説明

感光体ドラムおよび画像形成装置

【課題】 当該感光体ドラムの持つ基本機能に加え、感光体ドラムに加わる加速度、温度、湿度等の物理量を測定する機能を兼ね備えることができる。
【解決手段】 感光体ドラム142には、ワイヤレスの加速度センサ50が設けられる。この加速度センサ50は、送受信機20と接続するためのリード線が不要で、リード線による接触不良や電気抵抗の増加等の不具合を防止する。加速度センサ50は、感光体ドラム142の加速度を直接測定するから、感光体ドラムの回転状態を直接検出でき、測定精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば画像形成装置に用いて好適な感光体ドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式のコピー機やプリンタ等の画像形成装置は、搬送路に沿って搬送されてくるシートに対し、画像形成手段で形成された画像を転写するものである。この種の装置では、転写に際して感光体ドラムが用いられている。即ち、回転させた感光体ドラムの表面には、レーザビーム等により光走査を行って静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器にて現像されてトナーが付着されることにより、可視像であるトナー像となる。このトナー像は、紙等のシートに2次転写され、定着器にて加圧・加熱され、シート上に画像が形成される。
感光体ドラムの状況を検出する技術として以下の特許文献がある。
特許文献1には、測定した感光体ドラムの回転数に基づき、駆動制御を行う技術が開示され、特許文献2には、回転駆動源近傍に設けた加速度センサにより、異常振動を検知する技術が開示され、さらに特許文献3には、感光体ドラム表面温度や近傍の湿度を測定して、現像バイアス電圧値を制御する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−268457号公報
【特許文献2】特開2002−243532号公報
【特許文献3】特開2004−078088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、感光体ドラムの近傍に配置したセンサ等の電気部品はリード線を介して画像形成装置の制御部に接続されることになる。このように、各リード線を接続するためにコネクタが必要となるため、このコネクタにおいて接触不良が発生したり、リード線に経時劣化等が発生したりして、電気抵抗が増加してしまい、センサからの信号が正確に伝達されなくなる虞があった。
また、感光体ドラムの表面温度を測定するためには、感光体ドラム近傍に温度センサを配置する必要がある。しかし、画像形成装置の小型化傾向やタンデム型画像形成装置の普及により、感光体ドラムの小径化が進んでおり、温度センサ等のセンサを配置するスペースが確保できないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、高い測定精度が維持でき、センサを接続するリード線等の配線が不要になる感光体ドラムおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決するために、本発明が採用する感光体ドラムの構成は、所定の電波信号が供給されると、それをエネルギー源として物理量を検出し、検出した物理量を反映する属性を有した電波信号を生成して出力するワイヤレス測定手段を1個或いは複数個備えることを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記物理量は、当該感光体ドラムに加わる加速度、温度または湿度のうち、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする。
【0007】
上記構成において、前記ワイヤレス測定手段は、電波信号を受信して機械振動を発生させる励振部と、前記励振部が発生した機械振動が伝達されて弾性表面波を発生するとともに、前記弾性表面波の属性が前記物理量によって変化する振動媒体部と、前記弾性表面波を電気信号に変換して電波信号として出力する送信部とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成において、当該感光体ドラムは、円筒状の基材と、前記基材の外周面に形成される感光層と、を具備し、前記ワイヤレス測定手段を、前記基材の内側に設けたことを特徴とする。
【0009】
前述した課題を解決するために、本発明が採用する画像形成装置の構成は、上記記載の感光体ドラムを含んで構成され、搬送路に沿って搬送されるシートに画像を形成する画像形成手段と、前記ワイヤレス測定手段に所定周波数の電波信号を送信すると共に、前記ワイヤレス測定手段から送信される電波信号を受信する送受信手段と、前記送受信手段で受信した前記ワイヤレス測定手段からの電波信号を受けて、当該画像形成装置の制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記構成において、前記物理量が加速度であり、前記制御手段は、送受信手段で受信した前記ワイヤレス測定手段からの電波信号を受けて、当該感光体ドラムの回転状態を検出することを特徴とする。
【0011】
上記において、前記物理量が温度または湿度であり、前記制御手段は、前記送受信手段で受信した前記ワイヤレス測定手段からの電波信号を受けて、前記感光体ドラムの動作状況を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による感光体ドラムは、当該感光体ドラムの持つ基本機能に加え、感光体ドラムに加わる加速度、温度、湿度等の物理量を測定する機能を兼ね備えることができる。
