説明

意匠性に優れた塗膜形成方法及び高意匠性塗装物品

【課題】
着色塗料粒子を用いた意匠性に優れた塗膜形成方法及び該方法により得られる意匠性の高い塗装物品を提供する。
【解決手段】
被塗面の少なくとも一部分に、中塗り塗料(I)を塗装して、中塗り塗膜の固形分が85質量%未満となるように乾燥させる工程(1)、工程(1)で得られた塗板上の少なくとも一部分に、中塗り塗料(I)による塗膜との色差ΔEが7以上の塗膜を形成する中塗り塗料(II)を押圧具を用いて塗装し乾燥させることによりぼかし調模様塗膜を形成する工程(2)、工程(2)で得られたぼかし調模様塗膜を有する塗板上に、着色塗料粒子入り塗料(III)を塗装して乾燥させる工程(4)を含むことを特徴とする塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色塗料粒子を用いた意匠性に優れた塗膜形成方法及び該方法により得られる高意匠性塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
多彩模様塗料とは1回の塗装で、2色以上の多彩な模様が得られる塗料であり、主として建築物等の塗装に使用されている。
【0003】
従来、多彩模様塗料による仕上げ塗膜は、近くで見て初めて多彩模様と認識できるような自然な仕上がり外観が好まれていた。このような多彩模様に用いられる、分散媒体中に粒状ゲルを安定に分散させた塗料である多彩模様塗料は公知である。
【0004】
例えば特許文献1には、複数色からなる特定粒子径分布の模様色形成分散相粒子と該分散相粒子を粒子状態で分散可能な透明の分散媒を主要構成成分とする自然石調塗料組成物を下塗層上に塗装することを特徴とする自然石調塗装方法が記載されている。かかる塗装方法によれば、特別な塗装機や熟練した塗装専門家のごとき技量を必要とせずに、自然石調の風合いをかもしだし、ボリューム感あふれる積層塗膜を形成することができるので、多くのユーザーに受け入れられているものである。
【0005】
一方、多様化したユーザーの趣向に応えるために多彩模様塗料を用いたユニークな意匠を有する塗膜も開発されており、例えば特許文献2及び特許文献3には光輝性塗膜と多彩模様塗膜による意匠性に優れた塗膜形成方法が開示されている。
【0006】
特許文献2に記載されているような光輝性塗膜の上層に多彩模様塗膜を塗り重ねるケースでは、下層にある光輝性塗膜による光輝感により多彩模様塗膜がより一層輝いて見えるものである。
【0007】
また、特許文献3に記載されているような多彩模様塗膜の上に特定の隠蔽率を有する光輝性塗膜を塗り重ねるケースでは、多彩模様塗膜の上に設けられた光輝性塗膜が正面方向と斜め方向とで光輝性顔料濃度が異なることを利用して見る方向によりバリエーションに富んだ意匠性を発揮できるものである。
【0008】
また、特許文献4には、多彩模様塗膜の下に特定の着色塗膜を設ける多彩模様塗膜形成方法が記載されている。該方法によれば着色塗膜の色調が多彩模様塗膜に反映され、鮮やかな模様の外観の意匠を呈することができる。
【0009】
しかしながら特許文献2及び特許文献3においての光輝性塗膜は多彩模様塗膜を引き立てるためのものであり、また、光輝性顔料が塗膜中に均一に分散され、塗膜中の光輝性顔料濃度が高いものではないので、このものと多彩模様塗膜を併用して得られる意匠性塗膜は、見る方向や角度によりバリエーションに富んだ多彩な意匠感はあるものの、全般に落ち着いた印象を与えるものである。また、特許文献4に記載されたような方法では鮮やかさはあるものの平面的な印象を与えるのみであり、目立つ意匠や独創性を好むユーザーにとって物足りない印象を受けると指摘されることがある。
【0010】
このようなことから従来は見られなかったような意匠、即ちユーザーに強烈な印象を与える、多彩感と立体感と独創性を兼ね備えた意匠の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−154308号公報
【特許文献2】特開2008−114112号公報
【特許文献3】特開2008−012381号公報
【特許文献4】特開2008−155119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、着色塗料粒子を用いた意匠性に優れた塗膜形成方法及び該方法により得られる高意匠性塗装物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記した課題に対して鋭意検討した結果、着色塗料粒子による模様塗膜の下に特定の塗装方法で得られる塗膜層を設けることで、模様粒子が立体的に浮き出て見え、多彩感の強い独創性のある高意匠性塗膜を形成できることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、
1. 被塗面の少なくとも一部分に、中塗り塗料(I)を塗装して、中塗り塗膜の固形分が85質量%未満となるように乾燥させる工程(1)、工程(1)で得られた塗板上の少なくとも一部分に、中塗り塗料(I)による塗膜との色差ΔEが7以上の塗膜を形成する中塗り塗料(II)を押圧具を用いて塗装し乾燥させることによりぼかし調模様塗膜を形成する工程(2)、工程(2)で得られたぼかし調模様塗膜を有する塗板上に、着色塗料粒子入り塗料(III)を塗装して乾燥させる工程(4)を含むことを特徴とする塗膜形成方法。
2. 被塗面に下塗り塗料を塗装し、乾燥させて下塗り塗膜を形成する工程をさらに含む1項記載の塗膜形成方法、
3. 工程(2)における中塗り塗料(II)として、下塗り塗料を使用する2項に記載の塗膜形成方法、
4. 着色塗料粒子入り塗料(III)が、カルボキシル基を必須としてそれ以外の官能基を有する水性樹脂(a1)及び着色剤(a2)を含有する着色塗料粒子成分(A)、並びにカルボキシル基を必須としてそれ以外の官能基を有する水性樹脂(b1)及び多価金属化合物(b2)を含有する塗膜形成成分(B)を含有してなり、該多価金属化合物(b2)の金属量が塗膜形成成分(B)に含まれる水性樹脂(b1)中のカルボキシル基1当量に対して0.1〜0.9当量の範囲内にある1項ないし3項のいずれか1項に記載の塗膜形成方法、
5. 1項ないし4項のいずれか1項に記載の方法により得られる高意匠性塗装物品、
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明方法によれば、中塗り塗料(I)を特定の固形分濃度となるように乾燥させてその上に中塗り塗料(I)との色差が大きい別の中塗り塗料(II)で上塗りすることで、上層の中塗り塗料と未硬化の中塗り塗膜とが交じり合う部分がところどころに現れて、中塗り塗料(I)と中塗り塗料(II)によるぼかし調の塗膜を形成することができ、この上に着色塗料粒子入り塗料を塗装することによって、該ぼかし調の塗膜から塗料粒子による模様が立体的に浮き出て見え、より奥行き感のある、多彩感の強い独創性に優れた高意匠塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明塗膜形成方法が適用される被塗面としては、制限されるものではないが、例えば、石膏ボード、コンクリート壁、コンクリートブロック、サイディングボード、モルタル壁、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、木材、石材、プラスチック成形物、陶磁器、磁器タイル、金属加工材等の基材の表面、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコン樹脂、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系等の旧塗膜やポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、紙、布等の材質からなる壁紙面などが設けられたものであってもよい。また、被塗物としては特に制限されるものではないが建築物外壁又は内壁などが適している。
【0016】
本発明では、被塗面の保護や次工程との付着性又は美観を付与する目的で下塗り塗料(I)を塗装し、乾燥させて下塗り塗膜を形成することが望ましい。
