説明

感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜、およびそれを用いた半導体装置、表示体装置

【課題】 本発明の目的は、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置に使用することのできる、保存安定性と感度に優れた感光性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、(C)ケトン化合物、および(D)溶媒、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。また、該感光性樹脂組成物を用いた硬化物で構成されていることを特徴する硬化膜、保護膜、絶縁膜。また、該硬化膜、該絶縁膜、該保護膜を有する半導体装置および表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の保護膜、絶縁膜には、耐熱性が優れ、かつ卓越した電気特性、機械特性等を有するポリイミド樹脂、上記特性に加えて耐湿信頼性が良いとされるポリベンゾオキサゾール樹脂が用いられていた。さらに、ポリイミド樹脂やポリベンゾオキサゾール樹脂、それらの前駆体樹脂自身に感光性を付与し、レリーフパターン作成工程の一部を簡略化できるようにし、高感度で微細加工性を有しながら、高い耐熱性、優れた電気特性、機械特性を持ち、工程短縮および歩留まり(生産性)向上に効果のある感光性樹脂組成物が開発されており、これは半導体素子の保護膜用のみならず絶縁用樹脂組成物としての可能性も有している。
さらに最近では、安全性の面からアルカリ水溶液で現像ができるポジ型感光性樹脂組成物が開発されている。例えば、特許文献1にはアルカリ可溶性樹脂としてポリベンゾオキサゾール前駆体と感光剤であるジアゾキノン化合物より構成されるポジ型感光性樹脂組成物が開示されている。
【0003】
レリーフパターンを形成した感光性樹脂組成物中のポリイミド前駆体樹脂、ポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂は、最終的に200℃〜350℃付近の硬化することにより脱水閉環させ、耐熱性に富むポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂となる。近年は半導体素子の小型化、高集積化に加え、生産効率を向上が重要になってきており、少ない露光量で微細なパターンを形成できる高感度なポリイミド前駆体樹脂組成物、ポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂組成物の必要性が期待されてきている。
【0004】
少ない露光量で微細なパターンを形成するためには、いくつかの方法が知られている。例えば、ポリイミド前駆体樹脂やポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂の紫外線透過率を向上させることで、樹脂への紫外線の吸収抑え感光剤へ効率的に紫外線を吸収させて感光剤を転化させ、高感度化を図る検討もなされている。しかし、紫外線の透過率を向上させるために脂肪族の構造単位を導入すると確かに透過率は向上するが、一方で耐薬品性や耐熱性が低下するという問題があった。
また、低分子量のフェノール性水酸基を有する化合物を溶解促進剤として用い、未露光部と露光部のコントラストを調整することで、高感度化を図る検討もなされている。しかし、フェノール性水酸基を有する化合物は芳香族化合物であり、分子の剛直性が高くなるためか、冷凍や冷蔵状態で保管時に析出し保存安定性が低下してしまうという問題があった。
従って、耐薬品性や耐熱性を維持しつつ、保管時に析出などの保存安定性の低下を伴わず、高感度な感光性樹脂組成物の開発が最近強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平1−46862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置に使用す
ることのできる、保存安定性と感度に優れた感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記[1]〜[12]に記載の本発明により達成される。
[1] 少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、(C)ケトン化合物、および(D)溶媒、を含む感光性樹脂組成物。
[2] 前記ケトン化合物は、(A)アルカリ可溶性樹脂を溶解しない化合物である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 前記ケトン化合物の融点が、90℃以上である[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] 前記ケトン化合物が、カルボニル基と炭素と水素のみから構成される[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[5] 前記ケトン化合物が、下記一般式(1)で表わされる構造を有する[1]乃至[4]いずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【0008】
【化1】