このワイヤレス測定手段は、外部の器機と接続するためのリード線が不要で、リード線による接触不良や電気抵抗の増加等の不具合を防止でき、高精度の測定を行うことができる。しかも、ワイヤレス測定手段で加速度を測定する場合、感光体ドラムの回転状態を直接検出でき、当該感光体ドラム近傍に設けたセンサによって回転状態を検出する場合に比べ、測定精度をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明における実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<A.第1実施形態>
図1は、本発明に係る感光体ドラム142が組み込まれた画像形成装置100の構成を示す図である。以下、本実施形態では、タンデム型のデジタルカラー複写機を画像形成装置100として説明する。
この画像形成装置100は、原稿200の画像を読み取る画像読取部(IIT:Image Input Terminal)110と、画像処理部(IPS:Image Processing System)120と、制御部130と、画像形成部(IOT:Image Output Terminal)140とを有している。
【0014】
ここで、画像処理部120は、画像読取部110や図示しないパーソナルコンピュータ等から出力される画像データ、あるいは電話回線やLAN等を介して送られてくる画像データを一時的に蓄積し、この画像データに所定の画像処理を施すものである。制御部130は、カラー複写機における処理全般を制御すると共に、後述する加速度センサ50からの電波信号を受信して感光体ドラム142を制御するものである。
【0015】
画像形成部140は、前記画像処理部120で所定の画像処理が施された画像データに基づいて画像を出力するものである。この画像形成部140は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の各色に対応した画像形成部141Y,141M,141C,141Kが、水平方向に沿って一定の間隔を隔てて配列されており、この画像形成部141Y,141M,141C,141Kの下方には、これらの画像形成部で順次形成される各色のトナー像を、互いに重ね合わせた状態で転写する無端状の像担持体ベルトとなる中間転写ベルト(中間転写体)148が、矢印B方向に循環移動可能に配設されている。
この画像形成部140において中間転写ベルト148上に多重に転写された各色のトナー像は、給紙トレイ221等から給紙される記録シート201(記録媒体)上に一括して転写された後、定着器155によって記録シート201上に定着され、カラー画像が形成された記録シート201が外部に排出されるようになっている。
【0016】
画像形成装置100の上部には、原稿200を載置するプラテンガラス111が設けられている。画像読取部110は、プラテンガラス111上に載置された原稿200に対して2本の光源112から光を照明し、原稿200からの反射光像を、走査光学系を介してCCDセンサ等からなる画像読取素子113上に走査露光する。この画像読取素子113は、原稿200の色材反射光像を所定のドット密度(例えば、16ドット/mm)で読み取るように構成されている。
【0017】
画像読取部110によって読み取られた原稿200の色材反射光像は、例えば、赤(R),緑(G),青(B)(各8bit)の3色の原稿反射率データとして画像処理装置120に送られる。この画像処理装置120では、原稿200の反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消し、色/移動編集等の所定の画像処理が施される。
【0018】
この画像処理装置120により画像処理が施された画像データは、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)(各8bit)の4色の階調データ(ラスタデータ)に変換される。そして、イエロー色の階調データは、イエロー(Y)色の画像形成部141YのROS(Raster Output Scanner)144Yに送られ、マゼンタ(M)色の階調データは、マゼンタ(M)色の画像形成部141MのROS144Mに送られ、シアン(C)色の階調データは、シアン(C)色の画像形成部141CのROS144Cに送られ、黒(K)色の階調データは、黒(K)色の画像形成部141KのROS144Kに送られる。これらのROS144Y,144M,144C,144Kでは、所定の色の階調データに応じてレーザー光による画像露光が行われる。
【0019】
画像形成部141Y,141M,141C,141Kは、形成される画像の色が異なる以外は、すべて同様に構成されている。以下では、特に区別する必要がない場合には、これらを画像形成部141と総称する。
【0020】
画像形成部141は、矢印A方向に所定の回転速度で回転する感光体ドラム142と、この感光体ドラム142の表面を一様に帯電させる一次帯電用のコロトロン143と、当該感光体ドラム142の表面に各色に対応した画像を露光して静電潜像を形成するROS(:画像露光装置)144と、感光体ドラム142上に形成された静電潜像を現像する現像装置145と、この現像装置145に所定の色のトナーを供給するトナー供給装置146と、クリーニング装置147とから構成される。
【0021】
画像処理装置120からは、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の各画像形成部141Y,141M,141C,141KのROS144Y,144M,144C,144Kに各色の画像データ(ラスタデータ)が順次出力され、これらのROS144Y,144M,144C,144Kから画像データに応じて出射されるレーザービームLBが、それぞれの感光体ドラム142Y,142M,142C,142Kの表面に走査露光されて静電潜像が形成される。感光体ドラム142Y,142M,142C,142Kに形成された静電潜像は、現像装置145Y,145M,145C,145Kによって、それぞれイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の各色のトナー像として現像される。