【0017】
下塗り塗料(I)を塗装する前に下塗り塗料(I)と被塗面の付着性を向上させるべく、シーラーやプライマーなどで被塗面を予め処理してもよい。
【0018】
上記下塗り塗料(I)としては従来公知のものを制限なく使用できるが、被塗面表面の種類や状態などに応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、生分解性樹脂等の樹脂種よりなる水系又は溶剤系の樹脂を樹脂バインダーとして含んでなる塗料を挙げることができ、水系の樹脂を含んでなる塗料を使用することが好ましい。
【0019】
また、上記下塗り塗料(I)は、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、防錆顔料等の従来公知の顔料を含んだものであることができ、顔料としては目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
上記下塗り塗料(I)の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーターなど基材の用途等に応じて適宜選択することができる。
【0021】
形成される下塗り塗膜の乾燥は、用いた下塗り塗料の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができ、適宜調整できるが一般には半硬化乾燥以上にあることが適しており、例えば下塗り塗膜の固形分濃度が85%以上、特に90%以上にあることが望ましい。
【0022】
本明細書において固形分濃度とは、試料中の不揮発成分の割合を示すものであり、試料3グラムを105℃の乾燥機の中に3時間静置して乾燥させ、乾燥後の試料の質量を乾燥前の試料の質量で割った値を100分率で示した値である。
【0023】
次にぼかし調模様塗膜について説明する。
<工程(1)>
本発明では、上記被塗面あるいは下塗り塗膜の少なくとも一部分に、中塗り塗料(I)を塗装する。このとき、中塗り塗膜の固形分濃度が85質量%未満であることを特徴とするものであり、好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは5〜75質量%の範囲内にあることが望ましい。
【0024】
工程(1)で用いられる中塗り塗料(I)としては、後述の中塗り塗料(II)による塗膜との色差ΔEが7以上、好ましくは10以上の塗膜を形成するものであれば、特に制限はなく、上記下塗り塗料(I)の説明で例示した塗料と同様の塗料を用いることができる。
【0025】
上記色差ΔEが7未満であると、本発明方法で最終的に得られる意匠性塗膜の立体感及びぼかし感が不十分であり、好ましくない。
【0026】
本発明において中塗り塗料(I)による塗膜は塗膜の固形分濃度が85質量%未満となる未硬化状態であることが特徴であるが、本明細書において色差ΔEは、隠蔽膜厚となるように塗装した試料を23℃1週間乾燥させたものを試験片とする。これをコニカミノルタ社製のCR−400(商品名、色彩色差計)を使用して測色し、L表色系における数値で定義するものとする。
【0027】
尚、ΔE=(ΔL+Δa+Δb2)2で表される値であり、値が大きいほど目視したときの色の違いが著しい。
【0028】
また、中塗り塗料(I)による塗膜の固形分が85質量%以上となるような乾燥状態で次の工程を行うと、中塗り塗料(I)による塗膜と後述の中塗り塗料(II)を用いた塗装によるぼかし具合が単調となり、本発明方法で得られる意匠性塗膜の立体感や多彩感が不十分となり、好ましくない。
【0029】
工程(1)において中塗り塗料(I)の塗装は、次工程前の乾燥状態が本発明範囲内にある限り、既知の塗装器具を用いて行うことができる。具体的には、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーターなどの塗装器具を被塗物の形状や塗装環境などに応じて適宜選択することができる。
【0030】
また、工程(1)の塗装に使用される器具がローラーであり、該ローラーが具備する円筒形状のローラースポンジが、円筒形外側面に凹部空間を有するものであることが望ましい。かかる特定のローラースポンジを使用することによって、本発明で最終的に得られる意匠性塗膜の立体感と多彩感に優れ、バリエーションに富んだ外観とすることができる。
【0031】
ローラースポンジの円筒形外側面が有する凹部空間の数や大きさとしては、制限はなく目的とするぼかし調模様によって適宜調整できるものであるが、一般にローラースポンジ1個あたり3〜30個、好ましくは5〜20個、凹部空間1個の大きさとしてはローラー軸と同方向に1〜8cm、好ましくは2〜6cm、ローラー軸と垂直方向に0.5〜5cm、好ましくは0.5〜3cm、深さが0.5〜4cm、好ましくは1〜2cmの範囲内にあることが適している。
【0032】
凹部空間の形状としては立方体状、円柱状、円錐状、多角柱状、多角錘状等の定形であっても、ランダムな不定形であってもよく、大きさ及び形状が統一されたものであっても適宜組み合わされたものであってもよい。
【0033】
また、本発明方法において、被塗面が下塗り塗料(I)により覆われている場合、ぼかし調模様を形成するための1ステップである工程(1)において中塗り塗料(I)は、目的とするぼかし調模様によっては下塗り塗料(I)による下塗り塗膜全体を塗装してもよいし、あるいは下塗り塗膜の少なくとも1部分を塗装してもよい。
【0034】
<工程(2)>
次に、工程(2)で得られた塗板上の少なくとも一部分に、中塗り塗料(I)による塗膜と色差ΔEが7以上、好ましくは10以上の塗膜を形成する中塗り塗料(II)を押圧具を用いて塗装し乾燥させることによりぼかし調模様塗膜を形成する。
【0035】
かかる中塗り塗料(II)としては、下塗り塗料(I)の説明で例示した塗料の中から適宜選択して使用することができる。また、下塗り塗料(I)による下塗り塗膜が設けられている場合、中塗り塗料(I)による塗膜と中塗り塗料(II)による塗膜との色差ΔEが7以上であれば工程(2)における中塗り塗料(II)と下塗り塗料(I)が同一のものであってもよい。
【0036】
工程(2)の塗装に用いられる塗装器具としてはローラー、ハケなどの押圧具である。かかる塗装器具を使用することによって、工程(1)で形成された中塗り塗膜(I)と中塗り塗料(II)とが適度に交じり合って、中塗り塗料(I)による色と中塗り塗料(II)による色が混ざり合った部分を有するぼかし調の模様を形成することができる。
【0037】
尚、工程(2)の塗装は、目的とするぼかし調模様によって、工程(1)で得られた塗板全体に渡って行っても部分的に行ってもよく、適宜選択することができる。
【0038】
形成される中塗り塗膜は、未硬化でも乾燥させてもよいが、乾燥させる場合は用いた中塗り塗料(II)の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができるが、例えば次の工程である工程(3)の段階において、中塗り塗膜の固形分濃度が85%以上、特に90%以上にあることが望ましい。
【0039】
上記のようにして得られるぼかし調模様は、中塗り塗料(I)の色に偏った部分と、中塗り塗料(II)に偏った部分と、その間の部分を色味が段階的に移行したグラデーション部分を有するものである。
【0040】
かかるぼかし調模様は、平面的ではなく、深みと独創性を有する外観であり、また、中塗り塗料(I)及び(II)の種類や乾燥状態、使用する塗装器具の種類、押圧具に含ませる中塗り塗料(II)の量、押圧具に中塗り塗料(II)を含ませる頻度などによってバリエーションに富んだものとすることができる。
【0041】
<工程(3)>
工程(3)では工程(2)で得られたぼかし調模様塗膜を有する塗板上に、着色塗料粒子入り塗料(III)を塗装して乾燥させる。
【0042】
工程(3)で着色塗料粒子入り塗料(III)を塗装することで、工程(2)で得られた塗膜がぼかし調であるのに対し、工程(3)で得られる着色塗料粒子による模様が斑点状であるので、その対比が明確になり、着色塗料粒子による模様がよりぼかし調塗膜から浮き出たように見え、本発明で得られる意匠性塗膜の立体感と多彩感がより一層向上する。