式中、R10、R11は、水素又は有機基を表す。ただし、R10の少なくとも1つは有機基であり、R11の少なくとも2つは有機基であり、R10とR11が環を形成していてもよい。
【0009】
[6] 前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、ベンゾオキサゾール前駆体構造、イミド前駆体構造、ヒドロキシスチレン樹脂、フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1つを有する[1]乃至[5]に記載のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[7] 前記感光剤(B)が、キノンジアジド化合物である[1]乃至[6]に記載のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[8] [1]乃至[7]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されている硬化膜。
[9] [8]に記載の硬化膜で構成されている保護膜。
[10] [8]に記載の硬化膜で構成されている絶縁膜。
[11] [8]に記載の硬化膜を有している半導体装置。
[12] [8]に記載の硬化膜を有している表示体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置に使用することのできる、特に保存安定性と感度に優れた感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、
(C)ケトン化合物、および(D)溶媒、を含むものである。
また、本発明の保護膜、絶縁膜は、上記感光性樹脂組成物の硬化物である硬化膜で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の半導体装置、表示体装置は、上記硬化膜で構成されていることを特徴とする。
【0012】
以下に本発明の感光性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。なお下記は例示であり、本発明は何ら下記に限定されるものではない。
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、水酸基、特にフェノール性水酸基および/またはカルボキシル基を有するものであり、例えばフェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、メタクリル酸樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられるが、これらの中でもフェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。
なお、フェノール樹脂としては、ノボラックに代表されるフェノール化合物とアルデヒド化合物との反応物を用いることができる。フェノール化合物としてはフェノール、クレゾール、キシレノールなどが挙げられ、アルデヒド化合物としてはホルムアルデヒド、アセトアルデヒドといったアルキルアルデヒド、ベンズアルデヒドといった芳香族アルデヒドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
ヒドロキシスチレン樹脂としては、ヒドロキシスチレンやスチレン及びこれらの誘導体をラジカル重合、カチオン重合やアニオン重合によって得られた重合又は共重合反応物を用いることができる。
本発明において、ポリアミド樹脂とは、ベンゾオキサゾール前駆体構造および/またはイミド前駆体構造を有する樹脂を指す。また、ポリアミド樹脂は、ベンゾオキサゾール前駆体構造、イミド前駆体構造の一部が閉環反応することにより生じるベンゾオキサゾール構造、イミド構造を有していてもよく、また、アミド酸エステル構造を有していてもよい。
【0013】
また、ベンゾオキサゾール前駆体構造とは、下記式(2)で表される構造を指し、イミド前駆体構造とは、下記式(3)で表される構造を指し、ベンゾオキサゾール構造とは、下記式(4)で表される構造を指し、イミド構造とは、下記式(5)で表される構造を指し、アミド酸エステル構造とは、下記式(6)で表される構造を指す。
【0014】
【化2】

【0015】
なお、上記式(2)〜(6)中のDおよびRは有機基を示す。これらポリアミド樹脂の中でも、下記一般式(7)で示される構造を含むポリアミド樹脂が好ましい。
【0016】
【化3】


(式中、X、Yは有機基である。Rは水酸基、−O−R、アルキル基、アシルオキシ基、シクロアルキル基であり、同一でも異なっても良い。Rは水酸基、カルボキシル基、−O−R、−COO−Rのいずれかであり、同一でも異なっても良い。mは0〜8の整数、nは0〜8の整数である。Rは炭素数1〜15の有機基である。ここで、Rが複数ある場合は、それぞれ異なっていても同じでもよい。Rとして水酸基がない場合は、Rは少なくとも1つはカルボキシル基でなければならない。また、Rとしてカルボキシル基がない場合、Rは少なくとも1つは水酸基でなければならない。)
【0017】
一般式(7)で示される構造を含むポリアミド樹脂において、Xの置換基としてのO−R、Yの置換基としてのO−R、COO−Rは、水酸基、カルボキシル基のアルカリ水溶液に対する溶解性を調節する目的で、炭素数1〜15の有機基であるRで保護された基であり、必要により水酸基、カルボキシル基を保護しても良い。Rの例としては、ホルミル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0018】
一般式(7)で示される構造を含むポリアミド樹脂は、例えば、Xを含むジアミン或い
はビス(アミノフェノール)、2,4−ジアミノフェノール等から選ばれる化合物と、Yを含むテトラカルボン酸二無水物、トリメリット酸無水物、ジカルボン酸或いはジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸誘導体等から選ばれる化合物とを反応して得られるものである。
なお、ジカルボン酸の場合には反応収率等を高めるため、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を予め反応させた活性エステル型のジカルボン酸誘導体を用いてもよい。
【0019】
前記一般式(7)で示される構造を含むポリアミド樹脂を、高温で加熱する場合は280℃〜380℃、低温で加熱する場合は150℃〜280℃で処理すると脱水閉環し、ポリイミド樹脂、またはポリベンゾオキサゾール樹脂、或いは両者の共重合という形で耐熱性樹脂が得られる。
前記一般式(7)で示される構造を含むポリアミド樹脂のXは、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等が挙げられ、より具体的には下記(8)式で示されるものを好ましく挙げることができる。これらは、必要により1種類または2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
【化4】


(ここで、*は、NH基に結合することを示す。Aは、アルキレン、置換アルキレン、−O−、−S−、−SO−、−C(=O)−、−NHC(=O)−、−C(CF−または単結合である。
は、アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子から選ばれた1つを示し、それぞれ同じでも異なっても良い。Rは、水素原子、アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子から選ばれた1つを示す。s=0〜2の整数である。R〜R10は、有機基である。)
【0021】
上記式(7)で示すように、XにはRが0〜8個結合される(式(8)において、Rは省略)。
上記式(8)中で特に好ましいものとしては、下記式(9)で表されるもの(Rが含まれるものもあり)が挙げられる。
【0022】
【化5】