【0022】
上記各画像形成部141Y,141M,141C,141Kの感光体ドラム142Y,142M,142C,142K上に、順次形成されたイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の各色のトナー像は、各画像形成部141Y,141M,141C,141Kの下方に配置された中間転写ベルト(中間転写体)148上に、1次転写手段としての1次転写コロトロン143Y,143M,143C,143Kによって多重に転写される。この中間転写ベルト148は、ドライブローラ149Aと、各149Bとの間に一定のテンションで掛け回されており、図示しない定速性に優れた専用のモーターによって回転駆動されるドライブローラ149Aにより、矢印B方向に所定の速度で循環駆動される。
【0023】
中間転写ベルト148は、例えば、可撓性を有するポリイミド等の合成樹脂フィルムを帯状に形成し、この帯状に形成された合成樹脂フィルムの両端を溶着等の手段によって接続することにより、無端ベルト状に形成したものが用いられる。
【0024】
中間転写ベルト148上には、イエロー,マゼンタ,シアン,黒の4つの画像形成部141Y,141M,141C,141Kは、上述したように、それぞれイエロー色,マゼンタ色,シアン色,黒色のトナー像が所定のタイミングで順次形成される。
【0025】
一方、記録シート201は、給紙トレイ221から所定のサイズのものが、給紙ローラ222及びシート搬送用のローラ対210を備えたシート搬送路220を介して、1枚ずつ分離されてレジストローラ223まで一旦搬送され、停止される。このように、給紙トレイ221から供給された記録シート201は、所定のタイミングで回転駆動されるレジストローラ223によって中間転写ベルト148上へ送出される。
【0026】
中間転写ベルト148上に多重に転写されたイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の各色のトナー像は、バックアップローラ150に圧接する2次転写ローラ151によって、圧接力及び静電気力で記録シート201上に2次転写される。これら各色のトナー像が転写された記録シート201は、複数個のローラ対210によって定着器155へと搬送される。そして、上記各色のトナー像が転写された記録シート201は、定着器155によって熱及び圧力で定着処理を受け、画像形成装置100の外部に設けられた排出トレイ156上に排出される。
以上がタンデム型のデジタルカラー複写機1の構成および動作である。
【0027】
次に、感光体ドラム142および感光体ドラム142周辺の構成について図2ないし図4を参照しつつ述べる。
まず、本発明に係る感光体ドラム142について、図2に示す感光体ドラム142の縦断面図を参照しつつ説明する。
感光体ドラム142は、円筒状の基材142aと、この基材142aの外周面に形成される感光層142bとを具備し、感光層142bの基材142aの内周面には加速度センサ50が設けられる(図2参照)。
ここで、基材142aは、例えばアルミニウムからなり、感光層142bは、樹脂材料をベースとした有機感光体からなる。基材142aの開口部を施蓋する蓋部のうち、基材142aのほぼ軸線上には歯車(いずれも図示せず)が固着されており、この歯車に駆動モータ142cの駆動歯車が連結させる。駆動モータ142cの回転は、この歯車列142dを介して感光体ドラム142に伝達され、当該感光体ドラム142を回転させる。
この駆動モータ142cはパルスモータにより構成され、その回転数は、制御部130からの駆動信号によって制御される。
【0028】
次に、図3を参照しつつ感光体ドラム142周辺の構成について説明する。
送受信機20は、所定周波数の電波信号を発信する発信部20Aと、加速度センサ50からの信号が受信される受信部20Bとを備えている。送受信機20は、制御部130からの指令で電波信号を発信し、受信部20Bで受信した信号を制御部130に伝送する。
【0029】
制御部130は、インターフェース等の入出力部130A、CPU(Central Processing Unit)130B、ROM(Read Only Memory)130C、RAM(Random Access Memory)130D等を具備して構成されている。ROM130Cには、画像形成装置100の動作を制御するプログラムを始め、加速度センサ50で測定した加速度に基づき、感光体ドラム142の動作を制御するプログラムが格納されている。RAM130Dは、前記プログラムを実行する際のワークエリアとして利用される。また、記憶エリア130Eには、受信した電波信号の周波数の変化分から加速度を算出し、この加速度からだラム表面速度Vを算出する算出式(またはテーブル)およびドラムの標準速度V0等が記憶されている。
【0030】
次に、加速度センサ50の構成について述べる。
なお、ここでは、1つの感光体ドラム142に用いた加速度センサについて述べるが、実際にはイエロー,マゼンタ,シアン,黒の4色についてそれぞれ感光体ドラム142Y,142M,142C,142Kがるため、加速度センサ50もそれぞれに対して設けらる。このため、制御部130では、加速度センサ50から送信される電波信号を識別する機能が必要となるが、その識別方法については、後述するため、ここでの説明は省略する。
【0031】