【0043】
工程(3)で用いられる着色塗料粒子入り塗料(III)としては、一回の塗装で二色以上の多彩な模様の多彩模様塗膜を得ることができる多彩模様塗料(例えばJIS K 5667(2003)多彩模様塗料 参照)であれば好適に用いることができ、製法、材料など特に制限されるものではないが、例えば、着色塗料粒子による模様粒子の立体感の観点から、カルボキシル基を必須としてそれ以外の官能基を有する水性樹脂(a1)及び着色剤(a2)を含有する着色塗料粒子成分(A)、並びにカルボキシル基を必須としてそれ以外の官能基を有する水性樹脂(b1)及び多価金属化合物(b2)を含有する塗膜形成成分(B)を含有してなり、該多価金属化合物(b2)の金属量が塗膜形成成分(B)に含まれる水性樹脂(b1)中のカルボキシル基1当量に対して0.1〜0.9当量の範囲内にある塗料を使用すると、本発明の目的とする立体感や多彩感及び強い独創性に優れた高意匠塗膜を形成することに適している。
【0044】
上記塗料に含まれる着色塗料粒子成分(A)としては、水性樹脂(a1)及び着色剤(a2)を含有してなるものを使用でき、該水性樹脂(a1)は、水に溶解又は分散可能な樹脂が使用されるものであり、その樹脂種としては特に制限されず、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0045】
上記水性樹脂(a1)は、分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。また、該水性樹脂(a1)のカルボキシル基はメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類及びアンモニア等の中和剤で一部又は全部が中和されたものであってもよい。
【0046】
上記水性樹脂(a1)は、着色塗料粒子成分(A)の耐久性、耐候性等の観点から、アクリル系樹脂であることが好ましく、かかるアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリロイル基含有化合物を用いて共重合した樹脂を挙げることができる。
【0047】
該化合物など共重合に用いられるモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0048】
水性樹脂(a1)としては、意匠性塗膜の立体感と多彩感の観点からカルボキシル基を必須として官能基を有する樹脂であることが適している。水性樹脂(a1)がカルボキシル基を有することによって、樹脂(a1)を水性化すると共に該塗膜の耐候性が向上する効果もある。
【0049】
また、カルボキシル基以外の官能基としては例えば、水酸基、イソシアナト基、アミノ基、アミド基、カルボニル基等が挙げられるが、意匠性塗膜の耐候性と着色塗料粒子入り塗料(III)の貯蔵安定性などの観点からカルボニル基であることが望ましい。
【0050】
そのようなカルボニル基とカルボキシル基を有する水性樹脂(a1)としては、例えば、モノマー成分の少なくとも1部として前述の如きカルボニル基含有重合性不飽和モノマー及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用し、その他の重合性不飽和モノマーと共重合することにより製造することができる。かかるカルボニル基含有重合性不飽和モノマー及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、共重合に供される重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして、通常カルボニル基含有重合性不飽和モノマーが0.2〜30質量%、好ましくは0.3〜15質量%の範囲内、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーが0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の範囲内にあることができる。
【0051】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、上記モノマーを(共)重合することにより製造することができる。
【0052】
使用される乳化剤としては、それ自体既知の乳化剤を使用することができ、適用可能な乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤が挙げられ、また、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基の両者を分子中に含有する反応性乳化剤などを使用することもでき、その使用量は、重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして通常0.5〜6質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲内であることができる。
【0053】
上記着色塗料粒子成分(A)に含まれ得る着色剤(a2)としては、着色顔料、光輝性顔料及び蛍光材等を例示することができる。着色顔料としては、例えば、二酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料などを挙げることができ、光輝性顔料としては、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記白色顔料としての二酸化チタンには、平均粒子径が10〜80nmのマイクロチタンや光触媒活性を有するアナターゼ型二酸化チタン等の機能性二酸化チタンも包含される。
【0054】
蛍光材としては蛍光性または蓄光性の顔料および染料を挙げることができ、例えば、ジフェニルエチレン系、オキサゾール系、チアゾール系、イミダゾール系、トリアゾール系、ピラゾール系、フラン系、チオフェン系、ペリジカルボン酸アミド系、クマリン系の有機系化合物;硫化亜鉛、ストロンチウムアルミネート、カルシウムアルミネートなどの金属化合物に、銅、銀、マンガン、ユーロピウム等の金属を添加させた無機系化合物等を挙げることができる。
【0055】
これら着色剤(a2)は、目的とする色彩に応じて単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0056】
また、上記着色塗料粒子成分(A)においては、着色剤(a2)と共に体質顔料を使用することもできる。その具体例としては、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、珪砂、石英粉等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0057】
上記着色剤(a2)の配合量はその種類に応じて適宜調整できるが、一般には水性樹脂(a1)の質量を基準にして、通常0.01〜400質量%、特に0.1〜300質量%の範囲内であることが好適である。
【0058】
上記着色塗料粒子成分(A)としては、水性樹脂(a1)及び着色剤(a2)を含む水性着色塗料が水溶性多糖類金属塩で形成された粒子に内包された成分であることが適しており、例えば、水性樹脂(a1)及び着色剤(a2)を含む水性着色塗料並びに水溶性多糖類(a3)を含む組成物を金属化合物(a4)を含む水性媒体と接触させることにより得ることができる。
【0059】
上記水溶性多糖類(a3)としては、水性媒体中で、一価又は多価の金属イオンと接触したときに水不溶性もしくは難溶性のゲルに変化する能力のある多糖類であり、一般に約3,000〜約2,000,000、好ましくは10,000〜100,000の範囲内の数平均分子量を有し且つ約5.0g/L以上、好ましくは約10.0g/L(25℃)以上の水溶解度を示すものが好適であり、具体的には、例えば、アルギン酸またはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
