す本変形例の恒温型水晶発振器210は、水晶振動子30、発振用素子70、感温素子60や温度制御回路素子80などからなる温度制御用素子が接合された回路基板40が、ベース基板121上に立設された複数の金属ピン5a〜5d(図中5c,5dは不図示)に支持されている。
【0048】
上記のように、金属ピン5a〜5dにより支持された回路基板40を備えたベース基板121上には、その回路基板40上に空間を介して被せられるように設けられた金属カバー体129、および、その金属カバー体129の外周面を覆うモールド樹脂層95からなる蓋体が配置されている。
【0049】
本変形例の恒温型水晶発振器210において、加熱用素子150は、蓋体の内壁面となる金属カバー体129の内壁面の一部に接触させて配置されている。加熱用素子150は、ベース基板121に形成された図示しない引き回し配線や層内配線、あるいは金属ピン5a,5b(5c,5d)などにより、回路基板40に接合された温度制御用素子としての感温素子60および温度制御回路素子80と接続されている。なお、図6における加熱用素子150の大きさや配置は、その一例を説明するものであり、恒温型水晶発振器210の恒温化に供する十分な性能を有して、且つ、蓋体の金属層としての金属カバー体129に接触させて配置されていればよく、図示したものに限らない。
【0050】
上記変形例の恒温型水晶発振器210によれば、加熱用素子150によって加温された金属カバー体129による輻射熱によって、金属カバー体129とモールド樹脂層95からなる蓋体およびベース基板121からなる容器の内部全体を安定した恒温状態に保つことが可能となる。したがって、周波数温度特性の安定化が図られた恒温型水晶発振器210を提供することできる。
【0051】
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態および変形例の恒温型水晶発振器1,110,210において、回路基板40に接合される水晶振動子30、感温素子60、発振用素子70、温度制御回路素子80などの回路素子、および加熱用素子50などの配置は、その一例を説明したものであり、適宜に変更することができる。
【0053】
また、上記実施形態および変形例では、蓋体の金属層としての金属カバー体129または金属被膜229が、蓋体の内壁の全面に形成された金属層である例を説明した。これに限らず、蓋体の金属層は、蓋体の内壁面のうち、少なくとも加熱用素子50,150の主面に対向する面に形成されていれば、加熱用素子50,150が発生する熱の多くの部分を金属層により反射させて、容器の内部を恒温化する効果を奏する。
【0054】
また、上記実施形態および変形例では、容器の外底部分となるベース基板121の面に実装端子125a〜125dを有する所謂表面実装型の恒温型水晶発振器1,110,210について説明した。これに限らず、例えば、金属ピン5a〜5dをベース基板121の外底面側に貫通させて突出させ、その金属ピン5a〜5dの突出部を外部との接続端子として用いる構成としてもよい。
また、恒温型水晶発振器1,110,210は、表面実装型、あるいはその他のタイプの構成において、ベース基板121および蓋体からなる容器の内部を気密に封止する構成としてもよく、また、気密封止しない構成を選択することもできる。例えば、容器の内部を気密に封止する構成とした場合には、回路基板40に接合された加熱用素子50、感温素子60、発振用素子70、温度制御回路素子80などの各種素子、および水晶振動子30が外気から遮断されるので、経年劣化特性が良好となり高信頼性を有する恒温型水晶発振器を提供することができる。
【0055】
また、上記実施形態および変形例では、圧電振動片として水晶振動片10を用いた水晶振動子30を搭載した恒温型水晶発振器1,110,210について説明した。これに限らず、水晶以外に、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ほう酸リチウム(Li247)などの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウム、五酸化タンタル(Ta25)などの薄膜圧電材料を積層させて構成された圧電材料からなる圧電振動片を用いることができ、水晶発振器以外の恒温型圧電発振器を提供することができる。
【0056】
また、水晶振動子30を構成する振動子用パッケージ20は、上記実施形態で説明した積層構造を有するものに限らず、機械加工などにより一体化した形のものを使用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,110,210…恒温型圧電発振器としての恒温型水晶発振器、5a〜5d…金属ピン、10…圧電振動片としての水晶振動片、15…励振電極、16a,16b…外部接続電極、20…振動子用パッケージ、25a,25b…外部接続端子、30…圧電振動子としての水晶振動子、40…回路基板、43…振動子接続端子、50,150…加熱用素子、60…温度制御用素子としての感温素子、70…発振用素子、80…温度制御回路素子、90…導電性接着剤、95…樹脂層としてのモールド樹脂層、121…ベースとしてのベース基板、125a〜125d…実装端子、129…金属層としての金属カバー体、229…金属層としての金属被膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片がパッケージ内部に収容された表面実装型の圧電振動子と、
前記圧電振動子が接合された回路基板と、
前記回路基板に配置され、前記圧電振動子に接続された発振用素子と、
前記回路基板に配置された温度制御用素子と、
前記温度制御用素子に接続された加熱用素子と、が、ベースおよび蓋体からなる容器内に収容された恒温型圧電発振器であって、
前記蓋体のうち、前記恒温型圧電発振器の外面の一部となる面に樹脂層を有し、内側の面の少なくとも前記加熱用素子の主面に対向する面に金属層を有することを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の恒温型圧電発振器であって、
前記蓋体が、前記金属層としての金属カバー体と、該金属カバー体を覆う前記樹脂層としてのモールド樹脂層とからなることを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項3】
請求項1に記載の恒温型圧電発振器であって、
前記蓋体の前記金属層が、前記樹脂層の表面に形成された金属被膜からなることを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の恒温型圧電発振器であって、
前記加熱用素子が、前記金属層に接触させて設けられていることを特徴とする恒温型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−183324(P2010−183324A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24549(P2009−24549)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】