図4は加速度センサ50の構成を示している。加速度センサ50は、基台となるSiを材料とする矩形状の基板1と、該基板1上に酸化膜1Aを介して形成され、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)が伝播する誘電体薄膜2と、誘電体薄膜2上に形成され、電気信号から弾性表面波又は弾性表面波から電気信号に変換する変換部としての一対の櫛型電極(IDT:Inter-digital Transducer)3A,3Bと、この一対の櫛型電極3A,3Bの一方にインピーダンスマッチング部5A,5Bを介して接続され、外部の送・受信機との間で電波の授受を行う送受信部としてのアンテナ4A,4Bと、一対の櫛型電極3A,3Bの他方に接続されたグランド6A,6Bと、基板1の裏面に形成され、グランド6A,6Bにスルーホール(図示しない)を介して接続されたグランド電極7と、前記基板1の一方の下面に設けられた台座8とを具備している。この台座8は、基板1の他方を浮かせるように設けられる。
【0032】
次に、加速度センサの材質について述べる。
この加速度センサの場合は、誘電体薄膜2の材料にLiTaOを使用する。このLiTaOの結晶は、弾性表面波の伝搬速度が温度変化に対して変化が少ない材質で、その温度係数は約18.0×10−6/℃となる。LiNbOの結晶に対して温度係数は約1/4と小さく10℃の温度変化に対して弾性表面波の変化率は0.005%程度となる。
【0033】
例えば、980m/sの加速度が基板1の他方に加わると、この加速度に対応して基板1に撓みが生じ、この撓みが誘電体薄膜2に伝わり、櫛型電極3A,3Bの電極間の幅を変えると共に、SAWの速度が変化して中心周波数を対して周波数を0.1%程度変化させる。また、測定対象物の温度変化が著しい場合、温度センサとの併用で補正することも可能となる。
以上のように、加速度センサ50は、中心周波数f0に対して約0.1%程度周波数が変化することが検知されている。
【0034】
また、変換部3、アンテナ4およびグランド5は、導電パターンにより一体的に形成される。この導電パターンの材料としては、Ti,Cr,Cu,W,Ni,Ta,Ga,In,Al,Pb,Pt,Au,Ag等の金属、またはTi−Al,Al−Cu,Ti−N,Ni−Cr等の合金を、単層もしくは2層以上の多層構造に積層することが好ましく、特に金属としてはAu,Ti,W,Al,Cuが好ましい。また、この金属層の膜厚は、1nm以上10μm未満とすることが好ましい。
次に、加速度センサ50の測定動作について説明する。なお、図4(a)に示す加速度センサ50の平面図において、便宜上、信号が図面向かって左側から右側に移動するものとするが、実際には信号の流れには方向性がある訳ではない。
【0035】
この加速度センサ50は、送受信機20の発信部20Aとの間、受信部20Bとの間で電波信号の授受を行う。発信部20Aから送信される電波信号はアンテナ4Aで受信され、この信号により櫛型電極3Aが誘電体薄膜2を励振して機械振動を発生させる。この機械振動は、誘電体薄膜2表面に弾性表面波を発生させる。この弾性表面波は、櫛型電極3Aから櫛型電極3Bに向けて移動し、櫛型電極3Bに到達した弾性表面波は、櫛型電極3Bで電気信号に変換されてアンテナ4Bを経由して送信される。受信部20Bは、加速度センサ50からの電波信号を受信する。
【0036】
ここで、図4(b)に示す矢印Fのような加速度が発生すると、この加速度は誘電体薄膜2を伸縮させる。この伸縮は誘電体薄膜2に発生する弾性表面波の属性を変化させる。この弾性表面波は、この誘電体薄膜2に加わった加速度の変化によって、振幅、位相、周波数等(属性)が変化する。この弾性表面波を受信した受信部20Bは、この電波信号を電気信号に変換して制御部130に伝送する。制御部130では、この電気信号を解析することにより、加速度センサ50が受ける加速度を測定する。
【0037】
次に、加速度センサ50が測定した感光体ドラム142に加わる加速度に基づいた制御について図5を参照しつつ説明する。なお、感光体ドラム142における回転数とはドラム表面速度のことである。
【0038】
ここで、回転速度と遠心力との関係を考えると、遠心力は回転速度の二乗に比例する。このため、加速度センサ50で遠心力を測定すれば、回転速度つまりドラム表面即とを知ることができる。
具体的には、以下のようにしてドラム表面速度を求めることができる。なお、感光体ドラム142の中心から表面までの半径をR、加速度センサ50までの半径をrとする。
加速度センサ50で検出される加速度aは、(1)式となる。
加速度a=r×角速度ω ・・・(1)
(1)式から角速度ωは、(2)式となる。
角速度ω=(加速度a/r)1/2 ・・・(2)
これにより、ドラム表面速度Vは、(3)式となる。
表面速度V=2πR×角速度ω=2πR×(加速度a/r)1/2・・・(3)
【0039】
ここで、図5に記載したフローチャートに基づき、感光体ドラム142の回転速度制御処理について述べる。
この処理は、画像形成装置100の電源オンと同時に開始される。CPU130Bは、
印刷信号が画像形成部140に出力されているか否かを判定し(ステップSa1)、印刷信号が出力された場合(ステップSa1;YES)にステップSa2に移行する。
CPU130Bは、加速度センサ50からの電波信号を受信し(ステップSa2)、この電波信号から加速度aを算出し、この加速度aから前記(3)式を用いてドラム表面速度Vを算出する(ステップSa3)。
【0040】
次に、CPU130Bは、感光体ドラム142の回転速度制御を行う。具体的には、CPU130Bは、記憶エリア130Eに記憶された感光体ドラム142の標準速度V0を読み出し、算出されたドラム表面速度Vと比較する。