上記水溶性多糖類(a3)は、着色塗料粒子成分(A)の内包物の流出を抑制してざらつき感が少なく、立体感のある意匠性塗膜を形成でき、また、着色塗料粒子入り塗料(III)をローラー塗装しても多彩感と立体感が良好な塗膜を形成できる点から、水性着色塗料の固形分質量を基準にして0.5〜10質量%、好ましくは0.7〜9.0質量%の範囲内で使用することができる。
【0061】
上記したごとき着色塗料粒子成分(A)を製造するための水性着色塗料は、さらに、必要に応じて、増粘剤、バルーン粒子等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを含有することができる。
【0062】
上記水性着色塗料及び水溶性多糖類(a3)を含む組成物は、金属化合物(a4)を含有する水性媒体と接触すると、組成物中の水溶性多糖類(a3)が水性媒体中の金属化合物(a4)に由来する金属イオンと水に不溶性または難溶性の塩を形成し、水性着色塗料を粒状ゲル化させ着色塗料粒子成分(A)が形成される。
【0063】
上記金属化合物(a4)は、水性媒体中で、水溶性多糖類と水不溶性もしくは難溶性の塩を形成し得る一価又は多価の金属イオンを生成し得る化合物であり、その成分の一部として有機酸金属塩を含むことが望ましい。
【0064】
金属化合物(a4)の一部として有機酸金属塩を使用することによって内包物の流出のない貯蔵安定性に優れ、ローラー塗装でも潰れ難い着色塗料粒子成分(A)を容易に形成でき、また、本発明で得られる塗膜の耐候性などの塗膜物性を良好とすることができる。
【0065】
かかる有機酸金属塩における金属種としては、形成される着色塗料粒子成分(A)の強度などの観点から、多価金属が好適であり、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;チタン、ジルコニウムなどの周期表第4族元素;クロム、モリブデン等の周期表6族元素;マンガン等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素;銅、銀等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素、アルミニウム等の周期表13族元素;セリウム等の周期表16族元素などを挙げることができ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0066】
また、上記多価金属に加えてナトリウム、カリウム等の周期表第1族元素の金属化合物を併用したものであってもよい。
【0067】
上記金属化合物(a3)としては、周期表2族元素、特にカルシウムが好適である。
【0068】
上記有機酸金属塩における有機酸としては、上記例示したごとき金属と塩を形成しうる化合物であれば制限なく使用でき、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸等を例示することができる。中でも、分子量が50〜1000、特に50〜400、さらに特に170〜400の範囲内の有機酸が着色塗料粒子成分(A)の貯蔵安定性などの点から適している。
【0069】
有機酸金属塩として上記した中でも酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、乳酸カルシウムが着色塗料粒子成分(A)の製造安定性、貯蔵安定性の点から適している。
【0070】
また、上記金属化合物(a4)としては、上記有機酸金属塩に加えて金属水酸化物を含有するものであることが望ましい。これにより、着色塗料粒子成分(A)の貯蔵安定性、製造安定性に加えて本発明で得られる塗膜のざらつき感が少なくなると共に、塗膜の多彩感と立体感を良好なものとすることができる。
【0071】
このような目的で使用される金属化合物(a4)の金属の具体例としては上述したものに加え、周期表1族元素に属するアルカリ金属類を挙げることができる。
【0072】
上記金属化合物(a4)において、有機酸金属塩と金属水酸化物を併用する場合、その使用割合は、着色塗料粒子成分(A)の貯蔵安定性と、意匠性塗膜の立体感と多彩感が良好であることから、有機酸金属塩/金属水酸化物のモル比で、一般に99/1〜10/90、特に90/10〜15/85の範囲内にあることが適している。
【0073】
上記金属化合物(a4)は、水などの水性媒体中にその少なくとも一部を溶解させることにより金属イオンを含有する水性媒体を調製することができる。その際、金属化合物(a4)は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。
【0074】
水性媒体中における金属化合物(a4)の濃度は厳密に制限されるものではないが、通常0.05〜20質量%、好ましくは0.05〜15質量%の範囲内であることができる。
【0075】
上記水性媒体は、着色塗料粒子成分(A)の貯蔵安定性および製造安定性の点から、pHを4.0〜13.7、好ましくは7.0〜13.5の範囲内に調整されることが好ましい。
【0076】
上記水性着色塗料と水溶性多糖類(a3)を含む組成物と、金属化合物(a4)由来の金属イオンを含有する水性媒体との接触は、例えば、注射器の先端から該組成物を水性媒体中に滴下する方法;該組成物を遠心力を利用して飛散させ、水性媒体中に滴下する方法;スプレーノズルの先端から該組成物を霧化させ、水性媒体中に滴下する方法;該組成物を水性媒体中に加え、分散機で攪拌混合する方法などの方法により行うことができる。
【0077】
上記着色塗料粒子成分(A)の製造において、上記組成物と水性媒体は、組成物中に含まれる水溶性多糖類(a3)由来のカルボキシル基1当量に対して、水性媒体に含まれる金属化合物(a4)の金属量が1.5当量以下、特に0.2以上で且つ1.0当量未満の範囲内にあることが、着色塗料粒子成分(A)の貯蔵安定性の点と意匠性塗膜の立体感と多彩感が良好である点から好ましい。
【0078】
以上に述べた着色塗料粒子成分(A)は、単数色または複数色の着色塗料粒子を含むものであることができ、複数色である場合の組み合わせも目的とする意匠に応じて適宜選択することができる。
【0079】
本発明に使用される着色塗料粒子入り塗料(III)としての上記塗料は、形成される塗膜の耐候性等の塗膜物性に点から着色塗料粒子成分(A)に加えて塗膜形成成分(B)を含有することが望ましい。
【0080】
塗膜形成成分(B)は、それ自体成膜性を有するものであり、意匠性塗膜の耐候性、多彩感および立体感の点から、カルボキシル基を必須としそれ以外の官能基を有する水性樹脂(b1)及び多価金属化合物(b2)を含んでなるものを使用することが適している。
【0081】
上記塗膜形成成分(B)に含まれる水性樹脂(b1)としては、水性塗料分野において樹脂バインダーとして一般に使用されるものを使用することができ、例えば、着色塗料粒子成分(A)における水性樹脂(a1)として前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
【0082】
水性樹脂(b1)がカルボキシル基を有することによって樹脂(b1)を水性化すると共に意匠性塗膜の耐候性が向上する効果がある。
【0083】
上記塗膜形成成分(B)に含まれる水性樹脂(b1)としては、加水分解性シリル基を有する樹脂であることが塗膜の耐候性の観点から適している。
【0084】
特に水性樹脂(b1)は、加水分解性シリル基、カルボニル基及びカルボキシル基を含有する樹脂であることが適しており、そのような加水分解性シリル基、カルボニル基及びカルボキシル基含有樹脂は、例えば、モノマー成分の少なくとも1部として前述の如き加水分解性シリル基含有重合性不飽和モノマー、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用し、必要に応じてその他の重合性不飽和モノマーと共重合することにより製造することができる。
【0085】