(式中、*はNH基に結合することを示す。式中Aは、アルキレン、置換アルキレン、−O−、−S−、−SO−、−C(=O)−、−NHC(=O)−、−CH−、−C(CH)H−、−C(CH−、−C(CF−、又は単結合である。R11は、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。c=0〜3の整数である。)
【0023】
上記式(9)中で特に好ましいものとしては、下記式(10)で表されるものが挙げられる。
【0024】
【化6】


(ここで*はNH基に結合することを示す。R12はアルキレン、置換アルキレン、−O−、−S−、−SO−、−C(=O)−、−NHC(=O)−、−C(CF−、単結合から選ばれる有機基である。)
【0025】
上記式(8)のA、上記式(9)のA、上記式(10)のR12のアルキレン、置換アルキレンの具体的な例としては、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−CH(CHCH)−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CHCH)(CHCH)−、−CH(CHCHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−CH(CH(CH)−、−C(CH)(CH(CH)−、−CH(CHCHCHCH)−、−C(CH)(CHCHCHCH)−、−CH(CHCH(CH)−、−C(CH)(CHCH(CH)−、−CH(CHCHCHCHCH)−、−C(CH)(CHCHCHCHCH)−、−CH(CHCHCHCHCHCH)−、−C(CH)(CHCHCHCHCHCH)−等が挙げられるが、その中でも−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−が、アルカリ水溶液だけでなく溶剤に対しても十分な溶解性を持つ、よりバランスに優れるポリアミド樹脂を得ることができて好ましい。
【0026】
また、式(7)のYは有機基であり、前記Xと同様のものが挙げられ、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、ピリジン類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等が挙げられ、より具体的には下記式(11)で示されるものを好ましく挙げることができる。これらは1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
【化7】


(ここで、*は、C=O基に結合することを示す。Jは、−CH−、−C(CH−、−O−、−S−、−SO−、−C(=O)−、−NHC(=O)−、−C(CF−または単結合である。
13は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基、ハロゲン原子から選ばれた1つを示し、それぞれ同じでも異なっても良い。R14は、水素原子、アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子から選ばれた1つを示す。t=0〜2の整数である。R15〜R18は、有機基である。)
【0028】
式(7)で示すように、YにはRが0〜8個結合される(式(11)において、Rは省略)。
これらの中で特に好ましいものとしては、下記式(12)で表されるもの(Rが含まれるものもあり)が挙げられる。
下記式(12)中のテトラカルボン酸二無水物由来の構造については、C=O基に結合する位置が両方メタ位であるもの、両方パラ位であるものを挙げているが、メタ位とパラ位をそれぞれ含む構造でもよい。
【0029】
【化8】

【0030】
【化9】


(式中、*はC=O基に結合することを示す。R19は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。R20は、水素原子又は炭素数1〜15の有機基から選ばれた1つを示し、一部が置換されていてもよい。u=0〜2の整数である。)
【0031】
【化10】


(式中、*はC=O基に結合することを示す。R20は、水素原子又は炭素数1〜15の有機基から選ばれた1つを示し、一部が置換されていてもよい。)
【0032】
また、上記式(7)で示されるポリアミド樹脂の場合、低温で硬化した際の機械物性、耐熱性に影響を及ぼさない程度に、該ポリアミド樹脂の末端のアミノ基を、他のアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基または環式化合物基を含む酸無水物を用いてアミドとしてキャップすることもできる。
アルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基または環式化合物基としては、例えば式(13)、式(14)で示される基等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いても良く、キャップしたアミド部
分の一部が脱水閉環していても良い。
【0033】
【化11】