即ち、CPU130Bは、表面速度Vが標準速度V0とほぼ一致するか否か(ステップSa4)、標準速度V0よりも高いか否か(ステップSa6)を判定する。
CPU130Bは、表面速度Vが標準速度V0とほぼ一致する場合(ステップSa4;YES)、ステップSa5に移行し、駆動モータ142cに供給する駆動信号を維持して、現状の感光体ドラム142の回転速度を維持させる(ステップSa5)。
【0041】
また、表面速度Vが標準速度V0よりも高い場合(ステップSa6;YES)、通常の回転速度よりも高い回転速度で感光体ドラム142が回転しているため、ステップSa7に移行する。CPU130Bは、駆動モータ142cに対して回転速度を所定速度だけ低くするような駆動信号を出力し、感光体ドラム142の回転速度を所定速度だけ低下させる。一方、標準速度V0よりも低い場合(ステップSa6;NO)、通常の回転速度よりも低い回転速度で感光体ドラム142が回転しているため、ステップSa8に移行する。CPU130Bは、駆動モータ142cに対して回転速度を所定速度だけ高くするような駆動信号を出力し、感光体ドラム142の回転速度を所定速度だけ上昇させる(ステップSa8)。
さらに、CPU130Bは、電源がオフするまで、ステップSa1〜Sa8の処理を繰り返し、電源がオフされた場合(ステップSa9;YES)にこの処理を終了する。
【0042】
このように、画像形成装置100においては、感光体ドラム142に内に設けたワイヤレスの加速度センサ50により、実際に回転するドラム142の回転状況を直接検出するとができ、正確な回転速度制御を行うことができる。
【0043】
しかも、ワイヤレスの加速度センサ50を回転体である感光体ドラム142に備えている。これにより、加速度センサ50と制御部130とを繋ぐリード線が不要となり、リード線の引き回し作業が省略できると共に、リード線を繋ぐコネクタもなくすことにより、接触不良等による測定精度の低下を防止することができ、長期に渡って測定精度を高めることができる。しかも、加速度センサ50は、バッテリー無しで加速度の測定を行うから、バッテリー交換を不要にでき、メンテナンスの作業性を向上できる。
【0044】
また、感光体ドラム142内にセンサ50を設けることで、背景技術で述べた特許文献1〜3のように、センサをドラム周辺に配置する必要がなく、画像形成装置の小型化や感光体ドラムの小径化に対応した感光体ドラムを実現することができる。
【0045】
○第1実施形態の変形例
第1実施形態では、加速度を用いて回転速度制御処理を行うことを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、感光体ドラム142の異常振動を検知する処理に用いても良い。
図6に示すような異常振動検知処理を用いて感光体ドラム142の異常振動を検知する。なお、図6において、前述した図5に示すフォローチャートと同様のステップSには同じ符号を付し、その説明を省略する。
ステップSa3までの処理は、図5と同様であるので説明を省略する。
CPU130Bは、算出された表面速度Vを一定時間の間、測定して感光体ドラム142の異常振動検知を行う(ステップSa11〜Sa12)。即ち、CPU130Bは、一定時間の間、表面速度Vを所定回数算出し、算出した結果に所定範囲以上のばらつきがあるか否かを判定する(ステップSa11)。
CPU130Bは、表面速度Vのばらつきが所定範囲内の場合には(ステップSa11;YES)、ステップSa12に移行し、感光体ドラム142の回転には異常がないとして現状を維持する(ステップSa12)。
【0046】
一方、CPU130Bは、表面速度Vのばらつきが所定範囲外の場合には(ステップSa11;NO)、ステップSa13に移行する。CPU130Bは、何らかの原因で感光体ドラム142に異常振動が発生しているとみなし、感光体ドラム142が異常振動していることを表示部(図示せず)に報知すると共に、当該画像形成装置100の動作を停止する。
【0047】
このように、測定された加速度の軌跡を検出することにより、表面速度Vがばらついている場合には、何らかの原因で異常振動が発生しているとみなすことができる。しかも、加速度センサ50で感光体ドラム142の回転状態を直接検出しているので、異常振動を迅速に検知することが可能となる。
【0048】
<B.第2実施形態>
次に、本発明による第2実施形態について説明する。本実施形態の特徴は、図2に示すように、感光体ドラム142にワイヤレスの温度センサ51と湿度センサ52を設けた点にある。なお、本実施形態では、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。ワイヤレスのセンサを2個以上使用した場合の識別については後述するため、ここでの説明は省略する。
【0049】
次に、温度センサ51と湿度センサ52の構成について説明する。
本実施形態に用いられるワイヤレスの温度センサ51の構成について説明する。
この温度センサ51は、前述した加速度センサ50とほぼ同様に構成され、台座8が形成されていない点で相違している。
【0050】
温度センサとして使用するためには、図4に示した誘電体薄膜2の材料にLiNbOを使用する。このLiNbOの結晶は、弾性表面波の伝搬速度が温度変化に対して敏感に変化する材質で、その温度係数は約75.0×10−6/℃となる。この温度における伝搬速度の変化は、弾性表面波の周波数を変化させることになる。例えば、実験においては、温度が約100℃変化することにより、弾性表面波の中心周波数f0に対して約0.2〜0.3%程度周波数が変化する結果を得ている。
【0051】
一方、湿度センサ52では、誘電体薄膜2の材料にLiTaOを使用する。このLiTaOの結晶は、弾性表面波の伝搬速度が温度変化に対して変化が少ない材質でその温度係数は約18.0×10−6/℃となる。LiNbOの結晶に対して温度係数は約1/4と小さく10℃の温度変化に対してSAWの変化率は0.005%程度となる。