かかる加水分解性シリル基含有重合性不飽和モノマー、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、共重合に供される重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして、通常加水分解性シリル基含有重合性不飽和モノマーが、0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%の範囲内、カルボニル基含有重合性不飽和モノマーが0.2〜30質量%、好ましくは0.3〜15質量%の範囲内、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーが0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の範囲内にあることが塗膜の耐候性と貯蔵安定性の点から適している。
【0086】
また、上記共重合の際には相異なるモノマー成分を多段階に分けて重合を行い樹脂をコア・シェル型等の多層状とすることによって、塗膜の耐候性を向上する効果がある。
【0087】
本発明方法において、着色塗料粒子入り塗料(III)として上記塗料を使用した場合、最終的に形成される意匠性塗膜の長期の耐候性、耐水性等の点から、着色塗料粒子成分(A)と塗膜形成成分(B)は、互いに反応し得るものであることが適している。具体的には、着色塗料粒子成分(A)及び/又は塗膜形成成分(B)が前記水性樹脂(a1)及び前記水性樹脂(b1)に含まれる官能基と反応し得る官能基を一分子中に2個以上有する化合物を含有することが適している。
【0088】
上記水性樹脂(a1)及び水性樹脂(b1)に含まれる官能基と上記化合物に含まれる官能基の組み合わせとしては、相互に反応し得る組み合わせであれば特に制限されるものではなく、具体的には、例えば、水酸基とイソシアネート基、水酸基とアルキルエーテル基、水酸基とイミノ基、アミノ基とエポキシ基、アミド基とエポキシ基、酸基とエポキシ基、酸基とヒドロキシアルキルアミド基、カルボニル基とヒドラジン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボニル基とセミカルバジド基、及びカルボニル基とビスアセチルジヒドラゾン基等の組み合わせが挙げられ、特に、カルボニル基とヒドラジド基の組み合わせであると、常温一液架橋することができ、好適である。
【0089】
上記着色塗料粒子入り塗料(III)としての塗料では、水性樹脂(a1)及び水性樹脂(b1)が共にカルボキシル基とカルボニル基を含有するものであり、着色塗料粒子成分(A)及び/又は塗膜形成成分(B)が、架橋剤としてヒドラジン誘導体を含有することが望ましく、水性樹脂(b1)が加水分解性シリル基、カルボニル基及びカルボキシル基を有していることが意匠性塗膜の耐候性、模様の立体感と多彩感の点から望ましい。
【0090】
着色塗料粒子成分(A)又は塗膜形成成分(B)に含まれ得るカルボニル基と反応するためのヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド等;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0091】
上記塗膜形成成分(B)は多価金属化合物(b2)を含有することが望ましい。多価金属化合物(b2)によって、意匠性塗膜の多彩感と立体感の向上効果がある。
【0092】
多価金属化合物(b2)としては、上記水性樹脂(b1)に含まれるカルボキシル基と金属架橋が可能な化合物を使用でき、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;チタン、ジルコニウム等の周期表第4族元素;クロム、モリブデン等の周期表6族元素;マンガン等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素;銅、銀等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素、アルミニウム等の周期表13族元素;セリウム等の周期表16族元素などの金属元素の化合物を挙げることができ、中でも、周期表2族元素、特にカルシウムの化合物が好適である。
【0093】
上記多価金属化合物(b2)としては、有機酸金属塩、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩等が望ましい。
【0094】
上記多価金属化合物(b2)がその成分の一部として有機酸金属塩を含むことが意匠性塗膜の耐候性を向上させるとともに模様の立体感と多彩感の点から適している。
【0095】
上記有機酸金属塩における有機酸としては、着色塗料粒子成分(A)における金属化合物(a4)の説明で例示した化合物の中から適宜選択して使用することができる。
【0096】
上記多価金属化合物(b2)の使用量としては、塗膜形成成分(B)に含まれる水性樹脂(b1)中のカルボキシル基1当量に対して0.1〜0.9当量の範囲内、好ましくは0.15〜0.8当量、更に特に0.15〜0.5当量の範囲内にあることが意匠性塗膜の立体感と多彩感の点から適している。
【0097】
上記塗膜形成成分(B)には、必要に応じて体質顔料や塗料用添加剤を含ませることができ、該塗料用添加剤としては、増粘剤、樹脂ビーズ、中和剤、帯電防止剤、軟化剤、抗菌剤、香料、硬化触媒、pH調整剤、調湿剤、粉状もしくは微粒子状の活性炭、光触媒酸化チタン、水性撥水剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、硬化促進剤、アルデヒド吸着剤、ワックス、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などが挙げられる。
【0098】
これらのうち増粘剤としては、それ自体既知のものを制限なく使用することができ、その具体例としては、例えば、水溶性ケイ酸アルカリ、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系化合物;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体系化合物;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系化合物;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルアルコール共重合物等のポリビニル系化合物;カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質誘導体;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステル−無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0099】
中でも増粘剤としてポリアクリル酸系化合物を使用すると、意匠性塗膜の耐候性と模様の立体感と多彩感が向上し、適している。
【0100】
該増粘剤の使用量は、上記着色塗料粒子入り塗料の固形分質量を基準にして、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%の範囲内であることができる。
【0101】
また、塗膜形成成分(B)は、形成される模様塗膜の適度な艶消し感と立体感と長期の耐候性の観点から樹脂ビーズを含むことが適している。
【0102】
かかる樹脂ビーズとしては、例えばアクリル樹脂ビーズ、ポリスチレン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ、ポリプロピレン樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ 、シリコン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズ、ポリエステル樹脂ビーズ 、ポリアミド樹脂ビーズ 、ナイロン樹脂ビーズなどが挙げられる。
【0103】
上記樹脂ビーズの配合量は、塗膜形成成分(B)固形分を基準として1〜100質量%、好ましくは5〜50質量%の範囲内であることが好適である。
【0104】
上記の通り得られる着色塗料粒子成分(A)と塗膜形成成分(B)の配合割合は、得られる多彩模様塗膜の意匠性、耐候性の点から、着色塗料粒子成分(A)/塗膜形成成分(B)の固形分質量比で、1/99〜60/40、好ましくは10/90〜50/50の範囲内にすることができる。