【0034】
【化12】

【0035】
またこの方法に限定されることはなく、該ポリアミド系樹脂中に含まれる末端のカルボン酸をアルケニル基又はアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基又は環式化合物基を含むアミン誘導体を用いてアミドとしてキャップすることもできる。
【0036】
さらに、上記式(7)で示されるポリアミド樹脂の場合、低温で硬化した際の機械物性、耐熱性に影響を及ぼさない程度に、末端の少なくとも一方に窒素含有環状化合物を有しても良い。これにより金属配線(特に銅配線)等との密着性を向上することができる。
前記窒素含有環状化合物としては、例えば1−(5−1H−トリアゾイル)メチルアミノ基、3−(1H−ピラゾイル)アミノ基、4−(1H−ピラゾイル)アミノ基、5−(1H−ピラゾイル)アミノ基、1−(3−1H−ピラゾイル)メチルアミノ基、1−(4−1H−ピラゾイル)メチルアミノ基、1−(5−1H−ピラゾイル)メチルアミノ基、(1H−テトラゾル−5−イル)アミノ基、1−(1H−テトラゾル−5−イル)メチル−アミノ基、3−(1H−テトラゾル−5−イル)ベンズ−アミノ基等が挙げられる。
【0037】
(B)感光剤としては、ポジ型のパターニングが可能となる感光剤を用いることができ、200〜500nm、特に好ましくは350〜450nmの波長を持つ化学線の照射により酸を発生する化合物が好ましい。
具体的には感光性ジアゾキノン化合物や、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、スルホニウム・ボレート塩などのオニウム塩、2−ニトロベンジルエステル化合物、N−イミノスルホネート化合物、イミドスルホネート化合物、2,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン化合物や、ジヒドロピリジン化合物などを用いることができる。この中でも感度や溶剤溶解性に優れる感光性ジアゾキノン化合物が好ましい。
感光性ジアゾキノン化合物は、例えば支持体であるフェノール化合物と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸とのエステルが挙げられる。
ポジ型の場合、未露光部のレリーフパターン中に残存する感光剤は硬化時における熱で分解し酸を発生させると考えられ、反応促進剤としても感光剤は重要な役割を果たしている。感光性ジアゾキノン化合物の場合、より熱で分解し易い1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸のエステルが好ましい。
【0038】
感光性ジアゾキノン化合物の支持体であるフェノール化合物としては、フェノール核数が1〜10個程度有するフェノール化合物や低分子量ノボラック樹脂などが使用できる。具体的にはビスフェノール、トリスフェノール、テトラキスフェノール、3〜6個程度のフェノール核がメチレン結合を介し直鎖状に結合されたフェノール化合物などが使用することができる。具体的には式(15)〜(16)が好ましい。
【0039】
【化13】

【0040】
【化14】

【0041】
【化15】


式(15)〜(16)中Qは、水素原子、式(17)のいずれかから選ばれるものである。ここで各化合物のQのうち、少なくとも1つは式(17)である。
【0042】
【化16】


(式中、Bは有機基である。R21〜R24は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルキル基の中から選ばれる1つであり、同一でも異なっていても良い。o〜rは、それぞれ0〜4の整数である。)
【0043】
【化17】



(式中、R25〜R27は水素原子、アルキル基であり、R28〜R30は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルキル基の中から選ばれる1つであり、同一でも異なっていても良い。v〜xは、それぞれ0〜2の整数である。yは0または1の整数である。)
【0044】
上記式(18)のBは有機基である。有機基の具体例としては、アルキレン、置換アルキレン、−O−、−S−、−SO−、−C(=O)−、−NHC(=O)−、アリール、シクロアルキル、または単結合であり、上述の有機基が2種類以上組み合わされた形でも良い。
上記式(18)のBのアルキレン、置換アルキレンの具体例としては、−CH−、−(CH−、−CH(CH)−、−(CH−、−C(CH−、−CH(CHCH)−、−(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CHCH)(CHCH)−、−CH(CHCHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−CH(CH(CH)−、等が挙げられる。その中でもアルカリ水溶液への溶解性、溶剤への溶解性に適した−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−が好ましい。
上記式(18)のBの2種類以上の有機基が組み合わされた形の具体例としては、式(20)に示す構造が挙げられる。
【0045】
【化18】


(式中、R31〜R38は水素原子、アルキル基である。Kは、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−O−、−S−、−SO−、−C(=O)−、−NHC(=O)−、または単結合である。dは0または1の整数である。)
【0046】
また、一般式(18)中のR21〜R24、一般式(19)中のR28〜R30は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルキル基の中から選ばれる1つであり、それぞれ複数ある場合は同一でも異なっていても良い。ハロゲン原子としては、塩素、臭素等が挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられるが、ポジ型感光性樹脂組成物の感度と解像度により優れる、水素原子、メチル基、エチ
ル基が特に好ましい。
【0047】
また、一般式(19)中のR25〜R27、一般式(20)中のR31〜R38は水素原子、またはアルキル基であり、特に限定されるものではないが、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドレシル基等が挙げられ、同一でも異なっていても良い。これらの中でも、感光性樹脂組成物の感度と解像度により優れる、水素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
前記一般式(18)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、下記式(21)で示されるものが例示される。
【0048】
【化19】

【0049】
前記一般式(19)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、下記式(22)で示されるものが例示される。
【0050】
【化20】