【0052】
また、LiTaOの表面に酢酸セルロースの薄膜を約10μmでスピンコートにより形成する。この酢酸セルロースは吸水性を持ち、湿度10%〜70%RH(相対湿度パーセント)の間に比誘電率が約50%変化する性質を有する。このように誘電率の変化する膜をLiTaO上に形成することにより、例えば、実験においては、湿度が10%〜70%変化することにより、弾性表面波の速度に約0.06%の変化が得られている。また、測定対象物の温度変化が著しい場合、温度センサとの併用で補正することも可能となる。
以上のように、この湿度センサでは、実験結果から中心周波数f0に対して約0.06%程度周波数が変化することが検知されている。
【0053】
次に、温度センサ51および湿度センサ52から送信される電波信号の処理動作について説明する。
この温度センサ51は、送受信機20の発信部20Aとの間、受信部20Bとの間で電波信号の授受を行う。発信部20Aから送信される電波信号はアンテナ4Aで受信され、この信号により櫛型電極3Aが誘電体薄膜2を励振して機械振動を発生させる。この機械振動は、誘電体薄膜2表面に弾性表面波を発生させる。この弾性表面波は、櫛型電極3Aから櫛型電極3Bに向けて移動し、櫛型電極3Bに到達した弾性表面波は、櫛型電極3Bで電気信号に変換されてアンテナ4Bを経由して送信される。受信部20Bは、温度センサ51からの電波信号を受信する。
【0054】
誘電体薄膜2の表面に発生する弾性表面波は、この誘電体薄膜2に加わった温度の変化によって、周波数が変化する。この弾性表面波を受信した受信部20Bは、この電波信号を電気信号に変換して制御部130に伝送する。制御部130では、この電気信号を解析することにより、温度センサ51が受ける感光体ドラム142内の温度を計測する。
一方、湿度センサ52においてもほぼ同様に動作して、湿度センサ52が受ける感光体ドラム142内の湿度を計測する。
上記動作でそれぞれ測定された温度および湿度は、制御部130のRAM130Dに記憶される。
【0055】
次に、測定された温度および湿度を用いた処理について説明する。
前述した動作により、制御部130のRAM130Dには、温度センサ51からの電波信号によって検出される感光体ドラム142内の温度が記憶され、湿度センサ52からの電波信号によって検出される感光体ドラム142内の湿度が記憶される。
CPU130Bは、RAM130Dに記憶された温度および湿度から、感光体ドラム142が適正温度になっているか否かを判定し、適正温度になるように制御する。具体的には、感光体ドラム142の温度が適正温度を超えている場合には温度を下げるべく、ヒータに流す電流を低下させ、温度が適正温度に達していない場合には温度を上げるべく、ヒータに流す電流を上昇させる。
【0056】
このように、感光体ドラム142内に温度センサ51,湿度センサ52を設けることにより、直接感光体ドラム142に温度および湿度を検出することで、感光体ドラム142の表面温度を繊細に制御し、感光体ドラム142の動作状況を制御することができる。
しかも、温度センサ51はアルミニウムからなる基材142aの内側に貼着しているため、アルミニウムの熱伝導性の良さを活かし、感光体ドラム142の表面温度を正確に測定することが可能となる。
【0057】
<センサを複数個とした場合>
これまでは、1つのワイヤレスセンサを使用した場合について述べたが、複数個のワイヤレスセンサを用いた場合には、各センサを識別する手法が必要となる。
以下、各センサを識別するための一手法について述べる。以下、加速度センサ50,温度センサ51,湿度センサ52は、便宜上ワイヤレスセンサ0として記載する。
図7に示すように、ワイヤレスセンサ0は、形状の異なる櫛型電極3A−1,3B−1…3A−4,3B−4が形成されている。このワイヤレスセンサ0においては、外部から送信される電波信号の周波数により複数の周波数に対応した弾性表面波が誘電体薄膜2上に発生する。
【0058】
例えば、櫛型電極3A−1,3B−1およびインピーダンスマッチング部5A,5Bで設定される弾性表面波の周波数をf1、櫛型電極3A−2,3B−2およびインピーダンスマッチング部5A,5Bで設定される弾性表面波の周波数をf2、櫛型電極3A−3,3B−3およびインピーダンスマッチング部5A,5Bで設定される弾性表面波の周波数をf3、櫛型電極3A−4,3B−4およびインピーダンスマッチング部5A,5Bで設定される弾性表面波の周波数をf4とする。この図7では、グランドおよびグランド電極の図示は省略して描いている。
【0059】
ここで、外部の発信部20Aから周波数f1の電波信号が送信されると、櫛型電極3Aでは、この周波数f1に対応した電極3A−1が機械振動を発生し、この機械振動によって誘電体薄膜2上に弾性表面波が発生する。この弾性表面波が電極3B−1に伝達される。電極3B−1に伝達される弾性表面波は、温度の影響を受けてその属性が変化する。一方、他の櫛型電極3A−2,3B−2〜3A−4,3B−4においては、周波数f1に同調していないので、弾性表面波の発生やこれに基づく電波信号の送信は行われない。即ち、これらの櫛型電極3A−2,3B−2〜3A−4,3B−4は、各々周波数f2,f3,f4に同調するように設定されており、このため、周波数f2の電波をワイヤレスセンサ0に送信した場合には、櫛型電極3A−2→3B−2という経路で弾性表面波が伝達され、この弾性表面波に対応した電波信号がアンテナ4Bを経由して出力される。
【0060】