【0105】
上記着色塗料粒子入り塗料(III)としての塗料は、上記着色塗料粒子成分(A)と塗膜形成成分(B)を混合することにより容易に製造することができ、両者混合の際には通常塗料分野で使用される添加剤、水などを必要に応じて配合したものであってもよい。
【0106】
本発明において、上記に述べた塗料を一例とする着色塗料粒子入り塗料(III)は、それ自体既知の塗装手段を用いて塗装を行うことができ、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーターなど基材の用途等に応じて適宜選択することができる。
【0107】
特にローラー、ハケなどの押圧具を用いて塗装をすると、着色塗料粒子による模様の多彩感を損なうことなく立体感を発揮でき、効果的である。
【0108】
尚、工程(4)の塗装は、目的とする意匠によって、工程(3)で得られた塗板全体に渡って行っても部分的に行ってもよく、適宜選択することができる。
【0109】
形成される多彩模様塗膜の乾燥は、用いた着色塗料粒子入り塗料(III)の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
下塗り塗料(I):「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E19−80Fに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ベージュ系塗色)を用いた。
ここで、日塗工色票番号とは社団法人日本塗料工業会が発行する塗料用標準色に記載されたコードを示す。
中塗り塗料(I−1):「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E07−80Hに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ピンク系塗色)を用いた。
中塗り塗料(I−2):「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E49−70Hに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、緑系塗色)を用いた。
中塗り塗料(I−3):「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E19−85Fに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ベージュ系塗色)を用いた。
中塗り塗料(II−1):「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E19−80Fに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ベージュ系塗色、上記下塗り塗料(I)に同じ)を用いた。
水性多彩模様塗料(III−1)〜(III−4)については以下に説明する。
【0111】
<多彩模様塗料用のエマルションの製造>
製造例1
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部とをそれぞれ添加し、添加終了20分後から、残りのプレエマルションと過硫酸アンモニウム水溶液を4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 413部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 25部
アクリル酸 5部
「ニューコール707SF」(注1) 66部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(a1)を得た。エマルション(a1)の平均粒子径は175nm、pHは8.3であった。
(注1) 「ニューコール707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%。
【0112】
製造例2
容量3リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水400部及び「ニューコール707SF」(注1)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルション(コア用)の3%分と、過硫酸アンモニウム5部を脱イオン水100部に溶解させた開始剤水溶液105部の25%分をそれぞれ添加し、添加終了20分後から、残りのプレエマルション(コア用)と過硫酸アンモニウム水溶液の50%分を3時間かけてフラスコに滴下した。
<プレエマルション組成(コア用)>
脱イオン水 300部
スチレン 100部
メチルメタクリレート 250部
n−ブチルアクリレート 230部
2−エチルヘキシルアクリレート 100部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 13部
ビニルトリエトキシシラン 6部
アクリル酸 1部
「ニューコール707SF」(注1) 46部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃で熟成を行った後、下記組成をエマルション化してなるプレエマルション(シェル用)及び上記過硫酸アンモニウム水溶液の25%分を2時間かけて滴下した。
<プレエマルション組成(シェル用)>
脱イオン水 200部
スチレン 41部
メチルメタクリレート 176部
n−ブチルアクリレート 41部
2−エチルヘキシルアクリレート 15部
ダイアセトンアクリルアミド 15部
ヒドロキシエチルアクリレート 6部
ビニルトリエトキシシラン 2部
アクリル酸 4部
「ニューコール707SF」(注1) 20部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が50%のコアシェルエマルション(a2)を得た。エマルション(a2)の平均粒子径は190nm、pHは8.6であった。
【0113】
<白顔料ペーストの製造>
製造例3
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、白顔料ペーストを得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「TITANIX JR−605」(注5) 500部
(注2)「スラオフ72N」:商品名、武田薬品工業(株)製、防腐剤、
(注3)「DISPER BYK−190」:商品名、BYKケミー社製、顔料分散剤、
(注4)「SNデフォーマー380」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤、
(注5)「TITANIX JR−605」:商品名、テイカ社製、チタン白。
【0114】
<赤錆顔料ペーストの製造>
製造例4
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて60分間攪拌混合することにより、赤錆顔料ペーストを得た。
水 400部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 48部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
酸化鉄 240部。
【0115】
<着色塗料粒子用水性塗料組成物(白)の製造>
製造例5
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、着色塗料粒子用水性塗料組成物(白)を得た。
55%エマルション(a1) 250部
白顔料ペースト 154部
「TEXANOL」(注6) 20部
「SNデフォーマー380」(注4) 2部
「SNシックナー612」(注7) 2部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 280部