【0051】
さらに本発明では、高感度でさらに現像後の樹脂残り(スカム)無くパターニングできるようにフェノール性化合物を添加することができる。
【0052】
本発明における樹脂組成物および感光性樹脂組成物には、必要によりオキシラン化合物、オキシラン樹脂、メチロール基含有化合物、アルコキシアルキル基含有化合物、N−アルコキシアルキル基含有化合物、2官能以上の不飽和二重結合もしくは三重結合含有化合物等の架橋剤、アクリル系、シリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、熱により酸を発生する化合物、アルカリ水溶液に対する溶解抑制剤、可塑剤等の添加剤を含んでも良い。
【0053】
(C)ケトン化合物は、高感度化に寄与する添加剤として使用するため、(A)アルカリ可溶性樹脂を溶解させることを目的としたいわゆる溶剤として添加するものではない。つまり、前記ケトン化合物(C)は、(A)アルカリ可溶性樹脂を溶解しない化合物である。
【0054】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、シリコンウエハなどの基材上に塗布した後に、100℃〜130℃程度で2〜10分程度の熱処理を行うことで溶剤を揮発させ、ハンドリングを容易にできるような処理を行う。そのため、熱処理時に揮発してしまうようなケトン化合物の場合、露光する際にはケトン化合物はほとんど残存しておらず、高感度
化への寄与が低くなってしまう。それらを考慮し、揮発し難さの目安として融点が90℃以上であるケトン化合物を用いることが好ましい。具体的にはカンファー、ノルボルナノン、アダマンタノンなどが挙げられる。その中でカンファー、ノルボルナノン、アダマンタノンが好ましく、カンファー、アダマンタノンや、式(23)で示される化合物などが挙げられる。
【0055】
【化21】

【0056】
前記ケトン化合物(C)は、隣接位に炭素原子を有するカルボニル基を1つ以上有している化合物であることがさらに好ましい。隣接位の炭素原子は2重結合や3重結合、芳香族性を有さない化合物が好ましい。隣接位の炭素原子が2重結合や3重結合、芳香族性の場合は、露光光源の紫外線を吸収する傾向が高く、高感度化への寄与が低下する。
また、前記ケトン化合物(C)としては、カルボニル基と炭素と水素のみから構成される化合物が好ましい。具体的には、上記一般式(1)で示される構造の化合物である。
上記式(1)中、R10、R11は、水素又は有機基を表す。ただし、R10の少なくとも1つは有機基であり、R11の少なくとも2つは有機基であり、R10とR11が環を形成していてもよい。好ましくは、R10、R11が、各々独立になるものである。
さらに、ケトン化合物のカルボニルの隣接位置の炭素原子の立体障害が大きい方が、室温での保存安定性に優れる傾向を見出した。アルカリ可溶性樹脂や感光剤、その他の添加剤のカルボニル炭素への求核攻撃を抑制することで、安定性を発現しているものと推察される。
前記ケトン化合物(C)として、カンファー、ノルボルナノン、アダマンタノンなどが挙げられる。その中でカンファー、ノルボルナノン、アダマンタノンが好ましく、カンファー、アダマンタノンがさらに好ましい。
【0057】
(D)溶媒としては、これらの成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等
が挙げられ、単独でも混合して用いても良い。
【0058】
(A)、(B)、(C)、(D)以外の成分として、密着助剤や溶解促進剤を含んでも良い。
(密着助剤)
本発明の感光性樹脂組成物中には、密着助剤が含まれていてもよい。
密着助剤は、感光性樹脂組成物を硬化させた塗膜と、当該塗膜が形成された基板との結合強度を向上させる機能を有する成分である。
このような密着助剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、アミノ基を有するケイ素化合物と酸二無水物または酸無水物とを反応することにより得られるケイ素化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
前記アミノ基を有するケイ素化合物としては、特に制限されるわけではないが、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)―3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
前記酸二無水物または酸無水物としては、特に制限されるわけではないが、例えば、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、シアノ無水マレイン酸、シトコン酸、無水フタル酸等などが挙げられる。また、使用にあたっては単独、または2種類以上を併用して使用することができる。
密着助剤の添加量は、特に限定されるものではないが、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、0.05〜50重量部であるのが好ましく、0.1〜20重量部であるのがより好ましい。添加量が上記範囲内であると、基板との密着性と感光性樹脂組成物の保存性とを好適に両立することができる。
【0060】
(溶解促進剤)
また、本発明の感光性樹脂組成物中には、溶解促進剤が含まれていてもよい。
溶解促進剤は、感光性樹脂組成物を用いて形成された塗膜の露光部の現像液に対する溶解性を向上させ、パターニング時のスカムを改善することが可能な成分である。
このような溶解促進剤としては、フェノール性水酸基を有する化合物が挙げられ、具体的には、下記式(24)〜式(30)で表されるものを挙げることができる。
【0061】
【化22】

【0062】
【化23】

【0063】
【化24】

【0064】
【化25】

【0065】
【化26】

【0066】
【化27】

【0067】
【化28】

【0068】
これらのフェノール性水酸基を有する化合物の中でも、式(31)より選ばれるものが好ましい。これらは、2種以上用いても良い。これにより、特に感度を向上することができる。
【0069】
【化29】