同様に、周波数f3の電波信号をワイヤレスセンサ0に送信した場合には、櫛型電極3A−3→3B−3という経路で弾性表面波が伝達されてアンテナ4Bを経由して出力され、周波数f4の電波信号をワイヤレスセンサ0に送信した場合には、櫛型電極3A−4→3B−4という経路で弾性表面波が伝達されてアンテナ4Bを経由して出力される。
従って、周波数f1,f2,f3,f4の順でワイヤレスセンサ0に電波を送信すれば、これらに対応する応答信号を得ることができる。またこの場合、櫛型電極3B−1,3B−2,3B−3,3B−4(出力側)から出力される信号の変化帯域(温度による変化の幅)を重複しないように設定しておけば、周波数f1〜f4を同時にセンサ0に出力しても、その応答信号として出力される4つの信号を分離して解析することができる。
【0061】
ここで、4カ所の測定位置a〜dに個々に配置されたセンサ0−1,0−2,0−3,0−4とする。具体的には、弾性表面波の周波数は、櫛型電極3A,3Bの形状で設定されるため、センサ0−1には、図7に示したワイヤレスセンサ0の櫛型電極3A−1,3B−1が形成され、センサ0−2にはワイヤレスセンサ0の櫛型電極3A−2,3B−2が形成され、センサ0−3にはワイヤレスセンサ0の櫛型電極3A−3,3B−3が形成され、センサ0−4にはワイヤレスセンサ0の櫛型電極3A−4,3B−4が形成されるものとする。これにより、誘電体薄膜に発生する弾性表面波の周波数が、センサ0−1がf1、センサ0−2がf2、センサ0−3がf3、センサ0−4がf4となる。即ち、受信する電波信号の周波数f1〜f4によってセンサ0−1〜0−4が特定されることになる。
【0062】
そして、周波数f1の電波信号では測定対象aに配置されたセンサ0−1による測定が、周波数f2の電波信号では測定対象bに配置されたセンサ0−2による測定が、周波数f3の電波信号では測定対象cに配置されたセンサ0−3による測定が、周波数f4の電波信号では測定対象dに配置されたセンサ0−4による測定が可能となる。
【0063】
このように、周波数によってセンサを識別することができる。具体的には、周波数f1を加速度センサ50、周波数f2を温度センサ51、周波数f3を湿度センサ52といったように割り振ることももできる。この場合、各センサの検出状況によって出力周波数は変動するが、それぞれの周波数f1〜f4を中心にして変動するため、同調回路やBPF(バンドパスフィルタ)等によって抽出、識別することが可能である。
【0064】
なお、センサの識別の手法は、この手法に限らず、櫛型電極の形状及び大きさを同形状にして櫛型電極間の離間距離d(図4参照)を異ならせることによっても実現することができる。
具体的には、櫛型電極間の離間距離を異ならせることで、誘電体薄膜上に発生する表面弾性波の時間が異なる。この点に着目し、発信部20Aの電波信号発信から受信部20Bでの電波信号受信までの時間を測定することによりセンサの識別化を図る。
【0065】
<C.他の実施形態>
(1)前記各実施形態における感光体ドラム142では、加速度センサ50或いは温度センサ51と湿度センサ52を設けるものとして述べたが、本発明はこれに限らず、温度センサ51のみ、或いは湿度センサ52のみ、さらにはこれらのセンサ50,51,52を組み合わせて設けてもよい。これにより、感光体ドラム自体の基本機能に加え、周囲環境を測定する測定部としての機能を兼ね備えることができる。
さらに、ワイヤレスのセンサは感光体ドラム142の側面に取り付けても良く。要は、感光体ドラム142と共に回転し、このドラム142が受ける物理量(加速度、温度、湿度)が測定できる部位であればよい。
【0066】
(2)前記実施形態におけるワイヤレスセンサの各部の材質は、以下の材質であってもよい。
基板1の材質は、Si,Ge,ダイアモンド等の単体半導体、ガラス、AlAs,AlSb,AIP,GaAs,GaSb,InP,InAs,InSb,AlGaP,AlLnP,AlGaAs,AlInAs,AlAsSb,GaInAs,GaInSb,GaAsSb,InAsSb等のIII-V系の化合物半導体、ZnS,ZnSe,ZnTe,CaSe,CdTe,HgSe,HgTe,CdS等のII−VI系の化合物半導体、導電性或いは半導電性の単結晶基板としてはNb,La等をドープしたSrTiO,AlをドープしたZnO,In,RuO,BaPbO,SrRuO,YBaCu7−X,SrVO,LaNiO,La0.5Sr0.5CoO,ZnGa,CdGa,MgTiO.MgTi等の酸化物、またはPb,Pt,Al,Au,Ag等の金属等が挙げられるが、既存の半導体プロセスとの適合性やコスト面から、Si,GaAs、ガラス等の材料を用いることが好ましい。
【0067】
また、誘電体薄膜2の材質はLiTaOやLiNbOに限らず、SiO,SrTiO,BaTiO,BaZrO,LaAlO,ZrO,Y8%−ZrO,MGO,MgAl,,AlVO,ZnO等の酸化物、ABO型のペロブスカイト型としてBaTiO,PbTiO,Pb1-XLa(ZrTi1-y1-X-4(x,yの値によりPZT,PLT,PLZT),Pb(Mg0-3Nb2-3)O,KNbO等の正方系、斜方系或いは疑立方晶系材料、疑イルメナイト構造体としてLiNbo,LiTaO等に代表される強誘電体等、タングステンブロンズ型として、SrBa1−XNb,PbBaNb、BiTi12,PbKNb15,KLiNb15、さらに以上列挙した強誘電体の置換誘電体等から選択される。さらに、鉛を含むABO型のペロブスカイト型酸化物が好適に用いられる。特に、これらの材料のうちLiNbO,LiTaO,ZnO等の材料は、弾性表面波の表面速度、圧電定数等の変化が顕著でより好ましい。誘電体薄膜2の膜厚は、目的に応じて適宜選択されるが、通常は0.1μmから10μmの間に設定されるようになる。
【0068】