(注6)「TEXANOL」:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤、
(注7)「SNシックナー612」:商品名、サンノプコ社製、ポリウレタンポリエーテル系粘性調整剤。
【0116】
<着色塗料粒子用水性塗料組成物(赤錆)の製造>
製造例6
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、着色塗料粒子用水性塗料組成物(赤錆)を得た。
55%エマルション(a1) 250部
赤錆顔料ペースト 276部
「TEXANOL」(注6) 20部
「SNデフォーマー380」(注4) 2部
「SNシックナー612」(注7) 2部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 280部。
【0117】
<着色塗料粒子製造用水性媒体の製造>
製造例7
4リットルステンレス容器に、プロピオン酸カルシウム4.0部、水酸化カルシウム3.0部、脱イオン水2,000部を仕込み、均一になるまで攪拌することで、カルシウム化合物を含有する水性媒体を製造した。
【0118】
<着色塗料粒子の製造>
製造例8
4リットルステンレス容器に、上記製造例7で得られたカルシウム化合物を含有する水性媒体を1,300部仕込み、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転数2,000rpmで攪拌しながら、上記製造例5で得られた水性塗料組成物(白)650部を徐々に容器内に滴下し、白色の着色塗料粒子を生成させた。次いで容器内液を同回転速度でさらに15分攪拌した後、200メッシュの金網を用いて濾別し、白色の着色塗料粒子(A−1)を得た。得られた着色塗料粒子(A−1)は、固形分が20%であった。アルギン酸ナトリウム由来のカルボキシル基1当量に対する水性媒体中に含まれるカルシウム化合物の合計の当量比は0.9である。ここでアルギン酸ナトリウムの分子量は90000とする。
【0119】
製造例9
上記製造例8において、滴下する水性塗料組成物を水性塗料組成物(白)650部に替えて水性塗料組成物(赤錆)とする以外は上記製造例8と同様にして赤錆色の着色塗料粒子(A−2)を製造した。アルギン酸ナトリウム由来のカルボキシル基1当量に対する水性媒体中に含まれるカルシウム化合物の合計の当量比は0.9である。
【0120】
<塗膜形成成分用水性クリヤー塗料の製造>
製造例10
2リットルのステレンス容器に下記の成分を順次仕込み、攪拌機にて30分間均一になるまで攪拌混合することにより、水性クリヤー塗料を得た。
55%エマルション(a1) 825部
「TEXANOL」(注6) 50部
「BYK−028」(注8) 10部
「プライマルASE60」(注9) 3部
「SNシックナー612」(注7) 1部
「MBX−15」(注10) 75部
プロピオン酸カルシウム 0.9部
(注8)「BYK−028」:商品名、ビックケミー社製、消泡剤、
(注9)「プライマルASE60」:商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系粘性調整剤。
(注10)「MBX−15」:商品名、積水化成品工業社製、メタクリル酸メチル樹脂ビーズ、平均粒子径15μm。
【0121】
<水性多彩模様塗料の製造>
製造例11
500ミリリットルのステンレス容器に、製造例10で得られた水性クリヤー塗料180部、10%アジピン酸ジヒドラジド水溶液2.5部、白色の着色塗料粒子成分(A−1)145部、赤錆色の着色塗料粒子成分(A−2)30部、「SNシックナー612」(注7)を0.2部を順次攪拌しながら仕込み、その後、攪拌することにより、水性多彩模様塗料(III−1)を製造した。
製造例12
上記製造例11において、製造例10記載の水性クリヤー塗料に含まれる「プライマルASE60」(注9)3部を「SNシックナー612」3部に置き換えた水性クリヤー塗料を用いる以外は上記製造例11と同様にして水性多彩模様塗料(III−2)を得た。
製造例13
上記製造例11において、製造例10記載の水性クリヤー塗料に含まれるプロピオン酸カルシウム配合量を0部として、プロピオン酸カルシウムを含まない水性クリヤー塗料を用いる以外は上記製造例11と同様にして水性多彩模様塗料(III−3)を得た。
製造例14
上記製造例11において、製造例10記載の水性クリヤー塗料に含まれるプロピオン酸カルシウム配合量を0.9部から3.6部に変更する水性クリヤー塗料を用いる以外は上記製造例11と同様にして水性多彩模様塗料(III−4)を得た。
【0122】
<ぼかし調模様塗板の作成>
製造例15
スレート板(600×900×3mm)上に、「EPシーラー透明」(関西ペイント社製、水系アクリルエマルション系シーラー)をスレート板全体に渡ってローラー塗装し乾燥させた後、下塗り塗料(I)として「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E19−80Fに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ベージュ系塗色)をローラーで全面を平均的に塗装し、気温20℃で1日間乾燥させた。このときの塗膜の固形分濃度は98%であった。
【0123】
次いで中塗り塗料(I−1)として「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E07−80Hに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ピンク系塗色)をローラーで全面を平均的に塗装し、気温20℃で5分間乾燥させた。次の工程直前のこの塗膜の固形分濃度は73%であった。
【0124】
次に中塗り塗料(II−1)として、「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E19−80Fに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ベージュ系塗色)をローラースポンジに時々含ませながら塗装し、固形分濃度が98%程度に乾燥させて、ぼかし調模様塗板(X−1)を得た。塗板(X−1)では、ベージュ塗色にピンク塗色が滲んだぼかし調模様であって、中塗り塗料(II−1)の塗布具合によってベージュ色に偏った部分、ピンク色に偏った部分、ベージュとピンクの色がグラデーション状に移行した色の部分を有する、様々な色と模様が混在したバリエーションに富んだ外観であった。
【0125】
尚、中塗り塗料(I−1)と下塗り塗料(I)、中塗り塗料(I−1)と中塗り塗料(II−1)から形成される塗膜の色差ΔEは共に12であった。
【0126】
製造例16
上記製造例15において中塗り塗料(I−1)の塗膜の固形分濃度が65%となるように乾燥する以外は上記製造例15と同様にしてぼかし調模様塗板(X−2)を得た。塗板(X−2)では、ベージュ塗色にピンク塗色が滲んだぼかし調模様であって、中塗り塗料(II−1)の塗布具合によってベージュ色に偏った部分、ピンク色に偏った部分、ベージュとピンクの色がグラデーション状に移行した色の部分を有する、様々な色と模様が混在したバリエーションに富んだ外観であった。
【0127】
製造例17
上記製造例15において中塗り塗料を(I−1)から(I−2)にする以外は上記製造例15と同様にしてぼかし調模様の塗板(X−3)を得た。尚、中塗り塗料(I−2)と下塗り塗料(I)、中塗り塗料(I−2)と中塗り塗料(II−1)から形成される塗膜の色差ΔEは共に30であった。
【0128】
塗板(X−1)では、ベージュ塗色に緑塗色が滲んだぼかし調模様であって、中塗り塗料(II−1)の塗布具合によってベージュ色に偏った部分、緑色に偏った部分、ベージュと緑の色がグラデーション状に移行した色の部分を有する、様々な色と模様が混在したバリエーションに富んだ外観であった。
【0129】
製造例18
ローラー幅が9cm、外直径が5cmのローラースポンジに穴あけ加工を施した塗装用ローラーを用意した。該ローラーの穴の数は13個、穴の大きさは、ローラー軸方向長さは約3cm、ローラー軸垂直方向長さは約1.5cm、深さは約1.5cmである。
