説明

情報端末覗き見防止用画面保護フィルムの製造方法。

【課題】コンピューターなどの情報端末の覗き見防止用画面保護フィルムの生産効率向。
【解決手段】透明熱可塑性樹脂フィルムの片面に不透明色素を塗布して色素塗布フィルムを形成し、さらにその上に色素塗布フィルムを重ね合わせてフィルム重合せ体を形成して支持体上に載置し、その上に赤外線透過固体を重ね合わせてフィルム積層体を形成して重合せ方向に加圧状態で赤外線透過固体側から赤外線ビームを照射してフィルム溶着体を形成し、透過固体を除いてフィルム溶着体上に色素塗布フィルムを重ね合わせてフィルム積層体を形成し、以下上記のステップを必要回数繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はテレビやノート型コンピューターなどの情報端末覗き見防止用画面保護フィルムの製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報端末覗き見防止用画面保護フィルムとは、テレビやノート型コンピューターなどの情報端末の表示画面前に添付して、正面にいる使用者以外の別角度(非正面)にいる他者が覗き見することを不可能にする機能を有するフィルムのことを言う。
【0003】
その原理を図1により説明する。保護フィルム2には表面に対して直交する透明縞部分2aと不透明縞部分2bとが交互平行に配置されている。正面にいる使用者の視線Aは画面1に直交するので透明部分2aを通して画面1を視認できるが、非正面にいる他者の視線Bは画面1に斜行するので不透明部分2bに遮られて画面1を視認することができない。
【0004】
かかる保護フィルムの製造工程の一例を挙げると次の通りである。薄い透明熱可塑性樹脂フィルム21(厚さ100μm以下)の片面に不透明色素22を塗布する。この不透明色素は一般に黒色カーボンであり、厚さは数μm程度である。ついで色素塗布熱可塑性樹脂フィルムを複数枚重ね合わせて、厚さ方向両側から熱版押圧により加熱溶着して積層体23を形成する(熱可塑性樹脂フィルムの融点以上の温度で行う)。ついで冷却固化した後、積層方向と直交方向に薄く裁断して保護フィルム2を形成する。熱可塑性樹脂フィルム相当部分が透明部分2aとなり色素相当部分が不透明部分2bとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで積層体の積層方向の寸法は保護対象である画面の大きさに比例する。色素塗布熱可塑性樹脂フィルムの厚さは精々100μmであるのに対して画面の大きさはcm単位である。つまり対象画面全体に保護熱可塑性樹脂フィルムを添付するには数千枚の色素塗布熱可塑性樹脂フィルムを積層する必要があり、特に大画面テレビなどの場合には熱可塑性樹脂フィルムの積層枚数が莫大なものとなるなど、積層体の大型化を免れない。これに伴い熱可塑性樹脂フィルムの加熱溶着に要する加熱時間と冷却時間とがそれぞれ数十時間にも及び、加工の長時間化により生産効率が大幅に低下する。
【0006】
かかる現状に鑑みて、この発明の目的は携帯電話やノート型コンピューターなどの情報端末の覗き見防止用画面保護フィルムの製造における生産効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このためこの発明の方法にあっては、(a)透明熱可塑性樹脂フィルムの片面に不透明色素を塗布して色素塗布熱可塑性樹脂フィルムを形成し、(b)第1の色素塗布熱可塑性樹脂フィルム上に第2の色素塗布熱可塑性樹脂フィルムを重ね合わせて熱可塑性樹脂フィルム重合せ体を形成し、(c)熱可塑性樹脂フィルム重合せ体を支持体上に載置し、その上に赤外線透過固体を重ね合わせて熱可塑性樹脂フィルム積層体を形成し、(d)熱可塑性樹脂フィルム積層体を重合せ方向に加圧した状態で赤外線透過固体側から赤外線ビームを照射して熱可塑性樹脂フィルム溶着体を形成し、(e)赤外線透過固体を除いて熱可塑性樹脂フィルム溶着体上に第3の色素塗布熱可塑性樹脂を重ね合わせて熱可塑性樹脂フィルム積層体を形成し、(f)以下ステップ(c)〜(e)を必要回数繰り返すことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
溶着に要する加熱は瞬時に行われ、冷却は次の繰返しステップの熱可塑性樹脂フィルム積層体形成間に終了してしまうので、過熱・冷却短時間で済む。赤外線ビームによる輻射加熱であるために、熱可塑性樹脂フィルム溶着の界面付近のみを加熱すればよく、従来の熱伝導加熱よりも効率がよい。両者相俟って保護フィルム製造における生産効率を大幅に向上させることができる。
【0009】
赤外線透過固体は熱可塑性樹脂フィルムに吸収される赤外線ビームをよく透過する性質を示すものであることが望ましい。
【0010】
また赤外線透過固体はそれを透過して到達した赤外線ビームにより熱可塑性樹脂フィルムに発生された熱をよく放熱する性質を示すものであることが望ましい。
【0011】
赤外線ビームは溶着に充分な光強度を有する点状スポットを呈し、前記熱可塑性樹脂フィルム積層体の表面上を高速移動するものであってよい。
【0012】
赤外線ビームは溶着に充分な光強度を有する線状スポットを呈し、前記熱可塑性樹脂フィルム積層体の表面上を高速移動するものであってよい。
【0013】
前記赤外線ビームが溶着に充分な光強度を有する面状スポットを呈するものであってよい。
【実施例】
【0014】
図3にこの発明の基本的な実施例を示す。まづ透明熱可塑性樹脂フィルムの片面に不透明色素を塗布して色素塗布熱可塑性樹脂フィルム33を形成する。ここで熱可塑性樹脂フィルムは0.7μm以上2.0μm未満の赤外線ビームをよく透過するが、それに塗布される不透明色素は0.7μm以上2.0μm未満の赤外線ビームを非常によく透過するものを用いる。
【0015】