【0070】
上記フェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、特に限定されないが、前記アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下であるのが好ましく、1重量部以上20重量部以下であるのがより好ましい。これにより、現像時においてスカムの発生をより効果的に抑制することができ、また、露光部の溶解性が促進されることにより感度がより向上する。
【0071】
また、本発明の感光性樹脂組成物中には、必要に応じて酸化防止剤、フィラー、界面活性剤、光重合開始剤、架橋剤、末端封止剤および増感剤等の添加物を添加してもよい。

【0072】
本発明の感光性樹脂組成物の使用方法は、まず該組成物を適当な支持体、例えば、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミ基板等に塗布する。塗布量は、半導体素子上に塗布する場合、硬化後の最終膜厚が0.1〜30μmになるよう塗布する。膜厚が下限値を下回ると、半導体素子の保護膜、絶縁膜としての機能を十分に発揮することが困難となり、上限値を越えると、微細なレリーフパターンを得ることが困難となるばかりでなく、加工に時間がかかりスループットが低下する。
塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等がある。
次に、60〜130℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜500nmの波長のものが好ましい。
【0073】
次に照射部を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得る。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等のアルカリ類の水溶液、およびこれにメタノール、エタノールなどのアルコール類等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。
現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0074】
次に、現像によって形成したレリーフパターンをリンスする。リンス液としては、蒸留水を使用する。次に加熱処理(硬化)を行い、オキサゾール環、又はオキサゾール環およびイミド環を形成し、耐熱性に優れる硬化物を得る。
加熱処理は高温でも低温でも可能であり、高温での加熱処理温度は、280℃〜380
℃が好ましく、より好ましくは290℃〜350℃である。低温での加熱処理温度は150℃〜280℃が好ましく、より好ましくは180℃〜260℃である。加熱処理にはオーブン、ホットプレート、電気炉(ファーネス)、赤外線、マイクロ波などが使われる。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化膜は、半導体素子等の半導体装置用途のみならず、TFT型液晶や有機EL等の表示体装置用途、多層回路の層間絶縁膜やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜としても有用である。
【0076】
半導体装置用途の例としては、半導体素子上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなるパッシベーション膜、パッシベーション膜上に上述の感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなるバッファーコート膜等の保護膜、また、半導体素子上に形成された回路上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなる層間絶縁膜等の絶縁膜、また、α線遮断膜、平坦化膜、突起(樹脂ポスト)、隔壁等を挙げることができる。
表示体装置用途の例としては、表示体素子上に本発明の感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなる保護膜、TFT素子やカラーフィルター用等の絶縁膜または平坦化膜、MVA型液晶表示装置用等の突起、有機EL素子陰極用等の隔壁等を挙げることができる。
その使用方法は、半導体装置用途に準じ、表示体素子やカラーフィルターを形成した基板上にパターン化された感光性樹脂組成物層を、上記の方法で形成することによるものである。表示体装置用途、特に絶縁膜や平坦化膜用途では、高い透明性が要求されるが、本発明の感光性樹脂組成物の塗膜の硬化前に、後露光工程を導入することにより、透明性に優れた樹脂層が得られることもでき、実用上さらに好ましい。
半導体装置としては、半導体チップ(素子)が半導体基板上に形成され、気密封止やモールド材料を用いて封止したものである。具体的には、トランジスタ、太陽電池、ダイオード、固体撮像素子、半導体チップを積層、封止した各種の半導体パッケージ、ウエハレベルチップサイズパッケージ(WLP)などが挙げられる。
表示体装置としては、TFT型液晶、有機EL、カラーフィルターなどが挙げられる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。
アルカリ可溶性樹脂(A−1)の合成
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸0.085モルと1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール0.170モルとを反応させて得られたジカルボン酸誘導体(活性エステル)41.82g(0.085モル)と、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン11.50g(0.050モル)と、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン14.30g(0.050モル)を温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン500gを加えて溶解させた。その後オイルバスを用いて75℃にて16時間反応させた。
次に、4−エチニルフタル酸無水物6.88g(0.040モル)と、N−メチル−2−ピロリドン100gを加え、さらに3時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応溶液を水/イソプロパノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、目的のアルカリ可溶性樹脂(A−1)を得た。
得られたアルカリ可溶性樹脂(A−1)は、ポリアミド樹脂であり、前記一般式(7)の構造を有していた。
【0078】
アルカリ可溶性樹脂(A−2)の合成
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸0.070モルと1−ヒドロキシ−1,
2,3−ベンゾトリアゾール0.140モルとを反応させて得られたジカルボン酸誘導体(活性エステル)34.44g(0.070モル)と、イソフタル酸0.010モルと1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール0.020モルとを反応させて得られたジカルボン酸誘導体(活性エステル)4.00g(0.010モル)と、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン36.6g(0.100モル)を温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン500gを加えて溶解させた。その後オイルバスを用いて75℃にて16時間反応させた。