【0130】
上記製造例15において、ベージュの下塗り塗料(I)を塗装後に、ピンクの中塗り塗料(I−1)の塗装を上記ところどころに穴があいたローラースポンジを用いて行ったところ、中塗り塗料(I−1)の塗装終了後はピンク地にローラースポンジの穴と同じような形状、大きさのベージュの模様がところどころにある外観となっていた。ピンク部分の固形分濃度が73%となるまで乾燥した後、中塗り塗料(II−1)として「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E19−80Fに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ベージュ系塗色)をローラースポンジに時々含ませながらローラーで全面塗装し、固形分濃度が98%となるようになるまで乾燥させて、ぼかし調模様の塗板(X−4)を得た。
【0131】
塗板(X−4)では、ベージュ塗色にピンク塗色が滲んだぼかし調模様であって、中塗り塗料(II−1)の塗布具合によってベージュ色に偏った部分、ピンク色に偏った部分、ベージュとピンクの色がグラデーション状に移行した色の部分を有し、さらに、ローラースポンジの穴の形のベージュ色が散在した、様々な色と模様が混在したバリエーションに富んだ外観であった。
【0132】
製造例19
スレート板(600mm×900mm×3mm)上に、「EPシーラー透明」(関西ペイント社製、水系アクリルエマルション系シーラー)をスレート板全体に渡ってローラー塗装し乾燥させた後、下塗り塗料(I)として「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E19−80Fに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ベージュ系塗色)をローラーで全面塗装し、気温20℃で1日間乾燥させた。このときの塗膜の固形分濃度は98%であった。
【0133】
次いで中塗り塗料(I−1)として「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E07−80Hに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ピンク系塗色)を万能ガンで直径が10mm程度の斑点状に塗装し、気温20℃で4分間乾燥させた。次の工程直前のこの塗膜の斑点部分の固形分濃度は73%であった。
【0134】
次に中塗り塗料(II−1)として、「アレスアクアグロスを日塗工色票番号E19−80Fに着色した塗料」(関西ペイント社製、商品名、アクリルエマルション系、ベージュ系塗色)をローラースポンジに時々含ませながらローラーで全面塗装し、固形分濃度が98%となるようになるまで乾燥させて、ぼかし調模様の塗板(X−5)を得た。
【0135】
塗板(X−5)では、ベージュ地に斑点状のピンク塗色が所々滲んだ模様が混在しており、中塗り塗料(II−1)の塗布具合によってベージュ色に偏った部分、ピンク色に偏った部分、ベージュとピンクの色がグラデーション状に移行した色の部分を有し、さらに、境界部分が滲んだピンク色の斑点が散在した、様々な色と模様が混在したバリエーションに富んだ外観であった。
【0136】
尚、中塗り塗料(I−1)と下塗り塗料(I)、中塗り塗料(I−1)と中塗り塗料(II−1)の色差ΔEは共に12であった。
【0137】
製造例20(比較例用)
上記製造例15において、中塗り塗料(I−1)の乾燥を中塗り塗膜の固形分濃度が87%となるようにする以外は上記製造例15と同様にして塗板(X−6)を得た。この塗板はベージュ〜ピンクのぼかし調模様が乏しく、外観は単調なベージュ塗色であった。
【0138】
製造例21(比較例用)
上記製造例15において、中塗り塗料(I−1)に替えて、中塗り塗料(I−3)を用いる以外は製造例15と同様にして塗板(X−7)を得た。尚、中塗り塗料(I−3)と下塗り塗料(I)、中塗り塗料(I−3)と中塗り塗料(II−1)から形成される塗膜の色差ΔEは共に5であった。
【0139】
<意匠性塗板の作成>
実施例1
上記製造例15で得られた塗板(X−1)に、水性多彩模様塗料(III−1)をローラーで全面塗装して乾燥し、意匠性塗板(Y−1)を得た。
【0140】
実施例2〜9及び比較例1〜3
実施例1において、中塗り塗板、水性多彩模様塗料、塗装器具の組み合わせを下記表1とする以外は上記実施例1と同様にして意匠性塗板(Y−2)〜(Y−12)を得た。
【0141】
<外観評価>
上記実施例及び比較例で得られた各意匠性塗板の外観を下記基準で目視評価した。尚表中「穴あきローラー」は製造例18の中塗り塗料(I−1)塗装に使用したローラーであり、「ローラー」は、穴などの加工をする前のローラーである。
【0142】
【表1】

【0143】
(*1)ぼかし感
◎:ぼかし感が非常に優れており、3m離れた所からでも認識できる。
○:ぼかし感が優れており、3m離れたところで認識できないが1m離れた所からは認識できる。
△:ぼかし感が乏しく、1m離れたところで認識できないが50cm離れたところからは認識できる。
×:ぼかし感がなく、単調であり、50cm離れたところでも認識できない。
【0144】
(*2)模様の立体感
◎:塗板から着色塗料粒子による模様が浮き出てみえて立体感に優れる、
〇:着色塗料粒子による模様に立体感が認められる、
△:着色塗料粒子による模様の立体感が認められるものの不足、
×:着色塗料粒子による模様が平面的。
【0145】
(*3)模様の多彩感
◎:着色塗料粒子による模様の多彩感が非常に良好、
○:着色塗料粒子による模様の多彩感が良好、
△:着色塗料粒子による模様の多彩感がやや不良、
×:着色塗料粒子による模様の多彩感が劣る。
(*4)意匠性
○:ぼかし感、立体感、華やかさが融合し、非常に独創的である、
×:ぼかし感、立体感、華やかさのいずれかが不十分であり平凡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗面の少なくとも一部分に、中塗り塗料(I)を塗装して、中塗り塗膜の固形分が85質量%未満となるように乾燥させる工程(1)、工程(1)で得られた塗板上の少なくとも一部分に、中塗り塗料(I)による塗膜との色差ΔEが7以上の塗膜を形成する中塗り塗料(II)を押圧具を用いて塗装し乾燥させることによりぼかし調模様塗膜を形成する工程(2)、工程(2)で得られたぼかし調模様塗膜を有する塗板上に、着色塗料粒子入り塗料(III)を塗装して乾燥させる工程(4)を含むことを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
被塗面に下塗り塗料を塗装し、乾燥させて下塗り塗膜を形成する工程をさらに含む請求項1記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
工程(2)における中塗り塗料(II)として、下塗り塗料を使用する請求項2に記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
着色塗料粒子入り塗料(III)が、カルボキシル基を必須としてそれ以外の官能基を有する水性樹脂(a1)及び着色剤(a2)を含有する着色塗料粒子成分(A)、並びにカルボキシル基を必須としてそれ以外の官能基を有する水性樹脂(b1)及び多価金属化合物(b2)を含有する塗膜形成成分(B)を含有してなり、該多価金属化合物(b2)の金属量が塗膜形成成分(B)に含まれる水性樹脂(b1)中のカルボキシル基1当量に対して0.1〜0.9当量の範囲内にある請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法により得られる高意匠性塗装物品。

【公開番号】特開2013−99725(P2013−99725A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245371(P2011−245371)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】