次いで第1の色素塗布熱可塑性樹脂フィルム33上に第2の色素塗布熱可塑性樹脂フィルム33を重ね合わせて熱可塑性樹脂フィルム重合せ体を形成する。この熱可塑性樹脂フィルム重合せ体を支持体34上に載置してその上に赤外線透過固体35を重ね合わせて熱可塑性樹脂フィルム積層体を形成する。さらに熱可塑性樹脂フィルム積層体を重合せ方向に加圧した状態で赤外線透過固体35側から赤外線ビーム36を照射して熱可塑性樹脂フィルム溶着体を形成し、赤外線透過固体35を除いて熱可塑性樹脂フィルム溶着体上に第3の色素塗布熱可塑性樹脂フィルム33を重ね合わせて熱可塑性樹脂フィルム積層体を形成する。以下熱可塑性樹脂フィルム重合せ体から熱可塑性樹脂フィルム積層体を形成するステップから熱可塑性樹脂フィルム溶着体上に色素塗布熱可塑性樹脂フィルムを重ね合わせるステップまでを必要回数繰り返す。
【0016】
ここで上記の「必要回数」とは熱可塑性樹脂フィルム溶着体の重合せ方向の総サイズが保護フィルムを適用する画面のサイズに少なくとも等しくなるまでの回数を言う。
【0017】
この発明における赤外線ビームを発生する赤外線光源は、波長が0.7μm以上2.0μm未満の範囲にある赤外線ビームを発生し、かつ赤外線ビームの照射により熱可塑性樹脂フィルムの溶着面を溶融温度にまで充分に加熱し得る波長と出力を発生するものが選ばれる。
【0018】
赤外線光源としては、赤外線ランプまたは赤外線レーザーのどちらを用いてもよい。赤外線ランプの種類としては、波長が07μm以上の赤外線ビームを発生するハロゲンランプまたはキセノンランプが挙げられる。一方赤外線レーザーの種類としては、上記波長範囲の赤外線ビームを発生する固体レーザー、半導体レーザー、気体レーザー、色素レーザーおよび化学レーザーのいずれを用いてもよい。より具体的にはYAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザーなどが挙げられる。
【0019】
赤外線透過固体としては、波長が0.7μm以上2.0μm未満の範囲おいて高い透過性を示す石英(SiO2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化バリウム(BaF2)、サファイア(Al23)または砒素化ガリウム(GaAs)などの赤外結晶材料が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明は情報端末製造の分野において広く利用され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】情報端末覗き見防止用画面保護フィルムの原理を示す模型図である。
【図2】情報端末覗き見防止用画面保護フィルムの従来の製造工程を示す模型図である。
【図3】この発明による情報端末覗き見防止用画面保護フィルムの製造工程を示す模型図である。
【符号の説明】
【0022】
1 画面
2 保護フィルム
21 透明熱可塑性樹脂フィルム
22 不透明色素
23 積層体
33 色素塗布熱可塑性樹脂フィルム
34 支持体
35 赤外線透過固体
36 赤外線ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)透明熱可塑性樹脂フィルムの片面に不透明色素を塗布して色素塗布熱可塑性樹脂フィルム(33)を形成し、(b)第1の色素塗布熱可塑性樹脂フィルム(33)上に第2の色素塗布熱可塑性樹脂フィルム(33)を重ね合わせて熱可塑性樹脂フィルム重合せ体を形成し、(c)熱可塑性樹脂フィルム重合せ体を支持体(34)上に載置しその上に赤外線透過固体(35)を重ね合わせて熱可塑性樹脂フィルム積層体を形成し、(d)熱可塑性樹脂フィルム積層体を重合せ方向に加圧した状態で赤外線透過固体(35)側から赤外線ビーム(36)を照射して熱可塑性樹脂フィルム溶着体を形成し、(e)赤外線透過固体(35)を除いて熱可塑性樹脂フィルム溶着体上に第3の色素塗布FF(33)を重ね合わせて熱可塑性樹脂フィルム積層体を形成し、(f)以下ステップ(c)〜(e)を必要回数繰り返すことを特徴とする情報端末覗き見防止用画面保護フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記赤外線透過固体は前記熱可塑性樹脂フィルムに吸収される赤外線ビームをよく透過する性質を示すものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記赤外線透過固体はそれを透過して到達した赤外線ビームにより熱可塑性樹脂フィルムに発生された熱をよく放熱する性質を示すものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記赤外線ビームが溶着に充分な光強度を有する点状スポットを呈し、前記FF積層体の表面上を高速移動することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記赤外線ビームが溶着に充分な光強度を有する線状スポットを呈し、前記FF積層体の表面上を高速移動することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記赤外線ビームが溶着に充分な光強度を有する面状スポットを呈することを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−20032(P2010−20032A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179709(P2008−179709)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(803000045)株式会社キャンパスクリエイト (41)
【Fターム(参考)】