次に、ノルボルネンジカルボン酸無水物8.20g(0.050モル)と、N−メチル−2−ピロリドン100gを加え、さらに3時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応溶液を水/イソプロパノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、目的のアルカリ可溶性樹脂(A−2)を得た。
得られたアルカリ可溶性樹脂(A−2)は、ポリアミド樹脂であり、前記一般式(7)の構造を有していた。
【0079】
アルカリ可溶性樹脂(A−3)の合成
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸0.085モルと1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール0.170モルとを反応させて得られたジカルボン酸誘導体(活性エステル)41.82g(0.085モル)と、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン11.50g(0.050モル)と、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.30g(0.050モル)を温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン500gを加えて溶解させた。その後オイルバスを用いて75℃にて16時間反応させた。
次に、ノルボルネンジカルボン酸無水物8.20g(0.050モル)と、N−メチル−2−ピロリドン100gを加え、さらに3時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応溶液を水/イソプロパノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、目的のアルカリ可溶性樹脂(A−3)を得た。得られたアルカリ可溶性樹脂(A−3)は、ポリアミド樹脂であり、前記一般式(7)の構造を有していた。
【0080】
アルカリ可溶性樹脂(A−4)の合成
500mLの丸底フラスコに2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン30.0g(0.082mol)とアセトン400mLを仕込み、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが溶解するまで攪拌した。そこに、アセトン100mLに溶解したパラ−ニトロベンゾイルクロリド12.4g(0.18mol)を温度が20℃未満になるよう冷却しながら30分かけて滴下し、混合物を得た。滴下後、混合物の温度を40℃に加熱し2時間撹拌をし、そこに炭酸カリウム30.0g(0.218mol)を徐々に添加してさらに2時間撹拌した。加熱をやめて、混合物をさらに室温にて18時間撹拌した。その後、混合物を激しく撹拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加し、添加後55℃に加温してさらに30分間撹拌した。撹拌終了後、室温まで冷却し、37重量%の塩酸水溶液と水500mLを加え、pHが6.0〜7.0の範囲になるよう調整した。得られた析出物をろ別し、水で洗浄後60〜70℃にて乾燥を行い、ビス−N,N’−(パラ−ニトロベンゾイル)ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの固体を得た。得られた固体51.0gにアセトン316gとメタノール158gを加え50℃に加熱し完全に溶解させた。そこに300mLの50℃の純水を30分かけて加え、65℃まで加熱した。その後室温までゆっくり冷却して析出した結晶を濾過し、結晶を70℃にて乾燥を行うことで精製し、ビス−N,N’−(パラ−ニトロベンゾイル)ヘキサフルオロ−2,2−ビ
ス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを得た。
得られたビス−N,N’−(パラ−ニトロベンゾイル)ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン20gを1Lのフラスコに入れ5%パラジウム−炭素1.0gと酢酸エチル180.4gを加え懸濁状態とした。そこに水素ガスをパージし、50〜55℃に加熱しながら35分間振盪させ還元反応を行った。反応終了後35℃まで冷却し、懸濁液に窒素をパージした。ろ別により触媒を取り除いた後、ろ液をエバポレーターにかけ、溶媒を蒸発させた。得られた生成物を90℃にて乾燥して、ビス−N,N’−(パラ−アミノベンゾイル)ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを得た。
【0081】
300mLのフラスコにビス−N,N’−(パラ−アミノベンゾイル)ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン14.27重量部(0.024mol)とγ−ブチロラクトン40重量部を加え、撹拌しながら15℃まで冷却した。そこに4,4’−オキシジフタル酸無水物6.86重量部(0.022mol)とγ−ブチロラクトン12.0重量部を加え20℃にて1.5時間撹拌した。その後50℃まで加温し3時間撹拌後、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール5.27g(0.044mol)をとγ−ブチロラクトン10.0gを加え50℃にてさらに1時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却後、反応混合物をろ過した後、反応混合物を水/イソプロピルアルコール=3/1の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、目的のアルカリ可溶性樹脂であるポリアミド樹脂(A−4)(300〜400℃で加熱すると脱水閉環し、ポリイミドベンゾオキサゾールとなる樹脂)を得た。得られたアルカリ可溶性樹脂(A−4)は、前記一般式(7)の構造を有していた。
【0082】
感光剤(Q−1)の合成
式(B−1)のフェノール12.70g(0.022モル)と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロライド17.49g(0.065モル)とアセトン170gとを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れて撹拌、溶解させた。次に反応溶液の温度が35℃以上にならないようウォーターバスでフラスコを冷やしながら、トリエチルアミン7.24g(0.072モル)とアセトン6.1gの混合溶液を、ゆっくり滴下した。そのまま室温で3時間反応させた後、酢酸0.98g(0.016モル)を添加し、さらに30分反応させた。反応混合物をろ過した後、ろ液を水/酢酸(990ml/10ml)の混合溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、式(Q−1)の構造で示される感光剤を得た。
【0083】
【化30】