また、この誘電体薄膜2は、変換部3における電気機械結合係数/圧電係数、或いはアンテナ4の誘電損失等の観点から、エピタキシャルまたは単一配向性を有することが好ましい。また、誘電体薄膜2上にGaAs等のIII−V族半導体或いはダイヤモンド等の炭素を含有する薄膜を形成してもよい。これにより、弾性表面波の表面速度、結合係数、圧電定数等がより向上できる。
【0069】
(3)前記各実施形態では、感光体ドラム142を実際に使用する場合を例示したが、当該感光体ドラム142を検査する場合に用いてもよい。この場合、図3に示す構成を検査器に設けることによって実現することができる。
また、加速度センサ50による加速度の変化をモニタすることにより、感光体ドラム142の摩耗等による偏り回転も検知でき、感光体ドラム142の実際の劣化に応じた交換時期も察知することが可能となる。
【0070】
(4)前記各実施形態では、感光体ドラムを複数個有するタンデム型複写機について述べたが、感光体ドラムを1個のみ備えた複写機に用いても良いことは勿論である。
【0071】
(5)前述したセンサは、外部から加わる加速度、温度、湿度を電波信号の周波数に反映させて出力するようにしたが、周波数に限らず、加速度、温度、湿度等の物理的作用に対応させて電波信号が変化する振幅、位相等の属性であってもよい。
【0072】
また、センサによって測定される対象は、加速度、温度、湿度に限るものではない。
(6)前記実施形態では、この画像形成装置100をタンデム型のデジタルカラー複写機として記載したが、本発明は、タンデム型のデジタルカラー複写機に限らず、カラープリンタやファクシミリ等においても有効であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態に係る感光体ドラムを備えた画像形成装置を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る感光体ドラムを示す断面図である。
【図3】第1実施形態に係る感光体ドラム周辺の構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態による加速度センサを示す図である。
【図5】第1実施形態による回転速度制御処理を示す流れ図である。
【図6】第1実施形態の変形例による異常振動検知処理を示す流れ図である。
【図7】第2実施形態による他の形態のワイヤレスセンサを示す図である。
【符号の説明】
【0074】
0…ワイヤレスセンサ、50…加速度センサ、51…温度センサ、52…湿度センサ、1…基板、2…誘電体薄膜、3…櫛型電極、4A,4B…アンテナ、5A,5B…インピーダンスマッチング部、6A,6B…グランド、7…グランド電極、8…台座、20…送受信機、20A…送信部、20B…受信部、100…画像形成装置、110…画像読取部、120…画像処理部、122…定着器、130…制御部、130A…入出力部、130B…CPU、130C…ROM、130D…RAM、130E…記憶エリア、140…画像形成部、142…感光体ドラム、201…記録シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電波信号が供給されると、それをエネルギー源として物理量を検出し、検出した物理量を反映する属性を有した電波信号を生成して出力するワイヤレス測定手段を1個或いは複数個備える
ことを特徴とする感光体ドラム。
【請求項2】
請求項1記載の感光体ドラムにおいて、
前記物理量は、当該感光体ドラムに加わる加速度、温度または湿度のうち、少なくともいずれか1つを含む
ことを特徴とする感光体ドラム。
【請求項3】
請求項1記載の感光体ドラムにおいて、
前記ワイヤレス測定手段は、電波信号を受信して機械振動を発生させる励振部と、
前記励振部が発生した機械振動が伝達されて弾性表面波を発生するとともに、前記弾性表面波の属性が前記物理量によって変化する振動媒体部と、
前記弾性表面波を電気信号に変換して電波信号として出力する送信部と
を備えることを特徴とする感光体ドラム。
【請求項4】
請求項1記載の感光体ドラムにおいて、
当該感光体ドラムは、円筒状の基材と、
前記基材の外周面に形成される感光層と、を具備し、
前記ワイヤレス測定手段を、前記基材の内側に設けた
ことを特徴とする感光体ドラム。
【請求項5】
請求項1に記載の感光体ドラムを含んで構成され、搬送路に沿って搬送されるシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記ワイヤレス測定手段に所定周波数の電波信号を送信すると共に、前記ワイヤレス測定手段から送信される電波信号を受信する送受信手段と、
前記送受信手段で受信した前記ワイヤレス測定手段からの電波信号を受けて、当該画像形成装置の制御を行う制御手段と、を備えた
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成装置において、
前記物理量が加速度であり、
前記制御手段は、送受信手段で受信した前記ワイヤレス測定手段からの電波信号を受けて、当該感光体ドラムの回転状態を検出する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5記載の画像形成装置において、
前記物理量が温度または湿度であり、
前記制御手段は、前記送受信手段で受信した前記ワイヤレス測定手段からの電波信号を受けて、前記感光体ドラムの動作状況を検出する
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−251706(P2006−251706A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71638(P2005−71638)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】