【0084】
感光剤(Q−2)の合成
式(B−1)のフェノール11.00g(0.026モル)と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロライド18.78g(0.070モル)とアセトン1
70gとを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れて撹拌、溶解させた。次に反応溶液の温度が35℃以上にならないようウォーターバスでフラスコを冷やしながら、トリエチルアミン7.78g(0.077モル)とアセトン5.5gの混合溶液を、ゆっくり滴下した。そのまま室温で3時間反応させた後、酢酸1.05g(0.017モル)を添加し、さらに30分反応させた。反応混合物をろ過した後、ろ液を水/酢酸(990ml/10ml)の混合溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、式(Q−2)の構造で示される感光剤を得た。
【0085】
【化31】

【0086】
感光性樹脂組成物の作製
合成した(A)アルカリ可溶性樹脂(A−1)〜(A−4)、合成した(B)感光剤(B1)〜(B−3)、(C)ケトン化合物を表1の割合で混合し、(D)溶剤であるγ−ブチロラクトン(GBLと表記)又はN−メチル−2−ピロリドン(NMPと表記)に粘度1000mPa・sになるように溶解した後、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し感光性樹脂組成物を得た。
【0087】
加工性評価
上記感光性樹脂組成物を8インチシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で3分プリベークし、膜厚約7.5μmの塗膜を得た。この塗膜に凸版印刷(株)製マスク(テストチャートNo.1:幅0.88〜50μmの残しパターン及び抜きパターンが描かれている)を通して、i線ステッパー((株)ニコン製・NSR−4425i)を用いて、露光量を変化させて照射した。
次に現像液として2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、プリベーク後の膜厚と現像後の膜厚の差が1.0μmになるように現像時間を調節して2回パドル現像を行うことによって露光部を溶解除去した後、純水で10秒間リンスした。100μmの正方形のビアホールのパターンが形成される最低露光量の値を感度として評価した。
安定性評価
上記感光性樹脂組成物を室温で1日放置した後のワニスの状態を観察し、溶液状態を維持しているか、ゲル化しているかを評価した。
半導体装置の作製
表面にアルミ回路を備えた模擬素子ウエハを用いて、実施例1〜7の感光性樹脂組成物を最終5μmとなるよう塗布した後、パターン加工を施して最終ベークした。その後チップサイズ毎に分割して16Pin DIP(Dual Inline Package)用のリードフレーム
に導電性ペーストを用いてマウントした後、半導体封止用エポキシ樹脂(住友ベークライト(株)製、EME−6300H)で成形して、半導体装置を作製した。これらの半導体
装置(半導体パッケージ)を85℃/85%湿度の条件で168時間処理した後、260℃半田浴槽に10秒間浸漬し、ついで高温、高湿のプレッシャークッカー処理(125℃、2.3atm、100%RH)を施してAl回路のオープン不良をチェックしたところ、腐食などはみられず半導体装置として問題無く使用できるものと予想される。
【0088】
以下に、実施例および比較例を記した表1を示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1に示すように、ケトン化合物を添加した実施例1〜7は、ゲル化すること無く保存安定に優れ、高感度化していることが分かった。従って、短時間の露光時間でパターンを形成でき、半導体装置の製造工程において生産効率の向上に寄与すると考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)感光剤、(C)ケトン化合物、および(D)溶媒、を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ケトン化合物は、(A)アルカリ可溶性樹脂を溶解しない化合物である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ケトン化合物の融点が、90℃以上である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ケトン化合物が、カルボニル基と炭素と水素のみから構成される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ケトン化合物が、下記一般式(1)で表わされる構造を有する請求項1乃至4いずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】


式(1)中、R10、R11は、水素又は有機基を表す。ただし、R10の少なくとも1つは有機基であり、R11の少なくとも2つは有機基であり、R10とR11が環を形成していてもよい。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、ベンゾオキサゾール前駆体構造、イミド前駆体構造、ヒドロキシスチレン樹脂、フェノール樹脂から選ばれる少なくとも1つを有する請求項1乃至5に記載のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記感光剤(B)が、キノンジアジド化合物である請求項1乃至6に記載のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されている硬化膜。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化膜で構成されている保護膜。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化膜で構成されている絶縁膜。
【請求項11】
請求項8に記載の硬化膜を有している半導体装置。
【請求項12】
請求項8に記載の硬化膜を有している表示体装置。